特許第6102287号(P6102287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102287
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/356 20060101AFI20170316BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20170316BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20170316BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   F04C18/356 M
   F04C18/356 H
   F04C23/00 F
   F04C29/00 C
   F04C29/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-14871(P2013-14871)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-145316(P2014-145316A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田中 順也
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−124091(JP,U)
【文献】 特開平06−137293(JP,A)
【文献】 特開2006−083842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/356
F04C 23/00
F04C 29/00
F04C 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に冷媒の吐出部が設けられ下部に冷媒の吸入部が設けられ密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体と、
前記圧縮機筐体の下部に配置され、環状の第1、第2シリンダと、軸受部及び吐出弁部を有し前記第1、第2シリンダの端部を閉塞する下、上端板と、前記第1、第2シリンダ間に配置され両者間を仕切る中間仕切板と、前記軸受部に支持された回転軸の偏芯部に嵌合され前記第1、第2シリンダのシリンダ内周面に沿って該シリンダ内を公転し前記シリンダ内周面との間に作動室を形成する第1、第2環状ピストンと、前記第1、第2シリンダに設けられたベーン溝内から前記作動室内に突出して前記第1、第2環状ピストンに当接し該作動室を吸入室と圧縮室とに区画する第1、第2ベーンと、前記圧縮機筐体の内部に連通するマフラー吐出孔を有し前記上端板の吐出弁部を覆って前記上端板との間に上マフラー室を形成する上マフラーカバーと、前記下端板の吐出弁部を覆って前記下端板との間に下マフラー室を形成する下マフラーカバーと、前記下、上端板及び第1、第2シリンダ及び中間仕切板を貫通し上、下マフラー室間を連通させる冷媒通路と、を備え、前記吸入部を通して冷凍サイクルの低圧側から冷媒を吸入し、前記圧縮機筐体内を通して前記吐出部から冷媒を吐出する圧縮部と、
前記圧縮機筐体の上部に配置され、前記回転軸を介して前記圧縮部を駆動するモータと、
を備えるロータリ圧縮機において、
前記第1、第2シリンダに設けられた冷媒通路と前記第1、第2シリンダ外周面との間の距離を、前記第1、第2シリンダに設けられた冷媒通路と前記第1、第2シリンダ内周面との間の距離よりも小さくし
前記第1、第2シリンダ及び中間仕切板及び下、上端板の外周部に、径方向外方へ張出す凸部を設け、該凸部内に、少なくとも前記第1、第2シリンダ及び中間仕切板に設けられた冷媒通路の一部又は全部を配置したことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記下、上端板に設けられた冷媒通路は、マフラー室に連通する縦孔と該縦孔と前記第1、第2シリンダに設けられた冷媒通路とを連通させる横溝とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記下、上端板に設けられた冷媒通路は、マフラー室に連通する縦孔を備え、前記第1、第2シリンダに設けられた冷媒通路は、縦孔と、前記下、上端板に設けられたマフラー室に連通する縦孔とを連通させる横溝と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気調和機に使用されるロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のロータリ圧縮機の圧縮部の冷媒通路を示す縦断面図であり、図7は、従来の第1、第2シリンダの冷媒通路を示す平面図である。図6及び図7に示すように、従来のロータリ圧縮機では、第1の圧縮部12Sで圧縮された高温の冷媒ガスは、下マフラー室180S内に吐出され、下端板160S、第1シリンダ121S、中間仕切板140、第2シリンダ121T及び上端板160Tを貫くように設けられた冷媒通路136を通って上マフラー室180T内に吐出され、第2の圧縮部12Tで圧縮されて上マフラー室180T内に吐出された冷媒ガスと合流し、圧縮機筐体10内に吐出される。
