(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の空気室と、前記第1の空気室と音通孔を介して連通する第2の空気室と、一端側が前記第2の空気室内に開口し他端側が外部空間に開口したダクトと、を有する本体部と、
前記本体部に、軸線の一方側への出力音が外部空間に直接放出されるよう配置された第1のドライバユニットと、
前記本体部に、出力音が前記第1の空気室に放出されるよう配置された第2のドライバユニットと、
を備え、
前記第2の空気室は、前記第1のドライバユニットに対する径方向外側に設けられ、前記第1の空気室は、前記第2の空気室に対する径方向外側にリング状の空間を形成するよう設けられている音放出装置。
第1の空気室と、前記第1の空気室と音通孔を介して連通する第2の空気室と、一端側が前記第2の空気室内に開口し他端側が外部空間に開口したダクトと、を有する本体部と、
前記本体部に、軸線の一方側への出力音が外部空間に直接放出されるよう配置された第1のドライバユニットと、
前記本体部に、出力音が前記第1の空気室に放出されるよう配置された第2のドライバユニットと、
を備え、
前記第2の空気室は、前記第1のドライバユニットに対する径方向外側の前記第1の空気室に対する前記軸線の一方側において、前記軸線を取り囲んで設けられている音放出装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る音放出装置及びヘッドホンを、好ましい実施例により
図1〜
図17を参照して説明する。
【0015】
(実施例)
実施例の音放出装置HSの構造である本体部構造K1は、例えばヘッドホン51に備えられた音放出装置HSである本体部1,2に適用されている。始めに、このヘッドホン51について、
図1を参照して説明する。
図1は、ヘッドホン51の外観を示す斜視図である。
ヘッドホン51は、オーバーヘッドタイプであり、左耳用の本体部1と、右耳用の本体部2と、本体部1と本体部2とを連結し、使用時に頭部に掛け渡されるヘッドバンド3と、を有している。
本体部1からは、外部の音声出力装置に接続するためのコード4が引き出されている。
本体部1と本体部2とは、基本的に同じ構造を有しているので、以下の説明では代表として本体部1について説明する。また、以下の説明における本体部1の上下左右前後の各方向は、装着状態ではなく、音の出力方向を基準に、その方向を前方として
図1に矢印で示される方向で規定する。
【0016】
次に、本体部1の構造(本体部構造K1)について、
図1〜
図5を参照して詳述する。
図2は、本体部1を
図1のS1−S1位置での水平(左右前後)面により切断して下方から見た図であり、
図3は、
図1のS2−S2位置において上半分を鉛直(上下前後)面で切断し、下半分を鉛直面から角度θ1(
図9参照)傾斜した面で切断した図である。
図4は、本体部1(本体ケース11及びオーナメント12を除く)の斜視的分解図である。
図5は、本体部1を三つの主要パートに分解した斜視的分解図である。
【0017】
本体部1は、前方側が開口し後方側が略階段状に小径とされたカップ状の本体ケース11と、本体ケース11における後方部位に外嵌されるように取り付けられたリング状のオーナメント12と、本体ケース11の前方側の開口を塞ぐように取り付けられたバッフル板13と、バッフル板13のフランジ部13aに着脱可能に取り付けられたイヤーパッド14と、を有している。
本体ケース11は、開口側となる環状の開口側壁部11aと、開口側壁部11aに連結した小径環状なる中間壁部11bと、開口側の反対側を塞ぐ底壁部11cと、を有している。
本体部1は、本体ケース11における上方側の部位にヘッドバンド3の一端部側が連結される連結部1Jを有している。この連結において、本体部1は、ヘッドバンド3に対し、所定の回動範囲内で左右方向及び上下方向の首振りが可能となっている。
【0018】
バッフル板13の後方面13bには、環状の周壁部13cが後方に向け立設されている。
周壁部13cの内側には、振動板DU1aを有するスピーカとして、ドライバユニットDU1が接着等により固定されている。この例では、ドライバユニットDU1は、扁平の円盤状であり、周壁部13cも円環状に形成されている。
バッフル板13において、振動板DU1aと概ね対向する範囲には、振動板DU1aの振動により生じた音を外部に放出させるため、複数の小さな放音孔が集合形成された放音部13dが設けられている。
【0019】
また、バッフル板13における周壁部13cよりも外側の領域には、一対の貫通孔13e1,13e2からなるダクト放音部13eが形成されている。この一対の貫通孔13e1,13e2には、それぞれ後述するダクト体19,20のダクトジョイント21が接続される。
バッフル板13の後方面13bには、周壁部13cを取り囲んで覆うように略カップ状のカバー15がシールリング17を挟んで取り付けられている。
シールリング17は、弾力性を有し実質的に非通気性なる材料で形成されている。材料例は発泡ウレタンである。
カバー15は、その端部がシールリング17に押し付けられてバッフル板13との間が封止されるように取り付けられている。これにより、カバー15の内面とバッフル板13の後方面13bとドライバユニットDU1の後面とに囲まれた空間V1は、密閉状態になっている。この空間V1を形成する部屋を空気室VA1と称する。
【0020】
