(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102209
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】移動式キャビネットの安全ロック装置
(51)【国際特許分類】
A47B 53/00 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
A47B53/00 501F
A47B53/00 501A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-253942(P2012-253942)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-100271(P2014-100271A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】横田 一寿
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−146225(JP,A)
【文献】
特開2010−279645(JP,A)
【文献】
特開平10−155565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 53/00、63/00、81/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入面を前面に向けた複数の固定キャビネットを横方向に列設し、その前方のフロントデッキ上に複数の可動キャビネットを前記出入面と平行な横方向にスライド移動可能に設け、任意の可動キャビネットの移動により任意の固定キャビネットの各出入面を出現させる作業空間が形成可能に構成されてなる移動式キャビネットであって、各作業空間の中央部に対応する前記フロントデッキ上面に操作部の操作ボタンを設けるとともに、該フロントデッキには、隣接する作業空間の間にロック部を設け、該ロック部と直近の両側の前記操作部を連動させる連動部を設け、該ロック部に備えたストッパー体が両側に位置する何れか一方の操作ボタンの操作によってロック状態とロック解除状態に変位し、所定の作業空間にある操作ボタンの操作により、該作業空間と隣接する作業空間の間に設けた前記ロック部のストッパー体をロック状態にし、前記可動キャビネットのベースの適所が前記フロントデッキ上面から突出することがない位置で前記ストッパー体に当止して、所定の作業空間への移動を阻止することを特徴とする移動式キャビネットの安全ロック装置。
【請求項2】
前記操作部は、操作部本体に設けた操作ボタンの押し込み動作によりロック状態を維持し、その後の操作ボタンの押し込み動作によってロック解除状態に戻る構造である請求項1記載の移動式キャビネットの安全ロック装置。
【請求項3】
前記フロントデッキには、前記可動キャビネットをスライド案内するレールと平行に凹溝が設けられ、前記ロック部のストッパー体がロック状態では前記凹溝内に突出し、ロック解除状態では前記凹溝から退避し、前記可動キャビネットのベースの少なくとも左右両端部に前記凹溝内に位置して、ロック状態にある前記ストッパー体に当止する規制部を設けてなる請求項1又2記載の移動式キャビネットの安全ロック装置。
【請求項4】
前記操作部は、操作部本体に設けた操作ボタンの押し込み動作により該操作部本体の左右両側から駆動片が横方向に突出してその状態を維持し、その後の操作ボタンの押し込み動作によって前記駆動片が操作部本体に引き込まれて初期状態に戻る構造であり、前記ロック部は、前記フロントデッキの内部に固定したロック部本体に、前記ストッパー体を出没可能且つ没方向に弾性付勢して設けるとともに、前記ロック部本体の両側部に前記ストッパー体の出没方向に延びたスリット開口を形成した構造であり、前記連動部は、前記操作部の駆動片に一端を連結した連動杆と、前記ロック部の近傍に垂直軸にて回転可能に設けた作動部材を備え、前記連動杆の他端と前記作動部材の偏心位置とを枢着した構造であり、該作動部材の作動片の先端を前記ロック部本体の一方のスリット開口を通して前記ストッパー体の基端面に当接するように位置させ、前記操作ボタンの押し込み動作により前記作動部材を回転させ、前記ストッパー体をロック状態に変位させる請求項1〜3何れか1項に記載の移動式キャビネットの安全ロック装置。
