(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カラーフィルタ層の着色サブ画素の色が赤(L*a*b*表色系において、10≦a*≦50かつ−10≦b*≦10の範囲内に収まる色相)であることを特徴とする、請求項1または3に記載の反射型カラーディスプレイ。
前記カラーフィルタ層の着色サブ画素の面積を1画素の1/5以上かつ1/2以下の割合にすることを特徴とする、請求項1または3に記載の反射型カラーディスプレイ。
請求項3に記載の反射型カラーディスプレイにおいて、インクジェット印刷法を用いて前記受容層上に画素を形成することを特徴とした、反射型カラーディスプレイの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示パネルとしてバックライトを使用した液晶表示パネルが主流であるが、目にかかる負担が大きく、長時間見続ける用途には適していない。
【0003】
目にかかる負担が小さい表示装置として、周囲の照明や環境光などの反射光を制御して表示を行う反射型ディスプレイがある。
【0004】
反射型ディスプレイとしては、液晶を用いた方式の他に、帯電した微粒子を電場によって動かす電気泳動方式(例えば、特許文献1を参照)、2色に塗り分けられた球体を電場で回転させるツイストボール方式(例えば、特許文献2を参照)、樹脂中に分散した液晶の液体内部の配向状態を電場で制御する高分子分散型液晶方式(PDLC:Polymer Dispersion Liquid Crystal)(例えば、特許文献3を参照)、その樹脂成分比が小さく液晶中に高分子が網目構造をとっている高分子ネットワーク型液晶方式(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)(例えば、特許文献4を参照)などがある。
【0005】
これらの方式は、いずれも散乱反射状態を電場で制御するものであり、それ自体は色を表示することが困難であるので、カラー表示するためにはカラーフィルタを使用するのが現実的である。
【0006】
しかし、反射型ディスプレイは、外光を利用して表示するため、パネルの輝度(明るさ)に対して制約がある。このため、特に各画素内に赤、緑、青の3原色の着色部を有するカラーフィルタを設けて多色表示にした反射型カラーディスプレイの場合には、カラーフィルタによる輝度低下が顕著となる。
【0007】
そこで、多色表示といっても、フルカラーではなく、白、黒のほかに1色の合計3色の表示があれば十分な用途が存在する。このような場合、画素内の一部に表示したい色相を有するカラーフィルタ層を形成することで、白、黒と他の1色の3色表示が原理的に可能となる。
【0008】
画素内の一部にカラーフィルタ層を有した3色表示可能な反射型カラーディスプレイでの駆動方法の一例として、白表示の場合には着色層を非表示(非反射部:黒表示)とし、黒表示の場合には画素全体を非表示とし、色表示の場合には着色層を表示(反射部:白表示)とすることで、3色表示を行う駆動方法がある。
【0009】
しかしながら、このような単色カラーフィルタを形成した反射型カラーディスプレイの場合、特に白表示において、着色層を非表示としているにも関わらず、実際には完全に反射光を遮光することができないため、白表示が着色層の色相を有するという現象が生じる。したがって、従来の反射型カラーディスプレイでは、色表示と白表示とが同系色となるため、色表示の際のコントラストが悪くなり、結果視認性が劣化してしまうという課題がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述したように、白黒表示が可能な反射型白黒ディスプレイとしては、液晶を用いた方式の他に、電気泳動方式、ツイストボール方式、高分子分散型液晶方式、高分子ネットワーク型液晶方式などを用いることができる。以下の実施形態では、電気泳動方式の反射型ディスプレイを一例に挙げて本発明を説明する。
【0022】
本発明では、反射型白黒ディスプレイを着色するためにカラーフィルタを用いる。カラーフィルタ形成法としては、フォトリソ法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法などを用いることができる。特に、位置合わせが容易であり、生産性も高いことから、着色サブ画素形成はインクジェット印刷法を用いることが好ましい。本実施形態では、カラーフィルタ形成法としてインクジェット法を用いた例を説明する。
【0023】
1.反射型カラーディスプレイの構造
