特許第6103178号(P6103178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103178
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】蓄電装置、及び蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20170316BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20170316BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01G11/52
   H01M2/26 A
   H01M2/16 P
   H01M2/18 R
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-194312(P2012-194312)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-49419(P2014-49419A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】田島 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】木下 恭一
(72)【発明者】
【氏名】篠田 英明
(72)【発明者】
【氏名】三好 学
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−204585(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/096070(WO,A1)
【文献】 特開平07−335246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04−10/0587
H01M 2/14− 2/18
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の表面に活物質層を形成した正極と負極とがセパレータを間に介在させた状態で層状に重なる積層型の電極組立体と、前記電極組立体を収容するとともに電極端子が固定されたケースと、を備えた蓄電装置であって、
前記正極の縁部のうち少なくとも1つの縁部には、該縁部に沿って、前記活物質層が形成されておらず前記電極端子と電気的に接続される正極非形成部が設けられており、該正極非形成部の少なくとも一部は、前記セパレータを間に介在させた状態で、前記負極において前記活物質層が形成された負極形成部と対向しており、
前記セパレータにおいて、少なくとも前記正極非形成部と前記負極形成部との間に挟まれる部分には、絶縁性樹脂で覆われた、又は前記絶縁性樹脂が含侵された補強部が形成されており、
前記絶縁性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであり、
前記補強部の厚さは、前記正極における活物質層の厚さと、前記セパレータにおいて前記補強部が設けられていない部分の厚さの和と同一であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記セパレータにおいて前記補強部が形成された縁部には、前記正極非形成部が設けられた縁部に沿って延びる屈曲部と、該屈曲部から、前記正極の縁部のうち前記正極非形成部が設けられた縁部とは反対側の縁部に向かって延びるとともに、前記正極非形成部と前記負極形成部との間に挟まれる折返し部と、を有する請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記正極非形成部には、前記電極端子と電気的に接続されるタブ部を含み、
前記補強部は、前記セパレータのうち前記タブ部と重なる部分を除いた部分に設けられている請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記セパレータは、絶縁性の樹脂材料を一軸延伸することによって形成されており、
前記電極組立体において前記セパレータは、その延伸方向が、前記正極非形成部が設けられた縁部の延びる方向と一致された状態で積層されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記蓄電装置は二次電池である請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法であって、
前記正極における前記正極非形成部と、前記負極における前記負極形成部との間に、前記セパレータに設けられた前記補強部を配置した状態で前記正極と前記負極とを交互に積層する積層工程を含むことを特徴とする蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置、及び蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)などの車両に搭載される蓄電装置としては、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素二次電池などがよく知られている。これらの二次電池の中には、金属箔の表面に活物質を含む活物質層を形成した正極及び負極を、間にセパレータを介在させた状態で巻回して捲回型の電極組立体を形成するとともに、該電極組立体をケースに収容したものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