バッフル板13の後方面13bには、カバー15を取り囲んで覆うように、略筒状のドライバベース16がシールリング17を挟んで取り付けられている。
【0021】
ここでドライバベース16を
図6及び
図7を主に参照して説明する。
図6は、ドライバベース16の三面図であり、
図6(a)が後面図、
図6(b)が左側面図、
図6(c)が上面図である。また、
図7は斜視図であり、本体部1として組み付けられた状態での、後方斜め右上方向から見た図である。
【0022】
ドライバベース16は、この例において略円環状に形成されている。ドライバベース16は、円環状の基部16aと、基部16aにおける後方側に形成された径方向外方に張り出すフランジ部16bと、を有している。
基部16aには、内外を連通する開口部16cが形成されている。この例では、開口部16cとして三つの開口部16c1〜16c3が形成されている。
具体的には、開口部16c1が上方側に設けられ、開口部16c2と開口部16c3とが、開口部16c1に対して周方向に90°ずれた位置に設けられている。また、この例では、三つの開口部16cは、互いに等しい直径Daの丸孔として設けられている。
基部16aにおける下前方側には、所定の角度範囲で内側に向け弧状に陥没するように凹部16dが形成されている。この凹部16dの陥没したスペースには、ダクトジョイント21が収まるようになっている。
【0023】
図2〜
図5に戻り、ドライバベース16の外側には、環状のシリンダ18が嵌め込まれている。具体的には、シリンダ18は、接着剤等によりドライバベース16に対し、できるだけ隙間が生じないように固着されている。
シリンダ18には、ドライバベース16の開口部16c1〜16c3に対応する位置に開口部16c1〜16c3とそれぞれ同じ形状の開口部18c1〜18c3が形成されている。以下、特に注記がない場合に、開口部16c1〜16c3は、それぞれ便宜的に開口部18c1〜18c3を含めて開口した部位を意味する。
【0024】
本体部1において、ドライバベース16のフランジ部16bが形成されている部分の内周面には、振動板DU2aを有するスピーカとして、ドライバユニットDU2が接着等により固定されている。
ドライバベース16は、前端部がシールリング17に押し付けられてバッフル板13との間が封止されるように取り付けられている。
ドライバベース16にドライバユニットDU2が固定されることで、ドライバユニットDU2と、ドライバベース16と、カバー15と、バッフル板13と、で囲まれる空間V2は、開口部16c以外は密閉されている。この空間V2を形成する部屋を空気室VA2と称する。
また、ドライバベース16の後端部は、本体ケース11の中間壁部11bの内面に接着剤等により固着されている。
これにより、ドライバユニットDU2の後面側部位と、本体ケース11の内面とで囲まれた空間V4は、密閉されている。空間V4を形成する部屋を空気室VA4と称する。
【0025】
本体ケース11とバッフル板13とは、本体ケース11の開口側壁部11aの先端部がバッフル板13に接着等で固定されている。
【0026】
本体ケース11,バッフル板13,カバー15,及びドライバベース16は、例えば熱可塑性樹脂材で形成される。樹脂材料の例は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)である。材料は樹脂に限定されず、例えば金属等で形成されていてもよい。
オーナメント12は、意匠的な観点から金属材料で形成されるのが望ましい。材料例は、アルミニウムである。
シリンダ18は、例えば、ドライバベース16と比較して比重の大きい材料で形成されるのが望ましい。例えば、真鍮やステンレス等である。
【0027】
実施例の本体部構造K1では、ドライバユニットDU2は、扁平の円盤状で、振動板DU2aを含む可動部分の直径がドライバユニットDU1の振動板DU1aを含む可動部分の直径よりも大きいものが採用されている。
また、
図2に示されるように、ドライバユニットDU2は、イヤーパッド14の外形形状から径方向外方(上下左右方向)にはみ出さないように、大きさや配置位置が設定されている。
この例では、イヤーパッド14の後方視での外形形状は略円形であり、
図2に示されるように、イヤーパッド14の外径DcとドライバユニットDU2の外径Dbとの関係は、Db<Dc とされている。
また、デザイン上、本体ケース11の開口側壁部11aの外側面11a1の最外位置の形状ラインは、イヤーパッド14の外側面の形状ラインと概ね等しくなるように設定されている。
イヤーパッド14は、ヘッドホン51の装着状態で、使用者の耳介を取り囲んで頭部に当接するドーナッツ状の耳当て部14aと、バッフル板13の前面13fをその直前で覆う薄いメッシュからなる目隠し部14bと、を有している。目隠し部14bは、放出する音の音量及び音質に影響を及ぼすものではなく、
図1以外の図では不図示としている。
【0028】
これにより、ドライバベース16と本体ケース11との間には、ドーナッツ状又はドーナッツ状の一部としての弧状に空間V3が形成可能になっている。
実施例においては、概ね一周分、すなわち、ほぼドーナッツ状に一つの空間V3が形成されている。
具体的には、空間V3は、本体ケース11の内面11dと、ドライバベース16の外周面16eと、シリンダ18を有する場合はその外周面18aと、バッフル板13の後方面13bと、により囲まれて形成されている。この空間V3を形成する部屋を空気室VA3と称する。
【0029】
