特許第6103231号(P6103231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103231
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】下水汚泥の脱水方法及び脱水システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   C02F11/14 DZAB
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-189126(P2013-189126)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-54286(P2015-54286A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】山下 学
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅義
(72)【発明者】
【氏名】末次 康隆
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−215811(JP,A)
【文献】 特開昭61−268400(JP,A)
【文献】 特開昭60−216816(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103253846(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水処理場に流入した流入水中の繊維分を回収し、脱水助材として下水処理プロセスから生じる難脱水汚泥に供給して脱水機(8)で脱水処理する方法において、
予め定めた所定期間(CP)で、
脱水助材の実回収量(12)と、季節や曜日、天候によって変動する流入水中の脱水助材の含有量についての情報である汚泥情報(26)から脱水助材の予測総回収量(13)を推定すると共に、
下水処理場に流入する汚泥の実汚泥量(24)と汚泥情報(26)から脱水機(8)で脱水処理する予測総汚泥量(25)を推定し、
予測総汚泥量(25)に対して予測総回収量(13)を分配供給する
ことを特徴とする下水汚泥の脱水方法。
【請求項2】
下水処理場に流入した流入水中の繊維分を回収し、脱水助材として下水処理プロセスから生じる難脱水汚泥に供給して脱水機(8)で脱水処理するシステムにおいて、
脱水助材を回収する回収装置(3)と、
脱水助材の回収量を計測する計測装置(15)と、
脱水する汚泥量を計測する計測装置(28)と、
脱水助材を汚泥に供給する供給装置(5)と、
供給装置(5)の供給量(14)を調整する制御装置(16)と、を備え、
制御装置は、
予め設定した所定期間(CP)で、
脱水助材の実回収量(12)と、季節や曜日、天候によって変動する流入水中の脱水助材の含有量についての情報である汚泥情報(26)から、分離回収する脱水助材の予測総回収量(13)を算出し、
下水処理場に流入する汚泥の実汚泥量(24)と汚泥情報(26)から、所定の期間に脱水機(8)で脱水処理する予測総汚泥量(25)を算出し、
予測総汚泥量(25)に対して予測総回収量(13)を分配するための供給量(14)を、算出する
ことを特徴とする下水汚泥の脱水システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
予測総汚泥量(25)に対して予測総回収量(13)を均等に分配するための供給量(14)を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の下水汚泥の脱水システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
