特許第6103057号(P6103057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103057
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】パーキング装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 1/06 20060101AFI20170316BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B60T1/06 G
   F16H63/34
【請求項の数】14
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-522938(P2015-522938)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2014066044
(87)【国際公開番号】WO2014203900
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-127022(P2013-127022)
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-220443(P2013-220443)
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】武井 但全
(72)【発明者】
【氏名】仲 健一
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−128444(JP,A)
【文献】 特開平8−216722(JP,A)
【文献】 特開2002−246226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00− 7/10
F16H 63/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、パーキングロック状態およびパーキングロック解除状態を形成するパーキング装置であって、
第1方向に移動して、弾性力または油圧によって前記パーキングロック状態および前記パーキングロック解除状態を切替可能な第1軸部材と、
前記第1方向に直交する第2方向に移動して、前記第1軸部材の移動を規制可能な第2軸部材と、弾性力により前記第2軸部材を前記第2方向のうち前記第1軸部材側に付勢する弾性部材と、前記第2軸部材に設けられた磁性体部と、磁力により前記第2軸部材の磁性体部を吸引する吸引部と、を有する電磁ユニットと、
を備え、
前記電磁ユニットは、前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記油圧により前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記弾性部材の弾性力により前記第2軸部材が前記吸引部に押し当てられるよう構成されている、
パーキング装置。
【請求項2】
請求項1記載のパーキング装置であって、
前記第1軸部材には、前記第2軸部材の先端部と当接して前記第1軸部材の移動を規制可能な当接部が設けられており、
前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記第1軸部材の当接部が前記第2軸部材の先端部に当接しないよう構成されている、
パーキング装置。
【請求項3】
請求項2記載のパーキング装置であって、
前記第1軸部材には、前記第2軸部材の先端部が進入可能であって、前記第1軸部材を貫通する穴部が形成されている、
パーキング装置。
【請求項4】
請求項3記載のパーキング装置であって、
前記パーキング装置は、更に、パーキングギヤと係合するパーキングポールを付勢するパーキングロッドと連結されたディテントレバーと、前記第1軸部材を前記第1方向に摺動自在に支持するケース部材とを有し、
前記第1軸部材は、前記ケース部材と共に前記油圧を受けるピストン部と、一端部が該ピストン部に固定され且つ他端部において前記ディテントレバーと連結されるピストンロッドと、から構成され、
前記穴部は、前記ピストンロッドに設けられる、
パーキング装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載のパーキング装置であって、
前記吸引部は、前記第2軸部材の前記第1軸部材側への移動を制限可能な位置に配置されており、
前記第2軸部材は、前記先端部を含む小径部と、該小径部より外径が大きく前記磁性体部を有する大径部とを有し、前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記大径部が前記吸引部に押し当てられている、
パーキング装置。
【請求項6】
請求項記載のパーキング装置において、
前記第2軸部材は、前記大径部において、非磁性体部が前記磁性体部より前記小径部側に突出するよう形成されており、前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記大径部の非磁性体部が前記吸引部に押し当てられている、
パーキング装置。
【請求項7】
請求項記載のパーキング装置であって、
前記第2軸部材は、前記小径部と、該小径部より外径が大きい前記大径部の非磁性体部としての拡径部と、が一体に構成された第1構成部材と、前記大径部の磁性体部として構成された第2構成部材とからなり、
前記拡径部は、前記第2構成部材に形成された前記第1構成部材の拡径部の前記第2方向の長さより深さが浅い凹部に挿入され、前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記第1構成部材の拡径部の前記小径部側の端面が前記吸引部に押し当てられている、
パーキング装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つの請求項に記載のパーキング装置であって、
前記第2軸部材の先端部のうち前記パーキングロック解除状態を形成する解除側の解除側面は、該第2軸部材の先端側から基端側に向けて前記解除側に傾斜するよう形成されている、
パーキング装置。
【請求項9】
請求項8記載のパーキング装置であって、
前記解除側面は、前記第2軸部材の先端側から基端側に向けて前記解除側に一定角度で傾斜するよう形成されている、
パーキング装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つの請求項に記載のパーキング装置であって、
前記第2軸部材の先端部のうち前記パーキングロック状態を形成するロック側のロック側面は、該第2軸部材の先端側から基端側に向けて前記ロック側に円弧の曲面状に傾斜するよう形成されている、
パーキング装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つの請求項に記載のパーキング装置であって、
前記第1軸部材は、弾性力により前記第1方向のうち前記パーキングロック状態を形成するロック側に付勢され、前記油圧により弾性力に抗して前記第1方向のうち前記ロック側とは反対の解除側に移動する、
パーキング装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1つの請求項に記載のパーキング装置であって、
前記吸引部は、コイルへの通電時に磁力により前記第2軸部材の磁性体部を吸引し、
前記電磁ユニットは、前記コイルへの非通電時には、前記第1軸部材が移動する際に該第1軸部材の当接部から前記第2軸部材の先端部に作用する力によって前記第2軸部材が前記第2方向のうち前記第1軸部材から離れる側に移動するのを許容するよう構成されている、
パーキング装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1つの請求項に記載のパーキング装置であって、
前記吸引部は、磁力により前記第2軸部材の磁性体部を吸引して保持する永久磁石であり、
前記電磁ユニットは、コイルへの通電時には、前記永久磁石による前記第2軸部材の磁性体部の吸引をキャンセルして、前記第1軸部材が移動する際に該第1軸部材の当接部から前記第2軸部材の先端部に作用する力によって前記第2軸部材が前記第2方向のうち前記第1軸部材から離れる側に移動するのを許容するよう構成されている、
パーキング装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1つの請求項に記載のパーキング装置であって、
前記電磁ユニットは、更に、前記吸引部を含む磁力保持部に固定された軸受を有し、該軸受は、前記第2軸部材を前記第2方向に摺動自在に支持する、
パーキング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキング装置に関し、詳しくは、車両に搭載され、パーキングロック状態およびパーキングロック解除状態を形成するパーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパーキング装置としては、図17および図17におけるX−X断面図である図18に示すように、パーキングラチェットと係合可能なパーキングロックポールに連動するパーキングロッドに連結された油圧ピストン832と、ソレノイド856のプランジャに嵌装された円筒状のテーパ部材858と、を同一軸線上に配置したロッキング機構を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、図17は、パーキングロック解除状態のときのロッキング機構の様子を示す。このパーキング装置では、パーキングロック解除状態で、テーパ部材858がスプリング859で油圧ピストン832側(図17中左側)に付勢されて、その周囲に設けられた3枚のプレート860からなる爪部862がテーパ部材858により押し拡げられて油圧ピストン832が図17中左側に移動することにより、パーキングロック状態が形成される。また、パーキングロック状態で、油圧により油圧ピストン832が図17中右側に移動してテーパ部材858がスプリング859の付勢力に抗して押圧されると、爪部862が内側に閉じて油圧ピストン832の引っ掛かり部834に係合し、更に、テーパ部材858の位置をソレノイド856で固定することにより、油圧ピストン832の位置がロックされて、パーキングロック解除状態が形成される。こうした構成とすることにより、アイドルストップ時に、エンジン駆動の機械ポンプが停止したことによって油圧ピストン装置の油圧が低下したときでも、パーキングロック解除状態を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−520163号公報
【発明の概要】
【0004】
上述のパーキング装置では、パーキングロック解除状態を保持する際に、ソレノイドの各構成要素のバラツキなどにより、テーパ部材の位置が変動する場合がある。このことを踏まえて、テーパ部材の位置をより十分に固定できるようにして、パーキングロック状態またはパーキングロック解除状態をより確実に保持できるようにすることが課題の一つとされている。
【0005】
本発明のパーキング装置は、限られたスペースへの配置を良好なものとすると共に油圧が低下したときにパーキングロック状態またはパーキングロック解除状態をより確実に保持することを主目的とする。
【0006】
本発明のパーキング装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のパーキング装置は、
車両に搭載され、パーキングロック状態およびパーキングロック解除状態を形成するパーキング装置であって、
第1方向に移動して、弾性力または油圧によって前記パーキングロック状態および前記パーキングロック解除状態を切替可能な第1軸部材と、
前記第1方向に直交する第2方向に移動して、前記第1軸部材の移動を規制可能な第2軸部材と、弾性力により前記第2軸部材を前記第2方向のうち前記第1軸部材側に付勢する弾性部材と、前記第2軸部材に設けられた磁性体部と、磁力により前記第2軸部材の磁性体部を吸引する吸引部と、を有する電磁ユニットと、
を備え、
前記電磁ユニットは、前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記油圧により前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記弾性部材の弾性力により前記第2軸部材が前記吸引部に押し当てられるよう構成されている、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のパーキング装置では、第1軸部材が油圧によりパーキングロック状態または前記油圧によりパーキングロック解除状態を形成しているときには、弾性部材の弾性力により第2軸部材が吸引部に押し当てられている。したがって、このときに第2軸部材が吸引部に押し当てられていないものに比して、吸引部の磁力により第2軸部材の磁性体部を吸引するときに、吸引部と第2軸部材の磁性体部との距離が短くなり且つ一定となる。したがって、吸引部の磁力により第2軸部材の磁性体部を吸引するときに、吸引部による第2軸部材の磁性体部の吸引力を大きくすることができる。この結果、油圧によりパーキングロック状態またはパーキングロック解除状態を形成している状態で、吸引部の磁力により第2軸部材の磁性体部を吸引しているときには、油圧が低下して弾性力により第1軸部材が第1方向に移動しようとするときに、第2軸部材により、第1軸部材の移動をより確実に規制することができ、その前の状態(パーキングロック状態またはパーキングロック解除状態)をより確実に保持することができる。もとより、第1軸部材などと電磁ユニット(第2軸部材など)とを互いに直交する方向に配置するから、両者を同一軸線上に配置するものに比して、限られたスペースへの配置を良好なものとすることができる。
