(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は同等の構成要素には同一符号を付す。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(蓄電モジュール)
図1に示すように、蓄電モジュール86は、複数の蓄電装置10と、複数の接続部材74(バスバー)と、を備える。複数の蓄電装置10は接続部材74によって電気的に接続される。接続部材74は、例えば板状であってよい。蓄電装置10間には、隔壁部88が設けられていてもよい。隔壁部88は、蓄電装置10同士の短絡を防止し、蓄電装置10の放熱を促す。複数の蓄電装置10は、ケース12の蓋部18の短辺方向に沿って重なるように配置されていればよい。
図1に示された蓄電モジュール86の一例では、5個の蓄電装置10が直列接続されている。
【0020】
蓄電装置10の数は、限定されず、2個以上であればよい。説明のために、隣接する一対の蓄電装置10のうち一方の蓄電装置10を第一の蓄電装置10Aと記載し、他方の蓄電装置10を第二の蓄電装置10Bと記載する。
【0021】
複数の蓄電装置10の電気的な接続形態は、直列接続でもよく、並列接続でもよい。複数の蓄電装置10が直列接続されている場合、第一の蓄電装置10Aの正極端子22
Pと、第二の蓄電装置10Bの負極端子22
Nとが、接続部材74によって物理的に接続されていればよい。複数の蓄電装置10が並列接続されている場合、第一の蓄電装置10Aの正極端子22
Pと、第二の蓄電装置10Bの正極端子22
Pとが接続部材74によって物理的に接続され、第一の蓄電装置10Aの負極端子22
Nと、第二の蓄電装置10Bの負極端子22
Nとが、接続部材74によって物理的に接続されていればよい。
【0022】
以下では、蓄電装置10がリチウムイオン二次電池である場合について説明する。
図2及び
図3に示すように、蓄電装置10は、正極32と、負極34と、正極32及び負極34に挟まれたセパレータ36と、を有する電極組立体14と、電極組立体14を収容するケース12と、正極32に電気的に接続され、ケース12の蓋部18を貫通する正極端子22
Pと、負極34に電気的に接続され、ケース12の蓋部18を貫通する負極端子22
Nと、を備える。
【0023】
正極32は、金属箔と金属箔を覆う正極活性物質層とを備える。正極活性物質層は金属箔の片面又は両面を覆っている。正極32の一縁部には、正極活性物質で覆われていない金属箔からなるタブ38がある。正極32は、タブ38を介して導電部材40に接続されていている。タブ38に接続された導電部材40は、正極端子22
Pに接続されている。すなわち、正極端子22
Pは、タブ38及び導電部材40を介して、正極32に電気的に接続されている。正極活物質は、例えば、リチウム及び遷移金属を含む複合酸化物(Li、Ni、Co及びMnを含む酸化物等)であってよい。正極32はシート状であってよい。
【0024】
負極34は、金属箔と金属箔を覆う負極活性物質層とを備える。負極活性物質層は金属箔の片面又は両面を覆っている。負極34の一縁部には、負極活性物質層で覆われていない金属箔からなるタブ44がある。負極34は、タブ44を介して導電部材46に接続されている。タブ44に接続された導電部材46は、負極端子22
Nに接続されている。すなわち、負極端子22
Nは、タブ44及び導電部材46を介して、負極34に電気的に接続されている。負極活物質は、例えばグラファイト若しくはハードカーボン等の炭素系材料、リチウムと合金化する元素(Sn若しくはSi)、リチウムと合金化する元素を有する元素化合物、又は、ポリアセチレン若しくはポリピロール等の高分子材料であってよい。負極34はシート状であってよい。
【0025】
セパレータ36は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレン等の合成樹脂から構成された多孔質膜、又はセラミックスから構成された多孔質膜であればよい。
【0026】
電極組立体14においては、正極32の正極活物質層、及び負極34の負極活物質層の各々は、セパレータ36に対向している。電極組立体14において、複数の正極32と、複数の負極34とが、セパレータ36を介して交互に積層されてもよい。
