(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)、ディジタルカメラ等の携帯用電子機器には、電子機器内部のシステムを制御するためマイクロプロセッサが設けられており、マイクロプロセッサは温度や電池の電圧等を監視して制御を行っている。そのため、電子機器には温度や電池の電圧等を検出するセンサが設けられ、マイクロプロセッサには、これらのセンサからのアナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータを内蔵するものが用いられることが多い。また、マイクロプロセッサなどに内蔵されるADコンバータでは、回路規模が小さなものが望まれ、そのようなADコンバータとして、逐次比較型AD変換器が知られている。
【0003】
図18に従来の逐次比較型AD変換器の一例の回路構成図を示す。
図18において、入力端子10にはアナログ電圧Vinが入来する。サンプル・ホールド回路11は基準電圧Vrefを基準として、アナログ入力電圧VinとDAコンバータ14の出力電圧の差電圧をサンプル・ホールドする。
【0004】
ダイナミック・ラッチ・コンパレータ12はサンプル・ホールド回路11の出力電圧を基準電圧Vrefと比較してアナログ電圧VinとDAコンバータ14の出力電圧の大小を比較した比較結果を出力し、比較結果は逐次比較レジスタ及び演算部13に供給される。逐次比較レジスタ及び演算部13はダイナミック・ラッチ・コンパレータ12から供給される比較結果に基づいて、次のDA変換用データを生成してDAコンバータ14に供給する。また、最終的な変換結果であるデジタルデータを出力回路16に供給する。
【0005】
制御回路15はクロック及び変換開始指示を供給され、タイミング信号φ1,φ2,φ3を生成してサンプル・ホールド回路11、ダイナミック・ラッチ・コンパレータ12に供給し、スタート,エンドなどの制御信号を生成して逐次比較レジスタ及び演算部13に供給する。出力回路16は最終的な変換結果のデジタルデータを出力する。
【0006】
まず、タイミング信号φ1=1,φ2=0とし、サンプル・ホールド回路11のスイッチSW1,SW3をオンさせ、スイッチSW2をオフさせ、サンプル・ホールド回路11のキャパシタC1に(Vref−Vin)に応じた電荷が充電される。
【0007】
この後、DAコンバータ14からDAC電圧V
DACを出力し、タイミング信号φ1=0,φ2=1とし、サンプル・ホールド回路11のスイッチSW1,SW3をオフさせ、スイッチSW2をオンさせると、キャパシタC1の差動増幅器11a側の端子の電圧V
AはV
A=Vref+(V
DAC−Vin)となる。つまり、電圧V
Aは基準電圧Vrefを基準として、DAC電圧V
DACと入力電圧Vinとの差電圧が発生する。逐次比較レジスタ及び演算部13はダイナミック・ラッチ・コンパレータ12から供給される比較結果に基づいて、次のDA変換用データを生成する。上記の逐次比較動作をDA変換用データの最上位ビット(MSB)から最下位ビット(LSB)まで繰り返して実行して最終的な変換結果であるデジタルデータを生成する。
【0008】
ところで、入力アナログ電圧と比較電圧の大小を判定する比較回路を備えた逐次比較型AD変換回路において、比較回路は、複数の増幅段のうち初段の増幅段を共通にし、その後段にそれぞれ結合容量を介して接続された第1増幅段を有する第1比較部及び第2増幅段を有する第2比較部と、第1増幅段の入力端子に接続された第1比較点シフト回路及び第2増幅段の入力端子に接続された第2比較点シフト回路とを設け、第1及び第2比較点シフト回路は入力アナログ電圧と比較電圧との電位差をそれぞれ増幅する際に比較電圧を互いに逆の方向へ所定量ずらすように構成した技術がある(特許文献1参照)。
【0009】
また、多ビットデジタル信号に応じて参照アナログ信号を出力するDACと、入力アナログ信号Vinを参照アナログ信号と比較する第1及び第2のコンパレータと、第1と第2のコンパレータの一方の比較結果を選択する選択回路と、選択した比較結果に基づいて、複数のステップで参照アナログ信号が入力アナログ信号に近づくように多ビットデジタル信号を順に変化させる制御回路とを備えるアナログ−デジタル変換器であって、制御回路は複数のステップの途中の中間ステップまで第1のコンパレータの比較結果を選択し、中間ステップ以後は第2のコンパレータの比較結果を選択するように選択回路を制御し、多ビットデジタル信号のビット値を、非2進アルゴリズムに従って変化させる技術がある(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図18に示す逐次比較型AD変換器では、DAコンバータ14がDAC電圧V
DACの出力を開始してから、キャパシタC1の差動増幅器11a側の端子の電圧V
AはV
A=Vref+(V
DAC−Vin)で安定しダイナミック・ラッチ・コンパレータ12が誤りのない比較結果を出力するのに要する時間つまり整定時間が長くなり、逐次比較型AD変換器の変換時間が長くなるという問題があった。
【0012】
また、特許文献1に記載の逐次比較型AD変換回路では、第1比較部及び第2比較部と2つの比較部が必要であり、第1比較部と第2比較部の比較特性を同一とする必要があり、そのための調整の手間が大きいという問題があった。
【0013】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、高速で高精度なAD変換が可能となる逐次比較型AD変換器及び逐次比較型AD変換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施態様による逐次比較型AD変換器は、近似値より大きい上側の変換用データと前記近似値より小さい下側の変換用データそれぞれを順にアナログ化して変換電圧として出力するDA変換部(25)と、
