特許第6103115号(P6103115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6103115粉体組成物、食肉単味品及び該食肉単味品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6103115
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】粉体組成物、食肉単味品及び該食肉単味品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/70 20160101AFI20170316BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20170316BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20170316BHJP
【FI】
   A23L13/70
   A23L13/00 A
   A23L7/157
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-119489(P2016-119489)
(22)【出願日】2016年6月16日
(62)【分割の表示】特願2015-248598(P2015-248598)の分割
【原出願日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年6月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 律彰
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−149957(JP,A)
【文献】 特開平06−141805(JP,A)
【文献】 特開2002−051718(JP,A)
【文献】 特開2011−030520(JP,A)
【文献】 特開2015−012858(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2001−0016368(KR,A)
【文献】 特開平09−163940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00−17/50
A23L 7/157
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の、キサンタンガム及びグアーガムを食肉単味品に添加することを含む、ステーキ又はソテーの製造方法。
【請求項2】
前記キサンタンガム及びグアーガムの総添加量が、食肉単味品100gあたり0.002〜0.5gである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キサンタンガム及びグアーガムが、食肉単味品の表面に添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、プロテアーゼを添加することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
肉油脂保持用である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
キサンタンガム及びグアーガムを含有する、食肉単味品のステーキ用又は食肉単味品のソテー用粉体組成物。
【請求項7】
キサンタンガム及びグアーガム総濃度が、10重量ppm〜100重量%である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、プロテアーゼを含有する、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記プロテアーゼの含有量が、キサンタンガム及びグアーガムの総重量の1gあたり、100〜10000000Uである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
肉油脂保持用である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品にやわらかさと濃厚なジューシー感を付与することができる粉体組成物に関する。また、やわらかさと濃厚なジューシー感を有する食肉単味品、及び、該食肉単味品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉加工分野及び食肉調理分野においては、様々なニーズが存在する。例えば、ハンバーグにおける肉粒感とジューシー感、ソーセージにおけるプリプリ感、から揚げやステーキにおけるやわらかさとジューシー感等が挙げられる。とりわけ、ステーキやソテー、から揚げ等の食肉単味品調理品においては、短時間での処理による改質が難しく、簡便にやわらかさとジューシー感を付与する技術が求められている。特に、液体への漬け込みや、筋切り、インジェクション等の煩雑な操作を伴わない、簡便性の高い技術が必要とされている。
【0003】
食肉単味品の改質技術としては、プロテアーゼを用いて食品にやわらかさを付与する方法が知られている。例えば、プロテアーゼを含有するから揚げ粉(特許文献1)や、プロテアーゼとショ糖脂肪酸エステルを併用する方法(特許文献2)等が開示されている。特許文献1は、食肉に対して粉末をまぶすだけという簡便な方法であるが、短時間で食肉単味品を満足するレベルにまで軟化させるまでには至っていない。特許文献2は、粉末をまぶすことで効果の得られる軟化手法であるが、十分な効果を得るためには60分間の作用時間を要する上、粉末散布後フォークで刺すなどの煩雑な作業を伴う等、簡便性に課題が残されていた。このように、プロテアーゼにより食肉単味品を短時間で軟化する技術は、極めて難易度が高い。