そして、特許文献1では、正極において活物質層が形成されていない非形成部のうち、負極において活物質層が形成された形成部と対向する部分に絶縁性樹脂膜を設けることにより、正極の金属箔と負極の活物質層とが接触することを抑制し、二次電池としての安全性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−302877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次電池の中には、正極と負極とを、間にセパレータを介在させた状態で交互に積層した積層型の電極組立体を有するとともに、該電極組立体の縁部に突設された集電タブ群とケースに固定された電極端子とを電気的に接続したものがある。ここで集電タブ群は、正極や負極の縁部から突出する集電タブが層状に重なった構造を有していることから、電極端子と集電タブ群とは、該集電タブ群を構成する複数層の集電タブを積層方向に寄せ集めた状態で電極端子に接続されているのが一般的である。
【0006】
このため、複数層の集電タブを寄せ集めて電極端子に接続するときに、セパレータに負荷がかかることで、該セパレータが破損する可能性がある。また、積層型の電極組立体は、充放電に伴って正極及び負極の積層方向へ膨張及び収縮を繰り返すことから、一端が電極端子に固定される各集電タブと共に、正極と負極との間に介在されるセパレータにも負荷がかかり、これによりセパレータが破損する可能性がある。
【0007】
この発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、セパレータが破損することを抑制できる蓄電装置、及び蓄電装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、金属箔の表面に活物質層を形成した正極と負極とがセパレータを間に介在させた状態で層状に重なる積層型の電極組立体と、前記電極組立体を収容するとともに電極端子が固定されたケースと、を備えた蓄電装置であって、前記正極の縁部のうち少なくとも1つの縁部には、該縁部に沿って、前記活物質層が形成されておらず前記電極端子と電気的に接続される正極非形成部が設けられており、該正極非形成部の少なくとも一部は、前記セパレータを間に介在させた状態で、前記負極において前記活物質層が形成された負極形成部と対向しており、前記セパレータにおいて、少なくとも前記正極非形成部と前記負極形成部との間に挟まれる部分には、絶縁性樹脂で覆われた、又は前記絶縁性樹脂が含侵された補強部が形成されており、前記絶縁性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレンであり、前記補強部の厚さは、前記正極における活物質層の厚さと、前記セパレータにおいて前記補強部が設けられていない部分の厚さの和と同一であることを要旨とする。
【0009】
これによれば、セパレータにおいて、少なくとも正極のうち活物質層が形成されていない正極非形成部と、負極のうち活物質層が形成された負極形成部との間に挟まれる部分には、絶縁性樹脂で覆われた、又は絶縁性樹脂が含侵された補強部が形成されている。このため、セパレータにおいて、正極非形成部と負極形成部とに挟まれる部分の強度を向上させ、正極非形成部と電極端子とを接続するときにかかる負荷や、充放電に伴う電極組立体の膨張及び収縮によって付与される負荷によってセパレータが破損することを抑制できる。
【0010】
また、補強部を構成する絶縁性樹脂は、耐熱性が高いポリテトラフルオロエチレンである。したがって、セパレータにおいて、正極非形成部と負極形成部との間に挟まれる部分の耐熱性を高め、例えば蓄電装置の温度上昇に伴ってセパレータが収縮し破損することを抑制できる。
また、補強部の厚さは、正極における活物質層の厚さと、セパレータにおいて補強部が設けられていない部分の厚さの和と同一である。これによれば、正極非形成部と負極形成部との間に補強部を配置することによって、正極非形成部及び負極形成部とセパレータとの間に隙間が生じることを抑制できる。したがって、セパレータが正極非形成部と負極形成部との間に挟み込まれることにより、例えば蓄電装置の温度上昇に伴う収縮などの変形が抑制され、これによりセパレータが破損することを抑制できる。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の蓄電装置において、前記セパレータにおいて前記補強部が形成された縁部には、前記正極非形成部が設けられた縁部に沿って延びる屈曲部と、該屈曲部から、前記正極の縁部のうち前記正極非形成部が設けられた縁部とは反対側の縁部に向かって延びるとともに、前記正極非形成部と前記負極形成部との間に挟まれる折返し部と、を有する。これによれば、屈曲部から延びる折返し部によってセパレータの強度をさらに向上させ、セパレータが破損することを抑制できる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の蓄電装置において、前記正極非形成部には、前記電極端子と電気的に接続されるタブ部を含み、前記補強部は、前記セパレータのうち前記タブ部と重なる部分を除いた部分に設けられている。
