特許第6102522号(P6102522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6102522動力伝達チェーンの組立方法及び組立装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102522
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】動力伝達チェーンの組立方法及び組立装置
(51)【国際特許分類】
   B21L 9/06 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   B21L9/06
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-113312(P2013-113312)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231082(P2014-231082A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 康
(72)【発明者】
【氏名】安原 伸二
(72)【発明者】
【氏名】若山 泰三
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−95531(JP,A)
【文献】 特開2008−180296(JP,A)
【文献】 特開2009−103156(JP,A)
【文献】 特開2008−188598(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1579933(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21L 9/06
F16G 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
nは4以上の整数として、第1〜第nリンクプレートと、第1〜第n−1ピン部材とを備え、
第1リンクプレートは、一対の第1ピン孔を有しチェーン幅方向の一方側の最端列に配置され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第1ピン部材は、前記各第1ピン孔に一端部が圧入され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、
kは2〜(n−1)の整数として、第kリンクプレートは、一対の第kピン孔を有し各第(k−1)リンクプレートに対してチェーン幅方向の他方側に隣接して積層され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第kピン部材は、前記各第kピン孔に一端部が圧入され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、
第nリンクプレートは、一対の第nピン孔を有し前記各第nリンクプレートよりもチェーン幅方向の他方側全体に亘って複数積層される動力伝達チェーンを組み立てる組立方法であって、
(a)第1連結体組立治具の上面である基準面に開口し当該基準面に対して垂直方向に延びる一対の第1保持穴に、一対の第1ピン部材の前記一端部を除く部分をそれぞれ挿入保持した状態で、これら第1ピン部材の前記一端部に、単一の第1リンクプレートを前記基準面に当接するまで圧入することで、前記一対の第1ピン部材及び前記単一の第1リンクプレートからなる第1連結体を組み立てる工程
(b)第k連結体組立治具の上面である基準面に開口し当該基準面に対して垂直方向に延びる一対の第k保持穴に、一対の第kピン部材の前記一端部を除く部分をそれぞれ挿入保持した状態で、これら第kピン部材の前記一端部に、単一の第kリンクプレートを前記基準面に当接するまで圧入することで、前記一対の第kピン部材及び前記単一の第kリンクプレートからなる第k連結体を組み立てる工程
(c)前記工程(a)及び(b)を繰り返すことによって、前記第1〜第(n−1)連結体をそれぞれ複数組み立てた後、これら複数の第1〜第(n−1)連結体と、前記複数の第nリンクプレートとを用いて動力伝達チェーンを組み立てる工程
を含む動力伝達チェーンの組立方法。
【請求項2】
前記工程(c)において動力伝達チェーンを組み立てる際、チェーン組立治具に形成された円環状の保持溝に、前記第1〜第(n−1)連結体における第1〜第(n−1)ピン部材の前記一端部及び第1〜第(n−1)リンクプレートを順次挿入することで、当該第1〜第(n−1)リンクプレートを互いに積層した状態で前記保持溝に保持した後、前記各第nリンクプレートを、前記第1〜第(n−1)ピン部材の他端部側から順次圧入して積層する請求項1に記載の動力伝達チェーンの組立方法。
【請求項3】
nは4以上の整数として、第1〜第nリンクプレートと、第1〜第(n−1)ピン部材とを備え、
第1リンクプレートは、一対の第1ピン孔を有しチェーン幅方向の一方側の最端列に配置され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第1ピン部材は、前記各第1ピン孔に一端部が圧入され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、
kは2〜(n−1)の整数として、第kリンクプレートは、一対の第kピン孔を有し各第(k−1)リンクプレートに対してチェーン幅方向の他方側に隣接して積層され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第kピン部材は、前記各第kピン孔に一端部が圧入され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、