【0004】
食品の改質技術として、澱粉によってジューシー感を付与する方法が知られている。澱粉とプロテアーゼを併用する食肉改質技術として、プロテアーゼ、澱粉及びカードランを用いる方法(特許文献3)が知られている。しかし、本方法では、澱粉の保水効果によりジューシー感が付与されるため、水っぽい肉質となり、脂っぽい濃厚なジューシー感が不足していた。
【0005】
食品の改質技術として、食品の表面に増粘多糖類を振り掛ける方法が知られている。例えば、タマリンドガム、ローカストビーンガム、グアーガム等から選ばれる糊料を含むドリップ抑制剤を、冷凍前の冷凍食品の表面に被膜させる方法(特許文献4)や、キサンタンガム及びローカストビーンガムを含有する調味料組成物を用いることにより炒め物のドリップを抑制する方法(特許文献5)等が開示されている。
【0006】
このように、食肉単味品の改質方法に関しては様々な報告がされているが、食肉単味品調理品に、やわらかさと、肉として好ましい濃厚なジューシー感を付与する技術は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−252911号公報
【特許文献2】特開平7−313108号公報
【特許文献3】特開2010−166904号公報
【特許文献4】特開2008−29309号公報
【特許文献5】特開2013−201931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、食肉原料の表面に添加するだけで、短時間でやわらかさと共に、濃厚なジューシー感を付与することができる粉体組成物を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする課題は、やわらかさと共に、濃厚なジューシー感を有する食肉単味品調理品、及び、該食肉単味品調理品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、キサンタンガム、グアーガム、グルコマンナンから選ばれる1又は2以上を、粉体で、食肉単味品の表面に添加するだけで、やわらかさと濃厚なジューシー感を有する食肉単味品調理品を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
[1]粉体の、キサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンから選ばれる1又は2以上を食肉単味品に添加することを含む、食肉単味品調理品の製造方法。
[2]前記キサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンから選ばれる1又は2以上の総添加量が、食肉単味品100gあたり0.002〜0.5gである[1]に記載の方法。
[3]前記キサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンから選ばれる1又は2以上が、食肉単味品の表面に添加される、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記食肉単味品が、ブロック肉、スライス肉、小間切れ肉から選択される1又は2以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]さらに、プロテアーゼを添加することを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]キサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンから選ばれる1又は2以上を含有する、食肉単味品調理用粉体組成物。
[7]キサンタンガム、グアーガム、及びグルマンナンから選ばれる1又は2以上の総濃度が、10重量ppm〜100重量%である、[6]に記載の組成物。
[8]さらに、プロテアーゼを含有する、[6]又は[7]に記載の組成物。
[9]前記プロテアーゼの含有量が、キサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンから選ばれる1又は2以上の総重量の1gあたり、100〜10000000Uである、[8]に記載の組成物。
[10]肉油脂保持用である、[6]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]ステーキ用、ソテー用、及びから揚げ用から選ばれる1又は2以上である、[6]〜[10]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、やわらかさと共に、濃厚なジューシー感を付与することができる粉体組成物を提供し得る。
また、本発明によれば、やわらかさと共に、濃厚なジューシー感を有する食肉単味品調理品、及び、該食肉単味品調理品の製造方法を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、濃度は特記しない限り重量を基準とする濃度である。また、本発明に関する下記の説明は、いずれも単独で採用してもよく、適宜組み合わせて採用してもよい。
【0013】
本明細書において、「やわらかさ」とは、肉を噛む際に必要な力が少ないことを意味する。「濃厚なジューシー感」とは、肉を噛んだ際に肉から染み出てくる脂が多く、濃厚に感じることを意味する。肉を噛んだ際に肉から染み出てくる水が多く、水っぽく感じる状態は、本発明における濃厚なジューシー感とは異なる。
また、「やわらかさと共に、濃厚なジューシー感を付与する」等における「付与」とは、やわらかさや濃厚なジューシー感等を本来有しない食肉単味品に対し、やわらかさや濃厚なジューシー感を新たに付与するのみならず、当該やわらかさや濃厚なジューシー感等を有する食肉単味品に対し、やわらかさや濃厚なジューシー感を更に付与して、やわらかさや濃厚なジューシー感を増強することも含む概念である。