【0015】
これによれば、セパレータのうちタブ部と重なる部分には補強部が設けられていないことから、タブ部と電極端子とを接続し難くなることを抑制できる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電装置において、前記セパレータは、絶縁性の樹脂材料を一軸延伸することによって形成されており、前記電極組立体において前記セパレータは、その延伸方向が、前記正極非形成部が設けられた縁部の延びる方向と一致された状態で積層されている。
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄電装置において、前記蓄電装置は二次電池である。これによれば、二次電池としてセパレータが破損することを抑制できる。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄電装置の製造方法であって、前記正極における前記正極非形成部と、前記負極における前記負極形成部との間に、前記セパレータに設けられた前記補強部を配置した状態で前記正極と前記負極とを交互に積層する積層工程を含むことを要旨とする。
【0017】
これによれば、正極非形成部と負極形成部との間に、セパレータに設けられた補強部を配置した状態で正極と負極とを交互に積層することから、正極非形成部と電極端子とを接続するときにかかる負荷や、充放電に伴う電極組立体の膨張及び収縮によって付与される負荷によってセパレータが破損することを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、セパレータが破損することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】リチウムイオン二次電池を模式的に示す断面図。
図2】電極組立体を模式的に示す斜視図。
図3】セパレータを模式的に示す正面図。
図4】電極組立体を拡大して模式的に示す断面図。
図5】別の実施形態におけるセパレータを模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、例えば乗用車両や産業車両などの車両に搭載される蓄電装置としてのリチウムイオン二次電池(以下「二次電池」と示す)10は、ケース11に電極組立体12が収容されている。
【0021】
ケース11は、電極組立体12を収容する有底矩形箱状の本体部材11aと、該本体部材11aの開口部を閉塞する矩形板状の蓋部材11bとから構成されている。本体部材11a、及び蓋部材11bは、例えばステンレスやアルミニウムなどの金属製である。
【0022】
ケース11内には、電解質として非水電解液13が充填されている。ケース11を構成する壁の1つとなる蓋部材11bには、正極端子15、及び負極端子16が固定されており、外部に向かって突出している。また、電極組立体12は、絶縁性を有する樹脂シート14に覆われた状態でケース11に収容されている。
【0023】
図2に示すように、電極組立体12は、正極(電極)としての正極シート18と、正極シート18とは極性が異なる負極(電極)としての負極シート19と、正極シート18と負極シート19との間を絶縁する矩形シート状のセパレータ20とを有する。そして、電極組立体12は、複数の正極シート18、及び複数の負極シート19が、間にセパレータ20を介在させた状態で交互に積層され、これらが層状に重なる積層型の電極組立体である。以下の説明で「積層方向」という場合には、電極組立体12における正極シート18及び負極シート19の積層方向を意味するものとする(矢印Yで示す)。
【0024】
負極シート19は、負極金属箔(本実施形態では銅箔)21と、該負極金属箔21の両面に負極活物質を含む活物質合剤を塗布し、乾燥させて形成された負極活物質層22とを有する。負極活物質層22は、負極金属箔21において、各端子15,16側に設けられる第1負極縁部19aから反対側の第2負極縁部19bまで一定幅(本実施形態では全幅)で、各負極縁部19a,19bが延びる方向の両端に位置する一方の縁部から他方の縁部までの全幅にわたって形成されている。以下、負極シート19において、負極活物質層22が形成された部分を負極形成部22aと示す。
【0025】
また、負極金属箔21の第1負極縁部19aには、負極活物質層22が形成されていない部分である負極非形成部23が負極集電タブ24として突出している。負極金属箔21の表面において、第2負極縁部19bと負極集電タブ24との間であって、負極集電タブ24の基端部には、負極形成部22aと負極非形成部23との境界である負極境界部19cが設けられる。
【0026】
