【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本願の発明者は、型枠締結具と型枠間隔保持用コーンとの間に型枠合板を挟んだままで、型枠間隔保持用コーンをセパレータのねじ軸体から螺脱させることにより、型枠パネルと型枠間隔保持用コーンを一体に取外して、型枠パネルの剥がし作業と型枠間隔保持用コーンの取外し作業に手間がかかるという課題を解決させる型枠間隔保持用コーンの技術を提供することを課題とした。
【0014】
更に、新たにコンクリートを流し込む型枠パネルを、取外した型枠間隔保持用コーンと型枠パネルと型枠締結具とを、一体としたままで組み立てることにより、構築物の型枠組立作業を容易かつ効率的に行うことができる型枠組立工法を提供することを課題とした。
【0015】
本発明の第1の発明は、外方に拡径される円錐台形状の本体部と、雌ねじ部と、雄ねじ軸体とを備えた型枠間隔保持用コーンにおいて、前記雌ねじ部は、前記本体部の縮径側に備えられ、セパレータ軸体端部に螺合され、前記雄ねじ軸体は、前記本体部の拡径側に備えられ、型枠締結具雌ねじ部に螺合されると共に、共回り手段を有し、前記共回り手段は、前記型枠締結具を前記雄ねじ軸体から螺脱方向に軸動させて、コンクリート固化後に型枠パネルを取り外す際に、前記型枠締結具と前記型枠間隔保持用コーンとが一体に軸動される共回り状態とさせ、前記共回り状態とされた前記型枠締結具を軸動させることにより、前記セパレータ軸体端部から前記型枠間隔保持用コーンが螺脱され、前記型枠締結具と前記型枠間隔保持用コーンと前記型枠パネルとが一体のまま、固化したコンクリート面から取り外されることを特徴としている。
【0016】
共回り手段は、型枠間隔保持用コーンに型枠締結具を取り付ける際には共回り状態とされず、型枠パネルを取り外す際に共回り状態とされる。共回り手段は、型枠間隔保持用コーンに一体に備えられていてもよく、型枠締結具が螺合されて型枠が組み立てられてから、例えば細軸体、割ピン、ナット等が型枠間隔保持用コーンに取り付けられて共回り手段とされてもよい。
【0017】
型枠締結具の形態は限定されず、例えば、型枠間隔保持用コーンの雄ねじ軸体の軸方向に竿体として延びてもよく、雄ねじ軸体の軸方向の両側に二股に分かれて、ねじ軸体を挟むように延びてもよい。
【0018】
型枠間隔保持用コーンは、型枠合板に接する外方側が拡径側、コンクリートに接する内方側が縮径側とされている。そうすると、型枠間隔保持用コーンが、固まったコンクリートの中のセパレータ軸体端部から僅かでも螺脱されれば、型枠間隔保持用コーンとコンクリートとの間に隙間があいて摩擦がなくなる。そして、型枠締結具と型枠パネルと型枠間隔保持用コーンとが一体となった状態で容易に螺脱される。
【0019】
型枠間隔保持用コーンの拡径側には雄ねじ軸体が形成され、前記雄ねじ軸体が型枠締結具の雌ねじ部に螺合されているため、型枠パネルに振動が加えられても型枠締結具と型枠パネルとが弛むことがない。雄ねじ軸体と雌ねじ部が共回りされない状態では、雄ねじ軸体に対して雌ねじ部が軸動自在で締め込み容易であり、共回り状態では、雄ねじ軸体と雌ねじ部が同期してのみ軸動される。これにより、共回り状態では、型枠締結具と型枠間隔保持用コーンとが一体に軸動され、型枠締結具を軸動させることにより、型枠間隔保持用コーンが固化したコンクリートの中のセパレータ軸体端部から螺脱される。
【0020】
型枠パネルに整列した状態に並んだ型枠間隔保持用コーンを、型枠パネルが破損しない反りの範囲となるように、型枠パネルの端部から順に、固まったコンクリートから離間させて、全ての型枠間隔保持用コーンがセパレータ軸体端部から螺脱されて取り外される。型枠パネルが反りにくい場合には、型枠パネルの端部から順に型枠間隔保持用コーンを僅かずつ離間させ、これを繰り返して、全ての型枠間隔保持用コーンを螺脱させればよい。
【0021】
本発明の第1の発明によれば、固まったコンクリートから型枠パネルを、バールの尖端部を使って剥がすようにして取り外さなくてもよく、また固まったコンクリートの中に埋まった型枠間隔保持用コーンを一体ずつ取り外さなくてもよいため、型枠取外し作業が極めて容易かつ安全になるという有利な効果を奏する。
【0022】
本発明の第2の発明は、第1の発明の型枠間隔保持用コーンであって、前記共回り手段が、前記型枠締結具を前記雄ねじ軸体から螺脱方向に軸動させて、前記型枠締結具を型枠合板から離間させてから、前記型枠締結具と前記型枠間隔保持用コーンとを前記共回り状態とさせることを特徴としている。
