(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1駆動対象(66、67、68)と連動する第1入力部(60)および第2駆動対象(76)と連動する第2入力部(70)を備える空調機器(50)に対して取付け可能であるアクチュエータであり、
ケース(3)と、
前記ケース(3)に収容される第1モータ(11)および第2モータ(21)と、
前記ケース(3)に設置され、前記第1モータ(11)に駆動されて回転し、前記第1入力部(60)と連動可能である第1駆動軸(10)と、
前記ケース(3)に設置され、前記第2モータ(21)に駆動されて回転し、前記第2入力部(70)と連動可能である第2駆動軸(20)と、
前記ケース(3)に設置され、前記第1入力部(60)と連動することにより回転可能な回転軸部材(40、140)と、を備え、
前記回転軸部材(40、140)は、軸方向に突出する主ピン(42)を備え、
前記第1駆動軸(10)および前記第2駆動軸(20)が前記第1入力部(60)および前記第2入力部(70)にそれぞれ接続されることにより前記ケース(3)が前記空調機器(50)に取り付けられる際に、
前記主ピン(42)は、前記第1入力部(60)の主嵌合部(92)に形成される主嵌合穴(92a)に挿入されることにより前記主嵌合部(92)に嵌合されて、前記主嵌合部(92)に対する回転が制限されるとともに、
前記主ピン(42)は、前記主嵌合部(92)の内壁に対して第1クリアランス(100)を形成することにより、前記回転軸部材(40、140)および前記第1入力部(60)の相対位置のずれを吸収することを特徴とするアクチュエータ。
前記主ピン(42)は、主ピン基部(42b)と、前記主ピン基部(42b)から延びて前記軸方向の一端側に向けて横断面積が縮小する主ピンテーパ部(42a)と、からなり、
前記補助ピン(44、144)は、補助ピン基部(44b)と、前記補助ピン基部(44b)から延びて前記軸方向の一端側に向けて横断面積が縮小する補助ピンテーパ部(44a)と、からなり、
前記ケース(3)が前記空調機器(50)に取り付けられる際に、前記主ピンテーパ部(42a)が前記主嵌合部(92)に案内されて前記主嵌合部(92)に形成された主嵌合穴(92a)に挿入され、続いて前記主ピン基部(42b)の前記軸方向一端側が前記主嵌合穴(92a)に挿入され、続いて前記補助ピンテーパ部(44a)が前記補助嵌合部(94、194)に案内されて前記補助嵌合穴(94a)に挿入され、続いて前記補助ピン基部(44b)が前記補助嵌合穴(94a)に挿入されることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0014】
(実施形態)
本開示に係るアクチュエータ1、およびアクチュエータ1が取り付けられる空調機器50について図面を参照して説明する。空調機器50は、例えば車両用エアコン、家庭用エアコン、または業務用エアコン等である。
【0015】
まず空調機器50について説明する。
図1および
図2に示すように、空調機器50は、第1入力部60、第2入力部70、および第3入力部80を備える。第1入力部60、第2入力部70、および第3入力部80は、樹脂製のケース51に設置され、それぞれ軸受により回転可能に支持される。
図1および
図2においては、アクチュエータ1および空調機器50が互いに組み付けられる前の状態にある。この状態において、空調機器50の第1入力部60、第2入力部70、および第3入力部80は、回転方向に対して拘束されず、自由に回転可能である。
【0016】
第1入力部60は、樹脂により一体成形された第1減速ギア62および第1入力軸64により構成される。第1減速ギア62は、外周に歯車を有する大径円盤状の回転体である。第1入力軸64は円柱状であり第1減速ギア62と同心円状に位置する。
【0017】
第1減速ギア62はカム溝62aを有し、カム溝62aには、リンク63が相対移動可能に設置される。リンク63には、DEFドア66、FACEドア67、およびFOOTドア68が、連動可能に接続される。DEFドア66、FACEドア67、およびFOOTドア68は、第1駆動対象に対応する。このように第1減速ギア62は、カム溝62aおよびリンク63を介して、DEFドア66、FACEドア67、およびFOOTドア68に間接的に連結される。第1入力軸64は、図示下方に、後述する主嵌合部92および補助嵌合部94(
図2)を更に備える。
【0018】
図1においては、カム溝62aおよびリンク63を一つだけ例示しているが、第1駆動対象に応じて複数のカム溝が第1減速ギア62に形成され、複数のリンクが複数のカム溝にそれぞれ設置されてもよい。
