(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103232
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出装置および方法
(51)【国際特許分類】
F16H 7/00 20060101AFI20170316BHJP
B65G 43/02 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
F16H7/00 A
B65G43/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-193654(P2013-193654)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-59611(P2015-59611A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆昌
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−131356(JP,A)
【文献】
実開昭54−55092(JP,U)
【文献】
特開平11−325829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/00
B65G 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と従動輪に掛け回された無端ベルトや無端リンクチェーンの緩みを検出する装置であって、
前記駆動輪を回転させる駆動手段と、
前記駆動手段に対して、正回転、逆回転、の指令信号を与えると共に、予め定められた回転数を得るための電流を供給する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記駆動手段の回転数のフィードバックを受け、フィードバックされた回転数と、前記予め定められた回転数とを比較し、前記フィードバックされた回転数を得るために前記電流値を上昇または下降させ、前記制御手段から前記逆回転の指令信号が与えられた際に、前記駆動手段に供給する電流の値が、無負荷回転時の電流値から、加負荷回転時の電流値に移行するまでの時間に基づいて、前記無端ベルトや前記無端リンクチェーンの緩み具合を算出する演算部を有することを特徴とする無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出装置。
【請求項2】
前記無端ベルトや前記無端リンクチェーンの緩み具合の算出は、前記無負荷回転時の電流値から、前記加負荷回転時の電流値への移行時間と緩み具合との関係を示すデータベースを前記制御手段の記憶部に記録し、前記演算部が、前記データベースに記録された時間に基づいて導き出すことを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出装置。
【請求項3】
駆動輪と従動輪に掛け回された無端ベルトや無端リンクチェーンの緩みを検出する方法であって、
前記駆動輪を正回転させている状態から、逆回転させ、
逆回転後に発生する負荷の変化に起因した駆動電流値の変化が生ずるまでの時間に基づいて、前記無端ベルトや無端リンクチェーンの緩み具合を導き出すことを特徴とする無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出方法。
【請求項4】
前記無端ベルトや前記無端リンクチェーンの緩み具合は、前記駆動電流値の変化が生ずるまでの時間と前記無端ベルトや無端リンクチェーンの緩み具合とを関連付たデータベースから導き出すことを特徴とする請求項3に記載の無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトやリンクチェーンを使用する際に生ずる伸びに起因する緩みを検出する装置、および方法に係り、特に、駆動側と従動側のスプロケットやプーリーに掛け回されて無端型とされたベルトやリンクチェーンの緩みを検出するのに好適な装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベア等の連続搬送装置や、種々の回転力伝達機構に用いられる無端状のベルトやリンクチェーンは、経年的な使用により、連結部の摩耗や摩滅、あるいは素材自体の伸びにより、その全長に緩みが生ずることが知られている。プーリーやスプロケットに掛け回されたベルトやリンクチェーンに対する緩みが増加すると、ベルトでは滑り、リンクチェーンでは歯飛びなどの発生原因となる。また、緩みが著しくなると、ベルトやリンクチェーンの破断や外れが生じ、機械の操業停止が必要となることはもちろん、重大な事故の要因になる可能性もある。
【0003】
緩みの原因となるベルトやリンクチェーンの伸びを検出するための技術としては、特許文献1から3のように、種々提案されている。特許文献1、2は、コンベアベルトの伸びを検出するための技術であり、特許文献3は、リンクチェーンの伸びを検出するための技術である。
【0004】
特許文献1、2では、いずれもコンベアベルト上に2つの磁気マーカーを配置し、この磁気マーカー間の距離を算出することで、コンベアベルトに発生した伸びを検出するという技術が開示されている。
【0005】
これに対し、特許文献3では、レーザ変位計を用いて、リンクチェーン上面の凹凸の距離を計測し、この凹凸の距離変化に基づいてリンクチェーンに発生した伸びを検出するという技術が開示されている。
【0006】
