特許第6103338号(P6103338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103338
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】作業車輌の原動部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20170316BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20170316BHJP
   A01D 69/03 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B60K11/04 F
   B60K11/04 B
   A01D41/12 E
   A01D69/03
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-145878(P2012-145878)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-8839(P2014-8839A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】藤田 靖
(72)【発明者】
【氏名】白方 幹也
(72)【発明者】
【氏名】山本 次郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】上路 嘉隆
(72)【発明者】
【氏名】西崎 宏
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−096581(JP,A)
【文献】 特開2009−001187(JP,A)
【文献】 特開2012−070709(JP,A)
【文献】 特開2005−343220(JP,A)
【文献】 特開2011−156898(JP,A)
【文献】 特開2011−025896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
A01D 41/12
A01D 69/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(20)を内装するエンジンルーム(8)の右外側部に、濾過体(14)を有するエンジンカバー(11)を設け、
該エンジンルーム(8)内におけるエンジン(20)と濾過体(14)の間の部位に、エンジン(20)の冷却水を冷却するラジエータ(60)を配置し、
前記エンジン(20)とラジエータ(60)の間の部位には濾過体(14)から外気を吸入するファン(40)を配置し、該ラジエータ(60)と濾過体(14)の間の部位には車体に備えた油圧機器の作動油を冷却するオイルクーラ(70)を配置し、該オイルクーラ(70)と濾過体(14)の間の部位には、エンジン(20)に吸気される空気を冷却するインタークーラ(80)と、キャビン(6)用の空調機器の冷媒を冷却するコンデンサ(90)を配置し、
前記エンジン(20)の上側にプレート(32)を配置し、該プレート(32)の左側部をエンジン(20)の左側の上部に延設するフレーム(31)に固定し、前記プレート(32)の右側部を下側に向けて折り曲げてエンジン(20)の右側面に固定し、
前記プレート(32)の左側の部位に、前記エンジン(20)の回転をファン(40)に伝動する油圧式無段変速装置(30)を配置し、前記エンジン(20)の右側部に前記ファン(40)を回転自在に支持する入力軸(41)を支持し、
前記油圧式無段変速装置(30)の出力軸(33)を前記エンジン(20)の上部を越えて右外側に向けて延設し、該出力軸(33)の左側部を前記プレート(32)の左側部に立設した支持部材(32A)で支持し、前記出力軸(33)の右側部は前記プレート(32)の右側部に立設した支持部材(32A)で支持し、該出力軸(33)の右側端部に支持した第1プーリ(34)と前記入力軸(41)に支持した第2プーリ(42)にベルト(35)を巻き掛け、該第2プーリ(42)の基部に前記ファン(40)の中心部を連結し、
前記第1プーリ(34)を前記ファン(40)の回転軌跡の外側に偏倚して配置した作業車輌の原動部構造。
【請求項2】
前記インタークーラ(80)とコンデンサ(90)を、上下方向にずらして配置した請求項1記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項3】
前記コンデンサ(90)の上部を、前記ファン(40)の軸心方向視においてラジエータ(60)の上端部よりも上側に偏倚させて配置した請求項1又は2記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項4】
