(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102212
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】小型紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
H01J 65/00 20060101AFI20170316BHJP
H01J 61/52 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
H01J65/00 A
H01J61/52 N
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-255225(P2012-255225)
(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公開番号】特開2014-103028(P2014-103028A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】石原 肇
【審査官】
杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−212576(JP,A)
【文献】
特開2004−165100(JP,A)
【文献】
特開2012−011341(JP,A)
【文献】
特開2000−133209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2/00−2/28
11/00−12/14
F21V23/00−37/00
99/00
H01J61/50−65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部にエキシマランプと、該エキシマランプに給電する電装体とが配置され、前記筐体には光出射窓が形成されてなる小型紫外線照射装置において、
前記筐体の一方の側壁に当接し、他方の側壁との間には連通路が形成されるように区画壁を設け、
該区画壁によって前記筐体内を、電装体収納室とランプ収納室とに区画して、前記電装体収納室には前記電装体を収納し、前記ランプ収納室には前記エキシマランプを収納し、
前記電装体収納室における前記連通路からみて前記区画壁が当接する側に吸気口を設け、前記ランプ収納室における前記連通路からみて前記区画壁が当接する側に排気口を設け、
前記吸気口から冷却風を前記電装体収納室内に導入して前記電装体を冷却し、前記連通路を経て前記ランプ収納室に流通する冷却風によって前記エキシマランプを冷却するとともに、同時に前記ランプ収納室内で発生するオゾンを前記排気口から排出するようにしたことを特徴とする小型紫外線照射装置。
【請求項2】
前記区画壁は、前記エキシマランプの端部まで延在していて、該エキシマランプからの紫外線が前記電装体に直接照射されることのないようにしたことを特徴とする請求項1に記載の小型紫外線照射装置。
【請求項3】
前記光出射窓が前記排気口を兼ねていることを特徴とする請求項1又は2に記載の小型紫外線照射装置。
【請求項4】
前記光出射窓が前記筐体の上壁に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の小型紫外線照射装置。
【請求項5】
前記吸気口が前記筐体の側壁に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の小型紫外線照射装置。
【請求項6】
前記エキシマランプは、長尺の発光管を有し、前記冷却風が該発光管に沿って流れるように配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の小型紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は紫外線照射装置に関するものであり、特に、エキシマ発光するエキシマランプを備えた小型紫外線照射装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、放電容器に放電ガスを充填し、誘電体バリア放電によって該放電ガスをエキシマ発光させるエキシマランプが開発されており、物質表面の有機物除去、不要レジストの除去、ドライ精密洗浄等、多岐にわたって応用されている。
特開2011−165540号公報(特許文献1)には、このようなエキシマランプを備えた紫外線照射装置が記載されており、筐体内に、エキシマランプを複数配置した光源部と、当該エキシマランプに給電するための電装部(トランス)とが隔壁によって隔離されて設置された構造が示されている。
このような隔壁部は、光源部から放射される紫外光や、周囲の酸素が紫外光を受けて生成されるオゾンから、電装部を保護するために設けられているものである。
前記電装部には、エキシマランプを点灯する昇圧トランスのほか、当該トランスを冷却するための冷却手段として熱交換器や送風ファンが設けられている。
【0003】
また、従来の紫外線照射装置は、例えば液晶基板のような大型のワークを対象としていたのに対し、近年ではその用途分野が拡大し、用途によっては、一方で、小型で簡便な紫外線照射装置も要望されるようになってきており、その開発が進められている。