外部からの入力電圧と前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧との差電圧をサンプル・ホールドするサンプル・ホールド部(21)と、
前記サンプル・ホールド部の出力する前記差電圧から前記入力電圧と前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧との大小を比較した第1及び第2の比較結果を出力する比較部(22,23A,23B)と、
前記第1及び第2の比較結果に応じて前記近似値を変更すると共に、変更した近似値に基づいて次の上側の変換用データと下側の変換用データを変更する演算部(24)とを有し、
前記演算部で変更した次の上側の変換用データと下側の変換用データを前記DA変換部に供給して前記サンプル・ホールドと前記比較と前記変更を繰り返し、最終的に変更した近似値をAD変換データとして出力する逐次比較型AD変換器であって、
前記演算部は、前記次の上側の変換用データと前記下側の変換用データを出力する順序を、前記第1及び第2の比較結果と前回の前記上側の変換用データと前記下側の変換用データを出力する順序に応じて決定
し、
前記第1及び第2の比較結果が共に前記入力電圧が前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧より小さいことを示し前回の順序が前記上側の変換用データを先に出力している場合には、次の順序を前記上側の変換用データを先に出力するように決定し、
前記第1及び第2の比較結果の少なくとも一方が前記入力電圧が前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧より大きいことを示し前回の順序が前記上側の変換用データを先に出力している場合には、次の順序を前記下側の変換用データを先に出力するように決定し、
前記第1及び第2の比較結果の少なくとも一方が前記入力電圧が前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧より小さいことを示し前回の順序が前記下側の変換用データを先に出力している場合には、次の順序を前記上側の変換用データを先に出力するように決定し、
前記第1及び第2の比較結果が共に前記入力電圧が前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧より大きいことを示し前回の順序が前記下側の変換用データを先に出力している場合には、次の順序を前記下側の変換用データを先に出力するように決定する。
【0016】
好ましくは、前記演算部(24)は、前記変更した近似値からの次の上側の変換用データと下側の変換用データの変更量を
、変更前の近似値から前記変更した近似値への変更量の1/2以下の値に設定する。
【0017】
好ましくは、前記近似値を表す複数ビットのうちの下位ビットに対して、
前記DA変換部(25)は、前記上側の変換用データと前記下側の変換用データの代りに、前記近似値をアナログ化して変換電圧として出力し、
前記サンプル・ホールド部(21)は、前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧との差電圧の代りに、前記入力電圧と前記近似値の前記変換電圧との差電圧をサンプル・ホールドし、
前記比較部(22,23A,23B)は、前記第1及び第2の比較結果を出力する代りに、前記入力電圧と前記近似値の前記変換電圧との大小を比較した第3の比較結果を出力し、
前記演算部(24)は、前記第1及び第2の比較結果の代りに、前記第3の比較結果に応じて前記近似値を変更する。
【0018】
好ましくは、前記近似値を表す複数ビットのうちの下位ビットに対して、
前記演算部で変更した次の上側の変換用データと下側の変換用データを前記DA変換部に供給して前記サンプル・ホールドと前記比較と前記変更を複数回繰り返し、変更された近似値を平均化して用いる。
【0019】
本発明の一実施態様による逐次比較型AD変換方法は、近似値より大きい上側の変換用データと前記近似値より小さい下側の変換用データそれぞれを順にアナログ化して変換電圧として出力し、
外部からの入力電圧と前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧との差電圧をサンプル・ホールドし、
前記サンプル・ホールド部の出力する前記差電圧から前記入力電圧と前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧との大小を比較した第1及び第2の比較結果を出力し、
前記第1及び第2の比較結果に応じて前記近似値を変更すると共に、変更した近似値に基づいて次の上側の変換用データと下側の変換用データを変更し、
前
記変更した次の上側の変換用データと下側の変換用データを
変換電圧として前記サンプル・ホールドと前記比較と前記変更を繰り返し、最終的に変更した近似値をAD変換データとして出力する逐次比較型AD変換方法であって、
前記次の上側の変換用データと前記下側の変換用データを出力する順序を、前記第1及び第2の比較結果と前回の前記上側の変換用データと前記下側の変換用データを出力する順序に応じて決定
し、
前記第1及び第2の比較結果が共に前記入力電圧が前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧より小さいことを示し前回の順序が前記上側の変換用データを先に出力している場合には、次の順序を前記上側の変換用データを先に出力するように決定し、
