(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102849
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】燃料電池を用いた電源システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20170316BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20170316BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/10
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-146667(P2014-146667)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-24891(P2016-24891A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸太
(72)【発明者】
【氏名】山下 全広
(72)【発明者】
【氏名】勝間 祥行
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 健作
【審査官】
清水 康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−267397(JP,A)
【文献】
特開2013−089529(JP,A)
【文献】
特開2006−294409(JP,A)
【文献】
特開2009−245852(JP,A)
【文献】
特開平08−278042(JP,A)
【文献】
特開2009−038015(JP,A)
【文献】
特開2007−165069(JP,A)
【文献】
特開2010−262746(JP,A)
【文献】
特開2006−046237(JP,A)
【文献】
特開2014−055564(JP,A)
【文献】
特開2008−027855(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0072046(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0314660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装筐体と、該外装筐体とは異なる筐体内に収容された燃料電池システムを有する電源
システムであって、該燃料電池システムは酸化剤と燃料を用いて発電し、送風による冷却機構を有し、該冷却機構の排気口と操作部とを前記筐体の同じ面に有し、該外装筐体は1個以上の吸気口及び2個以上の排気口、及び、開閉可能な扉機構を有すると共に、以下の(A)〜(C)の構成を有することを特徴とする野外用独立電源システム。
(A)前記燃料電池システムが、酸化剤としての空気を外装筐体内から該筐体に設けられた吸気口より吸気すると共に、排出する気体を前記外装筐体のいずれかの排気口を用いて排出可能な機構を有する。
(B)前記外装筐体の扉部分に設けられた排気口の少なくとも1つが、扉を閉じた際に、前記燃料電池システムの冷却機構の排気口に重なる位置に配置されている。
(C)前記外装筐体の扉を閉じた状態で、前記燃料電池システムの冷却機構の排気が、前記外装筐体の扉部分の排気口から排出可能な機構である。
【請求項2】
前記外装筐体の扉部分の排気口の開口部の面積が、前記燃料電池システムの冷却機構の排気口の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の野外用独立電源システム。
【請求項3】
前記燃料電池が液体燃料を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の野外用独立電源システム。
【請求項4】
前記燃料電池がダイレクトメタノール燃料電池であることを特徴とする請求項3に記載の野外用独立電源システム。
【請求項5】
前記外装筐体内に、燃料カートリッジユニットが収容されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の野外用独立電源システム。
【請求項6】
屋外で用いられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の野外用独立電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムを外装筐体に収納し、独立電源として使用することができる電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料と酸化剤の電気化学反応より電気エネルギーを得るため、高効率な発電システムとして用いられている。燃料電池は、発電を行うスタック、酸化剤や燃料の供給機構、スタックなどシステムの温度を制御する温度制御機構、それらの動作を制御する制御機構などから構成されるが、システムの安定性や保護のために何らかの筐体に収容されて燃料電池システムとして使用されることが多い。また、野外に設置する場合には、風雨、煤塵などから燃料電池システムを保護するため、外装筐体内に燃料電池システムを収納することがよく行われている。
【0003】
燃料電池システムの外装筐体に関する従来の技術として、可燃性ガスの漏洩時の安全性を保つために、電力変換ユニットの吸気口が筐体の吸気口を全てを含む構造とし、筐体内の大気を換気ファンで外部に排出することで補機を削減すること(例えば、特許文献1を参照)や、外部の風が燃料電池システムへ逆流するのを防止するために、排気管にダンパーを設置すること(例えば、特許文献2を参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−032753号公報
【特許文献2】特開2008−135267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
