特許第6102306号(P6102306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILの特許一覧

<>
  • 特許6102306-ユニットルームの運搬方法及び設置方法 図000002
  • 特許6102306-ユニットルームの運搬方法及び設置方法 図000003
  • 特許6102306-ユニットルームの運搬方法及び設置方法 図000004
  • 特許6102306-ユニットルームの運搬方法及び設置方法 図000005
  • 特許6102306-ユニットルームの運搬方法及び設置方法 図000006
  • 特許6102306-ユニットルームの運搬方法及び設置方法 図000007
  • 特許6102306-ユニットルームの運搬方法及び設置方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102306
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ユニットルームの運搬方法及び設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   E04H1/12 301
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-26877(P2013-26877)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-156703(P2014-156703A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】羽田 滋明
(72)【発明者】
【氏名】山岡 嘉幸
(72)【発明者】
【氏名】中杉 慎一
(72)【発明者】
【氏名】秀島 正高
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−302965(JP,A)
【文献】 特開2013−14976(JP,A)
【文献】 特開2004−76481(JP,A)
【文献】 特開2008−38336(JP,A)
【文献】 特開2004−60244(JP,A)
【文献】 特開平6−220922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00−1/36
E04H 1/00−1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床パネルと、該床パネル上に立設された壁パネルと、該壁パネルの上側に設けられた天井パネルとを有するユニットルームを運搬する方法であって、
該床パネルは、吊り下げ用部材を係止するための係止部を有したボルトが少なくともコーナー部又はその近傍に設けられ、
該ボルトは、上下方向に螺進可能となっており、且つ床パネルの下面よりも下方に突出した位置まで螺進可能である床パネルであり、
吊り下げ用線状体を通すための上下方向の孔が設けられた枠体を、ユニットルームの上部周縁を周回するように該ユニットルームに装着する工程と、
該孔に挿通された線状体の下端を前記ボルトの前記係止部に係止させる工程と、
該線状体を介してユニットルームを吊り上げて運搬する工程と
を有するユニットルームの運搬方法。
【請求項2】
請求項において、前記枠体の前記孔は前記ボルトの上方に位置しているユニットルームの運搬方法。
【請求項3】
請求項又はにおいて、前記ユニットルームをクレーンで吊り上げて運搬するユニットルームの運搬方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ボルトはアイボルトであるユニットルームの運搬方法。
【請求項5】
請求項ないしのいずれか1項の運搬方法によってユニットルームを吊り上げて設置予定部に搬入し、次いで該設置予定部に降ろす工程と、
その後、前記ボルトを回してユニットルームのレベル調整を行う工程と
を有するユニットルームの設置方法。
【請求項6】
請求項において、前記ユニットルームを設置予定部に降ろした後、前記線状体の下端を前記係止部から外し、その後、前記ボルトを回してユニットルームのレベル調整を行うユニットルームの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室、シャワールーム、トイレルーム、洗面ルームなどのユニットルーム及びその床パネルと、その運搬方法及び設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室、シャワールーム、トイレルーム、洗面ルームなどのユニットルームを運搬する方法として、特許文献1に、ユニットルームの床部材に吊金具を取り付けておき、ユニットルームの上方に配置した吊り枠とこの吊金具とをチェーン等の連結材で連結し、吊り枠をクレーンで吊り上げて運搬する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−39675
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の運搬方法では、クレーンでユニットルームを運搬しているときにユニットルームが傾いたり揺れたりすると、連結材がユニットルームの上部周縁に当たり、ユニットルームが損傷するおそれがある。
【0005】
また、一般に、ユニットルームでは、施工現場に搬入した後にレベル調整を行うために、レベル調節用アジャスタボルトを設けている。