【0003】
冷媒通路136は、下、上端板160S、160Tに設けられている第1、第2吐出弁溝163S、163T、第1、第2ベーン溝128S、128T、第1、第2吸入孔135S、135T、第1、第2の圧縮部12S、12T固定用のねじ孔(又はボルト通し孔)121aなどの配置位置には配置することができない。また、冷媒通路136は、下、上マフラー室180S、180T内に開口させなければならないので、下、上マフラーカバー170S、170Tの内側に設ける必要がある。そのため、冷媒通路136の配置可能位置は限定され、図7に示すように、第1、第2ベーン溝128S、128Tの反対側の、スペースの空いている場所に配置されている。
【0004】
従来、上記と同様の冷媒通路を有するロータリ圧縮機として、例えば、特許文献1、2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−232877号公報
【特許文献2】実開平02−114790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1、第2シリンダ121S、121Tの第1、第2シリンダ内周面123S、123Tの温度は、圧縮開始前の低温の冷媒ガスが吸入される第1、第2吸入孔135S、135T近傍では比較的低温であるが、圧縮が進むにつれて冷媒温度が上昇し、圧縮終了の第1、第2吐出孔190S、190T近傍で高温となる。第1、第2ベーン溝128S、128Tの反対側は、第1、第2吸入孔135S、135Tと第1、第2吐出孔190S、190Tの中間位置であり、この位置での第1、第2シリンダ内周面123S、123Tの温度は、第1、第2吸入孔135S、135T近傍の温度と第1、第2吐出孔190S、190T近傍の温度の中間の温度となる。
【0007】
下端板160Sの第1吐出孔190Sから吐出された高温の冷媒ガスは、下マフラー室180Sに入ると下マフラーカバー170Sの壁面を通して下マフラーカバー170S外周部の油溜めに放熱されてやや温度が低下するものの、高温状態のまま冷媒通路136内を流れる。そのため、冷媒通路136の壁面温度は、第1、第2シリンダ121S、121Tの第1、第2ベーン溝128S、128Tの反対側の第1、第2シリンダ内周面123S、123Tの温度よりも高くなる。
【0008】
それ故、冷媒通路136が、第1、第2シリンダ121S、121Tの第1、第2ベーン溝128S、128Tの反対側に配置されていると、冷媒通路136を通過する冷媒ガスが、第1、第2ベーン溝128S、128Tの反対側の第1、第2シリンダ内周面123S、123Tの温度を上昇させ、吸入冷媒や圧縮途中の冷媒ガスを加熱し、体積効率を低下させ、圧縮動力を増加させ、圧縮機効率を低下させる、という問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、冷媒通路を通過する冷媒ガスによる吸入冷媒や圧縮途中の冷媒ガスの加熱を抑え、圧縮機効率を向上させたロータリ圧縮機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、上部に冷媒の吐出部が設けられ下部に冷媒の吸入部が設けられ密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体と、前記圧縮機筐体の下部に配置され、環状の第1、第2シリンダと、軸受部及び吐出弁部を有し前記第1、第2シリンダの端部を閉塞する下、上端板と、前記第1、第2シリンダ間に配置され両者間を仕切る中間仕切板と、前記軸受部に支持された回転軸の偏芯部に嵌合され前記第1、第2シリンダのシリンダ内周面に沿って該シリンダ内を公転し前記シリンダ内周面との間に作動室を形成する第1、第2環状ピストンと、前記第1、第2シリンダのベーン溝内から前記作動室内に突出して前記第1、第2環状ピストンに当接し該作動室を吸入室と圧縮室とに区画する第1、第2ベーンと、前記圧縮機筐体の内部に連通するマフラー吐出孔を有し前記上端板の吐出弁部を覆って前記上端板との間に上マフラー室を形成する上マフラーカバーと、前記下端板の吐出弁部を覆って前記下端板との間に下マフラー室を形成する下マフラーカバーと、前記下、上端板及び第1、第2シリンダ及び中間