前記インタークーラ(80)の下端部を、前記ファン(40)の軸心方向視において該ファン(40)の回転軌跡の下端部近傍に配置した請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項5】
前記コンデンサ(90)を、前記インタークーラ(80)よりも濾過体(14)に近接する部位に配置した請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項6】
前記ラジエータ(60)とオイルクーラ(70)の間の部位に、該ラジエータ(60)に対向する部位に開口部(65B)を有する分離板(65)を配置した請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車輌の原動部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業車輌のエンジンルーム内に配置されたエンジンとラジエータ、オイルクーラ、コンデンサ等の冷却ユニットの外周を囲む箱状のカバーと、該箱状のカバーの開口部を覆う板状のカバーが開示されている。また、前記冷却ユニットを効率的に冷却し、冷却ユニットの取付け及び保守作業を容易にするために、ラジエータの対角線方向にずらしてコンデンサとオイルクーラを配置する構造が開示されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−1187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の発明における原動部は、インタークーラとコンデンサは多くの部分で重なり合って配置されているために、コンデンサによって外気の吸引が妨げられインタークーラの温度が所定温度以上に上昇し、エンジンの出力を低下する虞があった。
また、ラジエータの外側のオイルクーラ、インタークーラ、及びコンデンサが相互に重なり合って配置されているために、オイルクーラの外面に十分な外気を吸引することができずオイルクーラの温度が所定温度以上に上昇する虞があった。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、エンジン(20)を内装するエンジンルーム(8)の右外側部に、濾過体(14)を有するエンジンカバー(11)を設け、該エンジンルーム(8)内におけるエンジン(20)と濾過体(14)の間の部位に、エンジン(20)の冷却水を冷却するラジエータ(60)を配置し、前記エンジン(20)とラジエータ(60)の間の部位には濾過体(14)から外気を吸入するファン(40)を配置し、該ラジエータ(60)と濾過体(14)の間の部位には車体に備えた油圧機器の作動油を冷却するオイルクーラ(70)を配置し、該オイルクーラ(70)と濾過体(14)の間の部位には、エンジン(20)に吸気される空気を冷却するインタークーラ(80)と、キャビン(6)用の空調機器の冷媒を冷却するコンデンサ(90)を配置し、前記エンジン(20)の上側にプレート(32)を配置し、該プレート(32)の左側部をエンジン(20)の左側の上部に延設するフレーム(31)に固定し、前記プレート(32)の右側部を下側に向けて折り曲げてエンジン(20)の右側面に固定し、前記プレート(32)の左側の部位に、前記エンジン(20)の回転をファン(40)に伝動する油圧式無段変速装置(30)を配置し、前記エンジン(20)の右側部に前記ファン(40)を回転自在に支持する入力軸(41)を支持し、前記油圧式無段変速装置(30)の出力軸(33)を前記エンジン(20)の上部を越えて右外側に向けて延設し、該出力軸(33)の左側部を前記プレート(32)の左側部に立設した支持部材(32A)で支持し、前記出力軸(33)の右側部は前記プレート(32)の右側部に立設した支持部材(32A)で支持し、該出力軸(33)の右側端部に支持した第1プーリ(34)と前記入力軸(41)に支持した第2プーリ(42)にベルト(35)を巻き掛け、該第2プーリ(42)の基部に前記ファン(40)の中心部を連結し、前記第1プーリ(34)を前記ファン(40)の回転軌跡の外側に偏倚して配置した作業車輌の原動部構造である。
【0007】
【0008】