前記第1及び第2の比較結果の少なくとも一方が前記入力電圧が前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧より大きいことを示し前回の順序が前記上側の変換用データを先に出力している場合には、次の順序を前記下側の変換用データを先に出力するように決定し、
前記第1及び第2の比較結果の少なくとも一方が前記入力電圧が前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧より小さいことを示し前回の順序が前記下側の変換用データを先に出力している場合には、次の順序を前記上側の変換用データを先に出力するように決定し、
前記第1及び第2の比較結果が共に前記入力電圧が前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧より大きいことを示し前回の順序が前記下側の変換用データを先に出力している場合には、次の順序を前記下側の変換用データを先に出力するように決定する。
【0021】
好ましくは、前記変更した近似値からの次の上側の変換用データと下側の変換用データの変更量を
、変更前の近似値から前記変更した近似値への変更量の1/2以下の値に設定する。
【0022】
好ましくは、前記近似値を表す複数ビットのうちの下位ビットに対して、
前記上側の変換用データと前記下側の変換用データの代りに、前記近似値をアナログ化して変換電圧として出力し、
前記上側の変換用データと前記下側の変換用データそれぞれの前記変換電圧との差電圧の代りに、前記入力電圧と前記近似値の前記変換電圧との差電圧をサンプル・ホールドし、
前記第1及び第2の比較結果を出力する代りに、前記入力電圧と前記近似値の前記変換電圧との大小を比較した第3の比較結果を出力し、
前記第1及び第2の比較結果の代りに、前記第3の比較結果に応じて前記近似値を変更する。
【0023】
好ましくは、前記近似値を表す複数ビットのうちの下位ビットに対して、
前
記変更した次の上側の変換用データと下側の変換用データを
変換電圧として前記サンプル・ホールドと前記比較と前記変更を複数回繰り返し、変更された近似値を平均化して用いる。
【0024】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高速で高精度なAD変換が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0028】
<回路構成>
図1に本発明の逐次比較型AD変換器の一実施形態の回路構成図を示す。
図1において、入力端子20にはアナログ電圧Vinが入来する。サンプル・ホールド回路21は基準電圧Vrefを基準として、アナログ入力電圧Vin又はアナログ電圧VinとDAコンバータ(DAC)25の出力電圧の差電圧をサンプル・ホールドする。
【0029】
コンパレータ22は例えばダイナミック・ラッチ・コンパレータであってヒステリシス特性を有しており、サンプル・ホールド回路21の出力電圧を基準電圧Vrefと比較し、アナログ電圧VinとDAコンバータ25の出力電圧の差電圧が基準電圧Vrefより大なるとき値1となり、小なるとき値0となる比較結果をラッチ回路23A,23Bに供給する。この比較結果はアナログ電圧VinとDAコンバータ25の出力電圧の大小を比較したものであり、アナログ電圧VinがDAコンバータ25の出力電圧より大きいとき値1で、アナログ電圧VinがDAコンバータ25の出力電圧より小さいとき値0である。なお、サンプル・ホールド回路21とコンパレータ22の間は差動信号を伝達する形態であっても良い。
【0030】
ラッチ回路23Aはタイミング信号φ3Aが値1(ハイレベル)のとき比較結果(CMPA)をラッチして逐次比較レジスタ及び演算部24に供給する。ラッチ回路23Bはタイミング信号φ3Bが値1のとき比較結果(CMPB)をラッチして逐次比較レジスタ及び演算部24に供給する。
【0031】
逐次比較レジスタ及び演算部24はラッチ回路23A,23Bから供給される比較結果に基づいて当該ビットを判定し、次のDA変換用データを生成し、次のDA変換用データを比較データとしてDAコンバータ25に供給すると共に、最終的な変換結果を出力回路27に供給する。
【0032】
制御回路26は外部よりクロック及び変換開始の指示を供給され、タイミング信号φ1,φ2,φ3A,φ3Bを生成してサンプル・ホールド回路21、ラッチ回路23A,23Bに供給し、スタート,エンドなどの制御信号を生成して逐次比較レジスタ及び演算部24に供給する。また、制御回路26は変換終了の指示を外部に出力する。出力回路27は最終的な変換結果(近似値)のデジタルデータを外部に出力する。
【0033】
図2に示すサンプリング動作のタイミングで、タイミング信号φ1=1(ハイレベル),φ2=0(ローレベル)とし、サンプル・ホールド回路21のスイッチSW1,SW3をオンさせ、スイッチSW2をオフさせ、サンプル・ホールド回路21のキャパシタC1に(Vref−Vin)に応じた電荷が充電される。
【0034】
次に、
図2の1回目比較Aのタイミングで、DAコンバータ25からDAC電圧V
DACAを出力し、タイミング信号φ1=0,φ2=1とし、サンプル・ホールド回路21のスイッチSW1,SW3をオフさせ、スイッチSW2をオンさせると、キャパシタC1の差動増幅器21a側の端子の電圧V
AはV
AA=Vref+(V
DACA−Vin)となる。つまり、電圧V
Aは基準電圧Vrefを基準として、DAC電圧V
