【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の給水加温システム1の実施例1を示す概略図である。
本実施例の給水加温システム1は、蒸気圧縮式のヒートポンプ2と、このヒートポンプ2を駆動するエンジン3とを備える。そして、給水加温システム1は、給水路4の水を、ヒートポンプ2で加温すると共に、エンジン3の排熱を用いて加温する。このようにして加温された水は、その用途を特に問わないが、たとえばボイラへの給水として用いられる。
【0024】
ヒートポンプ2は、圧縮機5、凝縮器6、膨張弁7および蒸発器8が順次環状に接続されて構成される。そして、圧縮機5は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。また、凝縮器6は、圧縮機5からのガス冷媒を凝縮液化する。さらに、膨張弁7は、凝縮器6からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。そして、蒸発器8は、膨張弁7からの冷媒の蒸発を図る。
【0025】
従って、ヒートポンプ2は、蒸発器8において、冷媒が外部から熱を奪って気化する一方、凝縮器6において、冷媒が外部へ放熱して凝縮することになる。これを利用して、ヒートポンプ2は、蒸発器8において熱源流体から熱をくみ上げ、凝縮器6において給水路4の水を加温する。なお、熱源流体は、特に問わないが、本実施例では熱源水(たとえば廃温水)である。
【0026】
ヒートポンプ2は、さらに、凝縮器6と膨張弁7との間に、過冷却器9を備えるのが好ましい。過冷却器9は、凝縮器6から膨張弁7への冷媒と、凝縮器6への給水との間接熱交換器である。過冷却器9により、凝縮器6への給水で、凝縮器6から膨張弁7への冷媒を過冷却することができると共に、凝縮器6から膨張弁7への冷媒で、凝縮器6への給水を加温することができる。ヒートポンプ2の冷媒は、好適には、凝縮器6において潜熱を放出し、過冷却器9において顕熱を放出する。
【0027】
つまり、凝縮器6において、ガス冷媒は凝縮して液冷媒となり、その液冷媒が過冷却器9に供給されて、過冷却器9において、液冷媒はさらに冷却(過冷却)される。冷媒の凝縮用と過冷却用とで熱交換器を分けることで、熱交換器の設計が容易となり、熱交換器を簡易な構造で小型化でき、コストの削減を図ることができる。また、汎用の熱交換器の利用も可能となる。
【0028】
その他、ヒートポンプ2には、圧縮機5の入口側にアキュムレータを設置したり、圧縮機5の出口側に油分離器を設置したり、凝縮器6の出口側(凝縮器6と過冷却器9との間)に受液器を設置したりしてもよい。
【0029】
給水加温システム1は、さらに、サイクル外熱交換器10を備えるのが好ましい。このサイクル外熱交換器10は、過冷却器9への給水と、蒸発器8を通過後の熱源水との間接熱交換器である。従って、給水路4の水は、給水ポンプ11により、サイクル外熱交換器10、過冷却器9および凝縮器6へと順に通されることになる。
【0030】
一方、熱源水は、熱源供給路12を介して、蒸発器8を通された後、サイクル外熱交換器10に通される。本実施例では、熱源供給路12には、蒸発器8より上流側に熱源供給ポンプ25が設けられており、この熱源供給ポンプ25を作動させることで、熱源水を、蒸発器8とサイクル外熱交換器10とに順に通すことができる。
【0031】
蒸発器8を先に通した後にサイクル外熱交換器10に熱源水を通すことで、サイクル外熱交換器10を先に通した後に蒸発器8に熱源水を通す場合と比較して、蒸発器8における冷媒の蒸発温度(つまり蒸発圧力)を高めることができ、圧縮機5の圧力比を小さくすることができ、省エネルギーを図ることができる。
【0032】
エンジン3は、ヒートポンプ2の圧縮機5を駆動する。図示例では、エンジン3の動力は、ベルト13を介して圧縮機5を駆動する。エンジン3は、その構成を特に問わないが、たとえばガスエンジンまたはディーゼルエンジンであり、駆動に伴い排ガスを排出する。また、本実施例のエンジン3は、後述するように、ジャケット14を備える水冷式とされている。
【0033】