請求項2に係る発明は、前記インタークーラ(80)とコンデンサ(90)を、上下方向にずらして配置した請求項1記載の作業車輌の原動部構造である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記コンデンサ(90)の上部を、前記ファン(40)の軸心方向視においてラジエータ(60)の上端部よりも上側に偏倚させて配置した請求項1又は2記載の作業車輌の原動部構造である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記インタークーラ(80)の下端部を、前記ファン(40)の軸心方向視において該ファン(40)の回転軌跡の下端部近傍に配置した請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記コンデンサ(90)を、前記インタークーラ(80)よりも濾過体(14)に近接する部位に配置した請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記ラジエータ(60)とオイルクーラ(70)の間の部位に、該ラジエータ(60)に対向する部位に開口部(65B)を有する分離板(65)を配置した請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、
エンジン(20)の上側にプレート(32)を配置し、プレート(32)の左側部をエンジン(20)の左側の上部に延設するフレーム(31)に固定し、プレート(32)の右側部を下側に向けて折り曲げてエンジン(20)の右側面に固定し、プレート(32)の左側の部位に、エンジン(20)の回転をファン(40)に伝動する油圧式無段変速装置(30)を配置し、エンジン(20)の右側部にファン(40)を回転自在に支持する入力軸(41)を支持し、油圧式無段変速装置(30)の出力軸(33)をエンジン(20)の上部を越えて右外側に向けて延設し、出力軸(33)の左側部をプレート(32)の左側部に立設した支持部材(32A)で支持し、出力軸(33)の右側部はプレート(32)の右側部に立設した支持部材(32A)で支持し、出力軸(33)の右側端部に支持した第1プーリ(34)と入力軸(41)に支持した第2プーリ(42)にベルト(35)を巻き掛け、第2プーリ(42)の基部にファン(40)の中心部を連結し、第1プーリ(34)をファン(40)の回転軌跡の外側に偏倚して配置したので、この油圧式無段変速装置(30)がファン(40)による冷却風の送風の障害とならず、ラジエータ(60)等の冷却効率を高めることができる。
【0014】
また、エンジン(20)の振動によって油圧式無段変速装置(30)とファン(40)の入力軸(41)が同一方向に振動するので、ベルト等の伝動部材の位置ズレ等が低減してベルト(35)の外れを防止し、油圧式無段変速装置(30)からファン(40)への伝動部を簡易な構成にすることができ、部品点数を削減することができる。さらに、油圧式無段変速装置(30)の出力軸(33)の撓みを防止することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、インタークーラ(80)とコンデンサ(90)を上下方向にずらして配置しているので、コンデンサ(90)及びインタークーラ(80)によるファン(40)の吸気抵抗の増加を抑制し、ラジエータ(60)を効率的に冷却することができ、エンジン(20)の出力の低下を防止することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、コンデンサ(90)の上部をラジエータ(60)の上端部よりも上側に偏倚させて配置しているので、コンデンサ(90)によるファン(40)の吸引効率の低下を少なくし、コンデンサ(90)の内側に並設されたオイルクーラ(70)、ラジエータ(60)等を効率良く冷却することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3記載の発明の効果に加えて、インタークーラ(80)の下端部をファン(40)の回転軌跡の下端部近傍に配置しているので、コンデンサ(90)とインタークーラ(80)の冷却効率を高めることができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4記載の発明の効果に加えて、コンデンサ(90)をインタークーラ(80)よりも濾過体(14)に近接する部位に配置しているので、コンデンサ(80)の内側に形成された空間にインタークーラ(80)とエンジン(20)を接続するホースを配設することができる。また、該空間にファン(40)で吸引された外気を滞留させオイルクーラ(70)を能率良く冷却することができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜5記載の発明の効果に加えて、ラジエータ(60)とオイルクーラ(70)の間の部位に、ラジエータ(60)に対向する部位に開口部(65B)を有する分離板(65)を配置しているので、エンジンルーム(8)の分離板(65)よりも内側の部位への排藁等の粉塵の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】コンバインの右側面図である。