【0014】
<1>本発明の食肉単味品調理用粉体組成物
本発明の食肉単味品調理用粉体組成物(単に「本発明の組成物」とも称する)は、キサンタンガム、グアーガム、グルコマンナンから選ばれる1又は2以上を含有する。本発明の効果がより得られやすく原料価格が比較的安価であるという観点から、キサンタンガム及び/又はグアーガムがより好ましい。「キサンタンガム、グアーガム及びグルコマンナン」を総称して、「有効成分」ともいう。本発明においては、有効成分を添加することにより、肉由来の油脂を食肉単味品内部に保持することができ、これにより、やわらかさと濃厚なジューシー感を付与する効果が得られる。本発明において、同効果を「肉油脂保持効果」ともいう。
【0015】
本発明においては、キサンタンガム及び/又はグアーガムを用いる。本発明に用いるキサンタンガムは、Xanthomonas campestrisを用いた発酵により作られる冷水可溶の多糖類であり、分子量は特に制限されない。フリー体のキサンタンガム、もしくはカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩等のその塩、またはそれらの混合物でもよい。
【0016】
グアーガムは、グアー豆から得られる冷水可溶の多糖類であり、本発明に用いるグアーガムは特に制限されず、分子量も特に制限されない。
【0017】
グルコマンナンは、針葉樹の細胞壁や蒟蒻芋に多く含まれる水溶性の多糖類で、グルコースとマンノースがおよそ2対3の割合でβ−1,4結合した直鎖状ものであり、本発明に用いるグルコマンナンは特に制限されず、分子量も特に制限されない。
【0018】
本発明においては、食肉単味品の表面に粉体の有効成分を添加することから、有効成分には、食肉が有する少量の水分に短時間で溶解し、作用する性質が求められる。有効成分は、水との親和性が良く、冷水可溶であることが好ましい。従って、少量の水分に短時間で均一に溶解する性質を有するキサンタンガム、グアーガム又はグルコマンナンが好ましく、より冷水可溶性が高いという観点から、キサンタンガム又はグアーガムがより好ましい。
【0019】
キサンタンガムの一例としては、「キサンタンガムST」(丸善薬品産業社)が挙げられる。グアーガムの一例としては、「PROCOL U」(ソマール社)が挙げられる。グルコマンナンの一例としては、「レオレックスRS」(清水化学社)が挙げられる。
【0020】
本発明において、有効成分は粉体であることが好ましい。有効成分が粉体であることで、本発明の組成物による食肉単味品の処理時間に関わらず、食肉単味調理品に、やわらかさと共に、濃厚なジューシー感を付与することができる。本発明の有効成分を、ピックル液等の液体に溶解させて、液状で食品原料に作用させた場合は、本発明の効果が得難く好ましくない。
【0021】
粉体とは、粒子の集合体を意味し、散、微粒及び細粒等に加え、顆粒等も包含する概念であり、またそれらが混合した粉粒体等も包含する。具体的には、粒径が3mm以下の粒子の集合体をいう。
【0022】
本発明の組成物は、上記有効成分のみからなるものであってもよく、プロテアーゼを含むものであってもよい。本発明の組成物がプロテアーゼを含むことで、本発明の組成物中の有効成分との相乗効果を発揮し、食肉単味品調理品にやわらかさと濃厚なジューシー感を顕著に付与することができる。
【0023】
本発明に用いるプロテアーゼは、タンパク質中のペプチド結合の加水分解を触媒する酵素であり、この活性を有し食肉タンパク質を分解し得るプロテアーゼであれば特に制限されない。また、プロテアーゼの起源も特に制限されず、例えば、植物由来、哺乳動物由来、魚類由来、微生物由来等、が挙げられる。遺伝子工学技術で作成した組み換え酵素であってもよい。本発明に用いるプロテアーゼの一例としては、「食品用精製パパイン」(長瀬産業社)が挙げられる。
【0024】
本発明の組成物は、本発明の組成物の効果を妨げない範囲において、その他の成分を含むものであってもよい。本発明の組成物は、調味料として構成されてもよい。
【0025】
「その他の成分」は、経口摂取可能なものであれば特に制限されない。「その他の成分」としては、例えば、調味料、食品、または飲料に配合して利用されるものを利用できる。
【0026】
「その他の成分」としては、具体的には、例えば、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、加工澱粉等の澱粉類;食塩、デキストリン、乳糖等の賦形剤;グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、酵母エキス、畜肉エキス、魚介エキス、野菜エキス、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物等の調味料;植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質;、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、各種リン酸塩、レシチン(大豆および卵黄)、サポニン等の乳化剤;クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤;グルタチオン、システイン等の還元剤;かんすい;色素;粉末酢、粉末高酸度酢、クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸、柑橘類の果汁などの酸味料;ペパーミントフレーバー、オレンジフレーバー、ゴマフレーバー、ジンジャーフレーバー、ガーリックフレーバー等の香料等が挙げられる。これらの成分は、単独で、あるいは任意の組み合わせで利用されてよい。
