特許第6102625号(P6102625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102625
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】端子構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/06 20060101AFI20170316BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 2/08 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20170316BHJP
   H01G 9/008 20060101ALI20170316BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   H01M2/06 A
   H01M2/04 A
   H01M2/08 A
   H01M2/30 D
   H01G9/04 349
   H01G1/14 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-165176(P2013-165176)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-35304(P2015-35304A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】田丸 耕二郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−253295(JP,A)
【文献】 特開2007−234586(JP,A)
【文献】 特開2009−259651(JP,A)
【文献】 特開2000−113865(JP,A)
【文献】 特開2009−295418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00 〜 2/08
H01M 2/20 〜 2/34
H01G 4/228
H01G 9/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を収容するケースを備えた蓄電装置に用いられる端子構造であって、
前記ケースに溶接される外縁部、前記ケースの内側に配置される内面、及び前記内面の反対側の外面を有し、前記内面と前記外面とを連通する連通孔が形成された蓋部材と、
前記内面に対向するベース部、及び前記ベース部に突設され前記連通孔を介して前記外面側に突出する突出部を有し、前記電極に電気的に接続される端子部材と、
前記外面に対向するように前記突出部に設けられ、前記端子部材を前記蓋部材に固定する固定部材と、
前記内面と前記ベース部との間において前記蓋部材に接触するように配置され、前記端子部材と前記蓋部材とを電気的に絶縁する第1の絶縁部材と、
前記外面と前記固定部材との間、及び前記連通孔の内側面と前記突出部との間において前記固定部材及び前記蓋部材に接触するように配置され、前記端子部材と前記蓋部材とを電気的に絶縁する第2の絶縁部材と、を備え、
前記第1及び第2の絶縁部材は、内側部分、及び前記内側部分よりも前記外縁部側に位置する外側部分を有し、
前記第1及び第2の絶縁部材は、前記外側部分の厚さが前記内側部分の厚さよりも薄くなるように形成されることにより、前記内側部分において前記蓋部材に接触しつつ前記外側部分において前記蓋部材から離間している、
ことを特徴とする端子構造。
【請求項2】
前記第2の絶縁部材における前記内側部分と前記外側部分との境界は、前記固定部材と前記第2の絶縁部材との接触部分の外縁よりも前記外縁部側に位置している、
ことを特徴とする請求項1に記載の端子構造。
【請求項3】
前記第2の絶縁部材は、前記固定部材の外側面に沿って延在する壁部を有している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の端子構造。
【請求項4】
前記蓋部材には、前記第1の絶縁部材における蓋部材との接触部分が配置されるように前記内面に開口する第1の凹部、及び、前記第2の絶縁部材における蓋部材との接触部分が配置されるように前記外面に開口する第1の凹部の少なくとも一方が形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の端子構造。
【請求項5】
前記蓋部材には、前記第1の絶縁部材における前記蓋部材との接触部分と前記外縁部との間において前記内面に開口する第2の凹部、及び、前記第2の絶縁部材における前記蓋部材との接触部分と前記外縁部との間において前記外面に開口する第2の凹部の少なくも一方が形成されており、
