(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の成分抽出部(105b)は前記回転角差分(Δθm)の、前記回転角(θm)の基本周波数の1次成分(Δθms(1),Δθmc(1))を含む少なくとも一つの次数の成分たる加振トルク抑制成分(Δθms(j),Δθmc(j))を抽出し、
前記第2の成分抽出部(105e)は前記出力トルクの推定値の、前記加振トルク抑制成分に対応した次数の成分(τes(j),τec(j))を抽出し、
前記出力トルクの推定値の、前記加振トルク抑制成分に対応した次数以外の少なくとも一つの次数の成分たる出力トルク抑制成分(τes(m),τec(m))を抽出する第3の成分抽出部(105m)
を更に備え、
前記補正量計算部(105h)は前記出力トルク抑制成分を更に入力し、自身への前記入力を用いて、前記第2軸電流補正値(Δiγc1)を得る、請求項3記載の速度指令補正装置(12)。
前記出力トルクの推定値の、前記基本周波数の少なくとも一つの偶数次の成分たる出力トルク偶数次抑制成分(τes(e),τec(e))を抽出する偶数次成分抽出部(105p)
を更に備え、
前記補正量計算部(105h)は前記出力トルク偶数次抑制成分を更に入力し、自身への前記入力を用いて、前記第2軸電流補正値(Δiγc1)を得る、請求項5記載の速度指令補正装置(12)。
前記出力トルクの推定値の、前記基本周波数の少なくとも一つの奇数次の成分たる出力トルク奇数次抑制成分(τes(d),τec(d))を抽出する奇数次成分抽出部(105q)
を更に備え、
前記補正量計算部(105h)は前記出力トルク奇数次抑制成分を更に入力し、自身への前記入力を用いて、前記第2軸電流補正値(Δiγc1)を得る、請求項7記載の速度指令補正装置(12)。
前記出力トルクの推定値の、前記基本周波数の3次以上の少なくとも一つの奇数次の成分たる出力トルク奇数次抑制成分(τes(d),τec(d))を抽出する奇数次成分抽出部(105q)と、
前記出力トルクの推定値の、前記基本周波数の前記1次成分に基づいて、前記出力トルク奇数次抑制成分の指令値(τes*(d),τec*(d))を求める奇数次トルク指令生成部(105r)と、
前記出力トルク奇数次抑制成分の前記指令値に対する第2の差分(Δτes(d),Δτec(d))を得る減算器(105s)と
を更に備え、
前記補正量計算部(105h)は前記第2の差分を更に入力し、自身への前記入力を用いて、前記第2軸電流補正値(Δiγc1)を得る、請求項7記載の速度指令補正装置(12)。
前記偶数次トルク指令生成部(105t)は、前記出力トルクの推定値の、前記基本周波数の前記1次成分及び0次成分(τe(0))に基づいて、前記出力トルク偶数次抑制成分の指令値(τes*(e),τec*(e))を求める、請求項7、請求項8、請求項9のいずれか一つに記載の速度指令補正装置(12)。
前記補正量計算部(105h)は自身の前記入力に対して比例積分制御を行った値をフーリエ級数の係数として求め、当該フーリエ級数の結果から前記第2軸電流補正値を得る、請求項1乃至請求項10のいずれか一つに記載の速度指令補正装置(12)。
請求項1乃至11のいずれか一つに記載の速度指令補正装置(12)によって補正された前記回転速度指令(ωe*)と共に前記方法において採用される前記一次磁束指令(Λδ*)を出力する一次磁束指令生成装置であって、
前記同期電動機(3)の出力トルク(τe)の0次成分(τe(0))を抽出する第4の成分抽出部(103a)と、
前記出力トルクのn次成分(τes(n),τec(n))を抽出する第5の成分抽出部(103b)と、
前記出力トルクの前記n次成分の合成値(Δτe2)を得る合成値計算部(103c)と、
前記出力トルクの前記0次成分と、前記出力トルクの前記n次成分との和(τe2)を得る第2加算器(103d)と、
前記第2加算器から得られた前記和と、前記電流([I])と、前記界磁磁束(Λ0)と、前記同期電動機のインダクタンス(Ld,Lq)とに基づいて、前記一次磁束指令を設定する磁束指令設定部(103e)と
を備える、一次磁束指令生成装置(103)。
請求項1乃至11のいずれか一つに記載の速度指令補正装置(12)によって補正された前記回転速度指令(ωe*)と共に前記方法において採用される前記一次磁束指令(Λδ*)を出力する一次磁束指令生成装置であって、
前記第2軸電流(iγc)の0次成分(iγc(0))を抽出する第4の成分抽出部(103a)と、
前記第2軸電流のn次成分(iγcs(n),iγcc(n))を抽出する第5の成分抽出部(103b)と、
前記第2軸電流の前記n次成分の合成値(Δiγc2)を得る合成値計算部(103c)と、
前記第2軸電流の前記0次成分と、前記第2軸電流の前記n次成分との和(iγc2)を得る第2加算器(103d)と、
前記第2加算器から得られた前記和と、前記電流([I])と、前記界磁磁束(Λ0)と、前記同期電動機のインダクタンス(Ld,Lq)とに基づいて、前記一次磁束指令を設定する磁束指令設定部(103e)と
を備える、一次磁束指令生成装置(103)。
請求項1乃至11のいずれか一つに記載の速度指令補正装置(12)によって補正された前記回転速度指令(ωe*)と共に前記方法において採用される前記一次磁束指令(Λδ*)を出力する一次磁束指令生成装置であって、
前記電流の前記第1軸における成分たる第1軸電流(iδc)の0次成分(iδc(0))を抽出する第4の成分抽出部(103a)と、
前記第1軸電流のn次成分(iδcs(n),iδcc(n))を抽出する第5の成分抽出部(103b)と、
前記第1軸電流の前記n次成分の合成値(Δiδc2)を得る合成値計算部(103c)と、
前記第1軸電流の前記0次成分と、前記第1軸電流の前記n次成分との和(iδc2)を得る第2加算器(103d)と、
前記第2加算器から得られた前記和と、前記電流([I])と、前記界磁磁束(Λ0)と、前記同期電動機のインダクタンス(Ld,Lq)とに基づいて、前記一次磁束指令を設定する磁束指令設定部(103e)と
を備える、一次磁束指令生成装置(103)。
請求項1乃至11のいずれか一つに記載の速度指令補正装置(12)によって補正された前記回転速度指令(ωe*)と共に前記方法において採用される前記一次磁束指令(Λδ*)を出力する一次磁束指令生成装置であって、
前記界磁磁束(Λ0)の位相に対する前記一次磁束(λδc,λγc)の位相差たる負荷角(φ)の0次成分(φ(0))を抽出する第4の成分抽出部(103a)と、
前記負荷角のn次成分(φs(n),φc(n))を抽出する第5の成分抽出部(103b)と、
前記負荷角の前記n次成分の合成値(Δφ2)を得る合成値計算部(103c)と、
前記負荷角の前記0次成分と、前記負荷角の前記n次成分との和(φ2)を得る第2加算器(103d)と、
前記第2加算器から得られた前記和と、前記電流([I])と、前記界磁磁束(Λ0)と、前記同期電動機のインダクタンス(Ld,Lq)とに基づいて、前記一次磁束指令を設定する磁束指令設定部(103e)と
を備える、一次磁束指令生成装置(103)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
第1の実施の形態.