図1は、本発明の一実施形態に係る電気泳動方式の反射型カラーディスプレイの構造を説明する断面図である。この本実施形態による電気泳動方式の反射型ディスプレイは、表面に所定パターンの画素電極11を備える基板10の上に、接着層12を介して電気泳動表示層13が形成されている。この電気泳動表示層13の上には、透明電極層14と、透明基材層18と、インク受容層17と、カラーフィルタ層15と、保護層16とが、順次積層されている。基板10、画素電極11、電気泳動表示層13、透明電極層14、及び透明基材層18は、反射型白黒ディスプレイを構成する。
【0024】
画素電極11は、それぞれのスイッチング素子(図示せず)に接続されていて、透明電極層14との間に正負の電圧を印加可能となっている。
【0025】
電気泳動表示層13は、電気極性の異なる2種類の電気泳動粒子をマイクロカプセル殻内の透明な分散溶媒中に分散させてなるマイクロカプセルを複数有し、この複数のマイクロカプセルがバインダー樹脂により固定された構造である。
【0026】
カラーフィルタ層15は、着色サブ画素15aと、透明サブ画素15bとを有する。本発明では、カラーフィルタ層15の着色サブ画素15aを除く表示面側からの光を透過する透明部材の部分に、着色サブ画素15aとは色相が異なる色が着色されている。この透明部材としては、カラーフィルタ層15の各サブ画素の土台となるガラス基板やPETフィルムの他、受容層(インク受容層17)及び保護フィルム(保護層16)などが挙げられる。
【0027】
ガラス基板に着色する方法として、ガラスの成分に金属化合物を含有させる方法が挙げられる。金属化合物としては、酸化鉄(Fe
2O
3)や酸化コバルト(CoO)などがある。PETフィルムや保護フィルムに着色する方法として、フィルム材料に着色顔料や染料を添加する方法が挙げられる。この着色成分としては、着色できるものであれば特に限定されない。着色する透明部材としては、着色や色濃度調整が容易なインク受容層17が好ましい。以下に、インク受容層17に着色する例を説明する。
【0028】
本発明に用いるインク受容層17の材料は、ポリマーや溶剤を主成分とし、必要に応じた添加剤及び着色成分を混合して構成するものである。
【0029】
インク受容層17に用いるポリマーとしては、透明であること、印刷したインク中の色材の定着性に優れること、また変色や褪色がないこと、諸耐性があることなどの性能が要求される。本発明におけるポリマーは、アクリル共重合体で構成し、これに使用するモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、メタクリル酸、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルピロリドンなどが挙げられる。これら任意のモノマーを任意の比率で重合することで、アクリル共重合体が得られる。
【0030】
インク受容層17に用いる溶剤としては、ポリマーを均一に溶解させることが要求される。使用する溶剤としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジクライム、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの一種または二種以上の混合溶剤を用いた10〜50重量%溶液の塗工液とし、80〜100℃程度の温度で乾燥可能な溶剤系が、インク受容層17の溶剤として好ましい。
【0031】
インク受容層17に用いる添加剤として、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、PH調整剤、消泡剤、防腐剤などを目的に応じて混合しても良い。
【0032】
本発明に用いるインク受容層17は、着色サブ画素15aの色とのコントラストを上げる役割があるため、着色サブ画素15aとは異なる色相に着色する。インク受容層17に着色する色の濃さは、着色サブ画素15aの色の濃さとのバランスをとる必要がある。例えば、白表示を無彩色にするためには、L*a*b*表色系における無彩色の点を中心にして、カラーフィルタ層15を非表示とした際の色相と対称となる色相にインク受容層17を着色する。但し、白表示を無彩色にする必要はなく、発色させたい色に応じてインク受容層17の色を適時調整すればよい。
【0033】
着色時に用いる材料として、有機顔料、無機顔料、染料などを問わず色素全般を使用することができる。そこ中でも有機顔料が好ましく、特に耐光性に優れる材料が望ましい。使用する顔料の具体例としては、Pigment Red9、19、38、43、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、215、216、208、216、217、220、223、224、226、227、228、240、Pigment Blue15、15:6、16、22、29、60、64、Pigment Green7、36、Pigment Red20、24、86、81、83、93、108、109、110、117、125、137、138、139、147、148、153、154、166、168、185、Pigment Orange36、Pigment Violet23などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、これらは要望の色相を得るために2種類以上を混合して用いても構わない。