仕切板を貫通し上、下マフラー室間を連通させる冷媒通路と、を備え、前記吸入部を通して冷凍サイクルの低圧側から冷媒を吸入し、前記圧縮機筐体内を通して前記吐出部から冷媒を吐出する圧縮部と、前記圧縮機筐体の上部に配置され、前記回転軸を介して前記圧縮部を駆動するモータと、を備えるロータリ圧縮機において、前記第1、第2シリンダに設けられた冷媒通路と前記第1、第2シリンダ外周面との間の距離を、前記冷媒通路と前記第1、第2シリンダ内周面との間の距離よりも小さくし、前記第1、第2シリンダ及び中間仕切板及び下、上端板の外周部に、径方向外方へ張出す凸部を設け、該凸部内に、少なくとも前記第1、第2シリンダ及び中間仕切板に設けられた冷媒通路の一部又は全部を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷媒通路を通過する冷媒ガスによる吸入冷媒や圧縮途中の冷媒ガスの加熱を抑え、圧縮機効率を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図である。
図2図2は、実施例1の第1、第2の圧縮部を示す平面図である。
図3図3は、実施例1の冷媒通路を示す縦断面図である。
図4図4は、図2のA部拡大図である。
図5図5は、実施例2の第1、第2の圧縮部を示す平面図である。
図6図6は、従来のロータリ圧縮機の圧縮部の冷媒通路を示す縦断面図である。
図7図7は、従来の第1、第2シリンダの冷媒通路を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図であり、図2は、実施例1の第1、第2の圧縮部を示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、実施例のロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10の下部に配置された圧縮部12と、圧縮機筐体10の上部に配置され、回転軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0016】
モータ11のステータ111は、円筒状に形成され、圧縮機筐体10の上部の内周面に焼きばめされて固定されている。モータ11のロータ112は、円筒状のステータ111の内部に配置され、モータ11と圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に焼きばめされて固定されている。
【0017】
圧縮部12は、第1の圧縮部12Sと、第1の圧縮部12Sと並列に配置され第1の圧縮部12Sの上側に積層された第2の圧縮部12Tと、を備えている。図2に示すように、第1、第2の圧縮部12S、12Tは、第1、第2側方張出し部122S、122Tに、放射状に第1、第2吸入孔135S、135T、第1、第2ベーン溝128S、128Tが設けられた環状の第1、第2シリンダ121S、121Tを備えている。
【0018】
図2に示すように、第1、第2シリンダ121S、121Tには、モータ11の回転軸15と同心に、円形の第1、第2シリンダ内周面123S、123Tが形成されている。第1、第2シリンダ内周面123S、123T内には、シリンダ内径よりも小さい外径の第1、第2環状ピストン125S、125Tが夫々配置され、第1、第2シリンダ内周面123S、123Tと、第1、第2環状ピストン125S、125Tとの間に、冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する第1、第2作動室130S、130Tが形成される。
【0019】
第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2シリンダ内周面123S、123Tから径方向に、シリンダ高さ全域に亘る第1、第2ベーン溝128S、128Tが形成され、第1、第2ベーン溝128S、128T内に、夫々平板状の第1、第2ベーン127S、127Tが、摺動自在に嵌合されている。
【0020】
図2に示すように、第1、第2ベーン溝128S、128Tの奥部には、第1、第2シリンダ121S、121Tの外周部から第1、第2ベーン溝128S、128Tに連通するように第1、第2スプリング穴124S、124Tが形成されている。第1、第2スプリング穴124S、124Tには、第1、第2ベーン127S、127Tの背面を押圧するベーンスプリング(図示せず)が挿入されている。ロータリ圧縮機1の起動時は、このベーンスプリングの反発力により、第1、第2ベーン127S、127Tが、第1、第2ベーン溝128S、128T内から第1、第2作動室130S、130T内に突出し、その先端が、第1、第2環状ピストン125S、125Tの外周面に当接し、第1、第2ベーン127S、127Tにより、第1、第2作動室130S、130Tが、第1、第2吸入室131S、131Tと、第1、第2圧縮室133S、133Tとに区画される。