【0019】
第2入力部70は樹脂により円柱状に成形され、軸方向の端部(図示下方)にピン72を備える。ピン72は、この第2入力部70の端部より図示下方に突出する。第2入力部70の図示上方には、第1エアミックスドア(第1AMドア)76が図示しないリンク等により連動可能に接続される。第1AMドア76は、第2駆動対象に対応する。
【0020】
第3入力部80は樹脂により円筒状に成形され、第2入力部70と同軸に配置される。第3入力部80は、軸方向の端部(図示下方)の外周に第3入力部ギア82を備える。第3入力部80の図示上方には、第2エアミックスドア(第2AMドア)86が図示しないリンク等により連動可能に接続される。第2AMドア86は、第3駆動対象に対応する。これら空調機器50の各種ドアについては、
図8を参照して後述する。
【0021】
図2に示すように、第2入力部70の図示下方の端部およびピン72は、第3入力部ギア82より図示下方に位置する。第1入力軸64の図示下方に位置する主嵌合部92および補助嵌合部94は、第1減速ギア62とほぼ同軸に位置し、第1減速ギア62より図示下方に突出する。
【0022】
次に、空調機器50に取り付けられるアクチュエータ1について
図1および
図2を参照して説明する。アクチュエータ1は、第1モータ11、第2モータ21、および第3モータ31を樹脂製のケース3に収容して構成される。ケース3には、それぞれ軸受けにより回転可能に支持される第1駆動軸10、第2駆動軸20、および第3駆動軸30が設置される。第1駆動軸10、第2駆動軸20、および第3駆動軸30は、それぞれケース3より同軸に軸方向の一端側(図示上方)に向けて突出する。点線矢印で示すように、第1駆動軸10、第2駆動軸20、および第3駆動軸30は、第1モータ11、第2モータ21、および第3モータ31に対して、それぞれ図示しないウオームギア等の減速機構を介して接続される。
【0023】
第1駆動軸10は、軸方向の一端(図示上方)に、外周に歯車を有する第2減速ギア12を同軸に備える。第2減速ギア12は、空調機器50の第1減速ギア62より小径であり、第1減速ギア62と噛み合い可能である。第2減速ギア12の歯数は、第1減速ギア62の歯数より少なく設定される。第2減速ギア12が第1減速ギア62に噛み合うことにより、第1駆動軸10は第1入力部60に接続される。
【0024】
第2駆動軸20は、軸方向の一端(図示上方)に、樹脂製の圧入部22を備える。圧入部22に空調機器50の第2入力部70のピン72が圧入されることにより、第2駆動軸20は第2入力部70に接続される。第2駆動軸20には、回転角度を検出するポテンショメータまたはロータリーエンコーダ等のセンサ28(
図2)が同軸に設置される。
【0025】
第3駆動軸30は、軸方向の一端(図示上方)に、第3駆動軸ギア32を同軸に備える。第3駆動軸ギア32に空調機器50の第3入力部ギア82が噛み合わされることにより、第3駆動軸30は第3入力部80に接続される。第3駆動軸30には、回転角度を検出するポテンショメータまたはロータリーエンコーダ等のセンサ38(
図2)が同軸に設置される。
【0026】
アクチュエータ1は更に、軸受けにより支持される回転検出軸40を備える。回転検出軸40はモータ等に接続されず、ケース3に対して自由に回転可能である。回転検出軸40には、回転角度を検出するポテンショメータまたはロータリーエンコーダ等のセンサ48(
図2)が同軸に設置される。回転検出軸40は、第1入力軸64に嵌合することにより、第1入力部60に接続される。
【0027】
このように本開示に係るアクチュエータ1は、複数のモータ11、21、31および回転検出軸40を集約して構成される。その結果、第1駆動軸10、第2駆動軸20、第3駆動軸30、および回転検出軸40は、ケース3より、それぞれ同軸に軸方向の一端側(図示上方)に向けて突出する。
【0028】
ケース3はコネクタ4および固定部3a,3bを備える。コネクタ4には複数の端子5aが設置され、それぞれ上述したモータ11、21、31およびセンサ28、38、48に電気的に接続される。アクチュエータ1は、空調機器50に取り付けられた後に、固定部3a,3bを介して、空調機器50のケース51にネジ4a、4b(
図3)で固定される。
【0029】
次にアクチュエータ1が作業員によって空調機器50のケース51に取り付けられる手順の一例について説明する。この例における各駆動軸10、20、30および回転検出軸40と各入力部60、70、80との組付けの順序は一例であり、空調機器50およびアクチュエータ1の構成によっては順序が変わってもよい。また作業員による組付けの手際により、組付けの順序が変わってもよい。