DACAと入力電圧Vinとの差電圧が発生する。ラッチ回路23Aはタイミング信号φ3Aが値1のタイミングでコンパレータ22から供給される比較結果をラッチして逐次比較レジスタ及び演算部24に供給する。
【0035】
次に、
図2の1回目比較Bのタイミングで、DAコンバータ25からDAC電圧V
DACBを出力し、タイミング信号φ1=0,φ2=1とし、サンプル・ホールド回路21のスイッチSW1,SW3をオフさせ、スイッチSW2をオンさせると、キャパシタC1の差動増幅器21a側の端子の電圧V
AはV
AB=Vref+(V
DACB−Vin)となる。つまり、電圧V
Aは基準電圧Vrefを基準として、DAC電圧V
DACBと入力電圧Vinとの差電圧が発生する。ラッチ回路23Bはタイミング信号φ3Bが値1のタイミングでコンパレータ22から供給される比較結果をラッチして逐次比較レジスタ及び演算部24に供給する。2回目以降の比較A,Bについても同様である。
【0036】
図3に本実施形態の動作を示す。
図3には、(n−1)ビット目の比較動作と(n−2)ビット目の比較動作の部分を取り出して示している。本実施形態では、本来の比較点に設定される比較点を基準とし、その上下にずらして比較点を2つ設定する。そして、比較の回数を追うほど比較点のずれ量ΔVが小さくなるようにする。なお、毎回ΔVを小さくする代わりに、第kビット目の比較動作の際に、ΔV≦FS/2
n×2
(k−2)を満たすようにΔVを設定して最後まで同じ値を使用しても良く、飛び飛びで小さくするようにしても良い。FSはAD変換可能な電圧範囲FSR(Full Scale Range)の上限と下限の電位差である。
【0037】
比較結果は入力の電圧範囲に応じて、(1,0),(0,1),(0,0)の3種類のコードで表わす。(1,0)のコードはラッチ回路23A,23Bの出力が1,1であることを示し、(0,1)のコードはラッチ回路23A,23Bの出力が0,1であることを示し、(0,0)のコードはラッチ回路23A,23Bの出力が0,0であることを示す。
【0038】
次に、(n−2)ビット目の比較動作の際には、(n−1)ビット目の比較結果を示す3種類のコードに応じて、それが(1,0)であったときは、
図3の(1)に示すように比較点を共に高い方へずらした比較を行う。また、(n−1)ビット目の比較結果が(0,1)であったときは、(2)のように比較点を近づける方へずらした比較を行い、比較結果が(0,0)であったときは、(3)のように比較点を共に低い方へずらした比較を行う。つまり、前回の比較動作の比較結果(コード)に応じて次の比較動作を、(1),(2),(3)のいずれかの範囲で行う。これにより、2つの比較点のずれ量ΔVを冗長判定範囲とする冗長判定が行われる。
【0039】
図4(A)に上記動作に従ってAD変換を行った場合の変換動作中のDAコンバータ25の出力電圧の変化の一例を示す。本来の比較点を基準として上下にずらして比較点を2つ設定する本実施形態では、入力電圧Vinの電位が本来の比較点に近いような場合に、上位ビットでの誤判定が起きにくく最終的に誤りの少ない変換結果が得られることが分かる。
【0040】
なお、上記のような比較を繰り返すことで得られた結果(3種類の2ビットコード)は、逐次比較レジスタ及び演算部24において、
図4(B)に示すように1桁ずつずらして加算し最下位ビットは切捨て等の処理をすることで、本来のAD変換結果を得ることができる。なお、最下位ビットの処理は、切捨てに限定されず切り上げであっても良い。
【0041】
図5は逐次比較レジスタ及び演算部24の一実施形態の回路構成図を示す。
図5において、逐次比較レジスタ及び演算部24は、比較判定・加減算回路24a、DAC用レジスタ24b、逐次比較レジスタ(SAR)24cを有している。比較判定・加減算回路24aはラッチ回路23A,23Bから供給される比較結果CMPA,CMPBに基づいて、近似値SAR
iを判定し、判定した近似値SAR
iに加減算処理を行って次の近似値SAR
i+1を得るためのDA変換用データDACL
i,DACH
iを生成する。なお、DACL
iは下側(値の小さい側)のDA変換用データであり、DACH
iは上側(値の大きい側)のDA変換用データである。
【0042】
そして、比較判定・加減算回路24aはDAC用レジスタ24bに次のビットのDA変換用データDACL
i,DACH
iを格納し、当該SAR
iを逐次比較レジスタ24cに格納する。DAC用レジスタ24bからDA変換用データDACL
i,DACH
iが順次読み出されてDAコンバータ25に供給される。逐次比較レジスタ24cから読み出された当該SAR
iは次の近似値SAR
i+1を得るための加減算処理のため比較判定・加減算回路24aに供給され、また、変換結果のデジタルデータの全ビットが逐次比較レジスタ24から出力回路27に供給される。
【0043】
逐次比較レジスタ及び演算部24が実行する処理について説明する。ここでは、アナログ入力Vinを例えば12ビットのデジタルデータに変換する例について説明する。
【0044】
図6に近似値SAR
iと、DA変換用データDACL
i,DACH
iと、増分ΔSAR
iの関係を示す。
図6において、例えばSAR
1は2
11=2048であり、DACL
1=SAR
1−2
(n−3)=SAR
1−2
9であり、DACH
1=SAR
1+2
9である。また、DACL
2=SAR
2−2
(n−4)=SAR
2−2
8であり、DACH
2=SAR
2+2
(n−4)=SAR
2+2
8である。
【0045】
なお、
図6では変更した近似値SAR
2からの次の上側の変換用データと下側の変換用データの変更量は、近似値SAR
1からSAR
2への変更量±2
9の1/2(=2
8)としているが、近似値の変更量±2
9の1/2(=2
