【0020】
PQQ二ナトリウム塩の結晶Aの製造
PQQ二ナトリウム塩の結晶Aは、方法(A)懸濁結晶化法、方法(B)緩慢揮発法または方法(C)貧溶媒沈殿結晶化法によって製造することができる。
方法(A)懸濁結晶化法、方法(B)緩慢揮発法または方法(C)貧溶媒沈殿結晶化法の例示は以下のとおりである。本分野の一般技術者は、常識によってこれらの方法における条件を調整することができる。
方法(A):25℃と50℃における懸濁結晶化法:PQQ二ナトリウム塩を25℃と50℃の条件で溶媒と撹拌して24h以上平衡させ、ろ過して結晶を得る。方法(B)緩慢揮発法:PQQ二ナトリウム塩を溶媒と撹拌し、均一に混合し、溶解させ、そして25℃と50℃の条件で溶媒を揮発させ、結晶を得る。方法(C)貧溶媒沈殿結晶化法:上述(1)によって近似溶解度を測定し、室温の条件における溶解度が大きく違う2種類の溶媒を1組として組み合わせる。約5〜200mgのPQQ二ナトリウム塩を取って0.5〜5mlの溶解度の高い溶媒に溶解させた後、4〜20mlのPQQ二ナトリウム塩に対する溶解度が非常に低い溶媒(貧溶媒)を入れ、析出して沈殿し、結晶を得る。
25℃で方法(A)を行う操作に使用できる溶媒の例は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、水、メタノール:水(1:1)、エタノール:水(1:1)、アセトン:水(1:1)、アセトニトリル:水(1:1)、テトラヒドロフラン:水(1:1)、メタノール:ヘキサン(1:1)、エタノール:ヘキサン(1:1)、アセトニトリル:ヘキサン(1:1)、テトラヒドロフラン:ヘキサン(1:1)、メタノール:メチル-t-ブチルエーテル(1:1)、エタノール:メチル-t-ブチルエーテル(1:1)、メタノール:トルエン(1:1)、エタノール:トルエン(1:1)、アセトニトリル:トルエン(1:1)、メタノール:メチルイソブチルケトン(1:1)を含むが、これらに限定されない。
50℃で方法(A)を行う操作に使用できる溶媒の例は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、エタン、ヘプタン、メタノール:水(1:1)、エタノール:水(1:1)、アセトニトリル:水(1:1)、テトラヒドロフラン:水(1:1)、メタノール:ヘキサン(1:1)、エタノール:ヘキサン(1:1)、アセトニトリル:ヘキサン(1:1)、トルエン:ヘキサン(1:1)、メタノール:メチル-t-ブチルエーテル(1:1)、エタノール:メチル-t-ブチルエーテル(1:1)、メタノール:トルエン(1:1)、エタノール:トルエン(1:1)、アセトニトリル:トルエン(1:1)、メタノール:メチルイソブチルケトン(1:1)を含むが、これらに限定されない。ここで、原料と溶媒の質量体積比(g/L)は100:1〜1:1である。
方法(A)における前述の25℃と50℃の条件における撹拌・平衡化の時、好ましくは必要によって撹拌し、さらに真空条件で溶媒を揮発させ、撹拌時間は2h〜7dが好ましい。
25℃で方法(B)を行う操作に使用できる溶媒の例は、メタノール:水(1:2、1:6)、エタノール:水(1:2、1:6)、イソプロパノール:水(1:2)、アセトン:水(2:9、1:4)、アセトニトリル:水(2:5、1:4)、テトラヒドロフラン:水(2:5、1:4)を含むが、これらに限定されない。(3)50℃における緩慢揮発法に使用される溶媒の例を挙げると、メタノール:水(1:6)、エタノール:水(1:2)、イソプロパノール:水(1:2)、アセトン:水(2:9)、アセトニトリル:水(2:5、1:4)、テトラヒドロフラン:水(2:5)を含む。ここで、原料と溶媒の質量体積比(g/L)は10:1〜1:100である。
方法(B)における前述の撹拌・平衡化は、好ましくは必要によって撹拌し、さらに25℃と50℃の条件で溶媒を揮発させ、揮発時間は2h〜10dが好ましい。
