(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記参照レベルを、前記最大レベルと前記最小レベルの中間の中間レベルと、前記最大レベルと前記最小レベルの範囲を4等分したうちの1/4または3/4のレベルと、の間で切り替えるスイッチを備え、
前記SAR制御回路は、
前記1番目のステップでは、
前記スイッチを前記4等分したうちの1/4または3/4のレベルに切り替えて、前記第1から第3コンパレータの比較結果に基づいて、前記電圧範囲が、前記変換範囲を4等分した範囲のうちのいずれの範囲であるか判定し、
2番目以降のステップでは、
前記スイッチを前記中間レベルに切り替えて、前記第1から第3コンパレータの比較結果に基づいて、前記電圧範囲が、前記変換範囲を4等分した範囲のうちのいずれの範囲であるか判定することを特徴とする請求項5記載のSARアナログ・デジタル変換回路。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態のSARアナログ・デジタル(SAR型AD)変換回路を説明する前に、1ステップで2ビットを決定するSAR型AD変換回路の一般的な例を説明する。
図1は、差動アナログ信号VIN+およびVIN-をデジタルデータに変換するSAR型AD変換回路の全体構成を示す図である。
【0013】
SAR型AD変換回路は、差動アナログ信号の正相信号VIN+をデジタルデータに変換する正相変換部と、正相信号VIN-をデジタルデータに変換する逆相変換部と、を有する。
【0014】
正相変換部は、3個のCDAC11P〜13Pと、3個のコンパレータ14P〜16Pと、演算回路17Pと、SAR制御回路18Pと、3個のスイッチSW1P、SWHPおよびSWLPと、を有する。正相変換部は、差動アナログ信号の正相信号VIN+をサンプリングし、デジタルデータDoutPを生成する。
【0015】
逆相変換部は、3個のCDAC11N〜13Nと、3個のコンパレータ14N〜16Nと、演算回路17Nと、SAR制御回路18Nと、3個のスイッチSW1N、SWHNおよびSWLNと、を有する。逆相変換部は、差動アナログ信号の逆相信号VIN-をサンプリングし、デジタルデータDoutNを生成する。
【0016】
上記のように、正相変換部および逆相変換部は、対称な構成を有する。また、差動アナログ信号の正相信号VIN+と逆相信号VIN-は、コモン電圧VRCに対して対称な信号であるとするので、正相変換部および逆相変換部は、対称な動作を行う。したがって、コモン電圧VRCを基準として正相信号VIN+をデジタルデータに変換した場合には、コモン電圧VRCに対して対称なデータを算出すれば逆相信号VIN-のデジタル変換データを算出することができる。以下、正相変換部について説明し、逆相変換部の説明は省略し、説明に際しては参照符号からはPを除いて示す。
【0017】
図2は、1ステップで2ビットを決定する一般的なSAR型AD変換回路の正相変換部の構成を示す図である。
図2に示すように、SAR型AD変換回路は、3個のCDAC11〜13と、3個のコンパレータ14〜16と、演算回路17と、SAR制御回路18と、3個のスイッチSW1、SWHおよびSWLと、を有する。CLKは、SAR制御回路が動作するためのクロックである。VRHおよびVRLは、SAR型AD変換回路がAD変換処理する信号の電圧範囲の上限および下限に対応し、アナログ信号VIN+の電圧範囲は、VRHおよびVRLに対応するように増幅される。コモン電圧VRCは、VRHとVRLの中間の電圧レベルであり、外部から供給されるが、VRHとVRLから容量を使用した電圧分割回路等により生成してもよい。
【0018】
図3は、CDAC11〜13、スイッチSW1、SWHおよびSWLの部分を詳細に示す図である。
CDAC11〜13は、同じ構成を有する。各CDACは、共通の信号ラインのノードMSB,2SB,3SB,…,nSBのn個のノードとn個の3点スイッチの間に接続されたn個の容量を有する。n個の容量は、容量値が2の累乗(バイナリィウェイト)で変化するように重みづけされている。例えば、単位容量値をC0とすると、ノードMSB,2SB,3SB,…,nSBに接続される容量の容量値は、C0×2
n, C0×2
n-1,…, C0の順に変化する。3点スイッチは、容量の各端子を、電圧源VRH,VRC,VRLのいずれかに接続するように切り替える。3点スイッチの接続は、SAR制御回路18により制御される。
【0019】
スイッチSW1は、CDAC11の信号ラインを、アナログ信号VIN+の入力端子に接続するか否かを切り替える。スイッチSWHは、CDAC12の信号ラインを、コモン電源VRCに接続するか否かを切り替える。スイッチSWLは、CDAC13の信号ラインを、コモン電源VRCに接続するか否かを切り替える。
【0020】
