【実施例】
【0065】
以下に、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0066】
粒子の平均長軸径、平均短軸径及び平均厚みは、以下の手順で測定を行った。まず、透過型電子顕微鏡を用いて粒子を観察し、個々の粒子が重ならず、ばらばらに分散している視野において、粒子約400個が存在するように倍率を調整し、写真を撮影した。次に得られた写真を縦横4倍に拡大した後に、粒子約350個について長軸径、短軸径、粒子径、又は厚みを、DIGITIZER(型式:KD 4620、グラフテック株式会社製)を用いてそれぞれ測定し、その平均値で粒子の平均長軸径、平均短軸径及び平均厚みを示した。写真上において、粒子の輪郭がはっきりしないものや、粒子同士が重なって個々の粒子を判別しにくいものは粒子径の測定から除外した。
【0067】
軸比は長軸径と短軸径との比の平均値で示し、板状比は粒子径と厚みの比の平均値で示した。
【0068】
比表面積値は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム株式会社製)を用いて、BET法により測定した値で示した。
【0069】
非磁性粒子粉末の粒子内部や粒子表面に存在する各種焼結防止剤、表面処理剤に含有される元素量のそれぞれは、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。また、六方晶フェライト粒子粉末のTi量、Al量及びFe量は、上記と同様にして測定した。
【0070】
非磁性粒子粉末の単結晶化度は、X線回折装置「RINT2500」(株式会社リガク製)を用いて、CuのKα線を線源とした面指数(1,1,0)面ピークの半値幅を求め、Scherrerの式より結晶子径(D
X)を計算し、平均板面径(D
TEM)と結晶子径(D
X)の比(D
TEM/D
X)で示した。
【0071】
磁性粒子粉末及び磁気記録媒体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの条件で測定した。
【0072】
塗料粘度は、得られた塗料の25℃における塗料粘度を、E型粘度計EMD−R(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度D=1.92sec
−1における値で示した。
【0073】
塗膜表面の光沢度は、「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角45°で測定した値であり、標準板光沢を86.3%としたときの値を%で示したものである。
【0074】
表面粗度Raは、「ZYGO NewView600S」(ZYGO株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さを測定した。
【0075】
塗膜の強度は、「オートグラフ」(株式会社島津製作所製)を用いて塗膜のヤング率を測定し、市販ビデオテープ「AV T−120(日本ビクター株式会社製)」のヤング率との相対値で表した。相対値が高いほど塗膜の強度が良好であることを示す。
【0076】
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体、非磁性下地層、磁気記録層及びバックコート層の各層の厚みは、デジタル電子マイクロメーターK351C(安立電気株式会社製)を用いて測定した。
【0077】
<実施例1−1:ヘマタイト粒子粉末の製造>
水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合アルカリ水溶液(Fe
2+に対するアルカリの総和量(2OH/Fe
2+):1.5)に、硫酸第一鉄水溶液(反応濃度:0.4mol/L)を添加した後、温度43℃、非酸化性雰囲気下で120分間攪拌することでエイジングを行い、鉄含有沈澱物を含む懸濁液を得た。次いで、当該懸濁液に過硫酸アンモニウム(Fe 1モルに対し1モル%)を添加した後、Airを通気しながら52℃で酸化反応を行い、生成した粒子を、常法により濾別、水洗することにより含水酸化鉄粒子を含むスラリーを得た。
【0078】
次いで、得られた含水酸化鉄粒子を含むスラリー(固形分濃度31g/L)550Lを加熱して温度を60℃とし、0.1mol/LのNaOH水溶液を加えて該スラリーのpH値を10.0に調整した。
【0079】
次に、上記スラリー中に、焼結防止剤として3号水ガラス 597gを徐々に加え、添加が終わった後、60分間熟成を行った。次に、このスラリーに0.1mol/Lの酢酸溶液を加え、スラリーのpH値を6.5に調整した。その後、該スラリー中に塩化ナトリウムを添加し、20分間攪拌を行った後、常法により、濾過、乾燥を行い、焼結防止処理された含水酸化鉄粒子粉末を得た。このとき、含水酸化鉄粒子粉末中に融剤として残存している塩化ナトリウムは30重量%であった。
【0080】
次いで、上記で得られた焼結防止処理された含水酸化鉄粒子粉末をセラミック製の回転炉に入れ、回転駆動させながら空気中300℃で60分間加熱脱水処理を行い、含水酸化鉄粒子粉末を脱水して、低密度ヘマタイト粒子粉末を得た。
【0081】
次に、上記低密度ヘマタイト粒子粉末13kgをセラミック製の回転炉に再度投入し、回転駆動させながら空気中600℃で30分間熱処理を行い、脱水孔の封孔処理をすることにより、実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を得た。
【0082】
得られた実施例1−1のヘマタイト粒子粉末は、粒子形状が針状であり、平均長軸径が91.8nm、平均短軸径が14.8nm、軸比が6.2、BET比表面積値が51.2m
2/g、単結晶化度が3.8、タップ密度(ρt)が0.96g/cm
3であった。
【0083】
<非磁性下地層1:非磁性下地層の製造>
前記実施例1−1の非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末10gと結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを固形分75%となるよう混合し、自動乳鉢を用いて30分間混練して混練物を得た。
【0084】
0.35mmφガラスビーズ105gと、上記で得られた混練物及び追加の結合剤樹脂溶液((スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及び(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1))70重量%)を下記の配合割合となるよう140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで12時間混合・分散を行った後のずり速度D=1.92sec
−1における塗料粘度が800〜1,200mPa・sとなるよう、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンを加えて固形分濃度を調整し、ペイントシェーカーで12時間混合・分散を行って塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、非磁性下地層用非磁性塗料を調整した。
【0085】
得られた非磁性下地層用非磁性塗料の組成は、下記の通りであった。
【0086】