【請求項5】
前記フロントデッキには、前記可動キャビネットをスライド案内するレールの手前側に沿って前記凹溝を形成し、該凹溝の手前側のフロントデッキ内部に前記ストッパー体の出没方向を前後方向に向けてロック部を設け、前記操作ボタンの押し込み動作により前記作動部材の作動片を後方へ回転変位させて、前記ストッパー体を弾性付勢力に抗してロック部本体から押し出し、該ストッパー体の先端部が後方へ突出して前記凹溝内に位置するロック状態となる請求項4記載の移動式キャビネットの安全ロック装置。
【請求項6】
前記可動キャビネットのベースの両側部に前記レール上を転動する車輪を設け、該車輪の支持枠の一部に前記凹溝内を移動してロック状態の前記ストッパー体に当止する規制部を形成するとともに、両車輪の支持枠に設けた前記規制部の間を埋めるように前記凹溝内を移動する当止板を前記ベースに下設した請求項1〜5何れか1項に記載の移動式キャビネットの安全ロック装置。
【請求項7】
前記当止板に所定間隔毎にロック状態の前記ストッパー体の先端を受け入れて可動キャビネットの移動を阻止する係合部を設けてなる請求項6記載の移動式キャビネットの安全ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式キャビネットの安全ロック装置に係わり、更に詳しくは作業空間の安全を確保するために移動式キャビネットを移動規制するための安全ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、出入面を前面に向けて複数の固定キャビネットを横方向に列設し、その前方のフロントデッキ上に複数の可動キャビネットを横方向スライド移動可能に設け、任意の固定キャビネットの出入面を出現させるべく可動キャビネット間に作業空間を形成してなるスライド型キャビネットは各種提供されている。通常、前側の可動キャビネットは、どの位置にあっても直接使用できるが、後側の固定キャビネットを利用する場合、その前方に位置する可動キャビネットを横方向に移動させて作業空間を形成する必要がある。この作業空間に作業者が入って物品の出し入れを行うが、作業中であることを知らずに、他の作業者が可動キャビネットを移動させると、あるいは地震による横揺れで可動キャビネットが移動すると、先の作業者が可動キャビネットの間に挟まれる、あるいは可動キャビネットに衝突するといった問題が生じる。そこで、不意に可動キャビネットが移動しないように何らかのストッパー機構を設けることが提案されている。
【0003】
特許文献1には、各固定キャビネットの出入面に対応するフロントデッキの内部前縁に沿ってシャフトを回転可能に配設し、該シャフトの中間部に前方へ突設したペダルをフロントデッキの前面の開口から突出させるとともに、該ペダルを踏みシャフトが回転した際にフロットデッキの上面から突出して可動キャビネットの作業空間側への移動を規制するように前記シャフトの両端又は一端にストッパーを設けてなることを特徴とするスライド型キャビネットの安全装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、前記フロントデッキには、前記可動キャビネットの下面が移動する領域のうち、前記固定キャビネットの出入面に接近する側にて出没可能なストッパー体が設けられ、通常では前記ストッパー体が弾性付勢手段により突出状態にあって、前記可動キャビネットの移動方向端面に前記ストッパー体が当接可能となり、作業者が前記ストッパー体を押下して、そのストッパー体が没しているときには、当該ストッパー体の上方を可動キャビネットが通過可能に構成されていることを特徴とするスライド型キャビネットの安全装置が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1の安全装置は、前方へ延びたペダルよりも後方へ延びたストッパーの重量による回転モーメントを大とし、通常の状態においてストッパーがフロントデッキの内部に引き込まれた状態を維持するとともに、前記フロントデッキの前面にペダルを突出させ且つ上下移動可能とすべく形成した開口が、上部開口幅がペダルの横幅寸法より広く且つ下部開口幅がペダルの横幅寸法より狭く設定した上開きのテーパー形状とし、ペダルを踏んだ状態においてストッパーがフロントデッキから突出した状態を、平面視略コ字形に形成したペダルと開口の下部とが弾性力と摩擦力で維持するようにした構造であるので、地震や可動キャビネットの移動でシャフトやストッパーに衝撃力が作用すると、ロックが解除される恐れもある。