【0027】
ケース12は、電極組立体14を収容するケース本体16と、ケース本体16の開口した一端部を塞ぐ蓋部18と、を備える。蓋部18は、例えば、レーザ溶接等によってケース本体16の開口した端部に接合されていてよい。ケース12の形状は、例えば、直方体であってよい。ケース本体16及び蓋部18は、例えば、アルミニウム又はステンレス等の金属から構成されていてよい。ケース12の内部には、電極組立体14と共に、非水電解液20が充填されている。蓋部18には、一対の正極端子22
P及び負極端子22
Nが互いに離間して配置されている。
【0028】
図4及び
図5に示すように、正極端子22
Pは、例えば、基端部50と、突出部52と、突出部52の端面58の少なくとも一部を覆う保護層68と、を備える。基端部50は、ケース12の内側に配置されている。突出部52は、蓋部18に形成されている挿通孔24を通して、基端部50からケース12の外側へ突出している。突出部52の端面58は接続部材74に対向している。保護層68が、正極端子22
Pの突出部52と接続部材74との間に介在し、接続部材74と接触することにより、正極端子22
Pが接続部材74と電気的に接続している。保護層68は、突出部52の端面58全体を覆っていてもよい。正極端子22
Pの突出部52の一部が接続部材74と直接接触していてもよい。正極端子22
Pの基端部50は、導電部材40に接続される。基端部50は、柱状(例えば、円柱状)であってよい。基端部50の径は、挿通孔24の径より大きい。突出部52は、柱状(例えば円柱状)であってよい。突出部52は、挿通孔24の径より小さい。正極端子22
Pには、突出部52の端面58から基端部50に向けて延びる挿入孔62が形成されている。挿入孔62の長さ(深さ)は、正極端子22
Pの長さよりも短くてよい。
【0029】
正極端子22
Pの基端部50及び突出部52は、純アルミニウム(Al)からなる。純アルミニウムとは、例えば、純度が99.00質量%以上100質量%以下であるアルミニウムである。純アルミニウムは、微量の不純物として、シリコン(Si)又は鉄(Fe)等を含んでもよい。純アルミニウムは、例えば、JIS(日本工業規格,JIS H4100)に基づく1000番台の記号で表示される。JIS H4100に準拠する純アルミニウムは、例えば、A1085、A1080、A1070、A1050、A1050A、A1060、A1100、A1200、A1N00、又はA1N30であってよい。
【0030】
保護層68は、亜鉛単体(Zn)又は亜鉛合金からなる。亜鉛合金は、例えば、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、錫及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(副成分)と、亜鉛(主成分)とを含む合金であってよい。亜鉛合金における亜鉛の含有率は92質量%以上であってよい。
【0031】
接続部材74において正極端子22
Pの突出部52の端面58に対向する部分74bは、錫(Sn)からなる。つまり、接続部材74において錫からなる部分が、端面58を覆う保護層68に接触する。接続部材74が、錫以外の金属(例えばCu系材料又はAl系材料)からなる基材74aと、基材の表面を覆う錫めっき層(74b)と、を備えてもよい。錫めっき層は、基材74aの表面のうち端面58と接触する部分のみを覆っていてよい。錫めっき層は、基材74aの表面全体を覆っていてもよい。接続部材74全体がスズからなっていてよい。
【0032】
負極端子22
Nは、例えば、Cu系材料(例えば銅又は銅合金)からなっていてよい。負極端子22
NがCu系材料からなる場合、Cu系材料の自然電位は純アルミニウムに比べて高いので、負極端子22
Nは正極端子22
Pよりも腐食し難い。したがって、負極端子22
NがCu系材料からなる場合、負極端子22
Nは、保護層68を備えなくてよい。負極端子22
Nの構造及び寸法は、保護層68を備えないこと以外は、正極端子22
Pと同じであってよい。つまり、負極端子22
