特許第6102906号(P6102906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102906
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】パンツ型の使い捨ておむつの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20170316BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   A61F13/496
   A61F13/15 311Z
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-264238(P2014-264238)
(22)【出願日】2014年12月26日
(62)【分割の表示】特願2013-165477(P2013-165477)の分割
【原出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-83210(P2015-83210A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】越智 守
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−146419(JP,A)
【文献】 特開2001−029386(JP,A)
【文献】 特開2009−190240(JP,A)
【文献】 特開2002−339146(JP,A)
【文献】 特開2004−136068(JP,A)
【文献】 特開2004−254861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と,後身頃と,前記前身頃と後身頃の間に位置する股下域を有し,
前記前身頃と前記後身頃は,使い捨ておむつの幅方向の両端部分に設けられたサイドシール部(4)において,相対する端部が接合され,
前記前身頃及び前記後身頃は,
前記サイドシール部(4)が前記幅方向の両端部分に形成された本体領域(11,21)と,
前記本体領域(11,21)から前記股下域の方向に向かって延出し,前記幅方向における幅が前記股下域の方向に向かうにつれて漸次狭くなる形状の延出領域(12,22)と,を有し,
前記本体領域(11,21)には,一又は複数の第1伸縮部材(13,23)が,前記幅方向に沿った伸長状態で配置されており,
前記延出領域(12,22)には,一又は複数の第2伸縮部材(14,24)が,前記幅方向に沿った伸長状態で配置されている,
パンツ型の使い捨ておむつの製造方法であって,
前記第2伸縮部材(14,24)を脱脂する脱脂工程と,
前記脱脂工程の後に,前記第2伸縮部材(14,24)に接着剤を塗布して,前記第2伸縮部材(14,24)を前記延出領域(12,22)に相当する領域に接合する接合工程と,を含み,
前記第1伸縮部材(13,23)は,油剤付着量が5重量%以上である
使い捨ておむつの製造方法。
【請求項2】
前記脱脂工程は,前記第2伸縮部材(14,24)の油剤付着量を0.1重量%以下にする工程である
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記脱脂工程は,予め油剤が付着していた前記第2伸縮部材(14,24)を脱脂する工程である
請求項2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,着用者の股下に装着され,尿などの液体を吸収し保持するための使い捨ておむつに関する。具体的に説明すると,本発明の使い捨ておむつは,おむつの腹周りに配置される弾性伸縮部材の一部に,実質的に油剤が付着されていないものを用いることを特徴としている。
【背景技術】
【0002】
従来から,着用者の腹部に接する前身頃と,着用者の背部に接する後身頃と,これらの間に位置する股下域とに区分されるパンツ型の使い捨ておむつが知られている。パンツ型の使い捨ておむつは,股下域を中心として,前身頃から後身頃にかけて吸収性本体が配置される。吸収性本体は,一般的に,トップシートと,バックシートと,これらのシート間に介在する吸収体を含む。一般的な使い捨ておむつにおいて,吸収体は,着用者の肌に接する表面側から液透過性材料で形成されたトップシートにより被覆され,反対の裏面側から液不透過性材料で形成されたバックシートにより被覆されている。このため,例えば着用者が排泄した体液は,トップシートを透過して,吸収体により吸収され,バックシートによって外側への漏出が防止されるようになっている。
【0003】
また,パンツ型の使い捨ておむつとしては,吸収性本体を保持するための外装体が,前身頃から後身頃にかけて一連に繋がったタイプのものや,この外装体が前身頃と後身頃で分離したタイプのものが知られている。パンツ型の使い捨ておむつにおいて,前身頃と後身頃は,使い捨ておむつの幅方向の両端部分に設けられたサイドシール部によって相対する端部が接合される。
【0004】
ここで,より具体的に,外装体が前身頃と後身頃で分離したタイプのパンツ型使い捨ておむつを例に挙げて説明する。例えば,パンツ型の使い捨ておむつとして,吸収性本体と,この吸収性本体を着用者の腰周りに保持するための前身頃外装体と後身頃外装体とが,それぞれ分離して形成されたタイプの使い捨ておむつ(いわゆる架橋型の使い捨ておむつ)が知られている(例えば特許文献1)。架橋型の使い捨ておむつでは,吸収性本体の長さ方向の一端側が前身頃外装体に固定され,吸収性本体の長さ方向の他端側が後身頃外装体に固定される。このため,吸収性本体は,前身頃外装体と後身頃外装体との間に,架橋されるような構造となる。そして,吸収性本体が架橋された状態で,前身頃外装体と後身頃外装体を,その両側縁部に設けられたサイドシール部において接合することにより,パンツ型の使い捨ておむつが形成される。着用者は,パンツ型に形成された使い捨ておむつに,両脚部を挿入することにより,着用することができるようになっている。このような架橋型の使い捨ておむつは,脚部周りの開口部が広く開放されているため,着用者は,使い捨ておむつを装着した状態であっても,両脚部を比較的自由に動かすことができるという利点がある。
