(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内側抗張体は、一端部が、前記本体部の短手方向における一側に隣り合う前記抗張体の一端部と電気的に接続され且つ他側に隣り合う前記抗張体の一端部と電気的に接続されず、他端部が、前記本体部の短手方向における他側に隣り合う前記抗張体の他端部と電気的に接続され且つ一側に隣り合う前記抗張体の他端部と電気的に接続されていない請求項2に記載の乗客コンベア用手摺。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。各図では、同一又は相当する部分に同一の符号を付している。重複する説明は、適宜簡略化あるいは省略する。
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1では、乗客コンベアの一例として、エスカレーターについて具体的に説明する。動く歩道等の他の乗客コンベアについては、説明を省略する。
【0012】
図1は、エスカレーターの構造を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、エスカレーターは、トラス1を備えている。トラス1は、上階と下階との間に架け渡されている。トラス1の内部には、駆動機2、メインスプロケット3、ステップ用下部スプロケット4及び図示しないステップ用上部スプロケットが設けられている。駆動機2、メインスプロケット3及びステップ用上部スプロケットは、上階側に配置されている。ステップ用下部スプロケット4は、下階側に配置されている。ステップ用上部スプロケットは、メインスプロケット3と同軸に設けられている。
【0014】
駆動機2は、駆動スプロケット2aを備えている。駆動スプロケット2a及びメインスプロケット3には、無端状の駆動チェーン5が巻き掛けられている。ステップ用上部スプロケット及びステップ用下部スプロケット4には、無端状のステップチェーン6が巻き掛けられている。
【0015】
エスカレーターは、複数のステップ7、手摺8及び手摺駆動装置9を備えている。複数のステップ7は、下階から上階へ向かって並ぶように、ステップチェーン6によって連結されている。手摺8は、無端状に形成された乗客コンベア用手摺である。手摺8は、複数のステップ7が並ぶ方向に沿って、ステップ7の左右両側に設けられている。手摺駆動装置9は、トラス1の内部に設けられている。手摺駆動装置9は、1つの手摺8に対して少なくとも1つ設けられる。
【0016】
トラス1の内部には、図示しない手摺用上部スプロケットが設けられている。手摺用上部スプロケットは、メインスプロケット3及びステップ用上部スプロケットと同軸に設けられている。手摺駆動装置9は、複数の手摺駆動スプロケット及び複数の手摺駆動ローラを備えている。それぞれの手摺駆動ローラは、それぞれの手摺駆動スプロケットに対応して同軸に設けられている。手摺駆動スプロケットには、手摺チェーンが巻き掛けられている。
【0017】
駆動機2は、駆動スプロケット2aを回転させる。駆動スプロケット2aの回転により、駆動チェーン5は、駆動スプロケット2aとメインスプロケット3の間を循環するように移動する。駆動機2の動力は、駆動スプロケット2aから駆動チェーン5を介してメインスプロケット3に伝達される。メインスプロケット3、ステップ用上部スプロケット及び手摺用上部スプロケットは、駆動スプロケット2aの回転に伴って回転する。
【0018】
ステップ用上部スプロケットの回転により、ステップチェーン6は、ステップ用上部スプロケットとステップ用下部スプロケット4との間を循環移動する。つまり、ステップ7は、上階と下階との間を循環移動する。
【0019】
手摺用上部スプロケットの回転に伴って、手摺駆動装置9の手摺チェーンが循環移動する。手摺チェーンの循環移動に伴って、手摺駆動スプロケット及び手摺駆動ローラが回転する。手摺8は、回転する手摺駆動ローラとの摩擦力によって、上階と下階との間を循環移動する。手摺8は、ステップ7の移動方向と同じ方向に移動する。
【0020】
図2は、実施の形態1における乗客コンベア用手摺の長手方向から見た断面図である。
図2における上下方向は、乗客コンベア用手摺の短手方向である。
【0021】