空気室VA3内の空間V3と空気室VA2内の空間V2とは、開口部16cのみで連通されている。一方、空気室VA3内の空間V3と外部空間V5とは、ダクト部DTにより連通している。
実施例の本体部構造K1において、ダクト部DTは、弧状に形成された一対の弧管状のダクト体19,20で構成されている。
本体部構造K1において、ダクト体19とダクト体20とは、面対称なる形状及びレイアウトで形成及び配置されている。
空間V2と空間V3との容積の大小は限定されない。例えば、空間V3の容積の方が空間V2の容積よりも大きくなるように空気室VA2及び空気室VA3の形状を決定する。
【0030】
ここで、ダクト体19,20について
図4を主に参照して詳述する。
ダクト体19は、貫通孔19a1(
図9参照)を有する弧状のチューブである基部19aと、基部19aの一端側に取り付けられて貫通孔19a1内を流通する空気の流れの向きを90°転換するダクトジョイント21と、を有している。
ダクト体20も、同様に、基部20aとダクトジョイント21とを有している。
基部19a,20aの一端側には、基部19a,20aの曲率中心側に折れ曲がって直状となっている直状部19a2,20a2が形成されている。この直状部19a2,20a2の先端にそれぞれダクトジョイント21が取り付けられている。この取り付けは、強嵌合による嵌着や接着剤による固着等で行われる。
【0031】
基部19a,20aは、例えば横断面の外形形状が円形を呈するように形成されている。材料は限定されず、例えば、樹脂、ゴム、金属などで形成することができる。具体例はシリコーンゴムである。
ダクトジョイント21は、熱可塑性樹脂の射出成形により形成されている。樹脂材料例は、PP(ポリプロピレン)である。
【0032】
ダクトジョイント21は、
図8に示されるように、略円筒状の本体21aからなり、本体21aの側面から突出するジョイント部21cと、本体21aの内部において概ね90°屈曲する空気通路である貫通孔21bと、本体21aの一端面から突出する段付き部21eと、を有して形成されている。
貫通孔21bの一端側は、ジョイント部21cの先端面に開口している。また、他端側は、段付き部21eの先端面に出口21dとして開口している。
ダクト体19は、、基部19aにおける直状部19a2の貫通孔19a1にジョイント部21cを嵌め込むことで形成される。これにより、貫通孔19a1は、本体21aの空気通路である貫通孔21bに連通すると共に、その向きが90°偏向して出口21dに至る通路となる。
ダクト体20も同様構造を有する。
【0033】
ダクト部DTであるダクト体19,20は、空間V3内に配置される。この配置について、
図9及び
図10も参照して説明する。
図9は、ヘッドバンド3の一部と本体部1とを示す後面図であり、本体ケース11,オーナメント12,ドライバユニットDU2,及びドライバベース16を取り外した状態で示されている。
図10は、ヘッドホン51から本体部2を除外したヘッドバンド3と本体部1とのみを示す斜視図である。また、本体部1に関しては、イヤーパッド14及びバッフル板13を取り外した状態で示されている。
【0034】
ダクト体19,20は、ドライバベース16の外周壁に沿うように(シリンダ18を備えている場合は、シリンダ18の外周面18aに沿うように)配置されている。ダクト体19,20は、ドライバベース16の外周面16e(シリンダ18を備えている場合は、シリンダ18の外周面18a)に接触していても、接触していなくてもよい。
詳しくは、ダクト体19,20は、例えばドライバベース16の中心軸線CL16を通る上下前後平面に対し面対称に配置されている。
この配置において、ダクト体19,20は、バッフル板13と本体ケース11から突出したリブ11eとの間に収められ保持される。
本体部構造K1において、中心軸線CL16は、ドライバユニットDU2の駆動軸線CLDU2と一致するように設定されている。
この一致は限定されるものではなく、中心軸線16と、ドライバユニットDU1の駆動軸線CLDU1と、駆動軸線CLDU2と、は、互いに交差するものでもよい。ただし、すべて一致するか、又は互いに平行になっていると、本体部1の外形形状をよりコンパクトに設定することができる。
【0035】
図9及び
図10からも理解されるように、ダクト体19,20は、空間V3内に配置されると共に、この空間V3内に貫通孔19a1,20a1の一端側開口である入口19a3,20a3が開口している。また、他端側のダクトジョイント21の段付き部21eは、バッフル板13のダクト放音部13eに係合連結されている(
図3参照)。
すなわち、空間V3は、ダクト体19における貫通孔19a1及び貫通孔21bと、ダクト体20における貫通孔20a1及び貫通孔21bと、を介してのみ外部空間V5(
図3参照)と連通している。
従って、ドライバユニットDU2の前方側から出力された音は、空間V2、開口部16c、空間V3を順次通り、その後、ダクト体19とダクト体20との二つの経路のいずれかを経て外部空間V5に出力される。
【0036】
本体部構造K1における本体部1において、ダクト体19,20の入口19a3,20a3は、
図9に示されるように、上下方向に対してそれぞれ角度θ3,θ4だけ傾いた位置に設定されている。また、角度θ3と角度θ4とは等しく設定されている。
同じように、ダクト体19,20の各出口21dも、
図9及び