【0034】
インク受容層17の厚みは、通常は1〜80μm程度、好ましくは2〜10μm程度である。インク受容層17の厚みを1μm以下にすると、インクの受容性が悪くなり、インクが保持されなくなる。一方で、インク受容層17の厚みが80μmを越えると、インク受容層17内での光の吸収によるロス、及び光を反射する電気泳動表示層13と着色サブ画素15aとの距離を広がることにより生じる視差の影響などにより、視認性が損なわれる。インク受容層17の形成は、上記の通り調整した塗工液を、支持体の少なくとも片面に、ダイコート、グラビアコート、ロールコート、ワイヤーバーコートなどの公知の手段によって塗工すればよい。
【0035】
カラーフィルタ層15は、インク受容層17の上に着色成分を付着させることで形成する。着色成分は何色を用いても良いが、色表示の際の明るさ及び色の濃さは、1画素中における着色サブ画素15aの割合及び膜厚を調節することで、制御することができる。着色サブ画素15aの割合が小さければ、明度が高くかつ彩度が低い表示となり、その逆に着色サブ画素15aの割合が大きければ、彩度が高くかつ明度が低い表示となる。しかし、着色サブ画素15aの割合が1/5を下回ると、色表示の際に十分な彩度を得ることが困難となり、また着色サブ画素15aの割合が1/2を上回ると、白表示の際に着色した色を打ち消すことが困難となる。従って、1画素中における着色サブ画素15aの割合は、1/5から1/2の間が好ましい。
【0036】
インク受容層17へのインク塗布方法としては、画素を区切るためのブラックマトリックスは形成されないので、各色の塗りわけが可能なスクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法などを用いることができる。特に、位置合わせが容易であり、生産性も高いことから、インクジェット印刷法を用いてインク受容層17にインクを吐出し、着色サブ画素15aを形成することが好ましい。
【0037】
インクジェット印刷法に用いる装置としては、インク吐出方法の相違によりピエゾ変換方式と熱変換方式とがあるが、ピエゾ変換方式の装置を用いることが望ましい。また、インクジェット印刷法に用いる装置において、インク粒子化周波数は5〜100kHz程度が望ましく、ノズル径は5〜80μm程度が望ましい。また、インクジェット印刷法に用いる装置は、ヘッドを複数個配置し、1ヘッドにノズルを60〜500個程度組み込んだものを用いることが好ましい。
【0038】
インクジェットに用いるインクは、着色材料、溶剤、バインダー樹脂、分散剤によって形成される。着色材料としては、本発明のインク受容層17に用いる材料の中から任意に選択し、使用できる。
【0039】
着色インクに使用する溶剤種としては、インクジェット印刷における適性の表面張力範囲35mN/m以下で、かつ、沸点が130℃以上のものが好ましい。表面張力が35mN/m以上であるとインクジェット吐出時のドット形状の安定性に著しい悪影響を及ぼし、また、沸点が130℃以下であるとノズル近傍での乾燥性が著しく高くなり、その結果、ノズル詰まりなどの不良発生を招くので好ましくない。具体的には、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、上記要件を満たす溶剤なら他のものを用いることができる。また、必要に応じて2種類以上の溶剤を混合して用いても構わない。
【0040】
着色インクの材料としては、カゼイン、ゼラチン、ポリビニールアルコール、カルボキシメチルアセタール、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂などが用いられ、色素との関係にて適宜選択されるものである。耐熱性や耐光性が要求される際には、アクリル樹脂が好ましいものである。
【0041】
インキの分散剤は、溶剤への顔料の分散性を向上させるために用いることができる。分散剤として、イオン性、非イオン性界面活性剤などを用いることができる。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ脂肪酸塩、脂肪酸塩アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどがあり、その他に有機顔料誘導体、ポリエステルなどが挙げられる。分散剤は、1種類を単独で使用してもよく、また、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
