特許第6102694号(P6102694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102694
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】カム連動リフタ装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 45/04 20060101AFI20170316BHJP
   B21D 37/08 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B21D45/04 E
   B21D37/08
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-244305(P2013-244305)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-100824(P2015-100824A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 則義
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−158318(JP,U)
【文献】 実開昭62−155921(JP,U)
【文献】 特開平08−224630(JP,A)
【文献】 実開昭62−155922(JP,U)
【文献】 実開昭49−093077(JP,U)
【文献】 特開2006−320941(JP,A)
【文献】 特開平08−001243(JP,A)
【文献】 特開昭58−148029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 45/04
B21D 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム方向へ進退する加工カムの進退動作に連動して、プレス方向へ昇降するリフタ部を装置本体に備えたカム連動リフタ装置であって、
前記加工カムには、先行押え部材を備え、
前記装置本体には、前記先行押え部材と当接してカム方向へ移動する連動部材と、前記連動部材の移動動作を前記リフタ部の昇降動作に方向変換する方向変換部材とを備えたこと
前記連動部材と前記方向変換部材とは、それぞれラック歯を備え、両ラック歯と係合するピニオン歯を介して連動することを特徴とするカム連動リフタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたカム連動リフタ装置において、
前記連動部材には、カム方向へ並ぶ複数の前記ラック歯を有する第1ラックと、前記第1ラックに連結され、前記第1ラックをカム後退方向へ付勢する第1付勢体とを備えたこと、
前記方向変換部材には、前記リフタ部の下端に固定され、プレス方向へ並ぶ複数の前記ラック歯を有する第2ラックと、前記第1ラックのラック歯と前記第2ラックのラック歯とにそれぞれ係合する前記ピニオン歯を有するピニオンとを備えたことを特徴とするカム連動リフタ装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたカム連動リフタ装置において、
前記先行押え部材は、前記第1ラックをカム前進方向へ押圧するピストンロッドを有するシリンダ部材であり、前記ピストンロッドの押圧力を前記第1付勢体の付勢力より大きく設定したことを特徴とするカム連動リフタ装置。
【請求項4】
請求項2に記載されたカム連動リフタ装置において、
前記先行押え部材は、前記第1ラックをカム前進方向へ押圧する固定部材であり、前記第1ラックに有するラック歯は、前記第1ラックが原位置から中間位置へ移動する間のみ、前記ピニオン歯と係合して前記リフタ部を上昇端から下降端まで移動させるように形成されたことを特徴とするカム連動リフタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたカム連動リフタ装置において、
前記リフタ部又は前記第2ラックには、プレス上昇方向へ付勢する第2付勢体を設けたこと、
前記第1ラックが中間位置から前進端まで移動する間、前記第1ラックと前記リフタ部又は前記第2ラックとを係合させる係合機構を設けたことを特徴とするカム連動リフタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス方向に対して傾斜角を有して進退する加工カムの動作に連動して昇降するリフタ部を備えたカム連動リフタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、2に記載されているように、略帯板状の鋼板を断面ハット形状の製品に曲げ成形する場合、プレス方向に対して傾斜角を有して進退する加工カム(寄せ曲げカム)を備えた寄せ曲げ型が使用されている。
一般に、このような寄せ曲げ型は、下型に固定され、鋼板の幅方向中央部を下方から支持する凸状のポンチと、ポンチに隣接して下型に固定され、ポンチに対向する傾斜摺動面を有するカムドライバと、上型に支持され、鋼板の幅方向中央部を上方からポンチに押さえつけるパッドと、パッドに隣接して上型に支持され、カムドライバの傾斜摺動面に摺接して進退し、先端に固定されたダイ刃が鋼板の幅方向両側部をポンチの側面に押圧して断面ハット形状に曲げ成形する加工カムとを備えている。