【0027】
本発明の組成物の形態は、粉体であり、これにより、食肉単味品の表面に均一に添加でき、肉油脂保持効果が得られる。
【0028】
本発明の組成物における各成分(すなわち、有効成分および任意でその他の成分)の濃度や含有比率は、肉油脂保持効果が得られる限り特に制限されない。
【0029】
本発明の組成物における有効成分の濃度や含有比率は、有効成分の種類、有効成分の喫食濃度、本発明の組成物の使用量等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0030】
本発明の組成物におけるキサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンの比率は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、キサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンの総濃度を100重量%とした場合に、キサンタンガムは、0重量%以上、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、または30重量%以上であってよく、100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、または40重量%以下であってよく、それらの組み合わせであってもよい。
【0031】
グアーガムは、0重量%以上、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、または30重量%以上であってよく、100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、または40重量%以下であってよく、それらの組み合わせであってもよい。
【0032】
グルコマンナンは、0重量%以上、1重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、または30重量%以上であってよく、100重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、60重量%以下、または40重量%以下であってよく、それらの組み合わせであってもよい。
【0033】
本発明の組成物における有効成分の総濃度は、特に制限されないが、例えば、10重量ppm以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、または3重量%以上であってもよく、100重量%以下、80重量%以下、50重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、または5重量%以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。なお、「有効成分の総濃度」とは、キサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンの濃度の合計を意味する。
【0034】
なお、有効成分の含有量(濃度)は、有効成分を含有する素材を用いる場合にあっては、当該素材中の有効成分そのものの量に基づいて算出されるものとする。
【0035】
本発明の組成物における各有効成分の濃度は、例えば、上記例示した有効成分の総濃度や含有比率を満たすように設定することができる。
【0036】
本発明の組成物に含まれる各成分(すなわち、有効成分および任意でその他の成分)は、互いに混合されて本発明の組成物に含まれていてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで、本発明の組成物に含まれていてもよい。本発明の組成物を添加して製造された食品中で有効成分が共存していれば肉油脂保持効果が得られる。
【0037】
本発明の組成物にプロテアーゼを含有する場合のプロテアーゼの含有量は、特に制限されないが、例えば、有効成分の総重量の1gあたり、100U以上、1000U以上、または10000U以上であってもよく、10000000U以下、1000000U以下、または100000U以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。ここで、Uとはユニットを意味し、1ユニット(1U)とは、カゼインを基質として、1分間にチロシン1μgに相当するフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量である。
【0038】
<2>本発明の製造方法
本発明においては、有効成分を利用して食肉単味品調理品に肉油脂保持効果、すなわち、やわらかさと濃厚なジューシー感を付与することができる。本発明の方法は、有効成分を食肉単味品の表面に添加することを含む、食肉単味品調理品に肉油脂保持効果を付与する方法である。また、本発明の方法の一態様は、有効成分を食肉単味品の表面に添加することを含む、食肉単味品調理品の製造方法である。
【0039】
本発明の方法で用いられる有効成分としては、キサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンが挙げられる。本発明の効果がより得られやすく、原料価格が比較的安価であるという観点から、キサンタンガム及び/又はグアーガムがより好ましい。
【0040】
本発明においては、例えば、本発明の組成物を利用して食肉単味品調理品に肉油脂保持効果を付与することができる。すなわち、言い換えると、本発明の方法は、本発明の組成物を食肉単味品の表面に添加することを含む、食肉単味品調理品に肉油脂保持効果を付与する方法であってよい。また、本発明の方法の一態様は、本発明の組成物を食肉単味品の表面に添加することを含む、食肉単味品調理品の製造方法であってよい。