独立した燃料電池システムとして、操作部や各種排気口が同じ面にあると、操作やメンテナンスの際の作業が一方向からのみで可能であるので作業性がよい。しかしながら、そのような燃料電池システムをより過酷な環境で用いるために、外装筐体に収容しようとすると、排気管の取り回しなどによって多くの容積を必要としたり、排気口からの排気管によって、操作やメンテナンスが阻害されるといった問題があった。
【0006】
さらに、野外の独立電源として用いる場合、できるだけコンパクトにすることが運搬性の面で好ましく、操作やメンテナンスが容易であることが操作性の面で好ましい。しかしながら、このような観点で、外装筐体を含む燃料電池電源システムを検討することは行われてこなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、燃料電池システムの保護と、外装筐体を含めたコンパクト化、及び、操作性とメンテナンス性の向上を両立するため鋭意検討を行い、開閉式の外装筐体に排気口を設け、扉を閉じた際に、外装筐体に収納した排気口と連結するようにすることで、排気管の取り回しをなくして外装筐体をコンパクト化し、かつ、開閉できる扉によって、操作及びメンテナンスに十分なスペースを確保し、さらに外装筐体によって燃料電池システムを保護できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の内容からなる。
(1)外装筐体と、該外装筐体とは異なる筐体内に収容された燃料電池システムを有する電源システムであって、該燃料電池システムは酸化剤と燃料を用いて発電し、送風による冷却機構を有し、該冷却機構の排気口と操作部とを前記筐体の同じ面に有し、該外装筐体は1個以上の吸気口及び2個以上の排気口、及び、開閉可能な扉機構を有すると共に、以下の(A)〜(C)の構成を有することを特徴とする電源システム。
(A)前記燃料電池システムが、酸化剤としての空気を外装筐体内から該筐体に設けられた吸気口より吸気すると共に、排出する気体を前記外装筐体のいずれかの排気口を用いて排出可能な機構を有する。
(B)前記外装筐体の扉部分に設けられた排気口の少なくとも1つが、扉を閉じた際に、前記燃料電池システムの冷却機構の排気口に重なる位置に配置されている。
(C)前記外装筐体の扉を閉じた状態で、前記燃料電池システムの冷却機構の排気が、前記外装筐体の扉部分の排気口から排出可能な機構である。
(2)前記外装筐体の扉部分の排気口の開口部の面積が、前記燃料電池システムの冷却機構の排気口の面積よりも小さいことを特徴とする(1)に記載の電源システム。
(3)前記燃料電池が液体燃料を用いることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電源システム。
(4)前記燃料電池がダイレクトメタノール燃料電池であることを特徴とする(3)に記載の電源システム。
(5)前記外装筐体内に、燃料カートリッジユニットが収容されてなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の電源システム。
(6)屋外で用いられることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の電源システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、野外など過酷な環境で使用する独立電源を提供することができ、例えば計測・監視用電源として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、外装筐体に収容された燃料電池システムを有する電源システムであって、該燃料電池システムは酸化剤と、燃料カートリッジユニットから供給される燃料を用いて発電し、送風による冷却機構を有し、冷却機構の排気口と操作部とが前記外装筐体の同じ面に有し、該外装筐体は1個以上の吸気口及び2個以上の排気口、及び、開閉可能な扉機構を有すると共に、以下の(A)〜(C)の構成を有する電源システムである。
(A)前記燃料電池システムが、酸化剤としての空気を外装筐体内から該筐体に設けられた吸気口より吸気すると共に、排出する気体を前記外装筐体のいずれかの排気口を用いて排出可能な機構を有する。
(B)前記外装筐体の扉部分に設けられた排気口の少なくとも1つが、扉を閉じた際に、前記燃料電池システムの冷却機構の排気口に重なる位置に配置されている。
(C)前記外装筐体の扉を閉じた状態で、前記燃料電池システムの冷却機構の排気が、前記外装筐体の扉部分の排気口から排出可能な機構である。
【0012】
前記燃料電池システムにおいて、酸化剤としては外装筐体内の大気中の酸素を用いることができる。外装筐体に設ける吸気口は、数、大きさ、形状を、燃料電池システムの要求に応じて適宜設定すればよい。吸気口は穴であってもよいが、外部からの異物の進入を防ぐために、メッシュ、フィルター、カバー、ルーバーなどを設けることが望ましい。また、外装筐体に設ける排気口は、燃料電池システムから排出されるガスを排出する排気口と、燃料電池を冷却した風を排出する別の排気口の少なくとも2つの排気口が必要である。前記、燃料電池システムから排出されるガスを排出される排気口を扉部分に設けてもよいが、作業性の面から、扉以外の部分に設けることが好ましい。燃料電池を冷却した風を排出する別の排気口は扉部分に設けられ、燃料電池システムの冷却機構からの排気口に重なる位置に設けられ、前期扉部分の排気口の面積は、前記燃料電池システムの冷却機構の排気口の面積よりも小さいと、シール材やガイド機構を設けることができ、冷却機構の排気によって外装筐体内の温度が上がりすぎるのを防ぐことができ好ましい。両者を重ならない位置に配置して、ホースやガイドで接続する方式をとることも可能であるが、その分の容積や部品が必要となる。
【0013】
本発明の電源システムにおける外装筐体は開閉可能な扉機構を有する。開閉には、ヒンジなどを用いて上下左右に開閉する機構や、分離できる扉をボルトやロック機構で固定する機構など任意の機構を用いることができる。作業性の面からはヒンジを用いた開閉機構が好ましく、中でも左右方向に開閉することが好ましい。また、上方向に開いて、風雨や日光などを遮断したり、下方向に開いて作業台とするなど、扉に別の機能を持たせることもできる。また、扉を施錠できるようにしておくと、内容物の盗難や毀損を防ぐことができ好ましい。また、扉を開いた際に、一定の位置で固定しておくようにすると、安全性や作業性の面から好ましい。
