(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品1の外観形状を示す略斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態によるコイル部品1は表面実装型のチップ部品であり、平面コイル導体を含む薄膜コイル層3と、薄膜コイル層3の上下にそれぞれ重ねて設けられた第1及び第2の金属磁性粉含有樹脂層17,18とを有している。コイル部品1の外形は直方体であり、上面1a、底面1b、及び4つの側面1c〜1fを有している。
【0017】
コイル部品1の上面1a(第1の金属磁性粉含有樹脂層17の主面)には一対の外部電極28,29が設けられており、またコイル部品1の対向する2つの側面1c,1dには一対の側面電極30,31がそれぞれ設けられている。外部電極28と側面電極30の組み合わせは一方のL字電極を構成しており、外部電極29と側面電極31との組み合わせは他方のL字電極を構成している。このL字電極によればコイル部品1の実装時にはんだフィレットを形成することができる。なお、実装時には、外部電極28,29が実装面と対向するようにコイル部品1の上面1aを下向きにして使用される。薄膜コイル層3は平面コイル導体を支持するための基板10を含み、基板10の各側面はコイル部品1の各側面1c〜1fから露出している。特に、コイル部品1の側面1c,1dから露出する基板10の側面は各側面電極30,31の形成領域内に位置している。そのため、側面電極30,31は上下方向に分割されている。
【0018】
図2は、コイル部品1の略分解斜視図である。
【0019】
図2に示すように、コイル部品1は、基板10と、基板10の上面10a(一方の主面)に形成された第1のスパイラル導体11、第1の端子電極13及び第1のダミー端子電極15と、基板10の下面10b(他方の主面)に形成された第2のスパイラル導体12、第2の端子電極14及び第2のダミー端子電極16と、基板10の上面10a及び下面10bにそれぞれ形成された第1及び第2の金属磁性粉含有樹脂層17,18とを備えている。
【0020】
基板10の平面方向の外形は矩形であり、図中のX方向と平行な2つの側面10c,10dと、Y方向と平行な2つの側面10e,10fを有している。基板10の中央部には第1のスルーホール10gが設けられており、また基板10の四隅には角部を面取りしてなる四半円形状の第2のスルーホール10h(切り欠き部)が設けられている。そのため基板10の厳密な平面形状は矩形ではない。また基板10の角部とは面取りされていない完全な矩形基板の角部を意味する。
【0021】
第1のスパイラル導体11は基板10の上面10aに形成されており、第2のスパイラル導体12は基板10の下面10bに形成されている。第1及び第2のスパイラル導体11の内周端の平面方向の位置は一致しており、基板10を貫通する第1のスルーホール導体19を介して互いに接続されている。これに対し、第1のスパイラル導体11の外周端と第2のスパイラル導体12の外周端は、第1及び第2のスパイラル導体11,12の主要部を挟んで互いに反対側に位置する。すなわち、第1のスパイラル導体11の外周端の位置は、基板10の側面10cの近くであり、第2のスパイラル導体12の外周端の位置は、基板10の側面10dの近くである。
【0022】
第1のスパイラル導体11と第2のスパイラル導体12とは互いに反対向きに巻回されている。基板10の上面10a側から見た第1のスパイラル導体11は、内周端から外周端に向かって反時計回りに巻回されているのに対し、基板10の上面10a側から見た第2のスパイラル導体12は、内周端から外周端に向かって時計回りに巻回されている。この巻回構造によれば、第1及び第2のスパイラル導体11,12の外周端の一方から他方へ電流を流した場合に、第1及び第2のスパイラル導体11,12に流れる電流が互いに同一方向の磁場を発生させて強め合う。したがって、第1及び第2のスパイラル導体11,12を単一のインダクタとして機能させることができる。
【0023】
第1の端子電極13は、基板10の上面10aに形成されており、第1のスパイラル導体11の外周端に接続されている。第1の端子電極13は、第1のスパイラル導体11の最外周ターンの外側に位置し、基板10の第1の側面10cと上面10aとの共通辺に接して設けられている。そのため、第1の端子電極13の外側側面は、基板10の側面10cと同一平面をなしている。
【0024】
第2の端子電極14は、基板10の下面10bに形成されており、第2のスパイラル導体12の外周端に接続されている。第2の端子電極14は、第2のスパイラル導体12の最外周ターンの外側に位置し、基板10の第2の側面10dと下面10bとの共通辺に接して設けられている。そのため、第2の端子電極14の外側側面は、基板10の側面10dと同一平面をなしている。