【0030】
まず
図2に示すように、アクチュエータ1は空調機器50のケース51に対して、各駆動軸10、20、30および回転検出軸40と対応する各入力部60、70、80が互いに対向するように、概ね位置決めされる。この状態で、アクチュエータ1は空調機器50の機器に近づけられて取り付けが開始される。
【0031】
まず第2入力部70のピン72が第2駆動軸20の圧入部22に圧入される。さらに、ケース51に形成された回動規制用のピン511を、アクチュエータ1のケース3に形成したピン挿通孔301に挿通する。圧入部22とピン511の2箇所によって、ケース51とケース3とが位置決めされるようになる。
【0032】
このピン511及びピン挿通孔301は、互いに遊嵌状態となる寸法に設定されている。ピン72を圧入部22に圧入させながら、ピン511とピン挿通孔301とを位置合わせしつつ、ケース51とケース3を組み付けるのである。
【0033】
これにより、アクチュエータ1と空調機器50の基準位置が規定される。この圧入に伴い、回転検出軸40を第1入力軸64に接続する。具体的には、回転検出軸40の主ピン42を第1入力軸64の主嵌合部92に嵌合させる。この際、主ピン42の回転位置を主嵌合部92の回転位置に合わせるように、作業員が回転検出軸40を手動で回転させてもよい。
【0034】
主ピン42の一部を主嵌合部92に嵌合させた状態で、アクチュエータ1を空調機器50に更に接近させ、第2減速ギア12を第1減速ギア62に噛み合わせる。この状態でアクチュエータ1を空調機器50に更に接近させ、回転検出軸40の補助ピン44を第1入力軸64の補助嵌合部94に嵌合させる。この際も、補助ピン44の回転位置を補助嵌合部94の回転位置に合わせるよう、作業員が回転検出軸40を手動で回転させてもよい。
【0035】
アクチュエータ1を空調機器50に更に接近させ、第3駆動軸ギア32を第3入力部ギア82に噛み合わせる。この段階で、アクチュエータ1の全ての駆動軸10、20、30および回転検出軸40は、空調機器50の全ての入力部60、70、80にそれぞれ接続される。最後にアクチュエータ1の固定部3a,3bのねじ穴を空調機器50のケース51の図示しないねじ穴に合わせ、アクチュエータ1をケース51にネジ4a,4b(
図3)で固定する。このようにして、アクチュエータ1は空調機器50に取り付けられて固定され、
図3に示す状態となる。
【0036】
図3に示す状態では、第2減速ギア12が第1減速ギア62に噛み合い、第1モータ11により駆動される第1駆動軸10の回転は、第2減速ギア12および第1減速ギア62により減速されて第1入力部60に伝達される。また圧入部22にピン72が圧入されることにより、第2モータ21により駆動される第2駆動軸20の回転は、第2入力部70に伝達される。更に第3駆動軸ギア32に第3入力部ギア82が噛み合わされることにより、第3モータ31により駆動される第3駆動軸30の回転は、第3駆動軸ギア32および第3入力部ギア82を介して第3入力部80に伝達される。更に
図2に示した回転検出軸40の主ピン42および補助ピン44が主嵌合部92および補助嵌合部94にそれぞれ嵌合されることにより、
図3に示すように回転検出軸40は第1減速ギア62と同軸に接続される。この状態で、第1減速ギア62の回転は、回転検出軸40と同軸であるセンサ48により検知可能である。
【0037】
上述の如く、アクチュエータ1が空調機器50に取り付けられる手順を説明した。この取り付けの際には、アクチュエータ1の第1駆動軸10、第2駆動軸20、第3駆動軸30、および回転検出軸40が、それぞれ空調機器50の第1入力部60、第2入力部70、第3入力部80に接続される。
【0038】
ここで、アクチュエータ1の第1駆動軸10、第2駆動軸20、第3駆動軸30、および回転検出軸40のそれぞれの位置には、アクチュエータ1のケース3に対して所定の公差内でバラツキが発生する。また空調機器50の第1入力部60、第2入力部70、第3入力部80のそれぞれの位置にも、空調機器50のケース51に対して所定の公差内でバラツキが発生する。またピン72と圧入部22の相対位置にもバラツキが発生する。更に第1減速ギア62および第2減速ギア12の間には噛み合わせに必要な隙間が存在する。第3駆動軸ギア32および第3入力部ギア82の間にも、噛み合わせに必要な隙間が存在する。これらの隙間にもバラツキが発生する。
【0039】