【0041】
本発明の方法により得られる食肉単味品調理品を「本発明の食品」ともいう。本発明の食品は、具体的には、肉油脂保持効果が付与された食品である。また、本発明の食品は、言い換えると、キサンタンガム、グアーガム、及びグルコマンナンから選ばれる1又は2以上が添加された食品である。なお、「添加」を「配合」ともいう。
【0042】
本発明の食肉単味品とは、挽肉及びペースト状の肉を除く全ての塊肉を指す。具体的には、例えばブロック肉、スライス肉(厚切り肉、薄切り肉)、小間切れ肉、魚の切り身等が挙げられ、ブロック肉、スライス肉(厚切り肉、薄切り肉)、小間切れ肉が好ましい。塊肉の大きさや形状は特に制限されない。
【0043】
食肉単味品の肉の種類は、特に限定されず、例えば、豚、牛、鶏、羊、山羊、馬、らくだ、熊、ウサギ、鴨、鳩、アヒル、鶉、アルパカ等の畜肉・家禽類;サケ、サーモン、タラ、タイ、マグロ、カジキマグロ、カツオ、イワシ等の魚類等が挙げられる。特に本発明の効果がより得られやすいという観点から、豚、牛、鶏、羊、山羊、馬、ウサギ、鴨等の畜肉・家禽類が好ましく、豚、牛、鶏がより好ましい。
【0044】
本発明の効果がより得られやすいという観点から、本発明で用いる食肉単味品は、加熱処理されていない生肉が好ましい。
【0045】
本発明で用いる食肉単味品は、水分量が30重量%〜80重量%、好ましくは40重量%〜80重量%、より好ましくは50重量%〜80重量%である。食肉単味品の水分量が上記範囲にあることで、本発明の組成物が、生肉由来の水分に短時間に溶解し、好適な濃度で作用できるため、本発明の効果が得られやすい。
【0046】
本発明の食肉単味品調理品とは、上述の食肉単味品を調理したものを意味する。ここで、「調理」とは、焼成、蒸し、炒め、茹で、油ちょう、煮込み、オーブン加熱、電子レンジ加熱等の加温調理を意味する。本発明の効果が得られやすいという観点から、焼成、炒め、又は油ちょうが好ましい。
【0047】
本発明の食肉単味品調理品としては、具体的には、例えば、ステーキ、グリル、ソテー、ロースト、しょうが焼き、野菜炒め、角煮、から揚げ、焼肉、焼き鳥、豚カツ、シチュー、カレー、煮魚、焼き魚等が挙げられ、特に、ステーキ、ソテー、から揚げが好ましい。また、本発明の効果が得られやすいという観点から、豚肉、牛肉、又は鶏肉を材料として用いる焼成品、炒め品、油ちょう品が好ましい。
【0048】
本発明の食肉単味品調理品は、本発明の組成物または有効成分を添加すること以外は、通常の食品と同様の原料を用い、同様の方法によって製造することができる。
【0049】
本発明の組成物または有効成分は、食肉単味品に対して添加され、食肉単味品調理品の製造工程のいずれの段階で行われてもよい。すなわち、本発明の組成物または有効成分は、食肉単味品に添加されてもよく、製造途中の食肉単味品調理品に添加されてもよい。本発明の効果がより得られやすいという観点から、食肉単味品に添加されることが好ましい。
【0050】
本発明の組成物または有効成分は、1回のみ添加されてもよく、2又以上の回数に分けて添加されてもよい。また、本発明の組成物を添加する場合、本発明の組成物が各有効成分をそれぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に含む場合には、各有効成分は同時に食肉単味品に添加されてもよいし、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、食肉単味品に添加されてもよい。また、有効成分を添加する場合、各有効成分は同時に食肉単味品に添加されてもよいし、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、食肉単味品に添加されてもよい。
【0051】
本発明の方法は、本発明の組成物または有効成分を食肉単味品に添加する工程(単に「添加工程とも称する」)及び食肉単味品を調理する工程(単に「調理工程」とも称する)を含む。添加工程及び調理工程の順番は特に限定されないが、より本発明の効果が得られやすいとう観点から、添加工程の後に調理工程を行うことが好ましい。
【0052】
本発明の組成物または有効成分を食肉単味品に添加する方法は特に限定されないが、食肉単味品の表面に均一に添加することが好ましい。表面に均一に添加する方法としては、例えば、ざるや篩等の目の細かい網を用いて食肉単味品の表面に上から振りかける方法、食肉単味品の表面全体に上から直接少量ずつ振りかける方法、ビニル袋の中で組成物または有効成分と食肉単味品を共に振り混ぜる方法、組成物または有効成分をバット等の薄型トレーに均一に敷き、その上に食肉単味品を接触させる方法等が挙げられる。
【0053】
本発明の有効成分を食肉単味品に均一に添加するために、有効成分をあらかじめ倍散剤等に混ぜ合わせて希釈して使用してもよい。倍散剤としては、例えば、デキストリン、食塩、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。有効成分と倍散剤の混合比率は、有効成分の添加量に応じて適宜調整することができる。
【0054】
本発明の組成物または有効成分を食肉単味品の表面に添加するとは、食肉単味品の表面の全てに添加されてもよいし、一部に添加されていてもよい。本発明の効果がより得られやすいという観点から、食肉単味品の表面積を100%とした場合、表面積の20%以上、30%以上、40%以上、50%以上であってよく、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下であってよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0055】