【0021】
また、第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2ベーン溝128S、128Tの奥部と圧縮機筐体10内とを、図1に示す開口部Rで連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒ガスを導入し、第1、第2ベーン127S、127Tに、冷媒ガスの圧力により背圧をかける第1、第2圧力導入路129S、129Tが形成されている。
【0022】
第1、第2シリンダ121S、121Tには、第1、第2吸入室131S、131Tに外部から冷媒を吸入するために、第1、第2吸入室131S、131Tと外部とを連通させる第1、第2吸入孔135S、135Tが設けられている。
【0023】
また、図1に示すように、第1シリンダ121Sと第2シリンダ121Tの間には、中間仕切板140が配置され、第1シリンダ121Sの第1作動室130Sと第2シリンダ121Tの第2作動室130Tとを区画、閉塞している。第1シリンダ121Sの下端部には、下端板160Sが配置され、第1シリンダ121Sの第1作動室130Sを閉塞している。また、第2シリンダ121Tの上端部には、上端板160Tが配置され、第2シリンダ121Tの第2作動室130Tを閉塞している。
【0024】
下端板160Sには、副軸受部161Sが形成され、副軸受部161Sに、回転軸15の副軸部151が回転自在に支持されている。上端板160Tには、主軸受部161Tが形成され、主軸受部161Tに、回転軸15の主軸部153が回転自在に支持されている。
【0025】
回転軸15は、互いに180°位相をずらして偏心させた第1偏心部152Sと第2偏心部152Tとを備え、第1偏心部152Sは、第1の圧縮部12Sの第1環状ピストン125Sに回転自在に嵌合し、第2偏心部152Tは、第2の圧縮部12Tの第2環状ピストン125Tに回転自在に嵌合している。
【0026】
回転軸15が回転すると、第1、第2環状ピストン125S、125Tが、第1、第2シリンダ内周面123S、123Tに沿って第1、第2シリンダ121S、121T内を図2の反時計回りに公転し、これに追随して第1、第2ベーン127S、127Tが往復運動する。この第1、第2環状ピストン125S、125T及び第1、第2ベーン127S、127Tの運動により、第1、第2吸入室131S、131T及び第1、第2圧縮室133S、133Tの容積が連続的に変化し、圧縮部12は、連続的に冷媒ガスを吸入し圧縮して吐出する。
【0027】
図1に示すように、下端板160Sの下側には、下マフラーカバー170Sが配置され、下端板160Sとの間に下マフラー室180Sを形成している。そして、第1の圧縮部12Sは、下マフラー室180Sに開口している。すなわち、下端板160Sの第1ベーン127S近傍には、第1シリンダ121Sの第1圧縮室133Sと下マフラー室180Sとを連通する第1吐出孔190S(図2参照)が設けられ、第1吐出孔190Sには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止するリード弁型の第1吐出弁200Sが配置されている。
【0028】
下マフラー室180Sは、環状に形成された1つの室であり、第1の圧縮部12Sの吐出側を、下端板160S、第1シリンダ121S、中間仕切板140、第2シリンダ121T及び上端板160Tを貫通する冷媒通路336(図2参照)を通して上マフラー室180T内に連通させる連通路の一部である。下マフラー室180Sは、吐出冷媒ガスの圧力脈動を低減させる。また、第1吐出弁200Sに重ねて、第1吐出弁200Sの撓み開弁量を制限するための第1吐出弁押さえ201Sが、第1吐出弁200Sとともにリベットにより固定されている。第1吐出弁200S及び第1吐出弁押さえ201Sは、下端板160Sの第1吐出弁部202Sを構成している。第1吐出弁部202Sは、下端板160Sに形成された第1吐出弁溝163S内に収容されている。第1吐出孔190Sは、第1吐出弁溝163Sの底部に設けられている。冷媒通路336の詳細については後述する。
【0029】