【0023】
型枠締結具が螺脱方向に軸動されて型枠合板から離間されると、型枠合板と型枠締結具との間に隙間があく。そうすると、型枠締結具と型枠間隔保持用コーンとを共回りさせて、セパレータ軸体端部から型枠間隔保持用コーンを螺脱させる際に、型枠合板と型枠締結具との間に摩擦力が生じない。第2の発明によれば、型枠間隔保持用コーンを螺脱させる際に大きな力を必要とせず、作業員の人力だけでも型枠間隔保持用コーンをセパレータ軸体端部から螺脱させることが容易である。
【0024】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の型枠間隔保持用コーンであって、前記共回り手段として、共回り部材が貫通される貫通孔を含み、前記貫通孔が、前記雄ねじ軸体に、軸方向に交差する方向に貫通され、前記貫通孔に貫通された前記共回り部材と前記型枠締結具とが一体となって、前記型枠締結具と前記型枠間隔保持用コーンとを前記共回り状態とさせることを特徴としている。
【0025】
型枠間隔保持用コーンの外方側に延びる雄ねじ軸体に、軸方向に交差する方向に貫通された貫通孔が、共回り手段を構成する。貫通孔には、例えば、「R」文字の形状をした脱落防止機能を備えた割ピンや、細釘等が挿し込まれる。細釘が挿し込まれる場合には、型枠締結具が螺脱方向に軸動されることにより、貫通孔壁に細釘が押圧され挟みこまれた状態となり脱落しないようになる。第3の発明によれば、型枠締結具と型枠間隔保持用コーンとを、容易に共回り状態とすることができる。
【0026】
本発明の第4の発明は、第1又は第2の発明の型枠間隔保持用コーンであって、前記共回り手段として、共回り部材が挿し込まれる凹部を含み、前記凹部が、前記雄ねじ軸体に、軸方向に交差する方向に備えられ、前記凹部に挿し込まれた前記共回り部材と前記型枠締結具とが一体となって、前記型枠締結具と前記型枠間隔保持用コーンとを前記共回り状態とさせることを特徴としている。
【0027】
凹部は、雄ねじ軸体の側面の一方のみに備えられていてもよく、両面に備えられていてもよい。凹部に、雄ねじ軸体の側面から突出されるように、嵌合軸体が挿し込まれて、共回り手段とされればよい。凹部の内壁に雌ねじ部が形成されていてもよい。雌ねじ部が形成される場合には、凹部の中に、雄ねじ軸体の表面から突出しないように、雄ねじを雌ねじ部に螺合させるようにすればよい。
【0028】
前記雄ねじが締め込まれて、雄ねじ軸体の側面から突出されていない状態で、型枠締結具が締め込まれる。また、前記雄ねじが弛められて、雄ねじ軸体の側面から突出された状態で、共回り手段として作用するようにされればよい。これとは別に、前記雌ねじ部に、別体の雄ねじ体が、前記雄ねじ軸体の側面から突出される状態に挿し込まれて、共回り手段として作用するようにされてもよい。第4の発明によれば、型枠締結具と型枠間隔保持用コーンとを、容易に共回り状態とすることができる。
【0029】
本発明の第5の発明は、第1又は第2の発明の型枠間隔保持用コーンであって、前記共回り手段として、共回り部材が螺合される段状雄ねじ部を含み、前記段状雄ねじ部は、前記雄ねじ軸体の外方のねじ部の太さが、型枠締結具が螺合される内方のねじ部の太さよりも細く、前記外方のねじ部に螺合された前記共回り部材と前記型枠締結具とが一体となって、前記型枠締結具と前記型枠間隔保持用コーンとを前記共回り状態とさせることを特徴としている。
【0030】
外方の細いねじ部には、内方のねじ部に型枠締結具が螺合されてから、ナットが螺合される。型枠締結具を螺脱方向に軸動させて弛めると、型枠締結具が前記ナットに当接して、型枠締結具と型枠間隔保持用コーンとが共回り状態とされる。第5の発明によれば、型枠締結具と型枠間隔保持用コーンとを、容易に共回り状態とすることができる。
【0031】
本発明の第6の発明は、第1又は第2の発明の型枠間隔保持用コーンであって、前記共回り手段として、共回り部材に挟まれる切削部を含み、前記切削部は、前記雄ねじ軸体の両面に、軸方向に交差する方向に平行に切削されており、前記共回り部材が前記切削部を挟むと共に前記共回り部材と前記型枠締結具とを一体とさせ、前記型枠締結具と前記型枠間隔保持用コーンとを前記共回り状態とさせることを特徴としている。
【0032】