図1は第1の実施の形態における電動機制御装置1の構成及びその周辺装置を例示するブロック図である。
【0036】
同期電動機3は三相の回転電動機であり、電機子と、界磁たる回転子と(いずれも不図示)を備える。技術的な常識として、電機子は電機子巻線を有し、回転子は電機子と相対的に回転する。界磁は例えば界磁磁束を発生させる磁石(界磁磁石:不図示)を備え、例えば埋込磁石型が採用される。
【0037】
電圧供給源2は例えば電圧制御型インバータ及びその制御部を備え、三相の電圧指令値[V*](記号[]はベクトルであることを示す)に基づいて、三相電圧を同期電動機3に印加する。これにより、同期電動機3には電圧供給源2から三相電流[I]が流れる。
【0038】
電動機制御装置1は、同期電動機3の一次磁束及び回転速度(以下の例では回転角速度)を制御する。一次磁束は、界磁磁石が発生する界磁磁束Λ0と、同期電動機3に(より具体的には電機子に)流れる電機子電流(これは三相電流[I]でもある)によって発生する電機子反作用の磁束との合成である。一次磁束指令Λδ*は実際の一次磁束の大きさΛδの指令値である。
【0039】
電動機制御装置1は、同期電動機3の一次磁束を、一次磁束の制御軸となるδc軸において一次磁束指令Λδ*と一致させる方法の制御を行って、同期電動機3を制御する。δc軸は回転座標系において界磁磁束Λ0の位相を示すd軸に対して、所定の位相差で進相する。実際の一次磁束はδc軸においてδc軸成分λδcを、γc軸においてγc軸成分λγcをそれぞれ有する。γc軸はδc軸に対して、90度の電気角で進相する。以下、単に、一次磁束λδc,λγcとの表現を用いることがある。
【0040】
通常、一次磁束の指令値としてはそのγc軸成分は零であり、δc軸成分として上述の様に一次磁束指令Λδ*が設定される。つまり電動機制御装置1は実際の一次磁束のγc軸成分λγcを零にする制御を行って、所定の位相差を得る。このような制御は一次磁束制御と通称され、例えば特許文献1,2によって公知である。通常、一次磁束制御での可制御量には一次磁束と回転速度とが採用される。
【0041】
本実施の形態において一次磁束は推定値であっても観測値であってもよい。一次磁束を推定する技術それ自体も例えば特許文献1で公知である。
【0042】
電動機制御装置1は、第1座標変換部101と、磁束制御部102と、第2座標変換部104と、速度指令補正装置12とを備える。
【0043】
第1座標変換部101は、後述するようにして求められる同期電動機3の電気角θeに基づく三相/二相変換を行う。具体的には三相電流[I]を、一次磁束制御を行うδc−γc回転座標系におけるδc軸電流iδc、γc軸電流iγcに変換する。この際、三相電流はその三相分の和が零となるので、二相分が得られれば、他の一相は当該二相分から推定される。
図1における「3(2)」はこのように、検出される電流が三相分であっても二相分であってもよいことを示す。δc軸電流iδc、γc軸電流iγcは、それぞれ同期電動機3に流れる電流のδc軸成分、γc軸成分であると言える。
【0044】
第2座標変換部104は、電気角θeに基づく二相/三相変換を行う。具体的にはδc−γc回転座標系におけるδc軸電圧指令値vδ*、γc軸電圧指令値vγ*を、三相の電圧指令値[V*]へ変換する。
【0045】
なお、三相の電圧指令値[V*]に代えて、他の座標系、例えばd−q回転座標系での電圧指令値へ、δc軸電圧指令値vδ*、γc軸電圧指令値vγ*を変換してもよい。他の座標系としては、αβ固定座標系、uvw固定座標系、極座標系を採用できる。
【0046】
磁束制御部102は、(電気角についての)回転速度指令ωeo*から、これに対応した(機械角についての)回転速度指令ωm*を求める。かかる機能は公知技術で容易に実現できるので、その詳細は省略する。
【0047】
磁束制御部102は、例えば積分機能を具備している。当該積分機能により、回転速度指令ωe*が積分されて電気角θeが得られる。得られた電気角θe及び、一次磁束のd軸に対する負荷角φから式(1)によって、機械角としての回転角θmが得られる。但し、同期電動機3の極対数Pを導入した。
【0049】
負荷角φは推定値であっても観測値であってもよい。負荷角φを推定する技術それ自体も、例えば特許文献1で公知である。また、回転角θmを求める方法として式(1)以外の、公知技術を採用することができる。
【0050】
また磁束制御部102は、δc軸電流iδc、γc軸電流iγc、一次磁束λδc,λγc、一次磁束指令Λδ*、回転速度指令ωe*に基づいて、δc軸電圧指令値vδ*、γc軸電圧指令値vγ*を生成する。かかる機能及び当該機能を実現するための構成、及び一次磁束λδc,λγcを推定する手法は、例えば特許文献1等で公知であるので、ここではその詳細を省略する。
【0051】
速度指令補正装置12は、γc軸電流補正部105(
図1では「iγc補正部」と記載)、加算器107、減算器109、ハイパスフィルタ110を備える。
【0052】
γc軸電流補正部105は、回転角θm、回転速度指令ωm*、一次磁束λδc,λγc、δc軸電流iδc、γc軸電流iγc、及び次数nに基づいて、第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求める。第1のγc軸電流補正値Δiγc1は回転角θmの基本周波数のn次成分(nは正整数)を低減する量であり、その具体的な意義及び求め方については後述する。
【0053】
加算器107はγc軸電流iγcに第1のγc軸電流補正値Δiγc1を加算して第1の補正済みγc軸電流iγc1を得る。ハイパスフィルタ110は第1の補正済みγc軸電流iγc1からその直流分を除去して角速度補正量Δωe*を求める直流分除去部として機能する。図示されるように速度指令補正装置12が定数倍部108を更に備え、ハイパスフィルタ110の出力が定数倍部108で所定ゲインKm倍されたものとして角速度補正量Δωe*が求められてもよい。
【0054】
減算器109は、電気角についての回転速度指令ωeo*から角速度補正量Δωe*を減算し、補正済みの回転速度指令ωe*を得る。
【0055】
図2はγc軸電流補正部105の構成を例示するブロック図である。γc軸電流補正部105は加振トルク抽出部105A、出力トルク抽出部105B、加算器105g、補正量計算部105hを備える。
【0056】
加振トルク抽出部105Aは角度脈動抽出部105a、n次成分抽出部105b、トルク換算部105i、按分係数乗算部105cを有する。
【0057】
角度脈動抽出部105aは、回転角θm、回転速度指令ωm*から、回転角差分Δθmを求める。n次成分抽出部105bは、回転角差分Δθmのうち回転角θmの基本周波数のn次成分Δθms(n),Δθmc(n)を抽出する。トルク換算部105iはn次成分Δθms(n),Δθmc(n)をトルクに換算する。具体的には回転角θmにおける同期電動機3の加振トルクτvの推定値のn次成分τvs(n),τvc(n)を求める。ここでは加振トルクτvについて推定値と実際の値との差分を取り扱わないので、加振トルクτv及びその推定値のいずれについても便宜的に「加振トルクτv」との表現を用いる。
【0058】
加振トルクτvは、同期電動機3の出力トルクτeから、同期電動機3が駆動する機械負荷(不図示)の負荷トルクτdを引いた値である。負荷トルクτdは周期性を有し、つまり同期電動機3は周期性負荷を駆動する。この機械負荷の例としては、例えば空気調和機に採用される冷媒を圧縮する圧縮機構を挙げることができる。
【0059】
同期電動機3が回転しているとき、回転角θmは時間tの関数θm(t)として表される。よって、機械負荷の慣性モーメントをJとして表すと、式(2)が成立する。慣性モーメントJは通常、既知である。
【0061】
ここで、機械負荷が回転角θmに対して同期電動機3の1/n回転毎(n=1,2,3,…)に与える影響について考察する。加振トルクτvは、回転角θmの周期の1/nの周期で変動する成分(上述の「n次成分」)を次数毎に独立した振幅で有している。例えば機械負荷が1シリンダ圧縮機であれば、n=1に対応する1次成分の振幅が主となり、2シリンダ圧縮機であれば、n=2に対応する2次成分の振幅が主となる。回転角θm(t)は、角速度の平均値(以下「平均角速度」と称す)ωma及び次数ごとの振幅M(n)及び位相α(n)を導入して、式(3)で近似される。ここで記号Σは次数nについての総和を示す。
【0065】
式(2),(4)から式(5)が成立する。
【0067】
式(3)の右辺第1項ωma・tは平均角速度ωmaの時間積分であると言える。もし回転角θmが式(3)の右辺第1項のみで表されるなら(つまり全ての次数nについてM(n)=0であれば)、回転速度指令ωm*に従って同期電動機3が回転する場合であり、平均角速度ωmaは回転速度指令ωm*で一定となる。このような場合の角度θmfは、同期電動機3が回転速度指令ωm*で定速回転する場合(定速回転時)の回転角θmである。これにより、角度θmfは回転速度指令ωm*と時間tとの積として求めることができ、時間tが得られれば回転角差分Δθmを求めることは容易である。
【0068】
図3は角度脈動抽出部105aの構成を、n次成分抽出部105b、トルク換算部105iと共に例示するブロック図である。角度脈動抽出部105aは計算部11aと減算器11bとを有する。計算部11aは回転角θmから角度θmfを得る。減算器11bは回転角θmから角度θmfを減算して回転角差分Δθmを求める。回転角差分Δθmは式(3)の右辺第2項に相当し、これは回転角の脈動成分であると言える。つまり角度脈動抽出部105aは、回転角θmの、同期電動機3の定速回転時における回転角θmに対する脈動分を抽出する。
【0069】
但し、上述の構成例では時間tを別途に得てはいない。よって以下に、角度θmfを時間tを用いずに求める技術を例示する。
【0070】
図4は計算部11aの構成を例示するブロック図である。計算部11aは減算器111、加算器112,115,117、除算器113,116、及び遅延器114,118を有している。
【0071】
減算器111は、回転角θmから遅延器118の出力を減算して値ωthを得る。加算器112は値ωthに遅延器114の出力を加算して和uを得る。除算器113は和uを定数Aで除算する。加算器115は値ωthと除算器113の除算結果とを加算する。除算器116は加算器115の加算結果を定数Bで除算する。加算器117は遅延器118の出力と除算器116の除算結果とを加算する。角度θmfは加算器117の加算結果として得られる。遅延器114は和uを、遅延器118は角度θmfを、それぞれ同じ時間で遅延させる。ここでは遅延器114,118は、計算部11aにおける計算周期の1つ分を遅延量としている場合が例示される。
【0072】
計算部11aにおける上述の計算は、式(6)で表される。
【0074】
図34は計算部11aの伝達特性を示すボード線図である。計算部11aはローパスフィルタの特性を持ち、高周波成分を除去する。ここでは回転角θmから脈動成分たる回転角差分Δθmを除去し、角度θmfが得られる。
【0075】
n次成分抽出部105bは、式(5)の第1式のうち、加振トルクτvのn次成分を抽出する。ここでは位相α(n)を計算するのではなく、抽出すべき次数の回転角差分Δθmの成分を、正弦値成分Δθms(n)と余弦値成分Δθmc(n)とに分けて取り扱う。n次成分抽出部105bの具体的な動作は後述する。
【0076】
図3及び式(5)を参照し、トルク換算部105iは次数nと回転速度指令ωm*とを入力し、回転角差分Δθmのn次成分Δθms(n),Δθmc(n)に対して、慣性モーメントJと回転速度指令ωm*の2乗と次数nの2乗との積を乗じることにより、加振トルクτvのn次成分を求める。具体的には加振トルクτvのn次の正弦値成分τvs(n)と余弦値成分τvc(n)とが求められる。
