【実施例】
【0029】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に何等限定されるものではない。
(実施例1)本発明例1〜3の造粒粉の製造
本発明では、磁性粉として、粒子径が3〜5μmのカルボニル鉄粉を使用した。この鉄粉の組成は、Fe:Si:Cr=100:0:0であった。この磁性粉を、目開き径255〜500μmの篩で分級して使用した。
ガラス転移点が130〜140℃である熱硬化性エポキシ樹脂を使用した。低沸点溶剤としてはメチルエチルケトンを、また、高沸点溶剤としてはブチルセロソルブを、それぞれ使用した。
【0030】
15.0gのメチルエチルケトンと、1.0gのブチルセロソルブと、3.2gのエポキシ樹脂とを高分子製カップの中で混合し、十分に撹拌して混合液とした。(これらの混合の割合は、スラリーの総重量に対して、メチルエチルケトンが12%(w/w)、ブチルセロソルブが約1%(w/w)、エポキシ樹脂が約2%(w/w)であった。)
次いで、100gのカルボニル鉄粉と、上記の混合液の全量とを混合し、十分に撹拌してエポキシ樹脂をカルボニル鉄粉に対して十分に分散させ、スラリーを製造した。カルボニル鉄粉の混合割合は、スラリーの総重量に対して、約85%(w/w)であった。
【0031】
次いで、このスラリーを高温槽に入れて約50℃(第1乾燥温度)で30分加熱してメチルエチルケトンを蒸発させ、柔らかい固体状態のペーストを製造した。
次いで、目開き径355μmのメッシュ(篩)に、このペーストを擦りつけて解砕し、粒子を得た。
引き続き、上記で得られた粒子を高温槽に入れて110℃(第2乾燥温度)で25〜35分加熱してメチルセロソルブを蒸発させて整粒し、造粒粉を得た。以上のようにして、本発明例1の造粒粉を得た。
以上のようにして得られた本発明例1の造粒粉の粒径を、ふるいを用いて測定したところ、粒径が75μm未満の粒子(D
S)の含有量は約5%、500μmを越える粒子(D
L)の含有量は約10%、平均粒径は約100μmであった。
【0032】
(実施例2)本発明例2の造粒粉の製造
実施例1における第2乾燥温度を120℃に変更した以外は実施例1と同様にして、本発明例2の造粒粉を得た。得られた本発明例2の造粒粉中のD
S及びD
Lの割合、及び平均粒径は実施例1と同様であった。
(実施例3)本発明例3の造粒粉の製造
実施例1における第2乾燥温度を130℃に変更した以外は実施例1と同様にして、本発明例3の造粒粉を得た。得られた本発明例3の造粒粉中のD
S及びD
Lの割合、及び平均粒径は実施例1と同様であった。
【0033】
(実施例4)本発明例4の造粒粉の製造
実施例1で約50℃とした第1乾燥工程の温度を約60℃に上げた以外は実施例1と同様にして、本発明例4の造粒粉を製造した。得られた本発明例4の造粒粉中のD
S及びD
Lの割合、及び平均粒径は実施例1と同様であった。
(実施例5)本発明例5の造粒粉の製造
実施例2で約50℃とした第1乾燥工程の温度を約60℃に上げた以外は実施例2と同様にして、本発明例5の造粒粉を製造した。得られた本発明例5の造粒粉中のD
S及びD
Lの割合、及び平均粒径は実施例1と同様であった。
【0034】
(実施例6)本発明例6の造粒粉の製造
実施例3で約50℃とした第1乾燥工程の温度を約60℃に上げた以外は実施例3と同様にして、本発明例6の造粒粉を製造した。得られた本発明例6の造粒粉中のD
S及びD
Lの割合、及び平均粒径は実施例1と同様であった。
(実施例7)本発明例7の造粒粉の製造
実施例2で、樹脂量に対して30wt%とした高沸点溶剤の添加量を、10wt%にした以外は実施例2と同様にして、本発明例7の造粒粉を得た。得られた本発明例7の造粒粉中のD
Sの割合は約9%、D
Lの割合は約11%であった。
【0035】
(実施例8)本発明例8の造粒粉の製造
実施例2で、樹脂量に対して30wt%とした高沸点溶剤の添加量を、20wt%にした以外は実施例2と同様にして、本発明例8の造粒粉を得た。得られた本発明例8の造粒粉中のD
Sの割合は約7%、D
Lの割合は約11%であった。本発明例8の造粒粉の性質は実施例1で得られた造粒粉1とほぼ同等であった
(実施例9)本発明例9の造粒粉の製造