方法(C)貧溶媒沈殿結晶化法における前述の室温の条件における溶解度が大きく違う2種類の溶媒の組み合わせ(溶媒/貧溶媒)は、水/メタノール、水/エタノール、水/イソプロパノール、水/アセトン、水/アセトニトリル、水/テトラヒドロフランなどを含む。ここで、原料と溶媒の質量体積比(g/L)は10:1〜1:100である。
方法(C)における前述の貧溶媒を入れた後の析出沈殿の時間は、2h〜2dとする。
本発明の方法(A)、(B)または(C)によって、非常に高い純度の結晶Aを得ることができ、高速液相クロマトグラフィーで純度を測定したところ、99.8%を超えることができる。
【実施例】
【0026】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。本分野の技術者は、本発明に対して適切な修正、変更をすることができるが、これらの修正および変更はいずれも本発明の範囲内に含まれる。
以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、本分野における通常の方法を使用することができ、例えば「結晶薬物」(呂揚、杜冠華編集、人民衛生出版社、2009年)またはメーカーのお薦めの条件を参照してもよく、商事会社によって測定されてもよい。以下の実施例において、すべての試薬は市販のものである。
特に断らない限り、%と部は、重量で計算される。別の定義がない限り、本文に用いられるすべての専門用語と科学用語は、本分野の技術者に知られている意味と同様である。また、記載の内容と類似或いは同等の方法及び材料は、いずれも本発明の方法に用いることができる。ここで記載の好ましい実施方法及び材料は例示のためだけである。
【0027】
参考例.PQQ二ナトリウム塩の製造
以下のような操作によってPQQ二ナトリウム塩を得た。
Coreyらが1981年に報告した化学合成文献(J. Am. Chem. Soc., 1981, 103,5599〜5600)に基づき、合成プロセスの経路および条件を最適化して改善し、9つの工程で反応させてPQQ二ナトリウム塩を得た。
Coreyの文献と比較すると、本発明で使用される方法の最適化して改善したところは、主に、1)接触水素化反応の文献で使用される触媒の貴金属の白金をパラジウムに変えること、2)文献でのジアゾカップリング反応におけるカップリング試薬の2-メチルアセト酢酸メチルを2-メチルアセト酢酸エチルに変えること、3)文献においてエステル加水分解反応でまずオルトギ酸エステルと反応させてモノケタールを得た後、塩基性の条件で加水分解して最終産物を得るのを、直接塩基性の条件で加水分解した後、pHを調整して産物を得るのに改善したことである。
具体的な合成過程は、以下の通りである。
(1)ホルミル化反応:原料の2-メトキシ-5-ニトロアニリンは、ギ酸および無水酢酸の作用下でアミノ基がホルミル化して保護され、N-(2-メトキシ-5-ニトロフェニル)ホルムアミドを得た。
(2)接触水素化反応:アミノ基がホルミル化して保護された化合物は、エタノールを溶媒とし、パラジウム/炭素を触媒とする条件で、芳香族環のニトロ基がアミノ基に還元され、N-(5-アミノ-2-メトキシフェニル)ホルムアミドを得た。
(3)ジアゾカップリング反応:亜硝酸ナトリウムの作用下でアミノ基をジアゾ化した後、フルオロホウ酸ジアゾニウム塩を形成し、フルオロホウ酸ジアゾニウム塩を直接2-メチルアセト酢酸エチルとカップリングして2-{[(3-ホルムアミド-4-メトキシ)アリール]ヒドラゾノ}プロパン酸エチルを得た。
(4)ピロール環形成反応:前の工程の産物はギ酸の作用下でピロール環を形成し、6-ホルミルアミノ-5-メトキシ-1H-インドール-2-カルボン酸エチルを得た。
(5)ホルムアミド加水分解反応:工程1で保護されたホルムアミド基は酸性の条件でアミド結合が断裂し、遊離のアミノ基になり、6-アミノ-5-メトキシ-1H-インドール-2-カルボン酸エチルを得た。
