(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多層基板は、第4の配線層、前記第3の配線層と前記第4の配線層の間に位置する第3の樹脂層、及び、前記第3の樹脂層を貫通して前記第3及び第4の配線層を相互に接続する第3のビア導体をさらに有し、
前記インダクタは、前記第4の配線層に接続するチップ部品である
ことを特徴とする請求項1に記載の複合電源管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最近のスマートフォンなどの通信装置には、ベースバンドプロセッサやアプリケーションプロセッサなど、互いに異なる電源電圧を必要とする複数の部品を内蔵するものがある。この場合、単一の電源電圧から複数の電源電圧を生成する仕組みが必要であり、その具体的な例として近年、複数の非絶縁型DC/DCコンバータを1つの電子部品内蔵基板に集積した構造を有する複合電源管理装置が検討されている。
【0005】
しかしながら、1つの電子部品内蔵基板に複数の非絶縁型DC/DCコンバータを集積する場合、1つの非絶縁型DC/DCコンバータのみを組み込む場合に比べて降圧動作や昇圧動作の誤差が大きくなってしまうので、改善が必要とされている。以下、この点について詳しく説明する。
【0006】
図6(a)(b)はそれぞれ、本発明の背景技術による非絶縁型の降圧DC/DCコンバータ100、本発明の背景技術による非絶縁型の昇圧DC/DCコンバータ110を示す図である。
図6(a)には、直流電源120と、降圧した電源電圧の供給先である負荷121も図示し、
図6(b)には、直流電源120と、昇圧した電源電圧の供給先である負荷122も図示している。以下では、まず初めにこれらの構成を説明し、その後、1つの電子部品内蔵基板に複数の非絶縁型DC/DCコンバータを集積する場合の問題点について説明する。
【0007】
降圧DC/DCコンバータ100は、
図6(a)に示すように、Pチャンネル型MOSトランジスタであるスイッチ素子101と、Nチャンネル型MOSトランジスタであるスイッチ素子102と、チョークコイル103と、エラーアンプ104と、基準電圧生成回路105と、可変抵抗106と、抵抗107と、ランプ波生成回路108と、コンパレータ109とを有して構成される。降圧DC/DCコンバータ100の入力ノードn100には直流電源120、出力ノードn101には負荷121がそれぞれ接続される。
【0008】
スイッチ素子101及びチョークコイル103は、入力ノードn100と出力ノードn101の間に、この順で直列に接続される。スイッチ素子102は、スイッチ素子101とチョークコイル103の接続点であるノードn102と、グランド端子との間に接続される。抵抗107及び可変抵抗106は、出力ノードn101と、スイッチ素子102のグランド側端部であるノードn103との間に、この順で直列に接続される。
【0009】
スイッチ素子101,102のゲート電極は、ともにコンパレータ109の出力端子に接続される。コンパレータ109の非反転入力端子はランプ波生成回路108の出力端子に接続され、コンパレータ109の反転入力端子はエラーアンプ104の出力端子に接続される。エラーアンプ104の非反転入力端子は基準電圧生成回路105に接続され、エラーアンプ104の反転入力端子は抵抗107と可変抵抗106の接続点であるノードn104に接続される。
【0010】
降圧DC/DCコンバータ100では、エラーアンプ104の制御によって、スイッチ素子101,102の状態が切り替えられる。具体的には、スイッチ素子101,102がそれぞれオン、オフである第1の状態と、スイッチ素子101,102がそれぞれオフ、オンである第2の状態との間で、スイッチ素子101,102の状態が切り替えられる。第1の状態では、直流電源120からルートR101に沿って負荷121に電源電圧が供給され、さらにチョークコイル103にエネルギーが蓄積される。一方第2の状態では、チョークコイル103から放出されるエネルギーによって電圧が生じ、この電圧がルートR102に沿って負荷121に供給される。
【0011】
エラーアンプ104は、ノードn104の電圧と基準電圧生成回路105の出力電圧との差分を積分した値を出力し、コンパレータ109は、この積分値がランプ波生成回路108の出力電圧より大きい場合にローレベルの電圧を出力し、スイッチ素子101,102を上述した第1の状態とする。これにより、出力ノードn101の電圧が上昇する。一方、コンパレータ109は、エラーアンプ104の出力がランプ波生成回路108の出力電圧より小さい場合にハイレベルの電圧を出力し、スイッチ素子101,102を上述した第2の状態とする。これにより、出力ノードn101の電圧が下降する。こうして、出力ノードn101の電圧が一定値とされる。
【0012】
次に、昇圧DC/DCコンバータ110は、
図6(b)に示すように、Nチャンネル型MOSトランジスタであるスイッチ素子111と、Pチャンネル型MOSトランジスタであるスイッチ素子112と、チョークコイル113と、エラーアンプ114と、基準電圧生成回路115と、可変抵抗116と、抵抗117と、ランプ波生成回路118と、コンパレータ119とを有して構成される。昇圧DC/DCコンバータ110の入力ノードn110には直流電源120が、出力ノードn111には負荷122がそれぞれ接続される。
【0013】
チョークコイル113及びスイッチ素子112は、入力ノードn110と出力ノードn111の間に、この順で直列に接続される。スイッチ素子111は、チョークコイル113とスイッチ素子112の接続点であるノードn112と、グランド端子との間に接続される。抵抗117及び可変抵抗116は、出力ノードn111と、スイッチ素子111のグランド側端部であるノードn113との間に、この順で直列に接続される。
【0014】
スイッチ素子111,112のゲート電極は、ともにコンパレータ119の出力端子に接続される。コンパレータ119の非反転入力端子はランプ波生成回路118の出力端子に接続され、コンパレータ119の反転入力端子はエラーアンプ114の出力端子に接続される。エラーアンプ114の非反転入力端子は基準電圧生成回路115に接続され、エラーアンプ114の反転入力端子は抵抗117と可変抵抗116の接続点であるノードn114に接続される。
【0015】
昇圧DC/DCコンバータ110では、エラーアンプ114の制御によって、スイッチ素子111,112の状態が切り替えられる。具体的には、スイッチ素子111,112がそれぞれオン、オフである第3の状態と、スイッチ素子111,112がそれぞれオフ、オンである第4の状態との間で、スイッチ素子111,112の状態が切り替えられる。第3の状態では、直流電源120からルートR103に沿ってチョークコイル113に電源電圧が供給され、これによってチョークコイル113にエネルギーが蓄積される。一方第4の状態では、直流電源120からルートR104に沿って負荷122に電源電圧が供給されるが、チョークコイル113から放出されるエネルギーによって生ずる電圧が加わるため、負荷122に印加される電圧は、直流電源120が出力する電源電圧より大きい電圧となる。
