(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102935
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】X線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 350B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-539658(P2014-539658)
(86)(22)【出願日】2013年9月17日
(86)【国際出願番号】JP2013075045
(87)【国際公開番号】WO2014054417
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-220433(P2012-220433)
(32)【優先日】2012年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】奥野 智晴
(72)【発明者】
【氏名】丸目 尚
【審査官】
原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−050494(JP,A)
【文献】
特開2010−227372(JP,A)
【文献】
特開2012−050515(JP,A)
【文献】
特開2007−267787(JP,A)
【文献】
特開2012−085852(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/050032(WO,A1)
【文献】
特開2007−260027(JP,A)
【文献】
特開2007−275228(JP,A)
【文献】
特開2008−000220(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/043458(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0152088(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けてX線を照射するX線源と、
前記X線源を被検体の体軸に沿って移動させるX線源移動部と、
前記X線源と対向して設けられ、被検体を透過したX線を検出してX線画像として出力するX線検出器と、
前記X線源と独立して前記被検体の体軸に沿って前記X線検出器を移動させるX線検出器移動部と、
前記X線源のX線照射側に設けられ、前記X線検出器の移動方向における前記X線検出器の検出領域よりも狭い領域に照射X線を絞るとともに、前記X線源に追従して移動するコリメータと、
前記X線画像のうちコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像をX線撮影ごとに判別するX線照射領域判別部と、
X線撮影ごとの前記X線源の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて前記X線照射領域画像の各々における前記X線検出器の移動の方向についての中心が撮影時の前記位置情報取得部で取得された前記X線源の位置情報となるようにX線照射領域画像をずらし、各X線照射領域画像を繋ぎ合わせて長尺画像を作成する長尺画像作成部と、
を備えることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記X線検出器移動部は、前記X線検出器を前記X線源よりも平均的に遅く移動させることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のX線撮影装置において、
前記位置情報取得部は、X線源位置センサであることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のX線撮影装置において、
前記位置情報は、撮影時間間隔情報とX線源移動速度情報により算出されるものであることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記X線照射領域画像は、前記X線画像から抽出された画像であることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記X線照射領域判別部は、X線撮影ごとに前記X線照射領域画像に前記位置情報を付加することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記X線源移動部は、前記X線源を等速移動させることを特徴とするX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のX線画像を繋ぎ合わせて長尺画像を取得するスロット撮影などの長尺撮影を行うX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線撮影装置は、被検体Mを載置する天板を有するX線撮影台と、被検体に向けてX線を照射(曝射)するX線管と、X線管と対向して配置され、被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを備えている。X線管は、例えば、天井から懸架されたX線管保持装置で保持されている。X線検出器は、X線撮影台内であって天板を挟んでX線管と反対側の位置に設けられている。
【0003】
このX線撮影装置において、被検体の全脊椎や全下肢をX線撮影する場合、X線検出器のX線検出領域内にそれらを一度に収めることができない。そのため、長尺撮影という手法が用いられる(例えば、特許文献1および2参照)。長尺撮影は、次のように行われる。まず、被検体に沿ってX線管およびX線検出器を平行移動させながら撮影し、連続する複数枚のX線画像を得る。そして、得られた複数枚のX線画像を繋ぎ合わせることで、1枚の長尺画像を作成する。
【0004】
さらに、長尺撮影には、照射するX線をスリット状(スロット状ともいう)に絞って長尺画像を得るスロット撮影(スロットラジオグラフィ)という手法がある(例えば、特許文献3および非特許文献1参照)。この手法は、X線をスリット状に絞り、X線管とX線検出器とを平行移動させながら連続撮影してX線画像を得て、複数枚のX線画像を繋ぎ合わせることで長尺画像を得るものである。スリット状にX線を絞ることで、無限遠からの平行X線照射と見なすことができ、歪みのない長尺画像を得ることができる。また、スロット撮影では散乱X線の影響を抑えることも可能であるので、高画質な長尺画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−075245号公報