【0025】
第1のダミー端子電極15は、基板10の上面10aに形成されており、同一平面内で第1のスパイラル導体11と接続されていないが、基板10を貫通する第2のスルーホール導体20を介して第2の端子電極14と接続されている。第1のダミー端子電極15は平面視にて第2の端子電極14と重なるようにその直上に位置し、第2の端子電極14よりも一回り小さな平面形状を有している。第1のダミー端子電極15は第1のスパイラル導体11の最外周ターンの外側に位置し、基板10の第2の側面10dと上面10aとの共通辺に接して設けられている。そのため、第1のダミー端子電極15の外側側面は、基板10の第2の側面10d及び第2の端子電極14と同一平面をなしている。
【0026】
第2のダミー端子電極16は、基板10の下面10bに形成されており、同一平面内で第2のスパイラル導体12と接続されていないが、基板10を貫通する第3のスルーホール導体21を介して第1の端子電極13と接続されている。第2のダミー端子電極16は平面視にて第1の端子電極13と重なるようにその直下に位置し、第1の端子電極13よりも一回り小さな平面形状を有している。第2のダミー端子電極16は第2のスパイラル導体12の最外周ターンの外側に位置し、基板10の第1の側面10cと下面10bとの共通辺に接して設けられている。そのため、第2のダミー端子電極16の外側側面は、基板10の第1の側面10c及び第1の端子電極13の外側側面と同一平面をなしている。
【0027】
なお、端子電極(またはダミー端子電極)の外側側面と基板10の側面とが同一平面であるとは、コイル部品の側面として見ることができる程度に一見して同一平面であればよく、厳密に同一平面であることは要求されない。したがって、例えば後述するバレルめっきによって端子電極やダミー端子電極の外側側面が基板10の対応する側面よりもわずかに(例えば数μm〜数十μm程度)高くなったとしても、本発明においてそれら2つの面は同一平面である。
【0028】
第1のスパイラル導体11の最外周ターンと対向する第1のダミー端子電極15の内側側面は、第1のスパイラル導体11の最外周ターンの形状に合わせて湾曲している。第2のスパイラル導体12の対向する第2のダミー端子電極16の側面もまた、第2のスパイラル導体12の最外周ターンの形状に合わせて湾曲している。第1及び第2のダミー端子電極15,16の内側側面をこのような湾曲形状とした場合には、後述する第1及び第2のスパイラル導体11,12の最外周ターンの横方向への過度なめっき成長を抑制することができ、高精度なパターンを形成することができる。スパイラル導体とダミー端子電極との間のスペース幅は、スパイラル導体のピッチ幅とほぼ等しく設定されていることが好ましい。このようにした場合には、最外周のライン幅を内側のラインと等幅にすることができるので、より高精度なパターン形成が可能である。
【0029】
第1及び第2のスパイラル導体11,12、第1及び第2の端子電極13,14ならびに第1及び第2のダミー端子電極15,16はいずれも、無電解めっき等によって下地層を形成した後、2度の電解めっき工程を経て同時に形成される。下地層の材料及び2度の電解めっき工程で用いるめっき材料は、いずれもCuとすることが好適である。2度目の電解めっき工程は、1度目よりも大きな電流を供給してより肉厚なめっき層を急速に形成するため工程である。2度目のめっき工程においては、スパイラル導体の最外周ターンおよび最内周ターンが横方向に大きくめっき成長するおそれがある。しかし、本実施の形態ではダミー端子電極15,16を設けているので、スパイラル導体11,12の最外周が極端に太くなることがなく、所望の線幅を維持することができる。
【0030】
端子電極13の上面には第1の引出電極26が形成されており、ダミー端子電極15の上面には第2の引出電極27が形成されている。第1及び第2の引出電極26,27は、端子電極13の上面及びダミー端子電極15の上面を除いた基板10の全面を覆うレジストパターンを形成し、端子電極13及びダミー端子電極15の露出面をさらにめっき成長させることにより形成される。
【0031】
第1の引出電極26の平面形状は、第1の端子電極13の形状と同等かそれよりもひと回り小さな形状であることが好ましい。また、第2の引出電極27の平面形状は、第1のダミー端子電極15の形状と同等かそれよりもひと回り小さな形状であることが好ましい。この構成によれば、肉厚な引出電極26,27を確実に形成することができる。