前記第2の凹部は、前記第1の凹部から前記外縁部に向けて延在するように第1の凹部と一体的に形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の端子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を収容するケースを備えた蓄電装置に用いられる端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、密閉型電池が記載されている。この密閉型電池は、電極体が収納される金属製の外装缶と、外装缶の開口を塞ぐ金属製の蓋板と、蓋板を貫通する端子と、蓋板と端子との間に設けられた樹脂材料からなる絶縁部と、を備えている。また、蓋板には、蓋板と外装缶とによって形成される空間内に電解液を注入するための注入口が設けられている。そして、絶縁部は、蓋板における端子が貫通する部分から、その注入口よりも蓋板外周側の範囲まで延在するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−94250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような密閉型電池においては、電極体が収納された金属製の外装缶に対して、端子を貫通させると共に絶縁部を設けた金属製の蓋板を溶接によって接合する場合がある。そのような場合には、外装缶と蓋板との溶接個所で生じた熱によって、樹脂材料からなる絶縁部が溶融するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、絶縁部材の溶融を抑制可能な端子構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る端子構造は、電極を収容するケースを備えた蓄電装置に用いられる端子構造であって、ケースに溶接される外縁部、ケースの内側に配置される内面、及び内面の反対側の外面を有し、内面と外面とを連通する連通孔が形成された蓋部材と、内面に対向するベース部、及びベース部に突設され連通孔を介して外面側に突出する突出部を有し、電極に電気的に接続される端子部材と、外面に対向するように突出部に設けられ、端子部材を蓋部材に固定する固定部材と、内面とベース部との間において蓋部材に接触するように配置され、端子部材と蓋部材とを電気的に絶縁する第1の絶縁部材と、外面と固定部材との間、及び連通孔の内側面と突出部との間において固定部材及び蓋部材に接触するように配置され、端子部材と蓋部材とを電気的に絶縁する第2の絶縁部材と、を備え、第1及び第2の絶縁部材は、内側部分、及び内側部分よりも外縁部側に位置する外側部分を有し、第1及び第2の絶縁部材の少なくとも一方は、外側部分の厚さが内側部分の厚さよりも薄くなるように形成されることにより、内側部分において蓋部材に接触しつつ外側部分において蓋部材から離間している、ことを特徴とする。
【0007】
この端子構造においては、蓋部材の内面と端子部材のベース部との間に第1の絶縁部材を配置すると共に、蓋部材の外面と固定部材との間、及び蓋部材の連通孔の内側面と端子部材の突出部との間に第2の絶縁部材を配置することによって、蓋部材と端子部材との絶縁を確保している。そして、第1及び第2の絶縁部材の少なくとも一方は、蓋部材とケースとの溶接個所である蓋部材の外縁部側に位置する外側部分が、その内側部分よりも相対的に薄くなるように形成されることにより、その外側部分において蓋部材から離間している。このため、第1及び第2の絶縁部材の少なくとも一方は、溶接個所からより遠い内側部分において蓋部材に接触することになる。このため、蓋部材とケースとを溶接する際の熱によって、当該絶縁部材が溶融することが抑制される。
【0008】
本発明に係る端子構造においては、第1及び第2の絶縁部材は、外側部分の厚さが内側部分の厚さよりも薄くなるように形成されることにより、内側部分において蓋部材に接触しつつ外側部分において蓋部材から離間していてもよい。この場合、第1及び第2の絶縁部材の両方の溶融が抑制される。
【0009】
本発明に係る端子構造においては、第2の絶縁部材における内側部分と外側部分との境界は、固定部材と第2の絶縁部材との接触部分の外縁よりも外縁部側に位置していてもよい。例えば、固定部材が、端子部材の固定に際して、蓋部材との間で第2の絶縁部材を挟持するような場合には、固定部材と蓋部材とに挟まれた第2の絶縁部材に押圧力が加わる。この場合には、蓋部材との接触部分となり得る第2の絶縁部材の内側部分が、固定部材との接触部分よりも外側まで延在することとなるので、押圧力が分散され、第2の絶縁部材の変形等が抑制される。
【0010】
本発明に係る端子構造においては、第2の絶縁部材は、固定部材の外側面に沿って延在する壁部を有していてもよい。この場合、例えば固定部材が端子部材に電気的に接続されている場合であっても、第2の絶縁部材の壁部によって、固定部材(すなわち端子部材)と蓋部材との絶縁が確保される。
