特許第6102422号(P6102422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6102422ポリエステル樹脂及び缶内面ラミネート用ポリエステルフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102422
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂及び缶内面ラミネート用ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/02 20060101AFI20170316BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170316BHJP
   C08G 63/82 20060101ALI20170316BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170316BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   C09J167/02
   C09J7/02 Z
   C08G63/82
   B32B27/00 D
   B32B27/36
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-72518(P2013-72518)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196406(P2014-196406A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】大橋 英人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀和
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−249601(JP,A)
【文献】 特開平06−039979(JP,A)
【文献】 特開2003−246869(JP,A)
【文献】 特開2005−177988(JP,A)
【文献】 特開2006−150606(JP,A)
【文献】 特開2006−096790(JP,A)
【文献】 特開2006−096789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム化合物とリン化合物とを重合触媒として用い、該重合触媒を含むポリエステル樹脂であって、該ポリエステル樹脂の主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を含み、イソフタル酸の含有量が、全ジカルボン酸成分の8.0〜13.0mol%であり、前記ポリエステル樹脂の主たるジオール成分がエチレングリコールであり、該ポリエステル樹脂の融点(Tm)が、222.0〜233.5℃、かつ極限粘度(IV)が、0.50〜0.80dl/gを満たすことを特徴とする、缶内面ラミネート用フィルムの接着層に用いるポリエステル樹脂。
【請求項2】
基材層および接着層の2層からなる、缶内面ラミネート用ポリエステルフィルムであって、請求項1に記載のポリエステル樹脂を接着層に使用する缶内面ラミネート用ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶内面ラミネート用フィルムの接着層に用いるポリエステル樹脂に関する。詳しくは、特定の重合触媒を用いて、さらにイソフタル酸を特定量共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂であって、前記構成を採用することで該ポリエステル樹脂の接着性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食料品や液体内容物を缶に密封した食料缶や飲料缶は、強度、耐熱性、耐寒性に優れていることから、スチールやアルミニウム等の金属材料が用いられている。これらの金属缶を食品用途として用いる場合、金属臭が内容物である食料品や飲料に移行する、いわゆるフレーバー性不良や、内容物の変質及び金属自体の内容物による腐食を防ぐ必要がある。このため、工程簡素化、衛生性向上、公害防止等の目的から、有機溶剤を使用せずに金属板にポリエステルフィルムを加熱、加圧接着し、そのラミネート鋼板を加工することで製缶する方法がとられている(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
しかしながら特許文献1〜3では、フィルムと鋼板をラミネートした後の製缶加工時の衝撃で、局所的なフィルム破れの問題があった。これを回避するために基材層・接着層からなる2層の複合ポリエステルフィルムを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献4〜5)。
【0004】
しかしながら特許文献4では、製缶工程の種々の熱履歴によりラミネート後のフィルムが収縮し、収縮が著しい場合には鋼板から剥離してしまうという重大な問題があった。そこで特許文献5では、基材層・接着層からなる2層のポリエステルフィルムのうち、基材層用樹脂として、ポリエチレンテレフタレートにポリブチレンテレフタレートをブレンドしたものを、一方接着層の原料樹脂としてイソフタル酸を共重合したエチレンテレフタレート・エチレンイソフタレートコポリマーを使用し、それぞれ融点を適正値に制御することで、良好な接着性、耐衝撃性、耐収縮性を付与している。しかしながら、基材層にポリブチレンテレフタレート成分をブレンドすることで、食料品や飲料のフレーバー性悪化に繋がる懸念がある。また特許文献5については、接着層用ポリエステル樹脂の重合方法が記載されておらず、一般的な重合方法でトレースし、基材層・接着層の2層のポリエステルフィルムの接着性を確認したところ、従来の製缶工程では充分な接着性が得られなかった。接着性の改善が必要と考えられた。