【0032】
基板10の上面10a側に設けられた第1のスパイラル導体11は、薄い絶縁樹脂層22に覆われている。また、基板10の下面10bに設けられた第2のスパイラル導体12、第2の端子電極14、及び第2のダミー端子電極16は、薄い絶縁樹脂層23に覆われている。絶縁樹脂層22,23は、基板10上の導体パターンと金属磁性粉含有樹脂層17,18との電気的導通を防止するために設けられている。
【0033】
基板10の上面10a及び下面10bには、絶縁樹脂層22,23の上からさらに金属磁性粉含有樹脂層17,18がそれぞれ設けられている。
【0034】
金属磁性粉含有樹脂層17,18は、絶縁性結着材としての樹脂に金属磁性粉を混入して作られる磁性材料(金属磁性粉含有樹脂)からなる。金属磁性粉としてはパーマロイ系材料を用いることが好適である。具体的には、例えば、平均粒径が20〜50μmであるPb−Ni−Co合金と、平均粒径が3〜10μmであるカルボニル鉄とを所定の比率、例えば70:30〜80:20の重量比、好ましくは75:25の重量比で含む金属磁性粉を用いることが好ましい。また、金属磁性粉はPb−Ni−Co合金に代えてFe−Si−Cr合金を含むものであってもよい。この場合、Fe−Si−Cr合金の含有率(カルボニル鉄との重量比)はPb−Ni−Co合金と同じでよい。
【0035】
一方、樹脂としては液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。金属製粉含有樹脂層中の金属磁性粉の含有率は90〜97重量%であることが好ましい。樹脂に対する金属磁性粉の含有量が少ないほどその飽和磁束密度が小さくなり、逆に金属磁性粉の含入量が多いほど飽和磁束密度が大きくなる。
【0036】
上記のように、基板10の中央部には第1のスルーホール10gが設けられており、また基板10の四隅の角部には半円形状の第2のスルーホール10hがそれぞれ設けられている。金属磁性粉含有樹脂層17,18を構成する金属磁性粉含有樹脂はスルーホール10g,10h内にも埋め込まれており、埋め込まれた金属磁性粉含有樹脂は、
図1に示すように、スルーホール磁性体24,25をそれぞれ構成している。本発明において必須ではないが、スルーホール磁性体24,25はコイル部品1に完全な閉磁路を形成するためのものである。
【0037】
金属磁性粉含有樹脂層17の主面には、第1及び第2の外部電極28,29が形成されている。なお、
図2は、コイル部品1の実装面が上向きの状態を示している。外部電極28,29は、金属磁性粉含有樹脂層17を貫通する引出電極26,27を介して端子電極13,14にそれぞれ接続されている。外部電極28,29は、回路基板上のランドにはんだ付けされる。
【0038】
外部電極28,29は矩形パターンであり、金属磁性粉含有樹脂層17の主面から露出する引出電極26,27の上面よりも広い面積を有している。コイルのインダクタンスを大きくするためには、コイル形成領域をできるだけ大きくしなければならない。コイル形成領域を決められた寸法内でできる限り大きく設計するためには、コイルの外側に配置される端子電極13,14やダミー端子電極15,16はできるかぎり小さいほうがよい。しかし、端子電極13,14やダミー端子電極15,16の面積を小さくするとその上に形成される引出電極26,27の上面の面積も小さくなり、このような引出電極26,27の上面をそのまま外部電極として利用しようとしても、電極面積が小さすぎて実装強度を保てない。そこで本実施の形態では、引出電極26,27の上面よりも大きな面積の外部電極28,29を設けて所望の実装強度を確保している。
【0039】
なお、図示していないが、金属磁性粉含有樹脂層17,18の表面には薄い絶縁層が形成される。この絶縁層は、金属磁性粉含有樹脂層17,18の表面をリン酸塩で処理することによって形成される。この絶縁層を設けることにより、外部電極28,29と金属磁性粉含有樹脂層17,18との電気的導通を防止することができる。
【0040】
本実施の形態において、第1及び第2の外部電極28,29は第1の金属磁性粉含有樹脂層17の主面(コイル部品1の上面1a)に形成されている。またコイル部品1の側面には第1及び第2の端子電極13,14の外側側面、第1及び第2のダミー端子電極15,16の外側側面、並びに第1及び第2の引出電極26,27の外側側面が露出している。そして第1の外部電極28は、第1の端子電極13,第2のダミー端子電極16,第1の引出電極26と組み合わされてL字電極を構成しており、第2の外部電極29は、第2の端子電極14,第1のダミー端子電極15,第2の引出電極27と組み合わされてL字電極を構成している。L字電極によれば表面実装時にはんだフィレットを形成することができ、実装強度を高めることができる。またはんだ接続状態を目視にて確認でき、確実な実装が可能である。