このように、アクチュエータ1の複数の軸と空調装置の複数の入力部との間には多くのバラツキの要因が存在する。したがって、アクチュエータ1および空調機器50の特定の組み合わせにおいては、これらバラツキに起因して、アクチュエータ1の空調機器50に対する取り付けが困難になる事態が想定される。このような事態を回避するため、本開示に係るアクチュエータ1の回転検出軸40と空調機器50の第1入力軸64は、次に説明する構成を備える。
【0040】
図4に示すように、回転検出軸40の主ピン42および補助ピン44は、第1入力軸64の主嵌合穴92aおよび補助嵌合穴94aにそれぞれ挿入されることにより、主嵌合部92および補助嵌合部94にそれぞれ嵌合される。
【0041】
回転検出軸40は、樹脂により一体成形された主ピン42、補助ピン44、および円盤状のディスク部46により構成される。主ピン42および補助ピン44は、ディスク部46より軸方向の一端側(図示上方)に突出する。主ピン42は、ディスク部46とほぼ同軸に位置する。補助ピン44は、ディスク部46の径方向に対して、主ピン42より離れて位置する。
【0042】
主ピン42は主ピンテーパ部42aおよび主ピン基部42bからなる。主ピンテーパ部42aは、主ピン42の軸方向の一方(図示上方)に位置する。主ピンテーパ部42aは、軸方向の一方側(図示上方)に向けて縮小するT字状の横断面を有する。主ピン基部42bは、主ピン42の軸方向の他方(図示下方)に位置する。
図4に示す例では、主ピン基部42bは、軸方向に対してほぼ一定であるT字状の横断面を有する。
【0043】
補助ピン44は補助ピンテーパ部44aおよび補助ピン基部44bからなる。補助ピンテーパ部44aは、補助ピン44の軸方向の一方(図示上方)に位置する。補助ピンテーパ部44aは、軸方向の一方側(図示上方)に向けて縮小する円形状の横断面を有する。補助ピン基部44bは、補助ピン44の軸方向の他方(図示下方)に位置する。
図4に示す例では、補助ピン基部44bは、軸方向に対してほぼ一定である円形状の横断面を有する。
【0044】
第1入力軸64は、樹脂で一体成形された主嵌合部92および補助嵌合部94を備える。主嵌合部92は円筒状であり、T字状の横断面を有する主嵌合穴92aを有する。主嵌合部92の径方向外側には、主嵌合部92と同心円状にC字状部95が形成される。C字状部95は周方向に一部開口しており、この開口の径方向外側には補助嵌合部94が一体に形成される。補助嵌合部94はU字状の横断面を有し、内部に補助嵌合穴94aを有する。補助嵌合部94は、図示下方に位置する一端に補助嵌合部テーパ94bを有する。
【0045】
図4に示す例では、補助嵌合部94の軸方向に対する高さは、主嵌合部92の軸方向に対する高さと同一である。また
図4に示す例では、補助ピン44の軸方向に対する高さは、主ピン42の軸方向に対する高さより小さく設定される。これにより、回転検出軸40が第1入力軸64に接続される際には、まず主ピン42が主嵌合部92に嵌合され、続いて補助ピン44が補助嵌合部94に嵌合される。
【0046】
更に
図4に示す例では、補助ピン44の軸方向に対する高さは、主ピン基部42bの軸方向に対する高さより小さい。これにより、回転検出軸40が第1入力軸64に接続される際には、主ピンテーパ部42aが主嵌合部92に案内されて主嵌合穴92aに嵌合され、続いて主ピン基部42bの軸方向一端側(図示上方)が主嵌合穴92aに嵌合される。更に続いて補助ピンテーパ部44aが補助嵌合部94に案内されて補助嵌合穴94aに嵌合され、続いて補助ピン基部44bが補助嵌合穴94aに嵌合される
図5は、主ピン基部42bが主嵌合部92に対して位置ずれなく嵌合された状態の例を示す。主ピン基部42bの横断面は、大小2つの矩形を図示上下に連結して形成されたT字状であり、図示上側の両端が面取りされている。主嵌合穴92aの横断面は、大小2つの矩形を図示上下に連結して形成されたT字状である。
図5に示す例では、主ピン基部42bの横断面と主嵌合穴92aの横断面とは、概ね相似である。
【0047】
主ピン基部42bは、ディスク部46と同心である軸芯42cを有する。
図5の状態において、主ピン基部42bの軸芯42cは、主嵌合部92の中心92cと一致する。この状態で、主ピン基部42bは主嵌合部92の内壁に対して第1クリアランス100を形成する。主ピン基部42bが主嵌合部92に嵌合した状態において、主ピン基部42bは主嵌合部92に対して第1クリアランス100の範囲内で相対的に移動可能であり、また相対的に回転が可能である。ただしこの状態において、主ピン基部42bは主嵌合部92に対して一定角度まで相対的に回転が可能であるが、一定角度まで回転した時点で主嵌合部92の内壁に当接して回転が制限される。