また、上記寄せ曲げ型には、加工カムとの干渉を回避しながら、曲げ成形した断面ハット形状の製品をポンチから取り出すため、プレス方向へ製品を持ち上げるリフタ部を備えるリフタ装置が設けられている場合が多い。かかるリフタ装置は、上型に先行押えピンを設けて、加工カムのダイ刃が前進する前にリフタ部を下降させ、加工カムのダイ刃が後退した後に、リフタ部を上昇させる方法を採っている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−320941号公報
【特許文献1】特開平8−1243号公報
【特許文献1】特開昭58−148029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記寄せ曲げ型の場合、加工カムが、パッドに隣接して上型に支持され、カムドライバの傾斜摺動面に摺接して進退する吊りカム構造であるため、加工カムとの衝突を避けるべく、先行押えピンを上型の加工カムの後退位置より後方に設けなければならない。そのため、製品サイズに比べてリフタ装置が相対的に大きくなり、その影響から上下型の平面サイズが必要以上に増加する問題があった。また、上下型の平面サイズが増加するので、無駄な鋳物費や加工費が増加する問題もあった。
また、近年のトランスファプレスの高速化に伴い、寄せ曲げ型におけるリフタ装置の高速化が望まれている。リフタ装置の高速化を実現するためには、リフタ部の小型化、軽量化を図るとともに、リフタ部を加工カムの進退動作に連動して昇降させることが重要である。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、装置本体及びリフタ部のコンパクト化を可能としつつ、リフタ部を加工カムの進退動作に連動して昇降させ、リフタ部の高速運転が可能なカム連動リフタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るカム連動リフタ装置は、次のような構成を有している。
(1)カム方向へ進退する加工カムの進退動作に連動して、プレス方向へ昇降するリフタ部を装置本体に備えたカム連動リフタ装置であって、
前記加工カムには、先行押え部材を備え、
前記装置本体には、前記先行押え部材と当接してカム方向へ移動する連動部材と、前記連動部材の移動動作を前記リフタ部の昇降動作に方向変換する方向変換部材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明においては、加工カムには、先行押え部材を備え、装置本体には、先行押え部材と当接してカム方向へ移動する連動部材と、連動部材の移動動作をリフタ部の昇降動作に方向変換する方向変換部材とを備えたので、加工カムがカム方向へ進退したとき、先行押え部材と連動部材と方向変換部材とを介してリフタ部をプレス方向へ昇降させることができる。そのため、先行押え部材を上型の加工カム後退位置より後方に設ける必要がなく、リフタ装置の装置本体及びリフタ部を大幅に小型化、軽量化することができる。したがって、上下型の平面サイズをコンパクト化でき、無駄な鋳物費や加工費の増加を防止することができる。
また、装置本体には、先行押え部材と当接してカム方向へ移動する連動部材と、連動部材の移動動作をリフタ部の昇降動作に方向変換する方向変換部材を備えたので、カム方向へ移動する連動部材の移動動作を、方向変換部材によってプレス方向へ方向変換して、リフタ部を素早く昇降させることができる。そのため、リフタ部の昇降動作が加工カムの進退動作に比べ遅れることなく、リフタ部と加工カムとを高速で連動させることができる。その結果、高速化したトランスファプレス装置にも適用することができる。
よって、本発明によれば、装置本体及びリフタ部のコンパクト化を可能としつつ、リフタ部を加工カムの進退動作に連動して昇降させ、リフタ部の高速運転を可能とするカム連動リフタ装置を提供することができる。
【0008】
(2)(1)に記載されたカム連動リフタ装置において、
前記連動部材には、カム方向へ並ぶ複数のラック歯を有する第1ラックと、前記第1ラックに連結され、前記第1ラックをカム後退方向へ付勢する第1付勢体とを備えたこと、
前記方向変換部材には、前記リフタ部の下端に固定され、プレス方向へ並ぶ複数のラック歯を有する第2ラックと、前記第1ラックのラック歯と前記第2ラックのラック歯とにそれぞれ係合するピニオン歯を有するピニオンとを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明においては、連動部材には、カム方向へ並ぶ複数のラック歯を有する第1ラックと、第1ラックに連結され、第1ラックをカム後退方向へ付勢する第1付勢体とを備えたので、加工カムの進退動作に追従して第1ラックをカム方向へ移動させることができる。また、方向変換部材には、リフタ部の下端に固定され、プレス方向へ並ぶ複数のラック歯を有する第2ラックと、第1ラックのラック歯と第2ラックのラック歯とにそれぞれ係合するピニオン歯を有するピニオンとを備えたので、第1ラックが加工カムの進退動作に追従してカム方向へ移動するとき、係合するピニオン歯を有するピニオンの回転動作を介して第2ラックをプレス方向へ移動させることができる。第2ラックをプレス方向へ移動させることによって、リフタ部を同方向へ昇降させることができる。そのため、加工カムの進退動作に追従したリフタ部の昇降機構を、2個のラックと1組のピニオンを用いてコンパクトに構成することができ、リフタ部を、より高精度かつ高速度で移動させることができる。