【0009】
こうした本発明のパーキング装置において、前記第1軸部材には、前記第2軸部材の先端部と当接して前記第1軸部材の移動を規制可能な当接部が設けられており、前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記第1軸部材の当接部が前記第2軸部材の先端部に当接しないよう構成されている、ものとすることもできる。これにより、油圧によりパーキングロック状態またはパーキングロック解除状態を形成しているときに、吸引部の磁力により第2軸部材の磁性体部を吸引するときの、吸引部による第2軸部材の磁性体部の吸引力をより大きくすることができる。この結果、吸引部の磁力により第2軸部材の磁性体部を吸引しているときには、油圧が低下して弾性力により第1軸部材が移動して第1軸部材の当接部が第2軸部材の先端部に当接したときに、第1軸部材をその位置でより確実に保持することができる。この態様の本発明のパーキング装置において、前記第1軸部材には、前記第2軸部材の先端部が進入可能であって、前記第1軸部材を貫通する穴部が形成されており、前記第1軸部材の当接部は、前記穴部内に設けられている、ものとすることもできる。
【0010】
また、本発明のパーキング装置において、前記吸引部は、前記第2軸部材の前記第1軸部材側への移動を制限可能な位置に配置されており、前記第2軸部材は、前記先端部を含む小径部と、該小径部より外径が大きく前記磁性体部を有する大径部とを有し、前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記大径部が前記吸引部に押し当てられている、ものとすることもできる。こうすれば、吸引部と磁性体部との距離がより短くなり、吸引部による磁性体部の吸引力をより大きくすることができる。この態様の本発明のパーキング装置において、前記第2軸部材は、前記大径部において、非磁性体部が前記磁性体部より前記小径部側に突出するよう形成されており、前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記大径部の非磁性体部が前記吸引部に押し当てられている、ものとすることもできる。この場合、前記第2軸部材は、前記小径部と、該小径部より外径が大きい前記大径部の非磁性体部としての拡径部と、が一体に構成された第1構成部材と、前記大径部の磁性体部として構成された第2構成部材とからなり、前記拡径部は、前記第2構成部材に形成された前記第1構成部材の拡径部の前記第2方向の長さより深さが浅い凹部に挿入され、前記第1軸部材が前記油圧により前記パーキングロック状態または前記パーキングロック解除状態を形成しているときに、前記第1構成部材の拡径部の前記小径部側の端面が前記吸引部に押し当てられている、ものとすることもできる。これにより、このときに、第1構成部材が吸引部と第2構成部材の凹部の底面との間でガタつくのを抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明のパーキング装置において、前記第2軸部材の先端部のうち前記解除側の解除側面は、該第2軸部材の先端側から基端側に向けて前記解除側に傾斜するよう形成されている、ものとすることもできる。ここで、「解除側面」は、第1軸部材がロック側に移動する際に第1軸部材の当接部と当接して力を受ける面に相当する。こうした構成とすることにより、第1軸部材がロック側に移動する際の第1軸部材の当接部と第2軸部材の解除側面との当接時に、第1軸部材から第2軸部材に作用する力の第2方向の分力によって第2軸部材を第1軸部材から離れる側に移動させることができる。
【0012】
加えて、本発明のパーキング装置において、前記第1軸部材は、弾性力により前記第1方向のうち前記パーキングロック状態を形成するロック側に付勢され、前記油圧により弾性力に抗して前記第1方向のうち前記ロック側とは反対の解除側に移動する、ものとすることもできる。
【0013】
本発明のパーキング装置において、前記吸引部は、コイルへの通電時に磁力により前記第2軸部材の磁性体部を吸引し、前記電磁ユニットは、前記コイルへの非通電時には、前記第1軸部材が移動する際に該第1軸部材の当接部から前記第2軸部材の先端部に作用する力によって前記第2軸部材が前記第2方向のうち前記第1軸部材から離れる側に移動するのを許容するよう構成されている、ものとすることもできる。上述したように、本発明のパーキング装置では、第1軸部材が油圧によりパーキングロック状態またはパーキングロック解除状態を形成しているときには、弾性部材の弾性力により第2軸部材が吸引部に押し当てられている。したがって、このときに第2軸部材が吸引部に押し当てられていないものに比して、吸引部と第2軸部材の磁性体部との距離が短くなり且つ一定となるから、コイルへの通電開始時に、吸引部による第2軸部材の磁性体部の吸引力を大きくすることができる。しかも、この本発明のパーキング装置は、コイルへの通電によって第2軸部材を第2方向に大きく移動させる(ストロークさせる)ものではないから、コイルへの通電によって第2軸部材を第2方向に大きく移動させるものに比して、所望の磁束を小さくすることができる。この結果、所望の磁束を得るのに必要なコイルの巻数を小さくすることができ、コイルの小型化ひいては電磁ユニットの小型化を図ることができる。
【0014】
本発明のパーキング装置において、前記吸引部は、磁力により前記第2軸部材の磁性体部を吸引して保持する永久磁石であり、前記電磁ユニットは、コイルへの通電時には、前記永久磁石による前記第2軸部材の磁性体部の吸引をキャンセルして、前記第1軸部材が移動する際に該第1軸部材の当接部から前記第2軸部材の先端部に作用する力によって前記第2軸部材が前記第2方向のうち前記第1軸部材から離れる側に移動するのを許容するよう構成されている、ものとすることもできる。上述したように、本発明のパーキング装置では、第1軸部材が油圧によりパーキングロック状態またはパーキングロック解除状態を形成しているときには、弾性部材の弾性力により第2軸部材が吸引部に押し当てられている。したがって、このときに第2軸部材が吸引部に押し当てられていないものに比して、吸引部と第2軸部材の磁性体部との距離が短くなり且つ一定となるから、永久磁石による第2軸部材の磁性体部の吸引力を大きくすることができる。また、吸引部と第2軸部材の磁性体部との距離が短くなり且つ一定となることにより、その後にコイルへの通電を開始したときに、永久磁石による第2軸部材の磁性体部の吸引をキャンセルするための磁束をより効率よく発生させることができる。
【0015】
本発明の変形例のパーキング装置は、
車両に搭載され、パーキングロック状態およびパーキングロック解除状態を形成するパーキング装置であって、
第1弾性部材の弾性力または油圧により第1方向に移動して、前記パーキングロック状態と前記パーキングロック解除状態とを切替可能な第1軸部材と、
前記第1方向と直交する第2方向に進退移動すると共に先端部と前記第1軸部材に設けられた当接部との当接により前記第1軸部材の移動を規制可能な第2軸部材と、弾性力により前記第2軸部材を前記第2方向の前記第1軸部材側に付勢する第2弾性部材と、磁力により前記第2軸部材が前記第1軸部材から後退しないようロックする永久磁石と、コイルへの通電を伴って前記永久磁石による前記第2軸部材のロックを解除するロック解除部と、を有する磁気ユニットと、
を備え、
前記磁気ユニットは、前記コイルへの通電時には、前記第1弾性部材の弾性力または油圧によって前記第1軸部材の前記当接部から前記第2軸部材の前記先端部に作用する力により前記第2軸部材が前記第1軸部材から後退するのを許容するよう構成されている、
ことを特徴とする。
【0016】
この本発明の変形例のパーキング装置では、第1軸部材と磁気ユニットの第2軸部材とが、互いに直交する方向に移動するよう配置される。したがって、両者が同一方向に移動するよう(同一軸線上に)配置されるものに比して限られたスペースへの配置を良好なものとすることができる。
【0017】
また、磁気ユニットのロック解除部のコイルへの非通電時には、永久磁石の磁力により第2軸部材が第1軸部材から後退しないようロックされる。これにより、第1軸部材の当接部と第2軸部材の先端部との当接時に、第1軸部材の第1方向の移動を規制して、パーキングロック状態やパーキングロック解除状態を保持することができる。一方、コイルへの通電時には、ロック解除部により永久磁石による第2軸部材のロックが解除され、第1弾性部材の弾性力または油圧によって第1軸部材の当接部から第2軸部材の先端部に作用する力により第2軸部材が第1軸部材から後退するのが許容される。これにより、第1弾性部材の弾性力または油圧により、第2軸部材の第1軸部材からの後退を伴って第1軸部材を第1方向に移動させて、パーキングロック状態とパーキングロック解除状態とを切り替えることができる。以上より、パーキングロック状態やパーキングロック解除状態を保持する際に、コイルに通電する必要がないから、電力消費を抑制することができる。
【0018】
こうした本発明の変形例のパーキング装置において、前記永久磁石は、前記第2軸部材に固定されており、前記ロック解除部は、磁性体により形成されると共に前記永久磁石と前記第2方向で対向する対向部を有し、前記第2軸部材は、前記永久磁石と前記対向部との吸引によりロックされる、ものとすることもできる。この場合、永久磁石の第2軸部材への固定を接着などにより容易に且つ精度よく行なうことができると考えられる。
【0019】
また、本発明の変形例のパーキング装置において、前記永久磁石は、前記ロック解除部に固定されており、前記第2軸部材は、磁性体により形成された磁性体部を有し、前記永久磁石と前記磁性体部とが前記第2方向で対向するよう配置されており、前記第2軸部材は、前記永久磁石と前記磁性体部との吸引によりロックされる、ものとすることもできる。
【0020】
永久磁石が第2軸部材またはロック解除部に固定される態様の本発明の変形例のパーキング装置において、前記第2軸部材は、非磁性体により形成されたシャフトと、磁性体により形成されたプランジャとを有し、前記シャフトは、前記先端部を有する小径部と、該小径部から前記当接部とは反対側に延出し且つ前記小径部より大径の拡径部とを有し、前記プランジャは、前記拡径部より大径に形成されており、前記シャフトおよび前記プランジャは、前記第2弾性部材の弾性力により、前記プランジャの前記第1軸部材側の端面が前記拡径部の前記小径部側とは反対側の端面と当接し且つ前記拡径部の前記小径部側の端面が前記ロック解除部の一部と当接し且つ前記シャフトの前記先端部が前記第1軸部材の前記当接部と当接可能となるよう前記第1軸部材側に付勢されており、前記永久磁石は、前記拡径部の外周を囲むように配置されている、ものとすることもできる。
【0021】
こうすれば、シャフトとプランジャとが第2弾性部材の弾性力により第1軸部材側に一体に付勢されてシャフトの拡径部の小径部側の端面がロック解除部の一部と当接するから、シャフトが第2方向にガタつくのを抑制することができる。
【0022】
また、永久磁石がシャフトの拡径部の外周を囲むように配置されるから、シャフトが径方向にガタついたとしても、そのガタつきを拡径部の外周面と永久磁石の内周面との間のクリアランスで吸収することができる。この結果、シャフトとプランジャと永久磁石とが一体に構成されるものに比して、プランジャの外周に形成される磁気ギャップを小さくすることができる。また、シャフトが非磁性体により形成されるから、磁気ユニットでの磁束の漏れを低減することができる。これらの結果、磁気ユニットの大型化を抑制しつつ磁気効率を高くすることができる。
【0023】
永久磁石がシャフトの拡径部の外周を囲むように配置される態様の本発明の変形例のパーキング装置において、前記永久磁石の前記第2方向の長さは、前記拡径部の前記第2方向の長さより短い、ものとすることもできる。こうすれば、永久磁石がプランジャに固定されている場合には、シャフトおよびプランジャが第1軸部材側に移動するときに、永久磁石がロック解除部の一部(永久磁石と第2方向で対向する対向部)と当接(衝突)するのを抑制することができ、永久磁石をより保護することができる。また、永久磁石がロック解除部に固定されている場合には、シャフトおよびプランジャが第1軸部材側に移動するときに、永久磁石がプランジャと当接(衝突)するのを抑制することができ、永久磁石をより保護することができる。
【0024】
本発明の変形例のパーキング装置において、前記第2軸部材の前記先端部は、前記第1軸部材が前記第1方向における前記パーキングロック状態が形成されるロック側に移動する際に前記第1軸部材の前記当接部から力を受ける解除側面を有し、前記解除側面は、前記第2軸部材の先端部側から基端部側に向かうにつれて前記解除側に傾斜するよう形成されている、ものとすることもできる。こうすれば、第1軸部材がロック側に移動する際における第1軸部材の当接部と第2軸部材の先端部の解除側面との当接時に、第1軸部材から第2軸部材に作用する力の第2方向の分力により、第2軸部材を第1軸部材から後退させることができる。
【0025】
