特許第6103446号(P6103446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6103446-レーザー光源を備えた車両ヘッドライト 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103446
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】レーザー光源を備えた車両ヘッドライト
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170316BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20170316BHJP
   F21V 29/506 20150101ALI20170316BHJP
   F21V 29/67 20150101ALI20170316BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20170316BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170316BHJP
【FI】
   F21S8/10 150
   F21S8/10 171
   F21S8/10 532
   F21S8/10 550
   F21V9/16 100
   F21V29/506
   F21V29/67 200
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-536063(P2014-536063)
(86)(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公表番号】特表2015-502628(P2015-502628A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】AT2013050051
(87)【国際公開番号】WO2013134804
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2014年4月16日
【審判番号】不服2015-19188(P2015-19188/J1)
【審判請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】A50070/2012
(32)【優先日】2012年3月12日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】バウワー,フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】モーサー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン,エーリヒ
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 小原 一郎
【審判官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−241142(JP,A)
【文献】 特開2005−150041(JP,A)
【文献】 特開2008−234908(JP,A)
【文献】 特開2011−65979(JP,A)
【文献】 特開2011−198560(JP,A)
【文献】 特開2011−142006(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3160713(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第102008008664(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00 - 9/90
F21S 2/00 - 19/00
F21V 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのレーザー光源(2)と、少なくとも1つの、可視光線の放射のために励起可能な光要素(3)を備え、該光要素はレーザー光源(2)によって照射可能であり、及び少なくとも1つの結像光学要素を備え、その際前記レーザー光源(2)が前記車両ヘッドライト(1)の主要放射方向(100)に見て前記光要素(3)の前に配置されており、その結果前記レーザー光源(2)の光が前記車両ヘッドライト(1)の前記主要放射方向(100)と反対に放射される車両ヘッドライト(1)において、前記少なくとも1つの結像光学要素がリフレクター(4)として形成され、その際前記光要素(3)が前記リフレクター(4)の焦点内に配置されており、及びその際前記レーザー光源(2)と前記光要素(3)との間に少なくとも1つの導光要素(9)が配置され、前記レーザー光源(2)が、波長域が200nm〜450nmの間にあるレーザー光を放射し、前記車両ヘッドライト(1)は、前記光要素(3)を前記リフレクター(4)内に配置するためのキャリア要素(5)を備え、前記キャリア要素(5)には、前記光要素(3)内に生じた熱を排出するためのフィン(6)が取り付けられていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項2】