【0011】
本発明に係る端子構造においては、蓋部材には、第1の絶縁部材における蓋部材との接触部分が配置されるように内面に開口する第1の凹部、及び、第2の絶縁部材における蓋部材との接触部分が配置されるように外面に開口する第1の凹部の少なくとも一方が形成されていてもよい。この場合、第1及び第2の絶縁部材における蓋部材との接触部分の少なくとも一方が、第1の凹部によって相対的に薄化された蓋部材の一部分に配置される。このため、溶接個所からその接触部分に伝わる熱量が低減するので、当該絶縁部材が溶融することが一層抑制される。
【0012】
本発明に係る端子構造においては、蓋部材には、第1の絶縁部材における蓋部材との接触部分と外縁部との間において内面に開口する第2の凹部、及び、第2の絶縁部材における蓋部材との接触部分と外縁部との間において外面に開口する第2の凹部の少なくも一方が形成されていてもよい。この場合、第1及び第2の絶縁部材と蓋部材との接触部分の少なくとも一方と蓋部材の外縁部との間において、第2の凹部により蓋部材が薄化されている。このため、溶接個所からその接触部分に伝わる熱量が低減するので、当該絶縁部材の溶融が一層抑制される。
【0013】
本発明に係る端子構造は、電極を収容するケースを備えた蓄電装置において用いられる端子構造であって、ケースに溶接される外縁部、ケースの内側に配置される内面、及び内面の反対側の外面を有し、内面と外面とを連通する連通孔が形成された蓋部材と、内面に対向するベース部、及びベース部に突設され連通孔を介して外面側に突出する突出部を有し、電極に電気的に接続される端子部材と、外面に対向するように突出部に設けられ、端子部材を蓋部材に固定する固定部材と、内面とベース部との間において蓋部材に接触するように配置され、端子部材と蓋部材とを電気的に絶縁する第1の絶縁部材と、外面と固定部材との間、及び連通孔の内側面と突出部との間において固定部材及び蓋部材に接触するように配置され、端子部材と蓋部材とを電気的に絶縁する第2の絶縁部材と、を備え、蓋部材には、第1の絶縁部材における蓋部材との接触部分が配置されるように内面に開口する第1の凹部、及び、第2の絶縁部材における蓋部材との接触部分が配置されるように外面に開口する第1の凹部の少なくとも一方が形成されている、ことを特徴とする。
【0014】
この端子構造においては、蓋部材の内面と端子部材のベース部との間に第1の絶縁部材を配置すると共に、蓋部材の外面と固定部材との間、及び蓋部材の連通孔の内側面と端子部材の突出部との間に第2の絶縁部材を配置することによって、蓋部材と端子部材との絶縁を確保している。そして、第1及び第2の絶縁部材と蓋部材との接触部分の少なくとも一方が、第1の凹部によって相対的に薄化された蓋部材の一部分に配置される。このため、蓋部材とケースとの溶接個所である蓋部材の外縁部からその接触部分に伝わる熱量が低減するので、当該絶縁部材の溶融が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、絶縁部材の溶融を抑制可能な端子構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る二次電池の平面図である。
図2図1に示されたII−II線に沿っての断面図である。
図3】本実施形態に係る端子構造を示す部分断面図である。
図4図3に示された蓋部材の平面図である。
図5図3に示された端子構造の変形例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係る端子構造について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素同士、或いは相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図における寸法比率は、実際のものと異なる場合がある。
【0018】
図1は、本実施形態に係る二次電池の平面図である。図2は、図1に示されたII−II線に沿っての断面図である。図1,2に示される二次電池(蓄電装置)1は、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。二次電池1は、ケース10を備えている。ケース10は、例えば、アルミニウム等の金属から構成されている。ケース10は、例えば、一方が解放された矩形箱状を呈している。ケース10内には、電解液Sが充填されている。電解液Sとしては、例えば、有機溶媒系又は非水系の電解液が挙げられる。ケース10の内側面上には、例えば、絶縁フィルムを設けてもよい。
【0019】
二次電池1は、電極組立体20を備えている。電極組立体20は、ケース10に収容されている。電極組立体20は、複数の正極(電極)30及び複数の負極(電極)40と、正極30と負極40との間に配置された複数のセパレータとを備えている。正極30及び負極40は、セパレータを介して所定の方向に沿って交互に積層されている。