8)以下の値であれば良く、ユーザが自由に設定できる。
【0046】
図7に比較結果CMPA
i,CMPB
iと順序ORDER
iに対するDAC用レジスタ24a,24bに設定する比較データDACA
(i+1),DACB
(i+1)を示すと共に、比較データDACA
(i+1),DACB
(i+1)の順序ORDER
(i+1)に設定する値を示す。なお、比較データDACA
iは先に比較される値であり、比較データDACB
iは後で比較される値である。順序ORDER
i=0は、先に上側のDA変換用データDACH
iとの比較を行い、次に下側のDA変換用データDACL
iとの比較を行うことを表している。順序ORDER
i=1は、先に下側のDA変換用データDACL
iを行い、次に上側のDA変換用データDACH
iとの比較を行うことを表している。なお、当初の順序ORDER
1の値は例えば1に初期設定される。
【0047】
図7において、例えば比較結果CMPA
i=0,CMPB
i=0,順序ORDER
i=0の場合、比較データDACA
(i+1)には上側のDA変換用データDACH
(i+1)が設定され、比較データDACB
(i+1)には下側のDA変換用データDACL
(i+1)が設定される。そして、次回の順序ORDER
(i+1)は0が設定される。
【0048】
また、比較結果CMPA
i=0,CMPB
i=1,順序ORDER
i=0の場合、比較データDACA
(i+1)には下側のDA変換用データDACL
(i+1)が設定され、比較データDACB
(i+1)には上側のDA変換用データDACH
(i+1)が設定される。そして、次回の順序ORDER
(i+1)は1が設定される。
【0049】
図7では、比較結果CMPA
iとCMPB
iが共に0で順序ORDER
iが0の場合は次の順序ORDER
(i+1)は0となり、比較結果CMPA
iとCMPB
iの少なくとも一方が1で順序ORDER
iが0の場合は次の順序ORDER
(i+1)は1となる。また、比較結果CMPA
iとCMPB
iの少なくとも一方が0で順序ORDER
iが1の場合は次の順序ORDER
(i+1)は0となり、比較結果CMPA
iとCMPB
iが共に1で順序ORDER
iが1の場合は次の順序ORDER
(i+1)は1となる。
【0050】
上記のように次の順序ORDER
(i+1)を設定することにより、前回の比較で後に出力した比較データDACB
iと、次回の比較で先に出力する比較データDACA
(i+1)との変動量をできるだけ小さくすることができ、整定時間をできるだけ短くすることができる。この結果、比較データDACA
(i+1)を出力した際にキャパシタC1に充電される電荷量をできるだけ小さくすることができ、変換時の消費電力を削減できる。
【0051】
<第1実施形態>
図8A及び
図8Bに逐次比較レジスタ及び演算部24が実行する逐次比較処理の第1実施形態のフローチャートを示す。
図8Aにおいて、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS1でi=1,ORDER
1=1として変換を開始し、ステップS2でアナログ入力電圧Vinのサンプリングを開始し、ステップS3でサンプリングを終了する。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS4で比較を開始する。
【0052】
逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS5で比較データDACA
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS6で比較結果CMPAを取り込む。また、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS7で比較データDACB
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS8で比較結果CMPBを取り込む。
【0053】
図8Bにおいて、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS9でCMPA=1かつCMPB=1であるか否かを判別し、CMPA=1かつCMPB=1の場合はステップS10で近似値SAR
(i+1)にSAR
i+ΔSAR
iを設定する。CMPA=1かつCMPB=1でない場合、ステップS11でCMPA=0かつCMPB=0であるか否かを判別し、CMPA=0かつCMPB=0の場合はステップS12でSAR
(i+1)にSAR
i−ΔSAR
iを設定する。CMPA=0かつCMPB=0でない場合はステップS13でSAR
(i+1)にSAR
iを設定する。
【0054】
逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS14で
図6及び
図7に示す関係を用いて次回のSAR
(i+1),DACA
(i+1),DACB
(i+1)を設定し、ステップS15で
図6及び
図7に示す関係を用いて次回の順序ORDER
(i+1)を設定する。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS16でi=i+1とし、ステップS17でi=nであるかを判別する。なお、nは変換するデジタルデータのビット数である。i≠nの場合は
図8AのステップS5に進み、i=nの場合はステップS18に進む。
【0055】
i=nとなってLSBの処理を行う場合、ステップS18で逐次比較レジスタ及び演算部24は、比較データDACA