Nは、基端部50と、突出部52と、を備える。基端部50は、ケース12の内側に配置されている。突出部52は、蓋部18に形成されている挿通孔24を通して、基端部50からケース12の外側へ突出している。負極端子22
Nの突出部52の端面58が接続部材74と接触することにより、負極端子22
Nが接続部材74と電気的に接続している。負極端子22
Nの基端部50は、導電部材46に接続されている。基端部50は。柱状(例えば、円柱状)であってよい。基端部50の径は、挿通孔24の径より大きい。突出部52は、柱状(例えば円柱状)であってよい。突出部52は、挿通孔24の径より小さい。負極端子22
Nには、突出部52の端面58から基端部50に向けて延びる挿入孔62が形成されている。挿入孔62の長さ(深さ)は、負極端子22
Nの長さより短くてよい。
【0033】
負極端子22
Nが純アルミニウムからなる場合、負極端子22
Nも保護層68を備えてよく、負極端子22
Nの形状は正極端子22
Pと同じであればよい。
【0034】
図5に示すように、ボルト76(第一の固定部材)は、正極端子22
Pの挿入孔62に挿入される。ボルト76の軸は、接続部材74に形成された穴84(又は切欠き部)に嵌合する。接続部材74は、ボルト76の頭部と、正極端子22
Pの端面58を覆う保護層68と、の間に挟まれる。このように、接続部材74はボルト76(第一の固定部材)によって正極端子22
Pに固定される。挿入孔62は、ボルト76の軸(雄ネジ部)と螺合する雌ネジ部である。すなわち、挿入孔62は、ボルトが螺合するネジ穴である。
【0035】
正極端子22
Pの突出部52は、蓋部18の挿通孔24を通じて、固定ナット28(第二の固定部材)の開口部に嵌合する。正極端子22
Pの基端部50と固定ナット28との間に蓋部18が挟まれる。このように、正極端子22
Pは固定ナット28(第二の固定部材)によって蓋部18に固定される。突出部52の側周面(外周面)54には、雄ネジ部(ネジ領域56)が形成されていてよい。ネジ領域56は、側周面54において突出部52の端面58に寄った領域に設けられていてよい。側周面54においてネジ領域56と基端部50との間には、ネジ溝が形成されていない非ネジ領域があってよい。この非ネジ領域は、ケース12の蓋部18に形成された挿通孔24に嵌合してよい。固定ナット28の開口部の内面にネジ部(雌ネジ部)が形成されていてよい。正極端子22
Pの突出部52のネジ領域56(雄ネジ部)と固定ナット28の雌ネジ部が螺合してよい。
【0036】
固定ナット28と蓋部18との間、及び突出部52と蓋部18との間には、第一の絶縁部材26が介在している。第一の絶縁部材26は、例えば、絶縁性を有する環状の部材であってよく、例えば樹脂製であってよい。第一の絶縁部材26が、固定ナット28と蓋部18との間、及び突出部52と蓋部18との間に介在する。
【0037】
正極端子22
Pの基端部50と蓋部18との間には、第二の絶縁部材30が介在している。第二の絶縁部材30は、突出部52の付け根部分を囲んでいてよい。第二の絶縁部材30は、例えば、弾性及び絶縁性を有する部材であればよい。第二の絶縁部材30が、正極端子22
Pの基端部50と蓋部18との間に介在することにより、ケース12内が密封される。
【0038】
負極端子22
Nと他の部材(接続部材74、ボルト76(第一の固定部材)、固定ナット28(第二の固定部材)、蓋部18、第一の絶縁部材26及び第二の絶縁部材30)との位置関係は、正極端子22
Pの場合と同様であればよい。
【0039】
正極端子22
Pを構成する純アルミニウムは、大気中の酸素と反応する。したがって、正極端子22
Pの突出部52の端面58上にはアルミニウムの酸化皮膜が形成されている。この酸化皮膜は、純アルミニウムの酸化を抑制する機能を有するため、純アルミニウムからなる正極端子22
Pは元来耐食性に優れる。しかし、振動等による力が、正極端子22
P又は正極端子22
Pに接触する接続部材74に対して作用すると、接続部材74に対向する正極端子22
Pの表面において酸化皮膜が破壊され、純アルミニウムが露出する。仮に保護層68がない場合、純アルミニウムの自然電位は、従来のCu系材料のみからなる接続部材に比べて低いため、水又は電解質の溶液(例えば塩水)の存在下において、純アルミニウムが露出した部分を起点として正極端子22
