【実施例】
【0039】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明における特性の測定方法並びに効果の評価方法は、次の通りである。
【0040】
(1)融点(Tm)
株式会社島津製作所製のDSC(DSC−60A)を使用し、窒素雰囲気下で5mgの試料を10℃/分の速度で250℃まで昇温して5分間保持した後に、10℃/分の冷却速度で10℃まで冷却し、再度10℃/分の速度で昇温していった際に、再度の昇温において、樹脂の融解に伴う吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とした。
【0041】
(2)樹脂の密度
JIS K7112−1980に規定された密度勾配管法に従い密度を測定した。
【0042】
(3)フィルム厚さ
ダイヤルゲージ式厚さ計(JIS B−7509−1992、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルムの長手方向及び幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値とした。
【0043】
(4)各層の厚さ
フィルムの断面をミクロトームにて切り出し、その断面についてデジタルマイクロスコープVHX−100形(株式会社キーエンス製)を用いて1000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、各層の厚さ方向の距離を計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚さを求めた。尚、各層の厚さを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
【0044】
(5)メルトフローレート(MFR)
JIS K−7210に準拠して、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプリピレン系樹脂は230℃で測定した。
【0045】
(6)シール用複合フィルムの作成方法
易開封性共押出多層フィルムの基材層(A層)と厚さ12μmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、P60(東レ株式会社製ルミラー)をポリウレタン接着剤で塗布量2g/m
2でドライラミネートし、40℃、72時間エージングしたサンプルをシール用複合フィルムとした。
【0046】
(7)評価用ポリプロピレン(PP)シート
押出機からホモポリプロピレン(PP−1。後の原料の項で記載。)樹脂を温度220〜230℃で溶融し、押出厚み300μmとなるように、ダイよりフィルム状に押し出し、25〜50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し、評価用ポリプロピレンシートとした。
【0047】
(8)ヒートシール強度
(6)で作成したシール用複合フィルムを100mm×15mmに切り出し、シール層(C層)と(7)で作成した300μmの評価用ポリプロピレンシートに重ねて、テスター産業株式会社製の平板ヒートシールテスター(TP−701B)を使用し、シール温度140℃〜160℃、180℃〜200℃、シール圧力2kg/cm
2、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを、株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC−1210A)を使用して300mm/分の引張速度で、180°剥離したときのヒートシール強度を測定した。そのとき、1試料についてn数10の測定値の平均値を取った。
140℃〜160℃低温領域のヒートシール強度として極大強度と平均強度の差が1.0〜10N/15mmで、かつ、180℃〜200℃高温領域のヒートシール強度として極大強度と平均強度の差が15〜22N/15mmであるものを○とし、該範囲を外れ、密封性、内容物保護性、易開封性を両立できないものを×とした。
【0048】
(9)ヒートシール強度の極大強度と平均強度
図1は、株式会社オリエンテック製のテンシロンにフラットベッドタイプ自動平衡式記録計(MODEL AR−6600−7)を使用し記録したチャート図である。1は極大強度、2は極大強度1を除いた時の最大強度、3は最小となる強度で、平均強度=(最大強度2+最小強度3)/2とした。
ここで極大強度は、流通時の衛生性(内容物保護)に必要な強度であり、平均強度は易開封性を有することを示す強度である。
【0049】
(10)初期開封力
(6)で作成したシール用複合フィルムを100mm×100mmにサンプルを切り出し、シール層(C層)とポリプロピレン製容器(95φ×61.9H、東缶工業株式会社製)に重ねて、エーシンパック工業株式会社製のハンドシーラーを使用し、ヒートシール温度160℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを作成した。次いで株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC−1210A)を使用して、開封口をチャックに固定し、一方、カップを手に持ち、もう一方のチャックに手を添え300mm/分の引張速度で、シール用複合フィルムとポリプロピレン製容器が90°になるように開封したときの初期開封力を測定した。そのとき、1試料についてn数10の測定値の平均を取った。
ヒートシール温度160℃時に、初期開封力が10N以上/個であるものを○とし、該範囲を外れ、密封性、内容物保護性、易開封性を両立できないものを×とした。
【0050】
(11)打ち抜き特性
(6)で作成したサンプルに針(先端rが0.5mm)を突き刺し、突き刺す際にフィルムが伸びるかどうかを目視で評価し、判定を行った。
○:フィルムの伸びが、3mm未満
×:フィルムの伸びが、3mm以上。
【0051】
(12)落袋衝撃性
(10)で用いたポリプロピレン製容器に内容物として水とサラダ油を50/50にブレンドした液を180ml充填封入してから、ヒートシール温度180℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを常温雰囲気下において50cmの高さからコンクリート面へ蓋を下にして垂直落下させる。そのときに、1試料についてn数10のテストを行い、シール部が開封した個数で下記の通り判定した。
○:開封がなかった。
×:開封があった。
【0052】
(13)剥離外観の評価
(8)で作成したサンプルを手で剥離したときに、糸引き、膜残りを目視で評価し、下記の通り判定した。
○:糸引き、膜残りがみえない
△:1mm未満の糸引き、膜残りが残る
×:1mm以上の長い糸引き、膜残りが残る。
【0053】
(14)剥離感の評価
(8)で作成したサンプルを手で剥離したときに、固いあるいは弱い、良好を感応で評価し、下記の通り判定した。
○:適度な力で剥離することができる
×:剥離できない。
【0054】
本実施例で使用した原料は次の通りである。
(1)高密度ポリエチレン(HD−1)
