(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリルポリマー(B)は、アクリル酸エステル単位、メタクリル酸エステル単位、不飽和カルボン酸単位、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単位及び加水分解性シリル基含有不飽和単量体単位を含む請求項1又は2記載の水性分散体。
フルオロポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)が含有する水酸基1当量に対して、0.5〜5.0当量のポリイソシアネート化合物を含む請求項1、2、3又は4記載の水性分散体。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の水性分散体は、複合重合体粒子、ポリイソシアネート化合物及び水を含む。
【0028】
上記複合重合体粒子は、フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)とからなり、フルオロポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)のいずれか一方又は両方が、水酸基及び加水分解性シリル基を含有することを特徴とする。本発明の水性分散体は、水酸基及び加水分解性シリル基を含有するポリマーから構成される複合重合体粒子を含むことから、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性に優れる塗膜を形成することができる。水酸基及び加水分解性シリル基のいずれかが欠けると、優れた塗膜を形成できない。
【0029】
上記複合重合体粒子は、フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)とを同一粒子内に含有していることが好ましい。フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)とが同一粒子内に存在している場合、両者は化学的に結合していてもよいし、結合していなくてもよい。
【0030】
水酸基及び加水分解性シリル基は、フルオロポリマー(A)又はアクリルポリマー(B)のいずれかが含有していればよく、一方のポリマーが水酸基を含有しており、もう一方のポリマーが加水分解性シリル基を含有していてもよい。製造が容易である点で、アクリルポリマー(B)が水酸基及び加水分解性シリル基を含有していることが好ましい。
【0031】
本明細書において、上記水酸基は、−OHで示される基であるが、カルボキシ基(−COOH)の一部を構成する水酸基を含まない。
【0032】
上記加水分解性シリル基としては、一般式:
−SiX
1nX
23−n(X
1はC
1−10のアルコキシ基、X
2はH又はC
1−10のアルキル基、nは1〜3の整数を表す。)で示される基であることが好ましい。
塗膜の耐溶剤性向上の観点から上記加水分解性シリル基が複合粒子中でシリル基同士の架橋反応する必要があるため、その反応性は高い方がよく、上記加水分解性シリル基は、−Si(OCH
3)
nX
23−n又は−Si(OC
2H
5)
nX
23−nであることがより好ましく、−Si(OCH
3)
3又は−Si(OC
2H
5)
3であることが更に好ましい。
【0033】
上記複合重合体粒子において、フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)が90/10〜10/90であることが好ましく、80/20〜20/80であることがより好ましく、70/30以下であることが更に好ましく、30/70以上であることが更に好ましく、50/50以上が特に好ましい。質量比(A/B)が上記範囲内にあると、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができる。フルオロポリマー(A)が多すぎると塗膜の防汚性は向上するが塗膜の造膜性が低下する恐れがある。アクリルポリマー(B)が多すぎると塗膜の造膜性は向上するが、塗膜の防汚性が低下する恐れがある。
【0034】
フルオロポリマー(A)は、フルオロオレフィン単位を含むことが好ましい。上記フルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、
【0036】
などのパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペンなどの非パーフルオロオレフィンが挙げられる。パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)などが挙げられる。
【0037】
また、上記フルオロオレフィンとして、官能基含有フルオロオレフィンも使用できる。
上記官能基含有フルオロオレフィンとしては、例えば、一般式:
CX
32=CX
4−(Rf)
m−Y
1
(式中、Y
1は−OH、−COOM
2、−SO
2F、−SO
3M
2(M
2は水素原子、NH
4基またはアルカリ金属)、カルボン酸塩、カルボキシエステル基、エポキシ基またはシアノ基;X
3およびX
4は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子;Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基若しくは含フッ素オキシアルキレン基、または炭素数2〜40のエーテル結合を含有する2価の含フッ素アルキレン基若しくは含フッ素オキシアルキレン基;mは0または1)で示される化合物が挙げられる。
【0038】
上記官能基含有フルオロオレフィンの具体例としては、例えば、
【0042】
上記フルオロオレフィンとして、ヨウ素含有モノマー、例えば、特公平5−63482号公報や特開昭62−12734号公報に記載されているパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)、パーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのパーフルオロビニルエーテルのヨウ素化物も使用できる。
【0043】
なかでも、上記フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニル、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び、クロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0044】
また、上記フルオロオレフィンとしては、ビニリデンフルオライドと、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種と、であることがより好ましい。
【0045】
フルオロポリマー(A)は、上記フルオロオレフィン単位の他に、フルオロオレフィンと共重合可能な非フッ素系単量体単位を含んでいてもよい。上記フルオロオレフィンと共重合可能な非フッ素系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類、ビニルエーテル系単量体、アリルエーテル系単量体、ビニルエステル系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体などが挙げられる。
【0046】
フルオロポリマー(A)は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、フルオロオレフィン単位として、ビニリデンフルオライド単位を含むことが好ましい。アクリルポリマー(B)との相溶性の観点からは、フルオロポリマー(A)は、ビニリデンフルオライド単位が、フルオロポリマー(A)を構成する全重合単位に対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、95モル%以下であることが好ましい。
【0047】