有効成分の効果を充分に発揮させるために、本発明の組成物または有効成分を食肉単味品の表面に添加した後、調理工程に供する前に、一定時間保持することが好ましい。保持時間としては特に限定されないが、例えば、添加後、1分間以上、5分間以上、10分間以上、30分間以上、1時間以上が挙げられ、3日間以下、2日間以下、24時間以下、18時間以下、12時間以下、6時間以下、3時間以下が挙げられ、これらの組み合わせでもよい。
【0056】
保持温度は特に限定されないが、保持時間が1時間以上の場合は、食品衛生の観点からは、冷蔵庫内で保持することが好ましい。
【0057】
食肉単味品を調理する方法は、焼成、蒸し、炒め、茹で、油ちょう、煮込み、オーブン加熱、電子レンジ加熱等の加温調理である。本発明の効果が得られやすいという観点から、焼成、炒め、又は油ちょうが好ましい。
【0058】
本発明の方法は、さらにプロテアーゼを添加することを含んでいてもよい。本発明の方法において、プロテアーゼを用いることで、有効成分との相乗効果を発揮し、食肉単味品調理品にやわらかさと濃厚なジューシー感を顕著に付与することができる。
【0059】
プロテアーゼを食肉単味品に添加するタイミングは特に限定されず、有効成分と同時でもよく、有効成分を添加する前でも後でもよい。また、有効成分とともに組成物として添加してもよい。
【0060】
本発明の方法は、さらに、その他の成分(有効成分以外の成分)を添加することを含んでいてもよい。ここでいう「その他の成分」については、上述した本発明の組成物における「その他の成分」についての記載を準用できる。また、本発明の組成物を「その他の成分」とさらに併用してもよい。「その他の成分」を添加する場合、「その他の成分」の添加も、本発明の組成物または有効成分の添加と同様に行うことができる。例えば、「その他の成分」と本発明の組成物または有効成分とは、同時に食肉単味品に添加されてもよいし、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、食肉単味品に添加されてもよい。
【0061】
本発明の方法における各成分(すなわち、有効成分および任意でその他の成分)の添加量や添加比率は、肉油脂保持効果が得られる限り特に制限されない。
【0062】
有効成分を添加する場合、有効成分の添加量や添加比率は、有効成分の種類や本発明の食品の摂取態様等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0063】
キサンタンガム、グアーガム、又はグルコマンナンから選ばれる1又は2以上の総添加量は、食肉単味品に、例えば、食肉単味品100gに対して、0.002g以上、0.003g以上、0.005g以上、または0.01g以上となるように添加されてもよく、0.5g以下、0.3g以下、0.2g以下、0.1g以下となるように添加されてもよく、それらの組み合わせとなるように添加されてもよい。 キサンタンガム、グアーガム、又はグルコマンナンから選ばれる1又は2以上の総添加量は、食肉単味品100gに、例えば、0.003〜0.3g、好ましくは0.01〜0.1gとなるように添加されてもよい。
【0064】
なお、有効成分の添加量(濃度)は、有効成分を含有する素材を用いる場合にあっては、当該素材中の有効成分そのものの量に基づいて算出されるものとする。
【0065】
本発明の方法で用いられるプロテアーゼの量は、特に制限されないが、例えば、食肉単味品100gあたり、100U以上、1000U以上、または10000U以上であってもよく、10000000U以下、1000000U以下、または100000U以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。ここで、Uの意味及び1ユニット(1U)の定義は、本発明の組成物についての記載を準用できる。
【0066】
本発明の組成物を添加する場合、その添加量は、肉油脂保持効果が得られる限り特に制限されない。本発明の組成物の添加量は、有効成分の種類、本発明の組成物における有効成分の濃度、食肉単味品調理品の摂取態様等の諸条件に応じて適宜設定することができる。例えば、食肉単味品100gに対して、本発明の組成物を、0.003g〜20g添加してもよく、0.02g〜10g添加してもよい。また、本発明の組成物は、例えば、各有効成分の喫食濃度が上記例示した各有効成分の喫食濃度範囲内となるように、食品単味品に対して添加されてよい。
【0067】
以下の実施例において本発明を更に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
実施例1:様々な増粘多糖類の効果
本実施例では様々な増粘多糖類の食肉単味品に対する効果について検証した。
【0069】
(1)評価方法
米国産豚ロース肉の原木を除脂し、スライサー「スーパーデラックススライサー」(ワタナベフーマック社製)を用いて1cmの厚さにスライスした。また、表1に示す各種増粘多糖類(粉体)をデキストリンにて10倍に倍散して組成物を調製した。これは、スライス肉に増粘多糖類をまんべんなく均一に振り掛けるためである。スライス肉の両面(スライス肉の表面積の約80%に相当)に、調製した組成物をまんべんなく均一に直接少量ずつ振り掛け、5分間静置した。増粘多糖類の添加量は、表1に示す量である。尚、試験区1−1は、スライス肉に対してデキストリンのみを1%添加した。
【0070】
5分間静置後、コンベア・オーブン・インピンジャー「Lincoln IMPINGER」(Lincoln Foodservice Products社製)を用い、180℃にて2分30秒焼成した。更に裏返して2分30秒焼成することで、ポークソテーを得た。
【0071】
(2)評価結果