【0048】
図6は、アクチュエータ1が空調機器50に取り付けられて、主ピン基部42bが主嵌合部92に嵌合し、更に補助ピン基部44bが補助嵌合部94に嵌合した状態の一例を示す。上述したように、アクチュエータ1の複数の軸の位置および空調機器50の複数の入力部の位置には多くのバラツキの要因が存在する。これら複数の軸と複数の入力部とを接続することによりアクチュエータ1が空調機器50に取り付けられた状態においては、これらの位置のバラツキに起因して、主ピン基部42bおよび主嵌合部92の相対位置がずれる。このため
図6に示すように、主ピン基部42bが主嵌合部92に嵌合された状態で、主嵌合部92は主ピン基部42bに対して相対的に回転し、主嵌合部92の中心92cは主ピン基部42bの軸芯42cよりずれる。このような主ピン基部42bおよび主嵌合部92の相対位置のずれは、それぞれの間に形成された第1クリアランス100の範囲内で発生する。
【0049】
つまり第1クリアランス100は、主ピン基部42bおよび主嵌合部92の相対位置のずれを許容することにより、アクチュエータ1の複数の軸の位置および空調装置の複数の入力部の位置のバラツキに起因する位置ずれを吸収する。これにより、アクチュエータ1と空調機器50の特定の個体の組み合わせにおいて想定される組付けの困難さが低減される。
【0050】
ただし主ピン基部42bが主嵌合部92に嵌合されるだけでは、第1クリアランス100のために遊びが生じ、互いの相対位置が確定しない。そこで、補助ピン44が更に補助嵌合部94に嵌合される。補助ピン44と補助嵌合部94との間には、回転検出軸40の円周方向に対して、第2クリアランス200が形成される。ただしこの第2クリアランス200は、上述した第1クリアランス100より遙かに小さく設定される。これにより、回転検出軸40と第1入力部60との相対位置が回転方向に対して確定する。このようにして、主ピン42により概略決定した回転検出軸40および第1入力部60の相対位置は、補助ピン44により更に厳密に決定される。
【0051】
次にアクチュエータ1が設置される空調機器50の全体的な構成について説明する。
図8に示すように、空調機器50は上述した各種ドアの他、エバポレータ91およびヒータコア93をケース51に収容して構成される。エバポレータ91は、通風AFがエバポレータ91を通過する際に、内部を流通する冷媒と通風AFとを熱交換して通風AFを冷却し除湿する。ヒータコア93は、高温状態のエンジン冷却水等を熱源として、エバポレータ91を通過した冷風を加熱する。
【0052】
第1AMドア76および第2AMドア86は、エバポレータ91より通風方向の下流側に配置される。第1AMドア76および第2AMドア86は、それぞれ実線で示されヒータコア93の上流を遮る最小暖房位置、およびヒータコア93の上流を開放する最大暖房位置との間で回転可能であり、ヒータコア93を流通する空気量を調節する。
【0053】
ケース51は、エバポレータ91より通風方向の下流側に、DEF開口部96、FACE開口部97、およびFOOT開口部98を有する。DEF開口部96は、ケース51の上部に位置して、車輌窓ガラスの内面に向けて空調空気を吹き出す。DEF開口部96はDEFドア66により開閉される。FACE開口部97は、ケース51の上部に位置して、車室内の乗員頭部へ向けて空気を吹き出す。FACE開口部97はFACEドア67により開閉される。FOOT開口部98は、ケース51の底部に位置して、車室内の乗員の足元へ向けて空気を吹き出す。FOOT開口部98は、FOOTドア68により開閉される。DEFドア66、FACEドア67、およびFOOTドア68は、それぞれが破線で示す全閉位置と実線で示す全開位置との間で駆動される。
【0054】
センサ28(
図2)は第2駆動軸20の回転位置を検出することにより、第1AMドア76の回転位置を検出する。第2駆動軸20は第1AMドア76を、第2入力部70を介して駆動し、センサ28によって検出された回転位置が所定の回転位置となるように制御する。センサ38(
図2)は第3駆動軸30の回転位置を検出することにより、第2AMドア86の回転位置を検出する。第3駆動軸30は第2AMドア86を、第3入力部80を介して駆動し、センサ38によって検出された回転位置が所定の回転位置となるように制御する。
【0055】
センサ48(