フルオロポリマー(A)としては、VdF/TFE/CTFE共重合体、VdF/TFE共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/HFP共重合体、及び、PVdFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、VdF/TFE/CTFE=40〜99/1〜50/0〜30(モル%)、VdF/TFE=50〜99/1〜50(モル%)、VdF/TFE/HFP=45〜99/0〜35/5〜50(モル%)、VdF/CTFE=40〜99/1〜30(モル%)、及び、VdF/HFP=50〜99/1〜50(モル%)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0048】
アクリルポリマー(B)は、少なくともアクリルモノマー単位を含むことが好ましい。上記アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0049】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0050】
アクリルポリマー(B)は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、アクリル酸エステル単位又はメタクリル酸エステル単位を含むことが好ましく、アクリル酸エステル単位及びメタクリル酸エステル単位を含むことがより好ましい。
【0051】
本明細書において、単に「(メタ)アクリル酸エステル」「アクリル酸エステル」「メタクリル酸エステル」と記載した場合には、水酸基又は加水分解性シリル基を有するアクリルモノマーを含まない。
【0052】
上記(メタ)アクリル酸エステル単位は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、アクリルポリマー(B)を構成する全単量体単位に対して、合計で、64〜99.8質量%であることが好ましく、74〜95.5質量%であることがより好ましい。
【0053】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜10のアクリル酸アルキルエステル、又は、アルキル基の炭素数が1〜10のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、及び、シクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0055】
アクリルポリマー(B)は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、水酸基含有単量体単位を含むことが好ましく、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル及び水酸基含有アルキルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の水酸基含有単量体単位を含むことがより好ましく、水酸基含有単量体単位として、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単位を含むことが更に好ましい。
【0056】
上記水酸基含有単量体単位は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、アクリルポリマー(B)を構成する全単量体単位に対して、0.1〜40質量%であることが好ましく、0.8〜31質量%であることがより好ましく、4〜23質量%であることが更に好ましく、4〜18質量%であることが特に好ましい。
【0057】
上記水酸基含有アルキルビニルエーテルとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等が挙げられる。重合反応性が優れる点で、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、及び、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0058】
上記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート等が挙げられ、なかでも、HEMA及びHEAからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0059】
上記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単位は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、アクリルポリマー(B)を構成する全単量体単位に対して、0.1〜40質量%であることが好ましく、0.8〜31質量%であることがより好ましく、4〜23質量%であることが更に好ましく、4〜18質量%であることが特に好ましい。上記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単位は、多すぎると塗膜の透明性を損なうおそれがあり、少なすぎると塗膜がやわらかくなり防汚性、耐溶剤性を損なうおそれがある。
【0060】
アクリルポリマー(B)は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、加水分解性シリル基含有不飽和単量体単位を含むことが好ましい。
【0061】
上記加水分解性シリル基含有不飽和単量体としては、
CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、
CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(CH
3)(OCH
3)
2、
CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、
CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(CH
3)(OC
2H
5)
2、
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(CH
3)(OCH
3)
2、
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3、
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(CH
3)(OC
2H
5)
2、
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2O(CH
2)
3Si(OCH
3)
3、
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2(CH
2)
3Si(CH
3)(OCH
3)
2、
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
11Si(OCH
3)
3、
CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
11Si(CH
3)(OCH
3)
2
等が挙げられる。
【0062】
上記加水分解性シリル基含有不飽和単量体単位は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、アクリルポリマー(B)を構成する全単量体単位に対して、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。上記加水分解性シリル基含有不飽和単量体単位は、多すぎると塗膜の透明性を損なうおそれがあり、少なすぎると塗膜の耐溶剤性、基材密着性を損なうおそれがある。
【0063】
アクリルポリマー(B)は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、不飽和カルボン酸単位を含むことが好ましい。
【0064】
上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、ウンデシレン酸などがあげられる。なかでも、単独重合性が低く単独重合体ができにくい点、カルボキシル基の導入を制御しやすい点から、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸、及び、ウンデシレン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0065】