実汚泥量(24)に対して実回収量(12)を均等に分配するための供給量(14)を算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の下水汚泥の脱水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場に流入する流入水から脱水助材として適切な繊維状物のみを選択回収し、下水処理プロセスで発生する難脱水汚泥に回収した脱水助材を添加する下水汚泥の脱水方法及び脱水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場で発生する難脱水汚泥は繊維分が少なく脱水性が悪い。嫌気消化汚泥処理では、汚泥中の有機物(繊維分等)を嫌気性細菌の働きによって分解した消化汚泥や微生物に転換した余剰汚泥等の難脱水汚泥を脱水している。そのため、脱水前の汚泥は繊維分が減少している。汚泥中の繊維分は凝集の核として機能するとともに脱水時の水路を形成する効果を有するため、繊維分が減少している汚泥は、適切な凝集を行うことができず、脱水性が悪くなる。
【0003】
難脱水汚泥に繊維状物又はおがくずや籾殻等の植物素材を脱水助材として混合して脱水する方法は古くから知られており、多くの処理場で実施されている。繊維状物を脱水助材として用いると低含水率の脱水ケーキが得られ、且つ加圧脱水の場合には脱水ケーキの剥離性が改善する。しかし、大量の脱水助材を用意し供給しなければならないためランニングコストが増大し、また、脱水助材の備蓄・供給設備も設置しなければならないという問題があった。
【0004】
そこで、汚泥処理プロセスの最初沈殿池から発生する生汚泥中の繊維分を分離回収し、余剰汚泥または消化汚泥等の難脱水汚泥に回収繊維を添加して脱水する技術が引用文献1に開示されている。
【0005】
また、引用文献2には脱水設備に供給された汚泥に脱水補助材を添加して脱水する汚泥の脱水処理を管理する汚泥管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−268400号公報
【特許文献2】特開2012−206018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
引用文献1の技術は、処理場内の汚泥から繊維分を回収するので、別途脱水助材を準備する必要がなく、ランニングコスト、設備共に通常の処理と変わりはない。しかし、明細書内に開示されているような、スクリーンや振動ふるいのメッシュによる分離装置では、繊維分(難分解性有機物)に絡まり合った食品残渣由来の易分解性有機物等の脱水助材として適切でないものを分離できず、繊維分と共に回収してしまう。従って、大部分が水分である易分解性有機物が絡まった繊維を脱水助材として添加すると、脱水ケーキが増量して処理費用が高騰する。また、脱水後に易分解性有機物が分解して腐敗するため、添加前の脱水助材および添加後の脱水ケーキを長期間保存することができない。脱水助材として有効な繊維分のみを回収する具体的な方法が開示されておらず、必要な繊維分のみを回収することは困難であった。
【0008】
引用文献2の技術は、処理場の汚泥情報と、オフィス等に設置して不要な紙葉類から繊維化した脱水補助材を製造する補助材供給装置の製造情報に基づいて、脱水補助材を脱水設備に供給するための物流情報を管理し、適切な時期に適切な量の脱水補助材を脱水補助材供給装置から脱水設備に柔軟に供給するものである。しかし、紙葉類を溶解して脱水補助材を製造する補助材供給装置をオフィス等に設置する必要があり、脱水補助材の原料となる不要な紙葉類の排出量が一定でないため、複数のオフィスに補助材供給装置を設置しなければならない。また、脱水補助材をオフィスから処理場に輸送する物流手段が必要となる。
【0009】
本発明は、下水処理プロセスから所定期間で分離回収する脱水助材の回収量を予測し、脱水助材の貯留量を最小限に保持しつつ、脱水処理される汚泥量を予測し、総汚泥量に脱水助材を分配供給する下水汚泥の脱水方法及び脱水システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の下水汚泥の脱水方法は、下水処理場に流入した流入水中の繊維分を回収し、脱水助材として下水処理プロセスから生じる難脱水汚泥に供給して脱水機で脱水処理する方法において、予め定めた所定期間で、脱水助材の実回収量と、季節や曜日、天候によって変動する流入水中の脱水助材の含有量についての情報である汚泥情報から脱水助材の予測総回収量を推定すると共に、下水処理場に流入する汚泥の実汚泥量と汚泥情報から脱水機で脱水処理する予測総汚泥量を推定し、予測総汚泥量に対して予測総回収量を分配供給するもので、貯留期間が短期間となり、供給量が極端に変動することがなく、安定した低含水率の脱水ケーキを生成できる。
【0011】