CDAC11は、3点スイッチをすべてVRCに接続した状態で、SW1を接続した後、SW1を遮断することにより、アナログ信号VIN+をサンプリングする。この状態では、CDAC11は、VIN+を出力する。この状態から、3点スイッチの接続をVRCからVRHまたはVRLに接続することにより、CDAC11の出力が、対応する容量の重みづけに応じて上昇または下降する。例えば、CDAC11の出力は、すべての3点スイッチをVRCからVRHに切り替えると、ほぼ(VRH-VRL)/2上昇し、すべての3点スイッチをVRCからVRLに切り替えると、ほぼ(VRH-VRL)/2下降する。
【0021】
CDAC12は、3点スイッチをすべてVRCに接続した状態で、SWHを接続した後、SWHを遮断することにより、出力VRCHがVRCとなる。この状態から、3点スイッチの接続をVRCからVRHまたはVRLに接続することにより、CDAC12の出力VRCHが、対応する容量の重みづけに応じて上昇または下降する。例えば、CDAC12の出力VRCHは、すべての3点スイッチをVRCからVRHに切り替えると、ほぼ(VRH-VRL)/2上昇し、すべての3点スイッチをVRCからVRLに切り替えると、ほぼ(VRH-VRL)/2下降する。したがって、CDAC12の出力VRCHは、ほぼVRHからVRLまで変化させることが可能である。CDAC13についても同様であり、CDAC13の出力VRCLは、ほぼVRHからVRLまで変化させることが可能である。
【0022】
CDACは、各種の構成例が提案されており、その動作も広く知られているので、詳しい説明は省略する。
図2に戻り、コンパレータ14は、CDAC11の出力とVRCHを比較する。コンパレータ15は、CDAC11の出力とVRCを比較する。コンパレータ16は、CDAC11の出力とVRCLを比較する。
【0023】
演算回路17は、2個のANDゲートAND1およびAND2と、ORゲートORと、を有する。演算回路17は、コンパレータ15の正相出力をそのままデータDnとして出力する。AND1は、コンパレータ14の出力とコンパレータ15の正相出力の論理積を演算する。AND2は、コンパレータ15の逆相出力とコンパレータ16の出力の論理積を演算する。ORは、AND1の出力とAND2の出力の論理和を演算する。ORの出力がデータDn-1として出力される。
【0024】
SAR制御回路18は、演算回路17から出力されるデータDnおよびDn-1に応じて、CDAC11〜13のスイッチ、SW1、SWHおよびSWLを制御する。
【0025】
次に、
図2のSAR型AD変換回路の動作を説明する。
1回のAD変換を実行するには、サンプリング、2ビット比較、シフト、2ビット比較、シフト、…、2ビット比較の順で2ビット比較とシフトを行うステップを繰り返し実行し、繰り返し回数は、ビット数により決定される。
【0026】
サンプリングは、CDAC11〜13のすべての3点スイッチをVRCに接続した状態で、SW1、SWHおよびSWLを一旦接続した後、再度遮断することにより行う。これにより、CDAC11にVIN+がサンプリングされてホールドされる。CDAC12の出力VRCHはVRCになるが、CDAC12の3点スイッチを切り替えて、CDAC12は出力VRCHを(3VRH+VRL)/4=(VRH+VRC)/2にする。また、CDAC13の出力VRCLはVRCになるが、CDAC13の3点スイッチを切り替えて、CDAC13は出力VRCLを(VRH+3VRL)/4=(VRC+VRL)/2にする。サンプリング後は、2ビット比較およびシフトのステップを繰り返す。
【0027】
図4は、CDAC11の3点スイッチの接続を切り替えるシーケンスを示す図である。前述のように、差動アナログ信号を対象とするため、
図4で+側と記載したものはVIN+をサンプリングするCDACに対するシーケンスで、−側と記載したものはVIN−をサンプリングするCDACに対するシーケンスである。
図4において、上向きの矢印は対応した容量アレイの3点スイッチのVRCからVRHへの切り替えを示し、下向きの矢印はVRCからVRLへの切り替えを示す。
【0028】
図5は、
図4に示したシーケンスで1回目の比較動作を行い、その比較結果に基づいてシフトシ−ケンスを示す図であり、(A)から(D)はVIN+およびVIN-の存在範囲が、入力電圧範囲を4等分した4つの範囲のいずれかに入る場合を示す。
図5で、左側のスケールの実線の矢印がVIN+の電圧の存在範囲を、破線の矢印がVIN-の電圧の存在範囲を、右側のスケールの実線と破線の矢印が重なった部分がシフトした範囲を示す。
図5で、範囲(レンジ)が0〜16であるのは、比較動作で2ビット判定し、判定結果に基づいてシフトを行い、次回の比較で2ビット判定するため合計4ビットであり、次回比較時のLSBを1とすると、16が最大になるためである。シフトは、+側のCDAC11および−側のCDACの3点スイッチの接続を制御することにより行う。
【0029】