また、本発明の変形例のパーキング装置において、前記第2軸部材の前記先端部は、前記第1軸部材が前記第1方向における前記パーキングロック解除状態が形成される解除側に移動する際に前記第1軸部材の前記当接部から力を受けるロック側面を有し、前記ロック側面は、前記第2軸部材の先端部側から基端部側に向かうにつれて前記ロック側に傾斜するよう形成されている、ものとすることもできる。こうすれば、第1軸部材が解除側に移動する際における第1軸部材の当接部と第2軸部材の先端部のロック側面との当接時に、第1軸部材から第2軸部材に作用する力の第2方向の分力により、第2軸部材を第1軸部材から後退させることができる。
【0026】
さらに、本発明の変形例のパーキング装置において、前記当接部は、前記第1軸部材に対して回転可能なローラとして構成されている、ものとすることもできる。こうすれば、第1軸部材の当接部と第2軸部材の先端部との間の摩擦抵抗を低減することができる。
【0027】
加えて、本発明の変形例のパーキング装置において、前記磁気ユニットは、前記第2軸部材を摺動自在に支持する軸受部材を有する、ものとすることもできる。こうすれば、第2軸部材の第2方向の移動をより滑らかなものとすることができる。
【0028】
本発明の変形例のパーキング装置において、前記第1軸部材には、前記第2軸部材の前記先端部が進入可能で且つ前記第1軸部材を貫通する穴部が形成されており、前記第2軸部材の前記先端部は、前記穴部内に位置している、ものとすることもできる。
【0029】
本発明の変形例のパーキング装置において、前記磁気ユニットは、前記コイルへの非通電時には、前記第1弾性部材の弾性力によって前記第1軸部材の前記当接部から前記第2軸部材の前記先端部に作用する力では前記第2軸部材が前記第1軸部材から後退せず、前記第1弾性部材の弾性力および前記永久磁石による前記第2軸部材のロック力に抗する油圧によって前記第1軸部材の前記当接部から前記第2軸部材の前記先端部に作用する力により前記第2軸部材が前記第1軸部材から後退するのを許容するよう構成されている、ものとすることもできる。
【0030】
本発明の変形例のパーキング装置において、前記第1軸部材は、前記第1弾性部材の弾性力により前記第1方向における前記パーキングロックが形成されるロック側に付勢され、前記第1弾性部材の弾性力に抗する油圧により前記第1方向における前記パーキングロック解除状態が形成される解除側に移動する、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施例としてのパーキング装置20のパーキングロック状態における構成の概略を示す構成図である。
図2】パーキング装置20のピストンロッド32に形成された穴部36の構成の概略を示す構成図である。
図3】パーキング装置20の電磁ユニット50周辺を拡大した拡大図である。
図4】第1実施例のパーキング装置20のパーキングロック解除状態における構成の概略を示す構成図である。
図5】ピストンロッド32のピン46のローラ48がソレノイドシャフト52の先端部54の下側当接面56に当接したときの様子を示す説明図である。
図6】ピストンロッド32のピン46のローラ48の図中最右側の位置とソレノイドシャフト52の先端とが当接したときの様子を示す説明図である。
図7】ピストン38への油圧が低いときにコイル64への通電によりパーキングロック解除状態を保持するときの様子を示す説明図である。
図8】変形例の電磁ユニット150の構成の概略を示す構成図である。
図9】本発明の第2実施例としてのパーキング装置201の構成の概略を示す構成図である。
図10】パーキング装置201の要部の構成の概略を示す構成図である。
図11】油圧ユニット210の一部の構成の概略を示す構成図である。
図12】電磁ユニット220の構成の概略を示す構成図である。
図13】ロックシャフト221の構成の概略を示す構成図である。
図14】パーキング装置201の動作を説明するための説明図である。
図15】パーキング装置201の動作を説明するための説明図である。
図16】変形例の電磁ユニット320の構成の概略を示す構成図である。
図17】背景技術としてのパーキング装置のロッキング機構の構成の一例を示す構成図である。
図18図17のX−X面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【0033】
図1は、本発明の第1実施例としてのパーキング装置20のパーキングロック状態における構成の概略を示す構成図であり、図2は、パーキング装置20のピストンロッド32に形成された穴部36周辺の構成の概略を示す構成図であり、パーキング装置20の電磁ユニット50周辺を拡大した拡大図であり、図4は、第1実施例のパーキング装置20のパーキングロック解除状態(油圧によりパーキングロック解除状態を形成しているとき)における構成の概略を示す構成図である。
【0034】
第1実施例のパーキング装置20は、車両に搭載され、図1図4に示すように、車軸側に連結された回転軸に取り付けられたパーキングギヤ21と、パーキングギヤ21と噛合可能な爪状の係合部を有するパーキングポール22と、パーキングポール22の爪状の係合部の背面に当接してパーキングポール22を回動させるカム部材23が一方の端部に取り付けられたパーキングロッド24と、パーキングロッド24の他方の端部に一方の端部が回転可能に取り付けられて回転軸26を中心に回動する回動部材25と、第1軸部材としてのピストンロッド32の第1方向(図中上下方向)の移動によって回動部材25の他方の端部に力を作用させて回動部材25を回動させる油圧ユニット30と、第1方向に直交する第2方向(図中左右方向)に移動可能な第2軸部材としてのソレノイドシャフト52をコイル64への通電時に磁力により保持することによってピストンロッド32の図中上下方向の移動を規制する電磁ユニット(磁気ユニット)50と、を備える。このパーキング装置20では、詳細は後述するが、図1のパーキングロック状態からピストンロッド32が図中上側に移動すると、回動部材25が図中時計回りに回動してパーキングロッド24が図中右側に移動し、カム部材23によってパーキングポール22が図中上側に移動してパーキングギヤ21との噛合が解除されてパーキングロック解除状態となる。また、図4のパーキングロック解除状態からピストンロッド32が図中下側に移動すると、回動部材25が図中反時計回りに回動してパーキングロッド24が図中左側に移動し、カム部材23によってパーキングポール22が図中下側に移動してパーキングギヤ21と噛合してパーキングロック状態となる。以下、図中下側をロック側、図中上側を解除側と称することがある。
【0035】
油圧ユニット30は、回動部材25の他方の端部が2つのピン33,34で比較的大きな余裕をもって保持されるように取り付けられて図中上下方向に移動可能なピストンロッド32と、ピストンロッド32と一体形成されたピストン38と、ピストン38を収納すると共に作動油を導入する作動油入排孔41が形成されたケース(シリンダ)40と、ケース40内に配置されて弾性力によりピストン38を図中下側(ロック側)に付勢する弾性部材としてのリターンスプリング42と、を備える。この油圧ユニット30では、リターンスプリング42の弾性力に抗する油圧によりピストン38(ピストンロッド32)を図中上側(解除側)に移動させる。
【0036】
ピストンロッド32には、図中上下方向に延在し図1中左右方向(図2中手前奥方向)に貫通する穴部36が形成されており、その穴部36を図2中左右方向(図1中手前奥方向)に横断するピン46が設けられている。ピン46は、ピストンロッド32に固定された円筒形状の支持シャフト(軸部)47と、中空円筒形状で支持シャフト47に対して回転自在な当接部としてのローラ48と、を有する。
【0037】
電磁ユニット50は、図1図4に示すように、図中左右方向に移動可能で非磁性材料により形成されたシャフト部53が磁性材料により形成されたプランジャ58の凹部59に挿入されて構成されたソレノイドシャフト52と、ソレノイドシャフト52のプランジャ58を収容するケースとしてのヨーク60と、ヨーク60の内周側に配置されたコイル64と、コイル64の内周側に配置されてソレノイドシャフト52のプランジャ58を図中左右方向に摺動可能に支持するコア66と、ヨーク60に固定されてソレノイドシャフト52のシャフト部53を図中左右方向に摺動自在に支持する軸受部材(直動軸受)68と、ヨーク60の内部に配置されて弾性力によりソレノイドシャフト52をピストンロッド32側(図中左側)に付勢するスプリング70と、を備える。なお、スプリング70のバネ荷重は、リターンスプリング42のバネ荷重より小さく設定されている。この電磁ユニット50は、コイル64からの端子がヨーク60の外周側に形成された図示しないコネクタ部に配策されており、この端子を介してコイル64への通電が行なわれる。
【0038】
ヨーク60は、磁性材料によって形成されており、内周側のうちコイル64の図中左側の位置に、コイル64の内径およびソレノイドシャフト52の大径部57の外径より小さな内径となるように径方向内側に突出する環状のフランジ部(突出部)61が形成されている。このフランジ部61のうちコア66の内径より径方向内側の部分(ソレノイドシャフト52の大径部57と図中左右方向で対向する部分)は、コイル64への通電時に、磁力(磁気回路の形成)により、ソレノイドシャフト52のうち磁性材料によって形成された磁性体部を吸引する部分となることから、以下、この部分を吸引部62という。
【0039】
ソレノイドシャフト52は、その先端部54(図中左側端部)がピストンロッド32の穴部36内でピン46のローラ48の図中右半分程度と図中上下方向で対向するよう配置されている。ソレノイドシャフト52の先端部54のうち、図中上側(解除側)の面(図4の状態からからピストンロッド32が図中下側に移動する際にローラ48と当接してローラ48から力を受ける面、以下、上側当接面55という)については、先端側から基端側に向けて(図中左側から右側に向けて)図中上側に一定角度で傾斜するよう形成されており、図中下側(ロック側)の面(図1の状態からピストンロッド32が図中上側に移動する際にローラ48と当接してローラ48から力を受ける面、以下、下側当接面56という)については、先端側から基端側に向けて図中下側に凸でローラ48の曲率半径より小さな曲率半径の曲面状(図中手前側から見て円弧の曲面状)に形成されている。
【0040】
ソレノイドシャフト52のシャフト部53は、先端部54を含む小径部531と、小径部531の先端部54側とは反対側から延出して小径部531より大きな外径の拡径部532と、を備える。また、ソレノイドシャフト52のプランジャ58の凹部59は、拡径部532の図中左右方向の長さより浅い深さに形成されている。ソレノイドシャフト52は、図3に示すように、シャフト部53の拡径部532の図中右側の端面532aがプランジャ58の凹部59の底面59aに当接するようシャフト部53がプランジャ58の凹部59に挿入されて構成されている。したがって、シャフト部53の拡径部532の図中左側(小径部531側)の端面532bが、プランジャ58の図中左側の端面58aより図中左側に突出している。そして、このソレノイドシャフト52は、その先端部54がピストンロッド32のピン46のローラ48に当接しておらず且つコイル64に通電されていないときに、スプリング70の弾性力により、シャフト部53の拡径部532の図中左側の端面532bがヨーク60の吸引部62に押し当てられると共にプランジャ58の図中左側の端面58aと吸引部62との間には若干の隙間が形成されている(図3等参照)。これにより、このときに、シャフト部53がヨーク60の吸引部62とプランジャ58の凹部59の底面59aとの間でガタつくのを抑制することができる。なお、このソレノイドシャフト52は、スプリング70の弾性力により、シャフト部53とプランジャ58とが図中左側(ピストンロッド32側)に一体に付勢されており、その弾性力より大きな図中右方向の外力がシャフト部53の先端部54に作用したときに、図中右側(ピストンロッド32から離れる側)に一体となって移動するのを許容する。
【0041】
こうして構成された第1実施例のパーキング装置20では、油圧ユニット30(ピストンロッド32など)と電磁ユニット50(ソレノイドシャフト52など)とを互いに直交する方向に配置するから、両者を同一軸線上に配置するものに比して、限られたスペースへの配置を良好なものとすることができる。
【0042】
次に、こうして構成された第1実施例のパーキング装置20の動作について説明する。まず、図1のパーキングロック状態から図4のパーキングロック解除状態に切り替えるときを考える。なお、パーキングロック状態では、コイル64への通電は行なわれない。この状態でリターンスプリング42の弾性力に抗する油圧がピストン38(ピストンロッド32)に作用すると、ピストンロッド32が図中上側(解除側)に移動して、図5に示すように、ピストンロッド32のピン46のローラ48がソレノイドシャフト52の先端部54の下側当接面56に当接する。両者が当接すると、ピストンロッド32(ローラ48)からソレノイドシャフト52に図中右斜め上方向(具体的には、円弧の曲面状の下側当接面56のうちローラ48との当接箇所から円弧を周の一部とする円の中心に向かう方向)の力が作用し、その図中左右方向の分力によってソレノイドシャフト52を図中右側(ピストンロッド32から離れる側)に移動させながらピストンロッド32は図中上側に移動する。そして、図6に示すように、ピストンロッド32のローラ48の図中最右側の位置とソレノイドシャフト52の先端(図中最左側の位置)とが当接する位置までピストンロッド32が移動すると、その後は、スプリング70の弾性力によりソレノイドシャフト52が図中左側(ピストンロッド32側)に戻りながらピストンロッド32が図中上側に移動する。そして、ピストンロッド32は、図4に示すように、のローラ48がソレノイドシャフト52の先端部54に接しない位置まで移動する。このようにしてパーキングロック解除状態への切替が行なわれる。第1実施例では、の当接部としてピストンロッド32(支持シャフト47)に対して回転可能なローラ48を用いるから、ピストンロッド32の当接部としてピストンロッド32(支持シャフト47)に対して回転可能なローラ48を用いるから、ピストンロッド32のローラ48とソレノイドシャフト52の先端部54との当接時の摩擦抵抗を低減することができ、これらの摩耗を抑制することができると共にピストンロッド32やソレノイドシャフト52の移動をより滑らかなものとすることができる。また、ピストンロッド32は軸受部材68により保持されているから、ソレノイドシャフト52の摺動抵抗を低減することができ、その移動をより滑らかなものとすることができる。さらに、下側当接面56がローラ48の曲率半径より小さな曲率半径の曲面に形成されているから、ピストンロッド32の図中上側への移動に従ってソレノイドシャフト32に作用する図中右側の力が大きくなりやすい。したがって、油圧が若干低いときでも、ピストンロッド32は、ソレノイドシャフト52を図中右側に移動させながら図中上側に移動することができる。