給水加温システム1は、エンジン3のジャケット冷却水や排ガスから熱回収して、給水路4の水を加温可能に構成される。そのために、第一ジャケット熱交換器15と第一排ガス熱交換器16を少なくとも備える。第一ジャケット熱交換器15は、凝縮器6を通過後の水を、エンジン3のジャケット14の冷却に用いて加温するための間接熱交換器である。この際、凝縮器6からの水は、エンジン3のジャケット14に直接に流してもよい(つまりジャケット14自体を第一ジャケット熱交換器15としてもよい)が、ジャケット14と第一ジャケット熱交換器15との間に液体(ジャケット冷却水)を循環させ、その循環液と給水路4の水とを第一ジャケット熱交換器15で熱交換するのがよい。一方、第一排ガス熱交換器16は、エンジン3からの排ガス路17に設けられ、第一ジャケット熱交換器15を通過後の水を、エンジン3からの排ガスで加温する間接熱交換器である。
【0034】
より具体的に説明すると、本実施例では、第一ジャケット熱交換器15の他、第二ジャケット熱交換器18を備え、各ジャケット熱交換器15,18とジャケット14との間で液体(ジャケット冷却水)が循環される。そして、第一ジャケット熱交換器15では、その循環液で、凝縮器6からの給水が加温される。逆に、凝縮器6からの給水により、循環液は冷却され、ひいてはジャケット14やエンジン3の冷却が図られる。
【0035】
第一ジャケット熱交換器15で加温後の給水は、第一排ガス熱交換器16へ供給され、エンジン3からの排ガスと熱交換してさらに加温され、温水使用設備(たとえばボイラ給水タンク)へ送られる。
【0036】
ところで、第一ジャケット熱交換器15において、エンジン3を冷やし過ぎることは避けなければならない。そこで、本実施例では、給水路4には、第一ジャケット熱交換器15の前後を接続してバイパス路19が設けられており、給水路4とバイパス路19との分岐部に三方弁20が設けられている。この三方弁20を制御することで、凝縮器6からの水を、第一ジャケット熱交換器15に通すかバイパス路19に通すかの分配割合を調整可能とされている。但し、この分配割合の調整は、給水路4とバイパス路19との分岐部と、その後の合流部との間において、給水路4および/またはバイパス路19に弁を設け、その弁の開度を調整することで行ってもよい。
【0037】
分配割合の調整制御について、より具体的に説明すると、本実施例では、第一ジャケット熱交換器15を通過後の水温を第一温度センサ21で監視し、その検出温度を所望温度に維持するように三方弁20を制御して、凝縮器6からの水を第一ジャケット熱交換器15に通すかバイパス路19に通すかの分配割合を調整する。なお、図示例では、第一温度センサ21は、給水路4とバイパス路19との合流部より下流に設けているが、合流部よりも上流の給水路4に設けてもよい。また、第一温度センサ21は、給水路4ではなく、前記循環液の温度を検出(言い換えればジャケット14内の温度を検出)するようにしてもよい。いずれにしても、第一ジャケット熱交換器15への通水流量を調整することで、エンジン3を所望に冷却することができる。これにより、エンジン3を過度に冷却するのを防止することができる。
【0038】
一方、凝縮器6の出口側の水温によっては、凝縮器6からの水を全量、第一ジャケット熱交換器15に通しても、ジャケット14の循環液を所望に冷却できないおそれがある。そこで、第一ジャケット熱交換器15に加えて、第二ジャケット熱交換器18を設けておくのがよい。第二ジャケット熱交換器18も、第一ジャケット熱交換器15と同様に、ジャケット14との間で液体(ジャケット冷却水)が循環され、その循環液と給水とが間接熱交換される。第二ジャケット熱交換器18への給水は、本実施例では、凝縮器6を通過後の水とは異なる水であり、凝縮器6を通過後の給水よりも低温(たとえば常温)である。
【0039】
第二ジャケット熱交換器18には、送水ポンプ22により通水され、その水は、前記循環液により加温される。その加温された水は、送水路23を介して、たとえば、サイクル外熱交換器10の入口側または出口側において、給水路4の水へ合流される。
【0040】
第二ジャケット熱交換器18への給水の有無または量は、後述する実施例2と同様にして、前記第一温度センサ21の検出温度により制御される。第二ジャケット熱交換器18への給水を制御することで、エンジン3の冷却不足が生じるおそれがない。
【0041】
ところで、サイクル外熱交換器10を通過後の熱源水の温度に基づき、蒸発器8への熱源水の供給流量を調整可能としてもよい。具体的には、熱源供給路12にはサイクル外熱交換器10の出口側に第二温度センサ26を設けておき、この第二温度センサ26の検出温度に基づき熱源供給ポンプ25をインバータ制御するか、熱源供給路12に設けた弁の開度を調整すればよい。これにより、熱源水の排出温度を所望に調整することができる。
【実施例2】
【0042】