【0077】
出力トルク抽出部105Bは出力トルク推定部105d、n次成分抽出部105e、按分係数乗算部105fを有する。
【0078】
出力トルク推定部105dは、一次磁束λδc,λγcと、δc軸電流iδc、γc軸電流iγcを用い、式(7)で出力トルクτeの推定値を求める。
【0080】
ここでは出力トルクτeについて推定値と実際の値との差分を取り扱わないので、出力トルクτe及びその推定値のいずれについても便宜的に「出力トルクτe」との表現を用いる。
【0081】
図5は出力トルク推定部105dの構成を例示するブロック図である。出力トルク推定部105dは乗算器11d,11e,減算器11f、定数倍部11gを有する。
【0082】
乗算器11dは、一次磁束のδc軸成分λδcとγc軸電流iγcとの積λδc・iγcを得る。乗算器11eは、一次磁束のγc軸成分λγcとδc軸電流iδcとの積λγc・iδcを得る。減算器11fは、積λδc・iγcから積λγc・iδcを減算する。定数倍部11gは減算器11fで得られた減算の結果に極対数Pを乗じ、出力トルクτeを得る。
【0083】
n次成分抽出部105eはn次成分抽出部105bと同様にして、出力トルクτeのうち回転角θmの基本周波数のn次成分τes(n),τec(n)を抽出する。
【0084】
具体的にはn次成分抽出部105b,105eは、いずれもフーリエ変換を用いることにより、入力した量の正弦値成分及び余弦値成分を得る。回転角差分Δθm及び出力トルクτeはいずれも回転角θmの関数であって、両者のいずれをも関数F(θm)として表すと、式(8)が成立する。
【0086】
ここで値a0は関数F(θm)の直流成分(0次成分)であり、値anは関数F(θm)のn次成分の余弦値の振幅であり、値bnは関数F(θm)のn次成分の正弦値の振幅である。上述のフーリエ変換を行うべく、n次成分抽出部105b,105eには次数nと回転角θmとが入力する。なお式(8)において積分変数として回転角θmではなく、時間tを採用してもよい。フーリエ変換で行われる計算において回転角θmは角度θmfで代用することができ、式(5)の3番目の式を用いて変数変換ができるからである。
【0087】
n次成分抽出部105bは、回転角差分Δθmを入力してこれを上記関数F(θm)として採用し、値bnを回転角差分Δθmの正弦値成分Δθms(n)として出力し、値anを回転角差分Δθmの余弦値成分Δθmc(n)として出力する。
【0088】
n次成分抽出部105eは、出力トルクτeを入力してこれを上記関数F(θm)として採用し、値bnを出力トルクτeの正弦値成分τes(n)として出力し、値anを出力トルクτeの余弦値成分τec(n)として出力する。
【0089】
按分係数乗算部105cは次数n毎に設定される按分係数K(n)を、正弦値成分τvs(n)及び余弦値成分τvc(n)のいずれにも乗じる。按分係数乗算部105fは按分係数[1−K(n)]を、正弦値成分τes(n)及び余弦値成分τec(n)のいずれにも乗じる。但し、次数nのそれぞれにおいて、0≦K(n)≦1が成立する。よって按分係数乗算部105c,105fは、所定の按分比K(n)/[1−K(n)]で、正弦値成分τvs(n)と正弦値成分τes(n)とを按分し、当該按分比で余弦値成分τvc(n)と余弦値成分τec(n)とを按分する按分部として見ることができる。按分係数K(n),[1−K(n)]は按分係数乗算部105c,105fに対して外部から与えられてもよい。この場合按分係数乗算部105c,105fは単なる乗算器で実現される。
【0090】
加算器105gは、次数n毎に、正弦値成分に関する積τvs(n)・K(n),τes(n)・[1−K(n)]同士を加算し、余弦値成分に関する積τvc(n)・K(n),τec(n)・[1−K(n)]同士を加算し、対を成す和を出力する。
【0091】
n次成分抽出部105b,105eにおいて抽出の対象となる次数nは複数採用されてもよい。例えば次数nとして値1のみを採用する場合には、加算器105gは一対の和τvs(1)・K(1)+τes(1)・[1−K(1)],τvc(1)・K(1)+τec(1)・[1−K(1)]を出力する。あるいは次数nとして値1,2の二つを採用する場合には、加算器105gは和τvs(1)・K(1)+τes(1)・[1−K(1)],τvc(1)・K(1)+τec(1)・[1−K(1)]の対と、和τvs(2)・K(2)+τes(2)・[1−K(2)],τvc(2)・K(2)+τec(2)・[1−K(2)]の対との二対を出力する。
図2において矢印に付されたスラント「/」はこのような対の入出力を示す。
【0092】
負荷トルクτdについてのn次の正弦値成分τds(n)及び余弦値成分τdc(n)を導入すると、式(2)の左側の等式から、式(9)が得られる。
【0094】
よって加算器105gは、対を成す値τes(n)−K(n)・τds(n),τec(n)−K(n)・τdc(n)を出力するということができる。
【0095】
図6は補正量計算部105hの構成を例示するブロック図である。補正量計算部105hは、PI制御部11hと、合成値計算部11yとを有する。ここでは簡単のため、次数nは一つである場合を例示した。
【0096】
PI制御部11hは、いずれも比例積分制御を行うPI制御器11hs,11hcを備える。PI制御器11hsは正弦値成分に関する値について比例積分制御を行う。PI制御器11hcは余弦値成分に関する値について比例積分制御を行う。
【0097】
図7はPI制御器11hsの構成を例示するブロック図である。PI制御器11hsは比例部11h1、積分部11h2、加算器11h3を有している。比例部11h1はPI制御器11hsへの入力に対して次数n毎に設定されるゲインKps(n)を乗じて得られた積を出力する。積分部11h2は上記入力の積分値に対して次数n毎に設定されるゲインKis(n)を乗じて得られた積を出力する。加算器11h3は上述の二つの積同士を加算して得られた和を出力する。
【0098】
図8はPI制御器11hcの構成を例示するブロック図である。PI制御器11hcは比例部11h4、積分部11h5、加算器11h6を有している。比例部11h4はPI制御器11hcへの入力に対して次数n毎に設定されるゲインKpc(n)を乗じて得られた積を出力する。積分部11h5は上記入力の積分値に対して次数n毎に設定されるゲインKic(n)を乗じて得られた積を出力する。加算器11h6は上述の二つの積同士を加算して得られた和を出力する。
【0099】
ゲインKps(n),Kpc(n),Kis(n),Kic(n)をどのように設定するかは設計事項であり、また比例積分制御それ自体は周知の技術であるので、ここでは更に詳細な説明は省略する。
【0100】
PI制御器11hsは値τes(n)−K(n)・τds(n)を入力し、これに対して比例積分制御を行った結果を出力する。PI制御器11hcは値τec(n)−K(n)・τdc(n)を入力し、これに対して比例積分制御を行った結果を出力する。
【0101】
合成値計算部11yは、PI制御器11hsで得られた正弦値成分に関する比例積分制御の結果と、PI制御器11hcで得られた余弦値成分に関する比例積分制御の結果とを以下の様に合成して合成値を求める。
【0102】
合成値計算部11yは、乗算器11j,11k,11pと、正弦値生成部11qと、余弦値生成部11rと、加算器11sとを有している。
【0103】
乗算器11pは、次数nと回転角θmとを入力し、両者の積n・θmを得る。正弦値生成部11qは積n・θmを入力し、正弦値sin(n・θm)を得る。余弦値生成部11rは積n・θmを入力し、余弦値cos(n・θm)を得る。
【0104】
乗算器11jは、PI制御器11hsで得られた結果と正弦値sin(n・θm)との積を得る。乗算器11kは、PI制御器11hcで得られた結果と余弦値cos(n・θm)との積を得る。加算器11sは三角関数の合成を行って合成値を得る。具体的には加算器11sは、乗算器11jで得られた積と、乗算器11kで得られた積との和として合成値を得る。当該合成値が第1のγc軸電流補正値Δiγc1として合成値計算部11yから出力される。これはPI制御器11hs,11hcの各々で得られた結果をフーリエ級数の係数とし、そのフーリエ級数の結果から第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求めることに相当する。
【0105】
このように、加振トルクτv及び出力トルクτeのn次成分に基づいて第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求め、これをγc軸電流iγcから減じることにより、結果的に減算器109において、回転速度指令ωeo*を加振トルクτvの増加及び/又は出力トルクτeの増加に対応して増加させる方向に補正することになる。このように第1のγc軸電流補正値Δiγc1は、加振トルクτvや、出力トルクτeの脈動に対して比例積分制御を行って得られているので、補正済み回転速度指令ωe*は加振トルクτvや、出力トルクτeの脈動を抑制するように制御される。
【0106】
補正量計算部105hにおける比例積分制御を行う前に、按分係数K(n),[1−K(n)]で、加振トルクτv及び出力トルクτeの回転速度指令ωeo*への影響を按分する。これは比例積分制御のゲインによらずに按分比を維持できる観点でも、比例積分制御において機械角の回転速度に応じた周波数帯域は不要である観点でも、好適である。
【0107】
次数nを複数個にて設定する場合、補正量計算部105hはPI制御部11hと、加算器11sを除いた合成値計算部11yとを、その次数毎に設ける。そして加算器11sは、次数毎に設けられた合成値計算部11yの出力を、全て加算して第1のγc軸電流補正値Δiγc1として出力する。
【0108】
ある次数nにおいて、按分係数K(n)が1であるとする。この場合、按分係数乗算部105fの出力は0となり、出力トルクτeは第1のγc軸電流補正値Δiγc1に寄与せず、加振トルクτvのみが回転速度指令ωeo*の補正に寄与することになる。この場合は回転速度指令ωeo*の補正が専ら加振トルクτvの抑制に寄与することなる。
【0109】
ある次数nにおいて、按分係数K(n)が0であるとする。この場合、按分係数乗算部105cの出力は0となり、加振トルクτvは第1のγc軸電流補正値Δiγc1に寄与せず、出力トルクτeのみが回転速度指令ωeo*の補正に寄与することになる。この場合は回転速度指令ωeo*の補正が専ら出力トルクτeの脈動の抑制に寄与することとなり、電流[I]の振幅を一定にし易くする。
【0110】
上述のことから、加算器105g、出力トルク抽出部105B、按分係数乗算部105cを省略してγc軸電流補正部105を構成し、正弦値成分τes(n)及び余弦値成分τec(n)を用いずに正弦値成分τvs(n)及び余弦値成分τvc(n)を用いて(より具体的にはこれらに比例積分制御を行って)補正量計算部105hが第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求めても、回転速度指令ωeo*の補正によって加振トルクτvを抑制するという効果が得られることが分かる。
【0111】
同様にして、加算器105g、加振トルク抽出部105A、按分係数乗算部105fを省略してγc軸電流補正部105を構成し、正弦値成分τvs(n)及び余弦値成分τvc(n)を用いずに正弦値成分τes(n)及び余弦値成分τec(n)を用いて(より具体的にはこれらに比例積分制御を行って)補正量計算部105hが第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求めても、回転速度指令ωeo*の補正によって出力トルクτeの脈動を抑制するという効果が得られることが分かる。
【0112】
第2の実施の形態.