本発明の下水汚泥の脱水システムは、脱水助材を回収する回収装置と、脱水助材の回収量を計測する計測装置と、脱水する汚泥量を計測する計測装置と、脱水助材を汚泥に供給する供給装置と、供給装置の供給量を調整する制御装置と、を備え、制御装置は、予め設定した所定期間で、脱水助材の実回収量と、季節や曜日、天候によって変動する流入水中の脱水助材の含有量についての情報である汚泥情報から、分離回収する脱水助材の予測総回収量を算出し、下水処理場に流入する汚泥の実汚泥量と汚泥情報から、所定の期間に脱水機で脱水処理する予測総汚泥量を算出し、予測総汚泥量に対して予測総回収量を分配するための供給量を算出するもので、所定期間の脱水助材の回収量を予測しつつ、予測回収量と脱水機の稼働時間から供給量を算出するので、回収量の変動に対応しつつ、安定した供給量を難脱水汚泥に供給できる。
【0013】
制御装置は、予測総汚泥量に対して予測総回収量を均等に分配するための供給量を算出するので、安定した低含水率の脱水ケーキの生成が可能である。また、実汚泥量に対して実回収量を均等に分配するための供給量を算出しても同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の下水処理場の脱水方法及び脱水システムは、下水処理プロセスから脱水助材を回収するため、別途脱水助材を購入する必要がなく、在庫管理、供給設備等も必要ない。下水処理プロセスの前段で脱水助材として難分解性有機物(繊維状物質)を回収するため、消化槽での分解効率が向上する。回収した脱水助材は脱水機の稼働時間に合わせて順次供給するので、貯留期間が短期間となり、脱水助材の貯留設備を縮小できるとともに、変質、腐敗、臭気の発生を防止できる。所定期間の脱水助材の回収量を予測しつつ、予測回収量と脱水機の稼働時間から供給量を算出するので、供給量が極端に変動することがなく、安定した低含水率の脱水ケーキを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るシステムのフロー図である。
図2】同じく、回収装置以降のフロー図である。
図3】同じく、某下水処理場での脱水助材の回収データである。
図4】同じく、他の実施例1のフロー図である。
図5】同じく、他の実施例2のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の下水汚泥の脱水方法及び脱水システムは、所定期間CP内に下水処理プロセスから発生する汚泥(汚水含む)から回収する脱水助材の総回収量11を予測するとともに、脱水処理する総汚泥量23を予測し、予測総汚泥量25に応じて予測総回収量13を分配添加し、汚泥の脱水性を向上させつつ脱水助材の貯留量を必要最小限に抑えることを目的としている。
【0017】
図1は本発明に係るシステムのフロー図である。下水処理場に流れ込んだ流入水を分離する最初沈殿池1と、最初沈殿池1で分離した汚水中の有機物を浄化処理する反応タンク2と、最初沈殿池1で分離した生汚泥を濃縮する重力濃縮槽35と、重力濃縮槽35の前段で所定量の生汚泥を引き抜いて脱水助材を選択的に分離回収する回収装置3と、反応タンク2の混合液を分離する最終沈殿池20と、最終沈殿池20で分離した余剰汚泥を濃縮する機械濃縮槽36と、重力濃縮汚泥および機械濃縮汚泥を嫌気性消化する消化槽37と、難脱水性の消化汚泥を一時的に貯留する汚泥貯留槽27と、脱水助材と消化汚泥を混合した汚泥を固液分離する脱水機8からなる。
【0018】
なお、脱水助材を回収する汚泥を引き抜く位置は、最初沈殿池1あるいは最初沈殿池1の前後の流路等、重力濃縮槽35の前段であれば限定しない。また、脱水助材と消化汚泥を混合した汚泥に対し、必要に応じて高分子凝集剤を添加してもよい。脱水機8はスクリュープレス、ベルトプレス、遠心脱水機等の公知の脱水機を使用できる。
【0019】
下水処理場には毎日24時間汚水の流入があるため、汚水を沈殿した汚泥を回収装置3に移送して汚泥中の脱水助材を回収する。予め定めた連続した所定期間CP内に回収する脱水助材の回収量を総回収量11とする。下水処理場への流入量は季節や曜日、天候によって変動し、汚泥に含まれる脱水助材の含有量も変動する。このような情報は汚泥情報26として過去情報も含めて処理場内で集積している。所定期間CPの初期数回の脱水助材の回収量の実測値や汚泥情報26から所定期間CP内に回収するであろう総回収量11を予測する。回収量の実測値を実回収量12、総回収量11の予測値を予測総回収量13とする。
【0020】