図10等から明らかなように、上下方向に対してそれぞれ角度θ1,θ2だけ傾いた位置に配置されている。また、角度θ1と角度θ2とは等しく設定されている。
【0037】
ドライバユニットDU1とドライバユニットDU2とは、コード4から入来する音声信号が同位相で並列に供給されるように配線されている。すなわちコード4は、ドライバユニットDU1,DU2に音声信号を供給する信号供給部として機能する。
【0038】
図9及び
図10には、他の図には示されていない円弧短冊状の基板22が示されている。
基板22は、ヘッドホン51において必ずしも備える必要はないが、ヘッドホン51を無線対応にする場合の無線受信回路、ノイズキャンセル対応にする場合の回路、スピーカネットワーク回路を必要とする場合の回路、などを搭載する場合に用いられる。基板22は、バッフル板13の後方面13bに固定される。
無線対応の場合、無線受信回路は、ドライバユニットDU1,DU2に音声信号を供給する信号供給部として機能する。
【0039】
以上詳述した本体部構造K1を、模式的に示した縦断面図が
図11である。
本体部構造K1は、二つのドライバユニットDU1,DU2を有する。
【0040】
ドライバユニットDU1は、振動板DU1aが前方側を向き、それを駆動する駆動系が振動板DU1aの後方側に配置された姿勢で装着されている。
振動板DU1aの振動により発生した音の内、一方側(前方側)へ放出される音S11のみが外部空間V5に放出されるようになっている。この音S11の外部空間V5への放出は空気室を経ずに直接行われる。すなわち、音S11は直接音として外部空間V5に放出される。
他方側(後方側)へ放出される音S12は空間V1に放出される。空間V1を形成する空気室VA1は密閉されているので、音S12は外部空間V5に放出されない。
【0041】
ドライバユニットDU2は、振動板DU2aが前方側を向き、それを駆動する駆動系が振動板DU2aの後方側に配置された姿勢で装着されている。
振動板DU2aの振動により発生した音の内、一方側へ放出される音S21のみが、直列に設けられた空気室VA2と空気室VA3とをこの順で通過し、空気室VA3において並列に設けられたダクト体19及びダクト体20から、それぞれ音S21A及び音S21Bとして外部空間V5に放出されるようになっている。すなわち、音S21は直接音ではなく空気室を通過した空気室通過音として外部空間V5に放出される。
空気室VA2及び空気室VA3は、音通孔である開口部16cを介して連接する空気室であって、音S11の進行順に言うならば、空気室VA2が一段目、空気室VA3が二段目となっている。
一方、他方側へ放出される音S22は空間V4に放出される。空間V4を形成する空気室VA4は密閉されているので、音S22は外部空間V5には放出されない。
【0042】
本体部構造K1において、空気室VA2は、ドライバベース16の中心軸線CL16を含む中央部分に設けられている。
一方、空気室VA3は、空気室VA2に対して径方向外側に、空気室VA2を例えば囲むように周方向に延在するように形成されている。
すなわち、空気室VA2と空気室VA3とは、径方向に並べて設けられている。
また、空気室VA3は、ドライバユニットDU1に対する径方向外側に設けられている。
ドライバユニットDU2から出力した音S21は、空間V2から開口部16cを径方向の内方から外方に向けて通過し、空間V3に進入するようになっている。
【0043】
空気室VA2と空気室VA3との間は、周方向に延在する壁であるドライバベース16の基部16a(シリンダ18を備える場合はシリンダ18も含む)で仕切られている。また、空気室VA2の空間V2と空気室VA3の空間V3とは、所定の開口面積を有する開口部16cで連通している。
開口部16cは、一つの開口でもよく、複数の開口でもよい。
本実施例では、開口部16cは、同形状の三つの開口部16c1〜16c3で構成されている。開口部16cの開口仕様(数、各開口面積、開口位置等)は、限定されず、適宜選択及び設定可能である。
【0044】
空間V3と外部空間V5とは、ダクト体19及びダクト体20で連通されている。ダクト体の仕様(数、各断面積、各長さ、各配置位置、材質等)は、限定されず、適宜選択可能である。
空間V2と空間V3とは、所謂ダブルバスレフ構造を構成している。従って、ダクト体19及びダクト体20から出力される音は、まず、高音域が抑制された中低音リッチの音となる。
【0045】
さらに、空気室VA2と空気室VA3とを一体的な空気室として捉えれば、この一体的空気室とダクト体19,20とにより所謂ケルトン型の音放出構造が構成されていると見なせる。
一般的に、ケルトン型の音放出構造は、空気室内に放出された音に対しローパスフィルタ的作用を施してダクトから放出するものである。そのため、本体部1においては、ダブルバスレフ型の作用とケルトン型の作用とが相乗作用として発揮される。
具体的には、ドライバユニットDU2の一方側から出力した音S21は、ダブルバスレフ型の音放出構造による中低音リッチ化作用とケルトン型の音放出構造による所望の周波数以上の音が急峻に減衰されるローパスフィルタ作用とにより、低音成分のみが効率よく抽出された低音リッチ化した音になって、ダクト体19及びダクト体20からそれぞれ音S21A,S21Bとして外部空間V5に放出する。
【0046】
また、ダクト体19及びダクト体20の出口であるダクト放音部13eは、ドライバユニットDU1の音S11が出力される面と同じ面であるバッフル板13の前面13fにおいて開口している。