【0005】
また,パンツ型使い捨ておむつの前身頃と後身頃には,一般的に,腹周りや腰周りに沿って,複数の弾性伸縮部材が伸長状態で固定される。この弾性伸縮部材が収縮することにより,使い捨ておむつの腹周りや腰周りにギャザーが形成されるため,使い捨ておむつのフィット性が向上する。この使い捨ておむつには,様々な種類の弾性伸縮部材を取り付けることが可能であるが,例えば,弾性伸縮部材の一例として,特許文献2や特許文献3に記載されたものが知られている。
【0006】
また,パンツ型使い捨ておむつの前身頃と後身頃には,一般的に,幅方向の両側にサイドシール部が形成された本体領域と,この本体領域よりも股下域側に延出した延出領域が存在している(特許文献1参照)。そして,本体領域と延出領域には,それぞれ,複数の弾性伸縮部材が伸長状態で固定される。例えば,弾性伸縮部材は,使い捨ておむつの腹周りを構成する二枚のシート部材の間に挟み込んで固定されている。このように,前身頃と後身頃において,本体領域と延出領域のそれぞれに弾性伸縮部材を固定しておくことで,これらの外装体と着用者の身体との密着性が高まり,尿漏れを効果的に防止することができたり,着用時おけるおむつの見栄えを良化することができるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−123447号公報
【特許文献2】特開平10−152264号公報
【特許文献3】特開2000−289931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,前身頃と後身頃に固定された弾性伸縮部材のうち,延出領域に固定された弾性伸縮部材は,本体領域に固定された弾性伸縮部材と比較して,使い捨ておむつの着用時や製造段階において,おむつを構成するシート部材から外れやすいという問題が明らかになった。
【0009】
すなわち,前身頃と後身頃のうちの本体領域には,幅方向の左右両側にサイドシール部が形成されている。また,本体領域に配置された弾性伸縮部材は,一般的に,使い捨ておむつの製造工程における最終段階まで切断されずに繋がったままとなっていることが多い。このため,本体領域に固定された弾性伸縮部材は,サイドシール部における接合の影響などによって,比較的,外れ難いものであると考えられる。これに対し,前身頃と後身頃の延出領域には,幅方向の左右両側に,サイドシール部が存在しない。このため,延出領域においては,本体領域と比較し,弾性伸縮部材とシート部材の接合強度が比較的弱くなっている。従って,延出領域に固定された弾性伸縮部材は,おむつの着用時や製造段階において,自身の収縮力などの影響を受けて,シート部材から徐々に剥がれていき,最終的には,完全にシート部材から外れてしまうという事例が存在していた。つまり,延出領域において,弾性伸縮部材がおむつを構成するシート部材の間から抜けてしまうと,もともと弾性伸縮部材が固着されることで形成されていたギャザーが機能しなくなる事態が生じる。このように,前身頃と後身頃の延出領域において弾性伸縮部材が外れてしまうと,この延出領域が着用者の身体に密着しなくなり,ヒラヒラとした状態となって,おむつの見栄えが悪くなるという問題が発生していた。
【0010】
このため,現在では,特に前身頃と後身頃の延出領域において,弾性伸縮部材が抜け易くなっている原因を突き止め,これを改善することのできる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで,本発明の発明者は,上記の従来発明が有する問題の原因を究明するために,試行錯誤を繰り返した結果,弾性伸縮部材に付着している油剤が,その弾性伸縮部材とシート部材の接合強度を弱める不具合の一因となっていることをつきとめた。すなわち,本発明者は,前身頃と後身頃の延出領域に固着させる弾性伸縮部材に,油剤が実質的に付着していないものを用いることにより,弾性伸縮部材とシート部材の接合強度が予想以上に高まり,弾性伸縮部材の抜けを防止できるという知見を得た。
【0012】
詳しく説明すると,特許文献2や特許文献3に記載されているように,一般的な弾性伸縮部材は,使い捨ておむつに取り付けられる前の段階においては,長さ方向に連続した状態で固定部材などに巻き付けられた捲糸体となっている。このように,一般的な弾性伸縮部材は,捲糸体の状態で伸縮部材の製造メーカから使い捨ておむつの製造メーカへと納品される。そして,使い捨ておむつの製造工程においては,この捲糸体から必要な長さの弾性伸縮部材を引き出して,所定の伸長率となるまで引き延ばしつつ,引き延ばした弾性伸縮部材に対してホットメルト接着剤等を塗布する。その後,この接着剤が塗布された弾性伸縮部材を,おむつを構成するシート部材に固着させ,必要な長さに切断する。このようにして,おむつの製造工程では,弾性伸縮部材を使い捨ておむつに取り付けることとしている。
【0013】
ここで,特許文献2や特許文献3に記載されているように,一般的な弾性伸縮部材には,その表面に,油剤が所定量塗布されている。弾性伸縮部材に塗布される油剤は,仕上げ油剤とも呼ばれる。弾性伸縮部材の製造段階においては,この仕上げ油剤を弾性伸縮部材の表面に付着させた後に,固定部材などによって巻取り捲糸体を形成する。このように,弾性伸縮部材に油剤を付着させておくことにより,使い捨ておむつの製造工程において,捲糸体から弾性伸縮部材を引き出す際に,弾性伸縮部材が絡まることを防止できるとされている。