図2に示すように、手摺8は、本体部10を備えている。本体部10は、導電性を有しない。本体部10は、例えば、合成樹脂で形成されている。本体部10は、長手方向から見た断面形状がC字状を呈する。つまり、本体部10は、手摺8の進行方向から見た断面形状がC字状を呈する。本体部10は、外側面10a及び内側面10bを有している。外側面10aは、乗客コンベアの利用者が手摺8を掴む際に触れる部分である。内側面10bは、手摺駆動ローラと接触する部分である。
【0022】
図2に示すように、本体部10には、抗張体11が内蔵されている。抗張体11は、本体部10の長手方向に沿って埋め込まれている。抗張体11は、導電性を有する。抗張体11は、例えば、金属材料で形成されている。抗張体11は、例えば、直径1mm程度の太さに形成されている。
【0023】
抗張体11は、1つの手摺8に対して、少なくとも3本設けられている。抗張体11は、1つの手摺8に対して、例えば、10本以上設けられる。
図2は、1つの手摺8に10本の抗張体11が内蔵されている場合を示している。複数の抗張体11は、互いに接触せずに、本体部10の短手方向に沿って並べられている。
【0024】
以下、複数の抗張体11のうち、本体部10の短手方向において最も外側に配置されたものを外側抗張体11aと呼ぶ。
図2に示す抗張体11のうち、上から数えて1番目及び10番目は、外側抗張体11aである。また、複数の抗張体11のうち、2本の外側抗張体11aの間に配置されたものを内側抗張体11bと呼ぶ。
図2に示す抗張体11のうち、上から数えて2番目から9番目までは、内側抗張体11bである。
【0025】
図3は、乗客コンベア用手摺の抗張体の断面図である。
【0026】
図3に示すように、抗張体11は、例えば、ワイヤ12をより合わせて形成されたワイヤロープである。1本の抗張体11は、例えば、4本のワイヤ12を7組使用して形成される。
【0027】
図4は、実施の形態1における乗客コンベア用手摺の外観図である。
図4は、
図2における手摺8を右側から見た状態を示している。
図4における上下方向は、乗客コンベア用手摺の短手方向である。
【0028】
図4に示すように、本体部10の内側面10bには、複数の開口部が形成されている。内側面10bに形成された開口部には、結線用開口部13及び接触用開口部14が含まれる。結線用開口部13は、図中に示す開口部のうち長方形を呈するものである。接触用開口部14は、図中に示す開口部のうち円形を呈するものである。以下、
図4における左側に位置する4つの結線用開口部13及び2つの接触用開口部14を「H側」の開口部と呼ぶ。また、
図4における右側に位置する5つの結線用開口部13を「J側」の開口部と呼ぶ。
【0029】
図4に示すように、H側の複数の開口部は、本体部10の短手方向における並び順で連続する2つが本体部10の長手方向において互いに異なる位置に配置されている。また、J側の複数の開口部は、本体部10の短手方向における並び順で連続する2つが本体部10の長手方向において互いに異なる位置に配置されている。つまり、それぞれの開口部は、本体部10の短手方向に沿って他の開口部と隣接しない位置に形成されている。
【0030】
図4に示すように、開口部からは、本体部10に内蔵された抗張体11が露出している。結線用開口部13からは、隣り合う2本の抗張体11が露出している。つまり、結線用開口部13は、例えば、手摺8の短手方向において、隣り合う2本の抗張体11の間隔以上且つ当該間隔の2倍未満の大きさに形成されている。また、接触用開口部14からは、1本の抗張体11が露出している。つまり、接触用開口部14は、例えば、手摺8の短手方向において、隣り合う2本の抗張体11の間隔未満の大きさに形成されている。
【0031】
図5は、実施の形態1における乗客コンベア用手摺の厚さ方向から見た断面図である。
図5における上下方向は、乗客コンベア用手摺の短手方向である。
図5には、
図4に示す開口部の位置が仮想的に示されている。
【0032】
図5に示すように、抗張体11は、無端状に形成されていない。抗張体11は、本体部10の長手方向において両端が接触せず対向した状態で設けられている。つまり、