これにより、ドライバユニットDU1からの音である音S11と、ドライバユニットDU2からのダブルバスレフ型及びケルトン型の音放出構造を経て出力される空気室通過音である低音リッチの音S21A,S21Bと、が、外部空間V5でもあるバッフル板13の前方空間V6において混合し、互いに補完した特性の出力音となる。
ヘッドホン51のユーザは、このようにして前方空間V6で混合した出力音を聴取する。以下、この出力音を聴取音STと称する。
【0047】
この本体部構造K1では、二つのドライバユニットDU1,DU2を、前後方向に並設し、後方側のドライバユニットDU2から放出された音S21を通過させる二つの空気室VA2,VA3を、径方向に並べて配置している。また、径方向外側の空気室VA3を周方向に延在する室として形成している。
これにより、本体部1は、空気室やダクトを外観上の突出部位にすることなく、可能な限りコンパクトに形成され得る。
【0048】
聴取音STの周波数特性は、搭載したドライバユニットDU1,DU2の再生周波数特性に依存したものになる。特に、ドライバユニットDU2からの音S21は、他の複数のパラメータにより所望の特性に調整することができる。すなわち、聴取音STを、低音域を主に調整して全体を所望の特性に設定することができる。
複数のパラメータは、例えば、空間V2,V3それぞれの容積及び形状等,開口部16cの数,各開口面積,及び各形状等、並びに、ダクト体19,20それぞれの断面積,形状等である。
ドライバユニットDU1のバックキャビティに相当する空間V1は、密閉されているので、振動板DU1aの背圧は、複数のパラメータを変えても変化せず、ドライバユニットDU1からの音S11の音質は変化せずに維持される。従って、聴取音STにおける低音域から高音域に至全体の音質調整作業を、容易に行うことができる。
【0049】
本体部構造K1は、例えば、ドライバユニットDU1として中高音域専用のスピーカを採用して、ドライバユニットDU1から直接音として放出される音S11により中高域の音を高品質化すると共に、ドライバユニットDU1ではカバーしていない低音域を、ドライバユニットDU2の選定及び複数のパラメータの設定で量感充分な特性にチューニングした音S21A,S21Bにより補完して、低域から高域まで高品質な聴取音STをユーザに提供することができる。
【0050】
また、本体部構造K1は、ドライバユニットDU1としてフルレンジの小径スピーカを採用した場合、ドライバユニットDU1から直接音として放出される音S11により低域から高域までの音を、基本的に高品質化すると共に、小径のドライバユニットDU1では不足傾向にある低音域を、振動板の径がドライバユニットDU1より例えば大きいドライバユニットDU2の選定をすることや、複数のパラメータの設定により、それを適切に補なう特性にチューニングした音S21A,S21Bにより補完して、低域から高域まで高品質な聴取音STをユーザに提供することができる。
【0051】
特許文献1に記載されたヘッドホンでは、本体部において、カバーにおける同一球面状の部位(バッフル板に相当)に複数のドライバユニットを配設しているので、低音用ドライバユニットであっても、他のドライバユニットと干渉しないような小径のドライバユニットしか配置することができない。
そのため、低音域の音量及び音質の改善という点では、その効果を期待し難い。逆に、大径の低音用ドライバユニットを採用すると、バッフル板に相当する部位が大きくなって本体部が大型化し、装着感が損なわれる虞がある。
これに対し、実施例のヘッドホン51では、ドライバユニットDU1の背面側にドライバユニットDU2を配置しているので、バッフル板が大きくならず、本体部が大型化することはない。従って、装着感が損なわれる虞はない。
【0052】
特許文献2に記載されたヘッドホンでは、振動板の背圧が、バスレフ構造として本体部に設ける空間(空気室)及びダクトの仕様(容積や形状等)に応じて変わる。すなわち、ドライバユニットから出力される直接音は、バスレフ構造として設ける空間(空気室)及びダクトの仕様に大きく依存する。
本体部に設けた空間(空気室)及びダクトは、外観上の突出部位となって本体部は大型化し、装着感が損なわれる虞がある。
これに対し、実施例のヘッドホン51において、ドライバユニットDU1から出力された直接音は、ドライバユニットDU2から出力された音の影響を受けず、空気室及びダクトの仕様に全く依存しない。
また、実施例のヘッドホン51は、空気室VA3が、ドライバユニットDU1に対する径方向外側に設けられ、空気室VA2と空気室VA3とが、径方向に並設されている。これにより、本体部1を極めてコンパクトに構成することができる。
このように、本体部構造K1及びそれを備えたヘッドホン51は、本体部1を大型化することなく、再生音を高品質にすることができる。
【0053】
(変形例1)
本体部構造K1は、変形例1として以下のような本体部構造K2としてもよい。
すなわち、ドライバユニットDU2からの音S21が通過する空気室VA2及び空気室VA3の配置を、径方向において逆にしてもよい。
図12は、変形例1の本体部構造K2を模式的に示した断面図である。
本体部構造K2は、本体部1A内に、本体部構造K1と同様に二つのドライバユニットDU1,DU2を有する。
【0054】
ドライバユニットDU1は、実施例と同様に、振動板DU1aが前方側を向いて配置され、振動板DU1aを駆動する駆動系は振動板DU1aの後方側に配置された姿勢で装着されている。
