特許第6103005号(P6103005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6103005-音楽再生装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103005
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】音楽再生装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/16 20060101AFI20170316BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20170316BHJP
   H03M 1/66 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G06F3/16 400
   H03F3/68 C
   H03M1/66 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-171945(P2015-171945)
(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公開番号】特開2017-49764(P2017-49764A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年9月23日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】淺尾 勁
(72)【発明者】
【氏名】川口 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 尚徳
(72)【発明者】
【氏名】中西 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】浅原 宏之
(72)【発明者】
【氏名】北川 範匡
【審査官】 間野 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−5291(JP,A)
【文献】 木塚茂,PCM1704を採用,DACの決定版となるか 96kHz/24bit Super Hi−Fi DAコンバータの製作(2),ラジオ技術,(株)アイエー出版,2001年 7月 1日,第55巻,第7号,第25−33頁
【文献】 自作オーディオ&電子工作奮戦記:作品紹介 PCM2706 USB DAC + opt:バランス/アンバランス型HPA,[online],2014年10月25日,[平成28年10月11日検索],インターネット<URL:http://higa284.web.fc2.com/PCM2706_DAC_HPA.html>,URL,http://higa284.web.fc2.com/PCM2706_DAC_HPA.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/16
H03F 3/68
H03M 1/66
H03H 11/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バランス出力とアンバランス出力とを有する音楽再生装置であって、
左右2チャンネルのデジタル音声信号を左右2チャンネルのアナログ音声信号にD/A変換する第1D/Aコンバーターと、
前記第1D/AコンバーターがD/A変換した左右2チャンネルのアナログ音声信号を増幅する第1増幅回路と、
左右2チャンネルのデジタル音声信号を左右2チャンネルのアナログ音声信号にD/A変換する第2D/Aコンバーターと、
前記第2D/AコンバーターがD/A変換した左右2チャンネルのアナログ音声信号を反転した左右2チャンネルの反転アナログ音声信号を増幅する第2増幅回路と、
前記第1D/Aコンバーターと前記第1増幅回路とに電源電圧を供給する第1電源回路と、
前記第2D/Aコンバーターと前記第2増幅回路とに電源電圧を供給する第2電源回路と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、アンバランス出力の場合、前記第2電源回路をシャットダウンすることを特徴とする音楽再生装置。
【請求項2】
前記第1増幅回路が増幅した左右2チャンネルのアナログ音声信号は、バランス出力端
子、及び、アンバランス端子に出力され、
前記第2増幅回路が増幅した左右2チャンネルの反転アナログ音声信号は、前記バラン
ス出力端子に出力されることを特徴とする請求項1に記載の音楽再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンに音声信号を出力する音楽再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドホンに音声信号を出力する音楽再生装置において、ヘッドホン出力には、アンバランス、バランスと呼ばれる方式がある(例えば、特許文献1参照。)。アンバランス方式には、直径3.5mmの3極端子が用いられており、「ホット」、「コールド」の2種類で音声信号を伝送する。一方、バランス方式には、直径2.5mmの4極端子が用いられており、「グラウンド」、「ホット」、「コールド」の3種類で信号を伝送する。「コールド」は、「ホット」の逆相である。外来ノイズが発生した場合、「ホット」、「コールド」双方に同じ位相のノイズが乗る。「コールド」の位相を反転し、「ホット」の信号とミックス(混合)することで、外来ノイズは打ち消しあい、音声信号の振幅は、倍になる。このため、バランス方式は、ノイズに強く、音質が良い。
【0003】