図5に示すように、同一の抗張体11の両端の間には隙間15が存在する。複数の抗張体11は、本体部10の短手方向において隣り合う2本の抗張体11の隙間15同士が隣り合わないように配置されている。
【0033】
以下、
図4及び
図5を参照して、開口部と抗張体11との関係について説明する。以下の説明では、1本の抗張体11全体の中で、図中で隙間15の左側に位置する部位を一端部と呼び、図中で隙間15の右側に位置する部位を他端部と呼ぶ。
【0034】
図4及び
図5に示す抗張体11のうち、上から数えて1番目及び10番目は、外側抗張体11aである。
図4及び
図5に示す抗張体11のうち、上から数えて2番目から9番目までは、内側抗張体11bである。
【0035】
上から数えて1番目の抗張体11の一端部は、H側の接触用開口部14から露出している。上から数えて1番目の抗張体11の他端部は、上から数えて2番目の抗張体11の他端部と共に、J側の結線用開口部13から露出している。
【0036】
上から数えて2番目の抗張体11の一端部は、上から数えて3番目の抗張体11の一端部と共に、H側の結線用開口部13から露出している。上から数えて3番目の抗張体11の他端部は、上から数えて4番目の抗張体11の他端部と共に、J側の結線用開口部13から露出している。上から数えて4番目の抗張体11の一端部は、上から数えて5番目の抗張体11の一端部と共に、H側の結線用開口部13から露出している。上から数えて5番目の抗張体11の他端部は、上から数えて6番目の抗張体11の他端部と共に、J側の結線用開口部13から露出している。上から数えて6番目の抗張体11の一端部は、上から数えて7番目の抗張体11の一端部と共に、H側の結線用開口部13から露出している。上から数えて7番目の抗張体11の他端部は、上から数えて8番目の抗張体11の他端部と共に、J側の結線用開口部13から露出している。上から数えて8番目の抗張体11の一端部は、上から数えて9番目の抗張体11の一端部と共に、H側の結線用開口部13から露出している。
【0037】
上から数えて9番目の抗張体11の他端部は、上から数えて10番目の抗張体11の他端部と共に、J側の結線用開口部13から露出している。上から数えて10番目の抗張体11の一端部は、H側の接触用開口部14から露出している。
【0038】
図4及び
図5を参照して説明したように、全ての抗張体11の一端部及び他端部は、本体部10の内側面10bに形成された開口部から露出する。結線用開口部13は、隣り合う2本の抗張体11の一端部同士の組又は他端部同士の組を露出させる。接触用開口部14は、抗張体11の一端部又は他端部のうち結線用開口部13から露出しない側を露出させる。
【0039】
図4及び
図5を参照して説明したように、内側抗張体11bの一端部は、本体部10の短手方向における一側に隣り合う抗張体11の一端部と共に、結線用開口部13から露出する。当該内側抗張体11bの一端部は、他側に隣り合う抗張体11の一端部と共には結線用開口部13から露出しない。当該内側抗張体11bの他端部は、本体部10の短手方向における他側に隣り合う抗張体11の他端部と共に、結線用開口部13から露出する。当該内側抗張体11bの他端部は、本体部10の短手方向における一側に隣り合う抗張体11の他端部と共には結線用開口部13から露出しない。外側抗張体11aの一端部又は他端部のうち、隣り合う内側抗張体11bの端部と共に結線用開口部13から露出しない側は、接触用開口部14から露出する。
【0040】
図6は、実施の形態1における測定治具の模式図である。
【0041】
図6に示すように、測定治具は、基板16を備えている。基板16は、例えば、導電性を有しない材料で形成されている。基板16には、導電性を有する複数の端子が設けられている。複数の端子は、例えば、基板16に対して垂直に設けられている。複数の端子は、手摺8の内側面10bに形成された複数の開口部に対して同時に挿入可能な位置関係で配置されている。
【0042】
基板16には、結線用端子17及び接触用端子18が設けられている。測定治具は、H側用の基板16及びJ側用の基板16を備えている。H側用の基板16には、4つの結線用端子17及び2つの接触用端子18が設けられている。J側用の基板16には、5つの結線用端子17が設けられている。結線用端子17は、内側面10bに形成された結線用開口部13に対応して基板16に配置されている。接触用端子18は、内側面10bに形成された接触用開口部14に対応して基板16に配置されている。