【特許文献2】特開2010−240247号公報
【特許文献3】国際公開第2010/050032号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「スロットラジオグラフィ」、株式会社島津製作所 URL<http://www.med.shimadzu.co.jp/safire/appli/02.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スロット撮影する従来のX線撮影装置は、次のような問題がある。X線撮影装置は、X線管から照射されたX線の中心であるX線軸がX線検出器のX線検出領域である検出面の中心に位置するように撮影が行われる。すなわち、X線管とX線検出器の相対位置が常に等しくなるように、X線管とX線検出器は、同期して被検体の体軸方向に沿って移動される。そのため、X線管とX線検出器の動き出すタイミング、およびX線管とX線検出器との移動速度を同一にして駆動させる必要がある。特に、X線管とX線検出器がそれぞれ独立して駆動する場合、上述のタイミングおよび移動速度を高精度に一致させることは難しい。また、X線管とX線検出器は、等速移動の状態にするまでの時間が一致するように加速される。X線検出器としてフラットパネル型X線検出器(以下適宜、「FPD」と称する)を用いる場合、FPDは、一般的にX線管よりも重たい。加速時間がどちらか一方で遅いと、その遅れた分だけ撮影までの時間が長くなってしまう。このように従来装置は、複雑な制御をしなければならず、これにはACサーボモータなどの高価なモータが必要となる。そのため、装置が高価なものになってしまっている。
【0008】
なお、特許文献3には、次のような問題が開示されている。すなわち、FPDの移動は、必ずしも設定どおりにならず、設定からいくらかは位置ずれしており、被検体に対するFPDの相対移動距離が長すぎると、スリット状画像に映り込んだ被検体の透視像が予想外に位置ずれする。そして、FPDは、設定どおり移動しているものとみなして、各スリット状画像を重ね合わせるので、予想外に位置ずれした透視像が互いに重ね合わされてしまう。そこで、特許文献3では、FPDの相対移動距離を最小限にすることで、スリット状画像に映り込んだ透視像の位置ずれを小さく抑えることが提案されている。しかしながら、X線管やFPDの相対移動距離に関わらず、位置ずれの影響が抑えられた長尺画像を得ることが望まれる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、長尺撮影におけるX線管とX線検出器の制御を簡単にすることが可能なX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るX線撮影装置は、被検体に向けてX線を照射するX線源と、前記X線源を被検体の体軸に沿って移動させるX線源移動部と、前記X線源と対向して設けられ、被検体を透過したX線を検出してX線画像として出力するX線検出器と、前記X線源と独立して前記被検体の体軸に沿って前記X線検出器を移動させるX線検出器移動部と、前記X線源のX線照射側に設けられ、前記X線検出器の移動方向における前記X線検出器の検出領域よりも狭い領域に照射X線を絞るとともに、前記X線源に追従して移動するコリメータと、前記X線画像のうちコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像を
X線撮影ごとに判別するX線照射領域判別部と、X線撮影ごとの前記X線源の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報に基づいて前記X線照射領域画像の各々における前記X線検出器の移動の方向についての中心が撮影時の前記位置情報取得部で取得された前記X線源の位置情報となるようにX線照射領域画像をずらし、各X線照射領域画像を繋ぎ合わせて長尺画像を作成する長尺画像作成部と、を備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係るX線撮影装置によれば、X線源は被検体に向けてX線を照射し、X線源移動部によって被検体の体軸に沿って移動されるようになっている。X線検出器は、X線源と対向して設けられ、被検体を透過したX線を検出してX線画像として出力する。X線検出器移動部は、X線源と独立して被検体の体軸に沿ってX線検出器を移動させるようになっている。また、X線源のX線照射側には、コリメータが設けられている。コリメータは、X線検出器の移動方向におけるX線検出器の検出領域よりも狭い領域に照射X線を絞るとともに、前記X線源に追従して移動するようになっている。X線照射領域判別部は、X線画像のうちコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像を前記X線撮影ごとに判別している。また、位置情報取得部は、X線撮影ごとのX線源の位置情報を取得している。そして、長尺画像作成部は、位置情報に基づいてX線照射領域画像の各々におけるX線検出器の移動の方向についての中心が撮影時の
前記位置情報取得部で取得された前記X線源の位置情報となるようにX線照射領域画像をずらし、各X線照射領域画像を繋ぎ合わせて長尺画像を作成している。
【0012】
すなわち、X線検出器がX線源と独立して移動する長尺撮影において、X線照射領域判別部は、X線画像のうちコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像をX線撮影ごとに判別し、位置情報取得部は、X線撮影ごとのX線源の位置情報を取得する。そして、長尺画像作成部は、位置情報に基づいてX線照射領域画像の各々におけるX線検出器の移動の方向についての中心が撮影時の
前記位置情報取得部で取得された前記X線源の位置情報となるようにX線照射領域画像をずらし、各X線照射領域画像を繋ぎ合わせることで、長尺画像を作成している。これらにより、X線源とX線検出器の相対位置が一致せずに可変しても、X線照射領域画像を確実に得ることができ、各X線照射領域画像を精度よく繋ぎ合わせることができる。また、X線管とX線検出器の動き出しのタイミングおよびそれらの移動速度を同一にさせる必要がなくなるので、制御が簡単となり、装置を安価にすることができる。
【0013】