【0041】
図3は、コイル部品1の表面実装状態を示す略側面断面図である。
【0042】
図3に示すように、本実施の形態においては、第1の端子電極13と第2のダミー端子電極16との間に挟まれた基板10の側面10cが第1の端子電極13及び第2のダミー端子電極16の外側側面と共にコイル部品1の側面1cに露出しており、第2の端子電極14と第1のダミー端子電極15との間に挟まれた基板10の側面10dが第2の端子電極14及び第1のダミー端子電極15の外側側面と共にと共にコイル部品1の側面1dに露出しているので、リフロー実装時にはんだフィレットFの高さを抑えることができる。図示のように、端子電極及びダミー端子電極は基板を挟んで設けられているので、どちらか一方を露出させようとすると他方も露出してしまい、側面電極の高さがどうしても高くなってしまう。例えば、コイル部品1の上方が金属製のシールドカバーで覆われている場合において側面電極が露出するとはんだフィレットFとシールドカバーとの接触が問題となる。しかしながら、基板10の側面が露出している場合には、はんだが側面電極を伝って上方に這い上がってシールドカバーに付着することを防止することができる。
【0043】
次に、コイル部品1の製造方法について説明する。
【0044】
図4〜
図9は、コイル部品1の量産工程を説明するための模式図であって、切断前の基板10を上面10a側から見た平面図である。なお、各図に示す破線は、ダイシング工程における切断線を示している。この切断線で囲まれた1つ1つの矩形領域(以下、単に「矩形領域」という)が個々のコイル部品1に対応している。以下、切断線A1,A2,A4,A5に囲まれた中央の矩形領域に着目して説明する。
【0045】
初めに、
図4に示すように、基板10に磁路形成用のスルーホール10g,10sと導体埋込用のスルーホール10i,10j,10kとを設ける。スルーホール10g及びスルーホール10i,10j,10kは、矩形領域ごとに1つずつ設けられる。なお、中央の矩形領域のパターン形状に対してその上下左右の矩形領域のパターン形状は2回対称であり、そのためスルーホールの形成位置も異なっている。
【0046】
各スルーホール10sは円形パターンであり、X方向に延びる切断線A1,A2とY方向に延びる切断線A3,A4,A5,A6との各交点に設けられている。そのため、1つのスルーホール10sは4つのコイル部品に共通するものであり、1つの矩形領域には4つのスルーホール10sが関与している。基板10を各切断線の位置で切断すると、各基板の角部には四半円形状のスルーホール10h(
図2参照)が得られる。
【0047】
次に、
図5に示すように、基板10の上面10aに第1のスパイラル導体11、第1の端子電極13及び第1のダミー端子電極15を矩形領域ごとに形成する。これらの導体パターンは後述する電解めっきにより形成することができる。ここで、第1のスパイラル導体11の内周端、第1の端子電極13及び第1のダミー端子電極15がスルーホール10i,10j,10kをそれぞれ覆い、電極材料が各スルーホールの内部に埋め込まれることにより、第1〜第3のスルーホール導体19,20,21が形成される。
【0048】
また、第1の端子電極13は、切断線A1を挟んで互いに隣接する2つの矩形領域内の第1の端子電極13どうしが一体化された集合電極として形成され、1のダミー端子電極15も、切断線A2を挟んで互いに隣接する2つの矩形領域内の第1のダミー端子電極15どうしが一体化された集合電極として形成される。
【0049】
図示しないが、基板10の下面10bに関しても同様に、第2のスパイラル導体12、第2の端子電極14及び第2のダミー端子電極16を矩形領域ごとに形成する。ここで、第2のスパイラル導体12の内周端、第2の端子電極14及び第2のダミー端子電極16がスルーホール10i,10j,10kをそれぞれ覆っている。これにより、第2のスパイラル導体12の内周端、第2の端子電極14及び第2のダミー端子電極16は、第1〜第3のスルーホール導体19,20,21を介して第1のスパイラル導体11の内周端、第1の端子電極13及び第1のダミー端子電極15にそれぞれ接続される。
【0050】
また、第2の端子電極14は、互いに隣接する2つの矩形領域内の第2の端子電極14どうしが一体化した集合電極として形成され、第1のダミー端子電極16も互いに隣接する2つの矩形領域内の第1のダミー端子電極16どうしが一体化された集合電極として形成される。
【0051】