図2】コンバインの左側面図である。
図3】コンバインの平面図である。
図4】原動部の(a)は要部平面図であり、(b)は要部右側面図であり、(c)は要部正面図である。
図5】原動部の要部正面図である。
図6】原動部の右側面図である。
図7】原動部の要部平面図である。
図8】原動部の正面図である。
図9】逆転時のHSTの説明図である。
図10】正転時のHSTの説明図である。
図11】他の原動部のHSTの(a)は要部正面図であり、(b)は要部平面図であり、(c)は要部左側面図である。
図12】制御装置の接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするために便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0022】
コンバインは、図1〜3に示すように、機体フレーム1の下方には土壌面を走行するための左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の上方左側には脱穀・選別を行う脱穀装置3が設けられ、脱穀装置3の前方には圃場の穀を収穫する刈取装置4が設けられている。脱穀装置3で脱穀・選別された穀粒は脱穀装置3の右側に設けられたグレンタンク5に貯留され、貯留された穀粒は排出筒7により外部へ排出される。また、機体フレーム1の上方右側には操作者が搭乗する操作部を備えたキャビン6が設けられ、キャビン6の下方にはエンジンルーム8が設けられている。
【0023】
図4〜7に示すように、エンジンルーム8の内側にはエンジン20が配置され、エンジン20の外側(外気が吸入される上流側)には、一定の間隔を隔ててラジエータ60が配置され、エンジン20とラジエータ60の間には正転・逆転駆動するファン40が配置されている。また、ラジエータ60の外側にはオイルクーラ70(オイルクーラ70A,70B)が上下に配置され、下側に配置されたオイルクーラ70Bの外側にはインタークーラ80が配置され、上側に配置されたオイルクーラ70Aの外側には、一定の間隔を隔ててコンデンサ90が配置されている。
【0024】
エンジン20は、エンジ20で発生する振動の伝達を防止するためにエンジンマウント24を介して機体フレーム1に取付けられ、エンジン20の出力軸であるクランク軸21は、左右方向での内側に向かって延設している。また、クランク軸21の回転は、ベルトを介してファン40を駆動するエンジン20の上側に設置された油圧式無段変速装置30に伝動される。
【0025】
油圧式無段変速装置(HST)30は、入力軸に伝動された回転の増減速と、ファン40の正転・逆転駆動状態の切換えを行なう機器であり、油圧式無段変速装置30は、ファン40の吸入・排気を能率良く行なうためにファン40の回転軌跡の外側に偏倚したエンジン20の上方左側に配置されている。なお、回転の増減速、正転・逆転駆動状態の切換えは、キャビン6内に設けられた操作スイッチ等によって遠隔操作することができる。
【0026】
油圧式無段変速装置30によって増減速等された回転は、油圧式無段変速装置30から外側に向かって延設した出力軸33の端部に支持されているプーリ(請求項における「第1プーリ」)34に伝動される。
【0027】
油圧式無段変速装置30は、図8に示すように、エンジン20の上側に架設されたプレート32の左側上面に配置されている。プレート32の左側端部はエンジン20の左上側に延設したフレーム31に固定され、下側に向かって折り曲げられた右側端部はエンジン20の右側面に固定されている。また、油圧式無段変速装置30の出力軸33の撓みを防止するために、プレート32の左右側部に立設して設けられた支持部材32A,32Aによって支持されている。
【0028】
油圧式無段変速装置30のトラニオン軸36Bに連結されたトラニオン36の先端ラックと係合する出力モータ121が故障した場合には、ファン40によってエンジンルーム8の内側に外気を吸気できなくなりエンジン20がオーバーヒートになる虞がある。図9,10に示すように、トラニオン36の後側には手動で回転させて先端部を前後方向に移動可能な逆転側ストッパボルト37Aが設けられ、トラニオン36の左側には正転側ストッパボルト37Bが設けられている。
【0029】
