(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
AlNは高い熱伝導率を有するが、熱伝導率を向上させるためには結晶粒径を大きくする必要がある。AlNの結晶粒径が大きくなるほど、AlN基板の研磨工程やダイシング工程において基板表面からAlNの結晶粒子が脱落し易くなり、表面の平滑度が低下する。基板表面の平滑度が低いと、基板上に発光素子等の部材を形成する際に問題が生じる場合がある。
【0006】
例えば、基板表面上に形成される電極膜の平滑度も低くなるため、そこに発光素子をはんだ接続する場合に、はんだ中のボイド発生率が高くなる。このため、AlN基板上に発光素子をはんだ接続する場合、AlN基板の熱伝導率は高いものの、はんだ中のボイドにより発光素子からAlN基板へ熱が伝わりにくくなるため、装置の放熱特性が低くなるおそれがある。
【0007】
本発明の目的の一つは、発光素子から基板へ、かつ基板の表面から裏面へ効果的に熱を逃がすことができる、放熱性に優れた発光装置、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]〜[5]の発光装置の製造方法を提供する。
【0009】
[1] 非導電性材料からなり、発光素子搭載部と発光素子
非搭載部を有する素子搭載基板の、前記発光素子搭載部と前記発光素子
非搭載部に対応する領域に複数の貫通孔を形成する工程と、前記複数の貫通孔を埋め、かつ、前記素子搭載基板の第1の主面及び第2の主面を覆う導電部材を形成する工程と、前記素子搭載基板の少なくとも前記第1の主面を露出させないように、前記導電部材の前記第1の主面及び前記第2の主面を覆う部分に平坦化処理を施す工程と、前記導電部材を前記素子搭載基板の面内方向に分離する工程と、前記導電部材の分離された異なる部分に、発光素子のn側電極とp側電極がそれぞれ電気的に接続されるように、前記発光素子を前記第1の主面側の前記素子搭載基板上に搭載する工程と、を含む発光装置の製造方法。
【0010】
[2] 前記発光素子は、前記
素子搭載基板上にはんだ接続される、前記[1]に記載の発光装置の製造方法。
【0011】
[3] 前記導電部材の前記複数の貫通孔内の部分の前記
素子搭載基板中の体積占有率が13%以上である、前記[1]又は[2]に記載の発光装置の製造方法。
【0012】
[4] 前記
素子搭載基板はSi基板である、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【0013】
[5] 複数の発光素子を前記
素子搭載基板上に搭載する、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【0014】
また、本発明の他の態様は、上記目的を達成するために、下記[6]の発光装置を提供する。
【0015】
[6]前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法により製造された、発光装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発光素子から基板へ、かつ基板の表面から裏面へ効果的に熱を逃がすことができる、放熱性に優れた発光装置、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施の形態〕
(発光装置の構成)
図1は、第1の実施の形態に係る発光装置10の垂直断面図である。発光装置10は、複数の貫通孔を有する基板11と、基板11の複数の貫通孔内及び表面上に形成された導電部材12a、12bと、基板11の一方の面側(
図1の上側)の導電部材12a、12b上にそれぞれ形成される電極膜13a、13bと、電極膜13a、13bに電気的に接続されるように基板11上に搭載される発光素子20と、を有する。
【0019】
基板11は、Si、AlN等の非導電性材料からなる。基板11中の複数の貫通孔は、例えば、円柱状、又は多角柱状の孔である。
【0020】
導電部材12a、12bは、Cu等の導電性材料からなる。導電部材12a、12bは、基板11の複数の貫通孔を埋める孔内部12vと、基板11の表面及び裏面を覆う表面部12sを含む。表面部12sの表面はCMP(Chemical Mechanical Polishing)等の平坦化処理により平坦化されている。なお、表面部12sは、少なくとも基板11の発光素子20側の主面上に形成されていればよい。
【0021】
電極膜13a、13bは、Au、Ag等の導電性材料からなる。電極膜13a、13bは、それぞれ導電部材12a、12bに電気的に接続される。電極膜13a、13bは薄膜であり、導電部材12a、12bの表面部12sよりも薄い。なお、発光装置10は電極膜13a、13bを有さず、導電部材12a、12bを電極として用いてもよい。