バランス出力を有する音楽再生装置は、2チャンネルのD/Aコンバーター(以下、「DAC」という。)と、2チャンネルの増幅回路と、から構成されるブロックを2つ備える。各ブロックは、Lチャンネル音声信号、Rチャンネル音声信号用として使用されている。バランス方式は一般的ではないため、バランス出力を有する音楽再生装置は、標準的なアンバランス出力も有する。コストの観点から、バランス出力、アンバランス出力のための回路は、共通して設計される。すなわち、アンバランス出力においても、上記各ブロックは、Lチャンネル信号、Rチャンネル信号用として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−005291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DACには、I2S形式でデジタル音声信号が入力される。Lチャンネル音声信号用のDACには、Lチャンネル音声信号と、反転Lチャンネル音声信号と、が入力される。また、Rチャンネル音声信号用のDACには、Rチャンネル音声信号と、反転Rチャンネル音声信号と、が入力される。従って、4チャンネルの信号伝送となり、信号出力と配線とが多いという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、D/Aコンバーター(DAC)への信号出力と配線とを削減可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の音楽再生装置は、バランス出力とアンバランス出力とを有する音楽再生装置であって、左右2チャンネルのデジタル音声信号を左右2チャンネルのアナログ音声信号にD/A変換する第1D/Aコンバーターと、前記第1D/AコンバーターがD/A変換した左右2チャンネルのアナログ音声信号を増幅する第1増幅回路と、左右2チャンネルのデジタル音声信号を左右2チャンネルのアナログ音声信号にD/A変換する第2D/Aコンバーターと、前記第2D/AコンバーターがD/A変換した左右2チャンネルのアナログ音声信号を反転した左右2チャンネルの反転アナログ音声信号を増幅する第2増幅回路と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、第2増幅回路には、第2D/AコンバーターがD/A変換した左右2チャンネルのアナログ音声信号を反転した左右2チャンネルの反転アナログ音声信号が入力される。ここで、第1D/Aコンバーター、及び、第2D/Aコンバーターには、I2S形式で左右2チャンネルのデジタル音声信号を入力することができる。このため、D/Aコンバーターへの信号出力は、2チャンネルで実現でき、従来と比べて、信号出力と配線とを削減することができる。
【0009】
また、第1D/Aコンバーターと第1増幅回路とを使用して、アンバランス出力可能となる。これにより、アンバランス出力では、第2D/Aコンバーターと、第2増幅回路と、をシャットダウン可能であるため、無駄な消費電力を削減することができる。
【0010】
また、第2D/Aコンバーターと第2増幅回路とを未実装とするだけで、アンバランス出力のみを有する音楽再生装置とすることができる。
【0011】
また、非反転のアナログ音声信号の信号発生源と反転のアナログ音声信号の信号発生源として、D/Aコンバーターの内部回路の同じ部位を使用することができるため、上下対称性をよくすることができる。
【0012】
第2の発明の音楽再生装置は、第1の発明の音楽再生装置において、前記第1D/Aコンバーターと前記第1増幅回路とに電源電圧を供給する第1電源回路と、前記第2D/Aコンバーターと前記第2増幅回路とに電源電圧を供給する第2電源回路と、制御部と、をさらに備え、前記制御部は、アンバランス出力の場合、前記第2電源回路をシャットダウンすることを特徴とする。
【0013】
本発明では、制御部は、アンバランス出力の場合、第2電源回路をシャットダウンする。これにより、アンバランス出力では、第2電源回路から、第2D/Aコンバーターと第2増幅回路とに、電源電圧が供給されない。従って、第2電源回路と、第2D/Aコンバーターと、第2増幅回路と、がシャットダウンするため、無駄な消費電力を削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、D/Aコンバーター(DAC)への信号出力と配線とを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るデジタルオーディオプレーヤーの構成を示すブロック図である。
図2】DAC、増幅回路、及びこれらの周辺回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るデジタルオーディオプレーヤー(以下、「DAP」という。)の構成を示すブロック図である。DAP1(音楽再生装置)は、ヘッドホン101、102にアナログオーディオデータ(アナログ音声信号)を出力する。ヘッドホン101、102は、アナログオーディオデータに基づいて、音声を外部に出力する。ヘッドホン101は、バランス用のヘッドホンであり、バランス出力端子に接続される。ヘッドホン102は、アンバランス用のヘッドホンであり、アンバランス出力端子に接続される。DAP1は、バランス出力とアンバランス出力とを有する。
【0017】
図1に示すように、DAP1は、CPU2、記憶部3、表示部4、操作部5、DSP6、D/Aコンバーター(以下、「DAC」という。)7、8、増幅回路9、10、無線モジュール11、USBインターフェース(以下、「USB I/F」という。)12を備える。
【0018】
CPU(Central Processing Unit)2(制御部)は、制御プログラム、OSプログラム、アプリケーションプログラムに従って、DAP1を構成する各部を制御する。記憶部3は、CPU2の主メモリとして機能するRAM(Random Access Memory)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、OSプログラム、アプリケーションプログラム等のプログラム、デジタルオーディオデータ等の各種データを記憶するフラッシュメモリから構成されている。なお、記憶部3は、例示する構成に限られず、HDD(Hard Disk Drive)等を含んでいてもよい。
【0019】
表示部4は、種々の画像(静止画像、動画像を含む)を表示するものであり、液晶パネルにより構成されている。操作部5は、各種設定を行うための操作キー、及び、表示部4と連動したタッチパネルを備えている。ユーザーは、操作部5を介して、各種の文字入力、設定などを行うことが可能である。
【0020】
DSP(Digital Signal Processor)6は、デジタルオーディオデータに、イコライザー処理等の信号処理を行う。DAC7、8は、デジタルオーディオデータをアナログオーディオデータにD/A変換する。増幅回路9、10は、DAC7、8がD/A変換したアナログオーディオデータを増幅し、ヘッドホン101又はヘッドホン102に出力する。DAC7、8、増幅回路9、10の詳細については、後述する。無線モジュール11は、Bluetooth(登録商標)規格、Wi−Fi規格に従った無線通信を行うためのものである。USB I/F12は、USB規格に従った通信を行うためのものである。