図2)は第1入力部60の回転位置を検出することにより、各種ドア66、67、68の開度を検出する。第1駆動軸10は、これら各種ドア66、67、68を、第1入力部60およびリンク63を介して駆動し、センサ48により検出された開度が所定の開度となるように制御する。このように構成された空調機器50は、これらDEFドア66、FACEドア67、およびFOOTドア68の開度を所定の吹出しモードに応じて設定することにより、それら吹出しモードの運転を可能にする。
【0056】
本開示において、回転検出軸40は回転軸部材に対応する。次に上述した実施形態の構成および作用効果について説明する。アクチュエータ1は、第1駆動対象66、67、68と連動する第1入力部60および第2駆動対象76と連動する第2入力部70を備える空調機器50に対して取付け可能である。アクチュエータ1は、ケース3と、ケース3に収容される第1モータ11および第2モータ21と、を備える。アクチュエータ1は、ケース3に設置され第1モータ11に駆動されて回転し第1入力部60と連動可能である第1駆動軸10を更に備える。アクチュエータ1は、ケース3に設置され第2モータ21に駆動されて回転し第2入力部70と連動可能である第2駆動軸20を更に備える。アクチュエータ1は、ケース3に設置され第1入力部60と連動することにより回転可能な回転軸部材40を更に備える。回転軸部材40は、軸方向に突出する主ピン42を備える。
【0057】
第1駆動軸10および第2駆動軸20が第1入力部60および第2入力部70にそれぞれ接続されることによりケース3が空調機器50に取り付けられる。この際に、主ピン42は、第1入力部60の主嵌合部92に形成される主嵌合穴92aに挿入されることにより主嵌合部92に嵌合されて、主嵌合部92に対する回転が制限される。更にこの際に、主ピン42は、主嵌合部92の内壁に対して第1クリアランス100を形成することにより、回転軸部材40および第1入力部60の相対位置のずれを吸収する。
【0058】
上述したように、第1駆動軸10および第1入力部60の相対位置のずれと第2駆動軸20および第2入力部70の相対位置のずれに起因して、主ピン42および主嵌合部92の相対位置にずれが生じる。ただし、このような相対位置のずれを第1クリアランス100によって吸収可能である。このため、第1駆動軸10および第2駆動軸20を第1入力部60および第2入力部70にそれぞれ接続してケース3を空調機器50に取り付ける作業が容易となる。
【0059】
回転軸部材40は更に、主ピン42と同じ方向に突出する補助ピン44を備える。補助ピン44は、回転軸部材40の径方向に、主ピン42より離れた位置にある。ケース3が空調機器50に取り付けられる際に、主ピン42が主嵌合部92に嵌合される。更に続いて補助ピン44が第1入力部60の補助嵌合部94に形成される補助嵌合穴94aに挿入されることにより補助嵌合部94に嵌合されて、回転軸部材40を第1入力部60に対して回転方向に位置決めする。
【0060】
主ピン42が主嵌合部92に嵌合された状態では、主ピン42は主嵌合部92に対して第1クリアランス100の範囲で移動可能である。したがって、回転軸部材40および第1入力部60の回転方向に対する相対位置は確定しない。この状態より更に補助ピン44が補助嵌合部94に嵌合することにより、回転軸部材40および第1入力部60の相対位置が回転方向に対して決定される。このようにして、主ピン42により概略決定した回転軸部材40および第1入力部60の相対位置は、補助ピン44により更に厳密に決定される。このような構成では、まず主ピン42と主嵌合部92との間の第1クリアランス100によりアクチュエータ1の空調機器50に対する組付けが容易となる。更に補助ピン44と補助嵌合部94との嵌合により回転軸部材40および第1入力部60の回転方向に対する位置決めがなされる。これにより、第1クリアランス100の形成に起因する回転軸部材40および第1入力部60の回転方向に対する相対位置の不確定さが解消される。
【0061】
主ピン42は、主ピン基部42bと、主ピン基部42bから延びて軸方向の一端側に向けて横断面積が縮小する主ピンテーパ部42aと、からなる。補助ピン44は、補助ピン基部44bと、補助ピン基部44bから延びて軸方向の一端側に向けて横断面積が縮小する補助ピンテーパ部44aと、からなる。ケース3が空調機器50に取り付けられる際に、主ピンテーパ部42aが主嵌合部92に案内されて主嵌合部92に形成された主嵌合穴92aに挿入される。更に続いて主ピン基部42bの軸方向一端側が主嵌合穴92aに挿入される。更に続いて補助ピンテーパ部44aが補助嵌合部94に案内されて補助嵌合穴94aに挿入される。更に続いて補助ピン基部44bが補助嵌合穴94aに挿入される。
【0062】