第nリンクプレートは、一対の第nピン孔を有し前記各第nリンクプレートよりもチェーン幅方向の他方側全体に亘って複数積層される動力伝達チェーンを組み立てるための組立装置であって、
上面である基準面に開口し当該基準面に対して垂直方向に延びる一対の第1保持穴を有し、前記一対の第1保持穴に一対の第1ピン部材の前記一端部を除く部分をそれぞれ挿入保持した状態で、これら第1ピン部材の前記一端部に、単一の第1リンクプレートを前記基準面に当接するまで圧入することで、前記一対の第1ピン部材及び前記単一の第1リンクプレートからなる第1連結体を組み立てるための第1連結体組立治具と、
kは2〜(n−1)の整数として、上面である基準面に開口し当該基準面に対して垂直方向に延びる一対の第k保持穴を有し、前記一対の第k保持穴に一対の第kピン部材の前記一端部を除く部分をそれぞれ挿入保持した状態で、これら第kピン部材の前記一端部に、単一の第kリンクプレートを前記基準面に当接するまで圧入することで、前記一対の第kピン部材及び前記単一の第kリンクプレートからなる第k連結体を組み立てるための第k連結体組立治具と、
を備えていることを特徴とする動力伝達チェーンの組立装置。
【請求項4】
前記第1〜第(n−1)連結体組立治具によりそれぞれ組み立てられた複数の第1〜第(n−1)連結体における第1〜第(n−1)ピン部材の前記一端部及び第1〜第(n−1)リンクプレートを順次挿入することで、当該第1〜第(n−1)リンクプレートを互いに積層した状態で保持する円環状の保持溝が上面に形成されたチェーン組立治具をさらに備えている請求項3に記載の動力伝達チェーンの組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などに採用されるチェーン式無段変速機の動力伝達チェーンの組立方法及び組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のチェーン式無段変速機等に用いられる動力伝達チェーンとしては、2つのピン孔が所定のピッチを置いて形成された複数のリンクプレートと、これらを屈曲可能に連結する複数のピン部材とを備えたものがある。このような動力伝達チェーンは、リンクプレートがその厚み方向及び長手方向に積層配置され、前記ピン孔にピン部材を圧入することで無端状に連結されている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載された動力伝達チェーンを組み立てる場合、円環状の組立治具の周方向全長に亘って形成された複数の穴に、各ピン部材をそれぞれ挿入して保持し、この状態で、ピン部材の前記穴から突出している部分に、複数のリンクプレートのうちの半分を順次圧入する。そして、このように組み立てられた半組立て体を裏返して、前記組立治具の複数の穴に各ピン部材を再び挿入した状態で、残りの半分のリンクプレートをピン部材に圧入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4664588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された動力伝達チェーンの組立方法にあっては、各ピン部材は、その一端部のみが組立治具の穴に挿入された不安定な状態で保持されているため、ピン部材にリンクプレートを圧入するときに、リンクプレートに対してピン部材が傾き易い。このため、リンクプレートとピン部材との間にクリアランスが発生したり、組み立てられた動力伝達チェーンに歪みが発生するという問題があった。
また、ピン部材が傾いた状態で前記半組立て体を裏返すと、組立治具の複数の穴に各ピン部材を再び挿入する作業が難しくなり、組立作業に時間と手間を要するという問題があった。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、ピン部材にリンクプレートを圧入するときに、ピン部材がリンクプレートに対して傾くのを抑制することができる動力伝達チェーンの組立方法及び組立装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための本発明の動力伝達チェーンの組立方法は、nは4以上の整数として、第1〜第nリンクプレートと、第1〜第(n−1)ピン部材とを備え、第1リンクプレートは、一対の第1ピン孔を有しチェーン幅方向の一方側の最端列に配置され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第1ピン部材は、前記各第1ピン孔に一端部が圧入され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、kは2〜(n−1)の整数として、第kリンクプレートは、一対の第kピン孔を有し各第(k−1)リンクプレートに対してチェーン幅方向の他方側に隣接して積層され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第kピン部材は、前記各第kピン孔に一端部が圧入され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第nリンクプレートは、一対の第nピン孔を有し前記各第nリンクプレートよりもチェーン幅方向の他方側全体に亘って複数積層される動力伝達チェーンを組み立てる組立方法であって、
(a)第1連結体組立治具の上面である基準面に開口し当該基準面に対して垂直方向に延びる一対の第1保持穴に、一対の第1ピン部材の前記一端部を除く部分をそれぞれ挿入保持した状態で、これら第1ピン部材の前記一端部に、単一の第1リンクプレートを前記基準面に当接するまで圧入することで、前記一対の第1ピン部材及び前記単一の第1リンクプレートからなる第1連結体を組み立てる工程
(b)第k連結体組立治具の上面である基準面に開口し当該基準面に対して垂直方向に延びる一対の第k保持穴に、一対の第kピン部材の前記一端部を除く部分をそれぞれ挿入保持した状態で、これら第kピン部材の前記一端部に、単一の第kリンクプレートを前記基準面に当接するまで圧入することで、前記一対の第kピン部材及び前記単一の第kリンクプレートからなる第k連結体を組み立てる工程