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS19で比較結果CMPAを取り込む。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS20でCMPA=1であるか否かを判別し、CMPA=1の場合はステップS21でSAR
(i+1)にSAR
iを設定する。CMPA=1でない場合はステップS22でSAR
(i+1)にSAR
i−ΔSAR
iを設定する。この後、ステップS23でSAR
(i+1)を逐次比較レジスタ(SAR)24Cに設定して変換デジタルデータとして出力し、処理を終了する。
【0056】
図9と
図10に本実施形態における入力電圧Vinの場合のDAコンバータ25の出力電圧波形を示す。なお、
図9は比較期間t=10τ(τはサンプル・ホールド回路21の時定数)とした場合を示し、
図10は比較期間t=3τ(τはサンプル・ホールド回路21の時定数)とした場合を示している。
【0057】
ところで、従来回路は比較点が1点であるため、DAコンバータの出力電圧を正しく判定するのに必要な整定時間は
図11の矢印T1の長さが必要である。これに対し、本実施形態では、比較点が2点で2つの比較点間は冗長判定範囲とされているため、整定時間は矢印T2の長さとなり、矢印T1の長さより短くて済む。
【0058】
図12に従来回路における12ビットの変換期間のシミュレーション結果を示し、
図13に本実施形態における12ビットの変換期間のシミュレーション結果を示している。
図12の従来回路では12ビットの変換回数は13回で変換期間の合計は86.1τ(τは時定数)であるのに対し、
図13の本実施形態では12ビットの変換回数は25回で変換期間の合計は47.2τであり、変換回数は従来より多いものの変換期間は短くなっている。
【0059】
これにより、第1実施形態では高速で高精度なAD変換が可能となる。また、比較部としてのコンパレータ22は1回路で済み、複数のコンパレータのオフセットを含む比較特性を同一とする必要がなく手間がかからない。
【0060】
<第2実施形態>
図14A及び
図14B及び
図14Cに逐次比較レジスタ及び演算部24が実行する逐次比較処理の第2実施形態のフローチャートを示す。この実施形態では変換する12ビットのデジタルデータの上位m(mはn以下で例えば6)ビットについては比較点が2点の冗長判定を行い、下位(12−m)ビットについて比較点が1点の従来型判定を行う。
【0061】
図14Aにおいて、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS31でi=1,ORDER
1=1として変換を開始し、ステップS32でアナログ入力電圧Vinのサンプリングを開始し、ステップS33でサンプリングを終了する。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS34で比較を開始する。
【0062】
逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS35で比較データDACA
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS36で比較結果CMPAを取り込む。また、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS37で比較データDACB
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS38で比較結果CMPBを取り込む。
【0063】
図14Bにおいて、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS39でCMPA=1かつCMPB=1であるか否かを判別し、CMPA=1かつCMPB=1の場合はステップS40で近似値SAR
(i+1)にSAR
i+ΔSAR
iを設定する。CMPA=1かつCMPB=1でない場合、ステップS41でCMPA=0かつCMPB=0であるか否かを判別し、CMPA=0かつCMPB=0の場合はステップS42でSAR
(i+1)にSAR
i−ΔSAR
iを設定する。CMPA=0かつCMPB=0でない場合はステップS43でSAR
(i+1)にSAR
iを設定する。
【0064】
逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS44で
図6及び
図7に示す関係を用いて次回のSAR
(i+1),DACA
(i+1),DACB
(i+1)を設定し、ステップS45で
図6及び
図7に示す関係を用いて次回の順序ORDER
(i+1)を設定する。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS46でi=i+1とし、ステップS47でi=m+1であるかを判別する。i≠m+1の場合は
図14AのステップS35に進み、i=m+1の場合はステップS48に進む。
【0065】
ステップS48で逐次比較レジスタ及び演算部24は、比較データDACA
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS49で比較結果CMPAを取り込む。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS50でCMPA=1であるか否かを判別し、CMPA=1の場合はステップS51でSAR
(i+1)にSAR
i+ΔSAR
iを設定する。CMPA=1でない場合はステップS52でSAR
(i+1)にSAR
i−ΔSAR
iを設定する。この後、ステップS53で
図6及び
図7に示す関係を用いて次回のSAR
(i+1),DACA