【0043】
こうして油圧によりパーキングロック解除状態を形成すると、ピストン38への油圧が低下する前(例えば、油圧を発生するエンジン駆動の機械ポンプがアイドルストップによって停止する前など)にコイル64への通電を開始する。これにより、磁力(磁気回路の形成)により、吸引部62によるソレノイドシャフト52のプランジャの吸引が開始される。第1実施例では、上述したように、ソレノイドシャフト52の先端部54がピストンロッド32のピン46のローラ48に当接しておらずコイル64に通電されていないときに、ソレノイドシャフト52のシャフト部53の拡径部532の端面532bがヨーク60の吸引部62に押し当てられており(プランジャ58の端面58aと吸引部62との間には若干の隙間が形成されており)(図3等参照)、且つ、油圧によりパーキングロック解除状態を形成しているときには、ピストンロッド32のローラ48とソレノイドシャフト52の先端部54とは当接していない(図4参照)。したがって、コイル64への通電を開始するときには、ソレノイドシャフト52のシャフト部53の拡径部532の端面532bがヨーク60の吸引部62に押し当てられていることになる。これにより、コイル64への通電を開始するときに、ソレノイドシャフト52のシャフト部53の拡径部532の端面532bがヨーク60の吸引部62に押し当てられていないものに比して、吸引部62とプランジャ58との距離が短く且つ一定となり、吸引部62によるプランジャ58の吸引力を大きくすることができる。即ち、ソレノイドシャフト52を比較的大きな保持力で保持する(移動を規制する)ことができる。そして、その後にピストン38への油圧が低下したとき(例えば、アイドルストップしたときなど)には、リターンスプリング42の弾性力により、ピストンロッド32は図中下側(ロック側)に移動するが、図7に示すように、ピストンロッド32のローラ48がソレノイドシャフト52の先端部54の上側当接面55に当接する(ピストンロッド32のピン46からソレノイドシャフト52の先端部54に力が作用する)が、その位置でピストンロッド32をより確実に保持する(ロック側への移動を規制する)ことができる。これにより、コイル64への通電開始後にピストン38への油圧が低下したときに、パーキングロック解除状態をより確実に保持することができる。しかも、第1実施例の電磁ユニット50は、コイル64への通電時に、ソレノイドシャフト52を吸引部62側に吸引して保持するものであるから、ソレノイドシャフト52を第2方向(図中左右方向)に移動させるものに比して、所望の磁束を小さくすることができる。この結果、所望の磁束を得るのに必要なコイル64の巻数を少なくすることができ、コイル64の小型化ひいては電磁ユニット50の小型化を図ることができる。
【0044】
コイル64に非通電で油圧によりパーキングロック解除状態を形成(保持)している状態(図4参照)から油圧が低下したとき(例えば、エンジンの運転中にシフトポジションが駐車ポジションに操作されたときなど)や、油圧が低下してコイル64への通電を伴ってパーキングロック解除状態を保持している状態(図7参照)からコイル64への通電を終了したとき(例えば、アイドルストップ中にシフトポジションが駐車ポジションに操作されたときなど)には、リターンスプリング42の弾性力により、ピストンロッド32のピン46のローラ48とソレノイドシャフト52の先端部54の上側当接面55との当接時に、ピストンロッド32(ローラ48)からソレノイドシャフト52に図中右斜め下方向(具体的には、一定角度で傾斜する上側当接面55に垂直な方向)の力が作用し、その図中左右方向の分力によってソレノイドシャフト52を図中右側(ピストンロッド32から離れる側)に移動させながらピストンロッド32は図中下側(ロック側)に移動する。そして、図6に示すように、ピストンロッド32のローラ48の図中最右側の位置とソレノイドシャフト52の先端(図中最左側の位置)とが当接する位置までピストンロッド32が移動すると、その後は、スプリング70の弾性力によりソレノイドシャフト52が図中左側(ピストンロッド32側)に戻りながらピストンロッド32が図中下側に移動する。そして、ピストンロッド32は、図1に示すように、ローラ48がソレノイドシャフト52の先端部54に接しない位置まで移動する。このようにしてパーキングロック状態への切替が行なわれる。したがって、コイル64に非通電(何らかの事情によりコイル64に通電できないときを含む)でリターンスプリング42の弾性力に抗する油圧がピストンロッド32に作用していないときに、パーキングロック状態をより適正に形成することができる。また、上述したように、ローラ48や軸受部材68により、パーキングロック状態からパーキングロック解除状態に切り替えるときと同様に、ピストンロッド32のローラ48やソレノイドシャフト52の先端部54の摩耗を抑制することができると共にピストンロッド32やソレノイドシャフト52の移動をより滑らかなものとすることができる。
【0045】
以上説明した第1実施例のパーキング装置20によれば、油圧によりパーキングロック解除状態を形成しているときには、コイル54への通電開始時にソレノイドシャフト52のシャフト部53の拡径部532の端面532bがヨーク60の吸引部62に押し当てられている。これにより、ソレノイドシャフト52のシャフト部53の拡径部532の端面532bがヨーク60の吸引部62に押し当てられていないものに比して、ヨーク60の吸引部62によるソレノイドシャフト52のプランジャ58の吸引力を大きくすることができる。この結果、コイル64への通電開始後にピストン38への油圧が低下したときに、ピストンロッド32のロック側への移動をより確実に規制することができ、パーキングロック解除状態をより確実に保持することができる。もとより、油圧ユニット30(特にピストンロッド32)と電磁ユニット50(特にソレノイドシャフト52)とを互いに直交する方向に配置するから、両者を同一軸線上に配置するものに比して、限られたスペースへの配置を良好なものとすることができる。
【0046】
また、第1実施例のパーキング装置20によれば、パーキングロック解除状態で、コイル64に非通電でピストン38への油圧が低下したときには、ピストンロッド32のピン46のローラ48とソレノイドシャフト52の先端部54との当接によってソレノイドシャフト52をピストンロッド32から離れる側に移動させながらピストンロッド32がロック側に移動して、パーキングロック状態を形成する。これにより、コイル64に非通電(何らかの事情によりコイル64に通電できないときを含む)でリターンスプリング42の弾性力に抗する油圧がピストンロッド32に作用していないときに、パーキングロック状態をより適正に形成することができる。
【0047】
第1実施例のパーキング装置20では、油圧によりパーキングロック解除状態を形成しているときには、コイル64への通電開始時にスプリング70の弾性力によりソレノイドシャフト52のシャフト部53の拡径部532の端面532bがヨーク60の吸引部62に押し当てられている状態とする(コイル64への通電時に大きな吸引力を発生させる)ために、ピストンロッド32のピン46のローラ48とソレノイドシャフト52の先端部54の上側当接面55とは当接していないものとしたが、コイル64への非通電時にソレノイドシャフト52のシャフト部53の拡径部532の端面532bがヨーク60の吸引部62に押し当てられている状態とする(その状態を確保する)ことができるのであれば、ピストンロッド32のローラ48とソレノイドシャフト52の先端部54の上側当接面55とが接するものとしてもよい。
【0048】
第1実施例のパーキング装置20では、電磁アクチュエータ50は、ソレノイドシャフト52の先端部54がピストンロッド32のピン46のローラ48に当接しておらずコイル64に通電されていないときに、ソレノイドシャフト52のシャフト部53の拡径部532の端面532bがヨーク60の吸引部62に押し当てられるよう構成されるものとしたが、図1図4の左右方向に移動しない構成要素(ヨーク60やコイル62,コア66など)のうち吸引部62以外の箇所にソレノイドシャフト52のいずれかの箇所が押し当てられるよう構成されるものとしてもよい。
【0049】
第1実施例のパーキング装置20では、ピストンロッド32の当接部として、ピストンロッド32(支持シャフト47)に対して回転可能なローラ48を用いるものとしたが、ピストンロッド32に対して回転不能に構成されるもの(例えば、支持シャフト47と同様のもの)を用いるものとしてもよい。この場合、ピストンロッド32の当接部とソレノイドシャフト52の先端部54とが当接するときの両者間の摩擦抵抗は大きくなる。したがって、パーキングロック状態とパーキングロック解除状態とを切り替える際のピストンロッド32の移動やソレノイドシャフト52の移動は若干滑らかさが低下する可能性があるが、コイル64への通電によってパーキングロック解除状態を保持する際により保持しやすくすることができる。
【0050】
第1実施例のパーキング装置20では、電磁ユニット50は、ソレノイドシャフト52のシャフト部53を摺動自在に支持する軸受部材68を備えるものとしたが、この軸受部材68を備えないものとしてもよい。
【0051】
第1実施例のパーキング装置20では、ソレノイドシャフト52は、シャフト部53の拡径部532の図3中左側(小径部531側)の端面532bが、プランジャ58の図3中左側の端面58aより図3中左側に突出するよう構成されるものとしたが、拡径部532の端面532bとプランジャ58の端面58aとが揃うよう構成されるものとしてもよい。
【0052】
第1実施例のパーキング装置20では、非磁性材料によって形成されたシャフト部53と、磁性材料によって形成されたプランジャ58と、を有するものとしたが、全体が磁性材料によって一体に形成されるものとしてもよい。
【0053】
第1実施例のパーキング装置20では、ソレノイドシャフト52の先端部54の下側当接面56は、先端側から基端側に向けて図中下側に凸でピン46のローラ48の曲率半径より小さな曲率半径の曲面として形成されるものとしたが、ローラ48の曲率半径と同程度またはそれより大きな曲率半径の曲面として形成されるものとしてもよいし、図8の変形例の電磁ユニット150に例示するように、ソレノイドシャフト152の小径部153の先端部154の下側当接面156は、先端側から基端側に向けて図中下側に一定角度で傾斜するよう形成されるものとしてもよい。
【0054】
第1実施例のパーキング装置20では、ソレノイドシャフト52の先端部54の上側当接面55は、先端側から基端側に向けて図1図4の上側(解除側)に一定角度で傾斜するよう形成されるものとしたが、一定角度に限定されるものではなく、滑らかに変化する角度で傾斜するよう形成されるものなどとしてもよい。
【0055】
第1実施例のパーキング装置20では、図1に示したように、パーキングロック状態で、ピストンロッド32のピン46のローラ48とソレノイドシャフト52の先端部54の下側当接面56とは当接しないものとしたが、当接するものとしてもよい。こうすれば、パーキングロック解除状態に切り替える際に、ピストンロッド46の解除側への移動量を短くすることができると共に、ローラ48と下側当接面56とが衝突するのを抑制することができる。
【0056】
第1実施例のパーキング装置20では、パーキングロック解除状態で、コイル64に通電されておらずピストン38への油圧が低下したときには、リターンスプリング42の弾性力により、ピストンロッド32を図4中下側(ロック側)に移動させるものとしたが、このときに、ピストン38とケース40とによって形成される閉空間(リターンスプリング42が配置された閉空間)に、ケース40に形成された図示しない作動油入排孔を介して作動油を供給するものとしてもよい。こうすれば、リターンスプリング42の弾性力と油圧とにより、ピストンロッド32を図4中下側により迅速に移動させることができる。
【0057】
第1実施例のパーキング装置20では、ピストンロッド32は、リターンスプリング42の弾性力により図1中下側(ロック側)に付勢され、リターンスプリング42の弾性力に抗する油圧により図1中上側(解除側)に移動するものとしたが、逆に、弾性部材の弾性力により解除側に付勢され、弾性力に抗する油圧によりロック側に移動するものとしてもよい。
【0058】