また、ペダルはフロントデッキの前方に突出しているので、前方の通行に邪魔になることは否定できない。一方、特許文献2の安全装置は、ストッパー体が常にロック状態になるようにフロントデッキから弾性付勢力により突出し、可動キャビネットがストッパー体を一方から通過する際にはストッパー体が自動的に押し込まれてベース下面に摺接し、他方からはベースの端部をストッパー体が当止するようになっているので、その方向へ可動キャビネットを移動させようとする際には、移動方向の前方にあるストッパー体を必ず足で押し下げなければならず、可動キャビネットを左右に移動させて目的の物品を出し入れする固定キャビネットを探す場合には操作が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3307246号公報
【特許文献2】特開2010−279645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、可動キャビネットを載せるフロントデッキの前方に、ロック機構を構成するための突起物が存在せず、また作業空間で作業する際に簡単且つ確実に可動キャビネットの移動を規制することができるとともに、作業空間につまずくような突起物が存在せず、しかも可動キャビネットの左右移動を自由に行うことも可能な移動式キャビネットの安全ロック装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、出入面を前面に向けた複数の固定キャビネットを横方向に列設し、その前方のフロントデッキ上に複数の可動キャビネットを前記出入面と平行な横方向にスライド移動可能に設け、任意の可動キャビネットの移動により任意の固定キャビネットの各出入面を出現させる作業空間が形成可能に構成されてなる移動式キャビネットであって、各作業空間の中央部に対応する前記フロントデッキ上面に操作部の操作ボタンを設けるとともに、
該フロントデッキには、隣接する作業空間の間にロック部を設け、該ロック部と直近の両側の前記操作部を連動させる連動部を設け、該ロック部に備えたストッパー体が両側に位置する何れか一方の操作ボタンの操作によってロック状態とロック解除状態に変位し、所定の作業空間にある操作ボタンの操作により、該作業空間と隣接する作業空間の間に設けた前記ロック部のストッパー体をロック状態にし、前記可動キャビネットのベースの適所が
前記フロントデッキ上面から突出することがない位置で前記ストッパー体に当止して、所定の作業空間への移動を阻止することを特徴とする移動式キャビネットの安全ロック装置を構成した(請求項1)。
【0009】
また、前記操作部は、操作部本体に設けた操作ボタンの押し込み動作によりロック状態を維持し、その後の操作ボタンの押し込み動作によってロック解除状態に戻る構造であることが好ましい(請求項2)。
【0010】
ここで、前記フロントデッキには、前記可動キャビネットをスライド案内するレールと平行に凹溝が設けられ、前記ロック部のストッパー体がロック状態では前記凹溝内に突出し、ロック解除状態では前記凹溝から退避し、前記可動キャビネットのベースの少なくとも左右両端部に前記凹溝内に位置して、ロック状態にある前記ストッパー体に当止する規制部を設けてなることが好ましい(請求項
3)。
【0011】
更に具体的には、前記操作部は、操作部本体に設けた操作ボタンの押し込み動作により該操作部本体の左右両側から駆動片が横方向に突出してその状態を維持し、その後の操作ボタンの押し込み動作によって前記駆動片が操作部本体に引き込まれて初期状態に戻る構造であり、前記ロック部は、前記フロントデッキの内部に固定したロック部本体に、前記ストッパー体を出没可能且つ没方向に弾性付勢して設けるとともに、前記ロック部本体の両側部に前記ストッパー体の出没方向に延びたスリット開口を形成した構造であり、前記連動部は、前記操作部の駆動片に一端を連結した連動杆と、前記ロック部の近傍に垂直軸にて回転可能に設けた作動部材を備え、前記連動杆の他端と前記作動部材の偏心位置とを枢着した構造であり、該作動部材の作動片の先端を前記ロック部本体の一方のスリット開口を通して前記ストッパー体の基端面に当接するように位置させ、前記操作ボタンの押し込み動作により前記作動部材を回転させ、前記ストッパー体をロック状態に変位させることがより好ましい(請求項