そして、負極集電タブ24は、電極組立体12を構成する各負極シート19において同位置に同一形状で形成されている。このため、図1に示すように、電極組立体12の縁部のうち1つの縁部12aには、複数の負極集電タブ24が層状に重なった負極集電タブ群24aが突設されている。この負極集電タブ群24aには、複数(複数層)の負極集電タブ24(負極非形成部23)を積層方向に寄せ集めた状態で、負極端子16が溶接などにより電気的に接続される。
【0027】
また、正極シート18は、正極金属箔25と、該正極金属箔25の両面に正極活物質を含む活物質合剤を塗布し、乾燥させて形成された正極活物質層26とを有する。正極活物質層26は、正極金属箔25において、各端子15,16側に設けられる第1正極縁部18aとは反対側の第2正極縁部18bから一定幅で、各正極縁部18a,18bが延びる方向の両端に位置する一方の縁部から他方の縁部までの全幅にわたって形成されている。以下、正極シート18において、正極活物質層26が形成された部分を正極形成部26aと示す。なお、正極金属箔25の厚さは、例えば15μm〜20μmであり、正極活物質層26の厚さは、例えば30μm〜45μmである。
【0028】
また、正極金属箔25には、第1正極縁部18aから第2正極縁部18bに向かって一定幅で、各正極縁部18a,18bが延びる方向の両端に位置する一方の縁部から他方の縁部までの全幅にわたって、正極活物質層26が形成されていない部分である正極非形成部27が設けられている。即ち、第1正極縁部18aと第2正極縁部18bとの間には、正極形成部26aと正極非形成部27との境界である正極境界部18cが設けられる。そして、正極シート18の第1正極縁部18aには、正極集電タブ28が突出している。正極集電タブ28は、正極非形成部27を構成する正極金属箔25の一部である。
【0029】
正極集電タブ28は、電極組立体12を構成する各正極シート18において同位置に同一形状で形成されている。なお、正極集電タブ28は、正極シート18と負極シート19を積層する場合に負極集電タブ24と重ならない位置に設けられている。このため、図1に示すように、電極組立体12の縁部12aには、負極集電タブ群24aとは異なる部分に、複数の正極集電タブ28が層状に重なった正極集電タブ群28aが突設される。この正極集電タブ群28aには、複数(複数層)の正極集電タブ28(正極非形成部27)を積層方向に寄せ集めた状態で、正極端子15が溶接などにより電気的に接続される。
【0030】
また、図3に示すように、積層方向から見た場合において、正極集電タブ28を除く正極金属箔25は、負極集電タブ24を除く負極金属箔21よりも小さく、且つ正極シート18の正極形成部26aは、負極シート19の負極形成部22aよりも小さい。そして、積層方向から見た場合において、第1正極縁部18aと第1負極縁部19aとは、重なっている。なお、積層方向から見た場合において、負極集電タブ24を除く負極金属箔21、及び正極集電タブ28を除く正極金属箔25は、セパレータ20よりも小さい。
【0031】
このため、電極組立体12において、正極集電タブ28を除く正極金属箔25は、積層方向から見た場合に、その全体が負極シート19の負極形成部22aに重なる。即ち、正極非形成部27のうち、正極集電タブ28を除いた部分は、セパレータ20を間に介在させた状態で負極シート19の負極活物質層22と対向する対向部27aとなる。
【0032】
次に、セパレータ20について詳しく説明する。
図3に示すように、セパレータ20は、絶縁性の樹脂材料が一軸延伸された微細な空孔を有するシート状の多孔質膜(多孔質体)である。電極組立体12においてセパレータ20は、その延伸方向と各縁部18a,19aの延びる方向とを一致させた状態で積層されている。本実施形態のセパレータ20は、例えばポリエチレンから形成されており、その融点は例えば100℃〜130℃である。セパレータ20の厚さは、例えば15μm〜20μmである。
【0033】
セパレータ20には、各端子15,16側の第1縁部20aに沿って、該第1縁部20aの延びる方向の両端に位置する第3縁部20dから他方の第4縁部20eまでの全幅にわたって、セパレータ20に絶縁性樹脂を含侵させた補強部としての樹脂複合部30が設けられている。即ち、セパレータ20には、第1縁部20aとは反対側の第2縁部20bから一定幅で、第3縁部20dから第4縁部20eまでの全幅にわたって樹脂複合部30が形成されていない。このため、各縁部20a,20bの間には、樹脂複合部30と、PTFE繊維が含侵されていない部分とのセパレータ境界部20cが設けられる。
【0034】
図3及び図4に示すように、セパレータ20において樹脂複合部30が形成された部分には、正極非形成部27(対向部27a)と負極形成部22aとの間に挟まれる部分の全体が含まれているとともに、積層方向から見た場合において、正極境界部18cとセパレータ境界部20cとは重なっている。樹脂複合部30の厚さは、セパレータ20において樹脂複合部30が形成されていない部分の厚さと同一(又は略同一)であり、該厚さと、正極活物質層26の厚さとの合計よりも薄い。
【0035】