【0014】
しかしながら,この弾性伸縮部材に付着されている油剤が,弾性伸縮部材とホットメルト接着剤の接着強度を劣化させる原因となっていることが判明した。すなわち,表面に油剤が付着していると,弾性伸縮部材の表面にホットメルト接着剤が残留しにくくなり,結果として,弾性伸縮部材とおむつのシート部材との接合強度が低下する。そこで,本発明では,特に弾性伸縮部材が抜け易いとされている前身頃と後身頃の延出領域においては,あえて,油剤が実質的に付着されていない弾性伸縮部材を利用する。これにより,前身頃と後身頃の延出領域において,シート部材と弾性伸縮部材の接合強度が高まるため,この弾性伸縮部材の抜けを防止できる。そして,本発明者は,このような知見に基づけば,従来技術の問題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。
具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0015】
本発明は,いわゆるパンツ型の使い捨ておむつに関する。
すなわち,本発明の使い捨ておむつは,着用者の腹部に接する前身頃と,着用者の背部に接する後身頃と,前身頃と後身頃の間に位置する股下域を有する。そして,前身頃と後身頃は,使い捨ておむつの幅方向の両端部分に設けられたサイドシール部4において,相対する端部が接合される。
ここで,前身頃及び後身頃は,は,それぞれ,本体領域11,21と延出領域12,22を有している。本体領域11,21は,サイドシール部4が幅方向の両端部分に形成された領域である。また,延出領域12,22は,本体領域11,21から股下域の方向に向かって延出し,幅方向における幅が股下域の方向に向かうにつれて漸次狭くなる形状の領域である。
また,本体領域11,21には,一又は複数の第1伸縮部材13,23が,幅方向に沿った伸長状態で配置されている。また,延出領域12,22には,一又は複数の第2伸縮部材14,24が,幅方向に沿った伸長状態で配置されている。
そして,第2伸縮部材14,24は,油剤付着量が,0.1重量%以下となっている。
【0016】
上記構成のように,本発明において,前身頃と後身頃の延出領域12,22に配置される第2伸縮部材14,24には,実質的に油剤が付着していない。最も好ましくは,第2伸縮部材14,24の油剤付着量は0重量%である。このように,あえて,第2伸縮部材14,24に油剤が付着していないものを用いることで,第2伸縮部材14,24とおむつを構成するシート部材との接合強度を高め,第2伸縮部材14,24が,シート部材から外れることを防止することができる。
【0017】
本発明の使い捨ておむつにおいて,第2伸縮部材14,24は,油剤を付着する工程を経ずに製造されたものであることが好ましい。なお,ここにいう「油剤を付着する工程」とは,油剤を弾性伸縮部材に内添させる工程と,油剤を弾性伸縮部材に外添させる工程の両方を含む。すなわち,第2伸縮部材14,24は,内添であるか外添であるかを問わず,油剤が付着されたものではないことが好ましい。
【0018】
上記構成のように,本発明においては,油剤を付着する工程を経ずに製造された弾性伸縮部材を,第2伸縮部材14,24として利用することが好ましい。このように,油剤が付着している弾性伸縮部材を積極的に排除し,実質的に油剤が付着していない弾性伸縮部材を第2伸縮部材14,24として用いることで,本発明の効果がより高まる。
【0019】
本発明の使い捨ておむつにおいて,第2伸縮部材14,24は,第1伸縮部材13,23よりも太いものであることが好ましい。言い換えると,第2伸縮部材14,24は,第1伸縮部材13,23よりも,その断面積が大きいものであることが好ましい。
【0020】
上記構成のように,第2伸縮部材14,24として,第1伸縮部材13,23よりも太い弾性伸縮部材を採用することで,第2伸縮部材14,24の表面積が比較的大きくなる。第2伸縮部材14,24の表面積が大きくなると,ホットメルトなどの接着剤が付着する量が増える。このため,第2伸縮部材14,24と,おむつを構成するシート部材の接合強度が向上し,結果として,第2伸縮部材14,24が抜けにくくなる。
【0021】
本発明の使い捨ておむつにおいて,第2伸縮部材14,24は,第1伸縮部材13,23よりも,伸長率が低いものであることが好ましい。
【0022】
上記構成のように,第2伸縮部材14,24を延出領域12,22に配置するときの伸長率を,第1伸縮部材13,23を本体領域11,21に配置するときの伸長率よりも低くすることで,第2伸縮部材14,24とシート部材の接合強度が比較的高くなる。これにより,第2伸縮部材14,24の抜けが防止される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば,前身頃と後身頃の延出領域において,弾性伸縮部材が抜け易くなるという問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は,使い捨ておむつの外観を示す斜視図である。
図2図2は,使い捨ておむつの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
ここで,本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
また,本願明細書において,使い捨ておむつや吸収性本体の「長さ方向」というときは,基本的に,前身頃側と後身頃側を結ぶ方向(図2における上下方向)を意味し,「幅方向」というときは,基本的に,長さ方向に直交する方向(図2における左右方向)を意味する。
【0026】