本実施の形態では、第1のγc軸電流補正値Δiγc1を用いて、同期電動機3の効率を改善する技術を説明する。第1の実施の形態において、加振トルクτvの基本周波数の振動を抑制する場合を考える。上述の様に、機械負荷が1シリンダ圧縮機であれば、加振トルクτvの基本周波数はn=1に対応し、2シリンダ圧縮機であれば、n=2に対応する。まず、簡単のため、機械負荷が1シリンダ圧縮機である場合を想定して説明する。
【0113】
第1の実施の形態において、加振トルク抽出部105A、出力トルク抽出部105Bを採用し、次数nとして値1のみを採用することにより、加振トルクτvの基本周波数の1次成分(以下「基本波成分」と称す)が抑制される。特にK(1)=1とすることで加振トルクτvの基本波成分は殆ど消える。
【0114】
しかしながら、出力トルクτeの、当該基本周波数以外の成分の脈動は必ずしも抑制されるとは限らない。他方、かかる脈動は同期電動機3に流れる電流の高調波成分の成因となる。同期電動機3の効率はこれに流れる高調波成分が増大するほど悪化する。従って、同期電動機3の効率は出力トルクτeの脈動を抑制することで改善される。但し、加振トルクτvの基本波成分については上述の様に抑制される。よって本実施の形態では、当該基本波成分以外の次数において出力トルクτeの脈動を抑制し、以て同期電動機3の効率を改善する。
【0115】
図9は、本実施の形態において採用されるγc軸電流補正部105の構成を例示するブロック図である。γc軸電流補正部105は第1の実施の形態と同様に、加振トルク抽出部105A、出力トルク抽出部105B、加算器105g、補正量計算部105hを備える。本実施の形態における補正量計算部105hの構成は後に詳述される。
【0116】
加振トルク抽出部105A、出力トルク抽出部105B、加算器105gは第1の実施の形態と同様に構成される。但し、ここでは諸量のj次成分が抽出される場合が示されているので、
図2において次数を示す「n」が、
図9では次数を示す「j」に置き換わって示されている。機械負荷が1シリンダ圧縮機であればj=1であり、2シリンダ圧縮機であればj=2である。もちろん、加振トルクτvを複数の次数について抑制したい場合には次数jを複数採用することもできる。そのような複数の次数の抑制については第1の実施の形態について説明したのでここでは説明を省略する。
【0117】
つまり、j次成分抽出部105bは、回転角差分Δθmの、加振トルクτvの基本周波数の1次成分を含む少なくとも一つの成分として加振トルク抑制成分Δθms(j),Δθmc(j)を抽出する。j次成分抽出部105eは、出力トルク(正確にはその推定値)τeの、加振トルク抑制成分Δθms(j),Δθmc(j)に対応したj次の成分τes(j),τec(j)を抽出する。
【0118】
本実施の形態においてγc軸電流補正部105は更に、m次成分抽出部105mを備える。m次成分抽出部105mは、j次成分抽出部105eと同様に構成され、出力トルク(正確にはその推定値)τeの、m次成分τes(m),τec(m)を抽出する。但し次数mは、加振トルク抑制成分Δθms(j),Δθmc(j)に対応した次数j以外の次数から採用される少なくとも一つの次数である。
【0119】
以下、説明の簡単のため、j=1、m=2,3の場合を例にとって説明する。
図10は本実施の形態における補正量計算部105hの構成を例示するブロック図である。補正量計算部105hは、3つのPI制御部11hと、合成値計算部11yと、二つの合成値計算部11y1と、加算器11tとを備えている。
【0120】
図10においてもっとも上段に示されたPI制御部11hと合成値計算部11yとは、第1の実施の形態で示された補正量計算部105hの構成と同様である。但しこれらはここでは加振トルク抑制成分Δθms(1),Δθmc(1)に対応して機能し、PI制御部11hは値τes(1)−K(1)・τds(1),τec(1)−K(1)・τdc(1)を入力する。また、合成値計算部11yには次数jを示す値1が入力されて乗算器11pにおいて回転角θmと乗算されているが、次数jが1であれば乗算器11pを省略しても構わないことは明白である。
【0121】
図10において中段に示されたPI制御部11hには、値τes(2),τec(2)が入力する。
図10において下段に示されたPI制御部11hには、値τes(3),τec(3)が入力する。つまりm次成分抽出部は見かけ上、第1の実施の形態の出力トルク抽出部105Bのうち出力トルク推定部105d以外の構成を、次数mについて按分係数K(m)=0として変形したものと見ることもできる。よってm次成分τes(m),τec(m)は、m次の出力トルクを抑制する出力トルク抑制成分として理解することができる。
【0122】
合成値計算部11y1は合成値計算部11yから加算器11sを省略した構成を有しており、それぞれの乗算器11p,11j,11k及び正弦値生成部11q、余弦値生成部11rは第1の実施の形態で示されたそれぞれの機能と同じ機能を担う。
【0123】
加算器11s,11tは次数1,2,3のそれぞれについての乗算器11jの出力及び乗算器11kの出力の和を採り、これを第1のγc軸電流補正値Δiγc1として出力する。つまり本実施の形態においてγc軸電流補正部105は加算器105gで得られた和と、m次成分抽出部105mから得られた出力トルク抑制成分τes(m),τec(m)を用いて、第1のγc軸電流補正値Δiγc1を得ている。このようにして得られた第1のγc軸電流補正値Δiγc1は、回転速度指令ωeo*の補正において、出力トルクτeのm次成分の脈動の抑制に寄与することとなることは、第1の実施の形態の説明から明白である。
【0124】
このようにして、本実施の形態では、加振トルクτvのj次成分を抑制し、かつ出力トルクτeのm次(m≠j)成分を抑制することができる。
【0125】
上段に示された合成値計算部11yを合成値計算部11y1に置換し、加算器11tが加算器11sの機能を兼務してもよい。
【0126】
出力トルク抑制成分τes(m),τec(m)は加振トルクτvのm次成分との按分を行わないので、補正量計算部105hに入力する前に次数毎に個別に増幅されてもよい。同様にして、第1の実施の形態においても、加算器105gの出力は、次数毎に個別に増幅されてもよい。換言すれば、按分係数K(n),[1−K(n)]に替えて、按分係数C(n)・K(n),C(n)・[1−K(n)](但しC(n)はいずれの次数nについても正の数)を採用してもよい。このような場合にも按分比K(n)/[1−K(n)]が維持されることは自明である。
【0127】
第3の実施の形態.