基板10の上面10a及び下面10bにそれぞれ形成される導体パターンの具体的な形成方法は次のとおりである。
【0052】
まず基板10の上面10a及び下面10bの全面にCuの下地層を形成する。下地層は無電解めっき又はスパッタリングにより形成することができる。次に、下地層の表面にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層は例えばシートレジストの貼り付けによって形成することができる。なお、この下地層は各スルーホールの内壁面にも形成される。続いてフォトレジスト層に第1及び第2のスパイラル導体11,12、第1及び第2の端子電極13,14、及び第1及び第2のダミー端子電極15,16の開口パターン(ネガパターン)をフォトリソグラフィにより形成する。
【0053】
次に、1度目の電解めっき工程(第1めっき工程)を実施する。この電解めっき工程では、下地層にめっき電流を流しながら、基板10をめっき液に浸し、下地層のうち開口パターンから露出する部分をめっき成長させる。ここで、下地層はパターニングされていない平面導体であるので、めっき電流の流れる方向に関する問題は生じない。その後、フォトレジスト層を除去し、さらに余分な下地層をエッチングにより除去する。以上の工程により、それぞれ下地層とめっき層からなる第1及び第2のスパイラル導体11,12、第1及び第2の端子電極13,14、及び第1及び第2のダミー端子電極15,16の基本パターンが完成する。
【0054】
次に、2度目の電解めっき工程(第2めっき工程)を実施する。この電解めっき工程では、上記基本パターンに非常に大きなめっき電流を流しながら、基板10をめっき液に浸し、さらに肉厚な導体パターンを形成する。なお、各矩形領域内の導体パターンをy方向のみならずx方向にも連結し、めっき電流がx方向とy方向の両方に流れるようにすることにより、金属イオンを均一に電着させることができ、均一な膜厚のめっき層を形成することができる。
【0055】
以上の2度目の電解めっき工程により、各導体パターンの膜厚を大幅に増大させることが可能になる。このようにして導体パターンの膜厚を大きくする理由は、本実施の形態によるコイル部品1が電源用コイルであり、非常に小さな直流抵抗が求められているからである。
【0056】
図10は、ダミー端子電極の機能を説明するための模式図である。
【0057】
図10(a)に示すように、2度目の電界めっき工程を行うと隣接ターンがないスパイラル導体の最外周ターンToのめっき層が中間ターンTmに比べて横方向に大きく成長しやすく、その線幅が極端に太くなる傾向が見られる。しかし本実施の形態では、
図10(b)に示すように、該外周ターンの外側にダミー端子電極Dmを設け、スパイラル導体の最外周ターンToとダミー端子電極Dmとの間に一定幅の間隙を確保したので、スパイラル導体の最外周ターンToの横方向へのめっき成長を抑制することができる。したがって、スパイラル導体の最外周ターンの線幅が極端に太くなることを防止することができる。
【0058】
次に、
図6に示すように、第1の端子電極13及び第1のダミー端子電極15の上面を選択的にめっき成長させ、これにより第1及び第2の引出電極26,27をそれぞれ形成する。第1及び第2の引出電極26,27は、切断線A1又はA2を挟んで互いに隣接する2つの矩形領域内の第1の引出電極26どうし又は第2の引出電極27どうしが一体化された集合電極として形成される。第1及び第2の引出電極26,27の形成では、基板の全面にフォトレジスト層を形成し、このフォトレジスト層に第1及び第2の引出電極26,27のネガパターン(開口パターン)をフォトリソグラフィにより形成する。
【0059】
次に、3度目の電解めっき工程(第3めっき工程)を実施する。この電解めっき工程でも、非常に大きなめっき電流を流しながら、基板10をめっき液に浸し、さらに肉厚な引出電極26,27を形成する。その後、フォトレジスト層を除去する。以上の工程により、めっき層からなる第1及び第2の引出電極26,27が形成される。
【0060】
その後、
図7に示すように、基板10の両面に絶縁樹脂を成膜し、各導体を絶縁樹脂層22,23で覆う。このとき、引出電極も絶縁樹脂層で覆われることになる。また、スルーホール10g,10hの側壁も絶縁樹脂に覆われるが、スルーホール10g,10hの全域が絶縁樹脂によって埋め尽くされることのないようにする必要がある。
【0061】
次に、