また、従来のX線撮影装置は、X線源から照射されたX線のX線軸が、X線検出器のX線検出領域である検出面の中心に位置するように制御されている。そのため、長尺撮影範囲は、X線検出器の移動距離に対応する距離であった。しかしながら、本発明により、X線検出器の検出面のどの位置でX線撮影を行ってもよいので、X線検出器の移動距離が従来と同じであっても、長尺撮影範囲を広く設定することができる。
【0014】
なお、ここで特許文献3に対する効果について説明する。本発明によれば、スリット状画像に相当するX線照射領域画像をX線画像から判別している。X線照射領域画像は、X線検出器の検出領域よりも狭い領域に絞られた照射X線の領域である。そのため、所定の位置にあるX線源からX線を照射した場合、X線検出器が多少位置ずれしても、照射X線がX線検出器の検出領域内にあれば、判別して得られるX線照射領域画像は同じである。そのため、取得したX線源の位置情報に基づき、X線画像から判別したX線照射領域画像をずらして、各X線照射領域画像を繋ぎ合わせれば、X線検出器の相対移動距離に関わらず、位置ずれの影響が抑えられた長尺画像を得ることができる。
【0015】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記X線検出器移動部は、前記X線検出器を前記X線源よりも平均的に遅く移動させることが好ましい。ここでいう平均的に遅いとは、撮影開始から終了までの一連の動作を通じた平均で比較したときに遅いということを意味している。従来、X線源に比べて重量のあるX線検出器をX線源と同じように移動させるために高出力のモータを用いていた。しかしながら、X線検出器をX線源よりも遅く移動させることで、従来よりも出力の小さいモータを用いることができる。そのため、省電力で安価なモータを用いることができ、装置を安価にすることができる。
【0016】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記位置情報取得部の一例は、X線源位置センサである。これにより、実際のX線源の位置情報を得ることができるので、誤差(位置ずれ)を有する場合でも、各X線照射領域画像を精度よく繋ぎ合わせることができる。
【0017】
また、ここで特許文献3に対する効果について説明する。上述のように、所定の位置にあるX線源からX線を照射した場合、X線検出器が多少位置ずれしても、照射X線がX線検出器の検出領域内にあれば、判別して得られるX線照射領域画像は同じである。さらに、X線源の位置情報を実際のものを用いれば、X線源の位置ずれを考慮して各X線照射領域画像を繋ぎ合わせることができる。そのため、X線源やX線検出器の相対移動距離に関わらず、位置ずれの影響が抑えられた長尺画像を得ることができる。
【0018】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記位置情報の一例は、撮影時間間隔情報とX線源移動速度情報により算出されるものである。X線撮影時間間隔およびX線源の移動速度が一定である場合は、例えば、X線源位置センサを設ける必要がなくなる。そのため、構成が簡単となり、装置を安価にすることができる。
【0019】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記X線照射領域画像の一例は、前記X線画像から抽出された画像である。X線照射領域以外の画像を取り除くことができ、元のX線画像よりもデータ容量を小さくすることができる。
【0020】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記X線照射領域判別部は、X線撮影ごとに前記X線照射領域画像に前記位置情報を付加することが好ましい。これにより、X線照射領域画像と位置情報の管理を簡単にすることができる。例えば、長尺画像を作成するための複数枚のX線照射領域画像の順番が変わった場合でも、X線照射領域画像に付加された位置情報により、繋ぎ合わせる際のX線照射領域画像の位置を知ることができる。
【0021】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記X線源移動部は、前記X線源を等速移動させることが好ましい。これにより、制御が簡単であり、安定した品質の長尺画像を得ることができる。
【0022】
なお、本明細書は、次のようなX線撮影装置に係る発明も開示している。
【0023】
(1)被検体に向けてX線を照射するX線源と、前記X線源の角度を被検体の体軸に沿うように予め設定された軸周りに変更するX線源角度変更部と、前記X線源と対向して設けられ、被検体を透過したX線を検出してX線画像として出力するX線検出器と、前記X線源と独立して前記被検体の体軸に沿って前記X線検出器を移動させるX線検出器移動部と、前記X線源のX線照射側に設けられ、前記X線検出器の移動方向における前記X線検出器の検出領域よりも狭い領域に照射X線を絞るとともに、前記X線源の角度に追従して移動するコリメータと、前記X線画像のうちコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像をX線撮影ごとに判別するX線照射領域判別部と、X線撮影ごとの前記X線源の角度情報を取得する角度情報取得部と、前記角度情報に基づいて前記X線照射領域画像の各々における前記X線検出器の移動の方向についての中心が撮影時のX線照射の位置となるようにX線照射領域画像をずらし、各X線照射領域画像を繋ぎ合わせて長尺画像を作成する長尺画像作成部と、を備えることを特徴とするX線撮影装置。
【0024】
上述の構成は、先に説明したX線源移動部の代わりにX線源角度変更部を備え、位置情報取得部の代わりに角度情報取得部を備える構成となっている。上述の構成に係るX線撮影装置によれば、X線検出器がX線源と独立して移動する長尺撮影において、X線照射領域判別部は、X線画像のうちコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像をX線撮影ごとに判別し、角度情報取得部は、X線撮影ごとのX線源の位置情報を取得する。そして、長尺画像作成部は、角度情報に基づいてX線照射領域画像の各々におけるX線検出器の移動の方向についての中心が撮影時のX線照射の位置となるようにX線照射領域画像をずらし、各X線照射領域画像を繋ぎ合わせることで、長尺画像を作成している。これらにより、X線源とX線検出器の相対位置が一致せずに可変しても、X線照射領域画像を確実に得ることができ、各X線照射領域画像を精度よく繋ぎ合わせることができる。また、X線管とX線検出器の動き出しのタイミングおよびそれらの移動速度を同一にさせる必要がなくなるので、制御が簡単となり、装置を安価にすることができる。