【0005】
さらに、特許文献6では、基材層・接着層からなる2層のポリエステルフィルムのうち、接着層用樹脂として、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレートコポリマーとポリブチレンテレフタレートをブレンドすることで、従来の製缶工程で充分な接着性を発揮できることが開示されている。しかしながら、ポリブチレンテレフタレートを使用することで飲料のフレーバー性悪化に繋がる懸念があり、また接着層用樹脂の耐熱性が悪化することでポリエステルフィルムの強度を低下させてしまう。
【0006】
一方、ポリエステルの重合触媒として、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物を使用することが一般的に知られている。これらの触媒は、いずれもポリエステル重合触媒として好適であるが、それぞれ特有の性質を持っており、用途や重合形態、工程の形式により使い分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭57−23584号公報
【特許文献2】特公昭59−34580号公報
【特許文献3】特公昭62−61427号公報
【特許文献4】特開平2−81630号公報
【特許文献5】特許第3304002号公報
【特許文献6】特開2006−150606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、食料缶や飲料缶に使用することが出来る金属板ラミネート用の基材層・接着層からなる2層のポリエステルフィルムにおいて、上述したように接着性と耐熱性の問題を同時に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した接着性と耐熱性の問題を同時に解決するために、いくつかの重合触媒を使用したポリエステル樹脂を用い、食料缶、飲料缶としての性質を確認した。その結果、アルミニウム触媒を使用したときにだけ、これまでに見られなかったような効果、すなわち接着性および耐熱性を同時に満足するようなポリエステルフィルムが得られることが判明し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
[1] アルミニウム化合物とリン化合物とを重合触媒として用い、該重合触媒を含むポリエステル樹脂であって、該ポリエステル樹脂の主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、前記ポリエステル樹脂の主たるジオール成分がエチレングリコールであり、該ポリエステル樹脂の融点(Tm)が、222.0〜233.5℃、かつ極限粘度(IV)が、0.50〜0.80dl/gを満たすことを特徴とする、缶内面ラミネート用フィルムの接着層に用いるポリエステル樹脂。
[2] ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を含み、イソフタル酸の含有量が、全ジカルボン酸成分の8.0〜13.0mol%である[1]に記載のポリエステル樹脂。
[3] 基材層および接着層の2層からなる、缶内面ラミネート用ポリエステルフィルムであって、[1]または[2]に記載のポリエステル樹脂を接着層に使用する缶内面ラミネート用ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接着層用のポリエステル樹脂を使用した缶内面ラミネート用ポリエステルフィルムは、従来よりも接着性に優れており、またラミネート後の製缶工程において、熱履歴による劣化、剥離、膜ずれの発生がこれまで以上に抑制できる。また食料品や飲料のフレーバー性に悪影響を与えるような成分を使用しないため、内容物の変性を防ぐことにおいても好適なポリエステルフィルムであると言える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ポリエステル樹脂の重合触媒)
本発明の接着層用のポリエステル樹脂を合成する際に使用する、ポリエステル重合触媒を構成するアルミニウム化合物としては、公知のアルミニウム化合物が限定なく使用できる。
【0013】
アルミニウム化合物としては、具体的には、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネート、シュウ酸アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物及びこれらの部分加水分解物などが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩及びキレート化合物が好ましく、これらの中でも酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートがより好ましく、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び水酸化塩化アルミニウムがさらに好ましく、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウムが最も好ましい。
【0014】
本発明にかかるポリエステル重合触媒に用いられるアルミニウム化合物の使用量は、アルミニウム原子として、得られるポリエステル樹脂の全質量に対して1〜80ppm残留するようにすることが好ましく、より好ましくは2〜60ppmであり、更に好ましくは3〜50ppmであり、特に好ましくは5〜40ppmであり、最も好ましくは10〜30ppmである。