振動板DU1aの振動により発生した音の内、一方側へ放出される音S11のみが外部空間V5に放出されるようになっている。この音S11の外部空間V5への放出は空気室を経ずに直接行われる。すなわち、音S11は直接音として外部空間V5に放出される。
他方側へ放出される音S12は空間V21に放出される。空間V21を形成する空気室VA21は密閉されているので、音S12は外部空間V5に放出されない。
【0055】
ドライバユニットDU2は、実施例と同様に、振動板DU2aが前方側を向いて配置され、振動板DU2aを駆動する駆動系は振動板DU2aの後方側に配置された姿勢で装着されている。
振動板DU2aの振動により発生した音の内、一方側へ放出される音S21のみが、直列に設けられた空気室VA22と空気室VA23とをこの順で通過し、空気室VA23において並列に設けられたダクト体29a,29bからそれぞれ音S21C,S21Dとして外部空間V5に放出されるようになっている。すなわち、音S21は直接音ではなく空気室を通過した空気室通過音である音S21C,S21Dとして外部空間V5に放出される。
空気室VA22及び空気室VA23は、連接する空気室であって、音S11の進行順に言うならば、空気室VA22が一段目、空気室VA23が二段目となっている。
一方、他方側へ放出される音S22は空間V24に放出される。空間V24を形成する空気室VA24は密閉されているので、音S22は外部空間V5には放出されない。
【0056】
本体部構造K2において、空気室VA22は、ドライバユニットDU2の駆動軸線CLDU2を含みそれに直交する扁平の円柱状の空間V22aと、空間V22aの周縁側に連結して駆動軸線CLDU2に沿ってリング状に延出する空間V22bと、を形成するように設けられている。
一方、空気室VA23は、空間V22bの径方向内側に略ドーナッツ状の空間V23を形成するように設けられている。
すなわち、空気室VA22と空気室VA23とは、少なくとも空気室VA23が空気室VA22よりも径方向で内側となるように設けられている。
また、空気室VA23は、ドライバユニットDU1に対する径方向外側に設けられている。
【0057】
空気室VA22と空気室VA23との間は、駆動軸線CLDU2に直交する円板状の壁27aと壁27aの周縁に連結すると共に駆動軸線CLDU2まわりに円周面状に延在する壁27bとで仕切られている。
また、空気室VA22の空間V22と空気室VA23の空間V23とは、壁27bに設けられた、所定の開口面積を有する開口部26cで連通している。開口部26cの開口仕様(数、各開口面積、開口位置等)は、限定されず、適宜選択及び設定可能である。
ドライバユニットDU2から出力した音S21は、空間V22から開口部26cを径方向の外方から内方に向けて通過し、空間V23に進入するようになっている。
【0058】
(変形例2)
本体部構造K1は、変形例2として以下のような本体部構造K3としてもよい。
すなわち、ドライバユニットDU2からの音S21が通過する空気室VA32及び空気室VA33を、径方向ではなく、ドライバユニットDU2の駆動軸線CLDU2に沿う方向に並設してもよい。
【0059】
図13は、変形例2の本体部構造K3を模式的に示した断面図である。
本体部構造K3は、本体部1B内に、本体部構造K1と同様に二つのドライバユニットDU1,DU2を有する。
【0060】
ドライバユニットDU1は、実施例と同様に、振動板DU1aが前方側を向いて配置され、振動板DU1aを駆動する駆動系は振動板DU1aの後方側に配置された姿勢で装着されている。
そして、振動板DU1aの振動により発生した音の内、一方側へ放出される音S11のみが外部空間V5に放出されるようになっている。この音S11の外部空間V5への放出は空気室を経ずに直接行われる。すなわち、音S11は直接音として外部空間V5に放出される。
他方側へ放出される音S12は空間V31に放出される。空間V31を形成する空気室VA31は密閉されているので、音S12は外部空間V5に放出されない。
【0061】
ドライバユニットDU2は、実施例と同様に、振動板DU2aが前方側を向いて配置され、振動板DU2aを駆動する駆動系は振動板DU2aの後方側に配置された姿勢で装着されている。
そして、振動板DU2aの振動により発生した音の内、一方側へ放出される音S21のみが、直列に設けられた空気室VA32と空気室VA33とをこの順で通過し、空気室VA33において並列に設けられたダクト体39a,39bからそれぞれ音S21E,S21Fとして外部空間V5に放出されるようになっている。すなわち、音S21は直接音ではなく空気室を通過した空気室通過音である音S21E,S21Fとして外部空間V5に放出される。
空気室VA32及び空気室VA33は、連接する空気室であって、音S11の進行順に言うならば、空気室VA32が一段目、空気室VA33が二段目となっている。
一方、他方側へ放出される音S22は空間V34に放出される。空間V34を形成する空気室VA34は密閉されているので、音S22は外部空間V5には放出されない。
【0062】
本体部構造K3において、空気室VA32は、ドライバユニットDU2の駆動軸線CLDU2が直交して通過する扁平の円柱状の空間V32を形成するように設けられている。
一方、空気室VA33は、空間V32の前方側に、駆動軸線CLDU2を取り囲むドーナッツ状の空間V33を形成するように設けられている。