本実施の形態では、第1のγc軸電流補正値Δiγc1を用いて、同期電動機3に流れる電流(以下「モータ電流」と称す)のピーク値を抑制する技術を説明する。第1の実施の形態において、加振トルクτvの基本周波数の振動を抑制する場合を考える。上述の様に、機械負荷が1シリンダ圧縮機であれば、加振トルクτvの基本周波数はn=1に対応し、2シリンダ圧縮機であれば、n=2に対応する。まず、簡単のため、機械負荷が1シリンダ圧縮機である場合を想定して説明する。
【0128】
第1の実施の形態において、加振トルク抽出部105A、出力トルク抽出部105Bを採用し、次数nとして値1のみを採用すれば、加振トルクτvや出力トルクτeの基本波成分が抑制される。加振トルクτvや出力トルクτeの脈動はそれらの基本波成分が主であるので、それらの基本波成分の抑制は重要である。
【0129】
しかし加振トルクτvの基本波成分を抑制するために必要な第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求めた場合、モータ電流のピーク値が大きくなる可能性がある。通常、モータ電流は過電流保護の観点からそのピーク値を制限する制御が採用されることも多い(例えば
図1において示されるδc軸電圧指令値vδ*、γc軸電圧指令値vγ*を磁束制御部102において上限を設ける等)。
【0130】
よって加振トルクτvの基本波成分の抑制が、モータ電流のピーク値を制限する制御によって損なわれることがないように、モータ電流のピーク値を小さくすることが望ましい。そこで、本実施の形態では、出力トルクτeの基本波成分τes(1),τec(1)を維持しつつ、n次成分τes(n),τec(n)の次数nについての和のピークを低減する技術を示す。
【0131】
n次成分τes(n),τec(n)の次数nについての和のピークを低減する場合、次数nの値に上限を設けないならば、奇数次の成分の和の波形が矩形波を呈すればよい。矩形波の振幅を1とすると、かかる矩形波は、位相Ψの関数R(Ψ)において上限値Dを無限大に設定すれば下式(10)で表される。但し、奇数dを導入し、記号Σは奇数dについての総和を意味する。
【0133】
よって本実施の形態では、出力トルクτeのうち、3以上の奇数dを次数とする奇数次成分については、上記ピーク値の低減に鑑みた奇数次成分の指令値(以下「奇数次トルク指令」と称す)を求める。そして奇数次成分と奇数次トルク指令との差分にも基づいて第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求める。
【0134】
他方、出力トルクτeのうち偶数次の高次成分については、その正弦値成分τes(e)及び余弦値成分τec(e)(偶数eを導入した)を抽出し、第1の実施の形態に即して言えばK(e)=0として第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求める計算に用いる。
【0135】
図11は、本実施の形態において採用されるγc軸電流補正部105の構成を例示するブロック図である。γc軸電流補正部105は第1の実施の形態と同様に、角度脈動抽出部105a、n次成分抽出部105b,105e、トルク換算部105i、按分係数乗算部105c,105f、出力トルク推定部105d、加算器105g、補正量計算部105hを備える。本実施の形態における補正量計算部105hの構成は後に詳述される。
【0136】
但し、本実施の形態においては、n次成分抽出部105b,105eは、いずれも基本波成分のみを抽出する。具体的にはn次成分抽出部105bは回転角差分Δθmのうち回転角θmの基本波成分Δθms(1),Δθmc(1)を抽出する。これによりトルク換算部105iは加振トルクτvの基本波成分の正弦値成分τvs(1)及び余弦値成分τvc(1)を出力し、按分係数乗算部105cはこれらに按分係数K(1)を乗ずる。このような事情から、
図11においてn次成分抽出部105bは「基本波成分抽出部」として示した。
【0137】
同様に、n次成分抽出部105eは出力トルクτe(より正確にはその推定値)の基本波成分の正弦値成分τes(1)及び余弦値成分τec(1)を抽出する。按分係数乗算部105fはこれらに按分係数[1−K(1)]を乗ずる。このような事情から、
図11においてn次成分抽出部105eは「基本波成分抽出部」として示した。
【0138】
以上のことから、本実施の形態ではn次成分抽出部105b,105e、トルク換算部105i、按分係数乗算部105c、n次成分抽出部105e、按分係数乗算部105f、加算器105gは、加振トルクτv及び出力トルクτeのそれぞれの基本波成分を抽出して所定の按分比(K(1)/[1−K(1)])で按分する、基本波成分按分部105Cとして捉えることができる。
【0139】
加振トルクτvの脈動の抑制を行わない場合には、K(1)=0と想定して、角度脈動抽出部105a、n次成分抽出部105b、トルク換算部105i、按分係数乗算部105c及び加算器105gを省略することができる。つまり本実施の形態において加振トルクτvは、その基本波成分も含め、必ずしも抽出する必要はない。
【0140】
γc軸電流補正部105は、出力トルク偶数次出力部105Dと、出力トルク奇数次出力部105Eとを更に備える。
【0141】
出力トルク偶数次出力部105Dは、出力トルクτeのうち、偶数の次数eの成分たる偶数次成分を求め、補正量計算部105hに出力する。出力トルク奇数次出力部105Eは、出力トルクの奇数次成分と奇数次トルク指令との差分を求め、補正量計算部105hに出力する。
【0142】
具体的には、出力トルク偶数次出力部105Dは偶数次成分抽出部105pを有する。偶数次成分抽出部105pは回転角θmと、出力トルクτe(より正確にはその推定値:出力トルク推定部105dから得られる)と、偶数の次数eとを入力し、正弦値成分τes(e)及び余弦値成分τec(e)を出力トルクの偶数次を抑制する成分(出力トルク偶数次抑制成分)として得る。偶数次成分抽出部105pの構成は第1の実施の形態で説明されたn次成分抽出部105eの構成と同様であり、単に入力される次数nが偶数の次数eに限定される点でのみ相違する。上述の偶数次成分として、正弦値成分τes(e)及び余弦値成分τec(e)が採用される。
【0143】
次数eを複数採用してもよい。この場合、出力トルク偶数次出力部105Dにおいて偶数次成分抽出部105pを次数e毎に複数設けてもよい。
【0144】
また出力トルク奇数次出力部105Eは奇数次成分抽出部105qと、奇数次トルク指令生成部105rと、減算器105sとを有する。
【0145】
奇数次成分抽出部105qは回転角θmと、出力トルクτeと、3以上の奇数の次数dとを入力し、正弦値成分τes(d)及び余弦値成分τec(d)を、出力トルクの奇数次を抑制する成分(出力トルク奇数次抑制成分)として得る。奇数次成分抽出部105qの構成も第1の実施の形態で説明されたn次成分抽出部105eの構成と同様であり、単に入力される次数nが3以上の奇数の次数dに限定される点でのみ相違する。
【0146】
奇数次トルク指令生成部105rは正弦値成分τes(d)の指令値(以下「奇数次トルク指令正弦値成分」と称す)τes*(d)及び余弦値成分τec(d)の指令値(以下「奇数次トルク指令余弦値成分」と称す)τec*(d)を求める。その詳細は後述する。
【0147】
減算器105sは、正弦値成分τes(d)の奇数次トルク指令正弦値成分τes*(d)に対する偏差Δτes(d)と、余弦値成分τec(d)の奇数次トルク指令余弦値成分τec*(d)に対する偏差Δτec(d)とを求める。具体的には偏差Δτes(d)=τes(d)−τes*(d),Δτec(d)=τec(d)−τec*(d)である。
【0148】
次数dを複数採用してもよい。この場合、出力トルク奇数次出力部105Eにおいて奇数次成分抽出部105q、奇数次トルク指令生成部105r及び減算器105sを次数d毎に複数設けてもよい。
【0149】
以下、説明の簡単のため、d=3,e=2の場合を例にとって説明する。
図12は本実施の形態における補正量計算部105hの構成を例示するブロック図である。補正量計算部105hは、3つのPI制御部11hと、合成値計算部11yと、二つの合成値計算部11y1と、加算器11tとを備えている。ここで示された構成それ自体は、
図10に示された構成と同一である。
【0150】
但し、第2の実施の形態とは、最下段に示されたPI制御部11hへの入力が相違し、偏差Δτes(3),Δτec(3)がそれぞれPI制御器11hs,11hcに入力する。かかる入力の相違以外は第2の実施の形態と同様にして、本実施の形態においても第1のγc軸電流補正値Δiγc1が得られる。
【0151】
なお、合成値計算部11yには次数1が入力されて乗算器11pにおいて回転角θmと乗算されているが、乗算器11pを省略できることは明白である。
【0152】
図13は奇数次トルク指令生成部105rの構成を例示するブロック図である。奇数次トルク指令生成部105rは、振幅演算部1051、位相演算部1052、乗算器1053,1054,1057,1058、余弦値生成部1055、正弦値生成部1056を有する。
【0153】
振幅演算部1051は出力トルクτeの基本波成分τe(1)の大きさTeを求める。位相演算部1052は出力トルクτeの回転角θmに対する位相αを求める。具体的には式(11)が成立するので、式(12)によって大きさTe及び位相αを求める。
【0156】
即ち、位相αは正弦値成分τes(1)で余弦値成分τec(1)を除した値の逆正接関数の値として求まり、大きさTeは正弦値成分τes(1)の平方と余弦値成分τec(1)の平方との和の平方根として求まる。
【0157】
さて、角度(θm+α)が0度,180度、360度を採るとき、奇数次の出力トルクは全て値0を採るので(後述する
図14、
図16も参照)、奇数次(但し基本波成分となる1次を覗く)出力トルクの総和τeaは、式(13)によって表される。但し上限値Dは式(10)と等しい。
【0159】
式(13)の右辺第1式において係数g(d)を次数d、上限値Dに基づいて設定することにより、総和τeaのピークを低減できる。具体的には上限値Dを無限大に設定すれば、式(10)を参照して係数g(d)は係数g(1)の1/dに設定すればよい。これにより総和τeaのピークをその最小値にすることができる。以下、特に断わらない限りg(1)=1とする。
【0160】
他方、総和τeaは奇数次トルク指令正弦値成分τes*(d)及び奇数次トルク指令余弦値成分τec*(d)を導入して式(13)の右辺第2式に書き換えることができる。よって式(14)で奇数次トルク指令正弦値成分τes*(d)及び奇数次トルク指令余弦値成分τec*(d)が求められることになる。
【0162】
式(14)の計算は、奇数次トルク指令生成部105rにおいて、下記のように実現される。乗算器1053は係数g(d)と大きさTeとを次数d毎に乗算し、積g(d)・Teを求める。乗算器1054は次数dと位相αとを次数d毎に乗算し、積d・αを求める。
【0163】
余弦値生成部1055は積d・αの余弦値cos(d・α)を次数d毎に求め、正弦値生成部1056は積d・αの正弦値sin(d・α)を次数d毎に求める。乗算器1057は積g(d)・Teと余弦値cos(d・α)とを次数d毎に乗算し、奇数次トルク指令正弦値成分τes*(d)を求める。乗算器1058は積g(d)・Teと正弦値sin(d・α)とを次数d毎に乗算し、奇数次トルク指令余弦値成分τec*(d)を求める。
【0164】
図14は、第3の実施の形態における出力トルクの奇数次成分の波形の第1例を示すグラフである。また
図15は
図14に示された奇数次成分の和の波形を示すグラフである。この第1例では上限値Dを奇数3と設定した。第1例の場合、係数g(3)を1/6に設定することで、奇数次成分の和の波形のピークを最小にしている。
【0165】
図16は、第3の実施の形態における出力トルクの奇数次成分の波形の第2例を示すグラフである。また
図17は
図16示された奇数次成分の和の波形を示すグラフである。この第2例では上限値Dを奇数5と設定した。第2例の場合、係数g(3)を0.232に、係数g(5)を0.06に、それぞれ設定することで、奇数次成分の和の波形のピークを最小にしている。
【0166】
第1例、第2例のいずれの場合においても、基本波成分τe(1)のピークを1として描いている。第1例、第2例のいずれの場合においても、基本波成分τe(1)よりも奇数次成分の和の方が、波形のピークが低減することがわかる。また式(10)に鑑みれば、上限値Dが大きいほど波形のピークは、
図14〜
図16に即して言えば値(π/4)に近づいてゆくことが分かる。
【0167】
このようにして加振トルクτvの1次成分を抑制し、かつ出力トルクτeのピークを抑制することができる。
【0168】
第2の実施の形態と同様に、
図12の上段に示された合成値計算部11yを合成値計算部11y1に置換し、加算器11tが加算器11sの機能を兼務してもよい。
【0169】
また偶数次の正弦値成分τes(e)及び余弦値成分τec(e)や、奇数次の正弦値成分τes(d)及び余弦値成分τec(d)や、奇数次トルク指令正弦値成分τes*(d)及び奇数次トルク指令余弦値成分τec*(d)は、加振トルクτvのとの按分を行わないので、補正量計算部105hに入力する前に次数毎に個別に増幅されてもよい。
【0170】
第4の実施の形態.