図8に示すように、基板10の両面に金属磁性粉含有樹脂層17,18をそれぞれ形成する。具体的には、まず基板10の反りを抑制するためのUVテープ(不図示)を基板10の下面10bに貼り付け、上面10aに金属磁性粉含有樹脂ペーストをスクリーン印刷した後、ペーストを加熱して硬化させる。UVテープの代わりに熱剥離テープを用いてもよい。続いて、UVテープを剥がし、基板10の下面10bに金属磁性粉含有樹脂ペーストをスクリーン印刷し、ペーストを加熱して硬化させる。その後、金属磁性粉含有樹脂層17,18の表面を研磨してその厚さを調整する。このとき、金属磁性粉含有樹脂層17の主面から引出電極26,27の先端部を露出させる。以上の処理により、金属磁性粉含有樹脂層17,18が完成する。また、金属磁性粉含有樹脂ペーストはスルーホール10g,10hの内部にも埋め込まれ、これにより
図1及び
図2に示したスルーホール磁性体24,25も形成される。
【0062】
次に、
図9に示すように、金属磁性粉含有樹脂層17の表面に第1及び第2の外部電極28,29を形成する。第1及び第2の外部電極28,29は、切断線A1,A2を挟んで互いに隣接する2つの矩形領域内の外部電極どうしが一体化された集合電極として形成される。
【0063】
第1及び第2の外部電極28,29の形成では、まず金属磁性粉含有樹脂層17,18の表面に絶縁樹脂層23を形成する。絶縁樹脂層23の形成は、金属磁性粉含有樹脂層17,18の表面をリン酸塩で化成処理することによって行う。その後、第1及び第2の引出電極26,27の上端部の露出位置を覆い、引出電極26,27と電気的に接続されるように第1及び第2の外部電極28,29を形成する。外部電極は、スパッタリングにより形成することが好ましいが、スクリーン印刷により形成してもよい。
【0064】
その後、切断線A1〜A4に沿って基板10をダイシングする。これにより矩形領域ごとに個々のコイル部品1が得られる。また
図1〜
図3に示したように、このダイシングにより個々のコイル部品の側面には端子電極13,14、ダミー端子電極15,16、引出電極26,27の外側側面が露出する。さらに、基板10の側面10c,10dもこれらの電極面と一緒に露出する。
【0065】
最後に、第1及び第2の端子電極13,14、第1及び第2のダミー端子電極15,16、並びに第1及び第2の外部電極28,29の電極面を平滑にするため最終のめっき処理(バレルめっき)を行う。以上により、本実施の形態によるコイル部品1が完成する。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態によるコイル部品の製造方法は、スパイラル導体11,12の最外周ターンの外側に第1及び第2のダミー端子電極15,16をそれぞれ形成した後、第2の電界めっき工程を実施して第1及び第2のスパイラル導体11,12を厚く形成するので、最外周ターンのめっき層の横方向へのめっき成長を抑制することができる。したがって、スパイラル導体11,12の最外周の線幅が極端に太くなることを防止することができる。
【0067】
図11は、本発明の第2の実施の形態によるコイル部品2の構成を示す略分解斜視図である。
【0068】
図11に示すように、本実施の形態によるコイル部品2の特徴は、基板10の角部に設けられるスルーホール磁性体25が省略されている点にある。これにより、基板10にはスルーホール10hが形成されず、基板10の側面10c,10dは当該基板の最大幅と等しくなっている。そして基板10の形状に合わせて、第1及び第2の端子電極13,14ならびに第1及び第2のダミー端子電極15,16も、基板の側面10c,10dと同じ幅を有している。本実施の形態によれば、第1の実施の形態によるコイル部品1と同様、端子電極13,14とダミー端子電極15,16との間に挟まれた基板10の側面10c,10dが端子電極及びダミー端子電極と共に露出しているので、はんだフィレットの高さを抑えることができる。また、第1及び第2のスパイラル導体の最外周ターンの太りをより広範囲に抑制することが可能である。さらに、量産工程においては、隣接する端子電極どうしを横方向につないでめっき電流の経路を増やすことができ、めっき層の厚さの面内ばらつきを低減することができる。
【0069】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0070】
例えば、上記実施形態においては、第1の端子電極13と第2のダミー端子電極16とを接続する第3のスルーホール導体21を設けているが、第3のスルーホール導体21を省略することも可能である。また、スルーホール磁性体25の形成位置、形状、戸数等は任意であり、上記第1及び第2の実施の形態に限定されない。
【0071】
また、上記実施形態においては、単一の基板の両面に第1及び第2のスパイラル導体を形成してなるコイル部品を例に挙げたが、本発明はそのような基板を多層化してなるコイル部品であってもよい。