図9は、本発明の第2実施例としてのパーキング装置201の構成の概略を示す構成図であり、図10は、パーキング装置201の要部の構成の概略を示す構成図であり、図11は、油圧ユニット210の一部の構成の概略を示す構成図であり、図12は、電磁ユニット220の構成の概略を示す構成図であり、図13は、電磁ユニット220のロックシャフト221の構成の概略を示す構成図である。
【0059】
第2実施例のパーキング装置201は、車両に搭載され、図示しない変速機のトランスミッションケースの内部または外部に配置される。そして、このパーキング装置201は、図示しないシフトレバーの操作位置(シフトレンジ)に応じて出力される電気信号に基づいて変速機のいずれかの回転軸のロックおよびロックの解除を行なう、いわゆるシフトバイワイヤ式のパーキング装置として構成されている。
【0060】
パーキング装置201は、図9に示すように、複数の歯202aを有すると共に変速機のいずれかの回転軸に取り付けられるパーキングギヤ202と、パーキングギヤ202と係合可能な突部203aを有すると共に図示しないスプリングによりパーキングギヤ202から離間するよう付勢されるパーキングポール203と、進退移動可能なパーキングロッド204と、パーキングロッド204の軸方向に移動可能な筒状のカム部材205と、例えばトランスミッションケースにより回転自在に支持されてパーキングポール203と共にカム部材205を挟持する支持ローラ206と、パーキングロッド204により一端が支持されると共にパーキングポール203をパーキングギヤ202に押し付けるようにカム部材205を付勢するカムスプリング207と、パーキングロッド204に連結されたディテントレバー208と、ピストンロッド212の移動によりディテントレバー208を介してパーキングロッド204を進退移動させる油圧ユニット210と、ピストンロッド212の移動を規制することによりパーキングロッド204の進退移動を規制する電磁ユニット(磁気ユニット)220と、を備える。このパーキング装置201では、図示するように、パーキングポール203の突部203aがパーキングギヤ202の隣り合う2つの歯202aの間の凹部と係合することにより、変速機の回転軸がロックされる(パーキングロックが行なわれる)。
【0061】
パーキングギヤ202やパーキングポール203,パーキングロッド204,カム部材205,支持ローラ206,カムスプリング207は、いずれも周知の構成を有する。ディテントレバー208は、略L字状に形成されており、第1遊端部208aと第2遊端部208bとを有する。第1遊端部208aは、パーキングロッド204の基端部(図9中右端部)に回転自在に連結されている。第2遊端部208bは、例えばトランスミッションケースにより支持される図示しないディテントスプリングに取り付けられた係合部材209と係合可能な係合凹部208rが形成されている。ディテントレバー208のコーナー部(第1,第2遊端部208a,208bの基端部)は、例えばトランスミッションケースにより支持された支軸208sにより回動自在に支持されている。
【0062】
油圧ユニット210は、シフトレバーの操作位置(シフトレンジ)に応じて出力される電気信号に基づいて電子制御装置により制御される変速機の油圧制御装置からの油圧により動作するよう構成されている。この油圧ユニット210は、図10に示すように、複数の部材から構成されるケース211と、ディテントレバー208の第2遊端部208bに連結されると共にケース211により軸方向(図10中上下方向(第1方向))に移動自在に支持される第1軸部材としてのピストンロッド212と、ピストンロッド212に固定されると共にケース211に形成されたピストン室211p内に配置されるピストン214と、を備える。
【0063】
ピストンロッド212は、先端部(図10中上端部)がケース211から外部に突出するようにケース211により支持されている。このピストンロッド212の先端部には、図11に示すように、先端側から基端側に向けて延びる連結凹部212rが形成されており、この連結凹部212rには、ディテントレバー208の第2遊端部208bが差し込まれている。ディテントレバー208には、連結凹部212r内に位置にするように長穴208hが形成されており、長穴208hには、ピストンロッド212の先端部により支持された連結ピン212pが挿通されている。長穴208hは、その内周と連結ピン212pの外周面との間に空間が画成されるよう形成されている。これにより、ピストンロッド212とディテントレバー208とは、互いにある程度の相対移動を許容するように連結される。
【0064】
また、ピストンロッド212の軸方向の中央部付近には、ピストンロッド212を軸方向と直交する方向(図10中左右方向)に貫通すると共に軸方向に延在する穴部212hが形成されており、穴部212hの内部には、当接部としてのローラ213が配置されている。ローラ213は、ローラベアリングとして構成されており、穴部212hの長手方向(図10図11中上下方向)の長さより小さい外径を有する。このローラ213は、連結ピン212pと平行に延在するようにピストンロッド212によって支持される支持シャフト212sにより、穴部212h内で回転自在となるよう支持されている。
【0065】
ピストン214は、ピストンロッド212の基端部(図10中下端部)に固定され、シール部材215を介してピストン室211pの内壁面によりピストンロッド212の軸方向に移動自在に支持されている。このピストン214は、ピストン室211pの内部を油室211fとスプリング室211sとに区画する。油室211fは、ピストンロッド212の先端部(図10中上端部)やディテントレバー208から離間するようにピストン室211pの図10中下側に画成され、ケース211に形成された作動油入排孔(油孔)211hと連通する。油室211f内には、図示しない油路や作動油入排孔211hを介して油圧制御装置からの油圧(作動油)が供給される。また、スプリング室211sは、ピストンロッド212の先端部やディテントレバー208に近接するようにピストン室211pの図10中上側に画成される。スプリング室211sには、ケース211とピストン214との間に位置するように弾性部材としてのリターンスプリング216が配置され、ピストン214は、リターンスプリング216により、スプリング室211s側から油室211f側に向けて(図中下側に)付勢される。
【0066】
こうして構成される油圧ユニット210は、組立状態(組立完了時の状態)で、ピストン214が、リターンスプリング216により図9中下向きに付勢されて油室211fの底部に最接近し、ピストンロッド212のケース211からの突出量が最小となる。これにより、ディテントレバー208を介してピストンロッド212に連結されたパーキングロッド204がパーキングポール203の基端部に最接近し、カムスプリング207により付勢されたカム部材205によってパーキングポール203がパーキングギヤ202と係合するように押圧され、変速機の回転軸がロックされる(パーキングロックが行なわれる)。
【0067】
図9に示すように変速機の回転軸がロックされている状態(以下、適宜「パーキングロック状態」という)で、油圧制御装置からの油圧が油圧ユニット210の油室211fに供給されると、ピストン214は、油室211f内の油圧によりリターンスプリング216の弾性力(付勢力)に抗してピストンロッド212の移動方向(第1方向)における図9中上側(以下、適宜「解除側」という)に移動する。これにより、ピストン214に固定されたピストンロッド212も解除側に移動し、それに伴ってディテントレバー208が支軸208sの周りに図9中時計回りに回動すると共にパーキングロッド204が図9中右側に移動する。そして、パーキングロッド204が図9中右側に移動することにより、カム部材205によるパーキングポール203の押圧が解除され、パーキングギヤ202とパーキングポール203との係合、即ち、変速機の回転軸のロックが解除される(パーキングロックが解除される)。したがって、車両の走行中に油圧制御装置からの油圧が油圧ユニット210の油室211fに供給されているときには、変速機の回転軸はロックされない(パーキングロックは行なわれない)。
【0068】
また、パーキングロックが解除されている状態(以下、適宜「パーキングロック解除状態」という)で、油圧制御装置から作動油入排孔211hへの油圧の供給が断たれて油室211fから作動油入排孔211hを介して作動油が流出していくと、ピストン214は、リターンスプリング216の弾性力によりピストンロッド212の移動方向における図9中下側(以下、適宜「ロック側」という)に移動する。これにより、ピストン214に固定されたピストンロッド212もロック側に移動し、それに伴ってディテントレバー208が支軸208sの周りに図9中反時計回りに回動すると共にパーキングロッド204が図9中左側に移動する。そして、パーキングロッド204が図9中左側に移動することにより、カムスプリング207により付勢されたカム部材205によってパーキングポール203がパーキングギヤ202と係合するように押圧され、変速機の回転軸がロックされる(パーキングロックが行なわれる)。なお、ディテントレバー208の第2遊端部208bの係合凹部208rと係合部材209とが係合することにより、ディテントレバー208の支軸208s周りの回動が図示しないディテントスプリングによってある程度規制され、それにより、パーキングロッド204の移動もある程度規制される。
【0069】
電磁ユニット220は、例えばアイドルストップ等により車両のエンジンとエンジンにより駆動されるオイルポンプとが停止されるのに伴って油圧ユニット210の油室211fに供給される油圧が低下したときに、リターンスプリング216の弾性力(付勢力)によってピストンロッド212がロック側に移動するのを規制し、パーキングロック解除状態からパーキングロック状態に移行しないようにするために用いられる。
【0070】
この電磁ユニット220は、図12に示すように、ピストンロッド212に設けられた当接部としてのローラ213(図10参照)と当接可能な先端部2210を有するロックシャフト221と、ロックシャフト221を軸方向(図12中左右方向(第2方向))に移動自在に支持するシャフトホルダ225と、磁力によりロックシャフト221をロック可能な磁気部230と、を備える。
【0071】
ロックシャフト221は、ステンレスなどの非磁性体により形成されており、図12および図13に示すように、先端部2210を有する小径部222と、小径部222から先端部2210とは反対側に延出し且つ小径部222より大径の拡径部223と、を有する。小径部222は、略円柱状に形成されており、その先端部2210は、二面幅形状を有するように成形されている。拡径部223は、略円柱状に形成されており、小径部222側の環状の端面223aと、小径部222側とは反対側の平坦な端面223bと、を有する。小径部222と拡径部223との境界付近の小径部222の外周面には、テーパ部222tが形成されている。このテーパ部222tは、拡径部223との境界付近で小径部222の外周面が先端部2210側から拡径部223の端面223a側に向けて先細となる(外径が小さくなる)よう形成されている。
【0072】
小径部222の先端部2210は、ピストンロッド212の移動方向(図12図13中上下方向)におけるロック側(図中下側)に位置する下側当接面2211と、ピストンロッド212の移動方向における解除側(図中上側)に位置する上側当接面2212と、を有する。下側当接面2211は、先端部2210側から拡径部223側に向かうにつれてロック側に傾斜するよう形成されており、具体的には、ローラ213の外周面の半径(曲率半径)より小さい曲率半径を有すると共にロック側に凸となる断面円弧状の曲面として形成されている。上側当接面2212は、先端部2210側から拡径部223側に向かうにつれて解除側に傾斜するよう形成されており、具体的には、解除側に一定角度で傾斜する(平坦な)斜面として形成されている。
【0073】
シャフトホルダ225は、図12に示すように、アルミニウムなどの非磁性体により略有底筒状に形成されており、磁気部230により保持されている。シャフトホルダ225の底部には、ロックシャフト221の小径部222が挿通される孔が形成されており、ロックシャフト221の小径部222の先端部2210は、シャフトホルダ225から図中左側に突出している。また、シャフトホルダ225の内部には、小径部222の外周面を摺動自在に支持する軸受部材(直動軸受)227が固定されている。このように軸受部材227によって小径部222を支持することにより、ロックシャフト221のガタつきを抑制しつつロックシャフト221を軸方向にスムーズに移動させることができる。さらに、シャフトホルダ225の図中右端部には、径方向外側に突出する環状のフランジ部225aが形成されている。
【0074】
磁気部230は、図12に示すように、ロックシャフト221と共に軸方向(図中左右方向(第2方向))に移動可能なシャフト移動部材231と、シャフト移動部材231の外周を囲むように配置されるコイル234と、シャフトホルダ225を保持すると共にシャフト移動部材231やコイル234を収容するケースとして機能するヨーク235と、シャフト移動部材231とコイル234との間に配置されるコア236と、弾性力によりシャフト移動部材231をシャフトホルダ225側(図中左側)に付勢する弾性部材としてのスプリング237と、を備える。
【0075】