所定期間CP内に脱水助材を回収した後の残渣は、濃縮後、消化槽37に返送して嫌気性消化した後、脱水機8にて脱水処理する。ここで、下水処理場において脱水機8は毎日稼働しているわけではない。下水処理プロセスから発生する汚泥量に応じて脱水機8の稼働時間を随時決定している。汚泥量は変動するので、所定期間CPの初期の実測値や汚泥情報26から所定期間CP内に脱水処理するであろう総汚泥量23を予測する。汚泥量の実測値を実汚泥量24、総汚泥量23の予測値を予測総汚泥量25とする。一般的には予測総汚泥量25に応じて監視員が従事している予め定めた所定の日時のみ脱水機8を稼働している。
【0021】
汚泥から抽出した脱水助材の貯留は必ず必要となるが、処理場内での配置やスペースを鑑みてできるだけ貯留容量を小さくすることが望ましい。そのため、下水処理プロセスで発生する汚泥から所定期間CPで分離回収する脱水助材の回収量と脱水機8で脱水処理する汚泥量を正確に予測し、脱水助材の貯留量29を一定以下に保持しつつ、総汚泥量23に応じて総回収量11を分配供給できるように供給量14を算出することが重要となる。
【0022】
下水汚泥から回収する脱水助材は植物性の繊維状物を主体とした難分解性有機物である。例えば汚水中に溶解したトイレットペーパーが難分解性有機物にあたる。また、難脱水汚泥とは、生物処理等によって凝集の核となる繊維分が大幅に減少し、脱水性の悪くなった汚泥のことである。例えば消化槽37で生成された消化汚泥や、OD法の反応タンク19で生成されたOD余剰汚泥等が難脱水汚泥にあたる。難分解性有機物を抽出した後の汚泥は主に易分解性有機物で構成されているが、食品残渣由来の易分解性有機物は腐敗しやすく長期間の保存はできないため、消化槽37に返送して嫌気性消化する。消化槽37では脱水助材の回収により難分解性有機物が減少しているので消化工程での反応期間を短縮でき、処理場全体の処理効率の向上に寄与する。
【0023】
トイレットペーパーは水に浸漬させても溶解することが無く、シート状に構成している繊維がほどけて分散するのみである。したがって、下水汚泥中には多量のトイレットペーパー由来の繊維分が存在している。
【0024】
本発明では、汚泥中の繊維分を脱水助材として利用するため、下水処理場に流入した流入水中の繊維分を回収装置3で抽出している。回収した繊維分は、凝集前の難脱水汚泥等に添加し、凝集の核として機能させる。汚泥に対して適切な性状の脱水助材を添加すれば、強固な凝集フロックを形成し、脱水性が向上する。
【0025】
図2は本発明に係る回収装置以降のフロー図である。下水処理場に流入した汚水から沈殿分離された汚泥を引き抜いて回収装置3に移送する。回収装置3では汚泥中の難分解性有機物を選択的に分離し助材貯留槽4に排出する。助材貯留槽4回収されない易分解性有機物は回収装置3から重力濃縮槽35を介して消化槽37へ移送する。助材貯留槽4では重量計あるいはレベル計等の公知の計測装置15で脱水助材の回収量を計測する。回収した脱水助材の実回収量12の測定データは順次制御装置16に送信され、制御装置16にて所定期間CP内に回収すると予測される予測総回収量13を算出する。予測総回収量13は実回収量12の測定データが送信される度に補正をかけて修正される。
【0026】
消化汚泥は汚泥貯留槽27に一時的に貯留される。汚泥貯留槽27ではレベル計等の公知の計測装置28で汚泥量を計測する。貯留した実汚泥量24の測定データは順次制御装置16に送信され、制御装置16にて所定期間CP内に貯留すると予測される予測総汚泥量25を算出する。予測総汚泥量25は実汚泥量23の測定データが送信される度に補正をかけて修正される。なお、汚泥量を測定する計測装置28は、汚泥の移送管に配設してもよく、また、脱水機から排出される脱水ケーキから汚泥量を推測してもよい。
【0027】
制御装置16では予測総回収量13と予測総汚泥量25に基づいて脱水助材の供給量14を算出する。算出された供給量14に応じて脱水助材の供給装置5を制御する。この時、助材貯留槽4への貯留量29は予め定めた範囲内に制限するように予め制御装置16にインプットしている。
【0028】
脱水助材を供給装置5にて難脱水汚泥に供給する際に、希釈水17を注入すると脱水助材の移送が容易となる。
【0029】