得られたポークソテーを、官能評価に供した。官能評価は、やわらかさ、濃厚なジューシー感、総合的な官能品質、生肉への馴染みやすさ(冷水可溶性)について、4名の専門パネルにて行った。無添加区(試験区1−1)をコントロールとした。結果を表1に示す。
【0072】
総合的な官能品質とは、やわらかさと濃厚なジューシー感が共に付与されている状態を意味する。やわらかさ及び濃厚なジューシー感の両方が向上することは、食肉単味品調理品のおいしさに寄与する重要な要素である。
【0073】
やわらかさ、濃厚なジューシー感、総合的な官能評価については、効果なし又は逆効果を「−」、効果ありを「+」、顕著な効果ありを「++」、非常に顕著な効果ありを「+++」とした。
【0074】
冷水可溶性は、肉表面に振り掛けた際に、粉体が肉に馴染む様子を目視にて確認した。評価結果は、馴染みにくい又は全く溶解しないを「−」、やや馴染みやすいを「+」、馴染みやすいを「++」、非常に馴染みやすいを「+++」とした。
【0075】
官能評価結果及び冷水可溶性の結果から、総合評価を付した。総合評価の結果は、効果なし又はあまり好ましくない効果を「−」、やや好ましい効果ありを「+」、好ましい効果ありを「++」、非常に好ましい効果ありを「+++」とした。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示す通り、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、サイリウムシードガム、グルコマンナンを使用することにより、やわらかさと共に濃厚なジューシー感が付与され、好ましい品質であった。特に、キサンタンガム又はグアーガムにより著しい効果が得られた。
【0078】
生のスライス肉に各種増粘多糖類を含む組成物を振り掛けた際の馴染みやすさは、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、プルランにおいて非常に優れていた。一方、アラビアガム及びプルランは、粘性が低く、やわらかさと濃厚なジューシー感付与機能が劣っていた。
【0079】
総合評価においては、キサンタンガム、グアーガム、グルコマンナンが優れており、キサンタンガム又はグアーガムが特に優れていた。
【0080】
以上より、キサンタンガム、グアーガム、又はグルコマンナンをスライス肉の表面に振り掛けることで、簡便な手法にてポークソテーにやわらかさと共に濃厚なジューシー感を付与できることが示された。
【0081】
実施例2:キサンタンガムとグアーガムの添加量、添加比率
本実施例では、食肉単味品に添加するキサンタンガムとグアーガムの添加量及び添加比率を検証した。即ち、キサンタンガム及びグアーガムは、実施例1で示した通り、それぞれ単独で本発明の効果を発揮するが、これらを併用することにより、更に優れた効果を発揮する可能性がある。そこで、キサンタンガム及びグアーガムを様々な比率で食肉単味品に添加し効果を検証した。
【0082】
(1)評価方法
実施例1と同様の方法にて、米国産豚ロース肉を1cmの厚さにスライスした。一方、キサンタンガム及びグアーガムをそれぞれデキストリンにて10倍に倍散して組成物を調製した。
調製した組成物をスライス肉の両面(スライス肉の表面積の約80%に相当)振り掛けた後、実施例1と同じ方法で焼成し、ポークソテーを得た。増粘多糖類組成物の配合比率及び添加量は、表2に示す通りとした。尚、試験区2−1は、デキストリンのみをスライス肉に対して1%添加した。
【0083】
(2)評価結果
得られたポークソテーを、官能評価に供した。官能評価は、やわらかさと濃厚なジューシー感について、無添加区(試験区2−1)を1点とした1点〜5点の評点法にて、4名の専門パネルにて行った。評点は、1点が無添加区と同等、2点がやや効果あり、3点が効果あり、4点が顕著な効果あり、5点が非常に顕著な効果ありと定義した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示す通り、試験区2−2〜試験区2−7のいずれにおいても、ポークソテーにやわらかさと濃厚なジューシー感の付与が確認された。特に、原料スライス肉100gに対して、キサンタンガム0.02g、グアーガム0.08gを添加した試験区2−3を中心に、効果が顕著であった。
【0086】
このように、キサンタンガム及びグアーガムを用いる場合、様々な比率で添加されていても構わないが、有効成分の総量におけるキサンタンガムの比率は0〜80%が好ましく、0〜60%以下がより好ましく、20%〜40%が更に好ましく、20%が最も好ましい結果であった。
【0087】
実施例3:食肉単味品に対する有効成分の添加量
本実施例では、食肉単味品に対する有効成分の添加量を検証した。
【0088】
(1)評価方法
実施例1と同様の方法にて、表3に示す試験区の配合に従い、キサンタンガム及びグアーガムを用いてポークソテーを作成した。まんべんなく振り掛ける作業性の観点から、スライス肉に対する組成物の添加量が1%となるように、キサンタンガム又はグアーガムをあらかじめデキストリンにて100倍に倍散して振りかけた。尚、試験区3−1は、デキストリンのみを、スライス肉に対して1%添加した。
【0089】
(2)評価結果
得られたポークソテーを、官能評価に供した。官能評価は、やわらかさと濃厚なジューシー感について、無添加区(試験区3−1)を1点とした1点〜5点の評点法にて、4名の専門パネルにて行った。評点は、1点が無添加区と同等、2点がやや効果あり、3点が効果あり、4点が顕著な効果あり、5点が非常に顕著な効果ありと定義した。
【0090】
増粘多糖類の添加量が多すぎる場合には、ポークソテーの表面に不自然な粘性が付与される可能性があるため、焼成後の肉表面の粘性の評価も行った。評価結果は、肉表面がヌルヌルして不自然を「−」、肉表面がわずかにヌルヌルするがほとんど気にならないを「+」、肉表面に不自然な粘性はほとんどないを「++」、肉表面に不自然な粘性は全くないを「+++」とした。