本願明細書では,吸収性本体を保持するための外装体が,前身頃と後身頃で分離したタイプのパンツ型使い捨ておむつを例に挙げて,本発明の内容を詳しく説明する。ただし,本発明の使い捨ておむつは,前身頃の外装体と後身頃の外装体が分離したタイプに限定されず,外装体が前身頃から後身頃にかけて一連に繋がったタイプにも適用することが可能である。
【0027】
図1は,使い捨ておむつ100の例を示す概略図であり,使い捨ておむつ100を前身頃外装体1側からみた状態を示している。図2は,図1に示された使い捨ておむつ100の展開図であり,使い捨ておむつ100を,着用者の肌に接する面(肌対向面)からみた状態を示している。なお,図2においては,各所に配置された弾性伸縮部材の位置関係を示すため,使い捨ておむつを構成する各種シート材を透過的に描画している。
【0028】
図1及び図2に示されるように,使い捨ておむつ100は,前身頃外装体1と,後身頃外装体2と,吸収性本体3を有している。前身頃外装体1は,装着時において着用者の腹部に接触する前身頃を構成し,後身頃外装体2は,装着時において着用者の背部に接触する後身頃を構成する。前身頃外装体1と後身頃外装体2は,互いに分離している。前身頃外装体1と後身頃外装体2は,それぞれ個別に形成されたものであってもよいし,一体的に形成されたものが後に分離したものであってもよい。吸収性本体3は,その長さ方向の一端部側が前身頃外装体1に固定され,他端部側が後身頃外装体2に固定される。このため,本発明では,吸収性本体3は,股下域が前身頃外装体1と後身頃外装体2のいずれにも固定されない。このように,吸収性本体3は,前身頃外装体1と後身頃外装体の間に架橋された状態となっている。吸収性本体3を,前身頃外装体1と後身頃外装体2に固定する手段は,公知の方法を用いることができ,例えば,ホットメルト接着剤やその他流動性のある接着剤を用いた固定方法に固定することとしてもよいし,ヒートシールのような熱溶着や超音波溶着により固定することとしてもよい。
【0029】
また,図1に示されるように,前身頃外装体1と後身頃外装体2は,互いに幅方向両側縁に位置するサイドシール部4において接合されることにより,前身頃外装体1及び後身頃外装体2が環状に繋がる。このため,図1に示されるように,装着時に着用者の腰周りに位置する腰周り開口部5と,装着時に着用者の脚部周りに位置する脚部周り開口部6が形成される。このようにして,パンツ型の使い捨ておむつ100が形成される。着用者は,その腹部が前身頃外装体1に接触し,背部が後身頃外装体2に接触するようにして,腰周り開口部5からに両脚部を入れ,それぞれの脚部を脚部周り開口部6から出すことで,架橋型の使い捨ておむつ100を装着することができる。
【0030】
前身頃外装体1及び後身頃外装体2は,着用者の腹部及び背部に接触するとともに,使い捨ておむつ100の着用時において,前身頃外装体1及び後身頃外装体2の間に位置する吸収性本体3を,吊持するための部材である。
【0031】
前身頃外装体1と後身頃外装体2は,おむつの幅方向の左右両側縁部に,一対のサイドシール部4を有している。前身頃外装体1と後身頃外装体2は,おむつの幅方向の左右両側縁部を互いに重ね合わせた状態で,一対のサイドシール部4において接合される。この一対のサイドシール部4は,おむつの長さ方向に延びて直線的に形成される。サイドシール部4において,前身頃外装体1と後身頃外装体2は,例えば,熱エンボス溶着や超音波エンボス溶着のような公知の接合手段により接合される。
【0032】
図2に示されるように,前身頃外装体1及び後身頃外装体2において,左右一対のサイドシール部4が存在する箇所から,おむつ幅方向に亘る領域が,本体領域11,21となる。符号11は,前身頃外装体1の本体領域(前側本体領域)を示し,符号21は,後身頃外装体2の本体領域(後側本体領域)を示している。図2に示されるように,本体領域11,21は,おむつ幅方向の左右両端部分にサイドシール部4を有し,この一対のサイドシールサイドの間に位置する矩形の領域である。
【0033】
また,図2に示されるように,前身頃外装体1及び後身頃外装体2において,本体領域11,21から股下域3aの方向に向かって延出した領域が,延出領域12,22となる。符号12は,前身頃外装体1の延出領域(前側延出領域)を示し,符号22は,後身頃外装体2の延出領域(後側延出領域)を示している。図2に示されるように,延出領域12,22は,本体領域11,21よりもおむつ幅方向における幅が狭くなっており,また延出領域12,22の幅は股下域3aが存在する方向に向かうにつれて漸次狭くなる。
【0034】
具体的に説明すると,図2の展開図に示されるように,前身頃外装体1は,腰周り端となる辺である長辺1aと,一対のサイドシール部4が形成された一対の両側辺1bと,長辺1aと略平行に形成され吸収性本体3が固定される辺である短辺1cと,短辺1cの両端と一対の両側辺1bとを結ぶ一対の斜辺1dを有する形状となっている。この場合に,一対の両側辺1bの一端同士を長辺1aで結び,一対の両側辺1bの他端同士を仮想の線で結んだ場合に画定される略矩形状の領域が,前身頃外装体1の前側本体領域11となる。他方,一対の斜辺1dの一端同士を短辺1cで結び,一対の斜辺1dの他端同士を仮想の線で結んだ場合に画定される略台形状の領域が,前身頃外装体1の前側延出領域12となる。
【0035】
また,後身頃外装体2についても同様に,腰周り端となる辺である長辺2aと,一対のサイドシール部4が形成された一対の両側辺2bと,長辺2aと略平行に形成され吸収性本体3が固定される辺である短辺2cと,一対の両側辺2bと短辺2cを結ぶ一対の斜辺2dを有する形状となっている。この場合に,一対の両側辺2bの一端同士を長辺2aで結び,一対の両側辺2bの他端同士を仮想の線で結んだ場合に,画定される略矩形状の領域が,後身頃外装体2の後側本体領域21となる。他方,一対の斜辺2dの一端同士を短辺2cで結び,一対の斜辺2dの他端同士を仮想の線で結んだ場合に,画定される略台形状の領域が,後身頃外装体2の後側延出領域22となる。