図2は、本発明の給水加温システム1の実施例2を示す概略図である。本実施例2の給水加温システム1は、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0043】
本実施例2では、第一ジャケット熱交換器15への通水量はバイパス路19によっては調整しない(バイパス路19と三方弁20を設置しない)が、第二ジャケット熱交換器18への通水量は調整可能である。具体的には、凝縮器6からの給水は、全量、第一ジャケット熱交換器15に通された後、第一排ガス熱交換器16に通される。一方、第二ジャケット熱交換器18への通水流量は、送水ポンプ22をインバータ制御するか、送水ポンプ22の出口側に流量調整弁を設けその開度を調整することでなされる。そして、第一ジャケット熱交換器15を通過後の水温を第一温度センサ21で監視し、その温度を所望に維持するように第二ジャケット熱交換器18への通水量を調整すればよい。これにより、エンジン3を所望に冷却することができる。
【0044】
ところで、本実施例では、第一温度センサ21は、第一ジャケット熱交換器15の出口側の水温を検出しているが、第二ジャケット熱交換器18の出口側の水温を検出するか、あるいは、ジャケット14と各ジャケット熱交換器15,18との間の循環液の温度を検出(言い換えればジャケット内の温度を検出)するようにしてもよい。
【0045】
第二ジャケット熱交換器18で加温後の水は、本実施例2では、第二排ガス熱交換器24に通される。第二排ガス熱交換器24は、第一排ガス熱交換器16を通過後の排ガスと第二ジャケット熱交換器18を通過後の水との間接熱交換器である。この水は、前記実施例1と同様に、給水路4に合流して用いてもよい。
【0046】
なお、本実施例2において、前記実施例1と同様に、第二排ガス熱交換器24の設置を省略したり、逆に、前記実施例1において、本実施例2と同様に、第二排ガス熱交換器24を設置したりしてもよい。その他の構成は、前記実施例1と同様のため、説明を省略する。
【実施例4】
【0049】
図4は、本発明の給水加温システム1の実施例4を示す概略図である。本実施例4の給水加温システム1は、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0050】
本実施例4は、給水路4および熱源供給路12の構成において、前記実施例1と異なる。本実施例4では、給水ポンプ11からの給水は、過冷却器9、凝縮器6、サイクル外熱交換器10、第一ジャケット熱交換器15および第一排ガス熱交換器16の順に通される。一方、熱源水は、サイクル外熱交換器10および蒸発器8を順に通される。熱源供給ポンプ25は、熱源供給路12の内、サイクル外熱交換器10の入口側、またはサイクル外熱交換器10と蒸発器8との間に設けられる。
【0051】
なお、熱源水は、蒸発器8において冷却された後、冷熱利用機器(たとえばクーリングタワー)にて使用された後、再び熱源供給路12へ戻されてもよい。つまり、熱源水は、サイクル外熱交換器10および蒸発器8と、冷熱利用機器との間で循環使用されてもよい。
【0052】
本実施例4の場合、蒸発器8を通過後の熱源水の温度に基づき、蒸発器8への熱源水の供給流量を調整可能としてもよい。具体的には、熱源供給路12には蒸発器8の出口側に第二温度センサ26を設けておき、この第二温度センサ26の検出温度に基づき熱源供給ポンプ25をインバータ制御するか、熱源供給路12に設けた弁の開度を調整すればよい。これにより、熱源水の排出温度(冷水温度)を所望に調整することができる。
【0053】
本実施例4の場合も、エンジン3のジャケット14またはその冷却水の温度に基づき、前記各実施例と同様に、各ジャケット熱交換器15,18への通水量を調整可能としてもよい。また、本実施例4において、前記実施例2と同様に、第二排ガス熱交換器24を設置してもよい。その他の構成は、前記実施例1と同様のため、説明を省略する。
【0054】
本発明の給水加温システム1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、ヒートポンプ2の熱源として熱源水を用いた例について説明したが、ヒートポンプ2の熱源流体として、熱源水に限らず、空気や排ガスなど各種の流体を用いることができる。但し、熱源流体は、蒸発器8においてヒートポンプ2の冷媒に熱(顕熱)を与えつつ自身は温度低下を伴い、その後、サイクル外熱交換器10において給水に熱(顕熱)を与えつつ自身は温度低下を伴う流体が好ましい。