出力モータ121が故障し、図9に示すように、トラニオン36の後面が逆転側ストッパボルト37Aの先端部に接触している場合には、図10に示すように、トラニオン36の前面が正転側ストッパボルト37Bに接触するまで、手動で逆転側ストッパボルト37Aを回転させて先端部を前進させてトラニオン36を反時計方向に回転させる。また、トラニオン36の後面には、逆転側ストッパボルト37Aの先端部が接触する凸部を形成するのが好適である。なお、トラニオン36の後面が逆転側ストッパボルト37Aの先端部に当接している場合には冷却ファン40は逆転状態にあり、トラニオン36の前面が正転側ストッパボルト37Bの先端部に当接している場合には冷却ファン40は正転状態にある。
【0030】
油圧式無段変速装置30は、上述したエンジン20の上側に架設されたプレート32の左側上面の他に、キャビン6の下部に配置されたフレーム6Aに支持部材6Bを介して固定し、脱穀装置3の前側に設けられた入り口漏斗とキャビン6の左側部に架設されたカバー3Aの下側に配置することができる。この場合、油圧式無段変速装置30のトラニオン36と出力モータ121の嵌合いを容易に行なうために、図11に示すように、出力モータ121と対向するカバー3Aの部位には円弧状の切欠部3Bを形成するのが好適である。
【0031】
プーリ34に伝動された回転は、ベルト35を介してプーリ(請求項における「第2プーリ」)42に伝動される。また、プーリ34は、図8に示すように、ファン40によって吸引された外気の流れを良好に維持するためにファン40の回転軌跡の外側に偏倚して配置されている。
【0032】
プーリ42は、エンジン20の右面から外側に向かって延設した入力軸41にベアリングを介して回転自在に軸支されている。これによって、エンジン20とプーリ42が略同一運動を行なうのでエンジン20の振動によるプーリ34とプーリ42に巻き掛けられたベルト35の外れを防止することができる。
【0033】
プーリ42に伝動された回転はファン40に伝動される。ファン40は、正転駆動状態にあっては、エンジンカバー11の濾過体14を介して外気をエンジンルーム8の内側に吸気し、ラジエータ60、エンジン20等を冷却し、逆転駆動状態にあっては、濾過体14を介してエンジンルーム8の内側の内気を排気し、併せて、濾過体14に付着した藁屑、塵埃等を除去する機器である。また、ファン40は、羽根と羽根の基部を支持する中心部により構成され、ファン40の中心部にはプーリ42の基端部が連結されている。
【0034】
ファン40の外側には、ラジエータ60が配置されている。ラジエータ60は、エンジン20によって加熱された冷却水を冷却する機器であり、ラジエータ60の下部は、フレーム66を介して機体フレーム1に取付けられ、上部は、エンジン20の冷却水経路であるマニホールドに接続されている。また、ラジエータ60の内側には、ファン40の吸入効率を高めるためにファン40を取り囲むシュラウド61が設けられている。シュラウド61の形状は、ファン40の外周に沿わせて円形状あるいは多角形状に形成し、ファン40による外気の吸入の抵抗を小さくするため薄板状の鋼板により成形加工するのが好適である。
【0035】
ラジエータ60の上側後方には、エアクリーナ50が配置されている。エアクリーナ50は、エンジン20に供給する空気の不純物を除去する機器である。
エアクリーナ50に内装されてフィルタ等の保守・点検を容易にするためにエアクリーナ50の吸気口50Aを外側に、排気口50Bを内側に配置し、エアクリーナ50の後端部をエンジンカバー11の内側に近接して配置されている。なお、エアクリーナ50の外端部には、開閉カバーが設けられており、内装するフィルタ等の着脱作業を行なうことができる。
【0036】
ラジエータ60の外側には、排藁等の粉塵の内側への浸入を防止するために鋼材等からなる分離板65が配置されている。分離板65の下部は、フレーム66に取付けられ、上部は、ブラケット67,67を介してエンジンルーム8の上部に配置された前後側フレームに取付けられている。また、分離板65には、外気の吸入を能率良く行なうためにエアクリーナ50、ラジエータ60の右面に対向する部位にそれぞれ開口部65A,65Bが形成されている。
【0037】
分離板65の外側には、オイルクーラ70A,70Bが配置されている。オイルクーラ70Aは、走行用油圧式無段変速装置の駆動用オイルを冷却する機器であり、オイルクーラ70Bは、走行用ミッションの駆動用オイルを冷却する機器であり、それぞれ、ラジエータ60の外側に配置された分離板65にボルト等の締結部材によって着脱自在に取付けられている。
オイルクーラ70Aは、図6に示すように、外気の吸入を能率良く行なうために、ラジエータ60の上側部の前後方向の両端部を覆わないように、ラジエータ60の上側部の前後方向の略中央部に配置されている。 また、同様にオイルクーラ70Aよりも小型のオイルクーラ70Bは、ラジエータ60の下側部の前後方向の両端部を覆わないように、ラジエータ60の下側部の前後方向の略中央部に配置されている。また、オイルクーラ70Aと走行用油圧式無段変速装置を接続するホース71A、オイルクーラ70Bと走行用ミッションを接続するホース71Bは、ホース71A,71Bの破損時におけるオイルのラジエータ60等の周辺機器へ付着を防止するためにラジエータ60の下側に配置されている。