4)。
【0012】
そして、前記フロントデッキには、前記可動キャビネットをスライド案内するレールの手前側に沿って前記凹溝を形成し、該凹溝の手前側のフロントデッキ内部に前記ストッパー体の出没方向を前後方向に向けてロック部を設け、前記操作ボタンの押し込み動作により前記作動部材の作動片を後方へ回転変位させて、前記ストッパー体を弾性付勢力に抗してロック部本体から押し出し、該ストッパー体の先端部が後方へ突出して前記凹溝内に位置するロック状態となることも好ましい(請求項
5)。
【0013】
また、前記可動キャビネットのベースの両側部に前記レール上を転動する車輪を設け、該車輪の支持枠の一部に前記凹溝内を移動してロック状態の前記ストッパー体に当止する規制部を形成するとともに、両車輪の支持枠に設けた前記規制止部の間を埋めるように前記凹溝内を移動する当止板を前記ベースに下設してなることも好ましい(請求項
6)。
【0014】
更に、前記当止板に所定間隔毎にロック状態の前記ストッパー体の先端を受け入れて可動キャビネットの移動を阻止する係合部を設けてなることも好ましい(請求項
7)。
【発明の効果】
【0015】
以上にしてなる請求項1に係る発明の移動式キャビネットの安全ロック装置は、出入面を前面に向けた複数の固定キャビネットを横方向に列設し、その前方のフロントデッキ上に複数の可動キャビネットを前記出入面と平行な横方向にスライド移動可能に設け、任意の可動キャビネットの移動により任意の固定キャビネットの各出入面を出現させる作業空間が形成可能に構成されてなる移動式キャビネットであって、各作業空間の中央部に対応する前記フロントデッキ上面に操作部の操作ボタンを設けるとともに、
該フロントデッキには、隣接する作業空間の間にロック部を設け、該ロック部と直近の両側の前記操作部を連動させる連動部を設け、該ロック部に備えたストッパー体が両側に位置する何れか一方の操作ボタンの操作によってロック状態とロック解除状態に変位し、所定の作業空間にある操作ボタンの操作により、該作業空間と隣接する作業空間の間に設けた前記ロック部のストッパー体をロック状態にし、前記可動キャビネットのベースの適所が
前記フロントデッキ上面から突出することがない位置で前記ストッパー体に当止して、所定の作業空間への移動を阻止するので、作業空間で作業する際にその位置に存在する操作ボタンを操作することにより、簡単且つ確実に可動キャビネットの移動を規制することができ、作業の安全性を確保することができ、また作業空間につまずくような突起物が存在せず、しかもロック解除状態では可動キャビネットの左右移動を自由に行うことができ、目的の固定キャビネットを探すことが容易になる。
【0016】
請求項2によれば、前記操作部は、操作部本体に設けた操作ボタンの押し込み動作によりロック状態を維持し、その後の操作ボタンの押し込み動作によってロック解除状態に戻る構造であるので、操作が楽である。
【0017】
請求項
3によれば、前記フロントデッキには、前記可動キャビネットをスライド案内するレールと平行に凹溝が設けられ、前記ロック部のストッパー体がロック状態では前記凹溝内に突出し、ロック解除状態では前記凹溝から退避し、前記可動キャビネットのベースの少なくとも左右両端部に前記凹溝内に位置して、ロック状態にある前記ストッパー体に当止する規制部を設けてなるので、ストッパー体がフロントデッキ上面から突出することがなく、そのため可動キャビネットの移動時にはストッパー体が邪魔になることが全くなく、ロック状態では凹溝内に突出したストッパー体に、凹溝内を移動するベースの規制部が当止して確実に移動を阻止できる。
【0018】
請求項
4によれば、フロントデッキ上面に設けた操作ボタンを足で踏んで押し込めば、操作部本体の駆動片が横方向に変位し、該駆動片に連結された連動杆が変位し、該連動杆の他端に枢着した作動部材が回転し、該作動部材の作動片がロック部本体の内部で変位してストッパー体の基端面を押圧し、該ストッパー体がロック部本体から突出してその先端部が凹溝内に位置し、可動キャビネットのベースに設けた規制部が凹溝内で前記ストッパー体に当止するロック状態になり、操作ボタンはその状態を維持するので、ロック状態が維持され、作業空間に可動キャビネットが侵入することを確実に阻止できるので、作業空間で安全に作業ができ、また再度操作ボタンを足で踏めば、前記駆動片が初期状態に復帰するので、前記ストッパー体が弾性付勢力によってロック部本体の内部に引き込まれ、もって凹溝内からストッパー体の先端部が退避するので、可動キャビネットを自由に横方向に移動させることができる。