(6)環形成反応:前の工程で遊離のアミノ基になった産物が2-オキソグルタコン酸ジメチルと反応して環を形成し、9-ヒドロキシ-5-メトキシ-6,7,8,9-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,3-f]キノリン-2,7,9-トリカルボン酸-2-エチル-7,9-ジメチルを得た。
(7)キノリン環の形成:前の工程の産物は酢酸銅および酸性条件でキノリン環を形成し、5-メトキシ-1H-ピロロ[2,3-f]キノリン-2,7,9-トリカルボン酸-2-エチル-7,9-ジメチルを得た。
(8)酸化反応:前の工程の産物は酸化剤の作用下でキノン環を形成し、4,5-ジオキシ-4,5-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-f]キノリン-2,7,9-トリカルボン酸-2-エチル-7,9-ジメチルを得た。
(9)エステル加水分解反応:PQQエステルは塩基性条件で3つのエステル基が加水分解し、加水分解終了後6mol/Lの塩酸で溶液のpHを3.0に調整し、3時間保持後固体、即ちPQQ二ナトリウム塩を分離した。
得られたPQQ二ナトリウム塩の原料は、結晶Cである。
得られたPQQ二ナトリウム塩を高速液相クロマトグラフィーによって以下のような条件で測定したところ、純度が99.0%超であった。
装置型式:UlTiMate3000、米国ダイオネクス
カラム:YMC-C18 250×4.6mm I.D.
移動相:アセトニトリル:100mMリン酸二水素カリウム=12:88、リン酸でpH2.0に調整した
検出波長:249nm
カラム温度:35℃
流速:1.0 ml/min
仕込み量:10μl
【0028】
実施例1.懸濁結晶化法によるPQQ二ナトリウム塩の結晶Aの製造および得られた結晶の性質の研究
以上の参考例のように製造された10mgのPQQ二ナトリウム塩(純度≧98、市販品としてsigma社からPQQ二ナトリウム塩、製品番号:80198-10MG-Fを購入してもよい。)を取り、25℃と50℃の条件で1mLのアセトニトリルと撹拌して5d平衡化した後、それぞれ溶液をろ過し、固体の部分を空気中で10min乾燥し、PQQ二ナトリウム塩の結晶Aを得た。
得られたPQQ二ナトリウム塩の結晶Aに対し、粉末X線回折分析(XRPD、
図1)、熱重量分析(TG、
図2)、示差走査熱量測定(DSC、
図3)および吸湿性分析(DVS、
図4)を行った。
1.粉末X線回折スペクトル
以下に示す条件で得られた結晶の粉末X線回折スペクトルを測定した。結果を
図1に示す。粉末X線回折によってCu-Kα放射線で得られた2θのピークは、大体9.2°、9.6°、11.6°、13.5°、14.9°、16.0°、18.2°、18.8°、19.4°、20.4°、21.9°、22.7°、23.2°、23.8°、25.6°、26.4°、27.3°、28.4°、30.7°、31.7°、32.4°、33.7°、35.0°、35.8°、36.7°、38.0°、38.6°(いずれも±0.2°)にある。
装置型式:Bruker D8 advance
ターゲット:Cu-Kα(40kV、40mA)
試料と検出器の距離:30 cm
走査範囲:3°〜40°(2θ値)
走査ステップ:0.1 s
得られた固体は結晶性のものである。
2.熱重量分析
TG(
図2)では、結晶Aは、30〜200℃で1.33%、6.02%の2箇所の重量ロス(一つの水分子の理論重量ロス値が4.6%)があり、水和物の可能性があり、分解ピーク値の温度が312.5℃であったことが示された。
装置型式:Netzsch TG 209F3
温度範囲:30〜400℃
走査速度:10K/min
パージガス:25 mL/min
保護ガス:15 mL/min
3.示差走査熱量測定
相応のDSC(
図3)はこの温度区間(30〜200℃)で吸熱ピークが現れ、この結晶が水を含有することが示された。また、昇温範囲で溶融現象が見られなかったのは、その融点が薬物の分解温度以上である可能性があることを示した。
装置型式:Perkin Elmer DSC 8500