【0016】
エラーアンプ114は、ノードn114の電圧と基準電圧生成回路105の出力電圧との差分を積分した値を出力し、コンパレータ119は、この積分値がランプ波生成回路118の出力電圧より大きい場合にハイレベルの電圧を出力し、スイッチ素子111,112を上述した第3の状態とする。これにより、チョークコイル113にエネルギーが蓄積される一方、出力ノードn111の電圧は下降する。一方、コンパレータ119は、エラーアンプ114の出力がランプ波生成回路118の出力電圧より小さい場合にローレベルの電圧を出力し、スイッチ素子111,112を上述した第4の状態とする。これにより、出力ノードn111の電圧が上昇する。こうして、出力ノードn111の電圧が一定値とされる。
【0017】
以下、1つの電子部品内蔵基板に複数の非絶縁型DC/DCコンバータを集積する場合の問題点について説明する。
【0018】
初めに、降圧DC/DCコンバータ100に着目して説明する。上記の説明から理解されるように、エラーアンプ104は、ノードn104の電圧に基づいてスイッチ素子101,102の切り替え制御を行っている。そして、ノードn104の電圧は、ノードn101の電圧だけでなく、ノードn103の電圧によっても変動する。したがって、エラーアンプ104を正しく動作させるためには、ノードn103の電圧を一定に保つ必要がある。
【0019】
ノードn103は、
図6(a)に示すように、グランド端子に接続されている。したがって、通常であれば、ノードn103の電圧は、外部から供給されるグランド電位に等しい値となる。実際、ルートR101を電流が流れる場合(ノードn103を電流が流れない場合)には、ノードn103の電圧はグランド電位にほぼ等しくなる。しかしながら、ルートR102を電流が流れる場合、ノードn103の電圧はグランド電位より小さな値に変化してしまう。これは、ノードn103とグランド端子の間に配線抵抗が存在するために生ずる電圧降下によるものである。
【0020】
1つの電子部品内蔵基板に1つの非絶縁型DC/DCコンバータのみを組み込む場合、ノードn103とグランド端子の間の配線抵抗が極力小さな値となるよう電子部品内蔵基板の内部配線や内部ビア導体を設計することが可能であり、そうすることによって、上記のようなノードn103の電圧降下をほぼ問題とならないレベルにまで低減することができる。しかし、1つの電子部品内蔵基板に複数の非絶縁型DC/DCコンバータを集積する場合、電子部品内蔵基板の内部配線や内部ビア導体の設計自由度が大きく制限されるため、設計を工夫することによるノードn103の電圧降下の低減が難しい。その結果として、降圧動作の誤差が大きくなってしまう。
【0021】
昇圧DC/DCコンバータ110についても同様である。昇圧DC/DCコンバータ110では、エラーアンプ114を正しく動作させるためにノードn113の電圧を一定に保つ必要があるが、1つの電子部品内蔵基板に複数の非絶縁型DC/DCコンバータを集積する場合、電子部品内蔵基板の内部配線や内部ビア導体の設計自由度が大きく制限される。その結果、設計を工夫することによるノードn113の電圧上昇(ルートR103を電流が流れることによる上昇)の低減が難しくなり、昇圧動作の誤差が大きくなる場合が生じている。
【0022】
したがって、本発明の目的の一つは、1つの電子部品内蔵基板に集積した複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの動作の精度を向上できる複合電源管理装置及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明による複合電源管理装置は、それぞれ、外部電源が供給される第1のノードと、負荷に接続される第2のノードと、グランド電位が供給されるグランド端子とを有する複数の非絶縁型DC/DCコンバータと、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータに共通に接続される共通基準線とを備え、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータはそれぞれ、前記第1のノードと前記第2のノードの間に直列に接続された第1のスイッチ素子及びインダクタと、一方端部が前記第1のスイッチ素子と前記インダクタの接続点である第3のノードに接続され、他方端部が対応する前記グランド端子に接続された第2のスイッチ素子と、前記第2のスイッチ素子の前記他方端部である第4のノードの電圧に基づき、前記第1及び第2のスイッチ素子のオンオフ状態を排他的に制御する出力電圧調整回路とを有し、前記共通基準線は、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの前記第2のスイッチ素子と前記グランド端子とを接続する配線に設けられる第5のノードに接続されることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、非絶縁型DC/DCコンバータが降圧タイプである場合には第4のノードの電圧降下、非絶縁型DC/DCコンバータが昇圧タイプである場合には第4のノードの電圧上昇をそれぞれ防止できるので、1つの電子部品内蔵基板に集積した複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの動作の精度を向上できる。また、第2のノードに現れるリップルノイズを低減する効果、及び、第1及び第2のスイッチ素子のオンオフを切り替えた直後に発生する高周波共振ノイズを低減する効果も得られる。
【0025】
上記複合電源管理装置において、第1乃至第3の配線層、前記第1の配線層と前記第2の配線層の間に位置する第1の樹脂層、前記第2の配線層と前記第3の配線層の間に位置する第2の樹脂層、前記第1の樹脂層を貫通して前記第1及び第2の配線層を相互に接続する第1のビア導体、前記第2の樹脂層を貫通して前記第2及び第3の配線層を相互に接続する第2のビア導体、及び、前記第2の樹脂層に設けられるIC用ビア導体を有する多層基板と、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの前記第1及び第2のスイッチ素子並びに前記出力電圧調整回路が集積され、かつ前記第2の樹脂層に埋め込まれた半導体電子部品とをさらに備え、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの前記グランド端子は、前記第1の配線層に形成されるとともに、前記第1及び第2のビア導体を介して前記第2及び第3の配線層に接続され、前記半導体電子部品は、前記IC用ビア導体を介して、対応する前記グランド端子に接続される前記第2の配線層内の配線に接続され、前記共通基準線は、前記第3の配線層に設けられ、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの前記グランド端子は、前記第3の配線層内の前記共通基準線である配線に接続されることとしてもよい。