【0038】
オイルクーラ70Bの外側には、インタークーラ80が配置されている。インタークーラ80は、エンジン20の燃焼効率を高めるため、燃焼用の混合気を冷却する機器であり、インタークーラ80の前端部は、前側フレーム62Aに支持され、後端部は、上下2本の連結部材69C,69Cを介して後側フレーム62Bに支持されている。なお、前側フレーム62Aの上下部は、分離板65の前部にそれぞれ着脱自在に取付けられており、後側フレーム62Bの上下部は、分離板65の後端部にそれぞれ着脱自在に取付けられている。
【0039】
インタークーラ80は、図6に示すように、外気の吸入を能率良く行なうために、ラジエータ60の下側部の前後方向の両端部を覆わないように、また、オイルクーラ70Bの全体を覆わないように、ラジエータ60の下側部の前後方向の後側に偏倚して配置されている。また、インタークーラ80の下端部は、ファン40の軸心方向視において、該ファン40の回転軌跡の下端部近傍に配置されている。なお、インタークーラ80は、温度によって特性が大きく影響を受ける機器であり、温度による影響が小さいオイルクーラ70Bよりも外側に配置するのが好適である。
【0040】
インタークーラ80の吸気口80Aは、ゴム製のホース81によってエンジン20のタービン側のマニホールド22に接続され、インタークーラ80の排気口80Bは、ゴム製のホース82によってエンジン20のコンプレサー側のマニホールド22にそれぞれ接続されている。ホース81,82は、設置を簡易に行なうために分離板65よりも外側に配置された外側ホースと内側に配置された内側ホースを、分離板65に取付けられた連通口を有するフランジ81C,82Cによって接続した分割構造とするのが好適である。また、インタークーラ80とエンジン20との接続を容易に行なうためにホース81,82はラジエータ60の上側に配置されている。
【0041】
オイルクーラ70Aの外側には、オイルクーラ70Aの冷却能率を良くするために一定の間隔(インタークーラ80の左右方向の略幅寸法)を隔ててコンデンサ90が配置されている。コンデンサ90は、キャビン6の空調設備に利用される冷媒を冷却する機器であり、コンデンサ90の前端部は、インタークーラ80を超えて延設する前側フレーム62Aの先端部に支持され、後端部は、略T形状に形成された連結部材69Aと略I形状に形成された連結部材69Bを介してインタークーラ80を超えて延設する後側フレーム62Bの先端部に支持されている。
【0042】
コンデンサ90は、図6に示すように、外気の吸入を能率良く行なうために、ラジエータ60の上側部の前後方向の両端部を覆わないように、ラジエータ60の上側部の前後方向の略中央部に配置され、また、オイルクーラ70Aと重なる部位を低減するように、ラジエータ60の上側部及びオイルクーラ70Aの上下方向の上側に偏倚して配置されている。なお、コンデンサ90は、温度によって特性が大きく影響を受ける機器であり、温度による影響が小さいオイルクーラ70Aよりも外側に配置するのが好適であり、コンデンサ90の上端部は、分離板65の開口部65Aよりも上側に偏倚して配置されている。また、コンデンサ90とキャビン6の空調設備との接続を容易に行なうためにホース91ラジエータ60の上側に配置されている。
【0043】
エンジンカバー11の不用意な開閉を防止するために、図5,7に示すように、エンジンカバー11の前面にはロックレバー12を係止するピン11Aが設けられている。
ロックレバー12は、分離板65の前後に設けられたシールケース65Fのブラケット12Aに支持された軸12Bを中心にして上下に揺動する。また、走行時の振動等によってロクレバー12とピン11Aの係止の外れを防止するために、ロックレバー12とブラケット12Aを連結するバネ12Cによって、ロックレバー12には下側方向に向かって押圧が加えられている。
【0044】
エンジンカバー11の後面にはステー11Bが設けられており、ステー11Bはカバー軸13Aに回転自在に支持されている。回転軸13Aは、シールケース65Fに設けられたブラケット13Cから右側に向かって延設するカバー13Bの先端部に設けられている。
エンジンルーム8の内側の保守等を行なう場合には、操作者はロックレバー12を手前に引いて、ロックレバー12とピン11Aの係止を外し、エンジンカバー11の前部をカバー軸13Aを中心として右側に開放する。
【0045】