【0036】
また,図2に示されるように,後身頃外装体2の後側延出領域22は,前身頃外装体1の前側延出領域12よりも,股下域3aの方向に長く延出している。例えば,後側延出領域22の長さ方向における長さは,前側延出領域12の長さを100%とした場合に,120%〜250%,又は150%〜200%であることが好ましい。このため,後身頃外装体2の後側延出領域22の面積が,前身頃外装体1の前側延出領域12の面積よりも,大きくなっている。このような形状とすることで,後身頃外装体2の後側延出領域22によって,着用者の臀部を適切に覆うことができる。他方,前身頃外装体1については,一対の斜辺1dの傾斜が後身頃外装体2における一対の斜辺2dの傾斜よりも緩やかになるため,前身頃外装体1と後身頃外装体2を接合した場合であっても,脚部周り開口部6は,前身頃外装体1側の方が比較的広く開けることとなり,着用者が両脚部を動かし易くなる。
【0037】
前身頃外装体1及び後身頃外装体2には,それぞれ,複数の弾性伸縮部材が,伸長状態で配置される。例えば,弾性伸縮部材には,ホットメルト接着剤などの流動性のある接着剤が直接塗布される。その後,接着剤が塗布された弾性伸縮部材は,肌対向面側に位置するインナーシート15,25と,肌非対向面側に位置するアウターシート16,26などのシート部材の間に挟まれた状態で接着される。これらの弾性伸縮部材は,前身頃外装体1及び後身頃外装体2の腰周りや腹周りにギャザーを形成するための部材である。ギャザーとは,インナーシート15,25とアウターシート16,26の間に伸長状態で挟持された複数本の弾性伸縮部材が収縮することにより,インナーシート15,25やアウターシート16,26に襞が生じて形成されたものである。ギャザーを形成することで,前身頃外装体1及び後身頃外装体2の柔軟性や密着性を高めることができる。
【0038】
図2に示されるように,前身頃外装体1と後身頃外装体2の本体領域11,21には,それぞれ,複数本の第1伸縮部材13,23が固定されている。符号13は,前身頃外装体1の前側本体領域11に配置された第1伸縮部材(前側第1伸縮部材)を示し,符号23は,後身頃外装体2の後側本体領域21に配置された第1伸縮部材(後側第1伸縮部材)を示している。
【0039】
また,前身頃外装体1と後身頃外装体2の延出領域12,22には,それぞれ,複数本の第2伸縮部材14,24が固定されている。符号14は,前身頃外装体1の前側延出領域12に配置された第2伸縮部材(前側第2伸縮部材)を示し,符号24は,後身頃外装体2の後側延出領域22に配置された第2伸縮部材(後側第2伸縮部材)を示している。
【0040】
図2に示されるように,これらの第1伸縮部材13,23及び第2伸縮部材14,24は,前身頃外装体1及び後身頃外装体2の幅方向にわたって伸長状態で配置され,おむつの長さ方向に間隔をおいて設けられている。図2に示されるように,複数本の第1伸縮部材13,23及び第2伸縮部材14,24は,実質的に平行に配設されていることが好ましい。例えば,各伸縮部材13,14,23,24の長さ方向における間隔は,1mm〜15mm,又は2mm〜10mm,又は3mm〜5mmとすればよい。
【0041】
前側第1伸縮部材13,前側第2伸縮部材14,後側第1伸縮部材23,及び後側第2伸縮部材24は,それぞれ,それが配置される本体領域11,21と延出領域12,22の面積などに応じて,適宜必要な本数設けることができる。例えば,前側本体領域11に配置される前側第1伸縮部材13の本数は,15本〜30本,又は20本〜25本であることが好ましい。また,前側延出領域12に配置される前側第2伸縮部材14の本数は,1〜10本,又は3本〜7本であることが好ましい。また,後側本体領域21に配置される後側第1伸縮部材23の本数は,15本〜30本,又は20本〜25本であることが好ましい。また,後側延出領域22に配置される後側第2伸縮部材24の本数は,2〜15本,又は5本〜10本であることが好ましい。
【0042】
また,図2に示されるように,各弾性伸縮部材は,吸収性本体3と重なる領域において,間欠的に切断され,伸縮性が発現しないようにされていてもよい。すなわち,図2に示した例では,第1伸縮部材13,23及び第2伸縮部材14,24のうち,吸収性本体3の吸収体31と重なるものは,当該重なる領域において間欠的に切断され,幅方向左右両側にのみ配置されている。
【0043】
ここで,本発明において,第1伸縮部材13,23及び第2伸縮部材14,24には,糸状弾性ゴムを好適に用いることができる。このようなゴム材としては,スチレン系ゴム,オレフィン系ゴム,ウレタン系ゴム,エステル系ゴム,ポリウレタン,ポリエチレン,ポリスチレン,スチレンブタジエン,シリコーン,ポリエステル等の素材を用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく,この熱可塑性エラストマーとしては,例えばスチレン系エラストマー,オレフィン系エラストマー,ポリブタジエン系エラストマー,ポリエステル系エラストマー,ポリアミド系エラストマー,ウレタン系エラストマー,塩化ビニル系エラストマー,フッ素系エラストマー,アイオノマー樹脂,シリコーン系樹脂等の公知の種々のものを用いることができる。なお,これらの熱可塑性エラストマーは単独で用いてもよいし,2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