例えば、特開2011−181535号公報(特許文献2)に記載の小型の紫外線照射装置は、筐体内が、隔壁によってエキシマランプが収容されるランプ収容室と、電装部を備える回路室とに隔離された構造が示されており、当該ランプ収容室にはガス供給管を介して不活性ガスよりなる洗浄用ガスが供給されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載される従来構造においては、光源部に対して電装部の収容場所は隔壁によって気密に隔離することが必要であった。これは光源部の周囲に微量の酸素が存在すると、その酸素がエキシマランプからの紫外光を受けてオゾンが発生して、このオゾンにより電装部が劣化する惧れがあるためである。また同様に、電装部の周囲にオゾンが発生しないように、光源部から放出される紫外線を常に遮光しておく必要があった。
しかしながら、このような気密構造とすることは、装置の構成や製造工程を煩雑化してしまう。例えば、光源部と電装部を電気的に接続する場合、各々の収容場所の気密性を確保しつつ配線する必要があり、その作業が煩雑で、かつその構造も複雑になる。また照射装置内の冷却機構についても、光源部と電装部にそれぞれ個別に冷却ファンを設ける必要があり、装置の煩雑化を招いてしまう。
特に、装置を小型化する場合に、光源ランプと昇圧トランスとの距離が近づくと、装置筐体内部の温度を上昇させてしてしまうため、小型な装置を実現する上で光源部及び電装部の冷却手段の確保は重要な課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−165540号公報
【特許文献2】特開2011−181535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点に鑑みて、この発明が解決しようとする課題は、ランプに対して電装体を気密に隔離することなく、ランプからの紫外線が電装体に照射されることを防止し、かつ、電装体とランプを効率的に冷却するとともに、ランプから放出される紫外線によって発生するオゾンから電装体を保護できるようにして、従来よりも装置の小型化及び単純化が可能な内部構造を備えた小型紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る小型紫外線照射装置は、
筐体内部にエキシマランプと、該エキシマランプに給電する電装体とが配置され、前記筐体には光出射窓が形成されてなる小型紫外線照射装置において、前記筐体の一方の側壁に当接し、他方の側壁との間には連通路が形成されるように区画壁を設け、該区画壁によって前記筐体内を、電装体収納室とランプ収納室とに区画して、前記電装体収納室には前記電装体を収納し、前記ランプ収納室には前記エキシマランプを収納し、前記電装体収納室における
前記連通路からみて前記区画壁が当接する側に吸気口を設け、前記ランプ収納室における
前記連通路からみて前記区画壁が当接する側に排気口を設け、前記吸気口から冷却風を前記電装体収納室内に導入して前記電装体を冷却し、前記
連通路を経て前記ランプ収納室に流通する冷却風によって前記エキシマランプを冷却するとともに、同時に前記ランプ収納室内で発生するオゾンを前記排気口から排出するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、前記区画壁は、前記エキシマランプの端部まで延在していて、該エキシマランプからの紫外線が前記電装体に直接照射されることのないようにしたことを特徴とする。
また、前記光出射窓が前記排気口を兼ねていることを特徴とする。
また、前記光出射窓が前記筐体の上壁に形成されていることを特徴とする。
また、前記吸気口が前記筐体の側壁に形成されていることを特徴とする。
また、前記エキシマランプは、長尺の発光管を有し、前記冷却風が該発光管に沿って流れるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の小型紫外線照射装置によれば、筐体内が区画壁によって電装体収納室とランプ収納室とに区画され、これら収納室が前記区画壁の一方の端部で連通するようにし、電装体収納室の非連通側の端部に吸気口を設け、ランプ収納室の非連通側の端部に排気口を設けることにより、前記吸気口から冷却風を前記電装体収納室内に導入して前記電装体を冷却し、前記連通路を経て前記ランプ収納室に流通する冷却風によって前記エキシマランプを冷却するとともに、該エキシマランプからの紫外線が前記電装体に照射されることがないようし、同時に前記ランプ収納室内で発生するオゾンを前記排気口から排出することができて、紫外線およびオゾンによる電装体の腐食を防止できるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の実施例の側断面図(A)およびそのX−X矢視図(B)。
【
図5】更に他の実施例で、(A)は側断面図、(B)はそのX−X矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の小型紫外線照射装置1の上壁を分解して表した斜視図であり、
図2(A)はその側断面図、
図2(B)はそのX−X矢視図、
図3は
図2(A)のY−Y矢視図である。