主ピンテーパ部42aの横断面積は軸方向の一端側に向けて縮小するため、主ピンテーパ部42aの一端側の先端の横断面積は主嵌合穴92aの開口面積より十分小さくできる。したがって、主ピンテーパ部42aの先端は主嵌合穴92aへ容易に挿入される。
【0063】
補助ピンテーパ部44aの横断面積は軸方向の一端側に向けて縮小するため、補助ピンテーパ部44aの一端側の先端の横断面積は補助嵌合穴94aの開口面積より十分小さくできる。したがって、主ピン基部42bが部分的に主嵌合部92に嵌合された状態において、補助ピンテーパ部44aの先端は補助嵌合穴94aへ容易に挿入される。
【0064】
また主ピンテーパ部42aが主嵌合部92に案内されることにより、主ピン基部42bは主嵌合部92に容易に嵌合される。更に補助ピンテーパ部44aが補助嵌合部94に案内されることにより、補助ピン基部44bは補助嵌合部94に容易に嵌合される。
【0065】
主ピン基部42bは主嵌合部92の内壁に対して第1クリアランス100を形成する。補助ピン基部44bは補助嵌合部94の内壁に対して第2クリアランス200を形成する。第2クリアランス200は、第1クリアランス100より小さい。
【0066】
このような構成によれば、第1クリアランス100を十分大きく設定することにより、第1駆動軸10と第1入力部60の位置ずれおよび第2駆動軸20と第2入力部70の位置ずれを吸収できる。更に第2クリアランス200を第1クリアランス100より小さく設定することにより、回転軸部材40を第1入力部60に対して回転方向に位置決めできる。ここで、第2クリアランス200をゼロにしてもよく、この場合は回転軸部材40および第1入力部60の回転方向に対する相対位置が、更に厳密に決定される。
【0067】
主嵌合穴92aは、非円形の開口を有する。主ピン基部42bは、非円形である横断面を有する。主ピン基部42bの横断面は、主嵌合穴92aより小さい。主ピン基部42bは主嵌合部92の内壁により回転が制限される。
【0068】
例えば上記実施形態のように主嵌合穴92aをT字状とし、また主ピン基部42bも主嵌合穴92aと相似形であるT字状としてもよい。更に主ピン基部42bが主嵌合部92に部分的に嵌合した状態で第1クリアランス100が形成され、かつ主ピン基部42bが主嵌合部92の内壁により回転が制限されることにより、回転軸部材40および第1入力部60の相対位置が回転方向に対して概略決定される。
【0069】
これらの横断面がT字状である場合には、回転軸部材40を第1入力部60に対して例えば180°回転した方向や90°回転した方向に嵌合できない。したがって、回転軸部材40および第1入力部60の相対位置を回転方向に対して概略ながら一意的に決定できる。
【0070】
補助嵌合部94は、補助ピン44と嵌合する一端に補助嵌合部テーパ94b、194bを有する。ケース3が空調機器50に取り付けられる際に、補助ピンテーパ部44aが補助嵌合部テーパ94b、194bに沿って案内されることにより、補助ピンテーパ部44aおよび補助ピン基部44bが補助嵌合穴94aに挿入される。
【0071】
このような構成によれば、補助ピンテーパ部44aは、補助嵌合穴94aに挿入されるまで、補助嵌合部テーパ94bにより案内される。したがって、補助ピンテーパ部44aが補助嵌合穴94aに対してより容易に挿入できる。
【0072】
第1入力部60は第1減速ギア62を備える。第1駆動軸10は、第1減速ギア62と噛み合い可能な第2減速ギア12を備える。ケース3が空調機器50に取り付けられる際に、第2減速ギア12が第1減速ギア62に噛み合わされることにより、第1駆動軸10が第1入力部60に接続される。
【0073】
この構成では、ケース3が空調機器50に取り付けられる際に、第2駆動軸20が第2入力部70に接続され、第2減速ギア12が第1減速ギア62に噛み合わされ、更に回転軸部材40が第1入力部60に嵌合される。このようにケース3を空調機器50に取り付ける際には、複数の軸の接続および減速ギアの噛み合わせを伴い、ケース3を空調機器50に取り付ける作業が困難になる。ただしこのような構成において、主ピン42は主嵌合部92の内壁に対して第1クリアランス100を形成する。これにより、複数の軸の接続および減速ギアの噛み合わせに伴い発生した回転軸部材40および第1入力部60の相対位置のずれを吸収する。したがって、ケース3を空調機器50に取り付ける困難さを効果的に低減できる。
【0074】