また、樹脂複合部30に用いられる絶縁性樹脂は、平均粒子径が例えば0.15μm〜0.35μmであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の微細な繊維状粒子(以下「PTFE繊維」と示す)である。なお、本明細書における「平均粒子径」は、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を意味する。また、PTFEの融点は、例えば327℃〜340℃であり、セパレータ20を形成する樹脂材料の融点よりも高い。
【0036】
また、樹脂複合部30では、PTFE繊維がセパレータ20の空孔内に入り込んでいるとともに、該PTFE繊維同士がセパレータ20の空孔内において相互に絡まり合った三次元構造体を形成している。そして、セパレータ20において、樹脂複合部30が形成された部分の空孔は、PTFE繊維によって充填され、閉塞されている。
【0037】
このため、樹脂複合部30では、セパレータ20を構成する樹脂材料と、PTFE(PTFE繊維)とが複合材を形成していることから、該樹脂複合部30における機械的強度は、セパレータ20における樹脂複合部30が形成されていない部分の機械的強度と比較して高くなっている。
【0038】
次に、本実施形態の二次電池10の作用について説明する。
図4に示すように、セパレータ20において、正極金属箔25が露出する正極非形成部27と、負極形成部22aとに挟まれる部分には、樹脂複合部30が第3縁部20dから第4縁部20eまで延設されている。これにより、セパレータ20において、正極非形成部27と負極形成部22aとに挟まれる部分の強度を向上させることができる。
【0039】
このため、正極集電タブ群28aと正極端子15とを接続するために、複数(複数層)の正極集電タブ28を積層方向(矢印Yで示す)に寄せ集めるときの負荷によって、セパレータ20のうち、正極非形成部27と負極形成部22aとの間に挟まれる部分が破損することを好適に抑制できる。負極集電タブ群24aと負極端子16との接続についても同様である。
【0040】
また、本実施形態では、充放電に伴う電極組立体12の膨張及び収縮によって、負極集電タブ24や正極集電タブ28と共に付与される負荷によってセパレータ20が破損することを抑制できる。特に、本実施形態の樹脂複合部30は、対向部27aの全体を覆う大きさに形成されていることから、正極非形成部27と負極活物質層22とがセパレータ20の破損により接触することをより抑制できる。
【0041】
これらのことは、本発明の二次電池10と、樹脂複合部30を有さないセパレータを用いた二次電池(比較例)とについて、所定回数の充放電を繰り返した後の容量維持率や、振動試験後に短絡の発生率を評価することにより裏付けられる。
【0042】
具体的に、満充電と、0.2Cの定電流での放電を10回繰り返した後、本発明の二次電池10と、比較例の二次電池について容量維持率をそれぞれ評価した。なお、容量維持率は、二次電池の製作後、最初の満充電時における容量(Ah)を100%とする。その結果、本発明の二次電池10では、10回の充放電後における容量維持率が約100%であったのに対して、比較例では約93%に留まった。
【0043】
また、振動試験は、「JIS1601 2種A」に規定され車載では3Gの条件であるが、サスペンションのないフォークリフトでは、33Hz、且つ29.4m/sの振動を、上下4時間、左右2時間、及び前後2時間にわたって加えた後に、短絡の発生率を評価した。その結果、本発明の二次電池10では、短絡の発生率が0%であったのに対して、比較例では、短絡の発生率が約5.3%であった。
【0044】
これらの結果から、比較例では、充放電に伴う電極組立体の膨張及び収縮や、二次電池に加えられる振動によって、各集電タブ群24a,28aをそれぞれ各端子15,16に接続するときに生じたセパレータ20の微細な破損が顕在化したり、新たにセパレータ20が破損したりすることで、容量維持率の低下や、短絡が発生したものと考えられる。
【0045】
これに対して、本実施形態の二次電池10では、容量維持率の低下や短絡が発生していないことから、各集電タブ群24a,28aをそれぞれ各端子15,16に接続するときや、二次電池10に加えられる振動によって、セパレータ20が破損することを抑制できていることが確認された。
【0046】
また、本実施形態では、樹脂複合部30においてセパレータ20の空孔をPTFE繊維で閉塞させ、樹脂複合部30の強度をより向上させている。なお、セパレータ20のうち、正極非形成部27と負極形成部22aとに挟まれる部分では、正極活物質層26と負極活物質層22とが対向していないことから、リチウムイオンが通過しないことに起因した金属リチウムの析出などといった問題が発生し難い。
【0047】
また、樹脂複合部30には、耐熱性を有する樹脂材料としてポリテトラフルオロエチレンが用いられている。このため、セパレータ20のうち、正極非形成部27と負極形成部22aとに挟まれる部分の耐熱性を高めることできる。
【0048】
ここで、図4に示すように、正極非形成部27(正極金属箔25)と負極活物質層22との間には、セパレータ20の厚さに加えて、正極活物質層26の厚さ分だけスペースがある。このため、正極非形成部27と負極形成部22aとの間では、正極形成部26aと負極形成部22aとの間のように、セパレータ20が挟持されていない。そして、前述のように、本実施形態のセパレータ20は、一軸延伸によって製造されている。