【0025】
また、従来のX線撮影装置は、X線源から照射されたX線のX線軸が、X線検出器のX線検出領域である検出面の中心に位置するように制御されている。そのため、長尺撮影範囲は、X線検出器の移動距離に対応する距離であった。しかしながら、本発明により、X線検出器の検出面のどの位置でX線撮影を行ってもよいので、X線検出器の移動距離が従来と同じであっても、長尺撮影範囲を広く設定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るX線撮影装置によれば、X線検出器がX線源と独立して移動する長尺撮影において、X線照射領域判別部は、X線画像のうちコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像をX線撮影ごとに判別し、位置情報取得部は、X線撮影ごとのX線源の位置情報を取得する。そして、長尺画像作成部は、位置情報に基づいてX線照射領域画像の各々におけるX線検出器の移動の方向についての中心が撮影時のX線入射の位置となるようにX線照射領域画像をずらし、各X線照射領域画像を繋ぎ合わせることで、長尺画像を作成している。これらにより、X線源とX線検出器の相対位置が一致せずに可変しても、X線照射領域画像を確実に得ることができ、各X線照射領域画像を精度よく繋ぎ合わせることができる。また、X線管とX線検出器の動き出しのタイミングおよびそれらの移動速度を同一にさせる必要がなくなるので、制御が簡単となり、装置を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1に係るX線撮影装置の概略構成を示す図である。
【
図2】長尺撮影の設定方法の説明に供する図である。
【
図3】長尺撮影範囲、各回の撮影範囲および重なり部分等の説明に供する図である。
【
図4】(a)はX線照射領域判別部の動作説明に供する図であり、(b)は(a)中のラインLの画素値のプロファイルを示す図であり、(c)はX線照射領域判別部の出力画像の一例を示す図である。
【
図5】(a)〜(e)X線照射領域画像および位置情報の説明に供する図である。
【
図6】長尺画像作成部の動作説明に供する図である。
【
図8】(a)、(b)は実施例2に係るX線撮影装置の動作説明に供する図である。
【
図9】変形例に係るX線撮影装置の概略構成を示す図である。
【
図10】X線照射の位置の算出方法の説明に供する図である。
【実施例1】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るX線撮影装置の概略構成を示す図である。
【0029】
図1を参照する。X線撮影装置1は、被検体Mを載置する天板2と、被検体Mに向けてX線を照射するX線管3と、X線管3と対向して設けられ、被検体Mを透過したX線を検出してX線画像を出力するフラットパネル型X線検出器(FPD)4とを備えている。なお、X線管3は本発明のX線源に相当し、FPD4は本発明のX線検出器に相当する。
【0030】
X線管3は、X線管制御部5により制御される。X線管制御部5は、X線管3の管電圧および管電流を発生させる高電圧発生部6を有している。X線管制御部5は、管電圧、管電流および照射時間等のX線照射条件に応じてX線管3からX線を照射させる。また、X線管3のX線照射側には、X線管3から照射されたX線を絞るコリメータ7が設けられている。
【0031】
コリメータ7は、例えば4枚のリーフ(図示しない)を備えている。この4枚のリーフは、X線管3から照射されたX線を遮蔽して、任意の大きさの矩形領域にX線を絞って照射するようになっている。
図1のコリメータ7は、例えば、被検体Mの体軸方向11(X方向)であってFPD4の検出領域R1よりも狭い領域R2に照射X線を絞るようになっている。また、コリメータ7は、X線管3に追従して移動する。つまり、コリメータ7は、X線管3と一体となって移動する。
【0032】
FPD4は、検出対象(被検体M)の透過X線像が投影されるX線検出面にX線を電気信号に変換して検出する多数のX線検出素子が横・縦の2次元マトリックス状に配列されている。X線検出素子の配列マトリックスとしては、例えば横:数千×縦:数千が挙げられる。X線検出素子は、X線が直に電気信号に変換される直接変換タイプ、あるいはX線が一旦光に変換されてから更に電気信号に変換される間接変換タイプで構成される。
【0033】
また、X線撮影装置1は、X線管3を被検体Mの体軸方向11に沿って移動させるX線管移動部8と、X線管3と独立して被検体Mの体軸方向11に沿ってFPD4を移動させるX線検出器移動部9とを備えている。X線管移動部8とX線検出器移動部9は共に、被検体Mの体軸方向11(X方向)に沿ってX線管3およびFPD4を移動させる。すなわち、X線検出器移動部9は、FPD4をX線管3の移動方向と平行に移動させる。X線管移動部8は、X線管3を等速移動させ、等速移動させたX線管3からX線を照射させることにより、X線撮影する。X線管移動部8は例えばACサーボモータで構成され、X線検出器移動部9は例えばDCブラシモータで構成される。なお、X線管移動部8は本発明のX線源移動部に相当する。
【0034】
FPD4の後段には、A/D変換器13と画像処理部15と主制御部17とが順番に設けられている。A/D変換器13は、FPD4から出力されたアナログのX線画像(X線検出信号)をディジタルのX線画像に変換する。画像処理部15は、ディジタル変換されたX線画像に対して階調処理など必要な処理を行って、処理後のX線画像G1を出力する。主制御部17は、X線撮影装置1の各構成を統括的に制御し、中央演算処理装置(CPU)などで構成される。主制御部17は、例えば、X線管移動部8およびX線検出器移動部9を制御して、X線管3およびFPD4を移動させる。
【0035】
また、X線撮影装置1は、表示部19と入力部21と記憶部23とを備えている。表示部19は、モニタ等で構成される。入力部21は、キーボードやマウス等で構成される。記憶部23は、ROM(Read−only Memory)、RAM(Random−Access Memory)またはハードディスク等、取り外し可能なものを含む記憶媒体で構成される。
【0036】
長尺撮影の設定等は入力部21により行われる。
図2は、長尺撮影の設定方法の説明に供する図である。