【0091】
やわらかさと濃厚なジューシー感が付与され、かつ食肉単味品調理品の表面に不自然な粘性が付与されない好ましい効果であるかについて、総合評価を付した。総合評価の結果は、効果なし又はあまり好ましくない効果を「−」、やや好ましい効果ありを「+」、好ましい効果ありを「++」、非常に好ましい効果ありを「+++」とした。結果を表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表3に示す通り、やわらかさと濃厚なジューシー感を共に付与する効果は、試験区3−2〜試験区3−9の全ての試験区において得られた。特に、キサンタンガム及びグアーガムの合計添加量が原料スライス肉100gあたり0.01g以上(試験区3−4〜試験区3−9)において特に顕著な効果が得られた。
【0094】
肉表面の粘性については、試験区3−2〜試験区3−9で、不自然な粘性は付与されなかった。特に、キサンタンガム及びグアーガムの合計添加量が原料スライス肉100gあたり0.1g以下(試験区3−2〜試験区3−7)で、不自然な粘性が全く付与されず、特に好ましかった。
【0095】
以上より、やわらかさと濃厚なジューシー感を共に付与し、ポークソテーの表面に不自然な粘性が付与されない好ましい効果を得るには、キサンタンガム及びグアーガムの合計添加量が、スライス肉100gあたり0.003〜0.3gが好ましく、0.01〜0.1gがより好ましいことが示された。
【0096】
実施例4:プロテアーゼ併用効果
本実施例では、有効成分とプロテアーゼの併用効果を検証した。
【0097】
(1)評価方法
実施例1と同様の方法にて、表4に示す配合に従いポークソテーを作成した。まんべんなく均一に振り掛ける観点から、キサンタンガム、グアーガム、プロテアーゼは、あらかじめ、対スライス肉1%相当の食塩と均一に混合した後用いた。また、試験区4−1は、対スライス肉1%相当の食塩のみを添加した。
【0098】
食塩は「ナクルフォー2」(ナイカイ塩業社製)、プロテアーゼは「食品用精製パパイン」(長瀬産業社製)を用いた。尚、プロテアーゼの酵素活性については、カゼインを基質として、1分間にチロシン1μgに相当するフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量を1U(ユニット)と定義した。
【0099】
(2)評価結果
得られたポークソテーを、官能評価に供した。官能評価は、やわらかさと濃厚なジューシー感について、コントロールとして作成した食塩のみの添加区(試験区4−1)を0点とした0点〜1点の評点法にて、4名の専門パネルにて行った。評点は、0点が食塩のみの添加区と同等、0.5点が顕著な効果あり、1点が非常に顕著な効果ありと定義した。尚、食塩を添加したサンプルをコントロールとして比較評価しているため、実施例2及び実施例3とは評点のレンジは異なる。
【0100】
食塩並びにキサンタンガム及びグアーガムのみを添加した区分(試験区4−2)、及び、食塩及びプロテアーゼのみを添加した区分(試験区4−3)の結果をもとに、キサンタンガム、グアーガム及びプロテアーゼを併用した区分(試験区4−4)の理論上の評点を算出した。
例えば表4において、試験区4−4のやわらかさの理論上の評点は、試験区4−2のやわらかさの評点(0.3)と、試験区4−3のやわらかさの評点(0.4)を合計して「0.3+0.4=0.7」と算出される。よって「0.7」が試験区4−4のやわらかさの理論上の評点である。
試験区4−4の「濃厚なジューシー感」についても同様に、理論上の評点(0.2点)を算出した。
【0101】
次に、算出した値を用いて、理論上の評点と実際の官能評価結果の差を求めた。試験区4−4のやわらかさの場合、実際の官能評価結果が「1」、理論上の評点が「0.7」であり、その差は「1−0.7=0.3」と算出される。この値がゼロより大きければ理論上の評点より大きな効果、すなわち相乗効果が出ていることを意味する。「やわらかさ」及び「濃厚なジューシー感」の両方において相乗効果の得られた試験区には、相乗効果欄に「+++」を付した。結果を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
表4に示す通り、食塩のみの添加(試験区4−1)に対して、キサンタンガム及びグアーガムを添加することで(試験区4−2)、やわらかさと共に濃厚なジューシー感が付与され、好ましい品質となっていた。一方、プロテアーゼのみの添加(試験区4−3)では、やわらかさは付与されるものの、濃厚なジューシー感は向上しなかった。一方、キサンタンガム、グアーガム、及びプロテアーゼを併用することで(試験区4−4)、やわらかさと共に濃厚なジューシー感が付与され、そのいずれにおいても理論上の評点を上回っていた。すなわち、キサンタンガム及びグアーガム並びにプロテアーゼを併用することにより、これら単独の効果からは容易に想像し得ないレベルの、やわらかさと濃厚なジューシー感を共に有するポークソテーを短時間で製造できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、やわらかさと共に、濃厚なジューシー感を付与することができる組成物を提供し得る。また、本発明によれば、やわらかさと共に、濃厚なジューシー感を有する食肉単味品調理品、及び、該食肉単味品調理品の製造方法を提供し得る。
【要約】
【課題】やわらかさと共に、濃厚なジューシー感を有する食肉単味品調理品、及び、該食肉単味品調理品の製造方法を提供する。
【解決手段】粉体の、キサンタンガム、グアーガム、グルコマンナンから選ばれる1又は2以上を食肉単味品に添加する。
【選択図】なし