請求項1に記載の車両ヘッドライト(1)であって、前記レーザー光源(2)の放射方向(200)が前記車両ヘッドライト(1)の光学軸(400)に対して0°以上90°未満の角度(300)で伸びていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両ヘッドライト(1)であって、前記レーザー光源(2)が前記光要素(3)に対して直円錐(11)の円錐側面上に配置されており、その際前記円錐(11)の頂点は前記光要素(3)内にあり、前記円錐軸(500)は前記車両ヘッドライト(1)の前記光学軸(400)に対して平行に伸び、及びその上に前記レーザー光源(2)が配置されている前記円錐側面の母線(12)が前記レーザー光源(2)の前記放射方向(200)に対して平行に伸びていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項4】
請求項3に記載の車両ヘッドライト(1)であって、前記光要素(3)が前記車両ヘッドライト(1)の前記光学軸(400)上に配置されていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の車両ヘッドライト(1)であって、前記レーザー光源(2)と前記光要素(3)の間に少なくとも1つの光学要素が配置されていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の車両ヘッドライト(1)であって、前記レーザー光源(2)が前記車両ヘッドライト(1)が取り付けられた状態で、前記車両ヘッドライト(1)の前記光学軸(400)を通って伸びる水平面の下側に配置されていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の車両ヘッドライト(1)であって、前記車両ヘッドライト(1)がカバーディスク(8)を有し、及び前記レーザー光源(2)が、前記レーザー光源(2)の廃熱によって加熱可能であるほどに前記カバーディスク(8)の近傍に配置されていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の車両ヘッドライト(1)であって、前記レーザー光源(2)が少なくとも1つの放熱器(15)及び/又は少なくとも1つの換気装置(16)を備えていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の車両ヘッドライト(1)であって、少なくとも1つの、前記レーザー光源(2)を目隠しとして取り囲むデザインパネル要素(10)を備えていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項10】
請求項9に記載の車両ヘッドライト(1)であって、前記デザインパネル要素(10)が少なくとも1つのデザインパネル開口部(17)を有していることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の車両ヘッドライト(1)であって、少なくとも1つのシールド要素(13)が前記車両ヘッドライト(1)から出たレーザー光線を遮蔽するために備えられていることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【請求項12】
請求項1に記載の車両ヘッドライト(1)であって、前記少なくとも1つの導光要素(9)と前記リフレクター(4)は、前記キャリア要素(5)によって結合されることを特徴とする、車両ヘッドライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのレーザー光源と、少なくとも1つの、可視光線の放射のために励起可能な、レーザー光源によって照射可能な光要素、及び少なくとも1つの結像光学要素、例えばリフレクター及び/又はレンズを備えた車両ヘッドライトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術ではさまざまな種類の車両ヘッドライトが公知であるが、近年は主として放電ランプ及びハロゲン光源を備えたヘッドライトが使用された。エネルギー節約のために、及び車両ヘッドライトの取付けに要するスペースをさらに縮小するために、例えば半導体レーザーのようなレーザー光源の使用が増大している。なぜなら以下の点でこれが有利であるからである。レーザー光線を車両ヘッドライトに使用可能にするため、この場合レーザー光源を使用して光要素、いわゆる燐コンバータ(例えば燐化合物又はセリウムを添加したYAG結晶)が照射され、それによってこのコンバータが可視光線の放出のために励起される。つまり燐コンバータがレーザー光線を別の波長の光に変換する。
【0003】
例えば特許文献1はそのような光源を示しており、この光源ではレーザーダイオードが光要素を介して後ろから蛍光を発する物質を放出し、この物質から可視光線が放出され、この可視光線はリフレクターシールドを介して走行方向に転換される。その際使用されているレーザー光源が放出するエネルギーはヘッドライトの主要放射方向で最大3Wであり、ヘッドライトの機能不良の際又は破損の際には目を傷つける恐れのある高輝度のレーザー光線放射によって他の道路使用者が負傷するか少なくとも危険が及ぶ可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0194302A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、どのような使用状況でも他の道路使用者に危険が及ばない、レーザー光源を備えた車両ヘッドライトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、冒頭で言及された車両ヘッドライトにより、本発明に従い、レーザー光源が車両ヘッドライトの主要放射方向に見て光要素の前に配置されており、その結果レーザー光源の光が車両ヘッドライトの主要放射方向の反対を向いていることにより解決される。