なお、本発明においては、カム連動リフタ装置に2個のラック(第1ラックと第2ラック)を用いているので、第1ラックのラック歯と第2ラックのラック歯とを、それぞれ異なるピッチに形成し、異なる2つの外径のピニオン歯を有する1組のピニオンにそれぞれ係合させることによって、連動部材の移動距離に対してリフタ部の昇降距離を任意の値に設定することができる。例えば、製品のハット形状が深い場合には、第2ラックのラック歯のピッチを第1ラックのラック歯のピッチより大きくして、連動部材の移動距離よりリフタ部の昇降距離を長く設定することができる。
【0010】
(3)(2)に記載されたカム連動リフタ装置において、
前記先行押え部材は、前記第1ラックをカム前進方向へ押圧するピストンロッドを有するシリンダ部材であり、前記ピストンロッドの押圧力を前記第1付勢体の付勢力より大きく設定したことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、先行押え部材は、第1ラックをカム前進方向へ押圧するピストンロッドを有するシリンダ部材であり、ピストンロッドの押圧力を第1付勢体の付勢力より大きく設定したので、加工カムがカム前進方向に移動するときには、先行押え部材のピストンロッドが伸長した状態で、第1ラックと連結された第1付勢体を収縮させ、第1ラックを原位置から前進端まで移動させることができる。また、第1ラックを原位置から前進端まで移動させる間に、ピニオン及び第2ラックを介して、リフタ部を上昇端から下降端まで移動させることができる。そのため、リフタ部を下降端まで予め下降させた後に、加工カムが更に前進して先行押え部材のピストンロッドを収縮させつつ、加工カムのダイ刃がポンチに近接することができる。
また、プレス成形後、加工カムがカム後退方向へ移動するときには、収縮した第1付勢体は、先行押え部材のピストンロッドが伸長してから遅れて伸長し、第1ラックを加工カムより遅れて原位置へ移動させることができる。そのため、加工カムのダイ刃がポンチから離間した以後に、リフタ部を上昇させることができる。
その結果、リフタ部と加工カムとの干渉を確実に回避しながら、曲げ成形した断面ハット形状の製品をポンチから迅速に取り出すことができる。
なお、シリンダ部材は、圧縮ガスをシリンダケースとピストンとの空間に内蔵したガススプリングが好ましい。ガススプリングであれば、配管等も不要で、小型化、軽量化が可能だからである。
【0012】
(4)(2)に記載されたカム連動リフタ装置において、
前記先行押え部材は、前記第1ラックをカム前進方向へ押圧する固定部材であり、前記第1ラックに有するラック歯は、前記第1ラックが原位置から中間位置へ移動する間のみ、前記ピニオン歯と係合して前記リフタ部を上昇端から下降端まで移動させるように形成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明においては、先行押え部材は、第1ラックをカム前進方向へ押圧する固定部材であるので、ピストンロッドと異なり、長さが伸縮しない。そのため、構造が簡単で、より一層の軽量化、低コスト化が可能となる。また、加工カムと第1ラックとの同期化が容易となる。
また、第1ラックに有するラック歯は、第1ラックが原位置から中間位置へ移動する間のみ、ピニオン歯と係合してリフタ部を上昇端から下降端まで移動させるように形成されたので、加工カムのカム前進方向への移動動作と連動して、第1ラックが原位置から中間位置へ移動する間に、ピニオン及び第2ラックを介して、リフタ部を上昇端から下降端まで移動させることができる。そして、第1ラックが中間位置から前進端まで移動する間には、第1ラックのラック歯とピニオン歯との係合が解除されている。そのため、先行押え部材に押圧されて第1ラックが更にカム前進方向へ移動しても、ピニオンは回転しないので、リフタ部を下降端の位置に保持させることができる。
したがって、加工カムのダイ刃がポンチに近接する以前に、リフタ部を下降端まで下降させることができ、加工カムの更なる前進に対して、ダイ刃とリフタ部との干渉を回避させることができる。
なお、第1ラックが前進端から中間位置まで後退し、加工カムのダイ刃がポンチと離間してから、第1ラックに有するラック歯とピニオン歯との係合が開始するので、ダイ刃とリフタ部との干渉が生じない位置で、リフタ部を上昇端まで上昇させることができる。
その結果、構造の簡素化を図りつつ、リフタ部材と加工カムとの干渉を確実に回避し、曲げ成形した断面ハット形状の製品をパンチから迅速に取り出すことができる。
【0014】
(5)(4)に記載されたカム連動リフタ装置において、
前記リフタ部又は前記第2ラックには、プレス上昇方向へ付勢する第2付勢体を設けたこと、
前記第1ラックが中間位置から前進端まで移動する間、前記第1ラックと前記リフタ部又は前記第2ラックとを係合させる係合機構を設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明においては、リフタ部又は第2ラックには、プレス上昇方向へ付勢する第2付勢体を設けたので、リフタ部又は第2ラックをプレス上昇方向へ付勢することによって、製品Zのポンチ81への喰い付きを防止して、リフタ部6の高速化を可能とする。また、第2ラックのラック歯とピニオン歯との隙間を詰め、リフタ部のガタやオドリ等を低減することができる。