図2に示すように、符号Aと符号Bとの間からなる長尺撮影範囲Sを設定する。符号Aおよび符号Bの位置の設定は、コリメータ7に設けられたコリメータランプやレーザマーカなどの投光器(図示しない)により、可視光を照射させながら行う。また、X線管3とFPD4の検出面4aと間からなる撮影距離Dを設定し、FPD4の検出面4aと被検体Mの任意の撮影面Maと間の距離dを設定することで、X線管3やFPD4等における長尺撮影の各回の撮影位置を設定する。
図3は、長尺撮影範囲S、各回の撮影範囲E、および重なり部分OL等の説明に供する図である。隣接する2枚の撮影範囲Eには、重なり部分OLが設定される。
【0037】
次に、長尺画像を作成するための構成について説明する。
図1に戻る。X線撮影装置1は、さらに、被検体Mの体軸方向11におけるX線撮影ごとのX線管3の位置情報を取得するX線管位置センサ31と、FPD4で取得したX線画像G1に対して画像処理を行ってX線が照射されたX線照射領域画像G2(
図4(a)参照)を判別するX線照射領域判別部33と、X線管3の位置情報Pに基づいてX線照射領域画像G2の各々におけるFPD4の移動の方向についての中心が撮影時のX線入射の位置となるようにX線照射領域画像G2をずらし、各X線照射領域画像G2を繋ぎ合わせて長尺画像G3を作成する長尺画像作成部35とを備えている。なお、X線管位置センサ31は本発明の位置情報取得部に相当する。
【0038】
X線管位置センサ31は、被検体Mの体軸方向11におけるX線管3の位置情報PをX線撮影ごとに取得する。このX線管位置センサ31によるX線管3の位置情報Pは、誤差を含む実際の位置情報Pである。X線管位置センサ31は、リニアエンコーダ等により構成される。なお、
図2において、1回目、2回目、3回目のX線撮影の位置情報(またはその位置)Pをそれぞれ符号P1,P2,P3で示し、n回目の位置情報Pを符号Pnで示す。なお、1回目,2回目,3回目,…,n回目の位置情報P1,P2,P3,…Pnは、特に区別しないときは符号Pで表すものとする。
【0039】
X線照射領域判別部33は、X線画像G1のうち、スリット状にコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像G2をX線撮影ごとに判別する。
図4(a)において、X線画像G1は、例えばFPD4の全検出領域でX線を検出して得られた画像とする。X線照射領域判別部33は、このX線画像G1のうちX線照射領域画像G2を判別する。なお、
図4(a)において、画像NIは、コリメータ7のリーフで遮蔽された領域を示す。
【0040】
図4(b)は、
図4(a)中のラインLの画素値(輝度)のプロファイルPFを示す図である。X線照射領域画像G2の判別は、例えば、X線強度を示す画素値が大きく変化する位置を検出して境界とすることにより行われる。具体的な処理としては、例えば、エッジ検出処理等の既存の手法が用いられる。なお、X線画像G1は、FPD4の全検出領域で検出されなくともよいが、本発明の効果を得るためにX線照射領域画像G2より大きな画像である必要がある。
【0041】
図4(c)は、X線照射領域判別部33の出力画像の一例を示す図である。本実施例において、
図4(c)に示すように、X線照射領域判別部33は、X線画像G1からX線照射領域画像G2を切り出して抽出する。すなわち、X線照射領域判別部33は、X線照射領域画像G2のみを出力する。
【0042】
また、X線照射領域判別部33は、X線撮影ごとのX線照射領域画像G2にX線管3の位置情報Pを付加する。すなわち、X線照射領域画像G2と、そのX線照射領域画像G2を取得した際のX線管3の位置情報Pとを関係付けし、例えばX線照射領域画像G2にX線管3の位置情報Pを含ませるようにする。この関係付けの処理を各X線照射領域画像G2ごとに行う。なお、X線管3の位置情報PはX線照射領域画像G2に付加されていたが、X線照射領域画像G2と位置情報Pは、個別であってもよい。
【0043】
実施例1の構成によれば、制御を単純にする目的でX線管3とFPD4との位置関係の変動をある程度許容する構成となっている。であるとすれば、X線管3とFPD4とが同じ挙動で移動しないことになってしまう。この考えで行くと、X線照射領域画像G2を繋ぎ合わせて長尺画像G3を取得するときに、位置ずれが生じるのではないかとも思われる。しかし、本発明の構成によれば、このような事情があっても長尺画像G3に影響はない。
【0044】
図5は、その理由を説明している。
図5(a)は、コリメータ7で絞られた照射X線がFPD4の検出面4aの中央に位置した状態を示している。いわば、X線管3とFPD4とが理想通りに移動している場合である。一方、
図5(b)は、
図5(a)のFPD4に対し、紙面右側にFPD4がずれている状態を示しており、
図5(a)と同じ形状に絞られた照射X線は、検出面4aの端側に位置している。いわば、X線管3とFPD4とが理想から外れた移動をしている場合である。
【0045】
図5(a)および
図5(b)のX線管3は共に、例えば、位置情報P1に対応する位置P1にある。
図5(a)および
図5(b)の状態でそれぞれX線撮影して取得したX線画像G1を
図5(c)および
図5(d)に示す。X線照射領域判別部33は、X線画像G1からX線照射領域画像G2を判別する。
図5(e)には、判別されたX線照射領域画像G2を示す。つまり、X線管3が、
図5(a)および
図5(b)で共に同じ、位置P1で撮影した時は、撮影する位置P1が同じであるので、FPD4の検出面4aのどの位置にX線が照射されても、取得されるX線照射領域画像G2は結局、同じである。だとすれば、X線照射領域画像G2とX線管3の位置情報が示す位置との空間的な関係は、X線管3に対するFPD4の位置ずれによっては変化しないのである。したがって、X線照射領域画像G2を関連付けられた位置情報Pに基づいてずらしながら長尺画像を生成すれば、ずれのない画像になるというわけである。
【0046】
長尺画像作成部35は、X線照射領域の形状を抽出した断片であるX線照射領域画像G2の各々をX線管3の位置情報Pに基づいてずらし、各X線照射領域画像G2を繋ぎ合わせて長尺画像を作成する。長尺画像作成部35は、
図3の長尺撮影範囲Sの各回の撮影範囲Eの順番で配置されるように、各X線照射領域画像G2を配置する。具体的には、X線管位置センサ31で取得した各回の位置情報P(P1,P2,P3,…,Pn)に基づき、位置基準となる位置情報P1と各回のX線管3の位置情報P2,P3,…,Pnとの相対距離を算出する。算出した相対距離を用いて各位置情報P(P1,P2,P3,…,Pn)に対応するX線照射領域画像G2をずらして配置する。配置した位置で複数枚のX線照射領域画像G2を繋ぎ合わせて1枚の長尺画像を生成する。