【0026】
この複合電源管理装置においてさらに、前記多層基板は、第4の配線層、前記第3の配線層と前記第4の配線層の間に位置する第3の樹脂層、及び、前記第3の樹脂層を貫通して前記第3及び第4の配線層を相互に接続する第3のビア導体を有し、前記インダクタは、前記第4の配線層に接続するチップ部品であることとしてもよい。
【0027】
また、さらに、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータはそれぞれ、前記第1のノードと前記共通基準線との間に接続される第1のキャパシタと、前記第2のノードと前記共通基準線との間に接続される第2のキャパシタとを有し、前記第1及び第2のキャパシタはそれぞれ、前記第4の配線層に接続するチップ部品であることとしてもよい。
【0028】
上記各複合電源管理装置においてさらに、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれにおける、前記共通基準線がないとした場合の前記第4のノードの電圧である第1の電圧が、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの該第1の電圧の合計値に占める割合を第1の割合とし、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれにおける、前記第5のノードと前記共通基準線の間の配線抵抗である第1の抵抗の値が、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの該第1の抵抗の値の合計値に占める割合を第2の割合とすると、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれにおける前記第1の抵抗の値は、当該非絶縁型DC/DCコンバータにおける前記第1及び第2の割合が反比例の関係となるように決定されることとしてもよい。
【0029】
上記各複合電源管理装置においてさらに、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータはそれぞれ、前記第4のノードと前記第5のノードの間を流れる電流の量を測定する電流センサを有し、前記複合電源管理装置は、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの前記出力電圧調整回路の伝達関数を補正する伝達関数補正手段と、前記伝達関数の補正情報を前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータごとに記憶する記憶手段とをさらに備え、前記伝達関数補正手段は、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの前記電流センサの測定結果と、前記記憶手段に記憶される前記補正情報とに基づき、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの前記出力電圧調整回路の前記伝達関数を補正することとしてもよい。
【0030】
上記各複合電源管理装置においてさらに、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータはそれぞれ降圧DC/DCコンバータであり、前記第1のスイッチ素子は、前記インダクタに比べて電気的に前記第1のノード寄りの位置に配置されることとしてもよいし、前記複数の非絶縁型DC/DCコンバータはそれぞれ昇圧DC/DCコンバータであり、前記第1のスイッチ素子は、前記インダクタに比べて電気的に前記第2のノード寄りの位置に配置されることとしてもよい。
【0031】
また、本発明による通信装置は、上記各複合電源管理装置のいずれかを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、1つの電子部品内蔵基板に集積した複数の非絶縁型DC/DCコンバータそれぞれの動作の精度を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0035】
図1(a)は、本発明の好ましい第1の実施の形態による複合電源管理装置1の断面の模式図である。また、
図1(b)は、この複合電源管理装置1に内蔵されるDC/DCコンバータ10
kの回路構成を示す図である。DC/DCコンバータ10
kは非絶縁型の降圧DC/DCコンバータであり、複合電源管理装置1には、このようなDC/DCコンバータ10
kがn+1個(DC/DCコンバータ10
0〜10
n)内蔵される。
【0036】
図1(a)に示すように、複合電源管理装置1は、3層の樹脂層I1〜I3からなる多層基板に半導体電子部品2が埋め込まれた構造を有している。半導体電子部品2は、DC/DCコンバータ10
0〜10
nに含まれる半導体回路(後述するスイッチ素子11
k,12
k、エラーアンプ14
kなどを含む回路)を構成するもので、端子面を樹脂層I1側に向けた状態で、樹脂層I2に埋め込まれる。
【0037】
多層基板の下側表面を構成する樹脂層I1の下側表面には、配線層L1及び半田ボールBが形成される。半田ボールBは、外部のプリント基板等に複合電源管理装置1を実装する際、プリント基板上の配線と、複合電源管理装置1の端子とを接続するために用いられる。
【0038】
樹脂層I1と樹脂層I2の間には配線層L2が、樹脂層I2と樹脂層I3の間には配線層L3が、それぞれ形成される。配線層L3として形成される配線には、後ほど詳しく説明する共通基準線Z
Gが含まれる。
【0039】
多層基板の上側表面を構成する樹脂層I3の上側表面には、配線層L4が形成される。配線層L4の表面には、それぞれチップ部品である一次側キャパシタ18
0〜18
n、チョークコイル13
0〜13
n、及び二次側キャパシタ19
0〜19
nが実装される。なお、
図1(a)には、それぞれ1つずつのみ(一次側キャパシタ18
k、チョークコイル13
k、及び二次側キャパシタ19
k)を例示している。
【0040】
樹脂層I1,I2,I3には、それぞれビア導体V12,V23,V34が設けられる。ビア導体V12は樹脂層I1を貫通し、配線層L1と配線層L2とを接続する。ビア導体V23は樹脂層I2を貫通し、配線層L2と配線層L3とを接続する。ビア導体V34は樹脂層I3を貫通し、配線層L3と配線層L4とを接続する。また、樹脂層I2には、IC用ビア導体VICも設けられる。IC用ビア導体VICは、配線層L2と半導体電子部品2の端子電極とを接続する。
【0041】
図1(b)に示すように、DC/DCコンバータ10
kは、Pチャンネル型MOSトランジスタであるスイッチ素子11
kと、Nチャンネル型MOSトランジスタであるスイッチ素子12
kと、チョークコイル13
kと、エラーアンプ14
k(出力電圧調整回路)と、基準電圧生成回路15
kと、可変抵抗16
kと、抵抗17
kと、一次側キャパシタ18
kと、二次側キャパシタ19
kと、ランプ波生成回路1A
kと、コンパレータ1B