実施例2で、樹脂量に対して30wt%とした高沸点溶剤の添加量を、40wt%にした以外は実施例2と同様にして、本発明例9の造粒粉を得た。得られた本発明例9の造粒粉中のD
Sの割合は約4%、D
Lの割合は約14%であった。
【0036】
(実施例10)本発明例10の造粒粉の製造
実施例2で、樹脂量に対して30wt%とした高沸点溶剤の添加量を、45wt%にした以外は実施例2と同様にして、本発明例8の造粒粉を得た。得られた本発明例8の造粒粉中のD
Sの割合は約4%、D
Lの割合は約18%であった。
(実施例11)本発明例11の造粒粉の製造
実施例2で、樹脂量に対して350wt%とした低沸点溶剤添加量を、250wt%にした以外は、実施例2と同様にして本発明例11の造粒粉を得た。
【0037】
(実施例12)本発明例12の造粒粉の製造
実施例2で、樹脂量に対して350wt%とした低沸点溶剤添加量を、450wt%にした以外は実施例2と同様にして、本発明例12の造粒粉を得た。
(実施例13)本発明例13の造粒粉の製造
実施例2で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブからプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに代えた以外は、実施例2と同様にして、本発明例13の造粒粉を得た。
【0038】
(実施例14)本発明例14の造粒粉の製造
実施例2で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブからシクロヘキサンに代えた以外は実施例2と同様にして、本発明例14の造粒粉を得た。
(実施例15)本発明例15の造粒粉の製造
実施例2で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブからジイソブチルケトンにした以外は実施例2と同様にして、本発明例15の造粒粉を得た。
【0039】
(実施例16)本発明例16の造粒粉の製造
実施例2で使用した低沸点溶剤をメチルエチルケトンからアセトンに代え、低沸点溶剤の対樹脂重量を250wt%とした以外は、実施例2と同様にして本発明例16の造粒粉を得た。
(実施例17)本発明例17の造粒粉の製造
実施例2で使用した低沸点溶剤をメチルエチルケトンからアセトンに代えた以外は、実施例2と同様にして本発明例17の造粒粉を得た。
【0040】
(実施例18)本発明例17の造粒粉の製造
実施例2で使用した低沸点溶剤をメチルエチルケトンからアセトンに代え、低沸点溶剤の対樹脂重量を450wt%とした以外は、実施例2と同様にして本発明例18の造粒粉を得た。
(実施例19)本発明例19の造粒粉の製造
実施例2で造粒粉に対して3.5wt%としたエポキシ樹脂添加量を2.0wt%とした以外は、実施例2と同様にして、本発明例19の造粒粉を得た。
(実施例20)本発明例20の造粒粉の製造
実施例2で造粒粉に対して3.5wt%としたエポキシ樹脂添加量を2.5wt%とした以外は、実施例2と同様にして、本発明例20の造粒粉を得た。
【0041】
(実施例21)本発明例21の造粒粉の製造
実施例2で造粒粉に対して3.5wt%としたエポキシ樹脂添加量を3.0wt%とした以外は、実施例2と同様にして、本発明例21の造粒粉を得た。
(実施例22)本発明例22の造粒粉の製造
実施例2で使用したエポキシ樹脂をシリコン樹脂に代えるとともに樹脂添加量を3.5重量%から3.7重量%にした以外は実施例2と同様にして、本発明例22の造粒粉を得た。
【0042】
(実施例23)本発明例23の造粒粉の製造
実施例22で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブからプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに代えた以外は実施例22と同様にして、本発明例23の造粒粉を得た。
(実施例24)本発明例24の造粒粉の製造
実施例22で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブからシクロヘキサンに代えた以外は実施例22と同様にして、本発明例24の造粒粉を得た。
(実施例25)本発明例25の造粒粉の製造