切除部が雄ねじ軸体に備えられる位置は、雄ねじ軸体の基端に近い位置であっても、先方に近い位置であってもよく限定されない。雄ねじ軸体の切除部と、前記切除部を両側から挟みこむ部材とが共回り手段を構成する。前記部材が切除部に挟まれた状態で、前記部材が雄ねじ軸体と共回りされ、型枠締結具と型枠間隔保持用コーンとが共回りされ、型枠締結具を螺脱方向に軸動させると、型枠間隔保持用コーンがセパレータ軸体端部から螺脱される。第6の発明によれば、型枠締結具と型枠間隔保持用コーンとを、容易に共回り状態とすることができる。
【0033】
本発明の第7の発明は、コンクリートが固化した後に型枠パネルを取り外す型枠取外し工法であって、型枠間隔保持用コーンの雄ねじ軸体に螺合された型枠締結具と、前記型枠間隔保持用コーンとが一体に軸動される共回り状態とさせてから、前記型枠締結具を前記型枠間隔保持用コーンと共回りさせ、前記型枠間隔保持用コーンをセパレータ軸体端部から螺脱させて、前記型枠間隔保持用コーンと、前記型枠パネルと、前記型枠締結具とを一体とさせたままで、固まったコンクリートから離間させる工程を含むことを特徴としている。
【0034】
本発明の第7の発明の型枠取外し工法は、型枠締結具と、型枠パネルと、型枠間隔保持用コーンとを一体にした状態で、コンクリート面から取り外すようにさせる。型枠合板には、縦方向、横方向とも所定の間隔に、型枠間隔保持用コーンが取り付けられている。型枠パネルの端部に近いものから、順に、型枠間隔保持用コーンをセパレータ軸体端部から取り外すようにする。そうすると、型枠合板と桟木が一体となった型枠パネルが反りやすく、型枠パネルが破損されにくい。
【0035】
型枠パネルの中央部に近い型枠間隔保持用コーンを、固まったコンクリートから離間させる場合、又は型枠間隔保持用コーンの配設間隔が小さく、型枠パネルが反りにくい場合には、各々の型枠間隔保持用コーンを少しずつ、セパレータ軸体端部から弛めるようにしていけばよい。そうすると、型枠パネルが大きく反ることはなく、型枠パネルを破損させる怖れがなく、取外しに大きな力が必要とならない。
【0036】
型枠パネルが破損されない反りの範囲で、型枠間隔保持用コーンがセパレータ軸体端部から弛められ、型枠間隔保持用コーンの周囲のコンクリートと型枠との付着がなくなった状態で、型枠パネルが固まったコンクリート面から離間される。これにより、型枠間隔保持用コーンと型枠パネルと型枠締結具とを一体としたまま、作業員の人力による力で型枠パネルを容易かつ安全に取り外すことができる。
【0037】
取り外された型枠パネルは、型枠間隔保持用コーンと型枠締結具と一体のまま、コンクリートを流し込む型枠パネルとして使用されてもよい。一体のまま使用すると、型枠間隔保持用コーンの雄ねじ軸体に型枠締結具を螺合させる相当な回数の回動操作が省略でき、型枠パネルの組立が容易かつ効率的になる。また、型枠パネルと、型枠間隔保持用コーンと、型枠締結具とが分離されてから、コンクリートを流し込む型枠パネルが組み立てられてもよいことは勿論のことである。
【0038】
第7の発明で使用される型枠間隔保持用コーンは、第1から第4の発明の型枠間隔保持用コーンに限定されない。周知の型枠間隔保持用コーンの雄ねじ軸体に、型枠締結具の螺脱を規制する弛み止めナット等の弛み止め手段を装着させて、型枠締結具と、型枠間隔保持用コーンとを共回り状態とさせてもよいことは勿論のことである。
【0039】
本発明の第8の発明の型枠組立工法は、コンクリートを流し込む型枠パネルを組み立てる型枠組立工法であって、第7の発明の型枠取外し工法によって取り外され、前記型枠パネルの内方側から前記型枠間隔保持用コーンと、前記型枠パネルと、前記型枠締結具とが一体とされたままの前記型枠パネルが、前記コンクリートを流し込む型枠パネルの一面として組み立てられることを特徴としている。
【0040】
従来は、縦方向一列ずつの型枠に、所定の間隔でセパレータ軸体が固定されて、順に、一つの面をなすように、一方の面の型枠パネルが一体に組み立てられる。そして、対向する面の型枠パネルには、他方のセパレータ軸体を挿通させるようにして、縦方向一列ずつの型枠パネルが、順に組み立てられていた。すなわち、他の場所と同一の形状をなすように、構築物の型枠パネルが組み立てられる場合でも、縦方向一列ずつの型枠パネルが、各構成部材を組み立てるようにして、各々の面の型枠パネルが組み立てられていた。
【0041】
本発明の第8の発明によれば、第7の発明の型枠取外し工法によって取り外され、型枠間隔保持用コーンと、型枠パネルと、型枠締結具とが一体とされたままの状態で、コンクリートを流し込む型枠パネルの一面が組み立てられる。これにより、型枠組立の手間が大幅に低減され、型枠組立作業が容易になると共に型枠組立工期も短縮することができる。