図1に示すように、上端板160Tの上側には、上マフラーカバー170Tが配置され、上端板160Tとの間に上マフラー室180Tを形成している。上端板160Tの第2ベーン127T近傍には、第2シリンダ121Tの第2圧縮室133Tと上マフラー室180Tとを連通する第2吐出孔190T(図2参照)が設けられ、第2吐出孔190Tには、圧縮された冷媒ガスの逆流を防止するリード弁型の第2吐出弁200Tが配置されている。また、第2吐出弁200Tに重ねて、第2吐出弁200Tの撓み開弁量を制限するための第2吐出弁押さえ201Tが、第2吐出弁200Tとともにリベットにより固定されている。上マフラー室180Tは、吐出冷媒の圧力脈動を低減させる。第2吐出弁200T及び第2吐出弁押さえ201Tは、上端板160Tの第2吐出弁部202Tを構成している。第2吐出弁部202Tは、上端板160Tに形成された第2吐出弁溝163T内に収容されている。第2吐出孔190Tは、第2吐出弁溝163Tの底部に設けられている。上端板160Tの主軸受部161Tと上マフラーカバー170Tの上端部との間には間隙が設けられ、この間隙がマフラー吐出孔171となっている。
【0030】
第1シリンダ121S、下端板160S、下マフラーカバー170S、第2シリンダ121T、上端板160T、上マフラーカバー170T及び中間仕切板140は、複数の通しボルト175等により一体に締結されている。通しボルト175等により一体に締結された圧縮部12のうち、上端板160Tの外周部が、圧縮機筐体10にスポット溶接により固着され、圧縮部12を圧縮機筐体10に固定している。
【0031】
円筒状の圧縮機筐体10の外周壁には、軸方向に離間して下部から順に、第1、第2貫通孔101、102が、第1、第2吸入管104、105を通すために設けられている。また、圧縮機筐体10の外側部には、独立した円筒状の密閉容器からなるアキュムレータ25が、アキュムホルダー252及びアキュムバンド253により保持されている。
【0032】
アキュムレータ25の天部中心には、冷凍サイクルの蒸発器に接続するシステム接続管255が接続され、アキュムレータ25の底部に設けられた底部貫通孔257には、一端がアキュムレータ25の内部上方まで延設され、他端が、第1、第2吸入管104、105の他端に接続される第1、第2低圧連絡管31S、31Tが接続されている。
【0033】
冷凍サイクルの低圧冷媒をアキュムレータ25を介して第1、第2の圧縮部12S、12Tに導く第1、第2低圧連絡管31S、31Tは、吸入部としての第1、第2吸入管104、105を介して第1、第2シリンダ121S、121Tの第1、第2吸入孔135S、135T(図2参照)に接続されている。すなわち、第1、第2吸入孔135S、135Tは、冷凍サイクルの蒸発器に並列に接続されている。
【0034】
圧縮機筐体10の天部には、冷凍サイクルと接続し高圧冷媒ガスを冷凍サイクルの凝縮器側に吐出する吐出部としての吐出管107が接続されている。すなわち、第1、第2吐出孔190S、190Tは、冷凍サイクルの凝縮器に接続されている。
【0035】
圧縮機筐体10内には、およそ第2シリンダ121Tの高さまで潤滑油が封入されている。また、潤滑油は、回転軸15の下部に挿入された羽根ポンプ(図示せず)により、回転軸15の下端部に取付けられた給油パイプ16から吸上げられ、圧縮部12を循環し、摺動部品の潤滑を行なうと共に、圧縮部12の微小隙間のシールをしている。
【0036】
次に、図3及び図4を参照して、実施例1のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。図3は、実施例1の冷媒通路を示す縦断面図であり、図4は、図2のA部拡大図である。
【0037】
図3及び図4に示すように、実施例1の冷媒通路336は、第1、第2シリンダ121S、121T及び中間仕切板140に設けられた冷媒通路336S、336T、336Uと、下端板160Sに設けられ下マフラー室180Sに連通する縦孔336A、及び下端板160Sの上面に設けられ縦孔336Aと第1シリンダ121Sに設けられた冷媒通路336Sとを連通させる横溝336Cと、上端板160Tに設けられ上マフラー室180Tに連通する縦孔336B、及び上端板160Tの下面に設けられ縦孔336Bと第2シリンダ121Tに設けられた冷媒通路336Tとを連通させる横溝336Dと、を備えてなる。なお、横溝336C及び336Dは、第1、第2シリンダ121S、121Tに設けてもよい。
【0038】
第1、第2シリンダ121S、121Tに設けられた冷媒通路336S、336Tと、第1、第2シリンダ外周面126S、126Tとの距離Hは、前記冷媒通路336S、336Tと第1、第2シリンダ内周面123S、123Tとの距離Hよりも小さくなっている(実施例1では、H/H≒1.5)。
【0039】
従来は、H=Hとしていたが、H<Hとすることにより、冷媒通路336から第1、第2シリンダ外周面126S、126Tへの伝熱量を増大させ、第1、第2シリンダ内周面123S、123Tへの伝熱量を低減させて、第1、第2シリンダ内周面123S、123Tの温度上昇を抑制し、圧縮機効率の低下を防止することができる。
【実施例2】
【0040】