【0043】
結線用端子17は、結線用開口部13に挿入された場合に、当該結線用開口部13から露出している2本の抗張体11の双方に接触するように形成されている。結線用端子17は、例えば、隣り合う2本の抗張体11の間隔と同程度の間隔で並べられた2つの針状部材を電気的に接続したものでもよい。また、結線用端子17は、例えば、隣り合う2本の抗張体11の間隔と同程度の太さに形成された1つの針状部材でもよい。
【0044】
接触用端子18は、接触用開口部14に挿入された場合に、当該接触用開口部14から露出している1本の抗張体11に接触するように形成されている。接触用端子18は、複数の抗張体11に同時に接触しない形状及び太さに形成されていればよい。
【0045】
測定治具は、手摺8の内側面10bに形成された各開口部に対して、同時に各端子が挿入されるようにして使用される。H側用の基板16に設けられた4つの結線用端子17は、H側の結線用開口部13のそれぞれに挿入される。H側用の基板16に設けられた2つの接触用端子18は、H側の接触用開口部14のそれぞれに挿入される。J側用の基板16に設けられた5つの結線用端子17は、J側の接触用開口部14のそれぞれに挿入される。
【0046】
測定治具が使用されると、接触用端子18は、挿入された開口部から露出している1本の抗張体11に接触する。H側用の基板16に設けられた接触用端子18の一方は、上から数えて1番目の抗張体11の一端部に接触する。H側用の基板16に設けられた接触用端子18の他方は、上から数えて10番目の抗張体11の一端部に接触する。
【0047】
測定治具が使用されると、結線用端子17は、挿入された開口部から露出している2本の抗張体11の双方に接触する。つまり、結線用端子17は、同じ開口部から露出している2本の抗張体を電気的に接続する。
【0048】
J側用の基板16に設けられた結線用端子17の1つは、上から数えて1番目及び2番目の抗張体11の他端部同士を電気的に接続する。J側用の基板16に設けられた結線用端子17の1つは、上から数えて3番目及び4番目の抗張体11の他端部同士を電気的に接続する。J側用の基板16に設けられた結線用端子17の1つは、上から数えて5番目及び6番目の抗張体11の他端部同士を電気的に接続する。J側用の基板16に設けられた結線用端子17の1つは、上から数えて7番目及び8番目の抗張体11の他端部同士を電気的に接続する。J側用の基板16に設けられた結線用端子17の1つは、上から数えて9番目及び10番目の抗張体11の他端部同士を電気的に接続する。
【0049】
H側用の基板16に設けられた結線用端子17の1つは、上から数えて2番目及び3番目の抗張体11の一端部同士を電気的に接続する。H側用の基板16に設けられた結線用端子17の1つは、上から数えて4番目及び5番目の抗張体11の一端部同士を電気的に接続する。H側用の基板16に設けられた結線用端子17の1つは、上から数えて6番目及び7番目の抗張体11の一端部同士を電気的に接続する。H側用の基板16に設けられた結線用端子17の1つは、上から数えて8番目及び9番目の抗張体11の一端部同士を電気的に接続する。
【0050】
測定治具が使用されると、上記のように、H側用の基板16に設けられた結線用端子17によって、隣り合う抗張体11の一端部同士が電気的に接続される。また、J側用の基板16に設けられた結線用端子17によって、隣り合う抗張体11の他端部同士が電気的に接続される。これにより、電気的には、上から数えて1番目の抗張体11の一端部から10番目の抗張体11の一端部までが直列接続された状態となる。つまり、一方の外側抗張体11aの一端部から他方の外側抗張体11aの一端部までが、全ての内側抗張体11bを順番に介して電気的に接続された状態となる。この状態において、例えば、2つの接触用端子18の間の電気抵抗を測定した場合、全ての抗張体11の合成抵抗が測定される。また、この状態において、例えば、同一の抗張体11に接触している2つの端子の間の電気抵抗を測定した場合、1本の抗張体11の電気抵抗が測定される。
【0051】