(c)前記工程(a)及び(b)を繰り返すことによって、前記第1〜第(n−1)連結体をそれぞれ複数組み立てた後、これら複数の第1〜第(n−1)連結体と、前記複数の第nリンクプレートとを用いて動力伝達チェーンを組み立てる工程を含む。
【0006】
本発明によれば、第1〜第(n−1)連結体を組み立てるときに、第1〜第(n−1)連結体組立治具の基準面に対して垂直方向に延びる第1〜第(n−1)保持穴に、第1〜第(n−1)ピン部材の一端部を除く部分を挿入保持することができる。したがって、この挿入保持された第1〜第(n−1)ピン部材に第1〜第(n−1)リンクプレートを圧入することにより、第1〜第(n−1)ピン部材が第1〜第(n−1)リンクプレートに対して傾くのを抑制することができる。これにより、第1〜第(n−1)リンクプレートと第1〜第(n−1)ピン部材との間にクリアランスが発生するのを抑制することができる。また、このように第1〜第(n−1)ピン部材の傾きを抑えた第1〜第(n−1)連結体と第nリンクプレートとを用いて動力伝達チェーンを組み立てることにより、組み立てられた動力伝達チェーンに歪みが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0007】
前記動力伝達チェーンの組立方法は、前記工程(c)において動力伝達チェーンを組み立てる際、チェーン組立治具に形成された円環状の保持溝に、前記第1〜第(n−1)連結体における第1〜第(n−1)ピン部材の前記一端部及び第1〜第(n−1)リンクプレートを順次挿入することで、当該第1〜第(n−1)リンクプレートを互いに積層した状態で前記保持溝に保持した後、前記各第nリンクプレートを、前記第1〜第(n−1)ピン部材の他端部側から順次圧入して積層することが好ましい。
この場合、チェーン組立治具の保持溝に、第1〜第(n−1)連結体の第1〜第(n−1)リンクプレートを互いに積層した状態で保持することで、第1〜第(n−1)連結体の第1〜第(n−1)ピン部材を、積層された第1〜第(n−1)リンクプレートと共に保持溝に保持することができる。これにより、第1〜第(n−1)連結体の第1〜第(n−1)ピン部材に、第nリンクプレートを圧入するときに、第nリンクプレートに対して第1〜第(n−1)ピン部材が傾くのを効果的に抑制することができる。
【0008】
本発明の動力伝達チェーンの組立装置は、nは4以上の整数として、第1〜第nリンクプレートと、第1〜第(n−1)ピン部材とを備え、第1リンクプレートは、一対の第1ピン孔を有しチェーン幅方向の一方側の最端列に配置され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第1ピン部材は、前記各第1ピン孔に一端部が圧入され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、kは2〜(n−1)の整数として、第kリンクプレートは、一対の第kピン孔を有し各第(k−1)リンクプレートに対してチェーン幅方向の他方側に隣接して積層され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第kピン部材は、前記各第kピン孔に一端部が圧入され且つチェーン進行方向に所定間隔をあけて複数配置され、第nリンクプレートは、一対の第nピン孔を有し前記各第nリンクプレートよりもチェーン幅方向の他方側全体に亘って複数積層される動力伝達チェーンを組み立てるための組立装置であって、上面である基準面に開口し当該基準面に対して垂直方向に延びる一対の第1保持穴を有し、前記一対の第1保持穴に一対の第1ピン部材の前記一端部を除く部分をそれぞれ挿入保持した状態で、これら第1ピン部材の前記一端部に、単一の第1リンクプレートを前記基準面に当接するまで圧入することで、前記一対の第1ピン部材及び前記単一の第1リンクプレートからなる第1連結体を組み立てるための第1連結体組立治具と、kは2〜(n−1)の整数として、上面である基準面に開口し当該基準面に対して垂直方向に延びる一対の第k保持穴を有し、前記一対の第k保持穴に一対の第kピン部材の前記一端部を除く部分をそれぞれ挿入保持した状態で、これら第kピン部材の前記一端部に、単一の第kリンクプレートを前記基準面に当接するまで圧入することで、前記一対の第kピン部材及び前記単一の第kリンクプレートからなる第k連結体を組み立てるための第k連結体組立治具と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1〜第(n−1)連結体を組み立てるときに、第1〜第(n−1)連結体組立治具の基準面に対して垂直方向に延びる第1〜第(n−1)保持穴に、第1〜第(n−1)ピン部材の一端部を除く部分を挿入保持することができる。したがって、この挿入保持された第1〜第(n−1)ピン部材に第1〜第(n−1)リンクプレートを圧入することにより、第1〜第(n−1)ピン部材が第1〜第(n−1)リンクプレートに対して傾くのを抑制することができる。これにより、第1〜第(n−1)リンクプレートと第1〜第(n−1)ピン部材との間にクリアランスが発生するのを抑制することができる。
【0010】
前記組立装置は、前記第1〜第(n−1)連結体組立治具によりそれぞれ組み立てられた複数の第1〜第(n−1)連結体における第1〜第(n−1)ピン部材の前記一端部及び第1〜第(n−1)リンクプレートを順次挿入することで、当該第1〜第(n−1)リンクプレートを互いに積層した状態で保持する円環状の保持溝が上面に形成されたチェーン組立治具をさらに備えていることが好ましい。