図5の(A)に示すように、Dn,Dn-1の比較結果が00の場合、VIN+側(以下+側)の電圧は0〜4に存在し、VIN-側(以下−側)の電圧は12〜16に存在している。この比較結果に対して、+側は6上昇させ、−側は6下降させるシフトを行う。
図5の(B)は、Dn,Dn-1の比較結果が01の場合であり、このとき+側のCDAC11の電圧は4〜8に存在し、−側の電圧は8〜12に存在している。この比較結果に対して、+側は2上昇させ、−側を2下降させる。
【0030】
図5の(C)は、Dn,Dn-1の比較結果が10の場合であり、このとき+側のCDAC11の電圧は8〜12に存在し、−側の電圧は4〜8に存在している。この比較結果に対して、+側は2下降させ、−側を2上昇させる。
図5の(D)は、Dn,Dn-1の比較結果が11の場合であり、このとき+側のCDAC11の電圧は12〜16に存在し、−側の電圧は0〜4に存在している。この比較結果に対して、+側は6
下降させ、−側を6
上昇させる。
【0031】
以上のように、比較結果に応じてシフトさせる量を変えて、どの比較結果であってもシフト後は必ず、+側のCDAC11の電圧および−側の対応するCDACの電圧が含まれる範囲は、6から10の範囲に存在させるようにする。
【0032】
図6は、比較後のシフト結果と次の比較での範囲(レンジ)の遷移をまとめて示す図である。
図6に示すように、0〜16の範囲で比較し、比較後のシフトで6〜10にシフトし、このシフトした範囲6〜10は、次の比較範囲の0〜16に相当する。最後の比較は2ビット判定なので比較範囲は、0〜4で示している。VRCのレベルはシフトした範囲でも常時中間レベルである。しかし、VRCHおよびVRCLは、+側のCDAC11の電圧および−側の対応するCDACの電圧のシフトが行われると、シフト後の範囲を4等分した1番目と2番目の境界および3番目と4番目の境界と一致しなくなる。そこで、
図6でVRCH',VRCL'で示すように、VRCHおよびVRCLを比較毎に
設定し直している。このVRCHおよびVRCLの変更は、+側のCDAC12および13および−側の対応するCDACの3点スイッチを切り替えて、VRCHおよびVRCLを、シフトした範囲の上記の境界と一致するレベルにシフトする。これらを設定するためには、少なくとも2つのDACを使用することになり、DACの搭載数が増えて面積の増加につながる。
以下の具体例に沿って設定方法の説明を行う。
【0033】
図7は、
図5および
図6で説明した比較結果に基づく範囲のシフトを、8ビットAD変換処理の場合を例として、どのように範囲が縮小されるかを示す図である。
図5および
図6では、表示の都合上、シフトした範囲を拡大するように示しているが、実際には拡大されることはなく、
図7に示すように、範囲(レンジ)は順に縮小されていく。しかし、
図7のような表示では、細部が不明なので、
図5および
図6のように示す。
【0034】
図8は、8ビットAD変換処理において、サンプリングした差動アナログ信号の電圧レベルが+側が231(231以上232未満)で、−側が24の場合の処理の遷移を示す図である。図において、丸印が+側の電圧レベルを、×印が−側の電圧レベルを示す。
【0035】
サンプリング時は、SW1、SWH、SWLがオン(接続)し、CDAC11〜13の3点スイッチはすべてVRCに接続している。次に、サンプリングを終了しSW1、SWH、SWLをオフ(遮断)にし、CDAC12のMSBのスイッチをVRHに切替え、VRCHを
図8の16を最大とするレベル表示で12(最大256表示で192)に設定する。CDAC13のMSBのスイッチをVRLに切換えVRCLを
図8で4(最大256表示で64)に設定する。以下、
図8でのレベル表示を説明し、最大256表示は説明を省略する。
【0036】
図8の(A)はこの状態を示す。この状態で、コンパレータ14〜16が比較を行うと、+側は12〜16に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は11となる。−側は0〜4に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は00となる。
【0037】
図8の(B)に示すように、この結果を受けて+側はCDAC11のMSBと2SBのスイッチをVRLに切り替えて6シフトダウンし、−側はVIN-をサンプリングするCDACのMSBと2SBのスイッチをVRHにして6シフトアップする。
【0038】
図8の(C)に示すように、2度目の比較前に、CDAC12の2SBと3SBのスイッチをVRLに切替えVRCHを12に設定し、CDAC13の2SBと3SBのスイッチをVRHに切換えVRCLを4に設定し直す。同様の設定変更を−側でも行う。この状態で比較を行う。+側は8〜12に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は10となる。−側は4〜8に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は01となる。