【0021】
図2は、DAC7、8、増幅回路9、10及びこれらの周辺回路を示す図である。図2に示すように、DAP1は、さらに、DC/DCコンバーター13、リニアレギュレーター14、15を備える。DC/DCコンバーター13は、バッテリーから供給される電圧を昇圧し、昇圧した電圧をリニアレギュレーター14、15に供給する。リニアレギュレーター14(第1電源回路)は、DAC7(第1D/Aコンバーター)と増幅回路9(第1増幅回路)とに電源電圧を供給する。リニアレギュレーター15(第2電源回路)は、DAC8(第2D/Aコンバーター)と増幅回路10(第2増幅回路)とに電源電圧を供給する。なお、リニアレギュレーター14、15は、DC/DCコンバーター13からの電圧を降圧して、各回路に供給する。
【0022】
ポジティブ側(非反転信号用)のDAC7には、I2S形式のLR(左右)2チャンネルのデジタルオーディオデータ(デジタル音声信号)が入力される。DAC7は、LR2チャンネルのデジタルオーディオデータを、LR2チャンネルのアナログオーディオデータ(アナログ音声信号)に変換する。ポジティブ側(非反転信号用)の増幅回路9は、DAC7がD/A変換したLR2チャンネルのアナログオーディオデータを増幅する。増幅回路9は、2つの増幅器18、19を含む。増幅器18は、Lチャンネルのアナログオーディオデータを増幅する。増幅器19は、Rチャンネルのアナログオーディオデータを増幅する。増幅回路9が増幅したアナログオーディオデータは、バランス出力端子16、アンバランス出力端子17に出力される。
【0023】
ネガティブ側(反転信号用)のDAC8には、I2S形式のLR2チャンネルのデジタルオーディオデータが入力される。DAC8は、LR2チャンネルのデジタルオーディオデータを、LR2チャンネルのアナログオーディオデータにD/A変換する。ネガティブ側(反転信号用)の増幅回路10には、DAC8がD/A変換したLR2チャンネルのアナログオーディオデータを反転したLR2チャンネルの反転アナログオーディオデータが入力される。増幅回路10は、LR2チャンネルの反転アナログオーディオデータを増幅する。増幅回路10は、2つの増幅器20、21を含む。増幅器20は、Lチャンネルの反転アナログオーディオデータを増幅する。増幅器21は、Rチャンネルの反転アナログオーディオデータを増幅する。増幅回路10が増幅した反転アナログオーディオデータは、バランス出力端子16に出力される。
【0024】
バランス出力の場合、CPU2は、リニアレギュレーター14からの電源電圧をDAC7と増幅回路9とに供給する。また、CPU2は、リニアレギュレーター15からの電源電圧をDAC8と増幅回路10とに供給する。アンバランス出力の場合、CPU2は、リニアレギュレーター14からの電源電圧をDAC7と増幅回路9とに供給する。一方、CPU2は、リニアレギュレーター15をシャットダウンする。このため、リニアレギュレーター15と、DAC8と、増幅回路10とは、シャットダウンする。
【0025】
例えば、DAP1が消費するバッテリー電流が、150mAとすると、1600mAhのバッテリーでは、10.6時間動作可能である。仮に、リニアレギュレーター15、DAC8、増幅回路10の消費するバッテリー電流が、70mAとする。アンバランス出力においても、リニアレギュレーター15、DAC8、増幅回路10を動作させると、150mA+70mA=220mAとなる。このため、バッテリーは、7時間程度しか持たなくなるが、リニアレギュレーター15、DAC8、増幅回路10がシャットダウンするため、バッテリーを長くもたせることができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態では、増幅回路10には、DAC8がD/A変換したLR2チャンネルのアナログオーディオデータを反転したLR2チャンネルの反転アナログオーディオデータが入力される。ここで、DAC7、8には、I2S形式でLR2チャンネルのデジタルオーディオデータを入力することができる。このため、DAC7、8への信号出力は、2チャンネルで実現でき、従来と比べて、信号出力と配線とを削減することができる。
【0027】
また、DAC7と増幅回路9とを使用して、アンバランス出力可能となる。これにより、アンバランス出力では、DAC8と、増幅回路10と、をシャットダウン可能であるため、無駄な消費電力を削減することができる。
【0028】
また、DAC8と増幅回路10とを未実装とするだけで、アンバランス出力のみを有するDAPとすることができる。
【0029】
また、非反転のアナログオーディオデータの信号発生源と反転のアナログオーディオデータの信号発生源として、DAC7、8の内部回路の同じ部位を使用することができるため、上下対称性をよくすることができる。
【0030】
また、本実施形態では、CPU2は、アンバランス出力の場合、リニアレギュレーター15をシャットダウンする。これにより、アンバランス出力では、リニアレギュレーター15から、DAC8と増幅回路10とに、電源電圧が供給されない。従って、リニアレギュレーター15と、DAC8と、増幅回路10と、がシャットダウンするため、無駄な消費電力を削減することができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0032】
上述の実施形態においては、音楽再生装置として、DAPを例示した。これに限らず、スマートフォン、タブレットPC、USB DAC等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ヘッドホンに音声信号を出力する音楽再生装置に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0034】
1 DAP(音楽再生装置)
2 CPU(制御部)
7 DAC(第1D/Aコンバーター)
8 DAC(第2D/Aコンバーター)
9 増幅回路(第1増幅回路)
10 増幅回路(第2増幅回路)
14 リニアレギュレーター(第1電源回路)
15 リニアレギュレーター(第2電源回路)
16 バランス出力端子
17 アンバランス出力端子
101 ヘッドホン
102 ヘッドホン
図1
図2