温度範囲:50〜280℃
走査速度:10℃/min
窒素ガス流速:50ml/min
4.吸湿性分析
DVS(
図4)では、結晶Aは、40%RHで水分を1.6%、65%RHで水分を2.3%、80%RHで水分を2.8%吸収したことが示された。通常の保存環境において、40〜80%RHで、吸湿性の変化が2%未満で、わずかな吸湿性がある。
装置型式:SMS DVS Intrinsic、0〜95%RH
温度:25℃
【0029】
実施例2.緩慢揮発法によるPQQ二ナトリウム塩の結晶Aの製造および得られた結晶の性質の研究
3mgのPQQ二ナトリウム塩を2組用意し(参考例で製造されたもの)、それぞれ160μL無水エタノール+560μL水を含む溶媒および160μL無水エタノール+320μL水を含む溶媒と均一に混合し、溶解させ、それぞれ25℃と50℃でゆっくり乾燥するまで揮発させ、溶媒を揮発させた後、減圧で乾燥し、PQQ二ナトリウム塩の結晶Aを得た。
実施例1に記載の条件で得られた結晶の粉末X線回折スペクトルを測定し、かつ熱重量分析、示差走査熱量測定および吸湿性分析を行ったが、得られた結果が実施例1と同様であった。
【0030】
実施例3.貧溶媒沈殿結晶化法によるPQQ二ナトリウム塩の結晶Aの製造および得られた結晶の性質の研究
10mgのPQQ二ナトリウム塩を取り(参考例で製造されたもの)、2mLの水に溶解させ、かつ撹拌して平衡化させた。その後、6mLの無水エタノールを含有する褐色ガラス瓶に入れ、12h後沈殿が析出した。ろ過して得られた固体を加圧乾燥し、PQQ二ナトリウム塩の結晶Aを得た。
実施例1に記載の条件で得られた結晶の粉末X線回折スペクトルを測定し、かつ熱重量分析、示差走査熱量測定および吸湿性分析を行ったが、得られた結果が実施例1と同様であった。
【0031】
実施例4.懸濁結晶化法によるPQQ二ナトリウム塩の結晶Bの製造および得られた結晶の性質の研究
10mgのPQQ二ナトリウム塩(参考例で製造されたもの)を取り、25℃と50℃の条件で1mLの酢酸エチルと撹拌して5d平衡化した後、それぞれ溶液をろ過し、固体の部分を減圧で乾燥し、PQQ二ナトリウム塩の結晶Bを得た。
実施例1で示された条件を使用し、得られたPQQ二ナトリウム塩の結晶Bに対し、粉末X線回折分析(XRPD、
図5)、熱重量分析(TG、
図6)、示差走査熱量測定(DSC、
図7)および吸湿性分析(DVS、
図8)を行った。
1.粉末X線回折分析
得られた結晶Bの粉末X線回折スペクトルを測定した。結果を
図5に示す。粉末X線回折によってCu-Kα放射線で得られた2θのピークは、8.1°、9.0°、10.1°、13.7°、16.4°、17.6°、18.2°、23.9°、25.8°、27.2°、31.0°、39.5°(いずれも±0.2°)に現れた。
2.熱重量分析
TG(
図6)では、結晶Bは、30〜200℃で5.98%、6.21%の2箇所の重量ロス区間(一つの水分子の理論重量ロス値が4.6%で、一つの酢酸エチルの理論重量ロス値が19.1%)があり、水和物の可能性があることが示された。分解ピーク値の温度が303.3℃であった。
3.示差走査熱量測定
相応のDSC(
図7)はこの温度区間で吸熱ピークが現れ、この結晶が水を含有することが示された。また、昇温範囲で溶融現象が見られなかったのは、結晶Bの融点が薬物の分解温度以上である可能性があることを示した。
4.吸湿性分析
DVS(
図8)では、結晶Bは、40%RHで水分を7.3%、65%RHで水分を11.0%、80%RHで水分を12.0%吸収したことが示された。相対湿度20〜40%の範囲で、一水和物を、相対湿度50%超の範囲で、二水和物を形成し、湿度がさらに増加すると、多水和物を形成する。
【0032】
実施例5.緩慢揮発法によるPQQ二ナトリウム塩の結晶Bの製造および得られた結晶の性質の研究