【0047】
なお、各X線照射領域画像G2をずらして配置する際に、相対距離は、各X線照射領域画像G2の基準線SLを基準とする(
図6参照)。基準線SLは、
図4(c)に示すように、例えば、X線照射領域判別部33や主制御部17によって、X線照射領域画像G2の幅R2が1/2となる値を算出する。また、仮に、判別されたX線照射領域画像G2の端部Eg1,Eg2が一直線でない場合は、基準線SLは、幅R2の1/2を算出した後のうねりのある線を直線化して求めてもよいし、また、うねりのある端部Eg1,Eg2を直線化してから幅R2の1/2を算出して求めてもよい。直線化は、例えば、統計値(平均値、最大値、最小値、最頻値、または中央値)を用いて行う。なお、
図6では、図示の便宜上、X線照射領域画像G2の重なり部分OLを示すために図を一部省いている。
【0048】
次に、X線撮影装置1の動作について説明する。まず、長尺撮影条件を設定する。長尺撮影条件は、例えば長尺撮影範囲S、各回の撮影範囲E、重なり部分OL、および撮影回数等を設定する。この設定は、入力部21等によって行われる。
【0049】
各回の撮影位置は、例えば、次のように設定される。スリット状に成形されたX線が照射されるFPD4の検出面4aのうち、FPD4の移動方向の領域R2を100mmと設定し、隣接する2つのX線照射領域が重なる重なり部分OLを10mmと設定する。この場合、X線管3の相対的な移動距離は、100mm−10mm=90mmとなる。すなわち、X線管3は、90mm移動するごとにX線撮影される。したがって、1枚目の撮影位置を基準として0mmとすると、2枚目の撮影位置は90mm、3枚目の撮影位置は180mmとなる。
【0050】
X線撮影を実行する。主制御部17は、長尺撮影条件に従い、X線管移動部8およびX線検出器移動部9の移動制御等を実行する。X線管3およびFPD4は、独立して平行移動し、複数回、つまり各撮影位置でX線管3からX線を照射する。X線管3から照射されたX線は、被検体Mを透過してFPD4の検出面4aに入射する。FPD4は、入射したX線を検出してX線画像G1を出力する。出力されたX線画像(X線検出信号)G1は、A/D変換器13によりディジタル化される。ディジタル化されたX線画像は、画像処理部15により必要な処理が行われた後、記憶部23等に記憶される。
【0051】
また、各撮影位置でX線撮影を行うごとに、X線管位置センサ31は、X線管3の移動方向における座標情報であるX線管3の実際の位置情報Pを取得(検出)して、X線照射領域判別部33または記憶部23に転送する。
【0052】
記憶部23等に記憶されたX線画像G1は、X線照射領域判別部33に転送される。X線照射領域判別部33は、X線画像G1のうちスリット状に絞られたX線が照射された領域を判別する。そして、本実施例では、X線照射領域判別部33は、判別したX線照射領域を切り出して抽出したX線照射領域画像G2を出力して、記憶部23等に記憶させる。この際、X線照射領域判別部33は、X線管位置センサ31で取得したX線撮影時のX線管3の位置情報Pを、この位置情報Pと対応するX線照射領域画像G2に付加する。なお、X線照射領域画像G2への位置情報Pの付加は、X線照射領域判別部33に限定されず、例えば、記憶部23に記憶されるX線照射領域画像G2に対して主制御部17が行ってもよい。
【0053】
長尺撮影範囲Sの全てのX線撮影が完了する。長尺画像作成部35は、記憶部23等に記憶された各X線照射領域画像G2と、各X線照射領域画像G2に付加されたX線管3の位置情報Pに基づき、X線照射領域画像G2を相対的にずらして重ね合わせることで長尺画像G3を作成する(
図6参照)。作成された長尺画像G3は、表示部19に表示させたり、記憶部23に記憶させたりする。
【0054】
本実施例によれば、X線管3は被検体Mに向けてX線を照射し、X線管移動部8によって被検体Mの体軸方向11に沿って移動されるようになっている。FPD4は、X線管3と対向して設けられ、被検体Mを透過したX線を検出してX線画像G1として出力する。X線検出器移動部9は、X線管3と独立して被検体Mの体軸方向11に沿ってFPD4を移動させるようになっている。また、X線管3のX線照射側には、コリメータ7が設けられている。コリメータ7は、FPD4の移動方向におけるFPD4の検出領域R1よりも狭い領域R2に照射X線を絞るとともに、X線管3に追従して移動するようになっている。X線照射領域判別部33は、X線画像G1のうちコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像G2をX線撮影ごとに判別している。また、X線管位置センサ31は、X線撮影ごとのX線管3の位置情報Pを取得している。そして、長尺画像作成部35は、位置情報Pに基づいてX線照射領域画像G2の各々におけるFPD4の移動の方向についての中心が撮影時のX線入射の位置となるようにX線照射領域画像G2をずらし、各X線照射領域画像G2を繋ぎ合わせて長尺画像G3を作成している。
【0055】
すなわち、FPD4がX線管3と独立して移動する長尺撮影において、X線照射領域判別部33は、X線画像G1のうちコリメートされたX線が映り込んでいる領域であるX線照射領域画像G2をX線撮影ごとに判別し、X線管位置センサ31は、X線撮影ごとのX線管3の位置情報Pを取得する。そして、長尺画像作成部35は、位置情報Pに基づいてX線照射領域画像G2の各々におけるFPD4の移動の方向についての中心が撮影時のX線入射の位置となるようにX線照射領域画像G2をずらし、各X線照射領域画像G2を繋ぎ合わせることで、長尺画像G3を作成している。これらにより、X線管3とFPD4の相対位置が一致せずに可変しても、X線照射領域画像G2を確実に得ることができ、各X線照射領域画像G2を精度よく繋ぎ合わせることができる。また、X線管3とFPD4の動き出しのタイミングおよびそれらの移動速度を同一にさせる必要がなくなるので、制御が簡単となり、装置を安価にすることができる。
【0056】
例えば、FPD4を移動させるX線検出器移動部9のモータを、高価なXCサーボモータではなく、例えばDCブラシモータなどの比較的低価格のモータを用いることができる。また、X線管3とFPD4の動き出しのタイミングおよびそれらの移動速度を同一にさせる必要がなくなる。そのため、従来では、X線管移動部8およびX線検出器移動部9に同時に与えていた動作指令を、X線管移動部8のみに与えて、例えば、X線検出器移動部9には、1回目のX線撮影後に動作指令を与えることができる。