【0019】
請求項
5によれば、操作部をフロントデッキの手前側寄りに設けることができ、操作ボタンの足による押し込み操作が容易になり、また作業空間に入って固定キャビネットの出入面から物品の出し入れ作業する際に操作ボタンが邪魔になることがなく、ロック機構をフロントデッキの手前側寄りにコンパクトにまとめることができ、それによりロック機構の保守管理も容易になる。
【0020】
請求項
6によれば、前記可動キャビネットのベースの両側部に前記レール上を転動する車輪を設け、該車輪の支持枠の一部に前記凹溝内を移動してロック状態の前記ストッパー体に当止する規制部を形成することにより、何ら特別の部材をベースに突設しなくても安定に可動キャビネットの移動を阻止でき、また両車輪の支持枠に設けた前記規制止部の間を埋めるように前記凹溝内を移動する当止板を前記ベースに下設してなることにより、可動キャビネットが移動途中の状態において操作ボタンを踏み込んでもストッパー体の先端が当止板に当たってロック状態にならないので、可動キャビネットを正確な位置に移動させた後、再度ロック状態にするように作業者に強制する、あるいは促すことができる。
【0021】
請求項
7によれば、前記当止板に所定間隔毎にロック状態の前記ストッパー体の先端を受け入れて可動キャビネットの移動を阻止する係合部を設けていれば、可動キャビネットが移動途中の状態においても操作ボタンを踏み込めば、最も近い係合部にストッパー体の先端を係合させて可動キャビネットの移動を阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る移動式キャビネットの一例を示す全体斜視図である。
【
図2】同じく移動式キャビネットの下部構造の分解斜視図である。
【
図5】可動キャビネットのベースを省略して各部の関係を示し、ロック解除状態を示した部分斜視図である。
【
図7】可動キャビネットが移動途中の中間位置にある場合に操作ボタンを押し込んだ場合の状態を示す部分斜視図である。
【
図8】可動キャビネットのベースの一部分解斜視図である。
【
図10】操作部と連動部を組み込んだ操作ユニットの分解斜視図である。
【
図11】同じく操作ユニットを示し、(a)は全体平面図、(b)は一部拡大平面図である。
【
図14】ロック部の他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る移動式キャビネットの一例を示し、図中1は固定キャビネット、2は可動キャビネット、3はフロントデッキ、4はレール、5はガイドレール、6は安全ロック装置をそれぞれ示している。
【0024】
本発明に係る移動式キャビネットは、出入面7を前面に向けた複数の固定キャビネット1,…を横方向に列設し、その前方のフロントデッキ3上に複数の可動キャビネット2,2を前記出入面7と平行な横方向にスライド移動可能に設け、任意の可動キャビネット2の移動により任意の固定キャビネット1の各出入面7を出現させる作業空間Sが形成可能に構成されものである。
【0025】
前記可動キャビネット2は、前記固定キャビネット1の出入面7に平行となして前記フロントデッキ3に形成したレール4上を、そのベース8の前後中間部で両端部に設けた車輪9,9が転動するとともに、背面上縁に設けたガイドローラ(図示せず)を前記固定キャビネット1,…の出入面7,…の上縁に沿って設けたガイドレール5に支持されて横方向へ移動可能となしている。
【0026】
前記固定キャビネット1は、ユニット式となっており、それを側方に次々に連結して大型の収納キャビネットを構成するのである。また、前記可動キャビネット2は、前記固定キャビネット1と同様にユニット式となっており、それらの横幅は略同一に設定している。そして、通常は、可動キャビネット2は固定キャビネット1の個数より一つだけ少ない個数に設定し、一つの固定キャビネット1の横幅に相当する幅の作業空間Sが形成されるようになっている。また、前記フロントデッキ3も固定キャビネット1に対応させてユニット式となっており、固定キャビネット1の個数と同じ個数のフロントデッキ3が固定キャビネット1,…の前方に配設されている。図示したものは、固定キャビネット1が三つ、可動キャビネット2が二つの場合である。尚、固定キャビネット1は棚式で出入面7が開放したものが好ましいが、横引戸を設けても良く、また可動キャビネット2は棚式で前面に開き戸を設けたもの又は引出し式のものが好ましいが、特に収納構造には限定されない。