kとを有して構成される。DC/DCコンバータ10
kの入力ノードn1
kには直流電源6
kが、出力ノードn2
kには負荷7
kがそれぞれ接続される。なお、直流電源6
kとしては、DC/DCコンバータ10
0〜10
nの一部又は全部に共通のものを用いてもよい。
【0042】
スイッチ素子11
k及びチョークコイル13
kは、入力ノードn1
kと出力ノードn2
kの間に、この順で直列に接続される。スイッチ素子12
kは、スイッチ素子11
kとチョークコイル13
kの接続点であるノードn3
kと、
図1(a)に示した半田ボールBのひとつであるグランド端子G
kとの間に接続される。抵抗17
k及び可変抵抗16
kは、出力ノードn2
kと、スイッチ素子12
kのグランド側端部であるノードn4
kとの間に、この順で直列に接続される。
【0043】
グランド端子G
kには、スイッチ素子12
k(ノードn4
k)の他にも、一次側キャパシタ18
kのグランド側端部であるノードn6
k、及び、二次側キャパシタ19
kのグランド側端部であるノードn7
kが接続される。つまり、グランド端子G
kは、スイッチ素子12
k、一次側キャパシタ18
k、及び二次側キャパシタ19
kに共通のグランド端子となっている。一次側キャパシタ18
kのもう一方の端部は入力ノードn1
kに接続され、二次側キャパシタ19
kのもう一方の端部は出力ノードn2
kに接続される。
【0044】
ノードn6
k,n7
kとグランド端子G
kとは、
図1(a)に示した配線層L3に属する共通基準線Z
Gを介して接続される。この共通基準線Z
Gとグランド端子G
kとを接続する配線の途中にはノードn5
kが設けられ、ノードn4
kは、このノードn5
kを介してグランド端子G
kに接続される。
【0045】
共通基準線Z
Gは、DC/DCコンバータ10
0〜10
nに共通である。つまり、共通基準線Z
Gは、ノードn5
0〜n5
n(ノードn4
0〜n4
n及びグランド端子G
0〜G
n)、ノードn6
0〜n6
n、及びノードn7
0〜n7
nのそれぞれと接続されている。
【0046】
スイッチ素子11
k,12
kのゲート電極は、ともにコンパレータ1B
kの出力端子に接続される。コンパレータ1B
kの非反転入力端子はランプ波生成回路1A
kの出力端子に接続され、コンパレータ14
kの反転入力端子はエラーアンプ14
kの出力端子に接続される。エラーアンプ14
kの非反転入力端子は基準電圧生成回路15
kに接続され、エラーアンプ14
kの反転入力端子は抵抗17
kと可変抵抗16
kの接続点であるノードn8
kに接続される。
【0047】
DC/DCコンバータ10
kでは、エラーアンプ14
kの制御によって、スイッチ素子11
k,12
kの状態が排他的に切り替えられる。具体的には、スイッチ素子11
k,12
kがそれぞれオン、オフである第1の状態(以下、スイッチ素子11
k,12
kがこの第1の状態にある期間を「オン期間」という)と、スイッチ素子11
k,12
kがそれぞれオフ、オンである第2の状態(以下、スイッチ素子11
k,12
kがこの第2の状態にある期間を「オフ期間」という)との間で、スイッチ素子11
k,12
kの状態が切り替えられる。オン期間においては、直流電源6
kからルートR1に沿って負荷7
kに電源電圧が供給され、さらにチョークコイル13
kにエネルギーが蓄積される。一方オフ期間においては、チョークコイル13
kから放出されるエネルギーによって電圧が生じ、この電圧がルートR2に沿って負荷7
kに供給される。
【0048】
エラーアンプ14
kは、ノードn8
kの電圧と基準電圧生成回路15
kの出力電圧との差分を積分した値を出力し、コンパレータ1B
kは、この積分値がランプ波生成回路1A
kの出力電圧より大きい場合にローレベルの電圧を出力し、スイッチ素子11
k,12
kを上述した第1の状態とする。これにより、出力ノードn2
kの電圧が上昇する。一方、コンパレータ1B
kは、エラーアンプ14
kの出力がランプ波生成回路1A
kの出力電圧より小さい場合にハイレベルの電圧を出力し、スイッチ素子11
k,12
kを上述した第2の状態とする。これにより、出力ノードn2
kの電圧が下降する。こうして、出力ノードn2
kの電圧が一定値とされる。
【0049】
図2(a)は、ノードn4
k,n6
k,n7
k、共通基準線Z
G、及びグランド端子G
kの間を接続する配線のインピーダンスを示す図である。同図に示すインピーダンスZ
x,k(xはL1,V12,L2,V23,L3のいずれか)は、グランド端子G
kと共通基準線Z
Gとの間を接続する配線のうち、変数xで示される配線層又はビア導体として形成される部分のインピーダンスを表している。同図から理解されるように、ノードn5
kは配線層L2に設けられる。また、インピーダンスZ1
x,k(xはL4,V34,L3のいずれか)は、共通基準線Z
Gとノードn6
kとの間を接続する配線のうち、変数xで示される配線層又はビア導体として形成される部分のインピーダンスを表し、インピーダンスZ2
x,k(xはL4,V34,L3のいずれか)は、共通基準線Z
Gとノードn7
kとの間を接続する配線のうち、変数xで示される配線層又はビア導体として形成される部分のインピーダンスを表し、インピーダンスZ3
x,k(xはL3,VICのいずれか)は、ノードn5
kとノードn4
kとの間を接続する配線のうち、変数xで示される配線層又はビア導体として形成される部分のインピーダンスを表している。
【0050】
電流i
k0は、オフ期間にノードn5
kからノードn4
kに流れ込む電流であり、電流i
k1は、オフ期間にノードn5
kから共通基準線Z
Gに流れ込む電流である。
【0051】
電流i
k0は、負荷7
kに流れ込む電流をi
LOAD,kと、スイッチ素子11
kのオンデューティーD(時比率=オン期間の時間長/周期)とを用いて、次の式(1)で表される。なお、式(1)第三辺のV
i,k,V
o,kはそれぞれ、ノードn1
k,n2
kの電圧である(
図1(b)参照)。
【0053】
また、電流i
k1は、次の式(2)で表される。ただし、式(2)中のZ
A,kはノードn5
kとグランド端子G
kの間のインピーダンス(=Z
L1,k+Z
V12,k)であり、Z
B,kはノードn5
kと共通基準線Z
Gの間のインピーダンス(=Z
L2,k+Z
V23,k+Z
L3,k)である。また、Aは、式(3)のように表される定数である。また、M,L,jはそれぞれ、式(4)〜式(6)のように定義される。
【0055】
ノードn4
kの電圧V
kは、理想的にはグランド電位となることが好ましい。しかしながら、オフ期間においては上記電流i
k0,i
k1が流れるため、グランド端子G
kとノードn4
kの間に存在するインピーダンスZ
L1,k,Z
V12,k,Z3
L2,k,Z3
VIC,kにおいて電圧降下が発生する。その結果、電圧V
kはグランド電位よりも低くなる。本実施の形態による複合電源管理装置1では、共通基準線Z
Gを利用してノードn5
0〜n5
nを相互に接続していることにより、このような電圧V