Pが腐食する。その結果、正極端子22
Pと接続部材74との間の電気抵抗値が高くなる。
【0040】
しかし、本実施形態では、純アルミニウムとの自然電位の差が小さい亜鉛単体又は亜鉛合金からなる保護層68が、突出部52の端面58を覆っている。そして、保護層68が突出部52の端面58と接続部材74との間に介在する。つまり、保護層68が接続部材74と直接接触する。また、本実施形態では、接続部材74において正極端子22
Pと接触する部分が、Cu系材料よりも自然電位の低い錫からなる。つまり、本実施形態では、Cu系材料のみからなる接続部材74を用いる場合に比べて、接続部材74と正極端子22
Pとの間の自然電位の差が小さい。例えば、銅の自然電位は0.345V程度であり、錫の自然電位は−0.146V程度であり、純アルミニウムの自然電位は−1.337V程度である。以上の理由から、本実施形態では、保護層68がない場合、又は接続部材74がCu系材料のみからなる場合に比べて、純アルミニウムからなる正極端子22
Pの突出部52の腐食を抑制することができる。
【0041】
(正極端子の製造方法)
上記蓄電装置10が備える正極端子22
Pの製造方法は、成形工程とショットブラスト工程とを備える。
【0042】
成形工程では、例えば、基端部と、基端部から突出する突出部と、を備える成形体を作製する。成形体の基端部は、
図4及び
図5に示す正極端子22
Pの基端部50に対応する。成形体の突出部は、
図4及び
図5に示す正極端子22
Pの突出部52に対応する。成形体には、突出部の端面から基端部に向けて延びる挿入孔が形成されていてよい。成形体の挿入孔は、
図4及び
図5に示す正極端子22
Pの挿入孔62に対応する。
【0043】
成形体は、ダイカスト、押出成形、切削又はねじ切り等の加工によって作製される。加工時には成形体にバリが形成される。成形体は、純アルミニウムから作製される。純アルミニウムの硬度は、金属材料の中でも比較的低いため、成形し易い。成形体の原料である純アルミニウムは、上記の正極端子22
Pを構成する純アルミニウムと同じである。
【0044】
ショットブラスト工程では、投射材を成形体へ投射する。投射材が成形体のバリと衝突してバリが除去され、正極端子22
Pが得られる。投射材は、亜鉛単体又は亜鉛合金からなる粒子である。投射材を構成する亜鉛単体又は亜鉛合金は、上記の保護層68を構成する亜鉛単体又は亜鉛合金と同じである。
【0045】
投射材が成形体の突出部の端面に衝突すると、成形体を構成する純アルミニウムと一部の投射材との機械的合金化(メカニカルアロイニング)が起こり、投射材が成形体の突出部の端面に機械的に付着する。その結果、正極端子22
Pの突出部52の端面58に強固に密着した保護層68が形成される。ショットブラスト工程によって形成された保護層68は、正極端子22
Pの突出部52の端面58から剥離し難く、機械的耐久性に優れている。
【0046】
保護層68は、亜鉛単体又は亜鉛合金からなる。亜鉛単体又は亜鉛合金の自然電位は、従来の投射材を構成するステンレス鋼の自然電位(例えば、−0.57V程度)よりも低い。例えば、亜鉛単体の自然電位は、−0.762V程度である。一方、正極端子22
Pの突出部52を構成する純アルミニウムの自然電位は、例えば−1.337V程度である。したがって、保護層68と突出部52との間の自然電位の差は、ステンレス鋼からなる従来の投射材と突出部52との自然電位との差よりも小さい。このように、本実施形態では、正極端子22
Pとの自然電位差が小さい投射材を用いることにより、正極端子22
Pと投射材との自然電位差に起因する正極端子22
Pの腐食を抑制することができる。
【0047】
亜鉛単体又は亜鉛合金からなる投射材は導電性を有する。したがって、本実施形態では、ガラス、セラミックス又はポリカーボネイト等の絶縁性材料からなる投射材を用いる場合に比べて、投射材の付着に伴う正極端子22
Pの導電性の低下を抑制することができる。
【0048】