この場合、チェーン組立治具の保持溝に、第1〜第(n−1)連結体の第1〜第(n−1)リンクプレートを互いに積層した状態で保持することで、第1〜第(n−1)連結体の第1〜第(n−1)ピン部材を、積層された第1〜第(n−1)リンクプレートと共に保持溝に保持することができる。これにより、第1〜第(n−1)連結体の第1〜第(n−1)ピン部材に、第nリンクプレートを圧入するときに、第nリンクプレートに対して第1〜第(n−1)ピン部材が傾くのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の動力伝達チェーンの組立方法及び組立装置によれば、ピン部材にリンクプレートを圧入するときに、ピン部材がリンクプレートに対して傾くのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る動力伝達チェーンの組立方法により組み立てられた動力伝達チェーンを備えた無段変速機を示す斜視図である。
図2】上記無段変速機の断面図である。
図3】上記動力伝達チェーンの要部構成を示す斜視図である。
図4】上記動力伝達チェーンの要部構成を示す断面図である。
図5】上記動力伝達チェーンの要部構成を示す断面図である。
図6】上記動力伝達チェーンを組み立てるための組立装置の連結体組立治具を示す平面図である。
図7】(a)は図6(a)のA−A矢視断面図であり、(b)は図6(a)のB−B矢視断面図である。
図8】(a)は図6(b)のC−C矢視断面図であり、(b)は図6(b)のD−D矢視断面図である。
図9】(a)は図6(c)のE−E矢視断面図であり、(b)は図6(c)のF−F矢視断面図である。
図10】上記組立装置のチェーン組立治具を示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のG−G矢視断面図である。
図11】(a)は上記チェーン組立治具の使用状態を示す断面図であり、(b)は(a)のH−H矢視断面図である。
図12】上記連結体組立治具を用いた連結体の組立方法を示す断面図である。
図13】上記チェーン組立治具を用いた動力伝達チェーンの組立方法を示す断面図である。
図14】上記チェーン組立治具を用いた動力伝達チェーンの組立方法を示す断面図である。
図15】本発明の他の実施形態に係る動力伝達チェーンの組立装置のチェーン組立治具の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳述する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る動力伝達チェーンの組立方法により組み立てられた動力伝達チェーン(以下、単に「チェーン」ともいう)を備えた無段変速機を示している。この無段変速機Cは、例えば自動車に搭載され、エンジン側のインプットプーリ10と、駆動輪側のアウトプットプーリ20との間に、無端状の前記動力伝達チェーン1が掛け渡されてなる。
【0014】
インプットプーリ10は、エンジン側に接続された入力軸11に一体回転可能に取り付けられたものである。このインプットプーリ10は、円錐面状の傾斜面12aを有する固定シーブ12と、その傾斜面12aに対向して配置される円錐面状の傾斜面13aを有する可動シーブ13とを備えている。そして、これらシーブの傾斜面12a,13aによりV型溝が形成され、このV型溝によってチェーン1を強圧で挟んで保持するようになっている。可動シーブ13には、油圧アクチュエータ(図示省略)が接続されており、変速時に可動シーブ13を移動させることで、前記V型溝の溝幅を変化させることができる。これにより、チェーン1を移動させることができ、入力軸11に対する当該チェーン1の巻掛け半径を変化させることができる。
【0015】
一方、アウトプットプーリ20は、駆動輪側に接続された出力軸21に一体回転可能に取り付けられたものである。このアウトプットプーリ20は、インプットプーリ10と同様に、チェーン1を強圧で挟む溝を形成するための傾斜面を有する固定シーブ23と可動シーブ22とを備えている。可動シーブ22には、インプットプーリ10の可動シーブ13と同様に、油圧アクチュエータ(図示省略)が接続されている。これにより、変速時に可動シーブ13を移動させることで、前記溝幅が変化してチェーン1を移動させることができるため、出力軸21に対するチェーン1の巻掛け半径を変化させることができる。
【0016】
上記のように構成された本実施形態に係る無段変速機Cでは、以下のようにして無段階の変速が行われる。すなわち、出力軸21の回転を減速する場合、インプットプーリ10側の溝幅を可動シーブ13の移動によって拡大させる。これにより、チェーン1におけるピン3の一端部31の端面33、及びピン3の他端部32の端面34が、円錐面状の傾斜面12a,13aの内側方向に向けて境界潤滑条件下で滑り接触しながら、チェーン1の入力軸11に対する巻き掛け径が小さくなる。一方、アウトプットプーリ20側では、可動シーブ22の移動によって溝幅を縮小させる。これにより、チェーン1のピン3の端面33,34が円錐面状の傾斜面22a,23aの外側方向に向けて境界潤滑条件下で滑り接触しながら、チェーン1の出力軸21に対する巻き掛け径が大きくなる。こうすることで、出力軸21の回転を減速することができる。
【0017】
また、出力軸21の回転を増速する場合、インプットプーリ10側の溝幅を可動シーブ13の移動によって縮小させる。これにより、チェーン1のピン3の端面33,34が、円錐面状の傾斜面12a,13aの外側方向に向けて境界潤滑条件下で滑り接触しながら、チェーン1の入力軸11に対する巻き掛け径が大きくなる。一方、アウトプットプーリ20側では、可動シーブ22の移動によって溝幅を拡大させる。これにより、チェーン1のピン3の端面33,34が、円錐面状の傾斜面22a,23aの内側方向に向けて境界潤滑条件下で滑り接触しながら、チェーン1の出力軸21に対する巻き掛け径が小さくなる。こうすることで、出力軸21の回転を増速することができる。
【0018】