インキの粘度としては、1〜20mPa・sの範囲にあることが好ましく、5〜15mPa・sの範囲にあることが望ましい。インキの粘度が20mPa・sを超えると、インクジェット吐出時にインキが所定の位置に着弾しない不良や、ノズル詰りといった不良を招くおそれがある。一方、インキの粘度が1mPa・s未満である場合、インキを吐出する際に、インキが飛散するおそれがある。
【0043】
インクをインク受容層17に塗布後、乾燥および/または固化を実施する。乾燥手段および/または固化手段は、加熱、送風、減圧、光照射、電子線照射の何れかの方法またはその2種類以上の組み合わせによる。
【0044】
インクを乾燥および/または固化した後、カラーフィルタ層15の保護のため、保護層16を形成する。カラーフィルタ層15の保護層16は、着色パターン表面に、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル系、シリコーン系等の有機樹脂やSi
3N
4、SiO
2、SiO、Al
2O
3、Ta
2O
3などの無機膜を、スピンコート、ロールコート、印刷法の塗布法で、あるいは蒸着法によって、形成することができる。
【0045】
2.反射型カラーディスプレイの動作原理
次に、
図1に示す電気泳動方式の反射型カラーディスプレイの動作原理について説明する。
【0046】
画素電極11に電圧を印加すると、電気泳動表示層13内にあるマイクロカプセルにかかる電界が変化する。画素電極11が正極のときは、マイクロカプセル内の負に帯電している粒子が画素電極11側に移動し、正に帯電している粒子が透明電極層14側に移動する。画素電極11が負極のときは、マイクロカプセル内の正に帯電している粒子が画素電極11側に移動し、負に帯電している粒子が透明電極層14側に移動する。
【0047】
例えば、黒色粒子が正に白色粒子が負にそれぞれ帯電している場合に、画素電極11を負極とすると、
図1に示すように、正に帯電している黒色粒子が画素電極11側に移動し、負に帯電している白色粒子が透明電極層14側に移動する。この場合、全ての光は表面に白色粒子が存在するマイクロカプセルで反射し、カラーフィルタ層15を透過した光をディスプレイ表面で観察することができる。
【0048】
図2は、上述した動作原理に基づく、本実施形態に係る反射型カラーディスプレイによる色表示を説明するために必要な構成を透過的に示した概略図である。
図2に示す反射型カラーディスプレイは、白黒表示の電気泳動表示層13の上に、例えば、赤色を打ち消すための補色(薄いシアン色)に着色されたインク受容層17と、赤に着色された着色サブ画素15aおよび透明樹脂からなる透明サブ画素15bが形成されたカラーフィルタ層15を配置した構成を有する。カラーフィルタ層15は、4つのサブ画素で1画素を構成する。
【0049】
また、
図2(a)は、電気泳動表示層13の赤の着色サブ画素15aに対応する部分を黒表示し、残る3つの透明サブ画素15bに対応する部分を白表示している場合を示す。
図2(b)は、電気泳動表示層13の赤の着色サブ画素15aに対応する部分を白表示し、残る3つの透明サブ画素15bに対応する部分を黒表示している場合を示す。
【0050】
図2(a)に示す場合では、電気泳動表示層13の着色サブ画素15aに対応する部分を黒表示しているため、インク受容層17の薄いシアン色と透明サブ画素15bを透過した光との混色で表現されるので、原理上、ディスプレイは薄いシアン色となる。しかしながら、実際には着色サブ画素15a上での表面反射による色付きや、黒表示とはいえ、僅かに反射する光の影響から確認される淡い赤色も混ざった光の混色として視認される。このとき、シアン色と赤色が補色関係にあるため、シアンの色濃度と赤の色濃度とを適切に調節すればお互いに色を打ち消し合い、自然な白色(無彩色)として表現される。
【0051】
一方、
図2(b)に示す場合では、着色サブ画素15aに対応する部分のみが白表示であるため、カラーフィルタ層15を透過するほとんどの光は着色サブ画素15aを透過することとなり、ディスプレイには赤色が表示される。
【0052】
また、電気泳動表示層13の全てを黒表示とすると(図示せず)、カラーフィルタ層15を透過して観察される光は存在しないため、ディスプレイは黒表示となる。
【0053】