図3は某下水処理場での脱水助材の回収データである。下水処理場には毎日24時間に亘って有機物を含有する汚水の流入があり、最初沈殿池1から予め定めた汚泥量を引き抜いて回収装置3に移送している。しかし、季節や日時により汚泥濃度が大きく異なり、特に、土、日曜日の休日は汚泥濃度が低く、固形物量が月〜金曜日の平日と比べて半減していることがわかる。したがって、難分解性有機物である繊維分を主とした脱水助材の回収量も減少している。
【0030】
本処理場では脱水助材に適さない易分解性有機物を消化槽37にて嫌気性消化した後、消化汚泥を脱水機8で脱水処理している。本処理場では、土、日曜日は流入量が少なく脱水機の稼働を最小限に抑えるため、消化槽37から消化汚泥を引き抜いていない。したがって、土、日曜日の発生消化汚泥量はデータ上0となっている。
【0031】
本処理場では汚泥量と脱水機8の処理能力から、平日は各8時間のみの稼働で、休日は運転を停止している。所定期間CPに総汚泥量23に応じて均等に回収量11の脱水助材を供給できるように脱水助材の供給量14を算出する。本データでは1週間で回収した脱水助材の総回収量11を、その1週間で脱水処理する総汚泥量23に均等な添加率で供給するようにしている。
【実施例】
【0032】
<回収量>
本提案の実施例を図3のデータに沿って詳述する。脱水助材を回収する所定期間CPを以下のように設定した。
所定期間 :土曜日から翌週金曜日までの7日間
【0033】
水処理プロセスで発生する汚泥について、下水処理場の最初沈殿池1から生汚泥を引き抜いて回収装置3に移送する。一定時間ごとに所定量を引き抜く作業を数回行ってもよいし、連続的に全量を引き抜いてもよい。
【0034】
回収された難分解性有機物は脱水助材として助材貯留槽4に貯留する。助材貯留槽4に貯留する脱水助材の回収量を公知の計測装置15でリアルタイムに計測し、実回収量12の測定データを制御装置16に送信する。助材貯留槽4には脱水助材の実回収量12に応じて希釈水17を注水してもよい。本実施例では、濃度が3%となるまで希釈水17を注水している。
【0035】
制御装置16では実回収量12と過去の測定情報や天候情報等の汚泥情報26も参考にして、所定期間CPに回収できる脱水助材の予測総回収量13を算出する。予測総回収量13を正確に予測するため、随時、実回収量12の測定データを制御装置16に送信し、制御装置16で予測総回収量13を補正しつつ算出する。
【0036】
本実施例では脱水助材の回収を土曜日から開始する。図3に示すように、土、日曜日の休日は脱水助材の回収量が減少する。これは、本データを抽出した某下水処理場の流入域に多数のオフィス街があり、土、日曜日は一般のオフィスが休みでオフィス街からの汚泥流入量が減少するためである。逆に住宅街を中心とする流入域を持つ下水処理場は、土、日曜日に流入汚泥の濃度が高くなり、脱水助材の回収量が増加することが予測される。
【0037】
回収装置3では引き抜いた汚泥中の難分解性有機物のみを分離回収して助材貯留槽4に貯留する。難分解性有機物を抽出した残渣(主に易分解性有機物)は、最初沈殿池1の後段に配している重力濃縮槽35を介して消化槽37に返送し、下水処理プロセスに従って嫌気性消化する。
【0038】
<汚泥量>
本実施例では、脱水する汚泥は汚泥貯留槽27に貯留している。汚泥貯留槽27に貯留されている汚泥量を公知の計測装置28でリアルタイムに計測し、実汚泥量24の測定データを制御装置16に送信する。
【0039】
制御装置16では実汚泥量24と過去の測定情報や天候情報等の汚泥情報26も参考にして、所定期間CPに発生する予測総汚泥量25を算出する。予測総汚泥量25を正確に予測するため、随時、実回収量12の測定データを制御装置16に送信し、制御装置16で予測総汚泥量25を補正しつつ算出する。
【0040】
回収量と同様に、土、日曜日の汚泥発生量が少ないので、月〜金曜日までの5日間のみ脱水機8にて脱水処理を行っている。脱水機8は連続的に脱水処理できるスクリュープレス18を用いている。
【0041】
<供給量算出>
制御装置16で算出した予測総回収量13の脱水助材を、制御装置16で算出した予測総汚泥量25の汚泥に均等に分配供給するべく、制御装置16にて脱水助材の供給量14を算出する。本実施例では、脱水助材を回収する期間と汚泥を貯留する期間が完全に一致しているため、常に最新データの予測総回収量13と予測総汚泥量25を基に、脱水助材の供給量14を随時算出する。脱水助材の供給量14を算出後、制御装置16は脱水助材の供給装置5を調整して、所定の量だけ難脱水汚泥に混合する。