ここで,本発明において,前身頃外装体1と後身頃外装体2の延出領域12,22に固定される第2伸縮部材14,24としては,実質的に,油剤が付着していない弾性伸縮部材が用いられる。油剤は,仕上げ油剤とも呼ばれる。仕上げ油剤は,弾性伸縮部材が絡まることを防止するために,一般的な弾性伸縮部材には所定量付着しているものである。本発明では,あえて,第2伸縮部材14,24に油剤が付着していないものを利用することとしている
【0045】
すなわち,弾性伸縮部材をシート部材に固定する際には,まず弾性伸縮部材を所定の伸長率となるまで伸長させた後,ホットメルト接着剤などの接着剤を弾性伸縮部材に直接塗布する。そしてその後,接着剤が塗布された弾性伸縮部材を,シート部材に接着する。このとき,弾性伸縮部材の表面に油剤が付着していると,この油剤がホットメルト接着剤を撥ねてしまい,弾性伸縮部材の表面にホットメルト接着剤が十分に残留しないことが判明した。このように,弾性伸縮部材にホットメルト接着剤が付着しにくくなると,弾性伸縮部材とシート部材の接合力が低下する。特に,前身頃外装体1と後身頃外装体2のうちの延出領域12,22においては,幅方向の左右両端にサイドシール部4が存在していない。このため,この延出領域12,22に配置される第2伸縮部材14,24は,特にシート部材との接合力が弱くなっている。従って,使い捨ておむつの製造段階や使い捨ておむつの装着時において,第2伸縮部材14,24とシート部材との接合が剥がれてしまい,第2伸縮部材14,24の収縮力が,シート部材に適切に伝わらないという問題が生じていた。そこで,シート部材から抜けやすいとされている第2伸縮部材14,24については,油剤が付着していない弾性伸縮部材を利用し,第2伸縮部材14,24の表面に多くのホットメルト接着剤を残留させ,第2伸縮部材14,24とシート部材の接合力を高めることとしている。
【0046】
油剤は,液体油である。油剤の例は,シリコーン油,鉱物油,ステアリン酸マグネシウム,及びこれらの混合油である。油剤7の成分としては,例えば,流動パラフィン,シリコーンオイル,動植物油(オリーブ油,ホホバ油,ベニバナ油,スクワラン及びスクワレン等),モノ,ジ,トリグリセライド,脂肪族エーテル(ミリスチル−1,3−ジメチルブチルエーテル,パルミチル−1,3−ジメチルビチルエーテル,ステアリル−1,3−ジメチルブチルエーテル,パルミチル−1,3−メチルプロピルエーテル及びステアリル−1,3−メチルプロピルエーテル等),及びイソステアリル−コレステロールエステル等を挙げることができる。油剤の塗布方法としては,例えば,スロットコーティング,ダイコーティング,ビード状コーティング,スパイラルコーティング,及びグラビアコーティング等の塗布方法を挙げることができる。本発明において,第2伸縮部材14,24には,上記油剤が付着していない。
【0047】
ここで,第2伸縮部材14,24として利用される「実質的に油剤が付着していない弾性伸縮部材」とは,例えば,油剤付着量が0.1重量%以下の弾性伸縮部材を意味する。油剤付着量は,0.1重量%以下であることが好ましく,0.01重量%以下であることがより好ましく,0.001重量%以下であることが特に好ましい。第2伸縮部材14,24として利用される弾性伸縮部材は,油剤付着量が0.000重量%〜0.100重量%,0.001重量%〜0.050重量%,又は0.005重量%〜0.010重量%のものである。本発明の趣旨からすると,第2伸縮部材14,24は,油剤を付着する工程を経ずに製造されたものであることが好ましい。すなわち,第2伸縮部材14,24には,積極的に油剤を付着させたものではない弾性伸縮部材を用いることが好ましい。ここにいう「油剤を付着する工程」とは,油剤を弾性伸縮部材に内添させる工程と,油剤を弾性伸縮部材に外添させる工程の両方を含む。このため,第2伸縮部材14,24は,内添であるか外添であるかを問わず,油剤が付着されたものではないことが好ましい。この場合,第2伸縮部材14,24の油剤付着量はゼロとなる。ただし,弾性伸縮部材14,24には,0.01重量%以下の極めて微量の油剤を付着させることとしてもよい。
【0048】
例えば,弾性伸縮部材14,24に油剤を付着させる処理を行った場合,その油剤付着量は次の手順で測定することができる。すなわち,油剤付着量は,油剤を付着させた試料(弾性伸縮部材)と,油剤を付着させていない試料(弾性伸縮部材)をそれぞれ各5g用意し,これらの試料を石油エーテル130mlにて,ソックスレー抽出器で2時間抽出し,40分風乾後,105℃熱風乾燥機中90分乾燥し,デシケーター中で30分冷却後,重量測定し,以下の式より求める。
【0049】
他方,前身頃外装体1と後身頃外装体2の本体領域11,21に固定される第1伸縮部材13,23としては,油剤が付着している弾性伸縮部材を用いてもよい。また,第1伸縮部材13,23としては,第2伸縮部材14,24と同様に,実質的に油剤が付着していない弾性伸縮部材を用いてもよい。本発明においては,使い捨ておむつの製造工程においける弾性伸縮部材の加工性を向上させるため,第1伸縮部材13,23としては,油剤が付着している弾性伸縮部材を用いることが好ましい。第1伸縮部材13,23の油剤付着量は,例えば,0.1重量%〜20重量%,1重量%〜15重量%,又は5重量%〜10重量%であることが好ましい。
【0050】
また,本発明において,第1伸縮部材13,23と第2伸縮部材14,24を比較したときに,第2伸縮部材14,24は,第1伸縮部材13,23よりも太いものであることが好ましい。例えば,第2伸縮部材14,24は,620dtex以上の繊度を有するものであることが好ましく,この場合に,第1伸縮部材13,23は,470dtex以下の繊度を有するものであることが好ましい。例えば,第2伸縮部材14,24の繊度は,第1伸縮部材13,23の繊度に対し,110%〜200%,又は120%〜150%の値であることが好ましい。このように,油剤が付着していない第2伸縮部材14,24について,その繊度を太くすることで,ホットメルト接着剤が付着する表面積を大きくすることができる。これにより,第2伸縮部材14,24と接着剤の接着強度がさらに向上する。