【0020】
正極30は、例えばアルミニウム箔等の金属箔と、金属箔の両面に設けられた正極活物質層とを有している。正極活物質層は、例えば、正極活物質とバインダとを含んで構成される。正極活物質としては、例えば、複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物は、例えば、マンガン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとを含む。正極30は、縁に形成されたタブ33を有する。タブ33には、正極活物質が担持されていない。正極30は、タブ33を介して導電部材34に接続されている。
【0021】
負極40は、銅箔等の金属箔と、金属箔の両面に設けられた負極活物質層とを有している。負極活物質層は、例えば、負極活物質とバインダとを含んで構成される。負極活物質としては、例えば、黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、及びソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiO(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、並びに、ホウ素添加炭素等が挙げられる。負極40は、縁に形成されたタブ43を有する。タブ43には、負極活物質が担持されていない。負極40は、タブ43を介して導電部材44に接続されている。
【0022】
ここで、二次電池1には、図1〜4に示されるような端子構造が用いられている。引き続いて、二次電池1に用いられる端子構造について説明する。図3は、本実施形態に係る端子構造を示す部分断面図である。特に、図3の(a)は、図1のIII−III線に沿っての部分断面図であり、図3の(b)は、図1のII−II線に沿っての部分断面図である。また、図4は、図3に示された蓋部材の平面図である。
【0023】
図1〜3に示されるように、端子構造50は、電極組立体20の正極30及び負極40のそれぞれに対して用いられる。端子構造50は、蓋部材60と、端子部材70と、固定部材80と、絶縁部材(第1の絶縁部材)91と、絶縁部材(第2の絶縁部材)92と、を有している。蓋部材60は、ケース10の開放部分の形状に対応するように長方形板状を呈しており、ケース10に溶接される外縁部61を有している。蓋部材60は、その外縁部61がケース10に溶接されることによってケース10に接合され、ケース10の内部を気密に封止する。ケース10との溶接個所となる外縁部61は、互いに略平行な一対の長辺部62と、互いに略平行であり長辺部62同士を接続する一対の短辺部63と、を含む。
【0024】
蓋部材60は、ケース10の内側に配置される内面64と、ケース10の外側に配置される外面65と、を有している。外面65は、内面64の反対側の面である。また、蓋部材60には、内面64と外面65とを連通する連通孔66が形成されている。連通孔66は、後述するように、ケース10内において電極組立体20に電気的に接続された端子部材70をケース10の外部に引き出すためのものである。連通孔66は、蓋部材60の長手方向の中心よりも短辺部63側に形成されている。蓋部材60は、例えばアルミニウム等の金属から構成されている。
【0025】
端子部材70は、ケース10内に配置されるベース部71を有している。ベース部71は、蓋部材60の内面64に対向するように配置され、内面64に沿って平板状に延在している。また、端子部材70は、ベース部71の略中央においてベース部71に突設された突出部72を有している。突出部72は、蓋部材60の内面64側から蓋部材60の連通孔66を介して蓋部材60の外面65側に突出している。突出部72の側面には、例えばねじ溝が形成されている。その場合には、端子部材70は、全体としてボルトとして構成される。
【0026】
端子部材70は、電極組立体20に電気的に接続されている。より具体的には、端子部材70は、ベース部71から延設された集電板73が、タブ33を介して正極30に接続された導電部材34(又は、タブ43を介して負極40に接続された導電部材44)に接合され、正極30(又は負極40)に電気的に接続されている。端子部材70は、例えば、正極30に接続される場合にはアルミニウム等、負極40に接続される場合には銅等の金属によって一体的に形成される。
【0027】
固定部材80は、蓋部材60の外面65に対向するように、蓋部材60の連通孔66から突出した端子部材70の突出部72に設けられている(取り付けられている)。固定部材80は、端子部材70を蓋部材60に固定する。固定部材80は、突出部72を囲むように環状を呈している。固定部材80の内側面には、例えばねじ溝が形成されている。その場合には、固定部材80は、ナットであり、突出部72に螺合される。固定部材80は、端子部材70の突出部72に取り付けられることにより、端子部材70に電気的に接続されている。固定部材80は、例えば、ステンレス等の金属によって形成されている。