第3の実施の形態において、出力トルクτeの偶数次の脈動を低減する必要が無い場合もあり得る。かかる場合には、第3の実施の形態に示された構成から出力トルク偶数次出力部105Dを省略することができる。
【0171】
図18は本実施の形態において採用されるγc軸電流補正部105の構成を例示するブロック図である。γc軸電流補正部105は第3の実施の形態と同様に、角度脈動抽出部105a、出力トルク推定部105d、補正量計算部105h、基本波成分按分部105C、出力トルク奇数次出力部105Eを備える。但し上述の様に出力トルク偶数次出力部105Dは備えられない。
【0172】
図19は本実施の形態における補正量計算部105hの構成を例示するブロック図である。補正量計算部105hは、第3の実施の形態で示された合成値計算部11yと、合成値計算部11y1と、加算器11tと、二つのPI制御部11hを備えている。但し本実施の形態では第3の実施の形態とは異なり、偶数次の正弦値成分τes(e)及び余弦値成分τec(e)は扱われない。よって本実施の形態では一つのPI制御部11hと合成値計算部11y1とは、奇数次の、ここでは3次の偏差Δτes(3),Δτec(3)から合成値を得る。
【0173】
本実施の形態において補正量計算部105hは、偶数次の正弦値成分τes(e)及び余弦値成分τec(e)を扱わない。よって補正量計算部105hには偶数の次数eを入力する必要は無い(
図18参照)。
【0174】
本実施の形態であっても、モータ電流のピーク値が低減される効果が得られるのは、第3の実施の形態と同様である。
【0175】
第5の実施の形態.
本実施の形態では、第3の実施の形態とは逆に、出力トルクτeの奇数次の脈動を低減しつつ、偶数次の成分を用いた制御によってモータ電流のピーク値を低減する技術を説明する。
【0176】
図20は本実施の形態において採用されるγc軸電流補正部105の構成を例示するブロック図である。γc軸電流補正部105は第3の実施の形態と同様に、角度脈動抽出部105a、出力トルク推定部105d、補正量計算部105h、基本波成分按分部105Cを備える。但し本実施の形態においては、第3の実施の形態における出力トルク偶数次出力部105D、出力トルク奇数次出力部105Eは、それぞれ出力トルク奇数次出力部105F、出力トルク偶数次出力部105Gに置換される。
【0177】
出力トルク奇数次出力部105Fは奇数次成分抽出部105qを有する。奇数次成分抽出部105qは既に第3の実施の形態で説明されたので、ここではその詳細は省略する。奇数次成分抽出部105qは正弦値成分τes(d)及び余弦値成分τec(d)を、出力トルクの奇数次を抑制する成分(出力トルク奇数次抑制成分)として得る。
【0178】
出力トルク偶数次出力部105Gは偶数次成分抽出部105pと、偶数次トルク指令生成部105tと、減算器105uとを有する。
【0179】
偶数次成分抽出部105pは既に第3の実施の形態で説明されたので、ここではその詳細は省略する。偶数次成分抽出部105pは正弦値成分τes(e)及び余弦値成分τec(e)を出力する。
【0180】
偶数次トルク指令生成部105tは正弦値成分τes(e)の指令値(以下「偶数次トルク指令正弦値成分」と称す)τes*(e)及び余弦値成分τec(e)の指令値(以下「偶数次トルク指令余弦値成分」と称す)τec*(e)を求める。その詳細は後述する。
【0181】
減算器105uは、正弦値成分τes(e)の偶数次トルク指令正弦値成分τes*(e)に対する偏差Δτes(e)と、余弦値成分τec(d)の偶数次トルク指令余弦値成分τec*(e)に対する偏差Δτec(e)とを求める。具体的には偏差Δτes(e)=τes(e)−τes*(e),Δτec(e)=τec(e)−τec*(e)である。
【0182】
次数eを複数採用してもよい。この場合、出力トルク偶数次出力部105Gにおいて偶数次成分抽出部105p、偶数次トルク指令生成部105t及び減算器105uを次数e毎に複数設けてもよい。
【0183】
本実施の形態でも、説明の簡単のため、以下、d=3,e=2の場合を例にとって説明する。
図21は本実施の形態における補正量計算部105hの構成を例示するブロック図である。補正量計算部105hは、3つのPI制御部11hと、合成値計算部11yと、二つの合成値計算部11y1と、加算器11tとを備えている。ここで示された構成それ自体は、
図12に示された構成と同一である。
【0184】
但し、第3の実施の形態とは、中段と、最下段に示されたPI制御部11hへの入力が相違する。本実施の形態で出力トルクの脈動について奇数次の成分が、モータ電流のピーク値の抑制について偶数次の成分が、それぞれ考慮される。よって第3の実施の形態における偏差Δτes(3),Δτec(3)、正弦値成分τes(2)、余弦値成分τec(2)に代えて、それぞれ正弦値成分τes(3)、余弦値成分τec(3)、偏差Δτes(2),Δτec(2)、が、それぞれ用いられる。
【0185】
図22は偶数次トルク指令生成部105tの構成を例示するブロック図である。偶数次トルク指令生成部105tは、0次成分抽出部1050、振幅演算部1051、位相演算部1052、乗算器1054,1057,1058、余弦値生成部1055、正弦値生成部1056、偶数次振幅演算部1059、加算器1053bを有する。
【0186】
振幅演算部1051、位相演算部1052、乗算器1054,1057,1058、余弦値生成部1055、正弦値生成部1056については既に第3の実施の形態で説明されたので、ここでは説明を省略する。
【0187】
但し本実施の形態においては、乗算器1054には奇数の次数dに代えて偶数の次数eが与えられる。よって乗算器1054は積d・αではなく、積e・αを出力する。
【0188】
また乗算器1057には、第3の実施の形態で示された余弦値cos(d・α)に代えて余弦値cos(e・α+k)が入力する。また、乗算器1058には、第3の実施の形態で示された正弦値sin(d・α)に代えて正弦値sin(e・α+k)が入力する。
【0189】
本実施の形態においてはかかる余弦値cos(e・α+k)、正弦値sin(e・α+k)を得るために、余弦値生成部1055、正弦値生成部1056にはいずれも値(e・α+k)が入力する。そして値(e・α+k)を得るために、乗算器1054から得られた積e・αと、シフト量kとが、加算器1053bで加算される。
【0190】
また乗算器1057,1058には、第3の実施の形態で示された積g(d)・Teに代えて偶数次成分の大きさTe(e)が入力する。第3の実施の形態では乗算器1057,1058に入力する積g(d)・Teは、矩形波に基づいて係数g(d)と出力トルクτeの基本波成分τe(1)の大きさTeとで定まった。しかしながら偶数次の成分で電流を抑制する場合には、後述する理由で更に複雑であり、出力トルクτeの0次成分τe(0)をも用いて計算する必要がある。
【0191】
かかる計算の必要性から、0次成分抽出部1050と、偶数次振幅演算部1059とが偶数次トルク指令生成部105tに設けられる。0次成分抽出部1050は出力トルクτeからその一定成分として0次成分τe(0)を抽出する。かかる抽出それ自体は周知の技術で実現されるので、説明を省略する。
【0192】
図23は偶数の次数eについてe=2のみとした場合の出力トルクの成分を示すグラフである。モータ電流のピーク値の低減に必要となる出力トルクτeの2次成分τe(2)の大きさは、出力トルクτeの0次成分τe(0)と基本波成分τe(1)との和の波形に依存する。2次成分τe(2)は値0を中心にして正負に等しい大きさTe(2)で変動する。他方、上記の和(τe(0)+τe(1))は正負で非対称となる。よって和(τe(0)+τe(1)+τe(2))の(正側の)最大値と(負側の)最小値の絶対値のいずれもが、和(τe(0)+τe(1))の(正側の)最大値と(負側の)最小値の絶対値のうちの大きい方に対して小さくなるように大きさTe(2)を定める必要がある。
【0193】
図23では和(τe(0)+τe(1))の(正側の)最大値(約2.2)と(負側の)最小値の絶対値(約0.2)のうちの大きい方は(正側の)最大値であり、和(τe(0)+τe(1)+τe(2))の(正側の)最大値(約1.85)と(負側の)最小値の絶対値(約0.6)のいずれもが、和(τe(0)+τe(1))の(正側の)最大値よりも小さい。
【0194】
但し