【0006】
本発明は、運搬が容易であると共に、現場に設置した後に容易にレベル調整を行うことができるユニットルーム及び床パネルと、その運搬方法及び設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のユニットルームの運搬方法は、床パネルと、該床パネル上に立設された壁パネルと、該壁パネルの上側に設けられた天井パネルとを有するユニットルームを運搬する方法であって、該床パネルは、吊り下げ用部材を係止するための係止部を有したボルトが少なくともコーナー部又はその近傍に設けられ、該ボルトは、上下方向に螺進可能となっており、且つ床パネルの下面よりも下方に突出した位置まで螺進可能である床パネルであり、吊り下げ用線状体を通すための上下方向の孔が設けられた枠体を、ユニットルームの上部周縁を周回するように該ユニットルームに装着する工程と、該孔に挿通された線状体の下端を前記ボルトの前記係止部に係止させる工程と、該線状体を介してユニットルームを吊り上げて運搬する工程とを有する。
【0011】
前記枠体の前記孔は、前記ボルトの上方に位置していることが好ましい。また、前記ユニットルームをクレーンで吊り上げて運搬することが好ましい。
【0012】
本発明のユニットルームの設置方法は、このユニットルームの運搬方法によってユニットルームを吊り上げて設置予定部に搬入し、次いで該設置予定部に降ろす工程と、その後、前記ボルトを回してユニットルームのレベル調整を行う工程とを有する。
【0013】
前記ユニットルームを設置予定部に降ろした後、前記線状体の下端を前記係止部から外し、その後、前記ボルトを回してユニットルームのレベル調整を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のユニットルーム及び床パネルは、係止部を有したボルトが上下方向に螺進可能に設けられている。この係止部に吊り下げ用部材の下端を係止させ、この吊り下げ用部材を介してユニットルーム又は床パネルを吊り上げて運搬することができる。
【0016】
ユニットルームを運搬するに際しては、ユニットルームの上部周縁を周回するように枠体をユニットルームに装着する。吊り下げ用部材は、この枠体に設けられた上下方向の孔に挿通される。このように枠体がユニットルーム上部に装着され、吊り下げ用部材が該枠体の孔に挿通されるため、運搬時にユニットルームが傾いたり揺れたりしても、吊り下げ用部材がユニットルームに当たることがなく、ユニットルームの損傷が防止される。
【0017】
このユニットルーム又は床パネルを設置予定部に搬入し、設置予定部に降ろした後、ボルトを回すことにより、ユニットルーム又は床パネルのレベル調整が行われる。本発明では、ボルトが吊り金具とレベル調整部材との双方の機能を有している。そのため、ユニットルーム又は床パネルの構成部材数が少ない。
【0018】
ユニットルーム又は床パネルを設置予定部に降ろした後、係止部から吊り下げ用部材を外し、その後、ボルトを回してレベル調整することにより、ボルトを容易に回すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係るユニットルームと、その運搬方法を示す斜視図である。
図2】ユニットルームの設置方法を示す縦断面図である。
図3】ユニットルームのレベル調整方法を示す縦断面図である。
図4】吊り枠の斜視図である。
図5】ユニットルームの間取り図である。
図6図3のVI−VI線断面図である。
図7】床パネルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜7を参照して実施の形態について説明する。
【0021】
図7の通り、床パネル1は、フレーム2と、コンクリート版3と、コンクリート版3の上面に張られたタイル4とを有する。
【0022】
フレーム2は枠状のフレーム本体2aと、フレーム本体2a内に縦横に配列された鉄筋(図示略)とを有する。この実施の形態では、フレーム本体2aは、平面視形状が長方形であるが、正方形であってもよく、またこれらとは異なる形状であってもよい。この実施の形態では、フレーム本体2aは鉄製であるが、これに限定されない。コンクリート版3は、このフレーム本体2aの内側にコンクリートを打設することにより形成されたものであり、鉄筋はコンクリート版3内に埋設されている。コンクリートを打設するに際して、塩化ビニルなどの合成樹脂製の汚水管5、排水目皿6を配置しておき、これらをコンクリート版3と一体とする。
【0023】
図2,3にも示すように、フレーム本体2aの4個のコーナー部にそれぞれアイボルト8が取り付けられている。フレーム本体2aの上面にボルト挿通孔が設けられ、このボルト挿通孔と同軸に配置されたナット9が溶接によりフレーム本体2aに固定されている。このナット9にアイボルト8が螺合している。アイボルト8にはロックナット10が螺合している。アイボルト8の鉛直下方のフレーム本体2aの底面部には、アイボルト8が通過可能な開口11が設けられている。
【0024】
ユニットルーム20は、図5の通り、この床パネル1の周縁に壁パネル21,22,23,24を立設し、壁パネル21〜24の上端に跨るように天井パネル25(図1)を設けたものである。壁パネル24には出入口ドア24aが設けられている。
【0025】
ユニットルーム20内は、間仕切り26によってシャワースペース27とトイレスペース28とに区画されている。トイレスペース28には便器29と洗面器30が設置されている。