【0028】
絶縁部材91は、突出部72を囲むように環状に形成されており、蓋部材60の内面64と端子部材70のベース部71との間に配置されている。その状態において、絶縁部材91は、蓋部材60の内面64及び端子部材70のベース部71に接触しており、蓋部材60と端子部材70とを電気的に絶縁している。絶縁部材91は、例えば、PPS等の樹脂材料から構成することができる。
【0029】
絶縁部材92は、突出部72を囲むように環状を呈しており、蓋部材60の外面65と固定部材80との間、及び、蓋部材60の連通孔66の内側面66sと突出部72との間に配置されている。その状態において、絶縁部材92は、蓋部材60の外面65、蓋部材60の内側面66s、及び固定部材80に接触しており、蓋部材60と端子部材70とを電気的に絶縁している。
【0030】
より具体的には、絶縁部材92は、蓋部材60の連通孔66の開口に沿うように蓋部材60の外面65と固定部材80との間に配置された環状の第1の絶縁部93を含む。第1の絶縁部93は、蓋部材60の外面65及び固定部材80と接触している。これにより、第1の絶縁部93は、蓋部材60と固定部材80(ひいては端子部材70)とを電気的に絶縁している。
【0031】
また、絶縁部材92は、第1の絶縁部93における連通孔66側の端部に設けられ、蓋部材60の外面65側から連通孔66を介して内面64側に延在する第2の絶縁部94を含む。第2の絶縁部94は、突出部72を囲むように筒状に形成されている。これにより、第2の絶縁部94は、連通孔66内において、蓋部材60と端子部材70とを電気的に絶縁している。
【0032】
また、絶縁部材92は、第1の絶縁部93における蓋部材60の外縁部61側の端部に立設され、固定部材80の外側面80sに沿って延在する壁部95をさらに含む。壁部95は、固定部材80の外側面80sに沿って固定部材80を囲むように環状に形成されている。なお、壁部95は、ここでは固定部材80から離間しているが、固定部材80に接触していてもよい。このような絶縁部材92は、例えば、PPS等の樹脂材料によって一体的に形成されている。
【0033】
固定部材80は、端子部材70のベース部71との間で、これらの絶縁部材91,92及び蓋部材60を(例えば突出部72との螺合によって)挟持することにより、端子部材70を蓋部材60に固定している。なお、端子構造50においては、蓋部材60の内面64と端子部材70のベース部71との間に、蓋部材60の連通孔66を囲むようにリング状の弾性部材(Oリング)Rを配置することによって、ケース10から電解液Sやガス等が漏出することを防止している。
【0034】
ここで、絶縁部材91は、内側部分91аと、内側部分91aよりも蓋部材60の外縁部61側に位置する外側部分91bとを含む。外側部分91bは、内側部分91aを包囲するように環状を呈している。そして、絶縁部材91は、外側部分91bの厚さ(ベース部71から蓋部材60に向かう方向の厚さ)が内側部分91aの厚さよりも薄くなるように形成されている。
【0035】
このため、絶縁部材91は、内側部分91aにおいて蓋部材60に接触しつつ、外側部分91bにおいて蓋部材60から離間している。つまり、絶縁部材91は、溶接個所により近い部分で蓋部材60から離間すると共に、溶接個所からより遠い部分で蓋部材60に接触し、蓋部材60と端子部材70との絶縁を確保している。なお、ここでは、絶縁部材91の厚さは、内側部分91aと外側部分91bとの間で2段階に変化している。
【0036】
一方、絶縁部材92(ここでは、外面65上に位置する部分(第1の絶縁部93))も、内側部分92aと、内側部分92aよりも蓋部材60の外縁部61側に位置する外側部分92bとを含む。外側部分92bは、内側部分92aを包囲するように環状を呈している。そして、絶縁部材92も、外側部分92bの厚さが内側部分92aの厚さよりも薄くなるように形成されている。
【0037】
このため、絶縁部材92も、内側部分92aにおいて蓋部材60に接触しつつ、外側部分92bにおいて蓋部材60から離間している。つまり、絶縁部材92も、溶接個所により近い部分で蓋部材60から離間すると共に、溶接個所からより遠い部分で蓋部材60に接触し、蓋部材60と固定部材80(及び端子部材70)との絶縁を確保している。なお、ここでは、絶縁部材92の厚さは、内側部分92aと外側部分92bとの間で2段階に変化している。
【0038】