また、第1ラックが中間位置から前進端まで移動する間、第1ラックとリフタ部又は第2ラックとを係合させる係合機構を設けたので、第1ラックのラック歯とピニオン歯との係合が解除されている間に、第2付勢体によってリフタ部が上昇するのを回避させることができる。
その結果、リフタ部の高速化を図り、ガタやオドリ等を低減しながら、リフタ部と加工カムとの干渉を確実に回避できる。
なお、上記係合機構として、例えば、第1ラックの側壁にカム方向に延伸する凹溝を形成し、リフタ部又は第2ラックの側壁に前記凹溝に嵌合する軸部を形成するとともに、前記凹溝のカム方向の溝長さを、第1ラックのラック歯とピニオン歯との係合が解除されたときから第1ラックが前進端まで移動する間、凹溝と軸部とが嵌合できる長さとする、係合機構が考えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、装置本体及びリフタ部のコンパクト化を可能としつつ、リフタ部を加工カムの進退動作に連動して昇降させ、リフタ部の高速運転が可能なカム連動リフタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るカム連動リフタ装置の模式的断面図である。
図2図1に示すピストンロッドが第1ラックに当接する直前の状態を表す部分断面図である。
図3図1に示す第1ラックが前進端に移動して、リフタ部が下降端に移動した状態を表す部分断面図である。
図4図1に示すピストンロッドが収縮して加工カムが前進端に移動した状態を表す部分断面図である。
図5図1に示すピストンロッドが伸長した状態を表す部分断面図である。
図6図1に示す第1ラックが原位置に戻り、リフタ部が上昇端に移動した状態を表す部分断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るカム連動リフタ装置の模式的断面図である。
図8図7に示す第1ラックが中間位置に移動して、リフタ部が下降端に移動した状態を表す部分断面図である。
図9図7に示す第1ラックが前進端に移動した状態を表す部分断面図である。
図10図7に示す第1ラックが中間位置に戻った状態を表す部分断面図である。
図11図7に示す第1ラックが原位置に戻り、リフタ部が上昇端に移動した状態を表す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態に係るカム連動リフタ装置について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、第1実施形態に係るカム連動リフタ装置を説明し、その後、第2実施形態に係るカム連動リフタ装置を説明する。
【0019】
<第1実施形態に係るカム連動リフタ装置>
まず、第1実施形態に係るカム連動リフタ装置を、図1図2を用いて説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係るカム連動リフタ装置の模式的断面図を示す。図2に、図1に示すピストンロッドが第1ラックに当接する直前の状態を表す部分断面図を示す。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るカム連動リフタ装置10を、略帯状鋼板Z1から断面ハット形状の製品Zに曲げ成形する寄せ曲げ型30に適用する例で説明する。
ここでは、上記寄せ曲げ型30は、下型8に固定され、略帯状鋼板Z1の幅方向中央部Z11を下方から支持する凸状のポンチ81と、下型8に固定され、ポンチ81に対向する傾斜摺動面821を有するカムドライバ82と、上型7に支持され、略帯状鋼板Z1の幅方向中央部Z11を上方からポンチ81に押さえつけるパッド(図示せず)と、上端21が上型7の摺動部71に支持され、下端22がカムドライバ82の傾斜摺動面821に摺接してカム方向(矢印Qの方向)に進退し、前端23に固定されたダイ刃24が略帯状鋼板Z1の幅方向両側部Z12をポンチ81の側面に押圧して断面ハット形状の製品Zに曲げ成形する加工カム2と、加工カム2の動作に連動して断面ハット形状の製品Zをポンチ81から取り出すカム連動リフタ装置10とを備えている。
【0021】
(カム連動リフタ装置の構成)
図1図2に示すように、カム連動リフタ装置10は、先行押え部材3と、連動部材4と、方向変換部材5と、リフタ部6と、装置本体1とを備えている。
先行押え部材3は、連動部材4と当接して、加工カム2のカム方向への進退動作を連動部材4に伝達する部材である。具体的には、先行押え部材3は、加工カム2の下端22に取り付けられ、カム前進方向へ所定の押圧力を有して伸縮するピストンロッド31を備えたシリンダ部材(3)で構成されている。
シリンダ部材(3)には、例えば、シリンダケース32内にピストン33を挟んで形成されたロッド側室34とケース側室35とに圧縮ガスが封入されたガススプリングが好ましい。ピストン33には、ロッド側室34とケース側室35とを連通させるオリフィス36が形成されており、ピストンロッド31の押圧力は、圧縮ガスがオリフィス36を通過するときの抵抗力によって発生させる。そのため、ガススプリング(3)には、ガス供給配管等が不要となり、小型化、軽量化が可能となる。また、ピストンロッド31のストローク長は、製品取出し時に、加工カム2を前進端からリフタ部6又は製品Zと干渉しない所定の位置まで後退させる最小の移動量に基づいて設定する。ピストンロッド31のストローク長を最小の移動量とすることによって、製品Zの取り出しタイミングが早くなり、トランスファプレス等の高速化を実現する上で、重要となる。