これに対して、プーリーやスプロケット等の駆動輪と従動輪の間に掛け回されたベルトやチェーンの緩みを直接検出する手段としては、駆動輪後段側(送り出し側)に生ずるベルトやチェーンの撓み量や張力を計測し、この値に基づいて緩み具合を計算、判定するといったものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−48521号公報
【特許文献2】特開2006−44853号公報
【特許文献3】特開平11−325829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いずれの技術も、コンベアや機器を操業している状態で伸びを検出することができるというメリットがある。しかし、これらの技術による伸びの検出は、いずれもベルトやチェーンが健全な状態の長さを基準として、継続的な計測を行うことにより、その変化を知ることができるというものであり、基準値を経験的な値から定めることができない。このため、継続的な計測を行っていない既設機器におけるベルトやチェーンの伸びが健全な範囲であるか否かといった事象を計ることはできない。
【0009】
また、チェーンの外周には、グリスなどの潤滑剤が塗布されていると共に、使用環境下においては様々な塵埃が付着していることが多い。このため、レーザ変位計による正確な計測自体が困難となる可能性もある。
【0010】
そこで本発明では、既設機器においても、ベルトやリンクチェーンに生じている緩み(遊び)を検出することができ、検出対象物の状態に係らず、伸びの検出を簡易に行うことのできる無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出装置、および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出装置は、駆動輪と従動輪に掛け回された無端ベルトや無端リンクチェーンの緩みを検出する装置であって、前記駆動輪を回転させる駆動手段と、前記駆動手段に対して、正回転、逆回転、の指令信号を与えると共に、予め定められた回転数を得るための電流を供給する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記駆動手段の回転数のフィードバックを受け、フィードバックされた回転数と、前記予め定められた回転数とを比較し、前記フィードバックされた回転数を得るために前記電流値を上昇または下降させ、前記制御手段から前記逆回転の指令信号が与えられた際に、前記駆動手段に供給する電流の値が、無負荷回転時の電流値から、加負荷回転時の電流値に移行するまでの時間に基づいて、前記無端ベルトや前記無端リンクチェーンの緩み具合を算出する演算部を有することを特徴とする。
【0012】
また、上記のような特徴を有する無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出装置において、前記無端ベルトや前記無端リンクチェーンの緩み具合の算出は、前記無負荷回転時の電流値から、前記加負荷回転時の電流値への移行時間と緩み具合との関係を示すデータベースを前記制御手段の記憶部に記録し、前記演算部が、前記データベースに記録された時間に基づいて導き出すようにすると良い。
【0013】
このような特徴を有することによれば、検出値に基づいて複雑な演算を行うことなく、ベルトやリンクチェーンの伸び量を導き出すことが可能となる。
【0014】
また、上記目的を達成するための本発明の無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出方法は、駆動輪と従動輪に掛け回された無端ベルトや無端リンクチェーンの緩みを検出する方法であって、前記駆動輪を正回転させている状態から、逆回転させ、逆回転後に発生する負荷の変化に起因した駆動電流値の変化が生ずるまでの時間に基づいて、前記無端ベルトや前記無端リンクチェーンの緩み具合を導き出すことを特徴とする。
【0015】
また、上記のような特徴を有する無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出方法において前記無端ベルトや前記無端リンクチェーンの緩み具合は、前記駆動電流値の変化が生ずるまでの時間と前記無端ベルトや前記無端リンクチェーンの緩み具合とを関連付たデータベースから導き出すようにすると良い。
【0016】
このような特徴を有することによれば、検出値に基づいて複雑な演算を行うことなく、ベルトやリンクの伸び量を導き出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上記のような特徴を有する無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出装置、および方法によれば、既設機器においても、ベルトやリンクチェーンに生じている緩み(遊び)を検出することができ、検出対象物の状態に係らず、伸びの検出を簡易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る無端ベルトの緩み検出装置の基本構成を示す図である。
【
図2】駆動輪と従動輪の間に掛け回されたベルトの送り出し側に緩みが生じている様子を示す図である。
【
図3】駆動輪と従動輪の間に掛け回されたリンクチェーンの送り出し側に緩みが生じている様子を示す図である。
【
図4】駆動手段に逆回転させる旨の指令信号が出力された後、駆動手段が無負荷回転から加負荷回転に移行するまでに生ずる供給電流の変化の様子を示すグラフである。
【