【0049】
このため、樹脂複合部30を有さないセパレータ20では、正極非形成部27と負極形成部22aとの間において、温度上昇に伴って延伸方向に収縮(カール)することにより、セパレータ20が正極非形成部27と負極形成部22aとの間に部分的に配設されなくなり、絶縁性が低下する虞がある。
【0050】
これに対して、本実施形態のセパレータ20では、耐熱性の高いPTFE繊維を用いた樹脂複合部30を設けることにより、このような樹脂複合部30を設けない構成と比較して、二次電池10の温度上昇に伴う収縮(カール)によって絶縁性が低下することを抑制できる。
【0051】
次に、二次電池10の製造方法について説明する。
まず、帯状のセパレータ20を矩形シート状に切断するとともに、正極シート18の正極非形成部27と、負極シート19の負極形成部22aとの間に配置する部分に、平均粒子径が例えば0.15μm〜0.35μmであるPTFE繊維を例えば60重量%となるように所定の溶媒(例えば水)に分散させた分散液を含侵させる。その後、PTFE繊維の分散液を含侵させたセパレータ20を乾燥させることにより、セパレータ20の空孔内に入り込んだPTFE繊維に三次元構造体を形成させ、空孔がPTFE繊維で閉塞された樹脂複合部30が完成される。
【0052】
次に、セパレータ20と、別の工程で用意された正極シート18、及び負極シート19とを積層して電極組立体12を形成する(積層工程)。このとき、正極シート18における正極非形成部27と、負極シート19の負極形成部22aとの間に、セパレータ20に設けられた樹脂複合部30を配置した状態とし、正極シート18と負極シート19とを交互に積層する。
【0053】
その後、樹脂シート14で覆った電極組立体12をケース11に収容するとともに、各集電タブ群24a,28aをそれぞれ端子15,16に接続し、さらに非水電解液13を充填して二次電池10が完成される。このとき、正極集電タブ群28aと正極端子15とを接続するために、複数の正極集電タブ28を積層方向に寄せ集める力によって、セパレータ20のうち、正極非形成部27と負極形成部22aとの間に挟まれる部分が破損することを好適に抑制できる。負極集電タブ群24a側についても同様である。
【0054】
したがって、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)セパレータ20において、正極非形成部27と負極形成部22aとに挟まれる部分には樹脂複合部30が形成されている。このため、セパレータ20において正極非形成部27と負極形成部22aとに挟まれる部分の強度を向上させ、各集電タブ群24a,28aとそれぞれ端子15,16とを接続するときにかかる負荷や、充放電に伴う電極組立体12の膨張及び収縮によって付与される負荷によってセパレータ20が破損することを抑制できる。
【0055】
(2)特に、本実施形態では樹脂複合部30により対向部27aの全体を覆っている。したがって、よりセパレータ20が破損することを抑制できる。
(3)樹脂複合部30は、耐熱性が高いPTFE繊維を含侵させて形成されている。したがって、セパレータ20において、正極非形成部27と負極形成部22aとに挟まれる部分の耐熱性を高め、例えば二次電池10の温度上昇に伴う収縮によってセパレータ20が破損することを抑制できる。
【0056】
(4)二次電池10として、充放電に伴ってセパレータ20が破損することを抑制できる。
(5)二次電池10(電極組立体12)は、正極非形成部27と負極形成部22aとの間に、樹脂複合部30を配置した状態で正極シート18と負極シート19とを交互に積層して形成される。このため、各集電タブ群24a,28aとそれぞれ端子15,16とを接続するときにかかる負荷や、充放電に伴う電極組立体12の膨張及び収縮によって付与される負荷によってセパレータ20が破損することを抑制できる。
【0057】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
図5に示すように、セパレータ20において樹脂複合部30が形成された縁部20aには、正極非形成部27が設けられた第1正極縁部18aに沿って延びる屈曲部40と、該屈曲部40から、正極シート18において第1正極縁部18aとは反対側の第2正極縁部18bに向かって延びるとともに、正極非形成部27と負極形成部22aとに挟まれる折返し部41を有していてもよい。この場合、樹脂複合部30は、少なくとも折返し部41に形成されておればよく、積層方向から見た場合に、セパレータ20において折返し部41を含めて折返し部41と重なる部分に形成されていてもよい。これによれば、屈曲部40から延びる折返し部41によってセパレータ20の強度をさらに向上させ、セパレータ20が充放電に伴って破損することを抑制できる。
【0058】
○ 補強部は、セパレータ20の表面に絶縁性樹脂を塗布することにより、該絶縁性樹脂でセパレータ20を覆って形成してもよい。また、補強部は、絶縁性樹脂をセパレータ20に含侵してもよい。
【0059】