【0022】
連動部材4は、加工カム2の下方に位置し、先行押え部材3と当接してカム方向へ移動する部材である。連動部材4は、カム方向に延設された第1ラック41と、第1ラック41に連結され、第1ラック41をカム後退方向へ付勢する第1付勢体42とを備えている。
第1ラック41は、前端部412から所定ピッチ411Pでカム後退方向へ並ぶ複数のラック歯411を有している。第1ラック41の後端部413には、カム後退方向へ付勢する第1付勢体42(圧縮ばね)が当接している。第1付勢体42は、装置本体1に形成されたばね受け座13に保持されている。また、前述したピストンロッド31の押圧力は、第1付勢体42の付勢力より大きく設定されている。
また、第1ラック41の左右端414には、装置本体1にカム方向に傾斜して固定された傾斜板14に摺接し、カム方向へ移動可能な摺接面が形成されている。第1ラック41の前端部412には、カム方向に移動した前進端t2で、下型8に固定されたストッパ部材83に当接する当接面が形成されている。
【0023】
方向変換部材5は、連動部材4のカム方向への移動動作をリフタ部6のプレス方向への昇降動作に方向変換する部材である。方向変換部材5は、リフタ部6の下端に垂下して固定された第2ラック51と、ピニオン52とを備えている。
第2ラック51は、下端部512から所定ピッチ511Pでプレス上昇方向へ並ぶ複数のラック歯511を有している。ピニオン52は、第1ラック41と第2ラック51とが交差する箇所の内側に位置し、第1ラック41のラック歯411と係合するピニオン歯521と、第2ラック51のラック歯511と係合するピニオン歯522とを同軸上に有している。両ピニオン歯521、522は、外径が同一であり、一体で形成されている。
また、第1ラック41と第2ラック51のピッチ411P、511Pは、同一であり、第1ラック41の移動距離S1は、第2ラック51の移動距離S2と同一である。
【0024】
なお、第1ラック41のラック歯411と第2ラック51のラック歯511とを、それぞれ異なるピッチに形成し、異なる外径を有する1つのピニオン52にそれぞれ係合させることによって、連動部材4の移動距離に対してリフタ部6の昇降距離を任意の値に設定することができる。例えば、製品Zのハット形状が深い場合には、第2ラック51のラック歯511のピッチ511Pを第1ラック41のラック歯411のピッチ411Pより大きくして、連動部材4の移動距離よりリフタ部6の昇降距離を長く設定することができる。
【0025】
リフタ部6は、プレス方向に昇降して断面ハット形状の製品Zをポンチ81から取り出す部材である。リフタ部6は、図1の表裏方向へ延設された本体部61と、本体部61下端から下方へ延設された脚部62と、本体部61の上端に固定され、製品Zのフランジ部に当接する受部63とを備えている。脚部62のピニオン52側には、第2ラック51が鉛直状に垂下して固定されている。また、脚部62のポンチ81側には、装置本体1の鉛直摺接板112と摺接する摺接面が形成されている。
【0026】
装置本体1は、ポンチ81とカムドライバ82との間に配置され、連動部材4と方向変換部材5とリフタ部6とを支持する部材である。装置本体1は、下型8の上端に固定する略矩形状の台板12と、台板12のポンチ81側及び型左右側に起立する縦板11とを備え、加工カム2側及びカムドライバ82側が開放された略矩形状の箱状体である。
ポンチ81側に起立する縦板11には、リフタ部6の脚部62が摺接する鉛直摺接板112が締結されている。また、同縦板11には、ストッパ部材83又は第1ラック41が挿通される通孔111が形成されている。
型左右側に起立する縦板11には、第1ラック41の左右端414が摺接する傾斜板14が締結されている。また、同縦板11には、ピニオン52が回転自在に軸支され、第1ラック41をカム後退方向へ付勢する第1付勢体42のばね受け座13がL字状に形成されている。
【0027】
(カム連動リフタ装置の動作方法)
次に、第1実施形態に係るカム連動リフタ装置10の動作方法について、図2図6を用いて説明する。図3に、図1に示す第1ラックが前進端に移動して、リフタ部が下降端に移動した状態を表す部分断面図を示す。図4に、図1に示すピストンロッドが収縮して加工カムが前進端に移動した状態を表す部分断面図を示す。図5に、図1に示すピストンロッドが伸長した状態を表す部分断面図を示す。図6に、図1に示す第1ラックが原位置に戻り、リフタ部が上昇端に移動した状態を表す部分断面図を示す。
【0028】
図2に示すように、カム連動リフタ装置10の動作開始時点においては、先行押え部材3のピストンロッド31は、カム前進方向へ伸長した状態で、第1ラック41の後端部413から僅かに離間した位置に存在する。また、連動部材4の第1付勢体42は、第1ラック41をカム後退方向の原位置t1に押し戻している。そのため、第1ラック41のラック歯411は、前端側でピニオン52のピニオン歯521と係合し、第2ラック52のラック歯511は、下端側でピニオン52のピニオン歯522と係合している。その結果、リフタ部6は、プレス上昇方向の上昇端t3に位置している。