また、蓋部材60の内面64及び外面65に沿った方向について、内側部分92aの幅は固定部材80の幅よりも大きく、且つ、内側部分92aと外側部分92bとの境界B1が絶縁部材92と固定部材80との接触部分の外縁(ここでは固定部材80の外側面80s)B2よりも蓋部材60の外縁部61側に位置している。つまり、絶縁部材92の内側部分92aは、蓋部材60の外面65上において、固定部材80よりも広い範囲に延在している。なお、ここでは、絶縁部材91の内側部分91aの外縁と、絶縁部材92の内側部分92aの外縁とは概ね同位置とされている。このため、内側部分91aと外側部分91bとの境界(境界B1)も、絶縁部材92と固定部材80との接触部分の外縁B2よりも蓋部材60の外縁部61側に位置している。
【0039】
ここで、図3,4に示されるように、蓋部材60には、外面65に開口する凹部(第1の凹部)67が形成されている。凹部67は、連通孔66の開口を囲うように環状に形成されており、連通孔66が凹部67の底面67sに開口している。絶縁部材92における蓋部材60との接触部分(ここでは内側部分92a)Pは凹部67に配置されている。つまり、内側部分92aは、凹部67の底面67sにおいて蓋部材60に接触している。
【0040】
一方、外側部分92bは、外面65に沿った方向について部分的に凹部67からはみ出しており、且つ、外面65及び凹部67の底面67sから離間している。つまり、絶縁部材92は、凹部67の底面67sにおいてのみ、内側部分92aを介して蓋部材60に接触している。なお、ここでは、絶縁部材91の内側部分91aは、蓋部材60の内面64における凹部67の底面67sの反対側の領域において蓋部材60に接触している。つまり、蓋部材60の厚さ方向からみたとき、絶縁部材91における蓋部材60との接触部分(ここでは内側部分91a)は、凹部67内に含まれるように配置されている。
【0041】
さらに、蓋部材60には、外面65に開口する一対の凹部(第2の凹部)68が形成されている。凹部68は、接触部分Pと蓋部材60の外縁部61との間(特に、接触部分Pの外縁と外縁部61との間)に形成されている。凹部68は、接触部分Pから、蓋部材60の外縁部61のうちの接触部分Pに相対的に近い長辺部62のそれぞれに向かって延在している。凹部68は、凹部67から連続して形成されている。つまり、蓋部材60には、接触部分Pが配置される環状の凹部67と、凹部67から外縁部61の長辺部62に向けて延在する凹部68とが一体的に形成されている。
【0042】
以上説明したように、端子構造50においては、蓋部材60の内面64と端子部材70のベース部71との間に絶縁部材91を配置すると共に、蓋部材60の外面65と固定部材80との間、及び蓋部材60の連通孔66の内側面66sと端子部材70の突出部72との間に絶縁部材92を配置することによって、蓋部材60と端子部材70(及び固定部材80)との絶縁を確保している。
【0043】
そして、絶縁部材91,92は、蓋部材60とケース10との溶接個所である蓋部材60の外縁部61側に位置する外側部分91b,92bの厚さが、内側部分91a,92aの厚さよりも相対的に薄くなるように形成されることにより、外側部分91b,92bにおいて蓋部材60から離間している。このため、絶縁部材91,92は、溶接個所からより遠い内側部分91a,92aにおいて蓋部材に接触することになる。
【0044】
このため、蓋部材60とケース10とを溶接する際の熱によって、絶縁部材91,92が溶融することが抑制される。このように絶縁部材91,92の溶融が抑制されれば、絶縁部材91,92の溶融に起因する固定部材80の端子部材70の固定に緩みが生じることも抑制される。つまり、端子構造50によれば、二次電池1の信頼性を向上することができる。
【0045】
また、端子構造50においては、絶縁部材92における蓋部材60との接触部分Pが、凹部67に配置される。つまり、接触部分Pが、凹部67によって相対的に薄化された蓋部材60の一部分に配置される。このため、溶接個所からその接触部分Pに伝わる熱量が低減するので、絶縁部材92が溶融することが一層抑制される。
【0046】
なお、上述したように、絶縁部材91の内側部分91aは、内面64側における凹部67の底面67sの反対側の領域において蓋部材60と接触している。つまり、絶縁部材91における蓋部材60との接触部分も、凹部67によって相対的に薄化された蓋部材60の一部分に配置されることになる。このため、同様の理由から、絶縁部材91が溶融することも一層抑制される。
【0047】
さらに、端子構造50においては、接触部分Pと蓋部材60の外縁部61との間において、蓋部材60に凹部68が形成され薄化されている。このため、溶接個所からその接触部分Pに伝わる熱量がより低減されるので、絶縁部材92の溶融がより一層抑制される。ここでも、凹部68によって、絶縁部材91における蓋部材60との接触部分と外縁部61との間において、蓋部材60が部分的に薄化されることになるので、絶縁部材91の溶融についても同様に抑制される。
【0048】