【0039】
図8の(D)に示すように、この結果を受けて+側はCDAC11の3SBのスイッチをVRL,4SBのスイッチをVRHに切換え2シフトダウンし、−側はVIN-をサンプリングするCDACの3SBのスイッチをVRH、4SBのスイッチをVRLに切換え2シフトアップする。
【0040】
図8の(E)に示すように、3度目の比較前にCDAC12の4SBと5SBのスイッチをVRLに切替え、VRCHを12に設定し、CDAC13の4SBと5SBのスイッチをVRHに切換えVRCLを4に設定し直す。同様の設定変更を−側でも行う。この状態で比較を行う。+側は4〜8に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は01となる。−側は8〜12に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は10となる。
【0041】
図8の(F)に示すように、この結果を受けて+側はCDAC11の5SBのスイッチをVRHに、6SBのスイッチをVRLに切換え2シフトアップする。−側も同様に、VIN-をサンプリングするCDACの5SBのスイッチをVRLに、6SBのスイッチをVRHに切換え2シフトダウンする。
【0042】
図8の(G)に示すように、最後の比較前にCDAC12の6SBと7SBのスイッチをVRLに切替え、VRCHを12に設定し、CDAC13の6SBと7SBのスイッチをVRHに切換え、VRCLを4に設定し直す。同様の設定変更を−側でも行う。この状態で比較を行う。+側は3〜4に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は11となる。−側は0〜1に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は00となる。
【0043】
これにより、変換結果は上位から順に、2進法で「11」、「10」、「01」、「11」が得られ、VIN+は10進法で231、VIN-は10進法で24であることがわかる。
以上の通り、
図2のシングルエンド入力では3個のDACが、差動入力の場合は6個のDACを設ける。抵抗列を利用するDACでは消費電力が大きいという問題があり、CDACでは面積が大きくなるという問題がある。
【0044】
以下に説明する実施形態のAD変換回路は、低消費電力で、回路面積も小さい。
図9は、第1実施形態のSAR型AD変換回路の構成を示す図である。第1実施形態のSAR型AD変換回路は、1ステップで2ビットを決定するが、1ステップ目は2回の動作に分かれている。
【0045】
図9に示すように、第1実施形態のSAR型AD変換回路は、2個のCDAC21、22と、3個のコンパレータ23〜25と、演算回路26と、SAR制御回路27と、2個のスイッチSWPおよびSWMと、を有する。CLKは、SAR制御回路が動作するためのクロックである。VRHおよびVRLは、SAR型AD変換回路がAD変換処理する信号の電圧範囲の上限および下限に対応し、アナログ信号VIN+の電圧範囲は、VRHおよびVRLに対応するように増幅される。コモン電圧VRCは、VRHとVRLの中間の電圧レベルであり、外部から供給されるが、VRHとVRLから容量を使用した電圧分割回路等により生成してもよい。また、差動アナログ信号VIN+とVIN-は、コモン電圧VRCに対して、対称な信号、すなわちコモン電圧VRCに対して対称な電圧値を有するとする。
【0046】
図10は、CDAC21、22、スイッチSWPおよびSWMの部分を詳細に示す図である。
図3と比較して明らかなように、2個のCDAC21およびCDAC22の信号ラインに、スイッチSWPおよびSWMを介して、差動アナログ信号VIN+およびVIN-が供給される。CDAC21およびCDAC22の構成は、
図3のものと同じである。CDAC21は、VIN+をサンプリングし、3点スイッチを切り替えることにより、出力をほぼ(VRH-VRL)/2上昇および下降させることができる。CDAC22は、VIN-をサンプリングし、3点スイッチを切り替えることにより、出力をほぼ(VRH-VRL)/2上昇および下降させることができる。
【0047】
図9に戻り、コンパレータ23は、CDAC21の出力とCDAC22の出力を比較する。コンパレータ24は、CDAC21の出力とVRCを比較する。コンパレータ25は、CDAC22の出力とVRCを比較する。
演算回路26は、2個のANDゲートAND1およびAND2と、ORゲートORと、を有する。演算回路26は、
図2の演算回路17と同じ構成を有し、同じ動作を行うので、説明は省略する。
【0048】
SAR制御回路27は、演算回路26から出力されるデータDnおよびDn-1に応じて、CDAC21およびCDAC22の3点スイッチ、SWPおよびSWMを制御する。