kの変化を緩和することが可能になっている。そしてこれにより、共通基準線Z
Gを利用しない場合に比べ、降圧動作の精度を向上することが可能になっている。
【0056】
以下、複合電源管理装置1が上記のような効果を奏する理由について詳しく説明するが、
図2(a)の構成に沿って説明を進めると数式などが複雑になってしまうので、以下では、
図2(b)に示すように、n=2である場合(複合電源管理装置1が3つのDC/DCコンバータ10
0〜10
2によって構成される場合)を例として取り上げて説明する。また、直流成分のみに着目して説明することとし、各インピーダンスを、インピーダンスZ3
VIC,k,Z3
V2,kの合成抵抗R
k0、インピーダンスZ
L3,k,Z
V23,k,Z
L2,kの合成抵抗R
k1、及び、インピーダンスZ
V12,k,Z
L1,kの合成抵抗R
k2に置き換えて説明する。
【0057】
まず、電流I
00〜I
20が変化しない定常状態を考える。定常状態では、キャパシタ18
k,19
k(ノードn6
k,n7
k)に電流が流れないことから、グランド端子G
0〜G
2のそれぞれから共通基準線Z
Gに流れ込む電流I
01〜I
21の間に、次の式(7)が成り立つ。
【0059】
また、共通基準線Z
G内での電圧分布が一定であるとすると、共通基準線Z
Gの電圧V
Gは、次の式(8)のように表される。
【0061】
式(7)から電流I
21を求めて式(8)の第4辺に代入すると、式(8)の第2辺との関係から次の式(9)が得られる。
【0063】
また、式(8)の第1辺及び第2辺より、次の式(10)が得られる。
【0065】
式(9)と式(10)を電流I
01,I
11の連立方程式と見て解くと、次の式(11)及び式(12)に示すように、電流I
01,I
11のそれぞれを電流I
00〜I
20の関数で表すことが可能になる。同様にして電流I
21についても、次の式(13)に示すように電流I
00〜I
20の関数で表すことができる。ただし、式(11)〜式(13)に示すBは、式(14)のように表される定数である。なお、式(11)〜式(13)は、上述した式(2)に対応する。
【0067】
式(11)〜式(13)を用いると、次の式(15)〜式(17)のように、電圧V
0〜V
2を電流I
00〜I
20の関数で表すことが可能になる。
【0069】
ここで、仮に共通基準線Z
Gを用いないこととすると、その場合のノードn4
0〜n4
2それぞれの電圧V
0B〜V
2Bは、
図2(b)から明らかなように、次の式(18)〜式(20)のように表される。
【0071】
式(15)〜式(20)から、共通基準線Z
Gを用いる場合と用いない場合との間のノードn4
0〜n4
2それぞれの電圧の差分D
0〜D
2は、次の式(21)〜式(23)のように表される。
【0073】
式(18)から理解されるように、電圧V
0Bは電流I
00に対して単調減少の関係にある。これに対し、式(21)から理解されるように、差分D
0は電流I
00に対して単調増加の関係にある。したがって、
図1(a)に示したルートR2を電流が流れることによる電圧V
0Bの低下は、差分D
0の増加よってキャンセルされることになる。このことは、ルートR2を電流が流れることによるノードn4
0の電圧降下が緩和されるということを意味しており、これによってエラーアンプ14
0の反転入力端子に供給される電圧の精度が高まる。エラーアンプ14
1,14
2に関しても同様であり、したがって複合電源管理装置1では、共通基準線Z
Gを利用しない場合に比べて降圧動作の精度が向上する。
【0074】
以下、R
02=R
12=R
22=R
1、R
01=R
11=R
21=R
2である場合に着目して、より詳しく説明する。この場合、式(21)〜式(23)は、次の式(24)〜式(26)のように変形される。
【0076】
差分D
0をゼロとして式(24)を変形すると、差分D
0がゼロとなるときの電流I
00が、次の式(27)のように求められる。
【0078】
式(27)の右辺は、電流I
00〜I
20の平均値である。つまり、差分D
0は、電流I
00が電流I
00〜I
20の平均値に等しいときにゼロとなり、このとき電圧V
0は電圧V
0Bに等しくなる。そして、電流I
00が電流I
00〜I
20の平均値より小さくなる方向に変動すると、差分D
0はマイナスの値となる。式(18)から理解されるように、このときの電圧V
0Bは電流I
00の変動に伴って大きくなる方向に変動しているので、マイナスの値である差分D
0は、この電圧V
0Bの変動を打ち消す方向に作用する。また、電流I
00が電流I
00〜I
20の平均値より大きくなる方向に変動すると、差分D
0はプラスの値となる。式(18)から理解されるように、このときの電圧V
0Bは電流I
00の変動に伴って小さくなる方向に変動しているので、プラスの値である差分D
0は、この電圧V
0Bの変動を打ち消す方向に作用する。
【0079】
このように、電流I
00の変化に伴う差分D
0の変動は電圧V
0Bの変動を打ち消す方向に作用するので、複合電源管理装置1では、上述したように、共通基準線Z
Gを利用しない場合に比べ、ルートR2を電流が流れることによるノードn4
0の電圧降下が緩和される。ノードn4
1,n4
2についても同様である。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態による複合電源管理装置1によれば、降圧動作の精度向上が実現される。
【0081】
なお、抵抗値R
k1の具体的な値は、抵抗値R
01〜R
n1の合計中に占めるR
k1の割合(=R
k1/(R
01+・・・+R
n1))が、共通基準線Z
Gを用いない場合のノードn4
0〜n4
nの電圧V
0B〜V
nBの合計中に占めるV
kBの割合に反比例するように決定することが好ましい。上に例示したn=2である場合を再度例に取ると、そのようにして決定される抵抗値R
01〜R
21は、次の式(28)〜式(30)を満たすものである。
【0083】
式(28)〜式(30)を満たすように抵抗値R
01〜R
21を決定することで、電流I
00〜I
20の変動による電圧V
0〜V
2の変動を適切に抑制することが可能になる。以下、電圧V
0を例に取って具体的に説明する。
【0084】
式(28)から、V
0B+V
1B+V
2B中に占めるV
0Bの割合が大きいほど、電流I
00の変動による差分D
0の変動が大きくなると言える。つまり、式(28)によれば、V
0B+V
1B+V
2B中に占めるV
0Bの割合が大きいほどR
01+R
11+R
21中に占めるR
01の割合が小さくなる。その結果、R
01+R
11+R
21中に占めるR
11+R
21の割合が大きくなり、式(15)右辺の{ }内の3項目(=R
02(R
11+R
12+R
21+R
22)I
00)が大きくなるので、電流I
00の変動による差分D
0の変動が大きくなる。
【0085】
一方、式(18)から理解されるように、電流I
00の変動による電圧V
0Bの変動は、V
0B+V
1B+V
2B中に占めるV
0Bの割合が大きいほど(すなわち、R