上記を下回ると触媒活性不良となる可能性があり、上記を超えるとアルミニウム系異物生成を引き起こす可能性がある。
アルミニウム化合物は、ポリエステル重合時に減圧環境下に置かれても、添加量のほぼ100%が残留するので、添加量が残留量になると考えてよい。
【0015】
ポリエステル重合触媒に用いられるリン化合物は、特に限定されないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましく、これらの中でもホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0016】
これらのリン化合物のうち、同一分子内にフェノール部を有するリン化合物が好ましい。フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、同一分子内にフェノール部を有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上の同一分子内にフェノール部を有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0017】
また、同一分子内にフェノール部を有するリン化合物としては、下記一般式(1)、(2)で表される化合物などが挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
(式(1)〜(2)中、Rはフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。Rは、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。RとRの末端どうしは結合していてもよい。)
【0021】
前記の同一分子内にフェノール部を有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。その他、下記一般式(3)で表されるリン化合物を挙げることができる。
【0022】
【化3】
【0023】
式(3)中、X、Xは、それぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または1価以上の金属を表す。
また、Xは、金属が2価以上であって、Xが存在しなくても良い。さらには、リン化合物に対して金属の余剰の価数に相当するアニオンが配置されていても良い。
金属としては、Li、Na、K、Ca、Mg、Alが好ましい。
【0024】
これらの同一分子内にフェノール部を有するリン化合物をポリエステルの重合時に添加することによってアルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
【0025】
上記の中でも、重縮合触媒として使用することが好ましいリン化合物は、化学式(4)、化学式(5)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
上記の化学式(4)で示される化合物としては、Irganox1222(ビーエーエスエフ社製)が市販されている。また、化学式(5)にて示される化合物としては、Irganox1425(ビーエーエスエフ社製)が市販されており、使用可能である。
【0029】
本発明にかかるポリエステル重合触媒に用いられるリン化合物の使用量は、リン原子として、得られるポリエステル樹脂の全質量に対して10〜100ppm残留するようにすることが好ましく、より好ましくは15〜90ppmであり、更に好ましくは20〜80ppmであり、特に好ましくは25〜70ppmであり、最も好ましくは30〜60ppmである。
上記の上下限を超える量のリン原子が残存することで、重合活性を低下させる可能性がある。
リン化合物は、ポリエステル重合時に減圧環境下に置かれる際、その条件により、添加量の約10〜30%が系外に除去される。そこで、実際は、数回の試行実験を行い、リン化合物のポリエステル中への残留率を見極めた上で、添加量を決める必要がある。
【0030】
また、リン化合物を使用することで、樹脂の耐熱性を向上させることができる。原因は定かではないが、リン化合物がポリエステル樹脂の耐熱性を向上させていると考えられる。本発明の場合、リン化合物の添加により接着層用ポリエステル樹脂の熱劣化を抑制することで、接着層用ポリエステル樹脂の接着性を向上させることができる。これは、熱劣化による中分子量領域のポリエステル樹脂の生成を抑制することに起因すると考えられる。中分子量領域のポリエステル樹脂は、金属板表面の凹凸に入り込むことで、接着層用ポリエステル樹脂の接着を阻害し、結果として接着層用ポリエステル樹脂の接着性を低下させると考えられる。このリン化合物の効果は、リン化合物内にヒンダートフェノール部分を有することより、さらに大きくなる。
【0031】
リン化合物の残留量が10ppmより少なくなると、上記の耐熱性向上の効果が薄れ、結果として、接着層用ポリエステル樹脂の接着性向上効果が見られなくなる。
【0032】
本発明の効果を損なわない範囲で、触媒活性をさらに向上させるために、アンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物等の金属含有ポリエステル重縮合触媒を併用しても良い。その場合、アンチモン化合物は、得られるポリエステルの質量に対して、アンチモン原子として30ppm以下が好ましく、ゲルマニウム化合物は、得られるポリエステルの質量に対して、ゲルマニウム原子として10ppm以下が好ましく、チタン化合物は、得られるポリエステルの質量に対して、チタン原子として3ppm以下であることが好ましく、スズ化合物は、得られるポリエステルの質量に対して、スズ原子として3ppm以下が好ましい。本発明の目的からは、これらアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物等の金属含有ポリエステル重縮合触媒は、極力使用しないことが好ましい。