なお、着色サブ画素15aは赤色に限らず、着色サブ画素15aの色とインク受容層17の色とに補色関係にある別の色を用いて、自然な白色を表現することも可能である。また、着色サブ画素15aの色とインク受容層17の色とは、補色関係であることは特に限定されない。例えば、着色サブ画素15aを緑色に、インク受容層17を赤色に着色した場合、赤と緑に加え、赤と緑の混色である黄色の合計3色を表現できる反射型カラーディスプレイを提供できる。
以下にその詳細を説明する。
【0054】
図2に示す構成で、着色サブ画素15aを緑に、インク受容層17を赤に着色した場合を考える。緑の着色サブ画素15aに対応する電気泳動表示層13のみを黒表示にすると、インク受容層17に着色された赤と、黒表示とはいえ、僅か反射する光が緑の着色サブ画素15aを透過して淡い緑との混色が表示される。このとき、インク受容層17に着色した赤の色濃度を調節すると、淡い緑よりも赤が強調される。結果として、赤色として視認される。
【0055】
一方、緑の着色サブ画素15aに対応する電気泳動表示層13のみを白表示にすると、ほとんどの光が着色サブ画素15aを通り、黒表示で反射する僅かな光が、赤のインク受容層17を透過して混色する。このとき、緑の着色サブ画素15aの色濃度を調整すると、赤のインク受容層17を透過する淡い赤よりも緑が強調される。結果として、緑色として視認される。
【0056】
さらに、全ての電気泳動表示層13を白表示にすると、緑の着色サブ画素15aを透過する光と赤のインク受容層17を透過する光とが混色する。このとき、着色サブ画素15aの緑およびインク受容層17の赤の色濃度をそれぞれ調整すると、緑と赤の混色、すなわち黄色として視認される。このように、1パネル自体で表現できる色は限られるものの、着色サブ画素15aとインク受容層17との色を適時選択することで、様々な色相の表現が可能となる。
【0057】
図3は、白、黒および任意1色の3色表示となる従来のモノカラーの反射型カラーディスプレイの必要な構成を透過的に示した概略図である。
図3に示す従来の反射型カラーディスプレイは、白黒表示の電気泳動表示層33の上に、例えば、赤に着色された着色サブ画素35aおよび透明樹脂または空隙からなる透明サブ画素35bが形成されたカラーフィルタ層35を配置した構成を有する。カラーフィルタ層35は、4つのサブ画素で1画素を構成する。
【0058】
図3(a)は、電気泳動表示層33の赤の着色サブ画素35aに対応する部分を黒表示し、残る3つの透明サブ画素35bに対応する部分を白表示している場合を示す。
図3(b)は、電気泳動表示層33の1画素に対応する部分の全てを白表示している場合を示す。
【0059】
図3(a)に示す場合では、電気泳動表示層33の着色サブ画素35aに対応する部分のみが黒表示であるため、カラーフィルタ層35を透過する光は、電気泳動表示層33の着色サブ画素35aに対応する部分では反射せず、残る透明サブ画素35bに対応する部分のみが反射される。これにより、ディスプレイには白色が表示される。
【0060】
一方、
図3(b)に示す場合では、電気泳動表示層33は1画素に対応する部分の全てが白表示であるため、カラーフィルタ層35を透過する光の全てが電気泳動表示層33で反射される。従って、反射された光のうち着色サブ画素35aを透過する光により、ディスプレイには赤色が表示される。
【0061】
上記従来の反射型カラーディスプレイの構成によると、
図3(b)において赤色を表示させる場合、着色サブ画素35aの濃度により赤彩度は所望の値を得ることができる。しかし、
図3(a)において白色を表示させる場合、着色サブ画素35aの表面での反射や、着色サブ画素35aに対応する部分が黒表示により、ほとんど反射しないが、僅かに反射する光によって白表示が淡い赤色に表示されてしまう。特に、着色サブ画素35aの濃度により、白表示時のホワイトバランスは異なり、赤彩度を得るため、着色サブ画素35aの着色部の濃度アップを図るほどに、白表示時のホワイトバランスは、赤側に色相ズレが生じ、表示コントラストが損なわれる。
【0062】
図4は、従来のフルカラーの反射型カラーディスプレイの必要な構成を透過的に示した概略図である。
図4に示す従来の反射型カラーディスプレイは、白黒表示の電気泳動表示層43の上に、例えば3原色である赤色、緑色、及び青の着色サブ画素45a、および透明樹脂または空隙からなる透明サブ画素35bを含むカラーフィルタ層45を配置した構成を有する。カラーフィルタ層45は、4つのサブ画素で1画素を構成する。
【0063】
図4(a)は、電気泳動表示層43の1画素に対応する部分の全てを白表示している場合を示す。
図4(b)は、電気泳動表示層43の赤の着色サブ画素45aに対応する部分を白表示し、残る3つのサブ画素に対応する部分を黒表示している場合を示す。
【0064】