【0057】
また、従来のX線撮影装置は、X線管3から照射されたX線のX線軸axが、FPD4のX線検出領域である検出面4aの中心に位置するように制御されている。そのため、長尺撮影範囲Sは、
図7に示すように、FPD4の移動距離に対応する距離J1であった。しかしながら、本発明により、FPD4の検出面4aのどの位置でX線撮影を行ってもよいので、FPD4の移動距離が従来と同じであっても、
図7の距離J2のように、長尺撮影範囲Sを広く設定することができる。
【0058】
また、X線管3の位置情報Pを取得するために、X線管位置センサ31を用いている。これにより、実際のX線管3の位置情報Pを得ることができるので、誤差を有する場合でも、各X線照射領域画像G2を精度よく繋ぎ合わせることができる。
【0059】
また、X線照射領域画像G2は、X線画像G1から抽出された画像である。X線照射領域画像G2以外の画像を取り除くことができ、元のX線画像G1よりもデータ容量を小さくすることができる。
【0060】
また、X線照射領域判別部33は、X線撮影ごとにX線照射領域画像G2に位置情報Pを付加する。これにより、X線照射領域画像G2と位置情報Pの管理を簡単にすることができる。例えば、長尺画像G3を作成するための複数枚のX線照射領域画像G2の順番が変わった場合でも、X線照射領域画像G2に付加された位置情報Pにより、繋ぎ合わせる際のX線照射領域画像G2の位置を知ることができる。
【0061】
また、X線管移動部8は、X線管3を等速移動させている。これにより、制御が簡単であり、安定した品質の長尺画像G3を得ることができる。
【0062】
なお、ここで特許文献3に対する効果について説明する。本実施例によれば、スリット状画像に相当するX線照射領域画像G2をX線画像G1から判別している。X線照射領域画像G2は、FPD4の検出領域R1よりも狭い領域R2に絞られた照射X線の領域である。そのため、所定の位置にあるX線管3からX線を照射した場合、FPD4が多少位置ずれしても、照射X線がFPD4の検出領域R1内にあれば、判別して得られるX線照射領域画像G2は同じである。さらに、X線管3の位置情報Pを実際のものを用いれば、X線管3の位置ずれを考慮して各X線照射領域画像G2を繋ぎ合わせることができる。そのため、取得したX線管3の位置情報Pに基づき、X線画像G1から判別したX線照射領域画像G2をずらして、各X線照射領域画像G2を繋ぎ合わせれば、X線管3やFPD4の相対移動距離に関わらず、位置ずれの影響が抑えられた長尺画像G3を得ることができる。
【実施例2】
【0063】
次に、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。
図8(a)および
図8(b)は実施例2に係るX線撮影装置の動作説明に供する図である。なお、実施例1と重複する構成の説明は省略する。
【0064】
上述した実施例1では、FPD4がX線管3と独立して移動することに対し、特に、FPD4の移動方法について特定していなかった。そこで、実施例2では、例えば、X線検出器移動部9は、FPD4をX線管3よりも遅く移動させるようにする。
【0065】
X線検出器移動部9は、FPD4をX線管3よりも平均的に遅く移動させる。平均的に遅くとは、FPD4の移動速度がX線管3よりも瞬間的に遅くなることを意味するものではなく、長尺撮影の開始から終了までに移動するX線管3およびFPD4の移動距離を通じての平均速度が遅いことを意味する。平均的に遅く移動させることは、次のように動作させることにより、実行することができる。例えば、
図8(a)のように、撮影開始時には、X線軸axを含むX線照射領域がFPD4の検出面4aの一端側である検出面4aの移動方向と反対側の領域に位置するようにする。そして、
図8(b)のように、撮影終了時には、X線照射領域がFPD4の検出面4aの他端側である検出面4aの移動方向側の領域に位置するようにする。
【0066】
実施例1によると、FPD4の検出面4a内にX線が収まるのであれば、その検出面4aのどの位置でX線撮影を行ってもよい。X線照射しながらX線管3が予め設定された移動距離を移動する間に、FPD4を予め設定された移動距離を移動させるようにする。つまり、FPD4の検出面4aを有効に利用すれば、FPD4の移動量を抑えることができる。例えば、X線撮影におけるX線管3の移動距離T1が、FPD4の検出面4aの大きさR1とFPD4の移動距離T2とを加算した値と等しい関係(T1=R1+T2)であるとする。この場合、FPD4の移動量を最小とすることができる。ただし、X線の広がりである、X線照射領域の幅R2を説明の便宜上考慮していないものとする。
【0067】
本実施例によれば、X線検出器移動部9は、FPD4をX線管3より平均的に遅く移動させる。従来、X線管3に比べて重量のあるFPD4をX線管3と同じように移動させるために高出力のモータを用いていた。しかしながら、FPD4をX線管3よりも遅く移動させることで、従来よりも出力の小さいモータを用いることができる。そのため、省電力で安価なモータを用いることができ、X線撮影装置1を安価なものにすることができる。
【実施例3】
【0068】
次に、図面を参照して本発明の実施例3を説明する。なお、各実施例と重複する構成の説明は省略する。
【0069】
上述した各実施例では、X線撮影ごとのX線管3の位置情報PをX線管位置センサ31により取得して、取得した位置情報Pを、そのX線撮影で抽出したX線照射領域画像G2に付加していた。しかしながら、例えば、X線撮影時間間隔が一定でかつ、X線管3の移動速度が一定の場合は、X線管位置センサ31を備えて、X線管3の位置情報Pを実際に測定しなくともよい。
【0070】
すなわち、主制御部17は、X線撮影前またはX線撮影後に、長尺画像作成部35に対して、X線撮影時間間隔情報UおよびX線管移動速度情報Vを通知する。長尺画像作成部35は、X線撮影時間間隔情報UおよびX線管移動速度情報V、撮影回数Nから各回の撮影する位置P(=U×V×N)を算出する。つまり、X線撮影の時間間隔とX線管3の移動速度が予めわかっていれば、X線撮影ごとX線管3の撮影位置Pを知ることができる。その各回の撮影する位置Pの情報であるX線管3の位置情報Pに基づき、長尺画像作成部35は、長尺画像G3を作成する。なお、主制御部17が、X線撮影時間間隔情報UおよびX線管移動速度情報Vから各回の撮影位置Pの情報であるX線管3の位置情報Pを算出し、長尺画像作成部35に通知するようにしてもよい。なお、X線管移動速度情報Vは本発明のX線源移動速度情報に相当する。