上記不飽和カルボン酸単位は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、アクリルポリマー(B)を構成する全単量体単位に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
【0066】
アクリルポリマー(B)は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単位及び加水分解性シリル基含有不飽和単量体単位を含むことがより好ましい。
【0067】
アクリルポリマー(B)は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができることから、アクリル酸エステル単位、メタクリル酸エステル単位、不飽和カルボン酸単位、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単位及び加水分解性シリル基含有不飽和単量体単位を含むことが更に好ましい。
【0068】
アクリル酸エステル単位、メタクリル酸エステル単位、不飽和カルボン酸単位、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単位及び加水分解性シリル基含有不飽和単量体単位の比(質量%)は、0〜40/42〜90/1〜5/1〜31/0.5〜3であることが好ましい。
【0069】
上記複合重合体粒子は、酸価が1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、7以上であることが更に好ましい。酸価が高すぎると塗膜の密着性や防汚性が劣るおそれがある。酸価が無いとエマルジョンの安定性が劣るおそれがある。
上記複合重合体粒子は、水酸基価が1〜40であることが好ましく、5〜30であることがさらに好ましい。水酸基価が高すぎると塗膜の透明性が劣るおそれがあり、無いと架橋できないおそれがある。
上記水酸基価及び上記酸価は、上記複合重合体粒子を合成するために使用した各モノマーの量から計算することができる。
【0070】
上記複合重合体粒子は、ガラス転移温度(Tg)が0〜70℃であることが好ましく、10〜60℃であることがより好ましく、20〜50℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が低すぎると、塗膜の防汚性を損なうおそれがあり、高すぎると塗膜の造膜性が悪くなるおそれがある。
【0071】
上記複合重合体粒子は、粒子径が50〜300nmであることが好ましく、50〜250nmであることがより好ましい。
【0072】
上記複合重合体粒子は、上記フルオロオレフィンを水性分散重合して、フルオロポリマー(A)粒子を含む水性分散体を得る工程、上記フルオロポリマー(A)粒子を含む水性分散体中で、アクリルモノマーをフルオロポリマー(A)粒子にシード重合する工程を含む製造方法により、好適に製造することができる。すなわち、上記複合重合体粒子は、上記フルオロオレフィンを水性分散重合して、フルオロポリマー(A)粒子を含む水性分散体を得る工程、上記フルオロポリマー(A)粒子を含む水性分散体中で、少なくとも上記アクリルモノマーを、フルオロポリマー(A)粒子にシード重合する工程を含む製造方法により得られたものであることが好ましい。
【0073】
上記水性分散重合及び上記シード重合は、所望により、非反応性アニオン界面活性剤、反応性アニオン界面活性剤、非反応性ノニオン界面活性剤、反応性ノニオン界面活性剤等の存在下に実施することもできる。
【0074】
本発明の水性分散体は、ポリイソシアネート化合物を含む。
【0075】
上記ポリイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物、及び、水分散性ポリイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。上記ポリイソシアネート化合物としては、水分散性ポリイソシアネート化合物であることが特に好ましい。
【0076】
上記ポリイソシアネート化合物として、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネート(以下、イソシアネート(i)ともいう。)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(I)ともいう。)を用いた場合、上記水性分散体から得られる塗膜とガラス又はポリエチレンテレフタレートとの密着性が、より優れたものになる。
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、例えば、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、上記イソシアネート(i)からなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、上記イソシアネート(i)からなるビウレットを挙げることができる。
【0077】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(1):
【0079】
(式中、R
1は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。R
2は、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(1)中のR
1は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記R
2がフェニレン基である場合、1,2−フェニレン基(o−フェニレン基)、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)、及び、1,4−フェニレン基(p−フェニレン基)のいずれであってもよい。中でも、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)が好ましい。また、上記一般式(1)中の全てのR
2が同じフェニレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記R
2がシクロヘキシレン基である場合、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、及び、1,4−シクロヘキシレン基のいずれであってもよい。中でも、1,3−シクロヘキシレン基が好ましい。また、上記一般式(1)中の全てのR
2が同じシクロヘキシレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0080】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(2):
【0082】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(3):
【0084】
(式中、R
2は、一般式(1)中のR
2と同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0085】
上記ビウレットは、下記一般式(4):
【0087】
(式中、R
2は、一般式(1)中のR
2と同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、上記イソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0088】
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、中でも、上記アダクト、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるものであることが好ましい。