シャフト移動部材231は、鉄などの磁性体により形成されたプランジャ232と、プランジャ232と同一の外径を有すると共にプランジャ232の軸方向の一端側(図中左端側)に固定された(プランジャ232と一体に構成された)環状の永久磁石233と、を有する。プランジャ232への永久磁石233の固定を接着や一体成型によって行なうことにより、容易に且つ精度よく行なうことができる。シャフト移動部材231は、軸方向の一端側に形成された凹部2310と、凹部2310の周囲の平坦且つ環状の端面231aと、を有する。端面231aは、永久磁石233の一端側の端面として形成される。凹部2310は、軸方向と直交する方向の底面2310bと内周面とを有する円孔部であり、底面2310bは、プランジャ232の一端側の端面として形成され、内周面は、永久磁石233の内周面として形成される。この凹部2310内には、ロックシャフト221の拡径部223の端面223bが底面2310bと当接するようロックシャフト221の拡径部223が挿入される。
【0076】
シャフト移動部材231の凹部2310の深さ(永久磁石233の軸方向の長さ)は、ロックシャフト221の拡径部223の軸方向の長さより若干(例えば、0.1mm程度)浅い値に定められている。したがって、凹部2310に挿入されたロックシャフト221の拡径部223の端面223aは、シャフト移動部材231の端面231aより外側(図中左側)に突出する。
【0077】
また、シャフト移動部材231の凹部2310の内周面の内径(永久磁石233の内径)は、ロックシャフト221の拡径部223の外径より若干(例えば、0.5mm〜1mm程度)大きな値に定められている。したがって、凹部2310(永久磁石233)の内周面と凹部2310に挿入されたロックシャフト221の拡径部223の外周面との間には、所定のクリアランスが形成される。これにより、ロックシャフト221が径方向にガタついたとしても、そのガタつきを拡径部223の外周面と凹部2310の内周面との間のクリアランスによって吸収して、シャフト移動部材231が径方向にガタつくのを抑制することができる。この結果、シャフト移動部材231(プランジャ232)とコア236との間の磁気ギャップを小さくすることができる。また、上述したように、ロックシャフト221が非磁性体により形成されているから、電磁ユニット220での磁束漏れを低減することができる。これらの結果、磁気部230の大型化を抑制しつつ磁気効率を高くすることができる。第2実施例では、拡径部223の外周面とシャフト移動部材231の凹部2310の内周面(永久磁石233の内周面)とのクリアランスより、拡径部223の軸方向の長さとシャフト移動部材231の凹部2310の深さ(永久磁石233の第2方向の長さ)との差が小さな値に定められている。
【0078】
コイル234は、ケースとしてのヨーク235に取り付けられる図示しないコネクタに接続される端子を有する。コイル234には、油圧制御装置を制御する電子制御装置や他の電子制御装置により制御される電源回路やコネクタを介して図示しない車両の補機バッテリから電流が印加される。ヨーク235は、鉄などの磁性体により略円筒状に形成されており、一端側(図中左端側)に、径方向内側に突出すると共に環状のフランジ部235aと、フランジ部235aの図中左端面とによりシャフトホルダ225を保持するホルダ保持部235bと、が形成されている。このフランジ部235aの内径は、シャフト移動部材231の永久磁石233の内径より小さく且つロックシャフト221の小径部222が摺動可能な値に定められている。即ち、このフランジ部235aは、コア236の内径より径方向内側の部分が、ロックシャフト221の拡径部223の小径部222側の端面223aや永久磁石233と図中左右方向で対向している。コイル234への非通電時には、シャフト移動部材231の永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力によりロックシャフト221およびシャフト移動部材231(プランジャ232)が一体にシャフトホルダ225側(図中左側)に付勢され(ロックされ)、コイル234への通電時には、ヨーク235,永久磁石233,プランジャ232,コア236を通過する磁束により、永久磁石233とフランジ部235aとの吸引がキャンセルされる。なお、ロックシャフト221が非磁性体により形成されているから、電磁ユニット220での磁束漏れを低減することができる。ホルダ支持部235bは、シャフトホルダ225のフランジ部225aの外周および図中左端面を覆うように形成されている。
【0079】
ヨーク235は、ケース211に取り付けられた支持部材239により支持(ケース211に固定)されている。また、ヨーク235の他端部(図12中右端部)には、コイル234やコア236を保持するようにリヤキャップ238が装着され、シャフト移動部材231の凹部2310側とは反対側の端部(図中右端部)とリヤキャップ238との間には、スプリング237が配置される。スプリング237は、互いに固定されていないロックシャフト221とシャフト移動部材231とをシャフトホルダ225側(図中左側)に一体に付勢する。また、スプリング237は、油圧ユニット210のリターンスプリング216より小さいバネ定数(剛性)を有する。さらに、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力とスプリング237の弾性力との和(ロックシャフト221やシャフト移動部材231に作用する図中左向きの力)が、油圧ユニット210のリターンスプリング216の弾性力(図10図12中下向きの力)によりピストンロッド212のローラ213とロックシャフト221の上側当接面2212との当接時にローラ213から上側当接面2212に作用する力の図12中右向きの分力(以下、リターンスプリング分力という)より大きくなるよう定められている。したがって、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231(プランジャ232)は、コイル234への非通電時には、リターンスプリング分力によりリヤキャップ238側(図12中右側)に移動しない(ロックされる)が、コイル234への通電時には、リターンスプリング分力により一体となってリヤキャップ238側に移動する。また、コイル234への非通電時には、ピストンロッド212のローラ213とロックシャフト221の先端部2210(下側当接面2211または上側当接面2212)との当接時にローラ213から先端部2210に作用する力の図10中右向きの分力は、ロックシャフト221,ロックシャフト221により図中右側に押圧されるシャフト移動部材231,シャフト移動部材231の永久磁石233により吸引されるヨーク235のフランジ部235aに作用する。このため、ヨーク235が支持部材239を介してケース211に固定されていないときには、ケース211が図中右方向に移動しようとしてヨーク235のホルダ支持部235bとシャフトホルダ225のフランジ部225aとの間に比較的大きな力が作用し得る。これに対して、第2実施例では、ヨーク235が支持部材239を介してケース211に固定されていることにより、ホルダ支持部235bとシャフトホルダ225のフランジ部225aとの間に大きな力が作用するのを抑制することができ、ヨーク235やシャフトホルダ225をより保護することができる。
【0080】
ここで、ヨーク235内のシャフト移動部材231(プランジャ232)の軸方向の最大ストローク量Smax(図12の例では、シャフト移動部材231(プランジャ232)の右端面とリヤキャップ238の内底面との間の間隔)は、ロックシャフト221の拡径部223の軸方向の長さより短い値に定められている。これにより、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231が軸方向(図中左右方向)に移動する際に、拡径部223がシャフト移動部材231の凹部2310から抜け出してしまうのを抑止することができる。
【0081】
こうして構成される電磁ユニット220は、組立状態(組立完了時の状態)すなわち油圧ユニット210に取り付けられる前の状態で、スプリング237の弾性力(および永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力)により、シャフト移動部材231の凹部2310の底面2310b(プランジャ232の一端側の端面)がロックシャフト221の拡径部223の端面223bと当接すると共に拡径部223の端面223aがヨーク235のフランジ部235aに当接するよう付勢される。このとき、シャフト移動部材231の凹部2310の周囲の端面231a(永久磁石233の一端側の端面)とフランジ部235aとの間には僅かな隙間が形成される。これは、上述したように、凹部2310の深さ(永久磁石233の軸方向の長さ)が拡径部223の軸方向の長さより若干浅いためである。これにより、ロックシャフト221とシャフト移動部材231とが一体にピストンロッド212側に付勢されて拡径部223の端面223aがフランジ部235aと当接するから、拡径部223の端面223aがフランジ部235aに当接せずにシャフト移動部材231の端面231aだけがフランジ部235aに当接してロックシャフト221がフランジ部235aと凹部2310の底面2310bとの間で軸方向にガタついてしまうのを抑制することができる。また、シャフト移動部材231の移動に伴って永久磁石233がフランジ部235aに当接するのを抑制して、永久磁石233を保護することができる。しかも、第2実施例では、拡径部223の外周面とシャフト移動部材231の凹部2310の内周面(永久磁石233の内周面)とのクリアランスより、拡径部223の軸方向の長さとシャフト移動部材231の凹部2310の深さ(永久磁石233の第2方向の長さ)との差が小さな値に定められる。これにより、ロックシャフト221の径方向のガタツキを吸収しつつ拡径部223とフランジ部235aとの当接時のフランジ部235aと永久磁石233との間隔を小さくして両者間の吸引力を大きくすることができる。また、フランジ部235aと永久磁石233との間隔が小さいことにより、コイル234への通電時に、永久磁石233とフランジ部235aとの吸引をキャンセルするための磁束をより効率よく発生させることができる。
【0082】
また、ロックシャフト221の小径部222には、拡径部223との境界付近にテーパ部222tが形成されているから、拡径部223の端面223aにおけるフランジ部235aとの当接範囲をできるだけ小径部222側に寄せることが可能となり、拡径部223の外径の増加を抑制して、電磁ユニット220のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0083】
電磁ユニット220は、図9および図10に示すように、油圧ユニット210のピストンロッド212の軸方向(図中上下方向(図9の一点鎖線参照))と、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231の軸方向(図中左右方向(図9の二点差線参照))とが直交するよう、油圧ユニット210に電磁ユニット220が取り付けられる。これにより、両者を同軸に配置する構成に比して、トランスミッションケースの内部または外部の限られたスペースに油圧ユニット210および電磁ユニット220を容易に配置することができる。
【0084】
電磁ユニット220が油圧ユニット210のケース211に取り付けられた際、ロックシャフト221の先端部2210(下側当接面2211および上側当接面2212)は、ピストンロッド212の軸方向から見て(図10の上側または下側から見て)ローラ213の外周面の少なくとも一部と重なり合う。そして、第2実施例では、電磁ユニット220は、図10に示すように、ロックシャフト221の先端部2210の下側当接面2211がローラ213の外周面と当接する(下側当接面2211がローラ213から力を受ける)ように油圧ユニット210のケース211に取り付けられる。これにより、ロックシャフト221の先端部2210(下側当接面2211)には、ピストンロッド212のローラ213からロックシャフト221の軸方向の力(強制力)が作用し、それにより、電磁ユニット220のロックシャフト221およびシャフト移動部材231がスプリング237の弾性力に抗してリヤキャップ238側(図中右側)に僅かに移動する。したがって、ロックシャフト221の拡径部223の小径部222側の端面223aと、ヨーク235のフランジ部235aとの間に若干の隙間が形成される。
【0085】
次に、こうして構成された第2実施例のパーキング装置201および電磁ユニット220の動作について説明する。
【0086】
油圧ユニット210の油室211fに油圧制御装置からの油圧(作動油)が供給されておらず且つ電磁ユニット220の磁気部230のコイル234に通電されていないときには、油圧ユニット210および電磁ユニット220は、図10に示す状態となっており、パーキング装置201により変速機の回転軸がロックされる(パーキングロックが行なわれる)。このとき、電磁ユニット220では、シャフト移動部材231の永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力とスプリング237の弾性力とにより、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231が図中左側に付勢されている(ロックされている)。また、このときには、ローラ213とロックシャフト221の先端部2210の下側当接面2211とが当接している。
【0087】