【0071】
本実施例によれば、位置情報Pは、撮影時間間隔情報UとX線管移動速度情報Vにより算出されるものである。X線撮影時間間隔UおよびX線管3の移動速度が一定である場合は、例えば、X線管位置センサ31を設ける必要がなくなる。そのため、構成が簡単となり、装置を安価にすることができる。
【0072】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0073】
(1)上述した各実施例では、
図1に示すように、被検体Mを天板2に載置させて、天板2の上下に対向配置されたX線管3およびFPD4によって、長尺撮影のための複数枚のX線画像G1を撮影していた。しかしながら、天板2に代えて衝立(スタンドともいう)を用いてもよい。衝立に沿って被検体Mを立位で配置し、衝立の前後(横方向)に対向配置されたX線管3およびFPD4によって、長尺撮影をする。
【0074】
(2)上述した各実施例および変形例(1)において、X線管3およびFPD4のうち少なくとも一方は、等速移動でなくともよい。例えば、FPD4は、加速移動または減速移動してもよい。また、FPD4は、等速移動、加速移動および減速移動のうち少なくとも2つを組み合わせた移動をしてもよい。
【0075】
(3)上述した各実施例および各変形例では、
図4(c)に示すように、X線照射領域判別部33は、X線画像G1からX線照射領域画像G2を切り出して抽出していた。しかしながら、例えば、X線照射領域判別部33は、X線照射領域画像G2を判別し、X線が照射されていない領域の画像NIを切り出さないで、画像NIを「情報なし」としたX線画像を出力してもよい。また、画像NIをそのままの状態で出力してもよく、画像NIのそのままの状態画像に加わるノイズを低減した後で出力してもよい。
【0076】
(4)上述した各実施例および各変形例では、X線照射領域判別部33は、画像処理部15と個別に設けられていた。しかしながら、画像処理部15は、X線照射領域判別部33を有していてもよい。
【0077】
(5)上述した各実施例および各変形例では、X線管3およびFPD4を被検体Mの体軸方向11に対して平行移動ながら長尺撮影の各回のX線撮影を行い、X線照射領域画像G2およびX線管3の位置情報Pを取得していた。しかしながら、X線管3の向きを変更しながらX線を照射するようにしてもよい。すなわち、X線管3は、被検体Mの体軸方向11に沿うように、予め設定された軸(例えば、水平軸)周りに首振り運動する。
【0078】
図9を参照する。X線撮影装置41は、まず、
図1のX線撮影装置1と比べて、X線管移動部8に代えてX線管角度変更部43を、また、X線管位置センサ31に代えてX線管角度センサ45を備えている。X線管角度変更部43は、X線管3の角度を被検体Mの体軸方向11に沿うように予め設定された軸周りに変更する。X線管角度センサ45は、X線撮影ごとのX線管3の角度情報θを取得する。そして、本変形例では、長尺画像作成部47は、角度情報θに基づいてX線照射領域画像G2の各々におけるFPD4の移動の方向についての中心が撮影時のX線照射の位置になるようにX線照射領域画像G2をずらし、各X線照射領域画像G2を繋ぎ合わせて長尺画像G3を作成する。
【0079】
図10を参照して角度情報θに基づいてX線照射領域画像G2をずらす位置の算出方法について説明する。まず、X線の中心軸axが被検体Mの体軸方向11に対して直交する方向(Z方向)になるようにX線管3から照射されるときのX線管3の角度を基準とする。このときのX線管3の角度を基準とした角度が角度情報θである。また、X線管3の焦点とFPD4の検出面4aまでの撮影距離Dが設定されている。角度情報θおよび撮影距離DからX線照射の位置Pa(=D×tanθ)が算出される。X線照射の位置Pa(Pa1,Pa2,Pa3,…,Pa(n))は、X線撮影ごとの角度情報θ(θ1,θ2,θ3,…、θn)により算出される。なお、X線管3の角度情報θを、X線撮影ごとのX線照射領域画像G2に付加してもよい。また、X線照射の位置Paは、長尺画像作成部47によって算出されるが、主制御部17で算出して長尺画像作成部47に転送してもよい。
【0080】
なお、X線管角度変更部43が本発明のX線源角度変更部に相当し、X線管角度センサ45が本発明の角度情報取得部に相当する。
【0081】
また、X線撮影装置41を次のような構成としてもよい。X線検出器移動部9は、FPD4をX線管3から照射されるX線軸axの移動速度よりも平均的に遅く移動させてもよい。また、X線管3の角度情報θは、X線管角度センサ45により取得される角度情報θではなく、X線撮影時間間隔情報Uと、X線管3の角速度により算出されるものであってもよい。すなわち、X線撮影時間間隔が一定でかつ、X線管3から照射されるX線軸axの移動速度が一定の場合、これらから、X線撮影ごとに取得されるX線照射領域画像G2をどれだけずらせばよいか、各回のX線照射の位置Paを算出することができる。なお、X線管3から照射されるX線軸axの移動速度は一定でなくてもよい。
【0082】
本変形例によれば、X線管3の向きを変えながら長尺撮影することが実施例1と異なるものの、実施例1と同様の効果を有する。
【0083】
(6)上述した各実施例および各変形例では、X線検出器の一例として、FPD4を用いて説明したが、イメージインテンシファイアおよびカメラであってもよい。
【0084】
(7)上述した各実施例および各変形例では、
図3に示すように、長尺撮影の各回の撮影範囲Eは、スロット撮影するためスリット状であった。例えば、スリット状以外の矩形の撮影範囲であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,41 … X線撮影装置
3 … X線管
4 … フラットパネル型X線検出器(FPD)
4a … 検出面
7 … コリメータ
8 … X線管移動部
9 … X線検出器移動部
11 … 体軸方向
17 … 主制御部
31 … X線管位置センサ
33 … X線照射領域判別部
35,47 … 長尺画像作成部
43 … X線管角度変更部
45 … X線管角度センサ
M … 被検体
R1 … 検出領域
R2 … 狭い領域
G1 … X線画像
G2 … X線照射領域画像
G3 … 長尺画像
P(P1,P2,P3,…,Pn) … 位置情報(位置)
SL … 基準線