【0089】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0090】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるキシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)、1,2−キシリレンジイソシアネート(o−キシリレンジイソシアネート)、1,4−キシリレンジイソシアネート(p−キシリレンジイソシアネート)が挙げられるが、中でも、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)が好ましい。
【0091】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)としては、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられるが、中でも、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0092】
キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、アダクトが得られる。
【0093】
上記アダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(5):
【0095】
(式中、R
3は、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)で表わされる化合物、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、トリメチロールプロパン(TMP)と、を付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
上記一般式(5)中のR
3で表されるフェニレン基又はシクロヘキシレン基については、上記一般式(1)におけるR
2について述べたとおりである。
【0096】
上記一般式(5)で表されるポリイソシアネート化合物の市販品としては、タケネートD110N(三井化学株式会社製、XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.8%)、タケネートD120N(三井化学株式会社製、H6XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.0%)等が挙げられる。
【0097】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、イソシアヌレート構造体である場合の具体例としては、タケネートD121N(三井化学株式会社製、H6XDIヌレート、NCO含有量14.0%)、タケネートD127N(三井化学株式会社製、H6XDIヌレート、H6XDIの3量体、NCO含有量13.5%)等が挙げられる。
【0098】
上記ポリイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート(以下、単にブロックイソシアネートともいう。)を用いることにより、上記水性分散体が充分なポットライフ(可使時間)を有するものとなる。
上記ブロックイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(II)ともいう。)をブロック化剤で反応させて得られるものが好ましい。
上記ポリイソシアネート化合物(II)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0099】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(6):
【0101】
(式中、R
4は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(6)中のR
4は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0102】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(2):
【0104】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(7):
【0107】
上記ビウレットは、下記一般式(8):
【0109】
で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、ヘキサメチレンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0110】
上記ブロック化剤としては、活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。上記活性水素を有する化合物としては、例えば、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0111】
このように、上記ブロックイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物をブロック化剤で反応させて得られるものであり、上記ブロック化剤は、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0112】
上記ブロックイソシアネートを得るためのポリイソシアネート化合物(II)が、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合することにより、上記アダクトが得られる。
【0113】
上記ポリイソシアネート化合物(II)と反応させる、活性水素を有する化合物としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類;アセトンオキシム、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;アセト酢酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物;3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾール等のピラゾール化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、活性メチレン化合物、オキシム類が好ましく、活性メチレン化合物がより好ましい。
【0114】
上記ブロックイソシアネートの市販品としては、デュラネートK6000(旭化成ケミカルズ株式会社製、HDIの活性メチレン化合物ブロックイソシアネート)、デュラネートTPA−B80E(旭化成ケミカルズ株式会社製)、デュラネートMF−B60X(旭化成ケミカルズ株式会社製)、デュラネート17B−60PX(旭化成ケミカルズ株式会社製)、コロネート2507(日本ポリウレタン工業株式会社製)、コロネート2513(日本ポリウレタン工業株式会社製)、コロネート2515(日本ポリウレタン工業株式会社製)、スミジュールBL−3175(住化バイエルウレタン株式会社製)、LuxateHC1170(オリン・ケミカルズ社製)、LuxateHC2170(オリン・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0115】
上記ポリイソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(III)ともいう。)を用いることもできる。ポリイソシアネート化合物(III)としては、ポリイソシアネート化合物(II)として上述したものが挙げられる。
【0116】
ポリイソシアネート化合物(III)の具体例としては、コロネートHX(日本ポリウレタン工業株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体、NCO含有量21.1%)、スミジュールN3300(住化バイエルウレタン株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)、タケネートD170N(三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)、スミジュールN3800(住化バイエルウレタン株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体プレポリマータタイプ)等が挙げられる。