日本ポリエチレン製 ノバテック HF562、MFR=7.5g/10分、密度=0.961g/cm
3
(2)高密度ポリエチレン(HD−2)
京葉ポリエチレン製 KEIYOポリエチ G1900、MFR=16.0g/10分、密度=0.955g/cm
3
(3)低密度ポリエチレン(LD−1)
住友化学製 スミカセン L705、MFR=7.0g/10分、密度=0.919g/cm
3
(4)直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)
住友化学製 スミカセン−L GA801、MFR=20.0g/10分、密度=0.920g/cm
3
(5)直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)
住友化学製 スミカセン−L GA401、MFR=3.0g/10分、密度=0.935g/cm
3
(6)ホモポリプロピレン(PP−1)
プライムポリマー製 プライムポリプロ F107DJ、MFR=8.0g/10分、密度=0.900g/cm
3
(7)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−1)
三井化学製 タフマー A4085S、MFR=3.6g/10分、密度=0.885g/cm
3
(8)シングルサイト触媒を用いて合成されたエチレンプロピレンコポリマー(PP−2)
日本ポリプロ製 ウィンテック WMX03、MFR=25.0g/10分、密度=0.900g/cm
3
(9)マルチサイト触媒を用いて合成されたエチレンプロピレンコポリマー(PP−3)
住友化学製 住友ノーブレン FL6412、MFR=6.0g/10分、密度=0.900g/cm
3。
【0055】
実施例1
基材層(A)の樹脂として、高密度ポリエチレン(HD−1)50wt%と低密度ポリエチレン(LD−1)50wt%混合した樹脂組成物を用い、中間層(B)として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)60wt%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)10wt%とホモポリプロピレン(PP−1)10wt%とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−1)10wt%と高密度ポリエチレン(HD−2)10wt%混合した樹脂組成物を用い、シール層(C)として、シングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−2)を、3種3層無延伸フィルム成形機の押出機3台に各々投入し、180〜230℃の押出温度で230℃のTダイより押し出し、30℃のキャスティングロールで急冷し易開封性フィルムを成形し、基材層(A)にコロナ処理を施した。得られた易開封性共押出多層フィルムの総厚さは50μmでシール層(C)の厚さが5μmであった。
【0056】
実施例2
中間層(B)を直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)40wt%と直鎖状ポリエチレン(LL−2)30wt%とホモポリプロピレン(PP−1)10wt%とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−1)10wt%と高密度ポリエチレン(HD−2)10wt%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0057】
実施例3
中間層(B)を直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)70wt%と直鎖状ポリエチレン(LL−2)15wt%とホモポリプロピレン(PP−1)5wt%とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−1)5wt%と高密度ポリエチレン(HD−2)5wt%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0058】
実施例4
シール層(C)を、シングルサイト触媒を用いて合成されたエチレンプロピレンコポリマー(PP−2)40wt%とマルチサイト触媒を用いて合成されたエチレンプロピレンコポリマー(PP−3)60wt%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0059】
実施例5
基材層(A)を高密度ポリエチレン(HD−1)80wt%と低密度ポリエチレン(LD−1)20wt%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0060】
実施例6
基材層(A)を高密度ポリエチレン(HD−1)20wt%と低密度ポリエチレン(LD−1)80wt%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0061】
実施例7
得られた易開封性共押出多層フィルムのシール層(C)の厚さを10μmと中間層(B)の厚さを35μmとする以外は、実施例1と同様に行った。
【0062】
比較例1
中間層(B)を直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)80wt%と直鎖状ポリエチレン(LL−2)10wt%とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−1)10wt%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0063】
比較例2
中間層(B)を直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)60wt%と直鎖状ポリエチレン(LL−2)5wt%とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−1)5wt%とホモポリプロピレン(PP−1)30wt%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0064】
比較例3
シール層(C)をホモポリプロピレン(PP−1)とする以外は実施例1と同様に行った。
【0065】
比較例4
シール層(C)を、シングルサイト触媒を用いて合成されたエチレンプロピレンコポリマー(PP−2)20wt%とマルチサイト触媒を用いて合成されたエチレンプロピレンコポリマー(PP−3)80wt%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0066】
比較例5
基材層(A)を高密度ポリエチレン(HD−1)とする以外は実施例1と同様に行った。
【0067】
比較例6
基材層(A)を低密度ポリエチレン(LD−1)とする以外は実施例1と同様に行った。
【0068】
比較例7
得られた易開封性共押出多層フィルムのシール層(C)の厚さを22μmと中間層(B)の厚さを23μmとする以外は、実施例1と同様に行った。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】