図5は、実施例2の第1、第2の圧縮部を示す平面図である。図5に示すように、実施例2の冷媒通路436は、第1、第2シリンダ121S、121T及び中間仕切板140に設けられた冷媒通路436S、436T、436Uと、下端板160Sに設けられ下マフラー室180Sに連通する縦孔436A、及び下端板160Sの上面に設けられ縦孔436Aと第1シリンダ121Sに設けられた冷媒通路436Sとを連通させる横溝436Cと、上端板160Tに設けられ上マフラー室180Tに連通する縦孔436B、及び上端板160Tの下面に設けられ縦孔436Bと第2シリンダ121Tに設けられた冷媒通路436Tとを連通させる横溝436Dと、を備えてなる。なお、横溝436C、436Dは、第1、第2シリンダ121S、121Tに設けてもよい。
【0041】
実施例2では、第1、第2シリンダ121S、121T、中間仕切板140及び下、上端板160S、160Tの外周部に、径方向外方へ張出す凸部436Wを設け、凸部436W内に、冷媒通路436の一部又は全部が位置するようにしている。
【0042】
第1、第2シリンダ121S、121Tに設けられた冷媒通路436S、436Tと、凸部外周面126Gとの距離Hは、冷媒通路436S、436Tと第1、第2シリンダ内周面123S、123Tとの距離Hよりも小さくなっている(実施例1では、H/H≒3)。
【0043】
実施例1では、H/H≒1.5であるのに対して、実施例2では、H/H≒3とし、冷媒通路436S、436Tを、さらに第1、第2シリンダ内周面123S、123Tから離間させたので、冷媒通路436から凸部外周面126Gへの伝熱量をさらに増大させ、第1、第2シリンダ内周面123S、123Tへの伝熱量をさらに低減させて、第1、第2シリンダ内周面123S、123Tの温度上昇を抑制し、圧縮機効率の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ロータリ圧縮機
10 圧縮機筐体
11 モータ
12 圧縮部
15 回転軸
16 給油パイプ
25 アキュムレータ
31S 第1低圧連絡管(低圧連絡管)
31T 第2低圧連絡管(低圧連絡管)
101 第1貫通孔(貫通孔)
102 第2貫通孔(貫通孔)
104 第1吸入管(吸入管、吸入部)
105 第2吸入管(吸入管、吸入部)
107 吐出管(吐出部)
111 ステータ
112 ロータ
12S 第1の圧縮部(圧縮部)
12T 第2の圧縮部(圧縮部)
121S 第1シリンダ(シリンダ)
121T 第2シリンダ(シリンダ)
122S 第1側方張出部(側方張出部)
122T 第2側方張出部(側方張出部)
123S 第1シリンダ内周面(シリンダ内周面)
123T 第2シリンダ内周面(シリンダ内周面)
124S 第1スプリング穴(スプリング穴)
124T 第2スプリング穴(スプリング穴)
125S 第1環状ピストン(環状ピストン)
125T 第2環状ピストン(環状ピストン)
126S 第1シリンダ外周面(シリンダ外周面)
126T 第2シリンダ外周面(シリンダ外周面)
126G 凸部外周面
127S 第1ベーン(ベーン)
127T 第2ベーン(ベーン)
128S 第1ベーン溝(ベーン溝)
128T 第2ベーン溝(ベーン溝)
129S 第1圧力導入路(圧力導入路)
129T 第2圧力導入路(圧力導入路)
130S 第1作動室(作動室)
130T 第2作動室(作動室)
131S 第1吸入室(吸入室)
131T 第2吸入室(吸入室)
133S 第1圧縮室(圧縮室)
133T 第2圧縮室(圧縮室)
135S 第1吸入孔(吸入孔)
135T 第2吸入孔(吸入孔)
136,336,436,336S,336T,336U,436S,436T,436U 冷媒通路
336A,336B,436A,436B 縦孔
336C,336D,436C、436D 横溝
140 中間仕切板
151 副軸部
152S 第1偏心部(偏心部)
152T 第2偏心部(偏心部)
153 主軸部
160S 下端板(端板)
160T 上端板(端板)
161S 副軸受部(軸受部)
161T 主軸受部(軸受部)
163S 第1吐出弁溝
163T 第2吐出弁溝
170S 下マフラーカバー(マフラーカバー)
170T 上マフラーカバー(マフラーカバー)
171 マフラー吐出孔
175 通しボルト
180S 下マフラー室(マフラー室)
180T 上マフラー室(マフラー室)
190S 第1吐出孔(吐出孔)
190T 第2吐出孔(吐出孔)
200S 第1吐出弁(吐出弁)
200T 第2吐出弁(吐出弁)
201S 第1吐出弁押さえ(吐出弁押さえ)
201T 第2吐出弁押さえ(吐出弁押さえ)
202S 第1吐出弁部
202T 第2吐出弁部
252 アキュムホルダー
253 アキュムバンド
255 システム接続管
R 第1、第2圧力導入路の開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7