空調機器50は更に、第3駆動対象86に連動する第3入力部80を備える。アクチュエータ1は、ケース3に収容される第3モータ31を更に備える。アクチュエータ1は、ケース3に設置され第3モータ31に駆動されて回転し第3入力部80と連動する第3駆動軸30を更に備える。ケース3が空調機器50に取り付けられる際に、第3駆動軸30が第3入力部80に接続される。
【0075】
この構成では、ケース3が空調機器50に取り付けられる際に次のような軸の接続が発生する。すなわち、第2駆動軸20が第2入力部70に接続され、第2減速ギア12が第1減速ギア62に噛み合わされ、第3駆動軸30が第3入力部80に接続され、更に回転軸部材40が第1入力部60に嵌合される。このように複数の軸の接続および減速ギアの噛み合わせを伴う構成において、第1クリアランス100によって回転軸部材40および第1入力部60の相対位置のずれを吸収する。これにより、ケース3を空調機器50に取り付ける困難さを効果的に低減できる。
【0076】
第3入力部80は、第3駆動軸30が接続される軸端に第3入力部ギア82を有する。第3駆動軸30は、第3入力部ギア82と噛み合い可能な第3駆動軸ギア32を備える。ケース3が空調機器50に取り付けられる際に、第3駆動軸ギア32が第3入力部ギア82に噛み合わされることにより、第3駆動軸30が第3入力部80に接続される。
【0077】
この構成では、ケース3が空調機器50に取り付けられる際に次のような軸の接続が発生する。すなわち、第2駆動軸20が第2入力部70に接続され、第2減速ギア12が第1減速ギア62に噛み合わされ、第3駆動軸ギア32が第3入力部ギア82に噛み合わされ、更に回転軸部材40が第1入力部60に嵌合される。このように複数の軸の接続および複数の減速ギアの噛み合わせを伴う構成において、第1クリアランス100によって回転軸部材40および第1入力部60の相対位置のずれを吸収する。これにより、ケース3を空調機器50に取り付ける困難さを効果的に低減できる。
【0078】
第2駆動軸20は第2入力部70と圧入により接続される。このような構成によれば、第2駆動軸20が第2入力部70に対して圧入されることにより位置決めされ、アクチュエータ1と空調機器50の基準位置を規定できる。
【0079】
(他の実施形態)
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0080】
上記実施形態では、補助ピン44の軸方向に対する高さが、主ピン42の軸方向に対する高さより小さく設定され、補助嵌合部94の軸方向に対する高さは、主嵌合部92の軸方向に対する高さと同一に設定される例を示した。ただし、回転検出軸40が第1入力部60に接続される際に、まず主ピン42が主嵌合部92に嵌合され、続いて補助ピン44が補助嵌合部94に嵌合されるならば、他の構成を採用してもよい。
【0081】
例えば
図9に示す回転検出軸140および第1入力軸164の例において、補助ピン144の軸方向に対する高さは、主ピン42の軸方向に対する高さとほぼ同一に設定している。対して補助嵌合部194の軸方向に対する高さは、主嵌合部92の軸方向に対する高さより小さく設定している。このように、主ピン42および補助ピン144と主嵌合部92および補助嵌合部194との相対位置を設定することにより、回転検出軸140が第1入力軸164に接続される際に、まず主ピン42が主嵌合部92に嵌合され、続いて補助ピン144が補助嵌合部194に嵌合される構成としてよい。
図9の構成でも、補助嵌合部194は、図示下方に位置する一端に補助嵌合部テーパ194bを有し、補助ピン144の補助嵌合部194に対する嵌合を容易にしている。
【0082】
上記実施形態では、主ピン基部および補助ピン基部は、それぞれ軸方向に対してほぼ一定である横断面を有するが、これに限らない。主ピン基部および補助ピン基部は、主ピンテーパ部および補助ピンテーパ部より勾配の小さいテーパを有してもよく、肉抜き等により横断面が変化しても構わない。
【0083】
補助ピンの横断面は円形状に限らす、また補助嵌合部の横断面はU字状に限らない。補助ピンが補助嵌合部に嵌合されることにより、回転検出軸が第1入力部に対して回転方向に位置決め可能であれば、補助ピンの横断面および補助嵌合部の横断面は、他の形状でもよい。例えば補助ピンの横断面は、例えば楕円状、多角形状等でもよい。また例えば補助嵌合部の横断面は、O字状等でもよく、また補助ピンに嵌合可能である楕円状、多角形状等でもよい。
【0084】
主ピン基部と主嵌合穴の横断面は、それぞれ相似であるT字状に限らない。主ピン基部と主嵌合穴の横断面は、互いに嵌合した状態で相対的な回転が制限されるならば、T字状より他の形状、例えば多角形等の非円形に設定されてもよく、また互いに相似でなくてもよい。