また、空気室VA33は、ドライバユニットDU1に対して径方向外側に設けられている。
【0063】
空気室VA32と空気室VA33との間は、駆動軸線CLDU2に直交する円板状の壁37で仕切られている。そして、空気室VA32の空間V32と空気室VA33の空間V33とは、壁37に設けられた、所定の開口面積を有する開口部36cで連通している。開口部36cの開口仕様(数、各開口面積、開口位置等)は、限定されず、適宜選択及び設定可能である。
ドライバユニットDU2から出力した音S21は、空間V32から開口部36cを駆動軸線CLDU2に沿って後方側から前方側に向けて通過し、空間V33に進入するようになっている。
【0064】
上述の変形例1の本体部構造K2及び変形例2の本体部構造K3において、ダクト体29a及びダクト体29b、並びに、ダクト体39a及びダクト体39bの出口は、ドライバユニットDU1の音S11が出力される面であるバッフル板13の前面13fに開口している。
これにより、ドライバユニットDU1からの直接音である音S11と、ドライバユニットDU2からのダブルバスレフ型及びケルトン型の音放出構造を経て出力される低音リッチの音S21C,S21D(変形例1)あるいは音S21E,S21F(変形例2)と、が、バッフル板13の前方空間V6において混合し、互いに補完した特性の聴取音STとなる。
【0065】
上述の変形例1の本体部構造K2及び変形例2の本体部構造K3によれば、本体部構造K1と同様に、空気室やダクトを外観上の突出部位にすることなく、可能な限りコンパクトに形成され得る。
【0066】
また、本体部構造K2及び本体部構造K3によれば、本体部構造K1と同様に、聴取音STの周波数特性は、搭載したドライバユニットDU1,DU2の再生周波数特性に応じたものになる。特に、ドライバユニットDU2から音S21は、他の複数のパラメータにより所望の特性に調整することができる。すなわち、聴取音STを、低音域を主に調整して全体を所望の特性に設定することができる。
【0067】
複数のパラメータは、例えば、空間V22,V23又は空間V32,V33それぞれの容積及び形状等,開口部26c又は開口部36cの数,各開口面積,及び各形状等、並びに、ダクト体29a,29b又はダクト体39a,39bそれぞれの断面積,形状等である。
【0068】
従って、変形例1の本体部構造K2及び変形例2の本体部構造K3は、本体部構造K1と同様に、本体部1A及び本体部1Bを大型化することなく、再生音である聴取音STを高品質にすることができる。
【0069】
図11〜
図13において、音S11,S12,S21,S22,S22A,S22Bを示す各矢印の大きさは、音量を反映するものではない。
【0070】
(変形例3)
実施例、並びに、変形例1及び変形例2における第1段目の空気室と第2段目の空気室とは、周方向に複数の空気室を有するように仕切られていてもよい。
この変形例3について、本体部構造K1を元の構造の代表例として説明すると、空気室VA3を、周方向に複数の小空気室に区切り、各小空気室それぞれにダクト体を備えるようにしてもよい。
【0071】
この変形例3の本体部構造K4について、
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は、
図11におけるS3−S3位置での断面図であり、
図15は、本体部構造K4における本体部1Cを、イヤーパッドを外した状態で前方側から見た概略図である。
【0072】
本体部構造K4において、本体部構造K1でドーナッツ状に形成された空気室VA3は、径方向に延びる複数の仕切り壁48により、周方向に所定間隔(ここでは約120°の等間隔)で区切られ、小空気室VA3a,VA3b,VA3cとされている。
空気室VA2の空間V2と各小空気室VA3a〜VA3cの空間V3a〜V3cとは、ドライバベース16の基部16aに形成された開口部46a1〜46a3によりそれぞれ連通されている。
また、小空気室VA3a〜VA3cには、それぞれダクト体49a〜49cが設けられている。各ダクト体49a〜49cは、同じ仕様で形成されるものに限らず互いに異なる仕様とされていてもよい。
また、ダクト体49a〜49cは、その入口49a3〜49c3の開口向きが周方向で同じ方向を向く配置に限定されず、異なる方向を向くように配置されていてもよい。
【0073】
この本体部構造K4における本体部1Cの放音側(前方側)のレイアウトの概略が
図15に示されている。
図15において、バッフル板13に相当するバッフル板43の中央に、振動板DU1aを有するドライバユニットDU1が配置され、振動板DU1aの周囲に、ドライバユニットDU2からダクト体49a〜49cを通過した音が出力されるダクト放音部43eが、例えば同心円上に等角度間隔で貫通孔43e1〜43e3として開口するように設けられている。
【0074】
この変形例3で示される小空気室を設ける構造は、聴取音STの特性を最適化するための構造の一つであり、この構造を適用しても本体部1Cが大型化することはない。
【0075】
本発明の各実施例及び各変形例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において別の変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0076】
例えば実施例において、ダクト体19,20として第2段目に設けられるダクト体の数は、二つに限らない。一つでも、三つ以上であってもよい。