【0033】
本発明においてアルミニウム化合物に加えて少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選択される少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させても良い。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、ジエチレングリコールの生成を抑制する効果に加えて触媒活性を高め、従って反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を併用添加する場合、その添加量(mol%)は、ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分のモル数に対して、好ましくは、1×10−5〜0.01mol%である。
【0034】
(ポリエステル樹脂)
本発明において、「ポリエステル樹脂」とは、上記重合触媒の残渣を含んだものを指す。
本発明のポリエステル樹脂は、主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、主たるジオール成分がエチレングリコールであるポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分100mol%の内、テレフタル酸が70mol%以上含有することが好ましく、80mol%以上含有することがより好ましい。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、任意のジカルボン酸が使用できるが、イソフタル酸が好ましい。
グリコール成分100mol%の内、エチレングリコールが80mol%以上含有することが好ましく、90mol%以上含有することがより好ましい。エチレングリコール以外のジグリコール成分としては、任意のグリコールが使用できるが、エチレングリコール100mol%(下記で説明する副生するジエチレングリコールは除く)であることも、好ましい態様である。
【0035】
ポリエステル樹脂に共重合されるイソフタル酸成分の量は、ジカルボン酸成分100mol%の内、8.0〜13.0mol%であることが好ましい。イソフタル酸の含有量が8.0mol%より少なくなると、接着層樹脂のポリエステル樹脂の融点が高くなり、実際の製缶工程における鋼板へのポリエステルフィルムの通常のラミネート条件よりも多くの熱処理が必要となり、実用上好ましくない。またイソフタル酸の含有量が13.0mol%より多くなると、接着層用ポリエステル樹脂の融点が低くなりすぎることで、製缶工程における熱処理中に、鋼板にラミネートしたポリエステルフィルムが、ラミネートした位置から鋼板上を移動する現象(膜ずれ)が発生し、缶の仕上がりに問題を生じてしまう。またイソフタル酸の含有量が13.0mol%より多くなると、ポリエステルの耐熱性に悪影響を及ぼし、好ましくない。
ジカルボン酸成分が、テレフタル酸とイソフタル酸で100mol%を占めることが好ましく、テレフタル酸92.0〜87.0molに対して、イソフタル酸が8.0〜13.0mol%であることが好ましい。
【0036】
なお、下記のようにポリエステル樹脂を重縮合する際には、重合の過程で原料であるエチレングリコールが縮合することで、0.0mol%〜3.0mol%程度のジエチレングリコールが生成する場合があるが、このポリエステル樹脂をそのまま使用しても、接着層用のポリエステル樹脂として性能を損なうことはない。
【0037】
本発明のポリエステル樹脂の極限粘度(IV)は、0.50〜0.80dl/gである必要がある。IVが0.50dl/gよりも低いと、フィルムが製膜中に破断しやすくなり、操業性が悪化するので好ましくない。IVが0.80dl/gより高いと、接着性(初期シール温度)が不良となり、金属板とのラミネート加工性が悪くなる。本発明のポリエステルのIVの上限は、好ましくは0.75dl/g以下であり、さらに好ましくは0.70dl/g以下である。またIVの下限は、好ましくは0.55dl/g以上であり、さらに好ましくは0.58dl/g以上である。
【0038】
本発明のポリエステル樹脂の融点(Tm)は、222.0〜233.5℃である必要がある。Tmが233.5℃より高い場合、実際の製缶工程における鋼板へのポリエステルフィルムの通常のラミネート条件よりも多くの熱処理が必要となり、実用上好ましくない。またTmが222.0℃より低い場合、製缶工程における熱処理中に、鋼板にラミネートしたポリエステルフィルムの膜ずれが発生し、缶の仕上がりに問題を生じてしまう。
【0039】
(接着層用ポリエステル樹脂の重合方法)
本発明に係る重合触媒は、重縮合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応は、通常亜鉛などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒の代わりに本発明の触媒を用いることもできる。また、本発明の触媒は、溶融重合のみならず固相重合や溶液重合においても触媒活性を有する。
【0040】