次に、第1実施形態のSAR型AD変換回路の動作を説明する。
【0049】
上記のように、第1実施形態のSAR型AD変換回路は、+側入力のCDAC21と−側入力のCDAC22の2つCDACを有する。1個のコンパレータ23でCDAC21とCDAC22の出力を比較すると共に、2個のコンパレータ24および25が、CDAC21の出力およびCDAC22の出力を参照電圧(リファレンス電圧)と比較する。第1実施形態では、参照電圧は、コモン電圧VRCに固定されている。
【0050】
1回のAD変換を実行するには、サンプリング、2ビット比較、シフト、2ビット比較、シフト、…、2ビット比較の順で2ビット比較とシフトを行うステップを繰り返し実行し、繰り返し回数は、ビット数により決定される。
【0051】
第1実施形態では、1ステップ目の動作は前半と後半に分かれ、それぞれ1ビット比較を行う。2回目以降のステップでは、1ステップで2ビット比較を行う。したがって、Nビット変換を行う場合には、合計N/2ステップを行い、N/2+1回の比較を行う。各比較の後には、CDAC21および22の電圧シフトを行う。
【0052】
サンプリングは、CDAC21およびCDAC22のすべての3点スイッチをVRCに接続した状態で、SWPおよび
SWMを一旦接続した後、再度遮断することにより行う。これにより、CDAC21にVIN+がサンプリングされてホールドされ、CDAC22にVIN-がサンプリングされてホールドされる。サンプリング後は、比較結果に応じて、所定のシーケンスに従って、CDAC21およびCDAC22の出力レベルの比較およびシフトのステップを繰り返す。
【0053】
図11は、CDAC21およびCDAC22の3点スイッチの接続を切り替えるシーケンスを示す図である。
図11において、1回目の比較および比較後の動作は、第1ステップの前半に行われ、2回目の比較および比較後の動作は、第1ステップの後半に行われる。また、
図11において、+側と記載したものはVIN+をサンプリングするCDAC21に対するシーケンスで、−側と記載したものはVIN−をサンプリングするCDAC22に対するシーケンスである。
図11において、上向きの矢印は対応した容量アレイの3点スイッチのVRCからVRHへの切り替え及びVRLからVRCへの切り替えを示し、下向きの矢印はVRCからVRLへの切り替え及びVRHからVRCへの切り替えを示す。
【0054】
図12は、
図11に示したシーケンスで1回目の比較動作を行い、その比較結果に基づいてシフトシ−ケンスを示す図であり、(A)および(B)はVIN+およびVIN-の存在範囲が、入力電圧範囲を2等分した2つの範囲のいずれかに入る場合を示す。
図12で、左側のスケールの実線の矢印がVIN+の電圧の存在範囲を、破線の矢印がVIN-の電圧の存在範囲を、右側のスケールの実線と破線の矢印が重なった部分がシフトした範囲を示す。
図12で、範囲(レンジ)が0〜4であるのは、1回目の比較動作で1ビット判定し、2回の比較で1ビット判定するため合計2ビットであり、2回目比較時のLSBを1とすると、4が最大になるためである。
【0055】
図12の(A)に示すように、1回目の比較で、Dnの比較結果が0の場合+側のCDAC21の出力電圧は0〜2に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は2〜4に存在していることがわかる。その後の電圧シフトは+側のCDAC21の出力電圧を1アップさせ、−側のCDAC22の出力電圧を1ダウンさせる。
【0056】
図12の(B)に示すように、1回目の比較で、Dnの比較結果が1の場合には、+側のCDAC21の出力電圧は2〜4に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は0〜2に存在している。その後の電圧シフトは、+側のCDAC21の出力電圧を1ダウンさせ、−側のCDAC22の出力を1アップさせる。このように比較結果に応じてシフトさせる量を変えて、どの比較結果であってもシフト後は必ず、+側も−側も1〜3に存在させるようにする。
【0057】
図13は、
図11に示したシーケンスで2回目の比較動作を行い、その比較結果に基づいてシフトシ−ケンスを示す図であり、(A)および(B)はVIN+およびVIN-の存在範囲が、電圧範囲を2等分した2つの範囲のいずれかに入る場合を示す。
図13で、範囲(レンジ)が0〜8である理由は、2回目の比較で1ビット判定し、2回目のステップで2ビット判定するため合計3ビットであり、第2ステップでの比較時のLSBを1とすると、8が最大になるためである。
【0058】
図13の(A)に示したように、2回目の比較結果が0の場合、+側のCDAC21の出力電圧は0〜4に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は4〜8に存在している。その後の電圧シフトは、+側のCDAC21の出力電圧を1アップさせ、−側のCDAC22の出力電圧を3ダウンさせる。