【0027】
前記フロントデッキ3は、
図2及び
図3に示すように、固定キャビネット1の出入面7に直交する方向で、横方向に一定間隔で敷設された接地部材10,…の上に組み立てて形成する。そして、当該フロントデッキ3は、前後に分割し、前デッキカバー3Aと後デッキカバー3Bとの間に間隔を設けて連結部材11にて連結するとともに、前デッキカバー3Aと後デッキカバー3Bとの間で前記連結部材11の上に前記レール4を固定している。また、隣接する前記接地部材10,10には、前記固定キャビネット1のベース12が載置され、固定されている。そして、前記レール4の手前側で前デッキカバー3Aとの間に該レール4に沿って凹溝13が形成されている。前記作業空間Sは、各固定キャビネット1の出入面7の手前側にそれぞれ設けられ、隣接する作業空間S,Sの間は、前記接地部材10の位置に対応する。
【0028】
本発明は、
図3〜
図6に示すように、各作業空間Sの中央部に対応する前記フロントデッキ3上面に操作部14を設けるとともに、隣接する作業空間S,Sの間にロック部15を設け、該ロック部15と直近の両側の前記操作部14を連動させる連動部16を設け、そして前記ロック部15に備えたストッパー体17が両側に位置する何れか一方の操作部14に備えた操作ボタン18の操作によってロック状態とロック解除状態に変位し、所定の作業空間Sにある操作ボタン18の操作により、該作業空間Sと隣接する作業空間Sの間に設けた前記ロック部15のストッパー体17をロック状態にし、前記可動キャビネット2のベース8の適所が前記ストッパー体17に当止して、所定の作業空間Sへの移動を阻止するようにしたものである。
【0029】
本実施形態では、
図10及び
図11に示すように、前記操作部14と連動部16とを長尺のマウント部材19に組み込んで操作ユニット20を構成している。そして、前記操作ユニット20を各連結部材11の前縁に沿って配置し、前記接地部材10,10に固定している。尚、中央側に設ける操作ユニット20は、中央部に前記操作部14を配置し、その両側に連動部16,16を配置している。また、左側に設ける操作ユニット20は、中央部に前記操作部14を配置し、その右側に前記連動部16を配置している。また、右側に設ける操作ユニット20は、中央部に前記操作部14を配置し、その左側に前記連動部16を配置している。
【0030】
前記フロントデッキ3には、前記ロック部15のストッパー体17がロック状態では前記凹溝13内に突出し、ロック解除状態では前記凹溝13から退避し、前記可動キャビネット2のベース8の少なくとも左右両端部に前記凹溝13内に位置して、ロック状態にある前記ストッパー体17に当止する規制部21,21を設けている。具体的には、
図6〜
図9に示すように、前記可動キャビネット2のベース8の両側部に前記レール4上を転動する車輪9,9を設け、該車輪9の支持枠22の一部に前記凹溝13内を移動してロック状態の前記ストッパー体17に当止する規制部21を形成するとともに、両車輪9,9の支持枠22,22に設けた前記規制部21,21の間を埋めるように前記凹溝13内を移動する当止板23を前記ベース8に下設している。前記ベース8は、枠部材24の内部の左右両側部に補強部25,25を設け、該補強部25にそれぞれ前記車輪9を回転可能に設けた前記支持枠22を取付け、前記補強部25,25間に横方向に延びたビーム部材26を架設し、該ビーム部材26の下端に前記当止板23が下方へ向けて延設されている。前記両支持枠22,22の規制部21,21と前記当止板23とが一直線上に並んで設けられ、それらが前記凹溝13内を移動する。
【0031】
更に詳しく本発明を説明する。前記操作部14は、
図10に示すように、操作部本体27に設けた操作ボタン18の押し込み動作により該操作部本体27の左右両側から駆動片28,28が横方向に突出してその状態を維持し、その後の操作ボタン18の押し込み動作によって前記駆動片28,28が操作部本体27に引き込まれて初期状態に戻る構造である。前記操作部14の構造は限定されないが、プッシュラッチ方式の構造が好ましい。本実施形態では、前記操作ボタン18の押し込み動作により駆動片28が突出するが、逆に駆動片28が突出状態から引き込まれる構造でも良い。
【0032】