図3図5は、インプットプーリ10とアウトプットプーリ20との間に架け渡されるチェーン1の要部構成を示している。このチェーン1は、1枚につき一対のピン孔5を有する複数のリンクプレート2と、複数のピン部材としてのピン3と、複数のピン部材としてのストリップ4とから構成されている。なお、ストリップ4は、ピン3よりも若干短く形成されていても良い。また、図1では、チェーン1の幅方向中央部の記載を一部省略している。
【0019】
図3において、複数のリンクプレート2は、複数の第1〜第4(第n)リンクプレート2A〜2Dによって構成されている。第1リンクプレート2Aは、一対の第1ピン孔5Aを有し、チェーン幅方向の一方側の最端列に配置され、且つチェーン進行方向Gに所定間隔をあけて配置されている(図4(a)、図11(a)参照)。第2リンクプレート2Bは、一対の第2ピン孔5Bを有し、前記各第1リンクプレート2Aに対してチェーン幅方向の他方側に隣接して積層され、且つチェーン進行方向Gに所定間隔をあけて配置されている(図4(b)、図11(a)参照)。
【0020】
第3リンクプレート2Cは、一対の第3ピン孔5Cを有し、前記各第2リンクプレート2Bに対してチェーン幅方向の他方側に隣接して積層され、且つチェーン進行方向Gに所定間隔をあけて配置されている(図5(a)、図11(a)参照)。第4リンクプレート2Dは、一対の第4ピン孔5Dを有し、前記各第3リンクプレート2Cよりもチェーン幅方向の他方側全体に亘って積層されている(図5(b)、図11(a)参照)。
第1〜第4リンクプレート2A〜2Dは、外形線がなだらかな曲線形状の金属(炭素鋼等)製の板状部材からなる。
【0021】
複数のピン3は、リンクプレート2を相互に連結するものであり、複数の第1〜第3ピン3A〜3Cによって構成されている。第1ピン(第1ピン部材)3Aは、その一端部31Aが第1リンクプレート2Aの一方の第1ピン孔5Aに圧入されるものである。第2ピン(第2ピン部材)3Bは、その一端部31Bが第2リンクプレート2Bの一方の第2ピン孔5Bに圧入されるものである。第3ピン(第3ピン部材)3Cは、その一端部31Cが第3リンクプレート2Cの一方の第3ピン孔5Cに圧入されるものである。
【0022】
第1〜第3ピン3A〜3Cは、それぞれ圧入される第1〜第3ピン孔5A〜5Cの内周面に沿う側面を有する金属(軸受鋼等)製の棒状体である。図2に示すように、第1〜第3ピン3A〜3Cの一方の端面33A〜33C、及び他方の端面34A〜34Cは、所定の曲率に設定された凸曲面をなし、上記両プーリ10,20と接触して動力を伝達する。
【0023】
図3図5において、複数のストリップ4は、複数の第1〜第3ストリップ4A〜4Cによって構成されている。なお、ストリップ4は、ピン3よりも若干短く形成されていても良い。第1ストリップ(第1ピン部材)4Aの一端部41Aは、第1リンクプレート2Aの他方の第1ピン孔5Aに圧入されている(図4(a)参照)。第2ストリップ(第2ピン部材)4Bの一端部41Bは、第2リンクプレート2Bの他方の第2ピン孔5Bに圧入されている(図4(b)参照)。第3ストリップ(第3ピン部材)4Cは、その一端部41Cが第3リンクプレート2Cの他方の第3ピン孔5Cに圧入されるものである(図5(a)参照)。第1〜第3ストリップ4A〜4Cは、それぞれ圧入される第1〜第3ピン孔5A〜5Cの内周面に沿う側面を有する金属(軸受鋼等)製の棒状体である。
【0024】
第1〜第3ピン4A〜4C及び第1〜第3ストリップ4A〜4Cは、各々が圧入されているリンクプレート2と重ね合わせて配置された他のリンクプレート2のピン孔5に対して回動可能に挿通され、複数のリンクプレート2が屈曲自在に連結されている。
具体的には、図4(a)に示すように、第1リンクプレート2Aの第1ピン3Aが圧入されている第1ピン孔5Aには、第2ストリップ4Bが第1ピン3Aの側面と転がり接触しつつ回動可能に挿通されている。また、第1リンクプレート2Aの第1ストリップ4Aが圧入されている第1ピン孔5Aには、第3ピン3Cが第1ストリップ4Aの側面と転がり接触しつつ回動可能に挿通されている。
【0025】
図4(b)に示すように、第2リンクプレート2Bの第2ピン3Bが圧入されている第2ピン孔5Bには、第3ストリップ4Cが第2ピン3Bの側面と転がり接触しつつ回動可能に挿通されている。また、第2リンクプレート2Bの第2ストリップ4Bが圧入されている第2ピン孔5Bには、第1ピン3Aが第2ストリップ4Bの側面と転がり接触しつつ回動可能に挿通されている。
図5(a)に示すように、第3リンクプレート2Cの第3ピン3Cが圧入されている第3ピン孔5Cには、第1ストリップ4Aが第3ピン3Cの側面と転がり接触しつつ回動可能に挿通されている。また、第3リンクプレート2Cの第3ストリップ4Cが圧入されている第3ピン孔5Cには、第2ピン3Bが第3ストリップ4Cの側面と転がり接触しつつ回動可能に挿通されている。
【0026】
図5(b)に示すように、第4リンクプレート2Dのピン3が圧入されている第4ピン孔5Dには、ストリップ4が当該ピン3の側面と転がり接触しつつ回動可能に挿通されている。また、第4リンクプレート2Dのストリップ4が圧入されている第4ピン孔5Dには、他のリンクプレート2に圧入されているピン3がストリップ4の側面と転がり接触しつつ回動可能に挿通されている。
このように、ピン3とストリップ4とは、一方がピン孔5に対して圧入され、他方がピン孔5に対して回動可能に挿通されているので、リンクプレート2同士は屈曲自在に連結されている。以上のようにして、重ね合わされるリンクプレート2同士を屈曲自在に連結するとともに、これらを厚さ方向に積層することで、屈曲可能なチェーン1が構成されている。
【0027】
図6は、チェーン1を組み立てるための組立装置7の連結体組立治具8を示す平面図である。図7図9は、その連結体組立治具8の断面図である。