(i+1),DACB
(i+1)を設定する。次に、ステップS54でi=i+1とし、ステップS55でi=nであるかを判別する。i≠nの場合はステップS48に進み、i=nの場合は
図14CのステップS56に進む。
【0066】
ステップS56で逐次比較レジスタ及び演算部24は、比較データDACA
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS57で比較結果CMPAを取り込む。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS58でCMPA=1であるか否かを判別し、CMPA=1の場合はステップS59でSAR
(i+1)にSAR
iを設定する。CMPA=1でない場合はステップS60でSAR
(i+1)にSAR
i−ΔSAR
iを設定する。この後、ステップS61でSAR
(i+1)を逐次比較レジスタ(SAR)24Cに設定して変換デジタルデータとして出力し、処理を終了する。
【0067】
この第2実施形態では、近似値SARの変化つまりDAコンバータ25の出力電圧の変化が上位mビットに対し小さくなる下位(12−m)ビットについては比較点が1点の従来型判定を行うことで、全体の比較回数が減少でき、第1実施形態に比してAD変換に要する時間を短縮することができる。
【0068】
<第3実施形態>
図15A及び
図15B及び
図15C及び
図15Dに逐次比較レジスタ及び演算部24が実行する逐次比較処理の第3実施形態のフローチャートを示す。この実施形態では変換する12ビットのデジタルデータの上位mビットの冗長判定を行った後、冗長判定のSARを用いて下位(12−m)ビットについて冗長判定をx(xは例えば4)回だけ繰り返し平均化することにより、冗長判定の精度を向上させている。
【0069】
図15Aにおいて、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS71でi=1,j=0,ORDER
1=1として変換を開始し、ステップS72でアナログ入力電圧Vinのサンプリングを開始し、ステップS73でサンプリングを終了する。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS74で比較を開始する。
【0070】
逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS75で比較データDACA
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS76で比較結果CMPAを取り込む。また、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS77で比較データDACB
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS78で比較結果CMPBを取り込む。
【0071】
図15Bにおいて、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS79でCMPA=1かつCMPB=1であるか否かを判別し、CMPA=1かつCMPB=1の場合はステップS80で近似値SAR
(i+1)にSAR
i+ΔSAR
iを設定する。CMPA=1かつCMPB=1でない場合、ステップS81でCMPA=0かつCMPB=0であるか否かを判別し、CMPA=0かつCMPB=0の場合はステップS82でSAR
(i+1)にSAR
i−ΔSAR
iを設定する。CMPA=0かつCMPB=0でない場合はステップS83でSAR
(i+1)にSAR
iを設定する。
【0072】
逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS84で
図6及び
図7に示す関係を用いて次回のSAR
(i+1),DACA
(i+1),DACB
(i+1)を設定し、ステップS85で
図6及び
図7に示す関係を用いて次回の順序ORDER
(i+1)を設定する。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS86でi=i+1とし、ステップS87でi=m+1であるかを判別する。i≠m+1の場合は
図15AのステップS75に進み、i=m+1の場合はステップS88に進む。
【0073】
ステップS88で逐次比較レジスタ及び演算部24は、上位mビットの比較結果であるSAR
(i+1)を変数Aにセーブする。次に、ステップS89で逐次比較レジスタ及び演算部24は、比較データDACA
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS90で比較結果CMPAを取り込む。また、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS91で比較データDACB
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS92で比較結果CMPBを取り込む。
【0074】
逐次比較レジスタ及び演算部24は
図15CのステップS93でCMPA=1かつCMPB=1であるか否かを判別し、CMPA=1かつCMPB=1の場合はステップS94でSAR
(i+1)にSAR
i+ΔSAR
iを設定する。CMPA=1かつCMPB=1でない場合、ステップS95でCMPA=0かつCMPB=0であるか否かを判別し、CMPA=0かつCMPB=0の場合はステップS96でSAR
(i+1)にSAR
i−ΔSAR
iを設定する。CMPA=0かつCMPB=0でない場合はステップS97でSAR