実施例22で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブからジイソブチルケトンに代えた以外は実施例22と同様にして本発明例25の造粒粉を得た。
【0043】
(比較例1)比較例1の造粒粉の製造
実施例1で使用したブチルセロソルブをメチルエチルケトンに代えてメチオルエチルケトンのみとした以外は実施例1と同様にして、比較例1の造粒粉を得た。
(比較例2)比較例2の造粒粉の製造
実施例1で110℃とした第2乾燥温度を100℃にした以外は実施例1と同様にして、比較例2の造粒粉を得た。
【0044】
(比較例3)比較例3の造粒粉の製造
実施例1で、110℃とした第2乾燥温度を140℃にした以外は実施例1と同様にして、比較例3の造粒粉を得た。
(比較例4)比較例4の造粒粉の製造
実施例2で樹脂量に対して30wt%とした高沸点溶剤の添加量を8wt%にした以外は実施例2と同様にして、比較例4の造粒粉を得た。
【0045】
(比較例5)比較例5の造粒粉の製造
実施例2で樹脂量に対して30wt%とした高沸点溶剤の添加量を、50wt%にした以外は実施例2と同様にして、比較例5の造粒粉を得た。
(比較例6)比較例6の造粒粉の製造
実施例2で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブからメチルイソブチルケトンに代えた以外は実施例2と同様にして、比較例6の造粒粉を得た。
【0046】
(比較例7)比較例7の造粒粉の製造
実施例2で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブからn-ブチルアルコールに代えた以外は、実施例2と同様にして比較例7の造粒粉を得た。
(比較例8)比較例8の造粒粉の製造
実施例2で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブから2-2ブトキシエトキシエタノールに代えた以外は、実施例2と同様にして比較例8の造粒粉を得た。
【0047】
(比較例9)比較例9の造粒粉の製造
実施例2で3.5重量%としていた樹脂添加量を1.5%重量にした以外は、実施例2と同様にして比較例9の造粒粉を得た。
(比較例10)比較例10の造粒粉の製造
実施例2で使用した樹脂をエポキシからシリコンとし、高沸点溶剤をブチルセロソルブからメチルイソブチルケトンとした以外は、実施例2と同様にして比較例10の造粒粉を得た。
【0048】
(比較例11)比較例11の造粒粉の製造
比較例10で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブからn-ブチルアルコールとした以外は、比較例10と同様にして比較例11の造粒粉を得た。
(比較例12)比較例12の造粒粉の製造
比較例10で使用した高沸点溶剤をブチルセロソルブから2-2ブトキシエトキシエタノールとした以外は、比較例10と同様にして比較例12の造粒粉を得た。
本発明例1〜25及び比較例1〜12の造粒粉の製造条件を各造粒粉の物性とともに表1及び表2に示す。
【0049】
表1及び表2中の略号等は下記の通りである。
*1:対造粒粉重量
*2:MEK:メチルエチルケトン
BCS:ブチルセロソルブ
PGM: プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート
CHEX: シクロヘキサン
DIB: ジイソブチルケトン
ACT: アセトン
MIB: メチルイソブチルケトン
NBA: n-ブチルアルコール
BEE: 2-2ブトキシエトキシエタノール
【0050】
*3:低沸点溶剤(LBS)/高沸点溶剤(HBS)
*4:粒径が75μm未満の粒子の量(D
S)及び500μmの粒子の量(D
L)の粒子全体に占める割合で評価した。
A
r=D
Sが5%以下、かつD
Lが10%以下
B
r=D
Sが10%以下、かつD
Lが10%以上、20%以下
C
r=D
Sが10%以上、かつD
Lが20%超
*5:透磁率は、100kHzで測定した。成形圧は4ton/cm
2とした。
*6:直流重畳特性は、100kHzで測定した(Δμ-20%)
*7:Pcvは100kHz、50mTの条件で測定した。
【0051】
乾燥性は、A
d(良好)、B
d(やや良好)、又はC