また、前記ロック部15は、
図5、
図6、
図12及び
図13に示すように、前記フロントデッキ3の内部に固定したロック部本体29に、前記ストッパー体17を出没可能且つ没方向に弾性付勢して設けるとともに、前記ロック部本体29の両側部に前記ストッパー体17の出没方向に延びたスリット開口30,30を形成した構造である。前記ロック部本体29は、左右二つ割り構造となっており、一端が開放した箱型の分割本体31,31を超音波溶着などの適宜な接合手段で接合し、内部が中空のロック部本体29を形成する。前記各分割本体31の側面にスリット開口30を形成し、後端部に前記ストッパー体17の先端部を引き出す開口32を形成している。前記ストッパー体17は、直方体形状部分の基端部に下方へ延びた突片33を一体形成した側面視倒L字形であり、前記分割本体31の内部後端面に設けた突部34に圧縮コイルばね35の一端を嵌合し、該圧縮コイルばね35の他端を前記ストッパー体17の突片33の後面側に圧接し、該ストッパー体17をロック部本体29に没方向に弾性付勢している。そして、前記凹溝13の手前側のフロントデッキ内部に前記ストッパー体17の出没方向を前後方向に向けてロック部15を設ける。それには、前記ロック部本体29を固定金具36で前記連結部材11,11の端部とともに前記接地部材10に固定する。
【0033】
また、前記連動部16は、
図10及び
図11に示すように、前記操作部14の駆動片28に一端を連結した連動杆37と、前記ロック部15の近傍に垂直軸38にて回転可能に設けた作動部材39を備え、前記連動杆37の他端と前記作動部材39の偏心位置とを枢着した構造である。前記連動杆37の他端を垂直上向きに屈曲して軸部40を形成し、該軸部40を前記作動部材39の偏心位置に設けた孔41に下方から挿入して枢着した。前記作動部材39には、側方へ延びた作動片42を一体形成してあり、該作動片42の先端を前記ロック部本体29の一方のスリット開口30を通して前記ストッパー体17の基端面に当接するように位置させ、前記操作ボタン18の押し込み動作により前記作動部材39を回転させ、前記ストッパー体17をロック状態に変位させるようにしている。
【0034】
前記操作ユニット20を構成するマウント部材19は、上方に溝部を向けた断面略コ字形の長尺部材であり、該マウント部材19の中央部の溝部内に前記操作部14の操作部本体27を固定している。更に、前記マウント部材19の端部に前記垂直軸38にて作動部材39を回動可能に取付けるとともに、前記操作部14の駆動片28と該作動部材39を前記連動杆37で連動させている。ここで、前記連動杆37は、前記マウント部材19の溝部内に設けたガイド片43に形成した縦溝44で横方向スライド可能に案内している。本実施形態では、前記操作部14の操作ボタン18の押し込み動作により前記作動部材39の作動片42を後方へ回転変位させて、前記ストッパー体17を弾性付勢力に抗してロック部本体29から押し出し、該ストッパー体17の先端部が後方へ突出して前記凹溝13内に位置するロック状態となる。そのため、前記連動杆37の軸部40による枢着点を前記垂直軸38より手前側に位置させている。
【0035】
図3に示すように、前記ロック部15のロック部本体29の右側に形成したスリット開口30には、右側の操作部14に連動させた前記作動部材39の作動片42を挿入して、前記ストッパー体17の基端面に当接させるとともに、ロック部本体29の左側に形成したスリット開口30には、左側の操作部14に連動させた前記作動部材39の作動片42を挿入して、前記ストッパー体17の基端面に当接させる。前記操作ユニット20を前述のようにフロントデッキ3の内部の所定位置に取付ければ、自動的に前記作動部材39の作動片42が、前記ストッパー体17の基端面に当接した位置になる。そして、前記前デッキカバー3Aを前記レール4の手前側に取付ければ、該前デッキカバー3Aの中央部に設けた開口部45から前記操作ボタン18がフロントデッキ3の上面に出現する。
【0036】
そして、前記ロック部15に対して左右一方の操作部14の操作ボタン18を押し込めば、前記ストッパー体17が後方へ突出してロック状態となる。また、特定の作業空間Sに位置する操作部14の操作ボタン18を押し込めば、その両側のロック部15,15のストッパー体17,17が後方へ突出して同時にロック状態となるのである。
【0037】