実施の形態1において、本体部10の内側面10bには、全ての抗張体11の一端部及び他端部を露出させる開口部が形成されている。つまり、全ての抗張体11は、乗客コンベア用手摺から本体部10を取り除かなくとも触れることが可能である。このため、乗客コンベア用手摺に内蔵された複数の抗張体11の電気抵抗を一度に測定できる。これにより、例えば、1つの乗客コンベア用手摺に内蔵された全ての抗張体11の合成抵抗として正常な値が測定された場合、当該乗客コンベア用手摺には劣化した抗張体11が含まれていないと判断できる。一方、1つの乗客コンベア用手摺に内蔵された全ての抗張体11の合成抵抗として異常な値が測定された場合、当該乗客コンベア用手摺には劣化した抗張体11が含まれていると判断できる。つまり、実施の形態1によれば、1つの乗客コンベア用手摺につき電気抵抗の測定を1回行うだけで、劣化した抗張体11が含まれているか否かを判断することができる。その結果、乗客コンベア用手摺に内蔵された抗張体11の劣化診断を効率化することができる。なお、乗客コンベア用手摺に劣化した抗張体11が含まれていると判断された場合は、それぞれの抗張体11の電気抵抗を個別に測定すれば、劣化した抗張体11を特定できる。
【0052】
実施の形態1において、結線用開口部13は、隣り合う2つの抗張体11の一端部同士の組又は他端部同士の組を露出させる。接触用開口部14は、抗張体11の一端部又は他端部のうち結線用開口部13から露出しない側を露出させる。内側抗張体11bは、一端部が、本体部10の短手方向における一側に隣り合う抗張体11の一端部と共に結線用開口部13から露出し且つ他側に隣り合う抗張体11の一端部と共に結線用開口部13から露出せず、他端部が、本体部10の短手方向における他側に隣り合う抗張体11の他端部と共に結線用開口部13から露出し且つ一側に隣り合う抗張体11の他端部と共に結線用開口部13から露出しない。外側抗張体11aは、一端部又は他端部のうち隣り合う内側抗張体11bの端部と共に前記結線用開口部13から露出しない側が前記接触用開口部14から露出する。このため、実施の形態1によれば、同じ結線用開口部13から露出する2つの抗張体11同士を電気的に接続することで、容易に全ての抗張体11の合成抵抗を測定できる。その結果、乗客コンベア用手摺に内蔵された抗張体11の劣化診断を効率化することができる。
【0053】
実施の形態1において、それぞれの開口部は、本体部10の短手方向に沿って他の開口部と隣接しない位置に形成されている。つまり、複数の開口部は、本体部10の短手方向に沿って一列に並ぶことなく、互い違いに配置されている。このため、実施の形態1によれば、手摺駆動ローラが開口部に入り込んだり引っ掛かったりすることを防止できる。その結果、乗客コンベア用手摺の循環移動を妨げることなく、複数の抗張体11の電気抵抗を一度に測定できる。
【0054】
実施の形態1において、乗客コンベア用手摺に対して用いられる測定治具は、導電性を有しない基板16を備えている。測定治具は、結線用端子17及び接触用端子18を備えている。結線用端子17は、結線用開口部13に対応して基板16に配置され、隣り合う2つの抗張体11の双方と接触するように形成されている。接触用端子18は、接触用開口部14に対応して基板16に配置されている。測定治具を使用すると、同じ結線用開口部13から露出する2つの抗張体11同士を容易に電気的に接続できる。このため、実施の形態1によれば、測定治具を用いることで、容易に全ての抗張体11の合成抵抗を測定できる。その結果、乗客コンベア用手摺に内蔵された抗張体11の劣化診断をさらに効率化することができる。
【0055】
実施の形態1において、測定治具は、H側用の基板16の端子及びJ側用の基板16の端子が1つの基板16に設けられたものでもよい。この場合であっても、各端子が各開口部に対応して配置されていれば、容易に全ての抗張体11の合成抵抗を測定できる。
【0056】
実施の形態1において、電気抵抗を測定する際には、測定治具を使用しなくともよい。この場合であっても、例えば、隣り合う抗張体11同士を電気的に接続した上で、接触用開口部14から露出する外側抗張体11aの端部に測定機器の端子を直接触れさせれば、全ての抗張体11の合成抵抗を測定できる。
【0057】
実施の形態2.