なお、この時点では、加工カム2は、上型7の後退位置にあり、カムドライバ82と当接している。加工カム2は、上型7の後退位置に戻されているので、リフタ部6とダイ刃24とが干渉することはない。
【0029】
次に、図3に示すように、上型7の下降に伴って加工カム2がカム前進方向に移動すると、先行押え部材3のピストンロッド31が第1ラック41の後端部413を矢印Y1の方向に押圧する。ピストンロッド31の押圧力は、第1付勢体42の付勢力より大きく設定されているので、ピストンロッド31は、カム前進方向へ伸長した状態のまま、第1付勢体42を収縮させる。第1ラック41は、前進端t2まで移動して、前端部412がストッパ部材83の当接面831に当接することによって停止する。第1ラック41の原位置t1から前進端t2までの移動動作に連動して、ピニオン52が矢印Y2の方向に回転し、第2ラック51及びリフタ部6が矢印Y3の方向へ移動して下降端t4に到達する。その結果、加工カム2が前進端に到達する以前に、リフタ部6は下降端t4まで移動する。
【0030】
次に、図4に示すように、上型7の更なる下降に伴って加工カム2がカム前進方向に移動すると、先行押え部材3のピストンロッド31が第1ラック41の後端部413を矢印Y4の方向に押圧する。このとき、第1ラック41は、ストッパ部材83に当接して前進端t2で停止しているので、第1付勢体42はこれ以上収縮せず、今度はピストンロッド31が収縮する。そして、上型7は下死点に到達して、加工カム2のダイ刃24が、略帯状鋼板Z1の幅方向両端部Z12をポンチ81の側壁に押圧して断面ハット形状の製品Zを曲げ成形する。その間、リフタ部6は、下降端t4の位置に保持されている。
【0031】
次に、図5に示すように、上型7が下死点から上昇すると、先行押え部材3が矢印Y5の方向に移動して、ピストンロッド31が元の長さまで伸長する。このとき、第1付勢体42は、収縮した状態に維持されている。そのため、第1ラック41及び第2ラック51は移動しない。その結果、加工カム2がカム後退方向の所定の位置まで移動する間、リフタ部6は、下降端t4の位置に保持されている。
【0032】
次に、図6に示すように、上型7が更に上昇して、加工カム2が上型7の後退端まで移動すると、先行押え部材3が矢印Y6の方向に移動する。ピストンロッド31は、カム前進方向へ伸長した状態で、第1ラック41の後端部413から僅かに離間した位置に復帰する。また、連動部材4の第1付勢体42は、第1ラック41をカム後退方向の原位置t1に押し戻す。そのとき、第1ラック41は、ピニオン52を矢印Y7の方向に回転させ、第2ラック52及びリフタ部6を矢印Y8の方向へ移動させる。その結果、リフタ部6は、プレス上昇方向の上昇端t3に復帰する。
【0033】
以上のように、第1実施形態のカム連動リフタ装置10によれば、先行押え部材3のピストンロッド31が伸長した状態で、リフタ部6を下降端t4まで下降させることができる。そのため、加工カム2のダイ刃24がポンチ81に近接する以前に、リフタ部6を下降端t4まで下降させることができる。
また、プレス成形後、加工カム2がカム後退方向へ移動するときには、収縮した第1付勢体42は、先行押え部材3のピストンロッド31が伸長してから遅れて伸長し、第1ラック41を加工カム2より遅れてカム後退方向へ移動させることができる。そのため、加工カム2のダイ刃24がポンチ81から離間した以後に、リフタ部6を上昇端t3へ復帰させることができる。
その結果、リフタ部6と加工カム2との干渉を確実に回避しながら、曲げ成形した断面ハット形状の製品Zをパンチ81から迅速に取り出すことができる。
【0034】
<第2実施形態に係るカム連動リフタ装置>
次に、第2実施形態に係るカム連動リフタ装置を、図7を用いて説明する。図7に、本発明の第2実施形態に係るカム連動リフタ装置の模式的断面図を示す。図7は、先行押え部材が第1ラックに当接する直前の状態を表す。
【0035】
本実施形態に係るカム連動リフタ装置20についても、第1実施形態と同様に、略帯状鋼板Z1から断面ハット形状の製品Zに曲げ成形する寄せ曲げ型30に適用する例で説明する。
なお、寄せ曲げ型30は、第1実施形態の場合と同様であるので、各部材については同様の符号を用い、詳細の説明を割愛する。
【0036】
(カム連動リフタ装置の構成)
図7に示すように、カム連動リフタ装置20は、先行押え部材3Bと、連動部材4Bと、方向変換部材5Bと、リフタ部6Bと、装置本体1Bとを備え、第1実施形態に係るカム連動リフタ装置10と基本構成を共通にしている。したがって、ここでは、相違点を中心に説明する。
先行押え部材3Bは、加工カム2の下端22に取り付けられ、カム前進方向へ突出した筒状の固定部材(3B)である。固定部材は、ピストンロッド31と異なり、長さが伸縮しないので、構造が簡単で、軽量化、低コスト化が可能となる利点がある。また、先行押え部材3Bの長さが一定であるので、連動部材4Bとの同期化が容易となる利点もある。
【0037】
連動部材4Bは、加工カム2の下方に位置し、先行押え部材3Bと当接してカム方向へ移動する部材であり、カム方向に延設された第1ラック41Bと、第1ラック41Bに連結され、第1ラック41Bをカム後退方向へ付勢する第1付勢体42Bとを備えている点は、第1実施形態と共通している。