【0022】
発光素子20は、例えば、
図1に示されるようなフリップチップ型のLEDチップである。発光素子20は、素子基板21と、発光層及びそれを挟むクラッド層を含む結晶層22と、結晶層22に接続されるn側電極23aとp側電極23bを有する。
【0023】
発光素子20のn側電極23aとp側電極23bは、はんだバンプ等のはんだ層14を介して電極膜13a、13bにそれぞれ接続される。発光装置10が電極膜13a、13bを有さない場合は、n側電極23aとp側電極23bは、導電部材12a、12bの表面部12sに接続される。
【0024】
(発光装置の製造)
以下に、本実施の形態に係る発光装置10の製造工程の一例を説明する。
【0025】
図2(a)〜(d)、
図3(e)〜(g)は、第1の実施の形態に係る導電部材12a、12bの製造工程を示す拡大された垂直断面図である。
【0026】
まず、
図2(a)に示されるように、熱酸化処理等により、Si基板である基板11の両側の主面上にシリコン酸化膜30を形成する。ここで、基板11の両側の主面のうち、発光素子20を搭載する側の面を第1の主面11aとし、その反対側の主面を第2の主面11bとする。
【0027】
次に、
図2(b)に示されるように、フォトリソグラフィにより形成されるマスクを用いたドライエッチングにより、基板11及びシリコン酸化膜30に複数の貫通孔31を形成する。この工程で行われるドライエッチングは、例えば、深堀RIE(Deep-Reactive Ion Etching)である。
【0028】
次に、
図2(c)に示されるように、熱酸化処理等により、貫通孔31の内面及びシリコン酸化膜30の表面にシリコン酸化膜32を形成する。シリコン酸化膜32の厚さは、例えば1μm程度であり、シリコン酸化膜32により導電部材12a、12bの孔内部12vと基板11との絶縁が確保される。
【0029】
次に、
図2(d)に示されるように、スパッタリングにより、シリコン酸化膜32上にTiN、SiN等からなるバリア層33を形成する。
【0030】
次に、
図3(e)に示されるように、スパッタリングにより、バリア層33上に無電解銅等からなる電極用シード層34を形成する。
【0031】
次に、
図3(f)に示されるように、電解めっきにより、電極用シード層34上にCuをめっきし、導電部材12を形成する。導電部材12は、複数の貫通孔31を埋め、かつ、基板11の第1の主面11a及び第2の主面11bを覆うように形成される。
【0032】
次に、
図3(g)に示されるように、少なくとも基板11の第1の主面11aを露出させないように、すなわち、少なくとも第1の主面11a上に表面部12sを形成するように、導電部材12の基板11の第1の主面11a及び第2の主面11bを覆う部分にCMP等の平坦化処理を施す。
【0033】
その後、フォトリソグラフィにより形成されるマスクを用いたドライエッチングにより、導電部材12の基板11の第1の主面11a及び第2の主面11bを覆う部分にエッチングを施し、導電部材12を基板11の面内方向に分離し、導電部材12aと導電部材12bを形成する。
【0034】
そして、導電部材12a、12bにn側電極23aとp側電極23bがそれぞれ電気的に接続されるように、発光素子20を基板11上に搭載する。
【0035】
なお、上述のシリコン酸化膜30、シリコン酸化膜32、バリア層33、及び電極用シード層34の
図1における図示は省略している。
【0036】
(発光装置の放熱特性)
以下に、本実施の形態の発光装置の放熱特性について、比較例を用いて説明する。
【0037】
図4(a)は、第1の実施の形態に係る発光装置10の放熱経路を模式的に表す。
図4(b)は、比較例に係る発光装置100の放熱経路を模式的に表す。
図4(a)、(b)において、導電部材中を通る矢印は発光素子20で発生した熱の主な放熱経路を表す。
【0038】
図4(b)に示される比較例に係る発光装置100は、導電部材101が表面部12sに対応する部分を含まず、孔内部12vに対応する貫通孔内の部分のみで構成される点において、第1の実施の形態に係る発光装置10と異なる。
【0039】
発光装置100では、複数の導電部材101が分離して基板11中に形成されており、基板11を隔てて隣接する導電部材101間の熱の移動が少ない。このため、発光素子20直下の導電部材101のみが、発光素子20で発生した熱の主な放熱経路として機能する。なお、膜厚の薄い電極膜13a、13bは、放熱経路としてはほとんど機能しない。