図23からも明らかなように、和(τe(0)+τe(1))は正側に大きく振れるので、2次成分τe(2)が極小値を採る位相は、和(τe(0)+τe(1))が極大値を採る位相と一致する必要がある。よってe=2においては上記シフト量kとしては値π/2が採用される。
【0195】
図24は大きさTe(2)の上限を示すグラフであり、横軸に0次成分τe(0)の大きさTe(0)を大きさTeを用いて表した。領域(I)は0≦Te(0)≦(1/4)・Teを満足し、領域(II)は(1/4)・Te≦Te(0)≦((4−√2)/8)・Teを満足し、領域(III)は((4−√2)/8)・Te≦Te(0)を満足する。領域(I)において大きさTe(2)の上限は大きさTe(0)に等しい。領域(III)において大きさTe(2)の上限は大きさTe/2√2に等しい。領域(II)において大きさTe(2)の上限は大きさTe(0),Teの関数であって、Te・Te/(8(Te−2・Te(0)))となる。
【0196】
大きさTe(2)が上述の様に説明された上限以下であれば、大きいほどモータ電流のピーク値が抑制される程度は顕著となるが、当該上限よりも大きい値を採るとモータ電流のピーク値は抑制されない可能性がある。よって大きさTe(2)は当該上限を採ることが望ましい。このようにして偶数次振幅演算部1059によって大きさTe(2)が求められる。
【0197】
図23ではTe=1.2,Te(0)=1.0であって、領域(III)について示された条件が満足されるので、Te(2)=Te/2√2(約0.43)が採用されている。
【0198】
なお、e=2,6,10,…であればシフト量kは値π/2を採ることが望ましく、e=4,8,12,…であればシフト量kは値3π/2を採ることが望ましい。
【0199】
出力トルクτeは、領域(III)の条件を満足することも多い。よって偶数次トルク指令生成部105tの構成としては、
図22で示された構成に代えて、他の構成を採用してもよい。
【0200】
図25は偶数次トルク指令生成部105tの他の構成を示すブロック図である。当該構成では、偶数の次数e(但しe=2)を入力し、0次成分抽出部1050及び偶数次振幅演算部1059に代えて係数1/2√2を乗数とする乗算器1053を採用した点で
図22の構成と相違するに留まるので、詳細な説明は省略する。
【0201】
なお、e=4であれば、当該係数には(1/4)・cos(3π/8)を採用することが望ましい。
【0202】
第6の実施の形態.
第5の実施の形態において、出力トルクτeの奇数次の脈動を低減する必要が無い場合もあり得る。かかる場合には、第5の実施の形態に示された構成から出力トルク奇数次出力部105Fを省略することができる。
【0203】
図26は本実施の形態において採用されるγc軸電流補正部105の構成を例示するブロック図である。γc軸電流補正部105は第5の実施の形態と同様に、角度脈動抽出部105a、出力トルク推定部105d、補正量計算部105h、基本波成分按分部105C、出力トルク偶数次出力部105Gを備える。但し上述の様に出力トルク奇数次出力部105Fは備えられない。
【0204】
図27は本実施の形態における補正量計算部105hの構成を例示するブロック図である。補正量計算部105hは、第5の実施の形態で示された合成値計算部11yと、合成値計算部11y1と、加算器11tと、二つのPI制御部11hを備えている。但し本実施の形態では第5の実施の形態とは異なり、奇数次の正弦値成分τes(d)及び余弦値成分τec(d)は扱われない。よって本実施の形態では一つのPI制御部11hと合成値計算部11y1とは、偶数次の、ここでは2次の偏差Δτes(2),Δτec(2)から合成値を得る。
【0205】
本実施の形態において補正量計算部105hは、奇数次の正弦値成分τes(d)及び余弦値成分τec(d)を扱わない。よって補正量計算部105hには奇数の次数dを入力する必要は無い(
図26参照)。
【0206】
本実施の形態であっても、モータ電流のピーク値が低減される効果が得られるのは、第5の実施の形態と同様である。
【0207】
第7の実施の形態.
第6の実施の形態ではモータ電流のピーク値を低減するために、出力トルクτeの偶数次成分が考慮された。更に、同じ目的で、出力トルクτeの奇数次成分を考慮することもできる。
【0208】
図28は、本実施の形態において採用されるγc軸電流補正部105の構成を例示するブロック図である。γc軸電流補正部105は第6の実施の形態と同様に、角度脈動抽出部105a、出力トルク推定部105d、補正量計算部105h、基本波成分按分部105C、出力トルク偶数次出力部105Gを備える。本実施の形態ではγc軸電流補正部105は更に、出力トルク奇数次出力部105E(第4の実施の形態参照)をも備える。
【0209】
図29は本実施の形態における補正量計算部105hの構成を例示するブロック図である。当該構成は、
図21に示された構成において、偏差Δτes(3),Δτec(3)に代えて、それぞれ正弦値成分τes(3)、余弦値成分τec(3)を入力している点でのみ相違する。
【0210】
このような構成においてモータ電流のピーク値が低減される効果が得られるのは、第5の実施の形態と同様である。
【0211】
但し、奇数次成分と偶数次成分との相互作用でモータ電流のピーク値が改善されるためには、状況は更に複雑になる。
【0212】
図30は、本実施の形態においてe=2,d=3のみを採用したときの出力トルクの成分を示すグラフである。出力トルクτeの2次成分τe(2)の存在により、モータ電流のピーク値の低減に必要となる出力トルクτeの3次成分τe(3)は、
図14に示された場合とは異なり、その極大値を採る位相が基本波成分τe(1)が極大値を採る位相と一致する。
【0213】
Te(0)≧K2・Teの場合に、2次成分τe(2)の大きさTe(2)及び3次成分τe(3)の大きさTe(3)は、それぞれ次式(15),(16)で計算される。
【0216】
図31は大きさTe(2),Te(3)の上限を示すグラフであり、横軸に0次成分τe(0)の大きさTe(0)を大きさTeを用いて表した。領域(IV)は0≦Te(0)≦(1/4)・Teを満足し、領域(V)は(1/4)・Te≦Te(0)≦K2・Teを満足し、領域(VI)はK2・Te≦Te(0)を満足する。領域(IV),(V)において大きさTe(2)の上限は大きさTe(0)に等しい。また領域(IV)においては大きさTe(3)は0であることが望ましい。領域(V)において大きさTe(3)の上限は大きさTe(0),Teの関数であって、[K3/(4・K2−1)]・(4・Te(0)−Te)となる。領域(VI)においては式(15),(16)で示された通りである。
【0217】
大きさTe(2),Te(3)が上述の様に説明された上限以下であれば、大きいほどモータ電流のピーク値が抑制される程度は顕著となるが、当該上限よりも大きい値を採るとモータ電流のピーク値は抑制されない可能性がある。よって大きさTe(2),Te(3)は当該上限を採ることが望ましい。
【0218】
このようなことから、本実施の形態において簡易的には領域(VI)の条件が満足されているとして、偶数次トルク指令生成部105tは
図25に示される構成を採用して係数1/2√2に代えて係数K2(≒0.553)を採用し、奇数次トルク指令生成部105rは
図13に示される構成を採用して係数g(d)(但しd=3)に代えて係数(−K3)(≒−0.171)を採用することができる(第3の実施の形態とは3次成分τe(3)の位相が180度異なるため、負号が必要となる)。
【0219】
あるいは領域(IV)(V)を考慮すれば、偶数次トルク指令生成部105tは
図22に示される構成を採用し、e=2として偶数次振幅演算部1059が大きさTe(2)を求める。奇数次トルク指令生成部105rは
図22に示される構成において、偶数の次数eに代えて奇数の次数d(=3)を採用する。そして偶数次振幅演算部1059に代えて大きさTe(3)を求めるブロックを採用する。但し、3次成分τe(3)の極大値を採る位相と基本波成分τe(1)が極大値を採る位相とを一致させるため、
図22に示されたシフト量kとしては値πを採用する。
【0220】
機械負荷が2シリンダ圧縮機のように加振トルクτvの基本波周波数がn=2に対応する場合、上記の説明における奇数dを整数2・dに、偶数eを整数2・eに読み替えることにより、第3〜第7の実施の形態が適用できることは明白である。
【0221】
第8の実施の形態.