【0026】
この実施の形態では、壁パネル21〜24は、図6の通り、フレーム31と、該フレーム31の前面に取り付けられた下地ボード32と、該下地ボード32の前面に張り付けられたタイル33とを有している。
【0027】
ユニットルーム20のコーナー部においては、隣接する壁パネル21,22同士、壁パネル22,23同士、壁パネル23,24同士、壁パネル24,21同士を連結するためにコーナーポスト35が設置され、各壁パネル21〜24のフレーム31がビス36によってコーナーポスト35に留め付けられている。アイボルト8はこのコーナーポスト35の内側に配置されている。このため、アイボルト8を配置する為の専用スペースが不要である。コーナーポスト35はLアングルであってもよい。
【0028】
このユニットルーム20を運搬する際に用いられる枠体40は、図4の通り、長方形状の枠本体41と、該枠本体41の補強桟42と、該枠本体41の4個のコーナー部に上下方向に貫通するように設けられた孔43と、枠本体41の4個のコーナー部から下方に突設されたガイド片44とを有する。ガイド片44は水平断面形状がL字形であり、ユニットルーム20の上部のコーナー部の外側面に沿うことができるようになっている。ただし、ガイド片44は角パイプなどのパイプによって構成されてもよい。
【0029】
孔43にそれぞれワイヤ、チェーン等の線状体46が挿通されている。線状体46の下端に係止部材としてのフック47が取り下げられている。この実施の形態では、4条の線状体46の上端が一括りに束ねられている。ただし、枠体40の対角線上に配置された線状体46,46を一続きとしてもよい。
【0030】
ユニットルーム20を運搬するには、図1の通り、線状体46付きの枠体40をユニットルーム20の上部に装着し、各ガイド片44をユニットルーム20の4個のコーナー部の外側面に沿わせる。各線状体46の下端のフック47をアイボルト8に引っ掛ける。そして、線状体46の上部にクレーンのフック50を引っ掛け、ユニットルーム20を吊り上げて運搬する。ユニットルーム20に枠体40が装着され、各孔43が各アイボルト8の鉛直上方に位置しているので、線状体46は床パネル1と枠体40との間では鉛直となっている。各線状体46がそれぞれ孔43に挿通されているので、運搬中にユニットルーム20が揺れたり傾いたりしても、線状体46がユニットルーム20に当たることがなく、ユニットルーム20の損傷が防止される。
【0031】
このユニットルーム20を設置予定部(この実施の形態では床スラブ60)の上方にまで搬入した後、ユニットルーム20をゆっくりと降下させて床スラブ60上に降ろす。図2の通り、床スラブ60上のボルト8の着地予定部に予め接着剤又はモルタル61を盛り付けておくのが好ましい。
【0032】
ユニットルーム20を床スラブ60上に降ろした後、フック47をアイボルト8から外し、クレーンで線状体46を介して枠体40を引き上げて枠体40を設置予定部から搬出する。次いで、アイボルト8を回し、図3の通りアイボルト8を開口11から下方に突出させ、床スラブ60の上面に当接させ、その後さらにアイボルト8を回してユニットルーム20のレベル調整を行う。このようにして、ユニットルーム20を床スラブ60上に設置し、かつレベル調整することができる。
【0033】
ユニットルーム20のレベル調整作業効率を向上させるために、工場でユニットルーム20を組み立てた後、壁パネル裏面に水平基線を入れておくのが好ましい。ユニットルーム20を床スラブ60上に降ろした後、現場に予め引いておいた陸墨とこの水平基線とを合わせて水平レベル調整を行う。陸墨を付けておく代わりに水準器(例えばレーザー水準器)を用いて水平レベル調整を行ってもよい。
【0034】
上記説明ではユニットルーム20を運搬し、設置施工しているが、ユニットルーム20の製作工場からユニットルームを搬出する場合にも、枠体40をユニットルーム20に装着し、図1のようにして運搬することもできる。
【0035】
枠体40は、工場からの搬出後にユニットルーム20から外してもよく、工場から施工現場までユニットルーム20に装着したままとしてもよい。
【0036】
上記説明では、ユニットルーム20を運搬及び設置施工しているが、床パネル1のみを運搬し、設置予定部に降ろしてレベル調整し、その後、床パネル1上に壁パネルを建て込んでユニットルームを構築してもよい。この場合、床パネル1のアイボルト8に線状体46のフックを掛け、線状体46をクレーンで吊り上げて運搬する。床パネル1のレベル調整方法は図2,3に示した手順と同じである。即ち、床パネル1を床スラブ60上に降ろした後、フック47をアイボルト8から外し、次いでアイボルト8を回してレベル調整する。
【0037】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、上記説明では、床パネル1及びユニットルーム20はシャワー・トイレ用となっているが、浴室用ユニットルームなどその他のユニットルームであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 床パネル
2 フレーム
2a フレーム本体
3 コンクリート版
4 タイル
8 アイボルト
20 ユニットルーム
21〜24 壁パネル
25 天井パネル
40 枠体
41 枠本体
43 孔
44 ガイド片
46 線状体
47,50 フック
60 床スラブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7