○ セパレータ20の表面を絶縁性樹脂で覆って補強部を形成する場合、樹脂複合部30の厚さは、正極シート18における正極活物質層26の厚さと、セパレータ20において樹脂複合部30が設けられていない部分の厚さの和と同一又は略同一であってもよい。これによれば、正極非形成部27と負極形成部22aとの間に樹脂複合部30を配置することによって、正極非形成部27及び負極形成部22aとセパレータ20との間に隙間が生じることを抑制できる。したがって、セパレータ20が正極非形成部27と負極形成部22aとの間に挟み込まれることにより、例えば二次電池10の温度上昇に伴う収縮などの変形が抑制され、これによりセパレータ20が破損することを抑制できる。
【0060】
○ 樹脂複合部30は、セパレータ20のうち正極集電タブ28と重なる部分を除いた部分に設けられているとよい。これによれば、正極集電タブ28と重なる部分には樹脂複合部30が設けられていないことから、強度の高い樹脂複合部30によって正極集電タブ28と正極端子15とを接続し難くなることを抑制できる。特に、上記実施形態では耐熱性の高いPTFEを用いていることから、例えば溶接によって接続し難くなることを好適に抑制できる。
【0061】
○ セパレータ20のうち正極非形成部27(対向部27a)と負極形成部22aとの間に挟まれる部分の全体に樹脂複合部30が形成されていなくてもよい。即ち、樹脂複合部30は、少なくともセパレータ20のうち正極非形成部27と負極形成部22aとの間に挟まれる部分の一部に形成されておればよい。
【0062】
○ セパレータ境界部20cと正極境界部18cとは重なっていなくてもよい。
○ 樹脂複合部30は、第2縁部20bから第1縁部20aに向かって絶縁性樹脂の単位面積当りの塗布量、又は含侵量を多くしてもよい。これによれば、第1縁部20a側であるほど強度を向上できる。
【0063】
○ セパレータ20は、ロール状のセパレータ20に樹脂複合部30を設けてから、矩形シート状に切断してもよい。
○ 樹脂複合部30を構成する絶縁性樹脂を変更してもよい。樹脂複合部30に用いることができる絶縁性樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−塩化3フッ化エチレン(CTFE)共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンフッ素ゴム、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンフッ素ゴム、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルフッ素ゴムなどのフッ素系ポリマーなどが挙げられる。また、前記フッ素系の樹脂の他にも、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、ベークライトなどを使用してもよい。具体的には、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックスなどが挙げられる。これらの絶縁性樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
○ 樹脂複合部30を構成する絶縁性樹脂は、耐熱性の高い樹脂材料でなくてもよい。
○ セパレータ20を形成する樹脂材料を変更してもよい。例えば、ポリプロピレンや、ポリアミドイミド(PAI)にしてもよく、異なる樹脂材料から形成された複数の多孔質膜(シート)を積層した多層構造のセパレータ20にしてもよい。
【0065】
○ 負極金属箔21、及び正極金属箔25を構成する金属を変更してもよい。
○ 正極境界部18cは、正極金属箔25の表面において、正極集電タブ28上に設けられていてもよく、第1正極縁部18aと一致されていてもよい。
【0066】
○ 負極境界部19cは、負極金属箔21の表面において、負極集電タブ24上に設けられていてもよく、第1負極縁部19aと第2負極縁部19bとの間に設けられていてもよい。
【0067】
○ 電極組立体12は、正極シート18、及び負極シート19を帯状に形成するとともに、間に帯状のセパレータ20を介在させた状態で捲回した捲回型の電極組立体としてもよい。
【0068】
○ 正極シート18及び負極シート19は、片面に活物質を塗布して形成されていてもよい。
○ ニッケル水素二次電池や、電気二重層キャパシタなどの蓄電装置に具体化してもよい。
【0069】
○ 車両以外に用いられる蓄電装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…リチウムイオン二次電池(二次電池、蓄電装置)、11…ケース、12…電極組立体、15…正極端子(電極端子)、16…負極端子(電極端子)、18…正極シート(正極)、18a…第1正極縁部(縁部)、18b…第2正極縁部(縁部)、19…負極シート(負極)、20…セパレータ、20d…第3縁部(縁部)、20e…第4縁部(縁部)、21…負極金属箔(金属箔)、22…負極活物質層、22a…負極形成部、24…負極集電タブ(タブ部)、25…正極金属箔(金属箔)、26…正極活物質層、27…正極非形成部、28…正極集電タブ(タブ部)、30…樹脂複合部(補強部)、40…屈曲部、41…折返し部。
図1
図2
図3
図4
図5