また、端子構造50においては、絶縁部材92における内側部分92aと外側部分92bとの境界B1が、絶縁部材92と固定部材80との接触部分の外縁B2よりも外縁部61側に位置している。つまり、蓋部材60との接触をなす絶縁部材92の内側部分92aは、固定部材80よりも広い範囲に延在している。このため、端子部材70を蓋部材60に固定する際に絶縁部材92に加わる押圧力が、比較的広い蓋部材60との接触面に分散されるため、絶縁部材92の変形等が抑制される。
【0049】
さらに、端子構造50においては、絶縁部材92対して、固定部材80の外側面80sに沿って延在する壁部95が形成されている。このため、例えば導電性の異物等が、蓋部材60と固定部材80の外側面80sとに架け渡されるように付着することが防止されるため、固定部材80(ひいては端子部材70)と蓋部材60との絶縁が確実に確保される。
【0050】
以上の実施形態は、本発明に係る端子構造の一実施形態を説明したものである。したがって、本発明に係る端子構造は、上述した端子構造50に限定されない。本発明に係る端子構造は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、上述した端子構造50を任意に変更したものとすることができる。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、絶縁部材91,92の厚さが、内側部分91a,92aと外側部分91b,92bとの間で段階的に(2段階で)変化する場合について説明した。しかしながら、絶縁部材91,92の厚さは、図5に示されるように、内側部分91a,92aにおいて略一定とすると共に、外側部分91b,92bにおいて外縁部61に向けて漸減させてもよい。つまり、絶縁部材91,92においては、相対的に薄い部分を外縁部61側に設けることによって、その相対的に薄い部分において蓋部材60から離間していればよい。さらには、絶縁部材91及び絶縁部材92の両方に限らず、少なくとも一方にそのような構成を採用してもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、蓋部材60の外面65に対して、接触部分Pが配置されるように凹部67を形成した。しかしながら、絶縁部材91における蓋部材60との接触部分が配置されるように内面64に開口する凹部(第1の凹部)をさらに形成してもよい。また、そのような凹部(第1の凹部)は、内面64のみに形成されてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、接触部分Pと、蓋部材60の外縁部61の長辺部62との間において、外面65に開口する凹部68を形成した。しかしながら、接触部分Pと外縁部61の短辺部63とが近接している場合には、接触部分Pとその短辺部63との間に凹部68をさらに形成してもよい。つまり、凹部68は、接触部分Pと、接触部分Pに近い溶接個所との間の任意の位置に形成することができる。
【0054】
また、絶縁部材91における蓋部材60との接触部分と蓋部材60の外縁部61との間において内面64に開口する凹部(第2の凹部)をさらに形成してもよい。さらには、そのような凹部(第2の凹部)は、内面64のみに形成してもよい。
【0055】
また、絶縁部材91及び絶縁部材92の一方のみを、上述したように、外側部分の厚さを内側部分の厚さよりも相対的に薄くすることにより、内側部分において蓋部材60に接触しつつ外側部分において蓋部材60から離間するようにしてもよい。その場合、例えば、絶縁部材91,92の他方は、内側部分及び外側部分の両方において蓋部材60に接触してもよい。そのとき、凹部67は、内側部分及び外側部分の両方が配置されるように、蓋部材60に形成することができる。
【0056】
また、上記実施形態においては、ボルトである端子部材70と、ナットである固定部材80とを例示した(つまり、端子部材70と蓋部材60とが別体である場合について例示した)。しかしながら、端子部材70と固定部材80としては、互いに一体に形成されるリベットを用いてもよい。
【0057】
さらに、端子構造50は、二次電池1の他に、例えば、電気二重層キャパシタ等の任意の蓄電装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…二次電池(蓄電装置)、10…ケース、30…正極(電極)、40…負極(電極)、50…端子構造、60…蓋部材、61…外縁部、64…内面、65…外面、66…連通孔、66s…内側面、67…凹部(第1の凹部)、68…凹部(第2の凹部)、70…端子部材、71…ベース部、72…突出部、80…固定部材、80s…外側面、91…絶縁部材(第1の絶縁部材)、91a…内側部分、91b…外側部分、92…絶縁部材(第2の絶縁部材)、92a…内側部分、92b…外側部分、B1…境界、B2…外縁、P…接触部分。
図1
図2
図3
図4
図5