02+R
00が大きいほど)大きくなる。この大きな変動を打ち消すためには差分D
0の変動が大きくなければならないが、上記のように式(28)によれば差分D
0の変動が大きくなるので、電圧V
0Bの大きな変動を打ち消し、電圧V
0の変動を適切に抑制することが可能になる。
【0086】
なお、一般的には、次の式(31)を満たすように、インピーダンスZ
L3,k,Z
V23,kを決めることが好ましい。こうすることで、各DC/DCコンバータ10
kは、他のDC/DCコンバータ10
kと比べて相対的に電流i
k0が大きい場合には、対応するグランド端子G
kからの電流引き込み量(=i
k0)を抑制し、一方で共通基準線Z
Gを通じて他のDC/DCコンバータ10
k(に対応するグランド端子G
k)から電流(=i
k1)の分配を受けることが可能になる。また、他のDC/DCコンバータ10
kと比べて相対的に電流i
k0が小さい場合には、対応するグランド端子G
kからノードn4
kへの引き込まれる電流(=i
k0)の一部を、共通基準線Z
Gを通じて他のDC/DCコンバータ10
kに分配することが可能になる。したがって、各DC/DCコンバータ10
kにおいて、電圧V
kの変動を適切に抑制することが可能になる。
【0088】
その他、本実施の形態による複合電源管理装置1では、ノードn4
kの電圧に基づいてエラーアンプ14
kに実装された伝達関数の制御収束点を補正することにより、ノードn4
kの電圧値をできるだけグランド電圧に近づけることとしてもよい。こうすることで、降圧動作の精度をより向上させることが可能になる。
【0089】
本実施の形態による複合電源管理装置1は、ここまでに記述した効果の他にも、出力電圧(出力ノードn2
kの電圧)に現れるリップルノイズを低減する効果、及び、スイッチ素子11
k,12
kのオンオフを切り替えた直後に発生する高周波共振ノイズを低減する効果も有するので、以下、それぞれについて詳しく説明する。なお、以下の説明では、初めに比較例として共通基準線Z
Gを用いない複合電源管理装置の例を挙げ、リップルノイズ及び高周波共振ノイズについての一般的な説明を行う。その後、本実施の形態による複合電源管理装置1が有する効果について、比較例と比較しながら説明する。
【0090】
図3(a)は、本発明の比較例による複合電源管理装置に含まれるDC/DCコンバータ50
kの回路構成を示す図である。同図に示すDC/DCコンバータ50
kは、共通基準線Z
Gを用いない点を除けば、上述したDC/DCコンバータ10
kと同様の構成を有している。スイッチ素子12
kのグランド側端部であるノードn4
k、一次側キャパシタ18
kのグランド側端部であるノードn6
k、二次側キャパシタ19
kのグランド側端部であるノードn7
kは、ノードn9
kで互いに接続される。ノードn9
kはグランド端子G
kに接続されており、ノードn4
k,n6
k,n7
kはそれぞれ、ノードn9
kを介してグランド端子G
kに接続される。
【0091】
図3(a)には、一次側キャパシタ18
kの寄生インダクタンスESL1及び寄生抵抗ESR1、二次側キャパシタ19
kの寄生インダクタンスESL2及び寄生抵抗ESR2、ノードn6
kとノードn9
kの間の寄生インダクタンスESL3及び寄生抵抗ESR3、ノードn7
kとノードn9
kの間の寄生インダクタンスESL4及び寄生抵抗ESR4、ノードn4
kとノードn9
kの間の寄生インダクタンスESL5及び寄生抵抗ESR5、ノードn9
kとグランド端子G
kの間の寄生インダクタンスESL6及び寄生抵抗ESR6を明示している。また、スイッチ素子11
k及びスイッチ素子12
kのそれぞれについて、寄生ダイオードと等価キャパシタを明示している。
【0092】
図3(b)は、ノードn4
k,n6
k,n7
k及びグランド端子G
kの間を接続する配線のインピーダンスを示す図である。同図に示すインピーダンスの記号の意味は、
図2(a)と同様である。同図に示すように、寄生インダクタンスESL3及び寄生抵抗ESR3の大きさは、配線層L4のインピーダンスZ1
L4,k、ビア導体V34のインピーダンスZ1
V34,k、配線層L3のインピーダンスZ1
L3,k、ビア導体V23のインピーダンスZ1
V23,k、及び配線層L3のインピーダンスZ1
L2,kによって決定される。具体的に数式で表すと、それぞれ次の式(32)及び式(33)のように書ける。
【0094】
同様に、他の寄生インダクタンス及び寄生抵抗も、次の式(34)〜式(39)のように書くことができる。
【0096】
さて、DC/DCコンバータ50
kにおけるリップルノイズΔV
o,k(t)は、次の式(40)で表される。式(40)中のv
C(t)、v
ESR(t)、v
ESL(t)は、それぞれ式(41)〜式(43)で表される。式(41)〜式(43)中、C
D2は二次側キャパシタ19
kの静電容量であり、I
L(t)はチョークコイル13
kを流れる電流である。
【0098】
本実施の形態による複合電源管理装置1では、容量成分v
C(t)、抵抗成分v
R(t)、インダクタンス成分v
L(t)のうち、抵抗成分v
R(t)、インダクタンス成分v
L(t)の2つが低減される。以下、詳しく説明する。
【0099】
まず、DC/DCコンバータ50
kにおけるI
L(t)の算出方法について説明する。DC/DCコンバータ50
kの状態方程式は、次の式(44)のように表される。ただし、I
o,kは出力ノードn2
kを流れる電流であり、Lはチョークコイル13
kのインダクタンスである。R,Cはそれぞれ、回路の抵抗成分及び容量成分を表している。Dは上述したスイッチ素子11
kのオンデューティーであり、Rsは、スイッチ素子11
k,12
kのオン抵抗が同一であるとした場合のそのオン抵抗に、チョークコイル13
kの直流抵抗成分を加算したものである。
【0101】
Rsは0とみなして差し支えないので、V
o,k,I
o,kの時間微分(式(44)の左辺参照)がいずれも0となる定常状態では、式(44)から次の式(45)及び式(46)の関係が得られる。
【0103】
式(45)を用いると、オン期間の電流I
L(t)であるI
Lon(t)と、オフ期間の電流I
L(t)であるI
Loff(t)とを、それぞれ次の式(47)及び式(48)のように求めることができる。ただし、T
off及びT
onはそれぞれ、オフ期間及びオン期間の時間長である。
【0105】
式(47)及び式(48)を式(42)及び式(43)に代入すると、オン期間の抵抗成分による電圧変動量v
R(t)であるv
Ron(t)、オフ期間の抵抗成分による電圧変動量v
R(t)であるv
Roff(t)、オン期間のインダクタンス成分による電圧変動量v
L(t)であるv
Lon(t)、オフ期間のインダクタンス成分による電圧変動量v
L(t)であるv
Loff(t)を、それぞれ次の式(49)〜(52)のように求めることができる。
【0107】
式(50)、式(35)、及び式(39)から、抵抗成分v
R(t)の変動幅Δv