(i+1)にSAR
iを設定する。
【0075】
逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS98で
図6及び
図7に示す関係を用いて次回のSAR
(i+1),DACA
(i+1),DACB
(i+1)を設定し、ステップS99で
図6及び
図7に示す関係を用いて次回の順序ORDER
(i+1)を設定する。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS100でi=i+1とし、ステップS101でi=nであるかを判別する。i≠nの場合は
図15BのステップS89に進み、i=nの場合は
図15DのステップS106に進む。
【0076】
図15DのステップS106で逐次比較レジスタ及び演算部24は、比較データDACA
iをDAコンバータ25に供給し、ステップS107で比較結果CMPAを取り込む。逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS108でCMPA=1であるか否かを判別し、CMPA=1の場合はステップS109でSAR
(i+1)にSAR
iを設定する。CMPA=1でない場合はステップS110でSAR
(i+1)にSAR
i−ΔSAR
iを設定する。
【0077】
逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS111でSAR
(i+1)を変数SARにセットし、ステップS112で変数SARの値を変数B
jにセットする。そして、ステップS113でi=m+1とし、j=j+1とする。この後、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS114でj=xであるか否かを判別し、j=xでない場合はステップS115で変数Aにセーブしている上位mビットの比較結果を変数SARにセットしてステップS89に進む。一方、j=xの場合はステップS116でB
1〜B
xの総和の平均AVEを求める。次に、逐次比較レジスタ及び演算部24はステップS117で平均AVEを逐次比較レジスタ(SAR)24Cに設定して変換デジタルデータとして出力し、処理を終了する。
【0078】
図16(A)に示すように、アナログ入力/デジタル出力の切り替わり確率分布が切り替わり点に集中している場合には冗長判定の精度は良好である。しかし、
図16(B)に示すように、アナログ入力/デジタル出力の切り替わり確率分布が切り替わり点に集中していない場合には冗長判定の精度が劣化するが、第3実施形態を実施することにより冗長判定の精度の劣化を抑制することができる。
【0079】
なお、ステップS112で変数SARの値を変数B
jにセットする代りに、変数SARの値と変数Aの値との差分を変数B
jにセットする。更に、ステップS116で差分B
1〜B
xの総和の平均ΔAVEを求め、ステップS117で変数Aの値にΔAVEを加算した値を逐次比較レジスタ(SAR)24Cに設定して変換デジタルデータとして出力する。このように
図15DのステップS112,S116,S117を変更しても良い。
【0080】
この第3実施形態では、下位(12−m)ビットについて冗長判定をx回繰り返し平均化することで、ノイズ耐性が向上し冗長判定の精度を向上することができる。
【0081】
なお、第3実施形態のステップS89〜S105を第2実施形態のステップS48〜S55に置き換えることも可能である。
【0082】
<変形例の回路構成>
図17に本発明の逐次比較型AD変換器の一実施形態の変形例の回路構成図を示す。
図17において、入力端子20にはアナログ電圧Vinが入来する。サンプル・ホールド回路21は基準電圧Vrefを基準として、アナログ入力電圧Vin又はアナログ電圧VinとDAコンバータ25の出力電圧の差電圧をサンプル・ホールドする。
【0083】
ダイナミック・ラッチ・コンパレータ31Aはヒステリシス特性を有しており、サンプル・ホールド回路21の出力電圧を基準電圧Vrefと比較し、アナログ電圧VinとDAコンバータ25の出力電圧の差電圧が基準電圧Vrefより大なるとき値1となり、小なるとき値0となる比較結果を生成する。そして、ダイナミック・ラッチ・コンパレータ31Aはタイミング信号φ3Aが値1のとき比較結果(CMPA)をラッチして逐次比較レジスタ及び演算部24に供給する。
【0084】
ダイナミック・ラッチ・コンパレータ31Bはヒステリシス特性を有しており、サンプル・ホールド回路21の出力電圧を基準電圧Vrefと比較し、アナログ電圧VinとDAコンバータ25の出力電圧の差電圧が基準電圧Vrefより大なるとき値1となり、小なるとき値0となる比較結果を生成する。そして、ダイナミック・ラッチ・コンパレータ31Bはタイミング信号φ3Bが値1のとき比較結果(CMPB)をラッチして逐次比較レジスタ及び演算部24に供給する。
【0085】
逐次比較レジスタ及び演算部24はダイナミック・ラッチ・コンパレータ31A,31Bから供給される比較結果に基づいて当該ビットを判定し、次のDA変換用データを生成し、次のDA変換用データを比較データとしてDAコンバータ25に供給すると共に、最終的な変換結果を出力回路27に供給する。
【0086】
制御回路26は外部よりクロック及び変換開始指示を供給され、タイミング信号φ1,φ2,φ3A,φ3Bを生成してサンプル・ホールド回路21、ダイナミック・ラッチ・コンパレータ31A,31Bに供給し、スタート,エンドなどの制御信号を生成して逐次比較レジスタ及び演算部24に供給する。また、制御回路26は変換終了の指示を外部に出力する。出力回路27は最終的な変換結果(近似値)のデジタルデータを出力する。