【0042】
なお、所定期間CPに脱水処理する実汚泥量24に対して、実回収量12を均等に分配供給してもよい。
【0043】
下水処理場に流入する固形物量が増加すれば、そこから回収できる脱水助材の回収量も増加する。この時、脱水助材に適さない易分解性有機物も増加しているため、脱水機8で脱水処理すべき汚泥量も増加する。助材貯留槽4で回収する脱水助材の予測総回収量13は増加傾向となるが、脱水処理する予測総汚泥量25も増加傾向となり、脱水助材の供給量も増加する。したがって、助材貯留槽4の貯留量29は極端な貯留量増加がないため、助材貯留槽に大きなスペースは必要としない。
【0044】
逆に、下水処理場に流入する固形物量が減少すれば、そこから回収できる脱水助材の回収量も減少する。この時、脱水助材に適さない易分解性有機物も減少しているため、脱水機8で脱水処理すべき汚泥量も減少する。助材貯留槽4で回収する脱水助材の予測総回収量13は減少傾向となるが、脱水処理する予測総汚泥量25も減少傾向となり、脱水助材の供給量も減少する。したがって、助材貯留槽4の貯留量29は極端な貯留量減少がないため、脱水助材が不足して含水率が不安定な脱水処理となることがない。
【0045】
図4は他の実施例1のフロー図であって、下水処理場に最初沈殿池を設置していない場合のフロー図である。具体的にはOD法やMBR(膜分離活性汚泥法)を採用した際の処理方法が該当する。処理場に流入する流入水は、反応タンク19に流入し微生物の作用により浄化される。流入水の一部は、反応タンク流入路から分岐した固液分離機21に導入されて、汚水中の懸濁物質を分離する。洗浄排水は回収装置3へ移送する。また、ろ過水は反応タンク19前段の流入側に返送する。回収装置3へ移送された懸濁物質等の排水からは、脱水助材が選択的に分離回収される。重力濃縮槽35は最終沈殿池20から移送される余剰汚泥と、回収装置3から返送される易分解性有機物等の残渣を濃縮する。重力濃縮槽35の上澄液は反応タンク19前段の流入側へ送られる。回収装置3で排出される残渣は反応タンク19へ返送してもよい。重力濃縮槽35で濃縮された難脱水性の余剰汚泥等は、回収装置3で回収した脱水助材を混合され、必要に応じて高分子凝集剤を添加して、脱水機8にて脱水処理を行う。
なお、MBRを採用した場合は、最終沈殿池20が不要となり、反応タンク19の上澄液を処理水として排出し、汚泥を重力濃縮槽35に移送する。
【0046】
図5は他の実施例2のフロー図であって、最初沈殿池の生汚泥と最終沈殿池の余剰汚泥を混合した混合生汚泥を処理する際のフロー図である。具体的には図1の消化槽を除いたフローが該当する。一般的に、夜間は昼間よりも汚水の流入量が減少するため、最初沈殿池1から引き抜かれる汚泥の量が減少する。従って、最終沈殿池20から送られる余剰汚泥の割合が増えるため、混合汚泥は難脱水性となる。よって、混合生汚泥の脱水に本発明の脱水システムを採用することで脱水効率が向上する。
脱水助材に関するフローは図1と同様で、最初沈殿池1から引き抜いた生汚泥から回収装置3により脱水助材を抽出する。回収装置3から排出された易分解性有機物等の残渣は重力濃縮槽35に返送され、重力濃縮汚泥(生汚泥)および機械濃縮汚泥(余剰汚泥)を混合して脱水機8にて脱水処理される。脱水機8の前段で混合生汚泥に脱水助材を添加する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る下水汚泥の脱水方法及び脱水システムは下水処理場に流入した汚水を沈殿分離した汚泥から繊維分を脱水助材として有効活用するもので、処理場内の不要物から脱水助材を調達できるものである。ランニングコストが低減するだけでなく、脱水助材の回収量を予測しながら予測発生汚泥量に応じて脱水助材を使用するので、脱水助材の貯留槽等、設備の小型化を図ることができる。
汚泥中の難分解性有機物を脱水助材として処理系内の汚泥処理に有効活用し、その処理系で発生する難脱水汚泥に添加するもので、安定した低含水率の脱水ケーキを生成できるとともに、脱水ケーキの処理が安価で容易となる環境配慮型の脱水方法及び脱水システムとなる。
【符号の説明】
【0048】
3 回収装置
5 供給装置
8 脱水機
12 実回収量
13 予測総回収量
14 供給量
15,28 計測装置
16 制御装置
24 実汚泥量
25 予測総汚泥量
26 汚泥情報
CP 所定期間
図1
図2
図3
図4
図5