図32は第8の実施の形態における電動機制御装置1において採用される一次磁束指令生成装置103の構成を例示するブロック図である。一次磁束指令生成装置103は、δc軸電流iδc、γc軸電流iγc、次数n、回転角θmを入力し、磁束制御部102に一次磁束指令Λδ*を出力する。一次磁束指令生成装置103は、
図1に例示された電動機制御装置1内に設けることができる。
【0222】
一次磁束指令生成装置103は、0次成分抽出部103a、n次成分抽出部103b、合成値計算部103c、加算器103d、及び磁束指令設定部103eを有する。
【0223】
0次成分抽出部103aは、式(8)の関数F(θm)としてγc軸電流iγcを採用したフーリエ変換を行い、γc軸電流iγcの0次成分iγc(0)として値a0を得る。
【0224】
n次成分抽出部103bも式(8)の関数F(θm)としてγc軸電流iγcを採用したフーリエ変換を行い、γc軸電流iγcのn次の正弦値成分iγcs(n)として値bnを、n次の余弦値成分iγcc(n)として値anを、それぞれ得る。
【0225】
合成値計算部103cは、正弦値成分iγcs(n)と余弦値成分iγcc(n)とを、合成値計算部11yと同様にして合成し、第2のγc軸電流補正値Δiγc2を得る。かかる合成は、γc軸電流iγcのn次成分の合成値を第2のγc軸電流補正値Δiγc2として得ることに相当する。
【0226】
加算器103dは0次成分iγc(0)と、第2のγc軸電流補正値Δiγc2とを加算し、第2の補正済みγc軸電流iγc2を得る。磁束指令設定部103eは、δc軸電流iδcと、第2の補正済みγc軸電流iγc2とに基づいて一次磁束指令Λδ*を計算する。
【0227】
磁束指令設定部103eの機能は、例えば特許文献2で公知であるが、例えば界磁磁束Λ0、同期電動機3のインダクタンスのd軸の成分Ld、q軸の成分Lqを導入して、次式によって一次磁束指令Λδ*の設定を行う。q軸はd軸に対して90度の電気角で進相する。
【0229】
式(17)を用いて決定された一次磁束指令Λδ*に基づいた一次磁束制御は、電流[I]の大きさに対するトルクを最大にする。界磁磁束Λ0、同期電動機3のインダクタンスは同期電動機3の機器定数であるので、これらは一次磁束指令生成装置103に記憶させておくことができる。
【0230】
角度β*は電流Iaがq軸に対して進相する角度であると言える。電流Iaは電流[I]の絶対値であると言える。一次磁束指令Λδ*は、第2の補正済みγc軸電流iγc2と、δc軸電流iδcと、界磁磁束Λ0と、同期電動機3のインダクタンスとに基づいて求められるといえる。
【0231】
あるいは式(17)の第3式の代わりに、電流[I]のd軸成分id、q軸成分iqを導入してIa=√(id・id+iq・iq)を採用してもよい。なお、この場合、負荷角φ、一次磁束の振幅Λδを導入して次式(18)の関係がある(特許文献2参照)。
【0233】
図33は式(17)によって得られる一次磁束指令Λδ*の、第2の補正済みγc軸電流iγc2に対する依存性を示すグラフ、換言すれば第2の補正済みγc軸電流iγc2によって設定される一次磁束指令Λδ*を示すグラフである。第2の補正済みγc軸電流iγc2の増加に対して、一次磁束指令Λδ*は単調に増加する。
【0234】
磁束指令設定部103eは式(17)の計算を行う代わりに、近似式を用いた計算を行っても良い。あるいは磁束指令設定部103eは予め計算結果を含むテーブルを格納しておき、逐次の計算の代わりに、テーブルを参照して一次磁束指令Λδ*を求めてもよい。
【0235】
上述のようにして、γc軸電流iγcのn次成分を考慮して一次磁束指令Λδ*を得ることにより、出力トルクτeや加振トルクτvのn次成分の影響を受けるγc軸電流iγcの変動に対応して、一次磁束制御を行うことができる。式(7)から認められるように、γc軸電流iγcは出力トルクτeに関するパラメータであり、特に一次磁束制御ではλγc=0となるように制御されるので、一次磁束のδc軸成分λδcの指令値となる一次磁束指令Λδ*を出力トルクτeに応じて設定する場合の主たるパラメータとなる(極対数Pは同期電動機3に固有であって固定値となるので)。
【0236】
一次磁束指令Λδ*を出力トルクτe(これは検出された値であるか推定値であるかを問わない)の0次成分及びn次成分から設定してもよい。この場合、一次磁束指令生成装置103における諸量は
図35の様に示される。ここで出力トルクτeの0次成分τe(0)、出力トルクτeのn次の正弦値成分τes(n)及び余弦値成分τec(n)、合成値Δτe2、補正後の出力トルクτe2を用いて表記した。
図36は補正後の出力トルクτe2から設定される一次磁束指令Λδ*を示すグラフである。磁束指令設定部103eはこのグラフもしくはこのグラフの元となる式に従って、一次磁束指令Λδ*を設定する。
【0237】
式(18)によれば、電流Iaも出力トルクτeを設定するパラメータであり、式(17)の第3式を考慮して、δc軸電流iδcも出力トルクτeを設定するパラメータである。よってδc軸電流iδcの0次成分及びn次成分から一次磁束指令Λδ*を設定してもよい。この場合、一次磁束指令生成装置103における諸量は
図37の様に示される。ここでδc軸電流iδcの0次成分iδc(0)、δc軸電流iδcのn次の正弦値成分iδcs(n)及び余弦値成分iδcc(n)、合成値Δiδc2、補正後のδc軸電流iδc2を用いて表記した。
図38は補正後のδc軸電流iδc2から設定される一次磁束指令Λδ*を示すグラフである。磁束指令設定部103eはこのグラフもしくはこのグラフの元となる式に従って、一次磁束指令Λδ*を設定する。なお、第2の補正済みγc軸電流iγc2と類似して、式(17)の第3式の代わりに、Ia=√(iδc2・iδc2+iγc・iγc)が採用される。
【0238】
あるいは一次磁束指令生成装置103において、
図32に示された0次成分抽出部103a、n次成分抽出部103b、合成値計算部103c、加算器103dと、
図37に示されたそれらとを対にして設け、第2の補正済みγc軸電流iγc2と補正後のδc軸電流iδc2とを得ることもできる。この場合、磁束指令設定部103eにおいて、電流Iaを√(iδc2・iδc2+iγc2・iγc2)として扱うことができる。
【0239】
同様に、負荷角φも出力トルクτeを設定するパラメータであることから、負荷角φの0次成分及びn次成分から一次磁束指令Λδ*を設定してもよい。この場合、一次磁束指令生成装置103における諸量は
図39の様に示される。ここで負荷角φの0次成分iδc(0)、負荷角φのn次の正弦値成分φs(n)及び余弦値成分φc(n)、合成値Δφ2、補正後の負荷角φ2を用いて表記した。
図40は補正後の負荷角φ2から設定される一次磁束指令Λδ*を示すグラフである。磁束指令設定部103eはこのグラフもしくはこのグラフの元となる式に従って、一次磁束指令Λδ*を設定する。
【0240】
第1の実施の形態で説明されたように、γc軸電流iγcは回転速度指令を補正するために出力トルクτeや加振トルクτvのn次成分に基づいた補正を受ける対象である。よって第1の実施の形態で採用される次数nと、第8の実施の形態で採用される次数nとは同じ値、あるいは同じ値の組を採用することが望ましい。これにより、速度指令補正装置12の動作に適した一次磁束指令Λδ*が与えられ、ひいては補正済み回転速度指令ωe*に整合した一次磁束制御が行われる。
【0241】
第1の実施の形態では出力トルクτeや加振トルクτvの脈動を抑制する為に、その脈動成分のみを用いて計算が行われていた。しかしながら、第8の実施の形態では、平均トルクに対応する一次磁束指令を得る必要があるため、0次成分iγc(0)も用いて第2の補正済みγc軸電流iγc2を計算し、これに基づいて一次磁束指令Λδ*を計算した。他のパラメータについても同様である。
【0242】
図41は、電動機制御装置1の変形の構成及びその周辺装置を例示するブロック図である。
図1に示された構成と比較して、電動機制御装置1においてハイパスフィルタ110の位置が異なっている。具体的にはハイパスフィルタ110はγc軸電流iγcからその直流分を除去する。加算器107はハイパスフィルタ110の出力に第1のγc軸電流補正値Δiγc1を加算して第1の補正済みγc軸電流iγc1を得る。第1の補正済みγc軸電流iγc1は定数倍部108で所定ゲインKm倍され、角速度補正量Δωe*が求められる。
【0243】
通常、ハイパスフィルタ110は第1のγc軸電流補正値Δiγc1を全て通過させるように設計される。よって
図41に示される変形は
図1の構成と等価である。
【解決手段】減算器109は、回転速度指令ωeo*から角速度補正量Δωe*を減算して補正済み回転速度指令ωe*を得る。加算器107は、γc軸電流iγcに第2軸電流補正値Δiγc1を加算して補正済み第2軸電流iγc1を得る。角度脈動抽出部105aは、同期電動機3の機械角についての回転角θmから、回転角θmの脈動分たる回転角差分Δθmを得る。n次成分抽出部105bは、回転角差分Δθmの、回転角θmの基本周波数のn次成分Δθms(n),Δθmc(n)を抽出する。トルク換算部105iでは加振トルクτvの推定値のn次成分τvs(n),τvc(n)を得る。補正量計算部105hは、n次成分τvs(n),τvc(n)を用いて第2軸電流補正値Δiγc1を得る。