【0117】
上記ポリイソシアネート化合物として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(IV)ともいう。)を用いることもできる。
【0118】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、例えば、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、イソホロンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0119】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(9):
【0121】
(式中、R
5は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。R
6は、下記一般式(10):
【0123】
で表される基である。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(9)中のR
5は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0124】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(2):
【0126】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、イソホロンジイソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(11):
【0128】
(式中、R
6は、一般式(9)中のR
6と同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、イソホロンジイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0129】
上記ビウレットは、下記一般式(12):
【0131】
(式中、R
6は、一般式(9)中のR
6と同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、イソホロンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0132】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、中でも、上記アダクト及び上記イソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、上記ポリイソシアネート化合物(IV)は、イソホロンジイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるアダクト、及び、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0133】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)が、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0134】
イソホロンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0135】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(13):
【0137】
(式中、R
7は、下記一般式(10):
【0139】
で表される基である。)で表される化合物、すなわち、イソホロンジイソシアネートとトリメチロールプロパン(TMP)とを付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0140】
上記一般式(10)で表されるポリイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネートのTMPアダクト体)の市販品としては、タケネートD140N(三井化学株式会社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0141】
イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体の市販品としては、デスモジュールZ4470(住化バイエルウレタン株式会社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0142】
上記ポリイソシアネート化合物として、水分散性ポリイソシアネート化合物を用いることもできる。上記水分散性ポリイソシアネート化合物とは、水性媒体中に加えて攪拌したときに水分散体を形成しうるポリイソシアネート化合物をいう。このような水分散性ポリイソシアネート化合物としては、例えば、(1)疎水性ポリイソシアネートと親水性基を有するポリイソシアネートとの混合物、(2)疎水性ポリイソシアネートとイソシアネート基を有さず親水性基を有する分散剤との混合物、(3)親水性基を有するポリイソシアネートのみ等が挙げられる。なお、本発明において、親水性基とはアニオン性基、カチオン性基又はノニオン性基をいう。上記水分散性ポリイソシアネート化合物としては、親水性基を有するポリイソシアネートであることが特に好ましい。
【0143】
上記疎水性ポリイソシアネートとは、親水性基を有さないものであり、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、2−イソシアナートエチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート等の脂肪族トリイソシアネート;1,3−ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,4−ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナートシクロヘキサン、3,5,5−トリメチル(3−イソシアナートメチル)シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,5−ジイソシアナートメチルノルボルナン、2,6−ジイソシアナートメチルノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート;2,5−ジイソシアナートメチル−2−イソシネートプロピルノルボルナン、2,6−ジイソシアナートメチル−2−イソシネートプロピルノルボルナン等の脂環族トリイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート等のアラルキレンジイソシアネート;m−またはp−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチル−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェート等の芳香族トリイソシアネート;前記のジイソシアネート又はトリイソシアネートのイソシアネート基同士を環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するポリイソシアネート;前記のジイソシアネート又はトリイソシアネートのイソシアネート基同士を環化三量化して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート;前記のジイソシアネート又はトリイソシアネートを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート;前記のジイソシアネート又はトリイソシアネートを二酸化炭素と反応させて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート;アロファネート構造を有するポリイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、緻密な架橋塗膜を形成し、硬化塗膜の耐アルコール性をより向上することができることから、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートが好ましい。