Rを、次の式(53)のように求めることができる。また、式(51)、式(52)、式(34)、及び式(38)から、インダクタンス成分v
L(t)の変動幅Δv
Lを、次の式(54)のように求めることができる。
【0109】
式(53)及び式(54)はDC/DCコンバータ50
kのものであるが、本実施の形態によるDC/DCコンバータ10
kにおいても同様に、リップルノイズΔV
o,k(t)の抵抗成分v
R(t)の変動幅Δv
Rと、インダクタンス成分v
L(t)の変動幅Δv
Lとを求めることができる。ただしこの場合、複数のグランド端子G
0〜G
nに共通に接続されている共通基準線Z
Gと、これらグランド端子G
0〜G
nとの間のインピーダンス(
図2(a)において共通基準線Z
Gより下側に描かれているもの)のリップルノイズΔV
o,k(t)に対する寄与は、無視して構わないほどに小さくなる。したがって、DC/DCコンバータ10
kにおける変動幅Δv
R,Δv
Rはそれぞれ、次の式(55)及び式(56)のように書ける。
【0111】
式(53)と式(55)、式(54)と式(56)をそれぞれ比較すると明らかなように、DC/DCコンバータ10
kでは、DC/DCコンバータ50
kに比べ、リップルノイズΔV
o,k(t)の抵抗成分v
R(t)及びインダクタンス成分v
L(t)が低減されている。したがって、複合電源管理装置1では、出力電圧(出力ノードn2
kの電圧)に現れるリップルノイズが低減されていると言える。
【0112】
次に、DC/DCコンバータ50
kにおいてスイッチ素子11
k,12
kのオンオフを切り替えた直後に発生する高周波共振ノイズに関して、このノイズはスイッチ素子11
k又はスイッチ素子12
kの寄生ダイオードに蓄積された電荷が共振によって放出されることに起因するものである。より具体的に説明すると、スイッチ素子11
kがオンとなっている間、スイッチ素子12
kの寄生ダイオードには入力電圧V
i,kが逆方向に印加されており、したがってスイッチ素子12
kの寄生ダイオードの等価キャパシタ(容量=C
D2)にQ=C
D2V
i,kの電荷が蓄積される。スイッチ素子11
kがオフになった瞬間、この等価キャパシタと一次側回路のインダクタ成分(ESL1+ESL3+ESL5)との間で共振が発生して等価キャパシタに蓄積された電荷が放出され、高周波共振ノイズとして出力電圧V
o,kに重畳されることになる。一方、スイッチ素子12
kがオンとなっている間には、スイッチ素子11
kの寄生ダイオードに入力電圧V
i,kが逆方向に印加されており、したがってスイッチ素子11
kの寄生ダイオードの等価キャパシタ(容量=C
D1)にQ=C
D1V
i,kの電荷が蓄積される。スイッチ素子12
kがオフになった瞬間、この等価キャパシタと一次側回路のインダクタ成分(ESL1+ESL3+ESL5)との間で共振が発生して等価キャパシタに蓄積された電荷が放出され、高周波共振ノイズとして出力電圧V
o,kに重畳されることになる。
【0113】
以上のような高周波共振ノイズの電力は、次の式(57)及び式(58)で表される。ただし、P
Turn_offはスイッチ素子11
kがオフとなった直後に発生する高周波共振ノイズの電力であり、P
Turn_onはスイッチ素子11
kがオンとなった直後に発生する高周波共振ノイズの電力である。また、V
Turn_off及びI
Turn_offはそれぞれスイッチ素子11
kがオフとなった直後に発生する高周波共振ノイズの電圧及び電流であり、V
Turn_on及びI
Turn_onはそれぞれスイッチ素子11
kがオンとなった直後に発生する高周波共振ノイズの電圧及び電流である。
【0115】
式(57)、式(32)、及び式(36)から、次の式(59)のように、V
Turn_offを表すことができる。同様に、式(58)、式(32)、及び式(36)から、次の式(60)のように、V
Turn_onを表すことができる。
【0117】
式(59)及び式(60)はDC/DCコンバータ50
kのものであるが、本実施の形態によるDC/DCコンバータ10
kにおいても同様に、スイッチ素子11
kの状態が変化した直後に発生する高周波共振ノイズの電圧V
Turn_off,V
Turn_onを求めることができる。ただしこの場合、共通基準線Z
Gより一次側キャパシタ18
k寄りに存在するインピーダンス、すなわち、一次側キャパシタ18
kの寄生インダクタンスESL1と、
図2(a)に示すインピーダンスZ1
L4,k,Z1
V23,k,Z1
L3,kとが高周波共振ノイズに与える寄与は、無視して構わないほどに小さくなる。したがって、DC/DCコンバータ10
kにおける高周波共振ノイズの電圧は、次の式(61)及び式(62)のように書ける。
【0119】
式(59)と式(61)、式(60)と式(62)をそれぞれ比較すると明らかなように、DC/DCコンバータ10
kでは、DC/DCコンバータ50
kに比べ、高周波共振ノイズの電圧レベルが低減されている。したがって、複合電源管理装置1では、スイッチ素子11
k,12
kのオンオフを切り替えた直後に発生する高周波共振ノイズが低減されていると言える。
【0120】
図4は(a)は、本発明の第2の実施の形態による複合電源管理装置1の回路構成を示す図である。この複合電源管理装置1は、DC/DCコンバータ10
0〜10
nのそれぞれに電流センサ20
kが設けられている点、及び、各DC/DCコンバータ10
0〜10
nに共通な伝達関数補正手段21を備える点で第1の実施の形態による複合電源管理装置1と相違し、その他の点では同一である。以下では、相違点に着目して説明する。
【0121】
電流センサ20
kはノードn4
kとノードn5
kの間に設置され、ここを流れる電流(
図1(b)に示した電流i
k0)の電流の量を測定する。各電流センサ20
kの測定結果は、伝達関数補正手段21に供給される。
【0122】
伝達関数補正手段21は、不揮発メモリ22(記憶手段)を有して構成される。この不揮発メモリ22には、予め、各エラーアンプ14
kに実装された伝達関数f
kの補正情報が書き込まれる。
【0123】
図4(b)は、伝達関数f
kの補正情報の説明図である。
図4(b)の横軸は電流i
k0であり、縦軸は、上述したスイッチ素子11
kのオンデューティーDである。破線で示した伝達関数f
k0は補正前の状態(初期状態)における伝達関数f
kであり、同図に示すように、電流i
k0に対して変化しない定数とされている。補正情報は、この伝達関数f
k0を縦軸方向にシフトさせる情報ΔDと、傾きを変化させる情報θとを含んで構成される。この補正情報によって補正された伝達関数f
kは、同図に示すように、伝達関数f
k0に比べて縦軸方向にΔDだけシフトし、さらに横軸に対してθだけ傾いた直線となる。
【0124】
補正情報ΔDは、定常状態(i
k0=i
k0_stable)におけるノードn4
kの電圧がグランド電圧となるように決定される。
図4(b)では、定常状態におけるオンデューティーDの値をD
stableと表記している。補正情報θは、電流i
k0が定常状態から変化した場合のノードn4
kの電圧の変動が最小となるように決定される。