【0014】
本発明の電源システムにおける外装筐体を構成する材質は特に制限されないが、強度や可搬性の面から金属や樹脂であることが好ましい。中でも樹脂製であると比較的軽量にでき運搬において好ましい。また、樹脂を用いる場合には、難燃性を有するものが好ましく、樹脂自体が難燃であっても、難燃剤が添加されていてもよい。可搬性、耐久性などの面から、好ましい材質は難燃加工されたポリカーボネートである。前記樹脂はガラス繊維、カーボン繊維、無機粒子などを含んでいてもよい。
【0015】
本発明の電源システムにおける燃料電池システムは、前記外装筐体とは異なる筐体に収容され、酸化剤と燃料を用いて発電し、送風による冷却機構を有し、冷却機構の排気口と操作部とが前記筐体の同じ面にあるものであれば任意のものを使用することができる。冷却機構の排気口と操作部が同じ面にあると、操作やメンテナンスにおいて有利である。燃料電池を収容する筐体に特に制限はなく、金属、樹脂など任意の材質のものを用いることができる。酸化剤には、酸素を用いることが好ましく、大気中の酸素を用いることが簡便である。酸素又は空気を高圧ボンベなどから供給してもよいが、利便性、小型化の点で不利である。燃料には、酸素と反応して該燃料電池システムで使用することができる任意の燃料を用いることができる。例えば、水素、アルコール類、エーテル類などや、アルコール、エーテル類、ガス状炭化水素、及び液状炭化水素などから改質によって得られる水素などを挙げることができる。中でも、水素、メタノールが出力特性の点から好ましく、利便性の面からメタノールが好ましい。すなわち、本発明の電源システムにおける燃料電池システムは、固体高分子形燃料電池を用いることが好ましく、中でもダイレクトメタノール燃料電池を用いることが好ましい。
【0016】
冷却機構は任意の機構を用いることができるが、冷却対象にファンやブロアーで外気を送風し、熱交換によって冷却対象を冷却する機構を用いることができる。冷却対象は、燃料電池システムにおける発電セル又は発電スタックなどの発熱部分や、発電セルや発電スタックからの排気や排液が通過又は滞留する部分、及びそれらの部分に付随する熱交換器などを用いることができる。冷却に用いられ加熱された外気は、燃料電池システムの排気口から排出されるようになっていることが好ましい。
【0017】
本発明の電源システムにおける燃料電池システムは、外装筐体内の大気を取り込んで酸化剤として用いる。外装筐体外から直接取り入れると、低温時の凍結や、雨や煤塵など異物の混入などの障害を起こす可能性が高くなる。また、該燃料電池システムの発電ユニットからの排出ガスは、外装筐体外に排出する。該排出ガスは、反応生成物である水を含んでいるため、外装筐体内に排出すると、結露、さび、あるいは腐食などの原因となりうる。燃料電池システムから排出されるガスを排出する排気口は外装筐体の下部もしくは側面に設けることが好ましく、燃料電池システムから配管などを経由して外部に放出することが好ましい。
【0018】
燃料電池を冷却した風を排出する外装筐体の扉部分に設けられた排気口と、燃料電池システムの冷却機構からの排気口とは、両者が重なる位置に配置されており、該外装筐体の扉を閉じた状態で連結する。連結部分は、二つの排気口が排気方向を軸として重なりを有していればよいが、連結部分に気密部材を設けると、外装筐体内の温度上昇を防ぐことができ好ましい。気密部材は、燃料電池システム側、外装筐体側のいずれの面か、両方の面に設けられることができる。前記外装筐体の排気口は穴であってもよいが、外部からの異物の進入を防ぐために、メッシュ、フィルター、カバー、ルーバーなどを設けることが望ましい。
【0019】
本発明の電源システムにおいて、燃料電池システムの燃料カートリッジユニットは、任意の場所に収容することができるが、該外装筐体内に収容するとよりコンパクトになり好ましい。また、前記外装筐体は、燃料電池システムからの外部に電力を供給するため、配線コードを通すための貫通穴や、機器装置類の電源として接続端子やプラグを設けることができる。接続端子やプラグは防水であると好ましい。燃料電池システムからの電力は、機器装置類に直接供給してもよいし、鉛バッテリー、リチウムイオン二次電池、ニッカド二次電池、ニッケル水素二次電池などの蓄電池を並列に接続して供給と蓄電を同時に行ってもよい。
【実施例】
【0020】
本発明の実施形態の例として、本発明の電源システムの概略図を
図1に、本発明の電源システムの機器構成を示す図を
図2にそれぞれ示す。
【0021】
燃料電池システム3は、接続された燃料カートリッジユニット6から燃料を供給される。燃料電池システム3の操作は、操作部8で行う。燃料電池システム3は、外装筐体1内から取り込んだ外気と燃料を発電ユニットに供給して発電を行う。発電ユニットからの排気は配管9を介して外部に排出される。燃料電池の冷却機構からの排気口7は、外装筐体の扉4が閉じた際に、外装筐体の排気口5と接続して、燃料電池システム3からの排気を外部に排出する。外装筐体外の外気は、吸気口2を通じて外装筐体内に導入される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の電源システムは、燃料電池システムの保護と、外装筐体を含めたコンパクト化、及び、操作性とメンテナンス性の向上を両立することができ、屋外で使用する独立電源システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1:外装筐体の本体
2:外装筐体に設けた吸気口
3:燃料電池システム
4:外装筐体の扉
5:燃料電池システムの冷却機構の排気口からの排気を排出する外装筐体の扉に設けた排気口
6:燃料カートリッジユニット
7:燃料電池システムの冷却機構の排気口
8:燃料電池システムの操作部
9:燃料電池システムの発電ユニットからの外装筐体の排気口を接続する配管
10:燃料電池システムにおける冷却機構
11:燃料電池システムにおける発電ユニット