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 13.2重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 8.2重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 3.0重量部、
潤滑剤(ブチルステアレート) 1.0重量部。
【0087】
得られた非磁性下地層用非磁性塗料の粘度は910mPa・sであり、固形分は28%であった。
【0088】
上記非磁性下地層用非磁性塗料を厚さ4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム上に塗布し、次いで、乾燥させることにより非磁性下地層を形成した。非磁性下地層の特性を評価するために、得られた塗布片の半分に対してカレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行った。
【0089】
得られた非磁性下地層1は、膜厚が1.3μm、塗膜の光沢度が236%、表面粗度Raが6.0nmであった。
【0090】
<実施例2−1:磁気記録媒体の製造>
磁性粒子(1)(種類:鉄を主成分とする金属磁性粒子、粒子形状:針状、平均一次長軸径:62.2nm、平均一次短軸径:13.5nm、軸比:4.6、BET比表面積値:63.4m
2/g、保磁力:197.6kA/m、飽和磁化値:125.6Am
2/kg)12g、研磨剤(商品名:AKP−50、住友化学株式会社製)1.2g、カーボンブラック 0.12g、結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合し、自動乳鉢を用いて30分間混練して混練物を得た。
【0091】
この混練物を0.35mmφガラスビーズ105g、追加結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで12時間混合・分散を行って磁性塗料を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、磁気記録層用磁性塗料を調整した。
【0092】
得られた磁気記録層用磁性塗料の組成は下記の通りであった。
【0093】
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 10.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 10.0重量部、
研磨剤(AKP−50) 10.0重量部、
カーボンブラック 1.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部、
シクロヘキサノン 65.8重量部、
メチルエチルケトン 164.5重量部、
トルエン 98.7重量部。
【0094】
磁気記録層用塗料を前記非磁性下地層の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥した。その後、60℃で24時間硬化反応を行い、12.7mm幅にスリットして実施例2−1の磁気記録媒体を得た。
【0095】
得られた磁気記録媒体は、磁気記録層の膜厚が0.27μm、保磁力が199.2kA/m、光沢度が224%、表面粗度Raが5.8nm、ヤング率が132であった。
【0096】
前記実施例1−1、非磁性下地層1及び実施例2−1に従って、前駆体である含水酸化鉄粒子粉末、非磁性下地層用非磁性粒子粉末、非磁性下地層及び磁気記録媒体を作製した。各製造条件及び得られた前駆体、非磁性下地層用非磁性粒子粉末、非磁性下地層及び磁気記録媒体の諸特性を示す。
【0097】
<非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造>
実施例1−2〜1−6及び比較例1−1:
含水酸化鉄粒子粉末を製造する際の条件及びヘマタイト粒子粉末を製造する際の条件を種々変化させた以外は、実施例1−1と同様にして非磁性粒子粉末を得た。
【0098】
このときの製造条件を表1、2に、得られた非磁性下地層用非磁性粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
<表面処理された非磁性下地層用非磁性粒子粉末の製造>
実施例1−9:
実施例1−1で得られたヘマタイト粒子粉末12kgを、凝集を解きほぐすために、純水70Lに攪拌機を用いて邂逅し、更に、「TKパイプラインホモミクサー」(製品名、特殊機化工業株式会社製)を3回通して実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含むスラリーを得た。
【0103】
続いて、この実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含むスラリーを横型サンドグラインダー「マイティーミルMHG−1.5L」(製品名、井上製作所株式会社製)を用いて、軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせて、実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含む分散スラリーを得た。
【0104】
得られた実施例1−1のヘマタイト粒子粉末を含む分散スラリー濃度を62g/Lとし、スラリーを180L採取した。このスラリーを攪拌しながら、6mol/LのNaOH水溶液を加えてスラリーのpH値を13.4に調整した。次に、このスラリーを攪拌しながら加熱して95℃まで昇温し、その温度で3時間保持した。
【0105】
次に、このスラリーをデカンテーション法により水洗し、pH値が10.5のスラリーとした。この時点でのヘマタイト粒子粉末の重量は10.5kgであった。
【0106】
次に、上記アルカリ性スラリー中に、アルミン酸ナトリウム 420gを徐々に加え、20分間熟成を行った。次に、このスラリーに0.1mol/Lの酢酸溶液を加え、スラリーのpH値を9.1に調整した。その後、常法により、濾別、水洗、乾燥を行い、表面処理された非磁性粒子粉末を得た。
【0107】
このときの処理条件を表3に、得られた非磁性下地層用非磁性粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0108】
実施例1−10〜1−16:
非磁性粒子の種類、表面処理添加物の種類及び量を種々変化させた以外は、実施例1−9と同様にして非磁性下地層用非磁性粒子粉末を得た。
【0109】
このときの製造条件を表4に、得られた非磁性下地層用非磁性粒子粉末の諸特性を表5に示す。
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
<非磁性下地層の製造>
非磁性下地層2〜10及び比較非磁性下地層1:
非磁性下地層用非磁性粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、非磁性下地層1と同様にして非磁性下地層を得た。
【0113】
このときの製造条件、及び得られた非磁性下地層の諸特性を表6に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
<磁気記録媒体の製造>
実施例2−2〜2−10及び比較例2−1:
非磁性下地層の種類及び磁性粒子の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にして磁気記録媒体を製造した。
【0116】
尚、使用した磁性粒子(1)〜(3)の諸特性を表7に示す。
【0117】
【表7】
【0118】
このときの製造条件及び得られた磁気記録媒体の諸特性を表8に示す。
【0119】
【表8】