そして、車両の走行開始に際してパーキングロック状態からパーキングロック解除状態に移行させるときには、油圧ユニット210の油室211fに油圧制御装置からの油圧が供給される。また、このときには、磁気部230のコイル234への通電を開始する。コイル234への通電が開始されると、その通電によって発生する磁束により、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引がキャンセルされる。したがって、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231は、スプリング237だけにより図10中左側に付勢されている状態となる。
【0088】
油圧制御装置からの油圧が油圧ユニット210の油室211fに供給されると、ピストン214およびピストンロッド212は、図14に示すように、油室211f内の油圧によりリターンスプリング216の弾性力に抗して解除側(図中上側)に移動する。上述したように、パーキングロック状態では、ローラ213がロックシャフト221の先端部2210の下側当接面2211と当接しているから、ピストンロッド212が解除側に移動し始めると、ローラ213がロックシャフト221の下側当接面2211上を転動しながら、ピストンロッド212からロックシャフト221にローラ213と下側当接面2211との接線方向と直交する方向(法線方向)の力が作用する。そして、その法線方向の力により、互いに固定されていないロックシャフト221とシャフト移動部材231(プランジャ232および永久磁石233)とは、スプリング237の弾性力に抗して一体となってリヤキャップ238側(図14の右側)に移動する。
【0089】
また、図14に示すように、ピストンロッド212の解除側への移動に伴ってローラ213がロックシャフト221の下側当接面2211から離れると、ロックシャフト221とシャフト移動部材231とがスプリング237により付勢されて穴部212hの奥側(図14の左側)に移動し、その後、ローラ213がロックシャフト221の上側当接面2212上を転動するようになる。なお、このときには、ローラ213がピストンロッド212と共に解除側(図14の上側)に移動していくことから、ローラ213から上側当接面2212にロックシャフト221等をリヤキャップ238側に移動させる力は作用しない。その後、油圧により、ピストンロッド212は更に解除側に移動し、図15に示すように、ローラ213とロックシャフト221の上側当接面2212との間に所定の間隔が形成される位置で停止する。
【0090】
このようにして、ピストンロッド212が油圧により解除側への移動を開始してから停止するまでの間に、ディテントレバー208が支軸208sの周りに図9の時計回りに回動すると共に、パーキングロッド204が図9中右側に移動する。これにより、パーキングロッド204の移動に伴ってカム部材205によるパーキングポール203の押圧が解除され、パーキングロックが解除される。こうしてパーキングロック解除状態が形成されると、コイル234への通電を終了する。
【0091】
第2実施例では、ピストンロッド212が油圧により解除側に移動する際に、磁気部230のコイル234への通電により、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力をキャンセルする。これにより、この際にコイル234に通電しないものに比して、ピストンロッド212のローラ213によってロックシャフト221およびシャフト移動部材231をピストンロッド212から後退させる(リヤキャップ238側に移動させる)のに要する力を小さくすることができる。この結果、ピストンロッド212を解除側(図14の上側)に迅速に移動させたり、ピストンロッド212の解除側への移動に要する油圧を小さくしたりすることができる。
【0092】
また、第2実施例では、図10に示すパーキングロック状態で、ピストンロッド212のローラ213がロックシャフト221の下側当接面2211と当接している。これにより、パーキングロック状態でローラ213がロックシャフト221の下側当接面2211と当接しない構成に比して、ピストンロッド212の移動ストロークを小さくしてパーキング装置201のコンパクト化を図ることができる。また、パーキングロック状態からパーキングロック解除状態に速やかに移行させることができる。さらに、ピストンロッド212がロック側から解除側に移動する際にローラ213と下側当接面2211とが衝突しないようにして、ロックシャフト221やローラ213の耐久性を向上させると共にノイズの発生を抑制することができる。
【0093】
さらに、ピストンロッド212が油圧により解除側に移動する際にローラ213からの力を受ける下側当接面2211は、ローラ213の外周面の半径(曲率半径)より小さい曲率半径を有している。これにより、ピストンロッド212が解除側に移動する際にローラ213からロックシャフト221に作用する軸方向の力(上述の法線方向の力の分力)をより大きくすることができるから、パーキングロックを解除する際に油圧ユニット210の油室211fに供給すべき油圧の上昇を抑制することができる。
【0094】
加えて、当接部としてのローラ213をピストンロッド212により回転自在に支持して下側当接面2211や上側当接面2212上を転動可能とすることにより、ローラ213と下側当接面2211や上側当接面2212との間の摩擦抵抗を低減させて両者の耐摩耗性(耐久性)を向上させることができる。
【0095】
図15に示すように、油圧によりピストンロッド212が解除側に移動してパーキングロックが解除された後、油圧制御装置からの油圧が油圧ユニット210の油室211fに供給されているときには、パーキングロック解除状態を維持することができる。第2実施例では、上述したように、油圧によりピストンロッド212が解除側に移動してパーキングロックが解除されているときには、ピストンロッド212のローラ213とロックシャフト221の先端部2210の上側当接面2212とは互いに離間している。また、コイル234への通電は行なわれない。したがって、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231は、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力とスプリング237の弾性力とにより、ロックシャフト221の先端部2210の上側当接面2212がピストンロッド212の軸方向から見てローラ213の外周面の一部と重なり合うように穴部212h内に突出し、ロックシャフト221の拡径部223の小径部222側の端面223aがヨーク235のフランジ部235aに押し当てられている。なお、第2実施例では、シャフト移動部材231の凹部2310の深さ(永久磁石233の軸方向の長さ)がロックシャフト221の拡径部223の軸方向の長さより浅いため、このときには、シャフト移動部材231(永久磁石233)の端面231aは、フランジ部235aに当接しない。これにより、永久磁石233がフランジ部235aに当接するものに比して永久磁石233を保護することができる。また、ロックシャフト221の拡径部223の端面223aがヨーク235のフランジ部235aに押し当てられているから、シャフト移動部材231(永久磁石233)とフランジ部235aとの距離が短く且つ一定となる。これにより、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力を大きくすることができる。
【0096】
図15に示すパーキングロック解除状態で、アイドルストップの実行等によるエンジンの停止に伴って油圧ユニット210の油室211fへの油圧が低下すると、リターンスプリング216の弾性力によりピストンロッド212がロック側に移動して、ピストンロッド212のローラ213とロックシャフト221の先端部2210の上側当接面2212とが当接する。第2実施例では、上述したように、コイル234への非通電時のシャフト移動部材231の永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力とスプリング237の弾性力との和がリターンスプリング分力より大きいから、ピストンロッド212の図中下側すなわちロック側への移動を規制することができる。この結果、アイドルストップ等の実行により油圧ユニット210への油圧が低下したときでも、パーキングロック解除状態を保持することができる。しかも、上述したように、ロックシャフト221の拡径部223の端面223aがヨーク235のフランジ部235aに押し当てられていることによってシャフト移動部材231(永久磁石233)とフランジ部235aとの距離が短く且つ一定となっており、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力を大きくすることができるから、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231を比較的大きな保持力で保持する(移動を規制する)ことができる。また、この際にコイル234に電流を印加する必要がないから、電力消費を抑制することができると共に何らかの事情によりコイル234に通電できないときでもパーキングロック解除状態を保持することができる。
【0097】
パーキングロック解除状態で、磁気部230のコイル234への通電を開始すると、その通電に伴って発生する磁束により、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引がキャンセルされる。上述したように、油圧制御装置からの油圧が油圧ユニット210の油室211fに供給されてパーキングロック解除状態を形成しているときには、ロックシャフト221の拡径部223の端面223aがヨーク235のフランジ部235aに押し当てられていることによってシャフト移動部材231(永久磁石233)とフランジ部235aとの距離が短く且つ一定となっているから、コイル234への通電開始時には、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力をキャンセルするための磁束をより効率よく発生させることができる。また、スプリング237のバネ定数は、リターンスプリング216のバネ定数より小さい。したがって、コイル234に通電しながら油圧ユニット210の油室211fへの油圧が低下すると、油室211fから作動油入排孔211hを介して作動油が流出し、ピストン214およびピストンロッド212は、リターンスプリング216の弾性力により、図中下側すなわちロック側に移動する。そして、ピストンロッド212のローラ213とロックシャフト221の先端部2210の上側当接面2212とが当接し、ローラ213から上側当接面2212にその法線方向の力が作用し、法線方向の力の第2方向(ロックシャフト221の軸方向)の分力により、互いに固定されていないロックシャフト221とシャフト移動部材231とがスプリング237の弾性力に抗して一体となって図中右側すなわちリヤキャップ238側に移動する。なお、このとき、ローラ213は、上側当接面2212上を転動する。
【0098】
そして、ピストンロッド212のロック側への移動に伴ってローラ213がロックシャフト221の上側当接面2212から離れると、ロックシャフト221とロックシャフト221とシャフト移動部材231とがスプリング237により付勢されて穴部212hの奥側(図15の左側)に移動し、ローラ213がロックシャフト221の下側当接面2211上を転動するようになる。なお、このときには、ローラ213がピストンロッド212と共に解除側(図15の下側)に移動していくことから、ローラ213から下側当接面2211にロックシャフト221等をリヤキャップ238側に移動させる力は作用しない。その後、油圧により、ピストンロッド212は更にロック側に移動し、図10に示す位置(組立状態)で停止する。
【0099】
このようにして、ピストンロッド212がリターンスプリング216の弾性力によりロック側への移動を開始してから停止するまでの間に、ディテントレバー208が支軸208sの周りに図9の反時計回りに回動すると共に、パーキングロッド204が図9中左側に移動する。これにより、パーキングロッド204の移動に伴ってカムスプリング207により付勢されたカム部材205によってパーキングポール203がパーキングギヤ202と係合するよう押圧され、パーキングロックが行なわれる。
【0100】
ピストンロッド212がロック側に移動する際にも、解除側に移動する際と同様に、ローラ213が下側当接面2211や上側当接面2212上を転動するから、ローラ213と下側当接面2211や上側当接面2212との間の摩擦抵抗を低減させて両者の耐摩耗性(耐久性)を向上させることができる。
【0101】
以上説明した第2実施例のパーキング装置201では、電磁ユニット220のロックシャフト221およびシャフト移動部材231(プランジャ232および永久磁石233)の移動方向が油圧ユニット210のピストンロッド212の移動方向と直交するよう電磁ユニット220が配置される(油圧ユニット210に取り付けられる)。これにより、両者が同一方向に移動するよう(同一軸線上に)配置されるものに比して、限られたスペースへの配置を良好なものとすることができる。
【0102】