図5は、ロック解除状態を示し、前記凹溝13内には前記ストッパー体17の先端部が突出してないので、前記可動キャビネット2はレール4に沿って自由に移動させることができ、該可動キャビネット2の移動によって所定の固定キャビネット1の前面側に作業空間Sが形成される。そして、
図6に示すように、作業空間Sに存在する操作ボタン18を押し込めば、該作業空間Sと隣接する作業空間Sとの間に設けた前記ロック部15のストッパー体17の先端部が前記凹溝13内に突出してロック状態となるので、これから作業を行う作業空間Sに可動キャビネット2が侵入してくるのを阻止できる。
【0038】
また、
図7に示すように、可動キャビネット2が移動途中の状態において前記操作ボタン18を踏み込んでも、通常は前記当止板23にストッパー体17の先端が当たって、それ以上操作ボタン18を踏み込めないので、ロック状態にならない。そのような場合には、可動キャビネット2を正確な位置に移動させて、所定の作業空間Sが形成された後に、再度前記操作ボタン18を踏み込めばロック状態となる。ところが、前記当止板23に所定間隔毎にロック状態の前記ストッパー体17の先端を受け入れて可動キャビネット2の移動を阻止する係合部46を設ければ、最も近い係合部46にストッパー体17の先端が係合して、それ以上の可動キャビネット2の移動を阻止できる。
【0039】
また、
図14は、ロック部15の他の実施形態を示し、前記当止板23の係合部46からずれた位置で前記操作ボタン18を踏み込んで操作部14をロック状態とすることができ、その後可動キャビネット2を前後に少し移動してストッパー体17と係合部46の位置が一致した段階で自動的に該ストッパー体17が係合部46に係合してロック状態となるものである。本実施形態のロック部15は、前述のものと基本的な構造は同じであるが、ロック部本体29の内部で前記ストッパー体17の基端側に対面させてブロック体47を、ストッパー体17と同じ方向に移動可能に設けるとともに、該ブロック体47とストッパー体17の基端との間に、前記圧縮コイルばね35よりも弾性力がやや大きな圧縮コイルばね48を介在させ、前記ブロック体47をスリット開口30から挿入した前記作動部材39の作動片42で背面を押圧するようにしている。ロック動作に、前記作動片42でブロック体47の背面を押圧すると、前記圧縮コイルばね48を介して前記ストッパー体17を突出する方向に移動させ、該ストッパー体17の先端が前記当止板23に当接した場合には、前記圧縮コイルばね48が押し縮められて前記操作部14がロック状態になり、その状態を維持することができるようになっている。それから、前記可動キャビネット2が移動し、前記係合部46の位置にストッパー体17が来ると前記圧縮コイルばね48の弾性力で押出され、当該係合部46に係合するのである。この機構は、ロック状態にするのを忘れて作業空間Sで作業中に、不意に可動キャビネット2が移動し始めた際に、該可動キャビネット2の移動を非常停止させる場合に有効である。
【0040】
あるいは、図示しないが、
図12及び
図13に示した構造の前記ロック部15に対して、前記ストッパー体17を基端側と先端側の2部材で構成し、基端側部材に対して先端側部材が該ストッパー体17の出没方向に平行にスライド移動するように組み合せるとともに、基端側部材に対して先端側部材を突出する方向に圧縮コイルばね等によって弾性付勢した構造でも同じような非常停止が可能である。
【符号の説明】
【0041】
S 作業空間、
1 固定キャビネット、 2 可動キャビネット、
3 フロントデッキ、 3A 前デッキカバー、
3B 後デッキカバー、 4 レール、
5 ガイドレール、 7 出入面、
8 ベース、 9 車輪、
10 接地部材、 11 連結部材、
12 ベース、 13 凹溝、
14 操作部、 15 ロック部、
16 連動部、 17 ストッパー体、
18 操作ボタン、 19 マウント部材、
20 操作ユニット、 21 規制部、
22 支持枠、 23 当止板、
24 枠部材、 25 補強部、
26 ビーム部材、 27 操作部本体、
28 駆動片、 29 ロック部本体、
30 スリット開口、 31 分割本体、
32 開口、 33 突片、
34 突部、 35 圧縮コイルばね、
36 固定金具、 37 連動杆、
38 垂直軸、 39 作動部材、
40 軸部、 41 孔、
42 作動片、 43 ガイド片、
44 縦溝、 45 開口部、
46 係合部 47 ブロック体、
48 圧縮コイルばね。