【0051】
また,本発明において,第1伸縮部材13,23と第2伸縮部材14,24を比較したときに,第2伸縮部材14,24を延出領域12,22に固定するときの伸長率(ドラフト率)は,第1伸縮部材13,23を本体領域11,21に固定するときの伸長率(ドラフト率)よりも低いものであることが好ましい。例えば,第1伸縮部材13,23の伸長率は,250%〜500%,300%〜400%,又は330%〜350%であることが好ましい。これに対し,第2伸縮部材14,24の伸長率は,200%〜450%,250%〜350%,又は280%〜300%であることが好ましい。例えば,第2伸縮部材14,24の伸長率は,第1伸縮部材13,23の伸長率に対し,50%〜90%,70%〜85%の値であることが好ましい。なお,伸長率とは,弾性伸縮部材が収縮した状態にあるときの長さと,弾性伸縮部材が伸長した状態にあるときの長さの割合である。すなわち,10cmの弾性伸縮部材を20cmまで伸長したときの伸長率は,200%となる。このように,第2伸縮部材14,24の伸長率を比較的低く設定することで,第2伸縮部材14,24とシート部材の接合強度が比較的高くなる。これにより,第2伸縮部材14,24の抜けが防止される。
【0052】
また,本発明において,延出領域12,22に配置される第2伸縮部材14,24については,ホットメルト接着剤等を塗布する工程の前に,脱脂する工程を経た弾性伸縮部材を用いることとしてもよい。弾性伸縮部材を脱脂する場合,この弾性伸縮部材には,脱脂工程の前に油剤を付着させることとしてもよいし,油剤を付着させなくてもよい。好ましくは,油剤を付着させずに製造された弾性伸縮部材を,脱脂した後に,ホットメルト接着剤を塗布して,シート部材の間に挟み固定する。このように,脱脂工程を経た弾性伸縮部材を第2伸縮部材14,24として利用することで,第2伸縮部材14,24とホットメルト接着剤の接着力が向上する。脱脂工程とは,弾性伸縮部材の表面に接着剤を塗工する前に,弾性伸縮部材の表面の油分を取り除く表面処理である。脱脂工程としては,例えば,弾性伸縮部材を有機溶剤(液状)に含浸させる工程を行えばよい。有機溶剤の例としては,トルエン,キシレン,エチルベンゼン,トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素や; n−ペンタン,n−ヘキサン,n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素; シクロペンタン,シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素; クロロベンゼン,ジクロロベンゼン,トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素; アニソールなどのエーテル化合物; メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロペンタノン,シクロヘキサノンなどを挙げることができる。
【0053】
また,本発明において,第2伸縮部材14,24にホットメルト接着剤を塗布して,前身頃外装体1と後身頃外装体2の延出領域12,22に固定した後,この延出領域12,22をプレスロールなどで加圧することが好ましい。このように,延出領域12,22を加圧することで,第2伸縮部材14,24と,それを挟持するシート部材との結合力が向上し,第2伸縮部材14,24の抜けを防止できるようになる。
【0054】
さらに,本発明において,延出領域12,22に配置される第2伸縮部材14,24については,ホットメルト接着剤等を塗布する工程の前に,ローラなどによって押し潰す工程を経た弾性伸縮部材を用いることとしてもよい。このように,糸ゴムなどの弾性伸縮部材を,一対の加圧ロールの間に導入して押し潰すことにより,弾性伸縮部材を構成する繊維が解れる。このため,弾性伸縮部材を押圧した後に,ホットメルト接着剤等の流動性のある接着剤を塗布することにより,その弾性伸縮部材に付着する接着剤の量が増加し,伸縮部材と接着剤の接着力が向上する。このような弾性伸縮部材を第2伸縮部材14,24として用いることで,第2伸縮部材14,24とシート部材との接合力がさらに向上し,第2伸縮部材14,24の抜けが防止される。また,第2伸縮部材14,24を加圧する際には,同時に加熱を行うことも好ましい。この場合,公知の加熱加圧ローラを用いればよい。第2伸縮部材14,24を加圧すると同時に加熱することで,第2伸縮部材14,24の構成繊維が多少溶融し,その後に塗布されるホットメルト接着剤との結合力が向上する。
【0055】
その他,吸収性本体3は,公知の構成を採用することができる。
吸収性本体3は,前身頃外装体1と後身頃外装体2の間に架橋された状態で保持され,使い捨ておむつ100の着用時おいて,着用者の股下部に位置し,着用者が排泄した尿などの液体を吸収保持する。吸収性本体3は,使い捨ておむつの股下部3を中心に,前身頃1及び後身頃2にかけて配置される。図2に示されるように,吸収性本体3は,吸収体31と,トップシート32と,バックシート33とを備えていればよい。
【0056】