本発明で用いるポリエステルの重合触媒は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えば、エステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階、重縮合反応の開始直前、あるいは重縮合反応途中の任意の段階で、反応系への添加することができる。特に、本発明のアルミニウム化合物およびリン化合物の添加は重縮合反応の開始直前に添加することが好ましい。
【0041】
接着層用ポリエステルの重合方法は、特に制限は無く、テレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールとの直接エステル化法、もしくはテレフタル酸およびイソフタル酸のアルキルエステルとエチレングリコールとのエステル交換法によって、テレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールのオリゴマーを得、しかる後に、常圧あるいは減圧下にて溶融重合してポリエステルを得ることができる。
【0042】
本発明によるポリエステルの製造は、従来公知の工程を備えた方法で行うことができる。例えば、酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを直接反応させて、水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、酸成分としてテレフタル酸ジメチルとイソフタル酸ジメチル、グリコール成分としてエチレングリコーを反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。この溶融重縮合反応は、連続式反応装置で行うことが好ましい。連続反応装置とは、エステル化反応またはエステル交換反応の反応容器と溶融重縮合反応容器を配管でつなぎ、それぞれの反応容器を空にさせることなく連続的に原料投入、配管での溶融重縮合反応容器への移送、溶融重縮合反応容器からの樹脂の抜き出しを行う方法である。なお、この場合、連続とは完全に常時原料投入から抜き出しが行われている必要はなく、少量ずつ、例えば反応容器量の1/10程度の量で、原料投入から抜き出しを行うような間欠的なものであっても良い。
これらいずれの方式においても、エステル化反応、あるいはエステル交換反応は、1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。溶融重縮合反応も、1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。
【0043】
(フィルムの製膜方法)
本発明の缶内面ラミネート用のポリエステルフィルムは、基材層、および接着層の2層からなるフィルムである。
【0044】
基材層用のポリエステル樹脂としては、特に制限はないが、ポリエステルフィルムの耐熱性や入手のし易さの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。この樹脂の極限粘度(IV)は、上記で説明した接着層用のポリエステル樹脂と同程度であることが好ましい。
基材層用のポリエステル樹脂の重合触媒としては、特に限定されるものではなく、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、アルミニウム化合物、チタン化合物等の、公知の重合触媒を用いることができる。
【0045】
なお、基材層、接着層に使用するポリエステル樹脂には、重合の際に、重合触媒以外に、溶融押出しフィルムを成形する際の静電密着性を付与するために、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、酢酸コバルト、塩化コバルト等のCo塩、リン酸またはリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体を添加することも可能である。
【0046】
このような基材層および接着層用樹脂を使用し、以下の方法に従い2層のポリエステルフィルムが得られる。
【0047】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、インフレーションフィルム製造装置やTダイフィルム製造装置を用いて基材層、接着層をそれぞれ成形後、押出しラミネート法により貼り合せたり、最初から共押し出しにより、多層フィルムを形成しても良い。
ここで、本発明の要件範囲を得るには、押出し法により未延伸フィルムを成形後、1軸延伸又は2軸延伸をすることが好ましい。延伸フィルムとすることで、結晶配向が起こり、強度や優れた加工適性を得ることが出来る。
【0048】
逐次2軸延伸時の縦延伸温度の場合を例にとり、好ましい温度範囲を例示すると、縦延伸時の予熱温度として70〜120℃、延伸温度として100〜130℃を例示することが出来る。横延伸時の予熱温度として80〜120℃、熱固定度として225〜235℃を例示することが出来る。
【0049】
また、延伸倍率に関しても、適切な範囲を取る事が好ましく、倍率が低いとフィルム強度や内容物の風味を損なう場合があり、倍率が高いと製造が困難になる場合があるので、好ましくない。好ましい逐次2軸延伸の延伸倍率としては、縦方向に3〜6倍、横方向に3〜6倍を例示することができる。
【0050】
なお、上記のようにポリエステルフィルムを製膜する際には、必要に応じてシリカ粒子や炭酸カルシウム粒子を含むマスターバッチを、基材層および、もしくは接着層用ポリエステル樹脂とともに定量スクリューフィーダーに所定量供給することで、ポリエステルフィルムの滑り性や隠蔽性を付与することもできる。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において用いた評価方法を以下に説明する。
【0052】