投射材を構成する亜鉛単体又は亜鉛合金の硬度は、ステンレス鋼、ガラス又はセラミックス等の従来の投射材よりも低く、純アルミニウムよりも低い。したがって、本実施形態では、従来の投射材を用いる場合に比べて、バリ取りに伴う成形体の表面(突出部の端面)の変形が抑制され、正極端子22
Pの表面粗さ及び表面積の増加が抑制される。正極端子の表面粗さ及び表面積の増加を抑制することにより、正極端子22
Pの耐食性が向上する。つまり、亜鉛単体又は亜鉛合金からなる投射材は柔らかく変形し易いため、柔らかい純アルミニウムからなる成形体の表面を過度に傷付けることなく、成形体の表面において保護層68を形成し易い。
【0049】
投射材のビッカース硬度は、例えば、40〜50HVであればよい。投射材のビッカース硬度は、純アルミニウムのビッカース硬度の0.3〜0.43倍であってよく、0.35〜0.38倍であってもよい。このようなビッカース硬度を有する投射材を用いた場合、バリを除去し易く、バリ取りに伴う成形体の表面の変形(粗面化)を抑制し易く、正極端子22
Pの突出部52の端面58を保護層68で被覆し易い。投射材の硬度が大きいほど、バリが除去され易く、バリ取りに伴って成形体の表面が変形し易い傾向がある。投射材の硬度が小さいほど、成形体の表面が変形し難く、バリが除去され難く、投射材が成形体の表面に残存し易い傾向がある。
【0050】
投射材の粒径は、例えば150〜750μmであってよい。投射材を成形体へ投射するための空気圧は、例えば0.1〜0.3MPaであってよい。ショットブラスト装置における投射材の噴射口と成形体との距離は、例えば50〜150mmであってよい。投射時間は、例えば5〜45秒であってよい。これらの条件下でショットブラスト工程を実施する場合、バリを除去し易く、バリ取りに伴う成形体の表面の変形(粗面化)を抑制し易く、正極端子22
Pの突出部52の端面58を保護層68で被覆し易い。
【0051】
ショットブラスト工程で得られた正極端子22
Pの突出部52の端面58(保護層68を含む面)の表面粗さRaは、1.0μm以下であってよく、0.7μm以下であってもよい。端面58の表面粗さRaが小さいほど、端面58の耐食性が向上する傾向がある。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明は以下の形態であってもよい。
【0053】
正極端子22
P又は負極端子22
Nに形成された挿入孔62と、第一の固定部材との結合形態は、ネジによる締結に限定されない。例えば、第一の固定部材が、頭部と、頭部から延びる軸部とを有し、軸部にネジ溝が切られていなくてもよい。つまり、第一の固定部材の軸の表面が平滑であってもよい。挿入孔62の内面にはネジ溝が形成されていなくてもよい。この場合、第一の固定部材の軸部が挿入孔62に圧入される。
【0054】
正極端子22
Pの突出部52又は負極端子22
Nの突出部52と、第二の固定部材との結合形態は、ネジによる締結に限定されない。例えば、突出部52の側周面54にネジ溝が形成されていなくてもよい。第二の固定部材の開口部の内面にはネジ溝が形成されていなくてもよい。つまり、第二の固定部材の開口部の内面は平滑であってもよい。この場合、突出部52が第二の固定部材の開口部に圧入される。
【0055】
正極端子は、基端部を備えず、突出部及び保護層からなる柱状の端子であってよい。この場合、蓄電装置は、ケースの外側を向く蓋部の表面に載置された接続板と、蓋部を貫通してケースの内側に突出する柱状の接続部と、を備えてよい。正極端子の一端面(保護層で覆われていない端面)は、接続板の一方の端部の表面に接してよい。つまり、正極端子は接続板の一方の端部の表面に立っていてよい。接続部の一方の端部(蓋部を貫通する端部)の端面は、接続板の他方の端部の裏面と接していてよい。正極端子の一端面(保護層で覆われていない端面)が、接続板の一方の端部に形成された貫通穴又は切欠き部に嵌合していてもよい。接続部の一方の端部が、接続板の他方の端部に形成された貫通穴又は切欠き部に嵌合していてもよい。正極端子が接続板に溶接されていてもよい。接続部が接続板に溶接されていてもよい。正極端子が接続板に接着されていてもよい。接続部が接続板に接着されていてもよい。正極端子は、接続板を介して、接続部と電気的に接続されてよい。接続部は、ケース内の正極と電気的に接続されてよい。このような正極端子、接続板、及び接続部から構成される構造体は、Z端子と呼ばれる。