【0040】
一方、発光装置10においては、導電部材12a、12bの表面部12sが放熱経路として機能するため、発光素子20で発生した熱が表面部12sを通って広範囲の孔内部12vへ伝わり、放熱される。すなわち、発光装置10は、導電部材12a、12bが表面部12sを有するため、導電部材12a、12bの広範囲の領域が放熱経路として機能する。このため、第1の実施の形態に係る発光装置10は、比較例に係る発光装置100よりも放熱特性に優れる。なお、導電部材12a、12bの表面部12sが少なくとも基板11の第1の主面11a側に存在すれば、優れた放熱特性が得られる。
【0041】
図5(a)は、第1の実施の形態に係る発光装置10の拡大図である。
図5(b)は、比較例に係る発光装置200の拡大図である。
図5(a)、(b)にそれぞれ示される発光装置10、200は、AlN基板等の表面に比較的大きな凹凸を有する基板を基板11として有する。
【0042】
図5(b)に示される比較例に係る発光装置200は、導電部材12a、12bを有さない点において、第1の実施の形態に係る発光装置10と異なる。
【0043】
発光装置200では、基板11の凹凸を有する表面上に電極膜13a、13bを直接形成するため、電極膜13a、13bにも凹凸が形成される。そして、凹凸を有する電極膜13a、13b上に形成されるはんだ層14中にはボイドが発生し易い。はんだ層14はボイドを含むと熱伝導性が低下するため、発光素子20で発生した熱が基板11側へ逃げ難くなる。このため、基板11の熱伝導率が高い場合であっても、はんだ層14中のボイドにより、発光装置200の放熱特性が低下する。
【0044】
一方、発光装置10においては、導電部材12a、12bの平坦化された表面部12s上に電極膜13a、13bが形成されるため、基板11の表面に凹凸が存在する場合であっても、電極膜13a、13bは平坦に形成される。このため、はんだ層14中におけるボイドの発生を抑え、発光素子20で発生した熱を効率よく基板11側へ逃がすことができる。このように、発光素子20が表面に凹凸を有する基板11上にはんだ接続される場合には、放熱特性を向上させるために導電部材12a、12bの存在がより重要になる。なお、導電部材12a、12bの表面部12sは、少なくとも基板11の第1の主面11a側に存在すれば、はんだ層14中におけるボイドの発生を抑えることができる。
【0045】
図6は、導電部材12a、12bの孔内部12vの基板11中の体積占有率(以下、「体積占有率」と表す)と基板11の過渡熱抵抗との関係を表すグラフである。ここで、基板11に単発パルスを加えた時に発生する熱を印加した電力で割った物が熱抵抗値であり、この熱抵抗値をパルス時間単位で表したものが過渡熱抵抗である。
【0046】
図6には、体積占有率が0%、7.07%、14.4%、19.6%であるときの過渡熱抵抗率の測定値がそれぞれマーク“◇”でプロットされている。また、マーク“◆”は、各体積占有率における“◇”の平均値を表し、点線は、体積占有率7.07%、14.4%、19.6%における“◆”の座標から導かれた近似直線である。
【0047】
この過渡熱抵抗率を測定した発光装置10の基板11はSi基板であり、導電部材12a、12bはCuからなる。なお、体積占有率19.6%は、製造工程上のほぼ上限値であり、これ以上の体積占有率で孔内部12vを形成することは困難である。
【0048】
また、
図6の右端には、比較例に係る発光装置の過渡熱抵抗率の測定値がマーク“○”でプロットされている。また、マーク“●”は、“○”の平均値を表す。この比較例に係る発光装置は、AlN基板を有し、導電部材12a、12bを有さず、
図5(b)に示される発光装置200と同じ構造を有する。
【0049】
なお、この過渡熱抵抗率を測定した発光装置10の基板11の面積と、比較例に係る発光装置のAlN基板の面積は同じである。
【0050】
図6は、発光装置10の体積占有率が増加するほど過渡熱抵抗率が低下し、体積占有率がおよそ13%以上であるときに、過渡熱抵抗率の平均値が比較例に係る発光素子の過渡熱抵抗率の平均値以下になることを示している。すなわち、孔内部12vの基板11中の体積占有率を13%以上にすることにより、導電部材12a、12bを備えた基板11の過渡熱抵抗率が、熱伝導率の高いAlN基板の過渡熱抵抗率以下になることを示している。
【0051】
図7(a)は、第1の実施の形態に係る発光装置10の動作時の温度分布を表すグラフである。
図7(b)は、比較例に係る発光装置の動作時の温度分布を表すグラフである。
【0052】
図8は、第1の実施の形態に係る発光装置10及び比較例に係る発光装置の温度分布の測定位置を示すための発光装置の模式的な上面図である。