(極限粘度(IV)の評価方法)
ポリエステル樹脂サンプル0.1gを精秤し、25mLのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0053】
(融点(Tm)の測定方法)
TAインスツルメンツ社製DSCQ100を用いて測定した。ポリエステル樹脂10.0mgをアルミパンに入れ、20℃/分の昇温温度で300℃まで加熱し、300℃に達してから3分間保持した後即座に、液体窒素中でクエンチした。その後、室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、融点(Tm)を求めた。Tmはピークの極大部分の温度とした。
【0054】
(初期シール温度の評価方法)
本発明のポリエステルフィルムの金属板への接着性評価方法である初期シール温度を、次のように定義する。すなわち、後述する製膜方法で得られた2層のポリエステルフィルムの接着層同士を合わせ、所定の温度に加熱されたシールバーを使用し、0.2MPaの圧力を2秒間かけ、ポリエステルフィルム同士をヒートシールした。この際、後述する剥離強度測定において、引っ張り試験機での掴み部分とするため、未接着部分を10mm程度残した。ヒートシールしたフィルムサンプルを15mm幅の短冊状にカットし、引っ張り試験機を用いて剥離強度を測定した。未接着部分を引っ張り試験機の掴み具に設置し、300mm/minの引張速度でT型剥離法により測定した。ヒートシール時のシールバーの温度が低いと剥離強度が弱いが、シールバー温度を高くすることで、剥離強度が強くなる。この剥離強度が0.5N以上となった時のヒートシール時のシールバーの設定温度を、そのポリエステルフィルムの初期シール温度とした。
【0055】
初期シール温度(シールバーの加熱温度)をA℃とおくと、70℃≦A≦100℃となれば、ポリエステルフィルムの接着性能が実際の製缶工程において適切と判断できる。
【0056】
(膜ずれ性の評価方法)
本発明のポリエステルフィルムの膜ずれ評価方法について説明する。ラミネート方法は、サーマルラミネート法を用いた。金属板を180℃に加熱し、その金属板の表面にフィルムを接触させ、かかる状態でニップロール間を通過させ、次いで10〜40℃で急冷硬化させることにより、ラミネートした。ラミネートしたフィルムの真ん中に×(バツ)印の切込みを入れた。このラミネートした金属板を、240℃に加熱したオーブンにて1分間熱処理し、×印の切込みのクロス部分が開いた距離を測定した。実施例、比較例に記載した○、×の判定方法としては、実質的に膜ずれがない場合(熱処理後の切込みクロス部分の距離が0mm)を○、膜ずれがある場合を×とした。
【0057】
(耐熱性の評価方法)
ポリエステル樹脂([IV])を冷凍粉砕して20メッシュ以下の粉末にした。この粉末を130℃で12時間真空乾燥し、粉末300mgを内径約8mm、長さ約140mmのガラス試験管に入れ70℃で12時間真空乾燥した。次いで、シリカゲルを入れた乾燥管を試験管上部につけて乾燥した空気下で、210℃の塩バスに浸漬して15分間加熱した後の[IV]f1を測定した。この結果を利用し、耐熱性の指標としてTOSを以下の式に従い算出した。ただし、[IV]および[IV]f1はそれぞれ加熱試験前と加熱試験後のIV(dL/g)を指す。冷凍粉砕は、フリーザーミル(米国スペックス社製、6750型)を用いて行った。専用セルに約2gのポリエステル樹脂と専用のインパクターを入れた後、セルを装置にセットし液体窒素を装置に充填して約10分間保持し、次いでRATE10(インパクターが1秒間に約20回前後する)で5分間粉砕を行った。
TOS=0.245{[IV]f1 −1.47−[IV]−1.47
TOSの値が小さい程、耐熱性が高いと判断できる。
【0058】
(実施例1)
(A)基材層用ポリエステル樹脂の重合方法
(アルミニウム化合物の水溶液の調製)
冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、純水5.0リットルを加えた後、200rpmで攪拌しながら、塩基性酢酸アルミニウム200gを純水とのスラリーとして加えた。さらに全体として10.0リットルとなるよう純水を追加して常温常圧で12時間攪拌した。その後、ジャケット温度の設定を100.5℃に変更して昇温し、内温が95℃以上になった時点から3時間還流下で攪拌した。攪拌を止め、室温まで放冷し水溶液を得た。(アルミニウム化合物のエチレングリコール混合溶液の調製)
上記方法で得たアルミニウム化合物水溶液に等容量のエチレングリコールを加え、室温で30分間攪拌した後、内温80〜90℃にコントロールし、徐々に減圧して、到達2.7kPaとして、数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を得た。
【0059】
(リン化合物のエチレングリコール溶液の調製)
窒素導入管、冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、エチレングリコール2.0リットルを加えた後、窒素雰囲気下200rpmで攪拌しながら、リン化合物としてIrganox1222(ビーエーエスエフ社製)を200g加えた。さらに2.0リットルのエチレングリコールを追加した後、ジャケット温度の設定を196℃に変更して昇温し、内温が185℃以上になった時点から60分間還流下で攪拌した。その後加熱を止め、直ちに溶液を熱源から取り去り、窒素雰囲気下を保ったまま、30分以内に120℃以下まで冷却した。
【0060】
(ポリエステル樹脂の製造方法)