図5】本発明に係る無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出方法を適用可能な装置の具体例の1つとしての除塵装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の無端ベルトおよび無端リンクチェーンの緩み検出装置、および方法に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1を参照して、無端ベルト(チェーンを含む)の緩み検出装置(以下、単に検出装置10と称す)の基本形態について説明する。
【0020】
本実施形態に係る検出装置10による検出対象は、プーリーやスプロケット等により構成される駆動輪12と従動輪14の間に架け渡されたベルトやチェーン(総称して、ベルト16と称す)である。駆動輪12の回転軸12aには、変速機18を介してモータ(例えばDCモータ)等の駆動手段20が接続されている。駆動手段20には、駆動手段20の回転制御、および駆動状態の検出を行うための制御手段22が接続されており、制御手段22には、駆動手段20に電力を供給するための電源(不図示)や、回転状態や供給電流値、あるいは緩みの検出結果等を表示するモニタ等の表示手段28が接続されている。
【0021】
制御手段22は、第1に、予め定められた回転数(基準回転数)により、駆動手段20を駆動させるように、電源から供給される電流値の制御を行い、駆動手段20に出力する役割を担う。制御手段22には、演算部24や、記憶部26が設けられ、各種フィードバック値に基づく演算や比較、検出などを行う役割も担う。そして制御手段22は、駆動手段20に対する電流値の出力の他、演算結果やフィードバック値を表示手段28等に出力する役割も担う。なお、基準回転数は、各種機器の効率や運転速度等に基づき、任意に定めることができる。
【0022】
電流値は、駆動手段20の回転数が制御手段22の演算部24にフィードバックされることにより、その増減が決定される。すなわち、フィードバックされた回転数と基準回転数とを比較した際、回転数が高い場合には、電流値を低下させる指令信号を出力させ、現状よりも低い電流値が出力されるように制御する。一方、回転数が低い場合には、電流値を向上させる指令信号を出力させ、現状よりも高い電流値が出力されるように制御する。
【0023】
ここで、駆動手段20をDCモータとした場合、モータのトルク(T)と電流値(I)は、T=Kt×Iの関係より、比例関係にあるといえる(Ktは、モータのトルク定数)。そして、モータの回転数Nは、電源電圧(V=一定)と、モータの内部抵抗(R=一定)、および電流値(I)に基づき、N=V−R×Iと表すことができる。ここで、VとRは一定であるから、回転数(N)の変化は、電流値(I)の変化に起因することとなる。よって、モータに対する負荷の変化に基づいて回転数が変化した際、電流値を変化させてトルクコントロールすることで、回転数が基準回転数となるように調整することができる。このことから、制御手段22の出力する電流値の変化は、駆動手段20に対する負荷の増減と捉えることができる。
【0024】
図2に駆動輪12(駆動プーリー)と従動輪14(従動プーリー)に掛け回されたベルト16の様子を示す。また、
図3には、駆動輪12(駆動スプロケット)と従動輪14(従動スプロケット)に掛け回されたリンクチェーン16aの様子を示す。
図2と
図3から読み取れるように、
図2と
図3の駆動輪12は、その正回転方向をそれぞれ逆向きとしているが、いずれも、駆動輪12に対する引き込み側に位置するベルト16やリンクチェーン16aが張っているのに対し、送り出し側に位置するベルト16やリンクチェーン16aには、撓み(緩み)が生じている。
【0025】
このような状態の駆動系に対し、制御手段22から、駆動輪12を逆回転させる指令信号を出力すると、駆動手段20の回転は、一端停止し、その後、無負荷回転を経て加負荷回転へと移行する。ここで、無負荷回転は、駆動輪12が逆回転を開始してから、ベルト16やリンクチェーン16aの送り出し側に生じていた撓み(緩み)が解消され、引き込み側としての張りが生ずるまでに要する時間である。このため、無負荷回転から加負荷回転に移行されるまでの時間は、撓みの生じ具合によって変化する。すなわち、撓み(緩み)が小さい場合には、駆動手段20における無負荷回転時間が短く、緩みが大きい場合には、無負荷回転時間が長くなる。
【0026】
駆動輪12を正回転から逆回転に移行させた際の、時間経過に対する電流値の変化の例を
図4に示す。なお、
図4において、実線で示すグラフは、ベルト16、あるいはリンクチェーン16aの緩みが健全な範囲である場合の電流値変化を示すもの(基準値)であり、破線で示すグラフは、ベルト16、あるはリンクチェーン16aの緩みが健全な範囲を超えて大きくなった場合の電流値変化を示すもの(実測値)である。なお、グラフ上、実線のみが示されているように見える箇所は、実線と破線が重なっている箇所である。
【0027】
図4を参酌すると、まず、ベルト16やリンクチェーン16aに生じている緩みが健全な範囲であっても、健全な範囲を超えているものであっても、定常運転時(正回転時)に供給される電流値の差は殆ど無いことを読み取ることができる。これは、定常運転を行っている最中は、駆動輪12の回転数を維持するために必要とされるトルクに差が生じないためである。
【0028】
また、
図4からは、回転を停止させ、駆動輪12の逆回転を開始した際の電流値の立ち上がりにも差異が無いことを読み取ることができる。これは、逆回転させた駆動輪12に対して、送り出し側に位置し、撓みを生じさせていたベルト16やリンクチェーン16aに張りが生じるまでの期間(いわゆるバックラッシュの期間)、駆動手段20であるモータが、無負荷状態で回転を始めるためである。