d(不良)で評価した。
透磁率は、A
m(良好)、B
m(やや良好)、又はC
m(不良)で評価した。
直流重畳性は、A
h(良好)、B
h(やや良好)、又はC
h(不良)で評価した。
Pcvは、A
p(良好)、B
p(やや良好)、又はC
p(不良)で評価した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
製造された各造粒粉の評価
本発明例1〜25の造粒粉はいずれも、D
Sが10%以下かつD
Lが20%以下という粒径範囲にあり、粒径のばらつきは少なかった。
これに対し、比較例1〜12の造粒粉は、第1乾燥工程での乾燥は良好であったが、比較例1及び9の造粒粉を除き、第2乾燥工程での乾燥状態が不良であった。第2乾燥工程の温度が100℃の場合には高沸点溶剤の残留が多く、製造されたペーストをメッシュに通すことができなかった。このことは、所望の粒径の造粒粉を得ることができないことを示す。
【0055】
また、第2乾燥工程の温度が140℃の場合には、エポキシ樹脂が硬化した状態となっており、プレス成形時の成形性が悪くなり、透磁率が低下することが予想された。
比較例1、4、6、7、10及び11の造粒粉は、乾燥工程でペーストの乾燥が進み過ぎ、粒径にバラつきが大きくなっていた。また、比較例5、8及び12の造粒粉は高沸点溶剤の残存量が多く、メッシュを通すことができなかったため、後述する成形を行うことができなかった。
【0056】
(実施例26)電子部品の製造
本発明例1と一般的な磁性粉(Fe:Si:Cr=92:4:4)を用いて、以下の条件でトロイダルコアを製造し、特性を比較した。
(1)材料
本発明例1と引用文献2と似たような造粒粉で、それぞれトロイダルコアを作製し、比透磁率、μ周波数、直流重畳特性及びコアロス特性を測定し比較した。
トロイダルコア:φ15mm×2.5mmt(成形圧力 4t/cm
2)
巻数:本発明例1の磁性粉末(CIP)=19T
一般的な磁性粉末(Fe-Si-Cr)=10T
【0057】
透磁率は、成形圧力(トン/cm
2)と100kHzにおける透磁率との関係を、インピーダンスアナライザを用いて、測定した。また、μ周波数は、周波数と100kHzにおける透磁率の変化を、インピーダンスアナライザを用いて、周波数を100kHz〜10MHzまでの間で、調べた。直流重畳特性は、印加磁界と透磁率との変化を、インピーダンスアナライザを用いて、コイルに供給する直流電流を除除に加えるようにして調べた。
コアロスは、B−Hアナライザを用いて、周波数を100kHz〜10MHzまでの間で調べた。結果を、上記表1及び2、並びに
図1〜
図4に示す。
【0058】
図1に示すように、上記2つのトロイダルコアの透磁率は、成形圧力2トン/cm
2の時点で一般的な磁性粉末を使用した方が高く、成形圧が高くなっても、その差は縮まらなかった。
このことから、製品として同じインダクタンス(L)を得るためには、巻数を多くするか、より高い成形圧を欠けることが必要になることが示された。
一方、
図4に示すように、コアロスについては、100kHzの時点における本発明例1の磁性粉末を用いたトロイダルコアの方が、一般的な磁性粉末を用いたトロイダルコアよりも、コアロスが少なく、周波数が高くなると、その差が大きくなることが示された。
このことから、
図2に示すように1.5MHzを越える領域では、本発明例1の磁性粉末を用いたトロイダルコアの方が、コアロスが少ないため、コイルの自己共振周波数の近傍で比透磁率が大きく上昇したが、一般的な磁性粉末を用いたトロイダルコアでは、コアロスが大きいため逆に低下傾向が認められた。
【0059】
図3(A)及び(B)で示すように、直流重畳特性は、本発明例1の磁性粉末を用いたトロイダルコアの方が、一般的な磁性粉末を用いたトロイダルコアよりもよい結果が得られた。
図3(A)は、上述したFe-Si-Crの巻数を10T、CIPの巻数を19Tとして測定したため、初期透磁率に相違がみられた。しかし、透磁率が同じであると想定した場合でも、本発明例1の磁性粉末と一般的な磁性粉末の透磁率の差は約1.3倍であるので、磁性粉末を用いたトロイダルコアの方が良好な直流重畳特性を得られると考えられた。
以上より、本発明の方法で製造された磁性粉末は、比透磁率を除き、良好な特性を示した。