図7(a)、(b)の測定値は、
図8中の矢印で表される直線上の温度分布を測定して得られたものである。なお、
図8においては、導電部材12a、12bの図示が省略されている。
【0053】
ここで、温度分布を測定した発光装置10の基板11は、一辺の長さが3.5mmの正方形のSi基板である。また、導電部材12a、12bは、Cuからなり、孔内部12vの基板11中の体積占有率が19.6%である。
【0054】
比較例に係る発光装置は、
図5(b)に示される発光装置200と同じ構造を有し、基板11として一辺の長さが3.5mmの正方形のAlN基板を有する。なお、導電部材12a、12bは有さない。
【0055】
発光装置10、比較例に係る発光装置は、いずれも一辺の長さが1mmの正方形の同じLEDチップを発光素子20として有する。また、発光装置10、比較例に係る発光装置は、いずれも表面に電極を有するAl基板35上に設置され、Al基板35の電極を介して発光素子20へ電源が供給される。
【0056】
図7(a)、(b)、
図8のA、Bは、温度分布の測定領域である直線上の発光素子10の両端の位置を表し、C、Dは、基板11の両端の位置を表す。
【0057】
図7(a)、(b)は、発光装置10の温度が、比較例に係る発光装置の温度よりも、全体的に低いことを示している。このことは、発光装置10が、熱伝導率の高いAlN基板を有する発光装置と同等、又はより優れた放熱特性を有することを示している。
【0058】
また、
図7(a)、(b)に示される温度Tは、点C、Dにおける温度と点A、Bにおける温度の中間の温度である。複数の発光素子20を並べて設置する場合に、隣接する発光素子20の温度分布曲線の温度Tより高い部分が重なり合うと、重ね合わされた温度が発光素子20のジャンクション温度を超える。このため、点Aの位置と温度がTである位置との距離(点Bの位置と温度がTである位置との距離)を、隣接する発光素子20の間隔の最小値に設定することが求められる。
【0059】
このことから、発光装置10において複数の発光素子20を搭載する場合の間隔の最小値は0.3mmと設定され、比較例に係る発光装置において複数の発光素子20を搭載する場合の間隔の最小値は0.1mmと設定される。そして、ここから、発光装置10における発光素子20の間隔の、発光素子20の幅に対する比の最小値を0.3と設定し、比較例に係る発光装置における発光素子20の間隔の、発光素子20の幅に対する比の最小値を0.1と設定することができる。
【0060】
上記のように、発光装置10において複数の発光素子20を搭載する場合の間隔の最小値は、熱伝導率の高いAlN基板を有する発光装置のものとの差が小さい。この結果は、発光装置10に複数の発光素子20を十分高密度に配置できることを示している。
【0061】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、基板11上に複数の発光素子20を搭載する形態である。第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
【0062】
図9は、第2の実施の形態に係る発光装置300の垂直断面図である。発光装置300は、複数の貫通孔を有する基板11と、基板11の複数の貫通孔内及び表面上に形成された導電部材12c、12d、12eと、基板11の一方の面側(
図1の上側)の導電部材12c、12d、12e上にそれぞれ形成される電極膜13c、13d、13eと、電極膜13c、13dに電気的に接続されるように基板11上に搭載される発光素子20aと、電極膜13d、13eに電気的に接続されるように基板11上に搭載される発光素子20bと、を有する。
【0063】
発光素子20aと発光素子20bの間隔Dは、例えば、導電部材12c、12d、12eの孔内部12vの基板11中の体積占有率が19.6%である場合には、間隔Dの発光素子20a、20bの幅に対する比の最小値が0.3となるように設定される。
【0064】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によれば、表面部12s及び孔内部12vを有する導電部材を設けることにより、発光装置の放熱特性を大きく向上させることができる。また、発光装置が優れた放熱特性を有するため、複数の発光素子を十分高密度に配置することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0066】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。