【0125】
伝達関数補正手段21は、こうして補正された伝達関数f
kと、電流センサ20
kから入力される電流量とに基づき、オンデューティーDを決定する。そして、このオンデューティーDに基づき、スイッチ素子11
k,12
kの状態を制御する。これにより、本実施の形態による複合電源管理装置1によれば、降圧動作の精度をより向上させることが可能になっている。
【0126】
図5は、本発明の第3の実施の形態による複合電源管理装置に内蔵される非絶縁型昇圧DC/DCコンバータ30
kの回路構成を示す図である。本実施の形態による複合電源管理装置は、
図5に示すDC/DCコンバータ30
kと同様の構成を有するDC/DCコンバータを複数個内蔵するものであり、降圧DC/DCコンバータに代えて昇圧DC/DCコンバータを有する点で、第1の実施の形態による複合電源管理装置と相違する。以下、相違点に着目して説明する。
【0127】
同図に示すように、DC/DCコンバータ30
kは、Pチャンネル型MOSトランジスタであるスイッチ素子31
kと、Nチャンネル型MOSトランジスタであるスイッチ素子32
kと、チョークコイル33
kと、エラーアンプ34
k(出力電圧調整回路)と、基準電圧生成回路35
kと、可変抵抗36
kと、抵抗37
kと、一次側キャパシタ38
kと、二次側キャパシタ39
kと、ランプ波生成回路3A
kと、コンパレータ3B
kとを有して構成される。DC/DCコンバータ30
kの入力ノードm1
kには直流電源8
kが、出力ノードm2
kには負荷9
kがそれぞれ接続される。
【0128】
チョークコイル33
k及びスイッチ素子31
kは、入力ノードm1
kと出力ノードm2
kの間に、この順で直列に接続される。スイッチ素子32
kは、スイッチ素子31
kとチョークコイル33
kの接続点であるノードm3
kと、グランド端子G
kとの間に接続される。抵抗37
k及び可変抵抗36
kは、出力ノードm2
kと、スイッチ素子32
kのグランド側端部であるノードm4
kとの間に、この順で直列に接続される。
【0129】
グランド端子G
kには、スイッチ素子32
k(ノードm4
k)の他にも、一次側キャパシタ38
kのグランド側端部であるノードm6
k、及び、二次側キャパシタ39
kのグランド側端部であるノードm7
kが接続される。つまり、グランド端子G
kは、スイッチ素子32
k、一次側キャパシタ38
k、及び二次側キャパシタ39
kに共通のグランド端子となっている。一次側キャパシタ38
kのもう一方の端部は入力ノードm1
kに接続され、二次側キャパシタ39
kのもう一方の端部は出力ノードm2
kに接続される。
【0130】
ノードm6
k,m7
kとグランド端子G
kとは、共通基準線Z
Gを介して接続される。この共通基準線Z
Gとグランド端子G
kとを接続する配線の途中にはノードm5
kが設けられ、ノードm4
kは、このノードm5
kを介してグランド端子G
kに接続される。
【0131】
共通基準線Z
Gは、複合電源管理装置内の複数のDC/DCコンバータに共通である。つまり、共通基準線Z
Gは、各DC/DCコンバータのノードm5
k(ノードm4
k及びグランド端子G
k)、ノードm6
k、及びノードm7
kと接続されている。
【0132】
スイッチ素子31
k,32
kのゲート電極は、ともにコンパレータ3B
kの出力端子に接続される。コンパレータ3B
kの非反転入力端子はランプ波生成回路3A
kの出力端子に接続され、コンパレータ3B
kの反転入力端子はエラーアンプ34
kの出力端子に接続される。エラーアンプ34
kの非反転入力端子は基準電圧生成回路35
kに接続され、エラーアンプ34
kの反転入力端子は抵抗37
kと可変抵抗36
kの接続点であるノードm8
kに接続される。
【0133】
DC/DCコンバータ30
kでは、エラーアンプ34
kの制御によって、スイッチ素子31
k,32
kの状態が排他的に切り替えられる。具体的には、スイッチ素子31
k,32
kがそれぞれオン、オフである第3の状態と、スイッチ素子31
k,32
kがそれぞれオフ、オンである第4の状態との間で、スイッチ素子31
k,32
kの状態が切り替えられる。第3の状態では、直流電源8
kからルートR3に沿ってチョークコイル33
kに電源電圧が供給され、これによってチョークコイル33
kにエネルギーが蓄積される。一方第4の状態では、直流電源8
kからルートR4に沿って負荷9
kに電源電圧が供給されるが、チョークコイル33
kから放出されるエネルギーによって生ずる電圧が加わるため、負荷9
kに印加される電圧は、直流電源8
kが出力する電源電圧より大きい電圧となる。
【0134】
エラーアンプ34
kは、ノードm8
kの電圧と基準電圧生成回路35
kの出力電圧との差分を積分した値を出力し、コンパレータ3B
kは、この積分値がランプ波生成回路3A
kの出力電圧より大きい場合にハイレベルの電圧を出力し、スイッチ素子31
k,32
kを上述した第3の状態とする。これにより、チョークコイル33
kにエネルギーが蓄積される一方、出力ノードm2
kの電圧は下降する。一方、コンパレータ3B
kは、エラーアンプ34
kの出力がランプ波生成回路3A
kの出力電圧より小さい場合にローレベルの電圧を出力し、スイッチ素子31
k,32
kを上述した第4の状態とする。これにより、出力ノードm2
kの電圧が上昇する。こうして、出力ノードm2
kの電圧が一定値とされる。
【0135】
スイッチ素子31
k,32
kが上述した第3の状態であるときにノードm5
kからノードm4
kに流れ込む電流i
k0(負の値)は、本実施の形態では、次の式(63)で表される。ただし、i
LOAD,kは負荷9
kに流れ込む電流であり、Dはスイッチ素子31
kのオンデューティー(時比率=オン期間の時間長/周期)であり、ηは電力変換効率である。また、V
i,k,V
o,kはそれぞれ、ノードm1
k,m2
kの電圧である。
【0137】
本実施の形態による複合電源管理装置によれば、第1の実施の形態による複合電源管理装置と同様、共通基準線Z
Gを利用して各DC/DCコンバータ30
kのノードm5
kを相互に接続していることにより、ルートR3を電流が流れることによるノードm4
kの電圧上昇が緩和される。したがって、昇圧動作の精度を向上することが可能になっている。
【0138】
なお、本実施の形態による複合電源管理装置においても、上述した式(31)を満たすように、インピーダンスZ
L3,k,Z
V23,k(ノードm5
kと共通基準線Z
Gの間のインピーダンス)を決めることが好ましい。こうすることで、各DC/DCコンバータ30
kは、他のDC/DCコンバータ30
kと比べて相対的に電流i
k0(の絶対値)が大きい場合には、対応するグランド端子G
kへの電流放出(=i
k0)を抑制し、抑制により生じた余剰分を、共通基準線Z
Gを通じて他のDC/DCコンバータ30
kに電流(=i
k1)を分散放出することが可能になる。
【0139】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。