【0144】
上記親水性基を有するポリイソシアネートとしては、例えば、親水性基及びイソシアネート基を有するポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル重合体、アルキド樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水分散性が良好であることから、親水性基とイソシアネート基とを有するポリエーテル又はビニル重合体が好ましく、親水性基とイソシアネート基を有するポリエーテルがより好ましい。これらの親水性基を有するポリイソシアネートは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0145】
親水性基を有するポリイソシアネートの市販品としては、バイヒジュール XP 2700(住化バイエルウレタン株式会社製)等が挙げられる。
【0146】
上記水性分散体におけるポリイソシアネート化合物の含有量は、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO)と複合重合体粒子が含有する水酸基(OH)の当量比(NCO/OH)が0.1〜5.0当量であることが好ましく、0.5〜5.0当量であることがより好ましく、0.5〜3.0当量であることが更に好ましい。1.0〜2.0当量であることが特に好ましい。
【0147】
上記ポリイソシアネート化合物が水分散性ポリイソシアネート化合物の場合の配合量としては、本発明の水性分散体の硬化性及び硬化塗膜の塗膜外観や耐久性がより向上することから、また、防汚性を向上させる観点から、水分散性ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO)と、複合重合体粒子が含有する水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が、0.1〜5.0当量の範囲が好ましく、0.3〜3.0当量の範囲がより好ましく、0.3〜2.0当量の範囲が更に好ましく、0.5〜1.5当量の範囲が特に好ましい。
【0148】
本発明の水性分散体は、複合重合体粒子と、上記水分散性ポリイソシアネート化合物を含有するもので、これらを水に溶解又は分散させたものが挙げられる。これらを混合する方法としては、例えば、複合重合体粒子を水分散して得られる水性樹脂組成物に、水分散性ポリイソシアネート化合物の水分散体や水分散性ポリイソシアネート化合物を溶媒で希釈したもの等(水分散性ポリイソシアネート組成物)を添加し、攪拌する方法等が挙げられる。攪拌方法としては、例えば、各種の攪拌機を使用する方法があり、少量ならば攪拌棒等を用いた簡便な攪拌でも、容易に均一に混合することができる。攪拌機を使用することは、短時間で多量の水性塗料を調製できることから好ましい。
【0149】
上記複合重合体粒子を水分散して得られる水性樹脂組成物と上記水分散性ポリイソシアネート組成物との混合比率は、密着性、耐温水密着性及び耐溶剤性に優れる硬化塗膜を得られることから、上記水分散性ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO)と上記複合重合体粒子中の水酸基(OH)の当量比(NCO/OH)が、0.1〜5.0当量となる混合比率であることが好ましく、0.3〜3.0当量となる混合比率であることがより好ましい。
上記水分散性ポリイソシアネート組成物の使用量は、少ないほど塗膜の防汚性を向上させる。
上記複合重合体粒子を水分散して得られる水性樹脂組成物と上記水分散性ポリイソシアネート組成物との混合比率は、防汚性を向上させる観点から少ないほど良く、上記水分散性ポリイソシアネート化合物の配合量は、上記複合重合体粒子の水分散体の固形分に対して、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
上記水分散性ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO)と上記複合重合体粒子中の水酸基(OH)の当量比(NCO/OH)が、0.1〜3.0当量となる混合比率であることが好ましく、0.3〜2.0当量となる混合比率であることがより好ましく、0.5〜1.5当量となる混合比率であることが更に好ましい。
【0150】
上記水性分散体は、更に、水を含む。水に加えて、アルコール、グリコールエーテル、エステル等の有機溶媒を含有してもよい。
【0151】
上記水性分散体は、10〜60質量%の複合重合体粒子を含むことができる。
【0152】
上記水性分散体は、更に、造膜助剤を含むことが好ましい。上記造膜助剤としては、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPGDME)、ジエチルジグリコール(DEDG)、アジピン酸ジエチル(ADE)等の活性水素を持たない造膜助剤が挙げられる。活性水素とは、水酸基やアミノ基などに含まれる水素原子のことでポリイソシアネート化合物と反応し活性を失うため、これを含む官能基を有する造膜助剤は、好ましくない。
【0153】
上記水性分散体に、必要に応じ、顔料、凍結防止剤、充填剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、pH調整剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、つや消し剤、潤滑剤、防藻剤等を添加してよい。しかしながら、上記水性分散体は、透明性に優れる塗膜が得られる点でも有利なことから、顔料、充填剤等の透明性を損なう成分を含まないことが好ましい。
【0154】
上記水性分散体は、水性塗料として好適に利用できる。上記水性塗料は、水性クリア塗料であることが好ましい。上記水性分散体を塗装する方法としては従来公知の方法と条件が採用できる。例えば、基材にスプレーコーティングやロールコーティング、フローコーティング、ローラー、刷毛、グラビア・スクリーン印刷などによる塗装などの塗装方法により塗布して塗膜を形成した後、5〜200℃で乾燥する方法が挙げられる。このような方法によって、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を形成することができる。
【0155】
上述の水性分散体から得られることを特徴とする塗膜は、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性に優れる。
【0156】
本発明は、シロキサン結合及びウレタン結合を有することを特徴とする含フッ素塗膜でもある。上記含フッ素塗膜は、含フッ素クリア塗膜であることが好ましい。上記含フッ素塗膜は、上記特徴を有することから、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性に優れる。
含フッ素塗膜がシロキサン結合及びウレタン結合を有することは、全反射測定法(ATR)により確認することができる。
上記含フッ素塗膜は、例えば、上述の水性分散体から製造することができる。
【0157】
本発明は、ポリイソシアネート化合物及び造膜助剤を溶媒に溶解又は分散させることにより溶液を調製する工程、及び、フルオロポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)を含む水性分散体に、上記溶液を添加する工程を含むことを特徴とする製造方法でもある。上記ポリイソシアネート化合物及び上記造膜助剤を含む溶液をあらかじめ調製した後、フルオロポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)を含む水性分散体に添加することで、耐溶剤性、防汚性、及び、基材との密着性により一層優れる塗膜を得ることができる水性分散体を調製できる。
【0158】