連結体組立治具8は、チェーン1を組み立てる際に、予め複数の連結体6を組み立てるのに用いられる。この連結体組立治具8は、第1連結体6Aを組み立てるための第1連結体組立治具8Aと、第2連結体6Bを組み立てるための第2連結体組立治具8Bと、第3連結体6Cを組み立てるための第3連結体組立治具8Cとからなる。
【0028】
第1連結体6Aは、単一の第1リンクプレート2Aの各第1ピン孔5Aに、単一の第1ピン3Aの一端部31A、及び単一の第1ストリップ4Aの一端部41Aをそれぞれ圧入して構成される。第2連結体6Bは、単一の第2リンクプレート2Bの各第2ピン孔5Bに、単一の第2ピン3Bの一端部31B、及び単一の第2ストリップ4Bの一端部41Bをそれぞれ圧入して構成される。第3連結体6Cは、単一の第3リンクプレート2Cの各第3ピン孔5Cに、単一の第3ピン3Cの一端部31C、及び単一の第3ストリップ4Cの一端部41Cをそれぞれ圧入して構成される。
【0029】
図6(a)及び図7(a)において、第1連結体組立治具8Aは、直方体状に形成されており、本体部81Aと、この本体部81Aの下面に固定された底部85Aとを備えている。本体部81Aには、第1ピン3Aの他端部32Aが挿入される第1ピン保持穴(第1保持穴)82Aが形成されている。また、本体部81Aには、第1ピン保持穴82Aに対して所定間隔をあけて、第1ストリップ4Aの他端部42Aが挿入される第1ストリップ保持穴(第1保持穴)83Aが形成されている。
【0030】
第1ピン保持穴82A及び第1ストリップ保持穴83Aは、本体部81Aの上面である基準面84Aに開口し、当該基準面84Aに対して垂直方向に延びて形成されている。図6(a)に示すように、第1ピン保持穴82Aの内周面は、第1ピン3Aを第1リンクプレート2Aの第1ピン孔5Aに圧入した状態における当該第1ピン3Aの外周面に沿う形状とされている。また、第1ストリップ保持穴83Aの内周面は、第1ストリップ4Aを第1リンクプレート2Aの第1ピン孔5Aに圧入した状態における当該第1ストリップ4Aの外周面に沿う形状とされている。
これにより、第1ピン保持穴82Aに挿入された第1ピン3A、及び第1ストリップ保持穴83Aに挿入された第1ストリップ4Aは、所定間隔をあけて、第1リンクプレート2Aを圧入可能な状態で保持される。
【0031】
図7(a)に示すように、底部85Aの上面には、第1ピン保持穴82Aに挿入された第1ピン3Aの端面34Aが当接するピン当接面85A1と、第1ストリップ保持穴83Aに挿入された第1ストリップ4Aの端面44Aが当接するストリップ当接面85A2とが形成されている。すなわち、ピン当接面85A1は第1ピン保持穴82Aの底面とされ、ストリップ当接面85A2は第1ストリップ保持穴83Aの底面とされている。また、図7(b)に示すように、ピン当接面85A1は、第1ピン3Aの端面34Aの凸曲面に対応して傾斜するテーパ面とされている。なお、ストリップ4がピン3よりも短い場合は、ピン当接面85A1は、ストリップ当接面85A2よりも低い位置に形成される。
【0032】
図7(a)に示すように、第1ピン保持穴82Aの深さHA1は、これに挿入される第1ピン3Aの一端部31Aを除く部分、すなわち第1ピン3Aの端面34Aから第1リンクプレート2Aまでの軸方向長さと略同一長さに設定されている。
第1ストリップ保持穴83Aの深さHA2は、これに挿入される第1ストリップ4Aの一端部41Aを除く部分、すなわち第1ストリップ4Aの端面44Aから第1リンクプレート2Aまでの軸方向長さと略同一長さに設定されている。
これにより、各保持穴82A,83Aに挿入保持された第1ピン3A及び第1ストリップ4Aの各一端部31A,41Aに、第1リンクプレート2Aを前記基準面84Aに当接するまで圧入することで、第1連結体6Aを容易に組み立てることができる。
【0033】
図6(b)及び図8(a)において、第2連結体組立治具8Bは、直方体状に形成されており、本体部81Bと、この本体部81Bの下面に固定された底部85Bとを備えている。本体部81Bには、第2ピン3Bの他端部32Bが挿入される第2ピン保持穴(第2保持穴)82Bが形成されている。また、本体部81Bには、第2ピン保持穴82Bに対して所定間隔をあけて、第2ストリップ4Bの他端部42Bが挿入される第2ストリップ保持穴(第2保持穴)83Bが形成されている。
第2ピン保持穴82B及び第2ストリップ保持穴83Bは、本体部81Bの上面である基準面84Bに開口し、当該基準面84Bに対して垂直方向に延びて形成されている。
【0034】
底部85Bの上面には、第2ピン保持穴82Bに挿入された第2ピン3Bの端面34Bが当接するピン当接面85B1と、第2ストリップ保持穴83Bに挿入された第2ストリップ4Bの端面44Bが当接するストリップ当接面85B2とが形成されている。
第2ピン保持穴82Bの深さHB1は、これに挿入される第2ピン3Bの一端部31Bを除く部分、すなわち第2ピン3Bの端面34Bから第2リンクプレート2Bまでの軸方向長さと略同一長さに設定されている。
第2ストリップ保持穴83Bの深さHB2は、これに挿入される第2ストリップ4Bの一端部41Bを除く部分、すなわち第2ストリップ4Bの端面44Bから第2リンクプレート2Bまでの軸方向長さと略同一長さに設定されている。
なお、第2連結体組立治具8Bの他の構成は、第1連結体組立治具8Aと同様であるため、その説明を省略する。
【0035】
図6(C)及び図9(a)において、第3連結体組立治具8Cは、直方体状に形成されており、本体部81Cと、この本体部81Cの下面に固定された底部85Cとを備えている。本体部81Cには、第3ピン3Cの他端部32Cが挿入される第3ピン保持穴(第3保持穴)82Cが形成されている。また、本体部81Cには、第3ピン保持穴82Cに対して所定間隔をあけて、第3ストリップ4Cの他端部42Cが挿入される第3ストリップ保持穴(第3保持穴)83Cが形成されている。