第2実施例のパーキング装置201では、パーキングロック解除状態で、コイル234への非通電時には、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力によりロックシャフト221およびシャフト移動部材231がピストンロッド212から後退しないようにロックされ、リターンスプリング216の弾性力によるピストンロッド212のロック側への移動(パーキングロック状態への切替)が規制される。一方、パーキングロック解除状態で、コイル234への通電時には、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力がキャンセルされ、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231がピストンロッド212から後退するのが許容され、リターンスプリング216の弾性力によるピストンロッド212のロック側への移動が許容される。したがって、パーキングロック解除状態を保持するために、コイル234に通電する必要がないから、電力消費を抑制することができると共に、何らかの事情によりコイル234に通電できないときに、パーキングロック状態に切り替わってしまうのを抑制することができる。また、パーキングロック解除状態で、コイル234への通電時に、リターンスプリング216の弾性力に抗する油圧がピストンロッド212に作用しなくなったときには、パーキングロック状態をより適正に形成することができる。
【0103】
第2実施例のパーキング装置201では、油圧によりパーキングロック解除状態を形成しているときには、コイル234への通電を行なわず、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力とスプリング237の弾性力とにより、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231にピストンロッド212側の力が作用し、ロックシャフト221の拡径部223の小径部222側の端面223aがヨーク235のフランジ部235aと当接している(ロックシャフト221の端面223aがフランジ部235aに押し当てられている)。これにより、ロックシャフト221の端面223aがフランジ部235aに押し当てられていないものに比して、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力を大きくすることができる。この結果、その後に油圧が低下したときに、ピストンロッド212のロック側への移動をより確実に規制することができ、パーキングロック解除状態をより確実に保持することができる。また、シャフト移動部材231(永久磁石233)とフランジ部235aとの距離が短く且つ一定となっていることにより、コイル234への通電開始時には、永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力をキャンセルするための磁束をより効率よく発生させることができる。
【0104】
第2実施例のパーキング装置201では、永久磁石233がプランジャ232に固定されてシャフト移動部材231が構成されると共に永久磁石233の軸方向の長さがロックシャフト221の拡径部223の軸方向の長さより短く形成される。これにより、シャフト移動部材231の移動時に、永久磁石233がヨーク235のフランジ部235aに当接するのを抑制することができ、永久磁石233を保護することができる。
【0105】
第2実施例のパーキング装置201では、ロックシャフト221およびシャフト移動部材231が、スプリング237の弾性力(および永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引)により、シャフト移動部材231の凹部2310の底面2310b(プランジャ232の一端側の端面)がロックシャフト221の拡径部223の端面223bと当接し、拡径部223の端面223aがヨーク235のフランジ部235aに当接するよう付勢される。これにより、ロックシャフト221とシャフト移動部材231とが一体にピストンロッド212側に付勢されてロックシャフト221の拡径部223の端面223aがフランジ部235aと当接するから、ロックシャフト221がその移動方向にガタつくのを抑制することができる。
【0106】
第2実施例のパーキング装置201では、シャフト移動部材231の凹部2310にロックシャフト221の拡径部223が挿入される(永久磁石233が拡径部223の外周を囲むように位置する)。これにより、ロックシャフト221が径方向にガタついたとしても、そのガタツキを拡径部223の外周面と永久磁石233の内周面との間のクリアランスで吸収することができる。この結果、プランジャ232の外周に形成される磁気ギャップを小さくすることができる。また、ロックシャフト221が非磁性体により形成されているから、電磁ユニット220での磁束漏れを低減することができる。これらの結果、電磁ユニット220の大型化を抑制しつつコイル234への電流印加時の磁気効率を高くすることができる。
【0107】
第2実施例のパーキング装置201では、パーキングロック解除状態で、コイル234に通電して永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力をキャンセルすると共に油圧ユニット210の油室211fへの油圧が低下したときに、リターンスプリング216の弾性力により、ピストンロッド212がロックシャフト221およびシャフト移動部材231を後退(リヤキャップ238側に移動)させながらロック側に移動するものとしたが、このときに、図15の二点鎖線に示すように、油圧ユニット210のスプリング室211sに油圧制御装置からの油圧(作動油)を供給するものとしてもよい。こうすれば、ピストンロッド212をロック側により迅速に移動させることができる。
【0108】
第2実施例のパーキング装置201では、パーキングロック状態からパーキングロック解除状態に移行する際に、磁気部230のコイル234に通電して永久磁石233とフランジ部235aとの吸引力をキャンセルしながら、ピストンロッド212を油圧により解除側に移動させるものとしたが、コイル234に通電せずに、ピストンロッド212を油圧により解除側に移動させるものとしてもよい。この場合、ピストンロッド212を移動させるためには、リターンスプリング216の弾性力に抗すると共にピストンロッド212のローラ213からロックシャフト221の下側当接面2211に作用する力の図10中右向きの分力が永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力とスプリング237の弾性力との和(ロックシャフト221やシャフト移動部材231に作用する図10中左向きの力)より大きくなる油圧、即ち、コイル234に通電する第2実施例に比して永久磁石233とヨーク235のフランジ部235aとの吸引力に抗する分だけ大きな油圧が必要となる。
【0109】
第2実施例のパーキング装置201では、ロックシャフト221の拡径部223の外周面とシャフト移動部材231の凹部2310の内周面(永久磁石233の内周面)とのクリアランスより、拡径部223の軸方向の長さとシャフト移動部材231の凹部2310の深さ(永久磁石233の第2方向の長さ)との差が小さくなるものとしたが、両者が同程度に定められるものとしてもよいし、ロックシャフト221の拡径部223の外周面とシャフト移動部材231の凹部2310の内周面とのクリアランスが拡径部223の軸方向の長さとシャフト移動部材231の凹部2310の深さとの差より小さくなるものとしてもよい。
【0110】
第2実施例のパーキング装置201では、永久磁石233の軸方向(図中左右方向)の長さが、ロックシャフト221の拡径部223の軸方向の長さより短く形成されるものとしたが、ロックシャフト221の拡径部223の軸方向の長さと同一の長さに形成されるものとしてもよい。
【0111】
第2実施例のパーキング装置201では、図12に示したように、磁気部230の永久磁石233がプランジャ232に固定される(プランジャ232と一体に構成される)ものとしたが、図16の変形例の電磁ユニット320に示すように、磁気部330の永久磁石333がヨーク235のフランジ部235aに固定されるものとしてもよい。この場合、永久磁石333とプランジャ232との吸引力によりロックシャフト221およびプランジャ232が一体にシャフトホルダ225側に付勢される(ロックされる)。この場合も、図示するように、永久磁石333の軸方向(図中左右方向)の長さがロックシャフト221の拡径部223の軸方向の長さより短く形成されることにより、ロックシャフト221およびプランジャ232の移動時に、永久磁石333がプランジャ232に当接するのを抑制して、永久磁石333を保護することができる。なお、永久磁石333の軸方向の長さは、ロックシャフト221の拡径部223の軸方向の長さと同一の長さに形成されるものとしてもよい。
【0112】
第2実施例のパーキング装置201では、ロックシャフト221の小径部222の先端部2210の下側当接面2211(ロック側の当接面)は、ロック側に凸となる断面円弧状の曲面として形成されるものとしたが、ロック側に凸となり円弧以外の断面形状の曲面として形成されるものとしてもよいし、先端部2210側から拡径部223側に向かうにつれてロック側に一定角度で傾斜する(平坦な)斜面として形成されるものとしてもよい。
【0113】
第2実施例のパーキング装置201では、ロックシャフト221の小径部222の先端部2210の上側当接面2212(解除側の当接面)は、解除側に一定角度で傾斜する(平坦な)斜面として形成されるものとしたが、解除側に凸となる断面形状の曲面として形成されるものとしてもよい。
【0114】
第2実施例のパーキング装置201では、ロックシャフト221の小径部222は、拡径部223との境界付近の外周面が先端部2210側から拡径部223の端面223a側に向けて先細となる(外径が小さくなる)よう形成されるものとしたが、先細ではなく外径が一定となるよう形成されるものとしてもよい。
【0115】
第2実施例のパーキング装置201では、シャフトホルダ225の内部に固定されると共にロックシャフト221の小径部222の外周面を摺動自在に支持する軸受部材227を備えるものとしたが、この軸受部材227を備えないものとしてもよい。
【0116】
第2実施例のパーキング装置201では、油圧ユニット210に電磁ユニット220が取り付けられたときにおいて、ロックシャフト221の先端部2210の下側当接面2211とローラ213の外周面とが当接して、ロックシャフト221の拡径部223の端面223aとヨーク235のフランジ部235aとの間に若干の隙間が形成されるものとしたが、ロックシャフト221の拡径部223の端面223aとヨーク235のフランジ部235aとが当接した状態となるものとしてもよい。この場合、ピストンロッド212のローラ213の外周面が、ロックシャフト221の先端部2210の下側当接面2211からロック側に離間しているものとしてもよい。
【0117】
第2実施例のパーキング装置201では、ピストンロッド212の当接部として、ピストンロッド212によって支持される支持シャフト212sにより回転自在に支持されるローラ213を用いるものとしたが、ピストンロッド212により回転自在に支持される円柱体を用いるものとしてもよいし、ピストンロッド212に対して回転不能に構成されるもの(例えば、支持シャフト212sと同様のもの)を用いるものとしてもよい。
【0118】
第2実施例のパーキング装置201では、ロックシャフト221とプランジャ232とが別体として構成されるものとしたが、一体に構成されるものとしてもよい。
【0119】
第2実施例のパーキング装置201では、ピストンロッド212は、リターンスプリング216の弾性力により図10中下側(ロック側)に付勢され、リターンスプリング216の弾性力に抗する油圧により図10中上側(解除側)に移動するものとしたが、逆に、リターンスプリングの弾性力により解除側に付勢され、そのリターンスプリングの弾性力に抗する油圧によりロック側に移動するものとしてもよい。
【0120】
実施例の主要な要素と発明の概要の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。第1実施例では、ピストンロッド32が「第1軸部材」に相当し、ソレノイドシャフト52とヨーク60とコイル64とコア66とスプリング70とを有する電磁ユニット50が「電磁ユニット」に相当する。また、穴部36が「穴部」に相当し、シャフト部53の小径部531が「小径部」に相当し、シャフト部53の拡径部532とプランジャ58とが「大径部」に相当する。第2実施例では、ピストンロッド212が「第1軸部材」に相当し、ロックシャフト221とプランジャ232と永久磁石233とコイル234とヨーク235とコア236とスプリング237とリヤキャップ238とを有する電磁ユニット220が「電磁ユニット」に相当する。
【0121】
なお、実施例の主要な要素と発明の概要の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が発明の概要の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、発明の概要の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、発明の概要の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は発明の概要の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0122】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、パーキング装置の製造産業などに利用可能である。
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