上記製造方法において、上記水性分散体は、複合重合体粒子及び水を含み、上記複合重合体粒子は、フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)とからなり、フルオロポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)のいずれか一方又は両方が、水酸基及び加水分解性シリル基を含有することが好ましい。上記ポリイソシアネート化合物、上記造膜助剤及び上記複合重合体粒子は、それぞれ、上述した本発明の水性分散体が含む各成分と同様のものが好ましい。上記製造方法は、上述した本発明の水性分散体を製造する方法として好適である。
【0159】
上記ポリイソシアネート化合物及び上記造膜助剤を溶解又は分散させる溶媒としては、水が好ましい。
【0160】
本発明は、上述の水性分散体を基材に塗装することにより得られることを特徴とする塗装物品でもある。
【0161】
上記基材としては、特に限定されないが、透明基材が好ましい。透明基材の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等のプラスチック基材や、ガラス、その他、透明性の要求される物品等が挙げられる。なかでも、特にガラス又はポリエチレンテレフタレートからなる基材に、上述の水性分散体を塗布して塗膜を形成させた場合、得られる塗膜が耐溶剤性及び防汚性に優れる上、基材との密着性にも優れる。
【0162】
上記塗装物品は、幅広い用途で使用可能である。例えば、電気製品(電子レンジ、トースター、冷蔵庫、洗濯機、ヘアードライヤー、テレビ、ビデオ、アンプ、ラジオ、電気ポット、炊飯機、ラジオカセット、カセットデッキ、コンパクトディスクプレーヤー、ビデオカメラ、パーソナルコンピューターなど)の内外装、エアーコンディショナーの室内機、室外機、吹き出口およびダクト、空気清浄機、暖房機などのエアーコンディショナーの内外装、蛍光燈、シャンデリア、反射板などの照明器具、家具、機械部品、装飾品、くし、めがねフレーム、天然繊維、合成繊維(糸状のもの、およびこれらから得られる織物)、事務機器(電話機、ファクシミリ、複写機(ロールを含む)、写真機、オーバーヘッドプロジェクター、実物投影機、時計、スライド映写機、机、本棚、ロッカー、書類棚、いす、ブックエンド、電子白板など)の内外装、自動車(ホイール、ドアミラー、モール、ドアのノブ、ナンバープレート、ハンドル、インスツルメンタルパネルなど)、あるいは厨房器具類(レンジフード、流し台、調理台、包丁、まな板、水道の蛇口、ガスレンジ、換気扇など)の塗装用として、間仕切り、バスユニット、シャッター、ブラインド、カーテンレール、アコーディオンカーテン、壁、天井、床などの屋内塗装用として、外装用としては外壁、手摺り、門扉、シャッターなどの一般住宅外装、ビル外装など、窯業系サイジング材、発泡コンクリートパネル、コンクリートパネル、アルミカーテンウォール、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、塩ビシート、PETフィルム、ポリカーボネート、アクリルフィルムなどの建築用外装材、サイジング材、窓ガラス、テント、太陽電池バックシート、太陽電池フロントシートその他に広い用途を有する。
【実施例】
【0163】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0164】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0165】
(1)平均粒子径
測定装置:HONEYWELL社製のマイクロトラックUPA
測定方法:動的光散乱法
測定する乳濁液を純水で計測可能な濃度に希釈して試料とし、室温にて測定を行った。得られたデータの個数平均径を粒子径とした。
【0166】
(2)粒子数
計算方法:(1)で求めた平均粒子径と固形分含有量から、重合体比重を1.8として計算した。
【0167】
(3)NMR分析:
以下の測定装置及び測定条件により、測定した。
NMR測定装置:VARIAN社製
1H−NMR測定条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:376MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
【0168】
(4)分子量分析:
昭和電工社製Shodex GPC−104を使用し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量を求めた。
測定条件
キャリア:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
試料:測定する樹脂の3%THF溶液
【0169】
(5)メルトフローレート(MFR)値
安田精機製作所社製Dyniscoメルトインデックステスターを用い、約6gの樹脂を250℃±0.5℃に保たれた0.376インチIDシリンダーに投入し、5分間放置して温度が平衡状態に達した後、10Kgのピストン荷重のもとで直径0.0825インチ、長さ0.315インチのオリフィスを通して押し出した同時期に採取する3回の平均値とした。単位はg/10分。
【0170】
(6)ガラス転移温度(Tg)値
メトラー・トレド社製DSC(示差走査熱量測定)装置DSC822eを用い、測定した。
測定条件(1st Run、2nd Run)
測定温度範囲:−50℃〜80℃
昇温速度:20℃/min
雰囲気:Air
【0171】
(7)耐溶剤性試験
PET上に後述するクリア塗料をバーコーターで塗布し、20℃で7日間乾燥して試験板を作成した。この試験板の塗膜表面をメチルエチルケトン(MEK)を含浸させた不織布で拭き取った。拭き取り操作は100回往復が終了するまで行った。この試験の終了後乾燥させた後に、塗膜の溶解または膨潤、光沢低下が認められない場合は○、塗膜の溶解または膨潤、光沢低下が認められた場合は×とした。
【0172】
(8)マジック汚染性試験
PET上に後述するクリア塗料をバーコーターで塗布し、20℃で7日間乾燥して試験板を作成した。この試験板の塗膜に対して油性の赤、黒、青のマジックで線を引き、室温にて24時間放置後、エタノールを染み込ませたガーゼで拭き取り、マジック汚染性を評価した。完全に除去できたものを○、一部除去されるものの完全には除去できないものを△、殆ど除去できないものを×とした。
【0173】
(9)密着性試験
PET上に後述するクリア塗料をバーコーターで塗布し、20℃で7日間乾燥して試験板を作成した。この試験板の塗膜に対してJIS D0202−1988に準処して碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(「CT24」、ニチバン社製)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離した。判定は、100マスの内、剥離しないマス目の数で表した。
【0174】
(10)透明性試験
ガラス板上に後述するクリア塗料をバーコーターで塗布し、20℃で7日間乾燥して試験板を作成した。この試験板の塗膜について目視により透明性を判定した。透明なものを○、不透明なものを×とした。
【0175】
(11)塗膜中の官能基の測定方法
得られた試験板をサーモフィッシャーサイエンティフィック社製 Nicolet6700を用いてATR法により測定し、塗膜の赤外吸収スペクトルを得た。
得られたスペクトルを解析することで、各結合の存在を同定した。ピーク位置は、シロキサン結合は、1100〜1000cm
−1付近、ウレタン結合は、1700〜1740cm
−1付近、フッ素炭素結合は、1200〜1100cm
−1付近に注目し、それらのピーク形状も考慮し判別した。
【0176】
合成例1
温度計、滴下ロート、還流管および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに、固形分濃度45.6質量%に調整した共重合組成がVdF/TFE/CTFE=72.1/14.9/13.0(モル%)のフルオロポリマー(A−1)の水性分散液696.5gと、界面活性剤として化合物アニオン1(ポリオキシアルキレン 多環フェニルエーテル・サルフェート・アンモニウム塩)の28.0質量%水溶液22.3g、イオン交換水130gを添加し、30分間攪拌後、加熱し内温を75℃まで昇温した。