【0029】
そして、ベルト16やリンクチェーン16aの緩みが健全の範囲にある場合には、無負荷状態の回転として電流値が安定してからの経過時間(T0)が短く、加負荷回転に起因した電流値の上昇が生じている。これは、無負荷状態の回転により電流値が安定した段階で、ベルト16やリンクチェーン16aに生じていた緩みが解消され、駆動輪12の引き込み側としての張りが生じたため、負荷が増大し、回転数の低下、供給電流の増大といった現象が生じたためである。
【0030】
これに対し、ベルト16やリンクチェーン16aの緩みが大きい場合には、無負荷状態の回転として電流値が安定してからの経過時間(T1)が長く、加負荷回転に起因した電流値の上昇を示す傾きが、ベルト16やリンクチェーン16aの緩みが健全である場合に比べて急勾配になっていることを読み取ることができる。これは、駆動輪12を逆回転させた後、ベルト16やリンクチェーン16aに生じていた緩みを解消するまでの時間が長く、加負荷時には、一度に引っ張り荷重が負荷され、回転数の著しい落ち込みが生ずる。このため、駆動手段20の回転数を向上させるため、供給電流値の急激な上昇が生じるためである。
【0031】
これらの事象から、T1とT0の差分(t)に基づいて、ベルト16やリンクチェーン16aの緩み具合を算出したり、緩み具合の健全性の判断が可能となる。なお、差分tは、駆動手段20の回転数(N)によっても変化する。このため、回転数(N)が一定で無い場合(仕様により指定回転数(N)が変化する場合)には、差分に関しては、T1、T0を回転数(N)で除した比として表すようにしても良い。
【0032】
なお、一例として、無負荷回転時の電流値が安定した状態とは、電流の上昇を示すグラフの傾きがほぼゼロになった時点とすることができる。また、加負荷回転への移行は、グラフの傾きがほぼゼロになった後、再びグラフに傾きが生じた時点とすることができ、これらを基準として、T1、T0の検出を行うようにすれば良い。
【0033】
差分(t)と緩みの関係は、実験により、予め求めておくことが望ましい。差分(t)と緩みの関係を逐次記録してデータベース化し、これを記憶部に記録することで、
図4に示すグラフから読み取れる差分(t)とデータベース26a(
図1参照)とを比較し、対応する緩み具合(緩み量)を導き出すことが可能となるからである。
【0034】
また、実施形態に掛かる検出装置10では、予め、緩み具合の閾値を定めておくことで、導きだされた緩み具合と閾値を比較し、検出対象となったベルト16やリンクチェーン16aの緩みが健全であるか否かの判定を行うこともできる。
【0035】
また、緩み量の判定に関しては、駆動手段20に供給する電流値の波形そのものから行うこともできる。上述したように、緩み量が増加した駆動系では、駆動輪12を逆回転させた後に、無負荷回転から加負荷回転へ移行する際に生ずる電流値の立ち上がりが急峻なものとなり、定常運転時に供給される電流値を超えた供給が成されることがある。このため、表示手段28に供給電流値の電流波形を表示し、当該波形に基づいて緩み量を判定すれば良い。なお、判定の手法は、種々に上る。例えば、電流波形と緩みの関係をデータベース化し、データベース化した波形データから、近似する波形データを求め、この波形データに関連付けられた緩み量を導き出す方法はもちろん、過去の実験データや、作業者の経験値に基づいて判断することもできる。
【0036】
この様な構成の検出装置10は、一般的なベルトコンベアにおけるベルトの緩み具合を検出することに適用できることはもちろん、
図5に示すように、駆動輪12と従動輪14を縦に配置したような除塵装置30にも適用することができる。
【0037】
図5に示す除塵装置30は、水流のある水路の上部に配置された駆動輪12(駆動スプロケット)と、水路の下部に配置された従動輪14(従動スプロケット)を一対、水路の幅に合わせて配置し、各駆動輪12と各従動輪14に掛け回された一対のリンクチェーン16aの間に、除塵用のフィルタ32を連続して複数、架け渡した構成を基本とするものである。このような基本構成を有する除塵装置30も、駆動輪12の送り出し側におけるリンクチェーン16aには、撓みが生じる。このため、リンクチェーン16aの緩みが大きくなると、送り出し側に生じる撓みも大きくなる。よって、駆動輪12を逆回転させた際には、駆動手段20に供給する電流が無負荷回転時の供給電流値から、加負荷回転時の供給電流値へ移行する際のタイミングにズレが生ずる。このため、上記実施形態のような緩み検出方法を適用することが可能となる。
【0038】
上記実施形態では、本発明に係る無端ベルトの緩み検出装置、および方法の具体的な適用について、ベルトコンベアや除塵装置30を挙げて説明した。しかしながら、本発明に係る無端ベルトの緩み検出方法は、駆動輪12と従動輪14(従動輪の数が複数であっても可)とを有し、この駆動輪12と従動輪14との間に掛けまわされて回動するベルト16やリンクチェーン16a、あるいは概念上ベルトやリンクチェーンに含まれる要素であれば、適用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10………検出装置、12………駆動輪、12a………回転軸、14………従動輪、16………ベルト、16a………リンクチェーン、18………変速機、20………駆動手段、22………制御手段、24………演算部、26………記憶部、26a………データベース、28………表示手段、30………除塵装置、32………フィルタ。