エンジンルーム8の保守等を容易に行なうために、エンジン20の右面からインタークーラ80の左面に対向するエンジンカバー11の後壁11Cは、ボルト等の締結部材によって着脱自在に固定されている。これによって、エンジンルーム8内に配置されたラジエータ60、オイルクータ70A,70B等に付着した藁屑等を取除く場合には、後壁11Cを取外して容易に行なうことができる。
【0046】
なお、キャビン6のドア6Dの開閉を容易に行ない、ドア6Dの開閉時にエンジンカバー11の不用意な開閉を防止するために、図7に示すように、平面視においてドア6Dの外周に対向するキャビン6の外側部位に設けられたシール部材6Eを、エンジンカバー11の外周に対向する分離板65の外周部位に設けられたシール部材65Eよりも外側に配置するのが好適である。また、シール部材65Eの露出による早期劣化を防止し、シール部材6Eの脱落を防止するために、エンジンカバー11のカバー軸13A側の上下方向に配置されたシール部材65Eの外側にカバー13Bを配置するのが好適である。
【0047】
次に、本実施形態における制御装置100の接続図について説明する。制御装置100の入力側には、図12に示すように、エンジンルーム8の周辺の操作者の有無を検出する人感センサ110、エンジン20を冷却する冷却水の水温を測定する水温センサ111、エンジン20に供給される空気の温度を測定する温度センサ112が接続されている。
【0048】
一方、制御装置100の出力側には、油圧式無段変速装置30のトラニオン軸36Bを中立・傾斜状態に切換える入力モータ120、油圧式無段変速装置30のトラニオン軸36Bをファン40を正転駆動する正側傾斜・ファン40を逆転駆動する逆側傾斜に切換える出力モータ121が接続されている。
【0049】
入力モータ120を駆動してトラニオン軸36Bを傾斜状態に移動してファン40の正転・逆転駆動を開始した後に、人感センサ110によってエンジンルーム8の周辺で作業する操作者の存在が確認された場合には、出力モータ121を駆動してトラニオン軸36Bを正側に傾斜させファン40の正転状態を維持する。一方、人感センサ110によって操作者の存在が確認されない場合には、出力モータ121を駆動して所定時間毎にトラニオン軸36Bの正側・逆側傾斜に移動してファン40の正転・逆転駆動状態を維持する。
【0050】
出力モータ121を駆動して所定時間毎にトラニオン軸36Bの正側・逆側傾斜に移動してファン40の正転・逆転駆動状態を維持した後に、水温センサ111によって冷却水の温度が所定の温度(約85〜97℃)以上に上昇した場合には、出力モータ121を駆動して正側・逆側傾斜の角度を大きくしてファン40の回転を速くし、さらに冷却水の温度が高温度(約98℃)以上に上昇した場合には、出力モータ121を駆動してトラニオン軸36Bを正側に傾斜させファン40の正転状態を維持する。一方、水温センサ111によって冷却水の温度が所定の温度(約85℃)以下である場合には、引続いて出力モータ121を駆動して所定時間毎にトラニオン軸36Bの正側・逆側傾斜に移動してファン40の正転・逆転駆動状態を維持する。
【0051】
出力モータ121を駆動して所定時間毎にトラニオン軸36Bの正側・逆側傾斜に移動してファン40の正転・逆転駆動状態を維持した後に、温度センサ112によってエンジン20に供給される空気の温度が所定の温度(約65〜71℃)以上に上昇した場合には、出力モータ121を駆動して正側・逆側傾斜の角度を大きくしてファン40の回転を速くし、さらに冷却水の温度が高温度(約72℃)以上に上昇した場合には、出力モータ121を駆動してトラニオン軸36Bを正側に傾斜させファン40の正転状態を維持する。一方、温度センサ112によって空気の温度が所定の温度(約64℃)以下である場合には、引続いて出力モータ121を駆動して所定時間毎にトラニオン軸36Bの正側・逆側傾斜に移動してファン40の正転・逆転駆動状態を維持する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、農業用作業車輌に適用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
6 キャビン
8 エンジンルーム
11 エンジンカバー
11A ピン
11B ステー
12 ロックレバー
13A カバー軸
14 濾過体
20 エンジン
30 油圧式無段変速装置(HST)
33 出力軸
34 第1プーリ
35 ベルト
42 第2プーリ
40 ファン
41 入力軸
60 ラジエータ
65 分離板
65B 開口部
70 オイルクーラ
80 インタークーラ
90 コンデンサ
図1
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