また、第1ラック41Bは、前端部412Bからカム後退方向へ並ぶ複数のラック歯411Bを有している点も第1実施形態と共通しているが、ラック歯411Bが形成されていない胴体部414Bが長く形成され、第1ラック41Bの前端側の側壁には、ラック歯411Bと並列状に、カム方向に延伸する凹溝91が形成されている点が、第1実施形態と相違する。また、後述するリフタ部6Bの脚部62Bの側壁に凹溝91に嵌合する軸部92が形成されるとともに、凹溝91のカム方向の溝長さを、第1ラック41Bのラック歯411Bとピニオン歯521Bとの係合が解除されたときから第1ラック41Bが前進端r3まで移動する間、凹溝91と軸部92とが嵌合できる長さとする、係合機構9が設けられている点が、第1実施形態と相違する。
また、第1ラック41Bの後端部413Bには、カム後退方向へ付勢する第1付勢体42B(圧縮ばね)が当接している点は、第1実施形態と共通するが、第1付勢体42Bのストローク長(伸縮長)が長い点が、第1実施形態と相違する。
なお、第1ラック41Bの前端部412Bには、カム方向に移動した前進端r3で、下型8に固定されたストッパ部材83Bに当接する当接面が形成されている。
【0038】
方向変換部材5Bは、連動部材4Bのカム方向への移動動作をリフタ部6のプレス方向への昇降動作に方向変換する部材であり、リフタ部6Bの下端に垂下して固定された第2ラック51Bと、ピニオン52Bとを備えている点は、第1実施形態と共通している。
また、第2ラック51Bは、下端部からプレス上昇方向へ並ぶ複数のラック歯511Bを有している点も、第1実施形態と共通している。ただし、第2ラック51Bの移動距離は、第1ラック41Bの移動距離より短い点が、第1実施形態と相違する。
【0039】
リフタ部6Bは、プレス方向に昇降して断面ハット形状の製品Zをポンチ81から取り出す部材であり、図7の表裏方向へ延設された本体部61と、本体部61下端から下方へ延設された脚部62Bと、本体部61の上端に固定され、製品Zのフランジ部に当接する受部63B(図示しない)とを備えている点は、第1実施形態と共通している。
また、脚部62Bのピニオン52B側には、第2ラック51Bが鉛直状に垂下して固定されている点も、第1実施形態と共通するが、脚部62Bの下端には、プレス上昇方向へ付勢する第2付勢体64が当接されている点が、第1実施形態と相違する。なお、第2付勢体64のストローク長(伸縮長)は、第1付勢体42Bのストローク長(伸縮長)より短く設定されている。
【0040】
装置本体1Bは、ポンチ81とカムドライバ82との間に配置され、連動部材4Bと方向変換部材5Bとリフタ部6Bとを支持する部材であり、下型8の上端に固定する略矩形状の台板12Bと、台板12Bのポンチ81側及び型左右側に起立する縦板11Bとを備え、加工カム2側及びカムドライバ82側が開放された略矩形状の箱状体である点は、第1実施形態と共通している。
また、ポンチ81側に起立する縦板11Bには、第1ラック41Bが挿通される通孔111Bが形成され、型左右側に起立する縦板11Bには、ピニオン52Bが回転自在に軸支され、第1ラック41Bをカム後退方向へ付勢する第1付勢体42Bのばね受け座13BがL字状に形成されている点は、第1実施形態と共通しているが、台板12Bには、第2付勢体64のばね受け座121Bが形成されている点が、第1実施形態と相違する。
【0041】
(カム連動リフタ装置の動作方法)
次に、第2実施形態に係るカム連動リフタ装置20の動作方法について、図7図11を用いて説明する。図8に、図7に示す第1ラックが中間位置に移動して、リフタ部が下降端に移動した状態を表す部分断面図を示す。図9に、図7に示す第1ラックが前進端に移動した状態を表す部分断面図を示す。図10に、図7に示す第1ラックが中間位置に戻った状態を表す部分断面図を示す。図11に、図7に示す第1ラックが原位置に戻り、リフタ部が上昇端に移動した状態を表す部分断面図を示す。
【0042】
図7に示すように、カム連動リフタ装置20の動作開始時点においては、先行押え部材3Bは、第1ラック41Bの後端部413Bから僅かに離間した位置に存在する。また、連動部材4Bの第1付勢体42Bは、第1ラック41Bをカム後退方向の原位置r1に押し戻している。このとき、第1ラック41Bのラック歯411Bは、前端側でピニオン52Bのピニオン歯521Bと係合し、第2ラック51Bのラック歯511Bは、下端側でピニオン52Bのピニオン歯522Bと係合している。その結果、リフタ部6Bは、プレス上昇方向の上昇端r4に位置している。
なお、この時点では、加工カム2は、上型7の後退位置にあり、カムドライバ82と当接している。加工カム2は、上型7の後退位置に戻されているので、リフタ部6Bとダイ刃24とが干渉することはない。
【0043】
次に、図8に示すように、上型7の下降に伴って加工カム2がカム前進方向に移動すると、先行押え部材3Bが第1ラック41Bの後端部413Bを矢印W1の方向へ押圧する。このとき、第1付勢体42Bが収縮し、第1ラック41Bは、中間位置r2まで前進する。そして、ピニオン52Bを矢印W2の方向へ回転させ、第2ラック51Bを矢印W3の方向へ移動させる。その結果、リフタ部6Bは、加工カム2が前進端に到達する以前に、第2付勢体64を収縮させて下降端r5まで移動する。
第1ラック41Bが中間位置r2まで前進した段階で、第1ラック41Bのラック歯411Bは、ピニオン歯521Bとの係合が解除される。この係合解除と同時に、リフタ部6Bに設けた軸部92は、第1ラック41Bに形成した凹溝91に嵌合される。そのため、第2付勢体64は、リフタ部6Bをプレス上昇方向へ付勢しているが、リフタ部6Bは下降端r5の位置で保持される。