3mgのPQQ二ナトリウム塩を2組用意し、一方は160μLイソプロパノール+960μL水を含む溶媒と均一に混合し、溶解させ、25℃で乾燥するまで揮発させ、もう一方は160μLテトラヒドロフラン+640μL水を含む溶媒と均一に混合し、溶解させ、50℃で揮発させた。溶媒を揮発させた後、減圧で乾燥し、PQQ二ナトリウム塩の結晶Bを得た。
実施例1に記載の条件で得られた結晶の粉末X線回折スペクトルを測定し、かつ熱重量分析、示差走査熱量測定および吸湿性分析を行ったが、得られた結果が実施例4と同様であった。
【0033】
比較実施例1.PQQ二ナトリウム塩の結晶Cの製造および得られた結晶の性質の研究
PQQ二ナトリウム塩の結晶Cを得る方法の詳細は<参考例>を参照する。
実施例1で示された条件を使用し、得られたPQQ二ナトリウム塩の結晶Cに対し、粉末X線回折分析(XRPD、
図9)、熱重量分析(TG、
図10)、示差走査熱量測定(DSC、
図11)および吸湿性分析(DVS、
図12)を行った。
1.粉末X線回折スペクトル
結晶Cの粉末X線回折スペクトルは、結果を
図9に示し、粉末X線回折によってCu-Kα放射線で得られた2θのピークは、8.2°、8.6°、9.0°、10.1°、13.7°、17.6°、18.2°、23. 9°、26.9°、27. 3°、28.3°、31.0°、31.6°、32.6°、39.4°、45.3°(いずれも±0.2°)に現れた。
2.熱重量分析
TG(
図10)では、実験の開始段階ですでに顕著な重量ロスがあり、表面の水分が多く、また、結晶Cは、30〜180℃で4.37%、7.06%の2箇所の重量ロス区間(一つの水分子の理論重量ロス値が4.6%)があり、水和物の可能性があることが示された。
3.示差走査熱量測定
相応のDSC(
図11)はこの温度区間で吸熱ピークが現れ、この結晶が水を含有することが示された。
4.吸湿性分析
DVS(
図12)では、結晶Cは高い吸湿性を有し、通常の保存の湿度範囲内で、湿度の変化は5〜15%と幅が広いことが示された。40%RHで水分を7.8%、65%RHで水分を13.8%、80%RHで水分を15.7%吸収した。相対湿度20〜40%の範囲で、一水和物を、相対湿度50%超の範囲で、二水和物を形成し、湿度がさらに増加すると、多水和物を形成することが初歩的に推測された。
【0034】
比較実施例2.単結晶データの粉末X線回折の結果への変換
非特許文献1(JACS,111卷,6822-6828)で報告された単結晶のX線構造分析のデータを使用し、当該結晶(結晶D)による粉末X線回折のピークをシミュレーションした。origin作図ソフトを使用し、結果を
図19に示す。結果から、そのピーク値が本発明の結晶の位置と異なることがわかった(詳細は表2を参照する)。
【0035】
比較実施例3.特許文献1に記載の結晶
特許文献1に記載の結晶1(本発明に記載の結晶E)の粉末X線回折を本発明の結晶A、Bと比較した。結果から、そのピーク値が本発明の結晶の位置と異なることがわかった(詳細は表2を参照する)。
【0036】
比較例1.PQQ二ナトリウム塩の結晶AおよびBと結晶C、DおよびEの比較
XRPD、TG、DSC、DVS、ラーマン分光(Raman)および赤外分光(IR)の方法によって実施例で得られた3種類の結晶(即ち結晶A、BおよびC)を比較したが、ここのXRPD、TG、DSC、DVSの測定方法は実施例1に記載のものと同様である。
Ramanスペクトル
装置型式:Thermo DXR Raman Microscope
露出時間(秒):2.0
レーザ:780nm
レーザ出力:50mW
レーザ:25μmスリット
IR
装置型式:Nicolet FTIR 6700
解析:4.000
サンプリング:2.0
光学速度:0.6329
開き口:100.00
検出器:DTGS KBr
ビームスプリッター:KBr
【0037】
表2、表3および重ね図(
図13〜18)では、実施例1で得られた結晶A、実施例4で得られた結晶B、比較実施例1で得られた結晶C、比較実施例2で得られた結晶D、比較実施例3で得られた結晶E(特許文献1、出願号CN201080031945)の比較結果をまとめた。