【0177】
ここに、アクリルモノマーとして、メチルメタクリレート(MMA)246.5g、ブチルアクリレート(n−BA)42.3g、アクリル酸(AA)7.5g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)15.6g、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(SiMA)3.1gの混合液と、過硫酸アンモニウム(APS)の1質量%水溶液29.5gをそれぞれ滴下ロートより、先ほどのフルオロポリマー(A−1)の水性分散液に攪拌しながら、2時間かけて滴下し重合を進めた。その後、反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、ポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテル(ノニオン1)の50質量%溶液を12.5g加え、アンモニア水溶液を用いてpHを7〜8に調製し、複合重合体粒子の水性分散液を得た(固形分濃度51.2質量%)。得られた複合重合体粒子の平均粒子径は190nmであった。
【0178】
合成例2
表1に従い複合重合体粒子の水性分散液を合成した。フルオロポリマー(A−1)の水性分散液を975g、界面活性剤としてアニオン1の28.0質量%水溶液44.6g、メチルメタクリレート(MMA)183g、ブチルアクリレート(n−BA)1.9g、アクリル酸(AA)1.9g、ノニオン1の50質量%溶液を25.0gを用いた以外は、合成例1と同様にして複合重合体粒子の水性分散液を得た(固形分濃度51.0質量%)。得られた複合重合体粒子の平均粒子径は170nmであった。
【0179】
合成例3
表1に従い複合重合体粒子の水性分散液を合成した。メチルメタクリレート(MMA)250.8g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)58.0g、アクリル酸(AA)3.1gを用いた以外は、合成例1と同様にして複合重合体粒子の水性分散液を得た(固形分濃度51.0質量%)。得られた複合重合体粒子の平均粒子径は170nmであった。
【0180】
実施例1
合成例1で得られた複合重合体粒子の水性分散体に水を加え固形分濃度が50質量%となるよう調整した後に、水性分散体の固形分100質量部に対して造膜助剤としてアジピン酸ジエチルを10質量部を攪拌しながら加え30分間攪拌機で混合し、粘度調整剤としてアデカノールUH−420(ADEKA社製)の10%水溶液を1質量部と消泡剤としてBYK028(ビックケミー社製)0.1質量部を順に攪拌しながら加え攪拌機で30分間混合した。次にこの混合物の20質量部に対して、親水性基含有ポリイソシアネートとしてバイヒジュール XP 2700(住化バイエルウレタン株式会社製)を1.18質量部加え攪拌機で5分間混合し、クリア塗料を得た。このクリア塗料を用いて、耐溶剤性試験、マジック汚染性試験、密着性試験及び透明性試験を行った。結果を表2に示す。
【0181】
比較例1
合成例1で得られた複合重合体粒子の水性分散体の代わりに、合成例2で得られた複合重合体粒子の水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様にして、クリア塗料を得た。このクリア塗料を用いて、実施例1と同様にして、耐溶剤性試験、マジック汚染性試験、密着性試験及び透明性試験を行った。結果を表2に示す。
【0182】
比較例2
合成例1で得られた複合重合体粒子の水性分散体の代わりに、合成例3で得られた複合重合体粒子の水性分散体を用いた以外は、実施例1と同様にして、クリア塗料を得た。このクリア塗料を用いて、実施例1と同様にして、耐溶剤性試験、マジック汚染性試験、密着性試験及び透明性試験を行った。結果を表2に示す。
【0183】
【表1】
【0184】
【表2】
【0185】
合成例4
表3に従い複合重合体粒子の水性分散液を合成した。界面活性剤としてアニオン1の28.0質量%水溶液22.3g、メチルメタクリレート(MMA)167g、ブチルアクリレート(n−BA)121g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)15.6g、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(SiMA)3.1gアクリル酸(AA)7.5g、ノニオン1の50質量%溶液を12.5gを用いた以外は、合成例1と同様にして複合重合体粒子の水性分散液を得た(固形分濃度51.0質量%)。得られた複合重合体粒子の平均粒子径は190nmであった。
【0186】
合成例5
表3に従い複合重合体粒子の水性分散液を合成した。界面活性剤としてアニオン1の28.0質量%水溶液22.3g、メチルメタクリレート(MMA)245g、ブチルアクリレート(n−BA)44g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)15.6g、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(SiMA)3.1g、アクリル酸(AA)7.5g、ノニオン1の50質量%溶液を12.5gを用いた以外は、合成例1と同様にして複合重合体粒子の水性分散液を得た(固形分濃度51.0質量%)。得られた複合重合体粒子の平均粒子径は190nmであった。
【0187】
合成例6
表3に従い複合重合体粒子の水性分散液を合成した。フルオロポリマー(A−1)の水性分散液を975g、界面活性剤としてアニオン1の28.0質量%水溶液22.3g、メチルメタクリレート(MMA)154g、ブチルアクリレート(n−BA)15.5g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)9.4g、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(SiMA)1.9g、アクリル酸(AA)7.5g、ノニオン1の50質量%溶液を12.5gを用いた以外は、合成例1と同様にして複合重合体粒子の水性分散液を得た(固形分濃度51.0質量%)。得られた複合重合体粒子の平均粒子径は190nmであった。
【0188】
実施例2
造膜助剤としてジエチルジグルコール(DEDG)を10質量部用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表4に記す。
【0189】
実施例3〜5
表4記載の複合重合体粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0190】
表1、3には、複合重合体粒子の酸価(mgKOH/g)及び水酸基価(mgKOH/g)の計算値を示した。
【0191】
酸価={使用したアクリル酸(AA)のモル数}×{アクリルポリマー中のアクリル酸(AA)の割合(質量%)}×{KOHの分子量(56.1)}×1000/100{複合重合体粒子中のアクリルポリマーの割合(質量%)}
【0192】
水酸基価={使用した2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)や2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)のモル数}×{アクリルポリマー中の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)や2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)の割合(質量%)}×{KOHの分子量(56.1)}×1000/100×{複合重合体粒子中のアクリルポリマーの割合(質量%)}
【0193】
【表3】
【0194】
【表4】
【0195】
含フッ素塗膜の製造工程
アルミ板上に前述実施例1〜5のクリア塗料をバーコーター(No.24)で塗布し、20℃で7日間乾燥して試験板を作成した。
得られた塗膜を「(11)塗膜中の官能基の測定方法」に従って測定したところ、シロキサン結合、ウレタン結合、フッ素炭素結合を有することが確認された。