図4(a)に示す場合では、電気泳動表示層43の1画素に対応する部分の全てが白表示であるため、カラーフィルタ層45を透過する光の全てが電気泳動表示層43で反射される。従って、反射された光のうち赤、緑、及び青の着色サブ画素45aをそれぞれ透過する光の混色により、ディスプレイには白色が表示される。
【0065】
一方、
図4(b)に示す場合では、電気泳動表示層43の赤の着色サブ画素45aに対応する部分のみが白表示であるため、カラーフィルタ層45を透過する光は、電気泳動表示層43の赤の着色サブ画素45aに対応する部分で反射して、着色サブ画素45aを透過し、残る3つのサブ画素に対応する部分では反射されない。このため、ディスプレイには赤色が表示される。
【0066】
本発明の反射型カラーディスプレイと従来の反射型カラーディスプレイ(
図4)とを比較すると、例えば白表示の際の有効画素は、従来の反射型カラーディスプレイではカラーフィルタ層45の全てのサブ画素を使用するのに対し、本発明の反射型カラーディスプレイではカラーフィルタ層15の赤の着色サブ画素15a以外のサブ画素を用いる。このため、本発明よりも従来のほうが有利である可能性も示唆される。しかしながら、実際は、従来の反射型カラーディスプレイでは着色部を有するサブ画素を多く含んでいるため、本発明の反射型カラーディスプレイに比べ、着色サブ画素15aの数が多く、透明サブ画素15bの数が少ないため、白表示の反射率が低くなる傾向がある。
【0067】
また、従来の反射型カラーディスプレイにおける、カラーフィルタ層45の色設計において、例えば、赤色彩度を変更する場合、白表示の際、赤の着色サブ画素45aは有効画素(表示部)であるため、ホワイトバランスに大きく影響を及ぼす。例えば、赤の着色サブ画素45aの濃度が高くなるほど、他の着色サブ画素45aについても濃度アップが必要となる。結果、赤色彩度を変更すると、大幅に白表示の反射率も変化し、パネルの表示特性として、各色の彩度改善(鮮やかさ)と白表示の反射率改善(明るさ)との両立は困難となる。
【0068】
なお、上記説明では本発明に係る反射型カラーディスプレイとして、電気泳動表示層13を用いた場合について述べたが、これに限定されるものではない。電気泳動表示層13の代わりに、電圧の印加などにより各サブ画素に対応する部分を黒表示または白表示にすることができる反射型表示層を備えていてもよい。また、カラーフィルタ層15を電気泳動表示層13に直接形成する方法について述べたが、予めカラーフィルタ層を形成したフィルムを電気泳動表示層13上に貼り合わせる方法を用いてもよい。
【0069】
3.反射型カラーディスプレイの実施例
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。しかしながら、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
<実施例1>
[
図1に示す構造を有する反射型カラーディスプレイの作製]
ポリエチレン樹脂で表面を被覆した平均粒径3μmの酸化チタン粉末(白色粒子)と、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドで表面処理した平均粒径4μmのカーボンブラック粉末(黒色粒子)とを、テトラクロロエチレンに分散し、分散液を得た。このとき、白色粒子を負に帯電させ、黒色粒子を正に帯電させた。
【0071】
上記で得た分散液をO/Wエマルジョン化し、ゼラチン−アラビアゴムによるコンプレックス・コアセルベ一ション法によりマイクロカプセルを形成することで、分散液をマイクロカプセル中に封入した。このようにして得られたマイクロカプセルを篩い分けして、平均粒径が60μm、50〜70μmの粒径のマイクロカプセルの割合が50%以上になるように、粒径をそろえた。
【0072】
次に、固形分40質量%のマイクロカプセルの水分散液を調製した。この水分散液と、固形分25質量%のウレタン系バインダー(CP−7050、大日本インキ株式会社製)と、界面活性剤、増粘剤と、純水を混合し、電気泳動層形成用塗液を作製した。この塗液を、表面にITO(酸化インジウムスズ)からなる画素電極11が形成された、例えばガラスからなる基板10の上に塗布し、電気泳動表示層13を形成した。形成した電気泳動表示層13の上にITOからなる透明電極層14を形成した。
【0073】
受容層ポリマーの合成は、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた4つフラスコ内に、メチルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部、ビニルピロリドン60部を導入し、さらにイソプロピルアルコール240部、水160部を加えて均一溶解し、油浴上で窒素雰囲気下攪拌した。これに0.5gのα、α‘−アゾビスイソブチロニトリルを添加することで重合を開始し、60℃の油浴上で6時間加熱攪拌を続けて、無色、粘張なポリマー溶液を得た。