本発明の小型紫外線照射装置1は、筐体2の内部に区画壁3が設けられ、該区画壁3の一端部(当接端部)3aは、筐体2の一方の側壁2aに当接し、他端部(開放端部)3bと他方の側壁2bとの間には連通路4が形成されている。前記筐体2はこの区画壁3により、電装体収納室5とランプ収納室6とに区画されている。
そして、電装体収納室5には電装体7が収納され、また、ランプ収納室6には長尺状の発光管8aを有するエキシマランプ8が収納されている。このとき、前記区画壁3は、エキシマランプ8の発光管8aの端部にまで全長に亘って延在している。
また、
図1および
図2(B)に示されるように、前記エキシマランプ8はランプ収納室6内において、ランプ保持具9によって支持されている。
【0012】
そして、同じく
図1、
図2(B)に示すように、前記筐体2の上壁2cには、ランプ収納室6内のエキシマランプ8に対応して光出射窓10が形成されており、一方、
図3に示すように、前記電装体収納室5の前記区画壁3が当接する側の側壁2aには吸気口11が設けられている。そして、この実施例においては、前記光出射窓10が排気口12を兼ねている。
また、前記電装体収納室5の吸気口11には送風手段13が配置されていて、該送風手段13によって電装体収納室5内に吸引された冷却風は、前記区画壁3と筐体2の側壁2bとの間に形成された連通路4を経てランプ収納室6内に流入し、光出射窓10(排気口12)から排気される。
図3に示すように、電装体7からエキシマランプ8への配線15は、前記連通路4を利用して敷設されている。
【0013】
上記構成において、エキシマランプ8からの紫外線は、区画壁3によって遮光されて電装体7に照射されることはない。
一方、送風手段13によって冷却風が吸気口11から電装体収納室5内に吸引され、電装体7を冷却しつつ連通路4に流れる。この冷却風は前記連通路4からランプ収納室6内に流入し、ランプ8の周囲を流れてこれを冷却し、光出射窓10(排気口12)から排気される。
このとき、エキシマランプ8の周囲では、雰囲気中の酸素からオゾンが生成されるが、前記した冷却風により光出射窓10(排気口12)から外部に排気され、電装室5内の電装体7に作用することがない。
【0014】
図4に他の実施例が示されていて、この実施例では光出射窓10に石英ガラス製の窓部材16が設けられている構成となっている。そして、ランプ収納室6に対応した
筐体2の側壁2aには、排気口12が形成されている。
この実施例においては、電装体収納室5から連通路4を経てランプ収納室6に流入した冷却風は、エキシマランプ8の発光管8aに沿ってその周囲を流れて、前記排気口12から排気される。
【0015】
以上の実施例では、筐体2内を区画壁3によって同一平面内で電装体収容室5とランプ収容室6に区画しているが、
図5に示す他の実施例では、上下方向に区画する構成としている。
即ち、区画壁3は、筐体2内に水平に設けられていて、その下方を電装体収容室5とし、上方をランプ収容室6としているものである。この場合も、区画壁3の開放端部3bと筐体2の側壁2bとの間に連通路4が形成されていることは、前記
図1〜4の実施例と同様である。
そして、前記区画壁3上にエキシマランプ8がランプ保持具9を介して支持されている。
なお、この実施例においても、筐体2の上壁2cには光出射窓10が形成されていて、該光出射窓10は排気口12を兼ねているものを示したが、
図4の実施例と同様に、光出射窓10に窓部材が設けられている場合には、これとは別に、排気口を形成するものである。
【0016】
また、排気口12は筐体2の側壁2cに形成するものとしたが、上壁2cに光出射窓10とは別に形成してもよい。
また、送風手段13を吸気口11に設けるものとしたが、排気口12が光出射窓10とは別に形成されている場合には、該排気口12側に吸引手段を設けて筐体2内に冷却風を導入する構造としてもよい。
更には、上記いずれの実施例においても、吸気口11は、筐体2の側壁2aに形成されてものを示したが、
筐体2の上壁2cに形成してもよい。
【0017】
以上のように、本発明の小型紫外線照射装置では、筐体内を区画壁によって電装体収容室とランプ収容室とに区画し、該区画壁の一端において
筐体との間に連通路を形成したことにより、エキシマランプからの紫外線が電装体に照射されることがなく、また、吸気口から電装体収容室に導入された冷却風が、電装体を冷却した後に、前記連通路からランプ収容室に流れるので、エキシマランプの冷却も効率的に行えるという効果を奏する。
加えて、ランプ収容室内でランプ周辺に生じるオゾンを冷却風によって排気口から排出するので、電装体にオゾンが作用することがない。
このように、筐体内を、区画壁により、吸気口―電装体収容室―連通路―ランプ収容室―排気口という通風経路を構成したので、コンパクトで構造の簡単な小型紫外線照射装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0018】
1 小型紫外線照射装置
2 筐体
2a、2b 側壁
2c 上壁
3 区画壁
3a 当接端部
3b 開放端部
4 連通路
5 電装体収容室
6 ランプ収容室
7 電装体
8 エキシマランプ
8a 発光管
9 保持具
10 光出射窓
11 吸気口
12 排気口
13 送風手段
15 配線
16 窓部材