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、エチレングリコールを加えて240℃、ゲージ圧3.5MPaで、エステル化で生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。続いて、上記方法で調製したアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液およびリン化合物のエチレングリコール溶液を、それぞれポリエステル樹脂中に、アルミニウム原子およびリン原子として28ppmおよび50ppm残存するように添加し、1時間で系の温度を280℃まで昇温して、この間に系の圧力を徐々に減じて150Paとし、この条件下で1時間重縮合反応を行い、IV=0.61dl/gのポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂を、バッチ式の固相重合装置を使用し、230℃にて、減圧下、7時間固相重合し、IV=0.68dl/gの基材層用ポリエステル樹脂を得た。
【0061】
(B)接着層用ポリエステル樹脂の重合方法
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールを加えて240℃、ゲージ圧3.5MPaで、エステル化で生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。続いて、上記方法で調製したアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液およびリン化合物のエチレングリコール溶液を、それぞれポリエステル樹脂中に、アルミニウム原子およびリン原子として28ppmおよび50ppm残存するように添加し、1時間で系の温度を280℃まで昇温して、この間に系の圧力を徐々に減じて150Paとし、この条件下で1時間重縮合反応を行い、酸成分のうちイソフタル酸共重合量が11.0mol%、IV=0.63dl/gの接着層用ポリエステル樹脂組成物を得た。このポリエステル樹脂のTmは225.0℃であった。
【0062】
(基材層および接着層からなる2層のポリエステルフィルムの製膜)
基材層用のポリエステル樹脂A、および接着層用ポリエステル樹脂Bをそれぞれ別々のホッパーに供給し、それぞれ樹脂温度を280℃、270℃となるよう加熱した押出し機で溶融し、ダイ内で2層に合流させた後、冷却ドラムに押出し、無定形シートとした。その後、この無定形シートを110℃で縦方向に3.3倍、横方向に4.0倍延伸し、230℃で熱固定して、基材層厚さ11μm、接着層厚さ1μm、総厚さ12μmの2層ポリエステルフィルムを得た。
【0063】
この接着層用ポリエステル樹脂と、それを用いた2層のポリエステルフィルムの物性評価した結果を表1に示す。以下の実施例、比較例の結果も同様に表1に示す。
【0064】
(実施例2)
接着層用のポリエステル樹脂において、酸成分のうちのイソフタル酸成分を8.0mol%としたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、IV=0.63dl/gの接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは233.5℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0065】
(実施例3)
接着層用のポリエステル樹脂において、酸成分のうちのイソフタル酸成分を13.0mol%としたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、IV=0.64dl/gの接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは222.0℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0066】
(実施例4)
接着層用のポリエステル樹脂において、IV=0.56dl/gとしたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、イソフタル酸成分が10.8mol%の接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは226.1℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0067】
(実施例5)
接着層用のポリエステル樹脂において、IV=0.73dl/gとしたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、イソフタル酸成分が11.0mol%の接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは225.0℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0068】
(比較例1)
接着層用のポリエステル樹脂において、酸成分のうちのイソフタル酸成分を7.0mol%としたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、IV=0.64dl/gの接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは234.5.0℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0069】
(比較例2)
接着層用のポリエステル樹脂において、酸成分のうちのイソフタル酸成分を13.5mol%としたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、IV=0.62dl/gの接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは221.0℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0070】