【0059】
図13の(B)に示すように、Dnの比較結果が1の場合、+側のCDAC21の出力電圧は4〜8に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は0〜4に存在している。その後の電圧シフトは、+側のCDAC21の出力電圧を3ダウンさせ、−側のCDAC22の出力電圧を1アップさせる。このように比較結果に応じてシフトさせる量を変えて、どの比較結果であってもシフト後は必ず、+側も−側も1〜5に存在させるようにする。
【0060】
図14は、
図11に示したシーケンスで第2ステップ以降に、3回目以降の比較動作を行い、その比較結果に基づいてシフトシ−ケンスを示す図である。
図14において、範囲(レンジ)が0〜16である理由は、第2ステップ以降の比較では、2ビット判定し、次回の比較で2ビット判定するため合計4ビットであり、次回比較時のLSBを1とすると、16が最大になるためである。
【0061】
図14の(A)に示すように、Dn,Dn-1の比較結果が00の場合、+側のCDAC21の出力電圧は0〜4に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は12〜16に存在している。その後の電圧シフトは、+側のCDAC21の出力電圧を9アップさせ、−側のCDAC22の出力電圧を3ダウンさせる。
【0062】
図14の(B)に示すように、Dn,Dn-1の比較結果が01の場合、+側のCDAC21の出力電圧は4〜8に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は8〜12に存在している。その後の電圧シフトは、+側のCDAC21の出力電圧を5アップさせ、−側のCDAC22の出力電圧を1アップさせる。
【0063】
図14の(C)に示すように、Dn,Dn-1の比較結果が10の場合、+側のCDAC21の出力電圧は8〜12に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は4〜8に存在している。その後の電圧シフトは、+側のCDAC21の出力電圧を1アップさせ、−側のCDAC22の出力電圧を5アップさせる。
【0064】
図14の(D)に示すように、Dn,Dn-1の比較結果が11の場合、+側のCDAC21の出力電圧は12〜16に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は0〜4に存在している。その後の電圧シフトは、+側のCDAC21の出力電圧を3ダウンさせ、−側のCDAC22の出力電圧を9アップさせる。このように比較結果に応じてシフトさせる量を変えて、どの比較結果であってもシフト後は必ず、+側も−側も9〜13に存在させるようにする。
【0065】
図15は、比較後のシフト結果と次の比較でのレンジの遷移をまとめた図である。
図15に示すように、1回目の比較は0〜4のレンジで比較し、比較後のシフトで1〜3に圧縮する。これが2回目の0〜8のレンジになる。2回目の比較は、0〜8のレンジで比較し、比較後のシフトで1〜5に圧縮する。これが3回目の0〜16になる。3回目以降の比較は、0〜16のレンジで比較し、比較後のシフトで9〜13に圧縮する。この圧縮された9〜13が次の比較レンジの0〜16になる。最後の比較は2ビット判定なので比較レンジは4で示している。
【0066】
2ビット判定のために3値比較を行う。その3値はフルレンジを1とすると1/4,2/4(=1/2),3/4に設定する。2/4の比較は、コンパレータ23による+側と−側の比較を用いる。1/4の比較は、コンパレータ25によるVRCと−側の比較を用いる。3/4の比較は、コンパレータ24による+側とVRCとの比較を用いている。
【0067】
図15のVRCの遷移に着目すると、1回目の比較が終わり電圧をシフトすると、VRCは次の比較レンジ内の4の位置にある。また2回目の比較が終わり電圧をシフトするとVRCは次の比較のレンジ内の12の位置にある。この12は3/4の位置なため、
図2の回路のVRCHの閾値と同じであることがわかる。
【0068】
また、1/4の閾値であるVRCLは,−側とVRCの比較を,+側とVRCの比較の入力と反対にすることで再現している。
第2ステップ以降の3回目以降の比較では、VRCは次の比較レンジの12の位置にくるようにシフトさせており、つねにVRCが比較レンジ内に入るようにしている。これによって従来の問題点であったリファレンスVRCHおよびVRCLを比較毎に設定しなおすことがなくそのためのDACを削減することができる。
【0069】
図16は、第1実施形態において、8ビットAD変換処理を行う場合で、サンプリングした差動アナログ信号の電圧レベルが+側が231(231以上232未満)で、−側が24の場合の処理の遷移を示す図である。図において、丸印が+側の電圧レベルを、×印が−側の電圧レベルを示す。