【0044】
次に、図9に示すように、上型7の更なる下降に伴って加工カム2がカム前進方向に移動すると、先行押え部材3Bが第1ラック41Bの後端部413Bを矢印W4の方向に押圧する。このとき、第1付勢体42Bが更に収縮し、第1ラック41Bは、中間位置r2から前進端r3まで前進し、ストッパ部材83に当接して停止する。
第1ラック41Bが中間位置r2から前進端r3まで前進する間は、第1ラック41Bのラック歯411Bは、ピニオン歯521Bとの係合が解除されているので、ピニオン5Bは回転しない。また、リフタ部6Bに設けた軸部92は、第1ラック41Bに形成した凹溝91内を摺動して、凹溝91に嵌合された状態が維持される。したがって、リフタ部6Bは下降端r5の位置で保持される。
なお、第1ラック41Bが前進端r3に到達したと同時に、上型7は下死点に到達して、加工カム2のダイ刃24が、帯状鋼板Z1の幅方向両端部Z12をポンチ81の側壁に押圧して断面ハット形状の製品Zを曲げ成形する。
【0045】
次に、図10に示すように、上型7が下死点から上昇すると、先行押え部材3Bが矢印W5の方向に移動する。第1ラック41Bは、第1付勢体42Bに押し戻されて、前進端r3から中間位置r2に後退する。第1ラック41Bが前進端r3から中間位置r2まで後退する間は、第1ラック41Bのラック歯411Bは、ピニオン歯521Bとの係合が解除されているので、ピニオン5Bは回転しない。また、リフタ部6Bに設けた軸部92は、第1ラック41Bに形成した凹溝91内を摺動して、凹溝91に嵌合された状態が維持されている。したがって、リフタ部6Bは下降端r5の位置で保持される。
第1ラック41Bが中間位置r2に到達したとき、第1ラック41Bのラック歯411Bは、ピニオン歯521Bと係合される。この係合と同時に、リフタ部6Bに設けた軸部92は、第1ラック41Bに形成した凹溝91から離脱する。
【0046】
次に、図11に示すように、上型7が更に上昇して、加工カム2が上型7の後退端まで移動すると、先行押え部材3Bも後退端まで後退する。第1ラック41Bは、第1付勢体42Bによって矢印w6の方向へ押圧されて、中間位置r2から原位置r1まで移動する。このとき、ピニオン52Bは矢印W7の方向へ回転し、第2ラック51Bは矢印W8の方向へ移動する。その結果、リフタ部6は、プレス上昇方向の上昇端r4に復帰する。このとき、第2付勢体64がリフタ部6Bをプレス上昇方向へ付勢しているので、製品Zのポンチ81への喰い付きを防止して、リフタ部6Bの高速化を可能とする。また、第2ラック51Bのラック歯511Bとピニオン歯522Bとの隙間を詰め、リフタ部6Bのガタやオドリ等を低減することができる。
【0047】
以上のように、第2実施形態のカム連動リフタ装置20によれば、加工カム2がカム前進方向へ移動するときには、加工カム2の下端に設けた先行押え部材3Bが第1ラック41Bを押圧して、第1ラック41Bが中間位置r2に到達するまでに、ピニオン52B及び第2ラック51Bを介して、リフタ部6Bを下降端r5まで下降させることができる。
また、プレス成形後、加工カム2がカム後退方向へ移動するときには、第1ラック41Bが中間位置r2まで後退するまで、リフタ部6Bを係合機構9によって下降端r5に保持し、第1ラック41Bが中間位置r2から原位置r1へ移動する間に、ピニオン52B及び第2ラック51Bを介して、リフタ部6Bを上昇端r4へ移動させることができる。また、第2付勢体64がリフタ部6Bをプレス上昇方向へ付勢することによって、製品Zのポンチ81への喰い付きを防止して、リフタ部6Bの高速化を可能とするとともに、リフタ部6Bのガタやオドリ等を低減することができる。
その結果、リフタ部6と加工カム2との干渉を確実に回避しながら、曲げ成形した断面ハット形状の製品Zをパンチ81から迅速に取り出すことができる。
【0048】
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、本カム連動リフタ装置を、寄せ曲げ型に適用する例で説明したが、加工カムを備えたプレス型であれば、寄せ曲げ型に限ることはない。例えば、寄せ抜き型や加工カムを含む複合型でもかまわない。
また、加工カムを吊りカム構造の場合で説明したが、吊りカム構造に限ることはない。例えば、下型に支持された下型スライドカム構造でもよい。この場合、第1ラックをピニオンの下方に配置する構造とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、プレス方向に対して傾斜角を有して進退する加工カムの動作に連動して昇降するリフタ部を備えたカム連動リフタ装置として利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1、1B 装置本体
2 加工カム
3、3B 先行押え部材
4、4B 連動部材
5、5B 方向変換部材
6、6B リフタ部
7 上型
8 下型
9 係合機構
10 カム連動リフタ装置
20 カム連動リフタ装置
24 ダイ刃
31 ピストンロッド
32 シリンダケース
41、41B 第1ラック
42、42B 第1付勢体
51、51B 第2ラック
52、52B ピニオン
81 ポンチ
82 カムドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11