以下、実施の形態1との相違点を中心に、乗客コンベア用手摺の構成を説明する。実施の形態1と同一又は相当する部分には同一の符号を付して、一部の説明を省略する。
【0058】
図7は、実施の形態2における乗客コンベア用手摺の厚さ方向から見た断面図である。
図7における上下方向は、乗客コンベア用手摺の短手方向である。
【0059】
図7に示すように、実施の形態2において、手摺8には、接触具19及び連結具20が予め設けられている。接触具19及び連結具20は、導電性を有する。接触具19及び連結具20は、抗張体11に取り付けられている。
【0060】
接触具19は、
図5に仮想的に示した接触用開口部14に対応する位置に配置されている。つまり、接触具19は、接触用開口部14から露出している。連結具20は、
図5に仮想的に示した結線用開口部13に対応する位置に配置されている。つまり、連結具20は、結線用開口部13から露出している。
【0061】
図8は、実施の形態2における接触具が取り付けられた抗張体の断面図である。
図9は、実施の形態2における連結具が取り付けられた抗張体の断面図である。
【0062】
図8に示すように、接触具19は、対向する2方向から1本の抗張体11を挟み込むようにして取り付けられている。
図9に示すように、連結具20は、隣り合う2本の抗張体11の双方に噛ませられるようにして取り付けられている。つまり、連結具20は、隣り合う2本の抗張体11を予め電気的に接続している。
【0063】
上から数えて1番目及び2番目の抗張体11の他端部同士は、予め電気的に接続されている。上から数えて3番目及び4番目の抗張体11の他端部同士は、予め電気的に接続されている。上から数えて5番目及び6番目の抗張体11の他端部同士は、予め電気的に接続されている。上から数えて7番目及び8番目の抗張体11の他端部同士は、予め電気的に接続されている。上から数えて9番目及び10番目の抗張体11の他端部同士は、予め電気的に接続されている。
【0064】
上から数えて2番目及び3番目の抗張体11の一端部同士は、予め電気的に接続されている。上から数えて4番目及び5番目の抗張体11の一端部同士は、予め電気的に接続されている。上から数えて6番目及び7番目の抗張体11の一端部同士は、予め電気的に接続されている。上から数えて8番目及び9番目の抗張体11の一端部同士は、予め電気的に接続されている。
【0065】
実施の形態2における乗客コンベア用手摺は、連結具20により、上から数えて1番目の抗張体11の一端部から10番目の抗張体11の一端部までが直列接続された状態となっている。つまり、予め、一方の外側抗張体11aの一端部から他方の外側抗張体11aの一端部までが、全ての内側抗張体11bを順番に介して電気的に接続された状態となっている。このため、例えば、2つの接触具19の間の電気抵抗を測定した場合、全ての抗張体11の合成抵抗が測定される。また、例えば、同一の抗張体11に取り付けられている接触具19と連結具20との間又は2つの連結具20の間の電気抵抗を測定した場合、1本の抗張体11の電気抵抗が測定される。
【0066】
実施の形態2において、内側抗張体11bは、一端部が、本体部10の短手方向における一側に隣り合う抗張体11の一端部と予め電気的に接続され且つ他側に隣り合う前記抗張体の一端部と電気的に接続されず、他端部が、本体部10の短手方向における他側に隣り合う抗張体11の他端部と予め電気的に接続され且つ一側に隣り合う抗張体11の他端部と電気的に接続されていない。つまり、同じ結線用開口部13から露出する2つの抗張体11同士が予め電気的に接続されている。このため、実施の形態2によれば、測定時に抗張体11同士を接続したり測定治具を用いたりしなくとも、実施の形態1と同様に、容易に全ての抗張体11の合成抵抗を測定できる。その結果、乗客コンベア用手摺に内蔵された抗張体11の劣化診断を効率化することができる。
【0067】
実施の形態2において、接触具19は、設けられていなくともよい。この場合であっても、例えば、接触用開口部14から露出する外側抗張体11aの端部に測定機器の端子を直接触れさせれば、全ての抗張体11の合成抵抗を測定できる。なお、実施の形態2においても、電気抵抗を測定する際に測定治具を使用してもよい。
【0068】
実施の形態1及び2によれば、抗張体11の摩耗及び断線でない異常も検出可能である。例えば、隣り合う2本の抗張体11が接触している場合又は1本の抗張体11の一端部と他端部とが接触している場合等にも、全ての抗張体11の合成抵抗として異常な値が測定される。このような場合であっても、それぞれの抗張体11の電気抵抗を個別に測定すれば、問題のある抗張体11を特定できる。
【0069】
実施の形態1及び2の説明では、図中で隙間15の左側に位置する部位を一端部と呼び、図中で隙間15の右側に位置する部位を他端部と呼んでいるが、一端部と他端部とを入れ替えてもよい。つまり、1本の抗張体11全体の中で、図中で隙間15の右側に位置する部位を一端部と呼び、図中で隙間15の左側に位置する部位を他端部と呼んでもよい。
【解決手段】本発明に係る乗客コンベア用手摺は、無端状に形成された本体部10と、導電性を有し、本体部10の長手方向に沿って内蔵され、本体部10の長手方向において一端部と他端部とが接触せず対向し、本体部10の短手方向に沿って接触せずに並べられた抗張体11と、を備え、本体部10の内側面10bには、全ての抗張体11の一端部及び他端部を露出させる開口部が形成されたものである。