【0056】
蓄電装置は、正極及び負極を備えるものであればよく、リチウムイオン二次電池に限定されない。例えば、蓄電装置は、金属リチウム二次電池、ニッケル水素二次電池、電気二重層キャパシタ、又はリチウムイオンキャパシタであってもよい。
【実施例】
【0057】
[実験例1]
純アルミニウム(JIS H4100に準拠したA1100)からなる板状の試験片を作製した。試験片の寸法は、5mm×20mm×50mmであった。試験片(純アルミニウム)のビッカース硬度は115〜130HVであった。20℃における試験片の電気抵抗率は、28.2nΩ・mであった。亜鉛単体又は亜鉛合金からなる投射材を試験片へ投射するショットブラスト工程を実施した。実験例1で用いた投射材のビッカース硬度、平均粒径、及び電気抵抗率は下記表1に示す値であった。ショットブラスト工程では、新東ブレータ社製のブラスト装置(遠心投射機)を用いた。
【0058】
ショットブラスト工程後、投射材を投射した試験片の表面(投射面)の表面粗さRaを測定した。表面粗さRaの測定は、JIS B0601の規格に準拠して行った。実験例1の試験片の表面粗さRaを下記表1に示す。
【0059】
JIS Z2371に規定された塩水噴霧試験を行い、ショットブラスト工程後の試験片の耐食性を評価した。試験では、250時間にわたり、試験片を塩水に曝した。下記式に基づき、試験片の腐蝕減量比(単位:重量%)を算出した。実験例1の試験片の腐蝕減量比を下記表1に示す。
腐蝕減量比={(W
0−W
1)/W
0}×100
上記式中、W
0は、ショットブラスト工程後であって塩水噴霧試験前の試験片の重量である。W
1は、塩水噴霧試験後の試験片の重量である。
【0060】
[実験例2]
実験例2では、亜鉛単体又は亜鉛合金からなる投射材の代わりに、下記表1に示す酸化ジルコニウム(ZrO
2)からなる投射材を用いた。投射材が異なること以外は実験例1の同様の方法で、実験例2のショットブラスト工程を行った。実験例1と同様の方法で測定した実験例2の試験片の表面粗さRaを下記表1に示す。実験例1と同様の方法で測定した実験例2の腐蝕減量比を下記表1に示す。
【0061】
[実験例3]
実験例3では、亜鉛単体又は亜鉛合金からなる投射材の代わりに、下記表1に示す酸化アルミニウム(Al
2O
3)からなる投射材を用いた。投射材が異なること以外は実験例1の同様の方法で、実験例3のショットブラスト工程を行った。実験例1と同様の方法で測定した実験例3の試験片の表面粗さRaを下記表1に示す。実験例1と同様の方法で測定した実験例3の腐蝕減量比を下記表1に示す。
【0062】
[実験例4]
実験例4では、亜鉛単体又は亜鉛合金からなる投射材の代わりに、下記表1に示すステンレス鋼(SUS430)からなる投射材を用いた。投射材が異なること以外は実験例1の同様の方法で、実験例4のショットブラスト工程を行った。実験例1と同様の方法で測定した実験例4の試験片の表面粗さRaを下記表1に示す。実験例1と同様の方法で測定した実験例4の腐蝕減量比を下記表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示すように、亜鉛単体又は亜鉛合金からなる投射材を用いた実験例1の試験片の表面粗さRa及び腐食減量比のいずれも、他の試験片よりも小さいことが確認された。
【0065】
実験例1〜3の試験片の表面粗さRa及び腐食減量比を比較することにより、試験片の表面粗さRaが小さいほど腐食減量比も小さい傾向が確認された。つまり、試験片の腐食減量比は、ショットブラスト工程後の試験片の表面粗さに依ることが確認された。
【0066】
実験例2の試験片の表面粗さは、実験例4の試験片の表面粗さと同じであった。しかし、実験例2の試験片の腐食減量比は、実験例4の試験片の腐食減量比よりも小さかった。つまり、自然電位の高いSUS430からなる投射材を用いた実験例4の試験片の腐食減量比は、実験例2の試験片よりも大きかった。このことから、試験片の腐食減量比は、ショットブラスト工程後の試験片の表面粗さのみならず、試験片の組成(試験片の自然電位)に依ることが確認された。