(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102364
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】燃料電池用系統連系システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20170316BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20170316BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H02M7/48 R
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-50384(P2013-50384)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-180069(P2014-180069A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】寒川 良浩
【審査官】
早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−101668(JP,A)
【文献】
特開2011−097727(JP,A)
【文献】
特開2010−066919(JP,A)
【文献】
特開2011−049053(JP,A)
【文献】
特開2006−101636(JP,A)
【文献】
特開2011−050191(JP,A)
【文献】
特開2002−165357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−3/50
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
H02M3/00−3/44
H02M7/00−7/98
H01M8/04−8/06
G05F1/12−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池から出力される直流電圧が最低入力許容電圧値よりも大きいときに、前記燃料電池から出力される直流電圧を所定の直流電圧に変換するコンバータ部と、
前記コンバータ部から出力される直流電圧を交流電圧に変換して系統に供給する系統連系インバータ部と、
前記燃料電池から出力され前記コンバータ部に入力される直流電圧を検出するコンバータ部入力電圧検出部と、
前記コンバータ部入力電圧検出部により検出された直流電圧が、前記最低入力許容電圧値の近傍の所定の値以下であるときに、前記系統連系インバータ部から出力される交流電流を低減する制御を前記系統連系インバータ部に対して行う制御部と、を有する燃料電池用系統連系システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池と商用電源系統とを連系する燃料電池用系統連系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池等の発電部と商用電源系統(以下「系統」ともいう)とを連系する燃料電池用系統連系システムは、パワーコンディショナを備えている。パワーコンディショナは、発電部で発電した直流電力を系統に供給可能な交流電力に変換するために、コンバータ部と系統連系インバータ部とを有している。コンバータ部は、発電部で発電された直流電圧を昇圧する。系統連系インバータ部は、コンバータ部で昇圧された直流電圧を、系統と同期の取れた交流電圧に変換する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−97727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
系統連系インバータ部においては、出力電流を制御することは可能であるが、出力電圧は、一定である。燃料電池において電気を十分に出力していないにもかかわらず、系統連系インバータ部において過剰な電流を出力し続けると、コンバータ部は、停止する。
【0005】
具体的には、燃料電池用系統連系システムの起動時、停止時、及び出力調節時に、電気の容量制御を行う系統連系インバータの制御電流量は、燃料電池の出力電流量と比較して大きくなることがある。これにより、燃料電池の出力電圧が、コンバータ部の許容電圧としての最低入力許容電圧値以下に降下すると、コンバータ部は、停止し即復帰することを繰り返す不安定な状態になる。
【0006】
本発明は、燃料電池において電気を十分に出力していないときに、コンバータ部が停止することを防止する燃料電池用系統連系システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料電池と、前記燃料電池から出力される直流電圧が最低入力許容電圧値よりも大きいときに、前記燃料電池から出力される直流電圧を所定の直流電圧に変換するコンバータ部と、前記コンバータ部から出力される直流電圧を交流電圧に変換して系統に供給する系統連系インバータ部と、前記燃料電池から出力され前記コンバータ部に入力される直流電圧を検出するコンバータ部入力電圧検出部と、前記コンバータ部入力電圧検出部により検出された直流電圧が、前記最低入力許容電圧値の近傍の所定の値以下であるときに、前記系統連系インバータ部から出力される交流電流を低減する制御を前記系統連系インバータ部に対して行う制御部と、を有する燃料電池用系統連系システムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料電池において電気を十分に出力していないときに、コンバータ部が停止することを防止する燃料電池用系統連系システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態による燃料電池用系統連系システム1を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による燃料電池用系統連系システムについて、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態による燃料電池用系統連系システム1を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、燃料電池用系統連系システム1は、燃料電池10と、コンバータ部としてのDC/DCコンバータ20と、系統連系インバータ部としての系統連系インバータ30と、コンバータ部入力電圧検出部40と、制御部50とを備えている。燃料電池用系統連系システム1は、発電部である燃料電池10と商用電源系統60(以下「系統60」ともいう)とを連系する。