吸収体31は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体31は,液透過性のトップシート32と,液不透過性のバックシート33の間に配置される。吸収体31は,トップシート32を透過した液体を吸収する機能を有し,吸収性材料により構成される。吸収体31を構成する吸収性材料には,公知の材料を採用することができる。吸収性材料としては,例えば,フラップパルプ,高吸収性ポリマー,又は親水性シートを用いることとしても良い。また,吸収性材料には,フラップパルプ,高吸収性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を併用することとしてもよい。吸収性材料は,通常,単層又は複数層のマット状に形成され,用いられる。吸収体31の形状は,適宜,使い捨ておむつの形状や,大きさ,用途に合せて設計することができる。例えば,吸収体31の形状は,図2に示されるように,砂時計型としてもよい。また,一般的な使い捨ておむつに使用されている,矩形型,楕円形型,又はひょうたん型とすることとしてもよい。
【0057】
トップシート32は,着用者の股下部の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体31へ透過させるための部材である。このため,トップシート32は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。また,トップシート32は,吸収体31の肌当接面側を被覆するように配置される。トップシート32を構成する不透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。
【0058】
バックシート33は,トップシート32を透過し吸収体31に吸収された液体が,おむつの外側へ漏出することを防止するための部材である。このため,バックシート33は,液不透過性材料によって構成される。そして,バックシート33は,吸収体31の底面からの液漏れを防止するため,吸収体31を肌非当接面側から被覆する。バックシート33を構成する不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【実施例】
【0059】
続いて,本発明に係る使い捨ておむつの実施例について説明する。
本実施例では,前身頃外装体と後身頃外装体の本体領域に固定される第1伸縮部材として,旭化成せんい株式会社社製の「製品名:ロイカ(登録商標)」,「製品コード:ポリウレタン繊維(一般名スパンデックス)」(以下,「糸ゴムA」)を用いた。糸ゴムAの油剤付着量は,油剤(鉱物油)が3重量%(平均値)であり,油剤(その他)が2重量%(平均値)であった。また,糸ゴムAの繊度は,470dtexであった。また,糸ゴムAの伸長率は,330%とした。
【0060】
また,本実施例では,前身頃外装体と後身頃外装体の延出領域に固定される第2伸縮部材として,東レ・オペロンテックス株式会社製の「製品名:Lycra(登録商標)fiber ポリウレタン繊維」(以下,「糸ゴムB」という)を用いた。糸ゴムBの油剤付着量は,0%(測定不能)であった。この糸ゴムBは,弾性伸縮部材に油剤を付着(内添・外添)させる工程を経ずに製造されたものであった。また,糸ゴムBの繊度は,620dtexであった。また,糸ゴムBの伸長率は,280%とした。
【0061】
前身頃外装体及び後身頃外装体の本体領域に糸ゴムAを配置し,延出領域に糸ゴムBを配置して,使い捨ておむつの製造を行った。糸ゴムA及び糸ゴムBの接着には,ホットメルト接着剤を用いた。ホットメルト接着剤は,積水フーラー社製のものを用いた。その他,使い捨ておむつの製造は,一般的な製造方法に従って行った。
【0062】
上記のように糸ゴムA及び糸ゴムBを用いて使い捨ておむつの製造を行ったところ,糸ゴムA及び糸ゴムBは,それらを挟持するシート部材との接合状態が良好であった。特に,延出領域に配置された糸ゴムBについては,端から端までシート部材に接合されており,シート部材から抜けている箇所は殆ど見当たらなかった。また,糸ゴムBが配置された延出領域を手で掴んで伸縮する作業を繰り返し行なってみても,糸ゴムがシート部材から剥がれる箇所は殆ど見当たらなかった。このように,延出領域に配置する弾性伸縮部材として,油剤が付着していない糸ゴムBを採用することにより,その接合状態に明らかな改善がみられた。
【比較例】
【0063】
続いて,使い捨ておむつの比較例について説明する。
比較例では,前身頃外装体と後身頃外装体の本体領域に固定される第1伸縮部材,及び延出領域に固定される第2伸縮部材の両方に,上記糸ゴムA(油剤が付着したもの)を用いた。その他の条件については,実施例と比較例を同じものとした。
【0064】
上記条件にて使い捨ておむつの製造を行ったところ,本体領域に接合されている糸ゴムAは,それを挟持するシート部材との接合状態が良好であったものの,延出領域に固定されている糸ゴムAは,それを挟持するシート部材から部分的に剥離している状態が見受けられた。延出領域に配置された糸ゴムAは,特に幅方向の両端部分において,シート部材からの解離が顕著なものとなっていた。また,また,糸ゴムAが配置された延出領域を手で掴んで伸縮する作業を繰り返し行なったところ,特に糸ゴムAを引っ張る際にプチプチと音が発生して,糸ゴムAが延出領域を形成するシート部材から剥離する様子が見受けられた。
【0065】
以上の通り,実施例と比較例を比較してみると,延出領域に配置する弾性伸縮部材として,油剤が付着していない糸ゴムBを採用した実施例は,予想以上にその接合状態が改善されることが判った。
【0066】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は,乳幼児用や高齢者用のパンツ型使い捨ておむつに関する。従って,本発明は,育児及び介護に関する産業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0068】
1…前身頃外装体(前身頃)
2…後身頃外装体(後身頃)
3…吸収性本体
3a…股下域
4…サイドシール部
11,21…本体領域
12,22…延出領域
13,23…第1伸縮部材
14,24…第2伸縮部材
図1
図2