また、複数のダクト体を同じ仕様とした場合に、ダクト体の貫通孔の入口の位置は、第1段目の空気室と第2段目の空気室とを繋ぐ開口部の位置からの距離に所定の関係を持たせて設定するとよい。
具体例を、実施例の本体部構造K1を代表として、
図16を参照して説明する。
【0077】
図16は、ドライバベース16の基部16aにおいて周方向に離隔して形成された開口部16c1〜16c3を、周方向を左右方向の直線状に展開した図である。
図16には、ダクト体19,20も、開口部16c1〜16c3と周方向の位置を対応づけて、模式的に示してある。
【0078】
図16に示されるように、第1段目の空気室VA2と第2段目の空気室VA3との間の三つの開口部16c1〜16c3それぞれの開口位置から、ダクト体19の貫通孔19a1の入口19a3の位置までの空間距離をそれぞれ距離LAp(p:1〜3の整数)とし、ダクト体20の貫通孔20a1の入口20a3との位置までの空間距離をそれぞれ距離LBq(q:1〜3の整数)とする。
この場合に、各距離LApに等しいLBqが、必ず一対一で存在するようにするとよい。この関係の前提条件として、ドライバユニットDU2の駆動中心から各開口部16c1〜16c3までの距離が概ね等しくなっていることが必要である。
この前提条件は、本体部構造K1において、各開口部16c1〜16c3が、ドライバユニットDU2の駆動軸線CLDU2を軸心とするドライバベース16において、その円周に相当する基部16aに設けられていることにより満たされている。
【0079】
各距離の関係は、
図16に示されるように、距離LA1と距離LB1とが等しく、距離LA2と距離LB3とが等しく、距離LA3と距離LB2とが等しくなっている。
この関係を満たすために、開口部16c1を通る周方向(
図16の左右方向)に直交する中心線CL13に対して、他の開口部16c2及び入口19a3と、他の開口部16c3及び入口20a3と、が対称に配置されている。
【0080】
この対称配置により、各開口部16c1〜16c3を通過した音S21の、入口19a3に到達した時点での位相と入口20a3に到達した時点での位相とが合致する。
従って、ダクト体19のダクトジョイント21の出口21dから外部空間V5に放出される音S21Aと、ダクト体20のダクトジョイント21の出口21dから外部空間V5に出力される音のダクトジョイント21の出口21dから外部空間V5に出力される音S21Bとは、位相が揃った音になり、聴取音STはより高品質になる。
開口部の数又はダクト体の数が異なる場合も、この考え方を適用することができ、その場合も聴取音STは同様に高品質になる。
【0081】
第1段目の空気室VA2と第2段目の空気室VA3とを連通させる開口部16cは、いわゆるダブルバスレフのダクトに相当する。従って、ダクトとしてその長さは実施例等で説明した基部16aの板厚(シリンダ18を有する場合はその板厚も含む)とするものに限定されない。すなわち、開口部16cとして任意の長さ及び開口面積等のダクトを設けてもよい。
【0082】
シリンダ18は、完全に繋がったリング状でなくてもよい。シリンダ18は、一部にスリットを有する略C字状のリング部材として、あるいは弧状の部材として形成されていてもよい。
ただし、ドライバユニットDU2の動作に伴うドライバベース16の振動は、ドライバべース16の基部16aの径を拡縮させる振動であるから、振動抑制の観点では、シリンダ18は、完全に繋がったリング状であって、ドライバベース16の基部16aの径の拡縮変形を抑制できるものが望ましい。
【0083】
本体部構造K1〜K4において、ドライバユニットDU2を、説明した姿勢と逆の姿勢、すなわち、振動板DU2aが後方側、その駆動系が前方側を向く姿勢で配置してもよい。この場合、ドライバユニットDU2に入力される音声信号がドライバユニットDU2へ入力される音声信号に対して逆位相となるように配線する。
また、ドライバユニットDU2をこの逆の姿勢、すなわち、音S21が後方側へ出力される姿勢で配置し、その音S21を多段の空気室及びダクト部を介して前方空間V6へ放出するように、多段の空気室のレイアウトを本体部構造K1〜K4に基づいて設定してもよい。
この場合は、ドライバユニットDU2に入力される音声信号がドライバユニットDU2へ入力される音声信号と同位相となるように配線する。
【0084】
音放出装置HSは、上述のオーバーヘッドタイプのヘッドホン51に限らず、種々のタイプのヘッドホンに用いることができる。
例えば、
図17(a)に示されるようなインナーイヤータイプのヘッドホン51Aの本体部51Aaとしても、また、
図17(b)に示されるような耳掛け部51Baを備えた耳掛けタイプのヘッドホン51Bの本体部51Bbとしても、適用可能である。
また、音放出装置HSは、ヘッドホンに限らず、
図17(c)に示されるような、PC(パーソナルコンピュータ),携帯音楽再生装置,又は携帯電話等の音声信号を出力可能な装置KTを接続し、その装置KTからの音声信号を左右両耳に空間伝播して到達する音として放出するためのスピーカ装置等の音響再生装置52にも搭載することができる。
【0085】
実施例及び各変形例における各空間は、完全に密閉されていなくてもよく、振動板DU1a,DU2aの駆動を良くするために、隣接する空間同士が微小の隙間で連通していてもよい。
【0086】
上述の実施例及び各変形例は、可能な範囲で互いに自由に組み合わせることができる。