(比較例3)
接着層用のポリエステル樹脂において、IV=0.85dl/gとしたこと以外は、実施例1と同様に重合を行い、イソフタル酸成分が11.0mol%の接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは225.0℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0071】
(比較例4)
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、およびゲルマニウム触媒を加えて240℃、ゲージ圧3.5MPaで、エステル化で生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。続いて、1時間で系の温度を280℃まで昇温して、この間に系の圧力を徐々に減じて150Paとし、この条件下で1時間重縮合反応を行い、酸成分のうちイソフタル酸共重合量が11.2mol%、IV=0.63dl/gの接着層用ポリエステル樹脂組成物を得た。このポリエステル樹脂のTmは224.7℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0072】
(比較例5)
接着層用のポリエステル樹脂において、酸成分のうちのイソフタル酸成分を8.1mol%としたこと以外は、比較例4と同様に重合を行い、IV=0.62dl/gの接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは233.4℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0073】
(比較例6)
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、およびアンチモン触媒を加えて240℃、ゲージ圧3.5MPaで、エステル化で生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。続いて、1時間で系の温度を280℃まで昇温して、この間に系の圧力を徐々に減じて150Paとし、この条件下で1時間重縮合反応を行い、酸成分のうちイソフタル酸共重合量が11.0mol%、IV=0.63dl/gの接着層用ポリエステル樹脂組成物を得た。このポリエステル樹脂のTmは225.0℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0074】
(比較例7)
接着層用のポリエステル樹脂において、酸成分のうちのイソフタル酸成分を8.2mol%としたこと以外は、比較例6と同様に重合を行い、IV=0.65dl/gの接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは233.2℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0075】
(比較例8)
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、およびチタン触媒を加えて240℃、ゲージ圧3.5MPaで、エステル化で生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。続いて、1時間で系の温度を280℃まで昇温して、この間に系の圧力を徐々に減じて150Paとし、この条件下で1時間重縮合反応を行い、酸成分のうちイソフタル酸共重合量が11.0mol%、IV=0.62dl/gの接着層用ポリエステル樹脂組成物を得た。このポリエステル樹脂のTmは225.2℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0076】
(比較例9)
接着層用のポリエステル樹脂において、酸成分のうちのイソフタル酸成分を8.0mol%としたこと以外は、比較例8と同様に重合を行い、IV=0.63dl/gの接着層用ポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂のTmは233.5℃であった。また実施例1と同様の製膜方法で、2層のポリエステルフィルムを得た。
【0077】
【表1】
【0078】
接着層用ポリエステル樹脂の重合触媒としてアルミニウム化合物およびリン化合物を用いることで、他の触媒を用いる場合に比べ、フィルムの耐熱性が良好となることが確認できる。これは、リン化合物中のヒンダートフェノール部分によりポリエステル樹脂の熱分解を抑制していると考えられる。また、アルミニウム化合物およびリン化合物を用いることで、同じTmの接着層用ポリエステル樹脂を2層のポリエステルフィルム接着層として使用した場合でも、初期シール温度がより低くなることが確認できる。これは、上述したように、リン化合物の効果でポリエステルの熱分解が抑制されたことで、中分子量化したポリエステル樹脂の金属板表面への入り込み頻度が低減でき、接着層用ポリエステル樹脂の接着効果が向上したと推定する。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の、アルミニウム化合物とリン化合物とを重合触媒として用いたイソフタル酸を規定量含有するポリエステル樹脂を、缶内面ラミネート用のポリエステルフィルムの接着層として使用することで、これまで発明されたものにない、接着性と耐熱性を両立したポリエステルフィルムを提供することが可能となる。