【0070】
サンプリング時に、SWPおよびSWMがオンし、CDAC21およびCDAC22の3点スイッチはすべてVRCに接続している状態で、SWPおよびSWMが一旦オンした後、オフすることでサンプリングが終了する。これにより、CDAC21にはVIN+が、CDAC22にはVIN-がホールドされる。この状態から比較を開始する。
【0071】
図16の(A)に示すように、第1ステップの前半の比較では、+側のCDAC21の出力電圧は2〜4に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は0〜2に存在しているのでDnの比較結果は1となる。
【0072】
この結果を受けて
図16の(B)に示すように、+側のCDAC21のMSBのスイッチをVRCからVRLに切替え1シフトダウンし、−側はCDAC22のMSBのスイッチをVRCからVRHに切替え1シフトアップする。
【0073】
図16の(C)に示すように、第1ステップの後半の比較では、+側のCDAC21の出力電圧は4〜8に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は0〜4に存在しているのでDnの比較結果は1となる。この結果を受けて
図16の(D)に示すように、+側のCDAC21の2SB,3SBのスイッチをVRCからVRLに切替え3シフトダウンし、−側のCDAC22の3SBのスイッチをVRCからVRHに切替え1シフトアップする。
【0074】
図16の(E)に示すように、第2ステップの比較、すなわち3度目の比較では、+側のCDAC21の出力電圧は8〜12に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は4〜8に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は10となる。
【0075】
この結果を受けて、
図16の(F)に示すように、+側のCDAC21の5SBのスイッチをVRCからVRHに切替え1シフトアップし、−側のCDAC22の2SBのスイッチをVRCからVRHに、4SB,5SBのスイッチをVRCからVRLに切替え5シフトアップする。
【0076】
図16の(G)に示すように、第3ステップでの比較、すなわち4度目の比較では、+側のCDAC21の出力電圧は4〜8に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は8〜12に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は01となる。
【0077】
この結果を受けて、
図16の(H)に示すように、+側のCDAC21の4SBのスイッチをVRCからVRHに、6SB,7SBのスイッチをVRCからVRLに切替え5シフトアップし、−側のCDAC22の7SBのスイッチをVRCからVRHに切替え1シフトアップする。
【0078】
最後の比較は、
図16の(I)に示すように、+側のCDAC21の出力電圧は3〜4に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は0〜1に存在しており、Dn,Dn-1の比較結果は11となる。
以上のように、VIN+の変換結果は上位から順に、2進法で「11」、「10」、「01」、「11」となり、10進法で231であることがわかる。また、VIN-の変換結果は逆の2進法で「00」、「01」、「10」、「00」となり、10進法で24であることがわかる。
【0079】
図17は、第1実施形態において、8ビットAD変換処理を行う場合で、サンプリングした差動アナログ信号の電圧レベルが+側が48(48以上49未満)で、−側が207の場合の処理の遷移を示す図である。図において、丸印が+側の電圧レベルを、×印が−側の電圧レベルを示す。
【0080】
サンプリングは、
図16の場合と同様に行われる。
図17の(A)に示すように、第1ステップの前半の1回目の比較では、+側のCDAC21の出力電圧は0〜2に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は2〜4に存在しているのでDnの比較結果は0となる。
【0081】
この結果を受けて、
図17の(B)に示すように、+側のCDAC21のMSBのスイッチをVRCからVRHに切替え1シフトアップし、−側のCDAC22のMSBのスイッチをVRCからVRLに切替え1シフトダウンする。
第1ステップの後半の2回目の比較では、
図17の(C)に示すように、+側のCDAC21の出力電圧は0〜4に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は4〜8に存在しているのでDnの比較結果は0となる。
【0082】