第3ピン保持穴82C及び第3ストリップ保持穴83Cは、本体部81Cの上面である基準面84Cに開口し、当該基準面84Cに対して垂直方向に延びて形成されている。
【0036】
底部85Cの上面には、第3ピン保持穴82Cに挿入された第3ピン3Cの端面34Cが当接するピン当接面85C1と、第3ストリップ保持穴83Cに挿入された第3ストリップ4Cの端面44Cが当接するストリップ当接面85C2とが形成されている。
第3ピン保持穴82Cの深さHC1は、これに挿入される第3ピン3Cの一端部31Cを除く部分、すなわち第3ピン3Cの端面34Cから第3リンクプレート2Cまでの軸方向長さと略同一長さに設定されている。
第3ストリップ保持穴83Cの深さHC2は、これに挿入される第3ストリップ4Cの一端部41Cを除く部分、すなわち第3ストリップ4Cの端面44Cから第3リンクプレート2Cまでの軸方向長さと略同一長さに設定されている。本実施形態では、第3ストリップ保持穴83Cの深さHC2は、第3ピン保持穴82Cの深さHC1と同一長さに設定されている。
なお、第3連結体組立治具8Cの他の構成は、第1連結体組立治具8Aと同様であるため、その説明を省略する。
【0037】
図10は、組立装置7のチェーン組立治具9を示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のG−G矢視断面図である。このチェーン組立治具9は、チェーン1を組み立てる際に、複数の連結体6を保持するために用いられる。このチェーン組立治具9は、円板状に形成されており、その上面には円環状の保持溝91が形成されている。この保持溝91は、挿入部91aとその上方に形成された保持部91bとを有している。
【0038】
図11(a)は、チェーン組立治具9の使用状態を示す断面図であり、図11(b)は、図11(a)のH−H矢視断面図である。図11(b)に示すように、保持溝91の挿入部91aは、連結体6のピン3の一端部31及びストリップ4の一端部41が挿入される溝幅を有している。
保持溝91の保持部91bは、挿入部91aの溝幅よりも幅広の溝幅を有している。保持部91bの溝幅は、連結体6のリンクプレート2の短手方向(図4(a)の上下方向)の幅と同一幅に設定されている。これにより、リンクプレート2は、保持部91bに挿入されることで、短手方向への移動が規制された状態で保持される。
【0039】
保持部91bの高さは、複数の第1〜第3リンクプレート2A〜2Cをチェーン幅方向に互いに積層した状態で、これら第1〜第3リンクプレート2A〜2Cを全て挿入することができる高さに設定されている。これにより、保持溝91は、複数の連結体6におけるピン3及びストリップ4の一端部31,41及びリンクプレート2が順次挿入されることで、リンクプレート2を所定層積層した状態で保持することができる。
【0040】
図12は、連結体組立治具8を用いた連結体6の組立方法を示す断面図である。また、図13及び図14は、チェーン組立治具9を用いたチェーン1の組立方法を示す断面図である。以下、チェーン1の組立方法について、図12図14を参照しながら説明する。
まず、複数の第1リンクプレート2A、複数の第1ピン3A及び複数の第1ストリップ4Aを用いて、複数の第1連結体6Aを組み立てる。具体的には、図12(a)に示すように、第1連結体組立治具8Aの第1ピン保持穴82Aに第1ピン3Aの他端部32Aを挿入し、その端面34Aをピン当接面85A1に当接させる。また、第1連結体組立治具8Aの第1ストリップ保持穴83Aに第1ストリップ4Aの他端部42Aを挿入し、その端面44Aをストリップ当接面85A2に当接させる。これにより、第1ピン3A及び第1ストリップ4Aは、第1ピン保持穴82A及び第1ストリップ保持穴83Aにそれぞれ挿入された状態で保持される。
【0041】
次に、図12(b)に示すように、第1ピン3A及び第1ストリップ4Aの各一端部31A,41Aに、第1リンクプレート2Aの各ピン孔5を圧入する。その際、第1リンクプレート2Aの下面が本体部81Aの基準面84Aに当接するまで、第1リンクプレート2Aを圧入する。これにより、単一の第1リンクプレート2A、単一の第1ピン3A及び単一の第1ストリップ4Aが一体化された第1連結体6Aとなる。この状態から、図12(c)に示すように、第1連結体6Aを第1連結体組立治具8Aから引き上げて分離する。このように、図12(a)〜図12(c)を繰り返すことによって、複数の第1連結体6Aを組み立てる。
次に、第2連結体組立治具8Bにより複数の第2連結体6Bを組み立てるとともに、第3連結体組立治具8Cにより複数の第3連結体6Cを組み立てる。なお、第2及び第3連結体6Cの組立方法は、上述の第1連結体6Aの組立方法と同様であるため、その説明を省略する。
【0042】
次に、複数の第1〜第3連結体6A〜6C、及び複数の第4リンクプレート2Dを用いて、チェーン1を組み立てる。まず、図13(a)に示すように、チェーン組立治具9の保持溝91に、第1連結体6Aの第1リンクプレート2Aを、第1ピン3A及び第1ストリップ4Aの一端部31A,41Aと共に挿入した状態で保持する。その際、各第1リンクプレート2Aは、保持溝91の周方向(図中の左右方向)に所定間隔をあけて配置される。なお、図13(a)、(b)及び図14(a),(b)では、各図中の組み立て対象物をクロスハッチングで示している。
【0043】
次に、図13(b)に示すように、チェーン組立治具9の保持溝91に、複数の第2連結体6Bのリンクプレート2を、第2ピン3B及びストリップ4Bの一端部31B,41Bと共に挿入する。その際、第2連結体6Bの第2ピン3Bの一端部31Bは、隣接する第1連結体6Aの第1リンクプレート2A同士の間から保持溝91に挿入される。また、第2連結体6Bの第2ストリップ4Bの一端部41Bは、第1連結体6Aの第1リンクプレート2Aにおける第1ピン3Aが圧入されている第1ピン孔5Aに挿通して保持溝91に挿入される(図4(a)参照)。これにより、第2連結体6Bの第2リンクプレート2Bは、第1連結体6Aの第1リンクプレート2A上に積層された状態で保持される。