【0074】
このポリマー溶液100gとシアン顔料ペースト1gを混練した受容層塗液を電気泳動表示基板上にアプリケータで乾燥後8μmとなるように塗布し、80℃で5分間乾燥を行い、インク受容層17を形成した。
【0075】
このインク受容層17に対し、インクジェット法による印刷でカラーフィルタ層15を形成した。このとき、位置合わせを行い、画素電極11に対応する位置にサブ画素を形成した。カラーフィルタ層15は、
図2に示すように、着色サブ画素15aと透明サブ画素15bとで構成した。着色サブ画素15aの面積が1サブ画素に占める割合は85%であった。最後に、カラーフィルタ層15上に保護層16を形成して、反射型カラーディスプレイを作製した。
【0076】
以上のようにして作製した反射型カラーディスプレイを白表示及び赤表示した際の白表示特性(反射率、色相)および赤表示特性(彩度)の測定を行った。なお、彩度はL*a*b*表色計にて表現される(c*=((a*)
2+(b*)
2)
1/2)を示す。測定は、分光色差計(日本電色工業株式会社製「SE6000」、測定スポット径:φ=6mm)を用いて測定し、D65光源での反射測定にて実施した。
【0077】
測定の結果、白表示時の表示特性は、反射率r=20.5、色相(a*、b*)=(−3、−1)を示した。また、赤表示時の表示特性は、彩度(c*)=25.2を示した。このよに、明るくきれいな白表示を示し、かつ鮮やかな赤表示が可能な反射型カラーディスプレイを得た。
【0078】
<実施例2>
インク受容層17を赤色に、カラーフィルタ層15の着色サブ画素15aを緑色にそれぞれ着色し、インクの濃度調整を行った反射型カラーディスプレイを、実施例1と同様の手順で作製した。この反射型カラーディスプレイについて、実施例1と同様に各表示特性(色相、彩度)の測定を行った。
【0079】
測定の結果、緑の着色サブ画素15aに対応する電気泳動表示層13のみを黒(赤表示)した場合の表示特性は、色相(a*、b*)=(10.7、5.1)で、彩度(c*)=11.8を示した。また、全ての電気泳動表示層13を白(黄)表示した場合の表示特性は、色相(a*、b*)=(0.3、7.2)で彩度(c*)=7.2を示した。さらに、緑の着色サブ画素15aに対応する電気泳動表示層13のみを白(緑)表示した場合の表示特性は、色相(a*、b*)=(−9.5、6.1)で彩度(c*)=11.3を示した。このように、3色の色表現ができる反射型カラーディスプレイを得た。
【0080】
<比較例1>
図3に示す従来の反射型カラーディスプレイを実施例1と同様の手順で作製した。この従来の反射型カラーディスプレイについて、実施例1と同様に白表示特性(反射率、色相)および赤色表示特性(彩度)の測定を行った。
【0081】
測定の結果、白表示時の表示特性は、反射率r=24.5、色相(a*、b*)=(3、1)を示し、赤表示時の表示特性は、彩度(c*)=13.5を示した。この従来の測定結果は、本発明の測定結果(実施例1)と比較して、赤表示時の彩度は同様の値を得たが、白表示時の色相が淡い赤色を帯びてしまい、きれいな白表示は得られなかった。
【0082】
<比較例2>
図4に示す従来の反射型カラーディスプレイを、実施例1と同様の手順で作製した。このとき、赤色、緑色、および青色ともに、サブ画素に対する着色部の面積比は70%であった。この従来の反射型カラーディスプレイについて、実施例1と同様に白表示特性(反射率、色相)および赤色表示特性(彩度)の測定を行った。
【0083】
測定の結果、赤表示時の表示特性は、(a*、b*)=(6.1、3,6)(彩度(c*)=7.1を示し、黄表示時の表示特性は(a*、b*)=(0.2、5,6)(彩度(c*)=5.6を示し、緑表示時の表示特性は(a*、b*)=(−5.2、4,6)(彩度(c*)=6.9を示した。この従来の測定結果は、本発明の測定結果(実施例2)と比較して、彩度が十分ではなく、全体的にくすんだ表示となった。
【0084】
以上のように、本発明の一実施形態に係る電気泳動式の反射型カラーディスプレイ(実施例1)によれば、従来のモノカラーの反射型カラーディスプレイ(比較例1)に比べ、きれいな白表示を得つつ、鮮やかな赤表示を可能とした。
【0085】
また、本発明の一実施形態に係る電気泳動式の反射型カラーディスプレイ(実施例2)によれば、従来のフルカラーの反射型カラーディスプレイ(比較例2)に比べ、発色できる色相は限られるものの、鮮やかな色表示を可能とした。