【0012】
燃料電池10と、DC/DCコンバータ20と、系統連系インバータ30とは、この順で電気的に直列接続されている。より詳細には、DC/DCコンバータ20と系統連系インバータ30とは、DCバスにより電気的に接続されている。コンバータ部入力電圧検出部40は、燃料電池10とDC/DCコンバータ20との間に電気的に接続されている。また、制御部50と、DC/DCコンバータ20、系統連系インバータ30、及びコンバータ部入力電圧検出部40とは、それぞれ電気的に接続されている。制御部50は、DC/DCコンバータ20、系統連系インバータ30、及びコンバータ部入力電圧検出部40を制御可能である。
【0013】
燃料電池10は、例えば、高温型の燃料電池であるSOFC(固体酸化物形燃料電池)により構成される。燃料電池10においては、水素と酸素とが反応することによる発電が行われる。燃料電池10によって発電された直流電圧は、DC/DCコンバータ20に出力される。
【0014】
DC/DCコンバータ20は、燃料電池10から出力される90V〜160V程度の直流電圧を、所定の直流電圧に変換(昇圧)する。所定の直流電圧とは、例えば、系統連系インバータ30において系統60に供給可能な電圧(例えば、AC200V)の生成ができる程度の電圧(例えば、DC280V)であり、この出力電圧は、固定値である。
【0015】
従って、DC/DCコンバータ20は、燃料電池10から出力される直流電圧が、最低入力許容電圧値よりも大きいときに、燃料電池10から出力される直流電圧を所定の直流電圧に変換する。逆に、DC/DCコンバータ20は、燃料電池10から出力される直流電圧が、最低入力許容電圧値よりも小さいときには、直流電圧を昇圧する変換を停止する。最低入力許容電圧値とは、例えば、80Vである。
【0016】
系統連系インバータ30は、DC/DCコンバータ20から出力される直流電圧を、系統60に供給可能な所定の交流電圧(例えば、AC200V)に変換して系統に供給する。系統連系インバータ30は、交流電圧を系統に供給するため、系統連系インバータ30から出力される交流電圧の値は、固定値である。一方、系統連系インバータ30は、系統連系インバータ30から出力される電流の値を制御可能である。
【0017】
コンバータ部入力電圧検出部40は、燃料電池10から出力されてDC/DCコンバータ20に入力される直流電圧値を検出する。検出した直流電圧値は、制御部50に出力される。
【0018】
制御部50は、シーケンサーにより構成されており、燃料電池10について起動から発電までの一連の動作を制御する。具体的には、制御部50は、燃料電池10において発電するために設けられている補機(図示せず)に電気的に接続されており、補機等の制御を行う。ここで、補機とは、例えば、空気を燃料電池10に供給するためのブロワ(図示せず)や、燃料電池10に燃料を供給するためのブースター(図示せず)等である。
【0019】
また、制御部50は、コンバータ部入力電圧検出部40により検出された直流電圧値が、最低入力許容電圧値の近傍の所定の値、例えば、90Vの値以下か否かを判断する。制御部50は、コンバータ部入力電圧検出部40により検出された直流電圧値が最低入力許容電圧値の近傍の所定の値以下であると判断したときには、系統連系インバータ30から出力される交流電流を低減する制御を、系統連系インバータ30に対して行う。
【0020】
上記本実施形態の燃料電池用系統連系システム1によれば、以下のような効果を得ることができる。
前述のように、燃料電池用系統連系システム1は、燃料電池10から出力されコンバータ部としてのDC/DCコンバータ20に入力される直流電圧を検出するコンバータ部入力電圧検出部40と、コンバータ部入力電圧検出部40により検出された直流電圧が、最低入力許容電圧値の近傍の所定の値以下であるときに、系統連系インバータ30から出力される交流電流を低減する制御を系統連系インバータ30に対して行う制御部50とを備える。
【0021】
このため、燃料電池10において電気を十分に出力していないにもかかわらず、系統連系インバータ30において過剰な電流を出力し続けることを防止することができる。これにより、DC/DCコンバータ20において電気を十分に出力していないときに、DC/DCコンバータ20が停止し即復帰する不安定な動作の発生を、防止することができる。この結果、燃料電池10のセルスタックへのダメージを抑えることができる。
【0022】
また、系統連系インバータ30から出力される交流電流を低減することができるため、DC/DCコンバータ20において出力電圧を可変とする必要がなくなり、出力電圧可変の高価なDC/DCコンバータ20を用いる必要がなくなる。即ち、出力電圧を制御することができず出力電圧が固定値の、安価なDC/DCコンバータ20を用いることができる。この結果、燃料電池用系統連系システム1を構成する費用の低減を図ることができる。
【0023】
また、制御部50は、コンバータ部入力電圧検出部40により検出された直流電圧が、最低入力許容電圧値の近傍の所定の値以下であるときに、系統連系インバータ30から出力される交流電流を低減する。このため、燃料電池10から出力される直流電圧が、最低入力許容電圧値よりも小さくなる前に、予め、系統連系インバータ部から出力される交流電流を低減することができる。この結果、制御部50は、早めに余裕を持って、DC/DCコンバータ20が直流電圧を昇圧する変換を停止しないように対応を行うことができる。
【0024】
本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において変形が可能である。例えば、燃料電池10は、SOFCにより構成されていたが、SOFCに限定されない。例えば、PEFC(固体高分子形燃料電池)等を用いてもよい。また、各電圧の値等は、本実施形態に記載の値に限定されない。
【符号の説明】
【0025】
1 燃料電池用系統連系システム
10 燃料電池
20 DC/DCコンバータ(コンバータ部)
30 系統連系インバータ(系統連系インバータ部)
40 コンバータ部入力電圧検出部
50 制御部