【0044】
次に、図14(a)に示すように、チェーン組立治具9の保持溝91に、第3連結体6Cの第3リンクプレート2Cを、第3ピン3C及び第3ストリップ4Cの一端部31C,41Cと共に挿入する。その際、第3連結体6Cの第3ピン3Cの一端部31Cは、第1連結体6Aの第1リンクプレート2Aにおける第1ストリップ4Aが圧入されている第1ピン孔5Aに挿通して保持溝91に挿入される(図4(a)参照)。また、第3連結体6Cの第3ストリップ4Cの一端部41は、第2連結体6Bの第2リンクプレート2Bにおける第2ピン3Bが圧入されている第2ピン孔5Bに挿通して保持溝91に挿入される(図4(b)参照)。これにより、第3連結体6Cの第3リンクプレート2Cは、第2連結体6Bの第2リンクプレート2B上に積層された状態で保持される。
【0045】
そして、最後に、図14(b)に示すように、複数の第4リンクプレート2Dを、第1〜第3ピン3A〜3Cの他端部32A〜32C、及び第1〜第3ストリップ4A〜4Cの他端部42A〜42C側から順次圧入して積層する。具体的には、複数の第4リンクプレート2Dは、第1ピン3A・第1ストリップ4Aへの圧入、第2ピン3B・第2ストリップ4Bへの圧入、及び第3ピン3C・第3ストリップ4Cへの圧入を、この順に繰り返しながら、第3リンクプレート2Cよりもチェーン幅方向の他方側全体に亘って積層する。これにより、チェーン1を組み立てることができる。チェーン1を組み立てた後は、チェーン組立治具9からチェーン1を引き上げて分離する。
【0046】
以上、本発明の実施形態に係る動力伝達チェーン1の組立方法及び組立装置7によれば、連結体6A〜6Cをそれぞれ組み立てるときに、連結体組立治具8A〜8Cの基準面84A〜84Cに対して垂直方向に延びる保持穴82A〜82C,83A〜83Cに、ピン部材3A〜3C,4A〜4Cの一端部31A〜31C,41A〜41Cを除く部分を挿入保持することができる。したがって、この挿入保持されたピン部材3A〜3C,4A〜4Cの一端部31A〜31C,41A〜41Cに第1〜第3リンクプレート2A〜2Cを圧入することにより、ピン部材3A〜3C,4A〜4Cが第1〜第3リンクプレート2A〜2Cに対して傾くのを抑制することができる。これにより、第1〜第3リンクプレート2A〜2Cとピン部材3A〜3C,4A〜4Cとの間にクリアランスが発生するのを抑制することができる。また、このようにピン部材3A〜3C,4A〜4Cの傾きを抑えた連結体6A〜6Cと、第4リンクプレート2Dとを用いてチェーン1を組み立てることにより、組み立てられたチェーン1に歪みが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0047】
また、チェーン組立治具9によりチェーン1を組み立てるときに、チェーン組立治具9の保持溝91に、連結体6A〜6Cのピン部材3A〜3C,4A〜4Cを、積層された第1〜第3リンクプレート2A〜2Cと共に保持溝91に保持することができる。これにより、連結体6A〜6Cのピン部材3A〜3C,4A〜4Cに、第4リンクプレート2Dを圧入するときに、第4リンクプレート2Dに対してピン部材3A〜3C,4A〜4Cが傾くのを効果的に抑制することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、上記実施形態において第1〜第3連結体6A〜6Cを組み立てる際に、第1連結体6Aを組み立てた後に、第2連結体6B,第3連結体6Cを組み立てているが、これらの組み立て順序は適宜変更することができる。また、第1〜第3連結体6A〜6Cの各組み立て工程を並行して行うようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、複数の第4リンクプレート2Dを圧入する際に、第1ピン3A・第1ストリップ4Aへの圧入、第2ピン3B・第2ストリップ4Bへの圧入、及び第3ピン3C・第3ストリップ4Cへの圧入を、この順に繰り返しながら行っているが、これらの圧入順序は適宜変更することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、第nリンクプレートを第4リンクプレート2Dとした場合、すなわちn=4とした場合について説明したが、nは3又は5以上であっても良い。
また、上記実施形態におけるチェーン組立治具9では、図11(a)に示すように、挿入部91aの底面を水平面としているが、図15に示すように、挿入部91aの底面を、ピン3の端面33の凸曲面に対応して傾斜するテーパ面91a1としても良い。
【符号の説明】
【0050】
1:動力伝達チェーン、2A:第1リンクプレート、2B:第2リンクプレート、2C:第3リンクプレート、2D:第4リンクプレート、3A:第1ピン(第1ピン部材)、3B:第2ピン(第2ピン部材)、3C:第3ピン(第3ピン部材)、4A:第1ストリップ(第1ピン部材)、4B:第2ストリップ(第2ピン部材)、4C:第3ストリップ(第3ピン部材)、5A:第1ピン孔、5B:第2ピン孔、5C:第3ピン孔、5D:第4ピン孔、6A:第1連結体、6B:第2連結体、6C:第3連結体、7:組立装置、8A:第1連結体組立治具、8B:第2連結体組立治具、8C:第3連結体組立治具、9:チェーン組立治具、31A〜31C:一端部、32A〜32C:他端部、41A〜41C:一端部、42A〜42C:他端部、82A:第1ピン保持穴(第1保持穴)、82B:第2ピン保持穴(第2保持穴)、82C:第3ピン保持穴(第3保持穴)、83A:第1ストリップ保持穴(第1保持穴)、83B:第2ストリップ保持穴(第2保持穴)、83C:第3ストリップ保持穴(第3保持穴)、84A〜84C:基準面、91:保持溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15