この結果を受けて、
図17の(D)に示すように、+側のCDAC21の3SBのスイッチをVRCからVRHに切替え1シフトアップし、−側のCDAC22の2SB,3SBのスイッチをVRCからVRLに切替え3シフトダウンする。
第2ステップの比較、すなわち3度目の比較では、
図17の(E)に示すように、+側のCDAC21の出力電圧は12〜16に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は0〜4に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は11となる。
【0083】
この結果を受けて、
図17の(F)に示すように、+側のCDAC21の4SB,5SBのスイッチをVRCからVRLに切替え3シフトダウンし、−側のCDAC22の2SBのスイッチをVRLからVRCに、5SBのスイッチをVRCからVRHに切替え9シフトアップする。
第3ステップの比較、すなわち4度目の比較では、
図17の(G)に示すように、+側のCDAC21の出力電圧は0〜4に存在し、−側のCDAC22の出力電圧は12〜16に存在しているのでDn,Dn-1の比較結果は00となる。
【0084】
この結果を受けて、
図17の(H)に示すように、+側のCDAC21の4SBのスイッチをVRLからVRCに、7SBのスイッチをVRCからVRHに切替え9シフトアップし、−側のCDAC22の6SB,7SBのスイッチをVRCからVRLに切替え3シフトダウンする。
最後の比較では、
図17の(I)に示すように、+側のCDAC21の出力電圧は0〜1に存在し、−側のCDAC22の出力電圧が3〜4に存在しており、Dn,Dn-1の比較結果は00となる。
【0085】
以上のように、変換結果は上位から順に2進法で「00」、「11」、「00」、「00」となり、差動アナログ信号のVIN+が10進法で48、VIN-が207であることがわかる。
【0086】
以上説明したように、第1実施形態では、第1ステップの初めの2回の比較では1ビット比較を行い、その後の第2ステップ以降では2ビット比較を行うことで、比較時の参照(リファレンス)電圧は、コモン電圧VRCに固定できる。また、第1実施形態では、2個のCDACを用いるだけなので面積削減が可能であり、2ステップ以降の2ビット比較が行われる。さらに、定常電流を流すブロックがないため、低消費電力化が可能である。
【0087】
以上説明した第1実施形態では、第1ステップは、前半と後半を有し、前半で1ビットの比較とその比較結果に基づくシフトを行い、後半でも1ビットの比較とその比較結果に基づくシフトを行い、前半と後半を合わせて2ビットの比較とシフトを行った。次に説明する第2実施形態では、第1ステップでも、2ビット比較とシフトを行う。
【0088】
図18は、第2実施形態のSAR型AD変換回路の全体構成を示す図である。
第2実施形態のSAR型AD変換回路は、VRHとVRLからVRCM=(3VRH+VRL)/4を発生させるように、VRHとVRLの端子間に直列に接続された容量C1およびC2と、スイッチ28を設けたことが、第1実施形態と異なる。容量C1およびC2の容量値は、3:1であり、大きな容量値ではないので、小面積で実現される。スイッチ28は、SAR制御回路27の制御に応じて、コンパレータ24および25に供給する参照電圧を、VRCとVRCMの間で切り替える。SAR制御回路27は、第1ステップを実行する時にスイッチ28がVRCMを選択し、第2ステップ以降はVRCを選択するように制御する。
【0089】
第2実施形態では、第1ステップにおいて、コンパレータ23は、CDAC21の出力電圧とCDAC22の出力電圧、すなわちVIN+とVIN-を比較する。コンパレータ24は、CDAC21の出力電圧とVRCMを比較し、コンパレータ25は、CDAC22の出力電圧とVRCMを比較する。これにより、VIN+とVIN-が電圧範囲を4等分したいずれの範囲に入るか判定される。言い換えれば、0〜16の範囲の0〜4、4〜8、8〜12および12〜16のいずれの範囲に入るか判定される。比較結果に基づいて、CDAC21およびCDAC22の出力電圧が、9〜13の範囲に入るようにシフトする。さらに、スイッチ28がVRCを選択するように切り替えれば、第1実施形態の第2ステップ以降と同じ処理が行える。
【0090】
第2実施形態では、第1ステップの参照(リファレンス)電圧を発生する回路および切り替えスイッチを設けるが、2個のCDACを使用して2ビット比較が行われる。
第2実施形態でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0091】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものである。特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。