【0038】
【0039】
3.各結晶形の固体の特徴付けの重ね図分析
XRPDの重ね図(
図13A〜C)では、結晶Aは、9.2°、9.6°、14.9°、16.0°などで結晶Bおよび結晶Cと顕著な違いがあり、結晶Bは、9.0°、10.1°、16.4°、23.9°、27.2°で結晶Cのピーク強度と顕著な違いがあることが示された。
TGの重ね図(
図14)では、結晶A、B、Cはいずれも溶媒の重量ロスがあることが示された。
DSCの重ね図(
図15)では、結晶A、B、Cはいずれも吸熱ピークが現れ、結晶A、B、Cの融点が薬物分解温度以上であることが示された。
DVSの重ね図(
図16)では、3種類の結晶形の吸湿性が異なり、中では、結晶Aの吸湿性が最も低く、80%RHで水分を2.8%吸収し、結晶Bの吸湿性が中等で、80%RHで水分を12.0%吸収し、結晶Cの吸湿性が最も高く、80%RHで水分を15.7%吸収したことが示された。
ラーマン(Raman)分光スペクトルの重ね図(
図17A〜C)の結果では、結晶Aは1579.70 cm
-1、1539.20 cm
-1、1327.07 cm
-1などで結晶B、結晶Cと異なることが示された。
赤外分光(IR)スペクトルの重ね図(
図18A〜C)では、結晶Aは3072.05 cm
-1、1577.49 cm
-1、1295.93 cm
-1などで結晶B、結晶Cと異なることが示された。
【0040】
比較例2.本発明のPQQ二ナトリウム塩の結晶と既存の技術文献で公開された結晶のXRPDの比較
特許文献1の実施例1に記載の方法によって結晶Eを製造し、かつ本発明の結晶A、Bおよび非特許文献1(JACS,111卷,6822-6828)で報告された単結晶とXRPDの比較を行った。この4種類の結晶の比較は
図20に示す。
この図から、結晶Aは9.6°、11.6°、14.9°、16.0°、18.8°、19.4°、19.9°、20.4°などで結晶Eと顕著な違いがあることがわかる。そして、結晶Aおよび結晶BのスペクトルはJACSに記載の単結晶とも顕著な違いがある。
【0041】
比較例3.本発明のPQQ二ナトリウム塩の結晶と結晶EのDVSおよび性質の比較
前述のように、特許文献1の実施例1に記載の方法によって結晶Eを製造した。前記実施例に使用されるDVS測定方法および条件を使用して結晶Eの吸湿性分析図(
図21に示すように)を得、かつその吸湿性能を本発明の結晶Aおよび結晶Bと比較した(結果を
図22に示す)。
図21から、結晶Eは、ある程度の吸湿性を有することがわかる。40%RHで水分を11.8%、65%RHで水分を13.0%、80%RHで水分を13.6%吸収した。通常の保存環境において、40〜80%RHで、吸湿性の変化が2%未満で、わずかな吸湿性がある。
図22におけるDVSグラフの重ね比較から、3種類の結晶形の吸湿性が異なることがわかる。中では、結晶Aの吸湿性が最も低く、湿度80%で水分を約3.3%吸収し、結晶Bの吸湿性が比較的に高く、湿度80%で水分を約12.0%吸収し、結晶Eの吸湿性が最も高く、湿度80%で水分を約13.6%吸収した。本発明の結晶の吸湿性は、既存技術の結晶Eよりもはるかに優れ、かつ結晶Aの性能が特に良い。
【0042】
以上の実施例における結果をまとめると、以下のことがわかる。
本発明の結晶A、BのCu-Kα線回折を使用した粉末X線回折による2θ値はまったく新しいため、本発明の結晶形は新規なものであることが示唆される。
そして、本発明の結晶A、Bは、結晶度、安定性、吸湿性および加工性の面で顕著な優越性を有するため、工業、医薬や機能性食品などの分野で幅広い応用の未来性がある。
【0043】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をする、あるいはここに記載される特徴を組み合わせることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。