【0007】
本発明による車両ヘッドライトは、レーザービームを主要放射方向と反対に放射するため、ヘッドライトの機能不良の際又は破損の際であってもレーザービームが放出され得ない。これにより、ヘッドライトが例えば事故によって損傷した場合に他の道路使用者に危険が及ばない。レーザー光源及び光要素の配置により、又は結像光学要素内での光要素の配置により、又は結像光学要素(例えばリフレクター、レンズ)により、さまざまな配光パターンが発生され得る。
【0008】
本発明は、例えばECE、SAE、CCC等の法的規定を満たすことのできる車両ヘッドライトの実現を可能にする。
【0009】
レーザー光源の放射方向は車両ヘッドライトの光学軸に対して0°から90°の間の角度に伸びていると好都合である。それにより、使用可能な取付けスペース及び使用範囲に応じて、レーザー光源はさまざまに配置され得る。ヘッドライトの主要放射方向と反対に放射する本発明による利点、及びその結果として損傷又は機能不良の際に他の道路使用者を保護することが、これにより確保される。
【0010】
レーザー光源は、光要素に対して直円錐の円錐側面上に配置されており、その際円錐の頂点は光要素内にあり、円錐軸は車両ヘッドライトの光学軸に対して平行に伸び、及びその上にレーザー光源が配置されている円錐側面の母線は、レーザー光源の放射方向に対して平行に伸びている。したがってレーザー光源はさまざまに位置決めでき、その際レーザー光源はその母線上で円錐底部の範囲内に配置されてよいが、又は円錐頂点と底部面の交点と円錐頂点との間の任意の位置に配置されてよい。
【0011】
有利には、光要素は車両ヘッドライトの光学軸上に配置されている。本発明の一変形例では、光要素はリフレクターの焦点に配置されている。これによって光要素から放出された光を最適に有効利用でき、又は高い輝度が達成される。
【0012】
本発明の別の一変形例では、レーザー光源と光要素との間に少なくとも1つのレンズ要素、特に集光レンズ要素が配置されている。それによってレーザー光線の光要素内への放射が、特に光要素内での励起エネルギー分布に関して最適化される。レーザー光源のエネルギーは光要素上又は光要素内にこのように有利に集中され得る。さらに、光が光要素上に集中することにより許容誤差が生まれ、振動が原因で光源の最小移動が生じる場合でもレーザー光線がその役割により光要素に当たり、ヘッドライトが確実に照明される。
【0013】
レーザー光源は、取り付けられた状態の車両ヘッドライト下側で車両ヘッドライト光学軸を通って伸びている水平面に配置されていると好都合である。レーザー光源作動時には通常多くの廃熱が生じる。本発明の一変形例では、車両ヘッドライトはカバーディスクを備え、及びレーザー光源はカバーディスクがレーザー光源の廃熱によって加熱可能であるほどに、カバーディスクの近傍に配置されている。これによってレーザー光源の廃熱を、車両ヘッドライトのカバーディスクを除霜又は除氷するために利用することができる。
【0014】
本発明の一変形例では、レーザー光源は少なくとも1つの放熱器及び/又は少なくとも1つの換気装置を備えている。それによって作動中にレーザー光源から生成された熱が効果的に排出され得る。ここで放熱器は例えば熱伝導性の材料から構成されており、その表面に例えばクーリングフィンのような追加的に熱を排出する要素を備えていてよい。換気装置は例えばベンチレーション装置であってよく、これによって冷たい空気が放熱器へ又はレーザー光源へ運ばれ及び同時に温かい空気が排出され得る。
【0015】
好都合には少なくとも1つのレーザー光源を目隠しとして取り囲むデザインパネル要素を備えている。このデザインパネル要素は、レーザー光源のカバー又は被覆として仕上げられていてよく及び特にレーザー光源が外部から見えないようにする役割を果たす。レーザー光源はこのデザインパネル要素の内部又は下部に配置されている。本発明の一変形例では、デザインパネル要素は少なくとも1つのデザインパネル開口部を備えており、これは好ましくはノズル形状に仕上げられている。このノズルパネル開口部は、好都合には車両ヘッドライトのカバーディスクの方向に向けられている。これにより、例えば上述のようにレーザー光源の廃熱がカバーディスクの方に向けられる。「ノズル形状」とは、ここではデザインパネル開口部を通過する空気流を方向付けすることを可能にする形態を備えていることと解釈される。
【0016】
基本的に本発明は自由放射コンセプトとして実施され、すなわちレーザー光源は直接光要素上に放射される。本発明の別の一変形例では、レーザー光源と光要素との間に少なくとも1つの導光要素が配置されている.この導光要素は特にレーザー光源の放射方向の理想的な放射方向からの逸脱を補正するために用いられ、その結果レーザー光源の光は光要素の方向へ最適に(又は導光要素の実施形態に応じて束ねられて)案内される。この導光要素は、ここでは例えばポリカーボネート(PC)又はポリメチルメタクリレート(PMMAグラス又はプレキシグラス)のようなプラスチック、又はガラスのような導光材料からなり、及び例えば管形状、円錐形状又は円筒形状に任意に形成可能である。また例えばガラス製の漏斗状の集光器要素としての実施形態も可能であり、その場合は夜光棒のように、集光器要素の境界面での全反射が有効に利用される。導光要素は不規則性を備えて、例えばレーザー光線の方向を変え、それにより導光要素の発光を引き起こす表面上に(微細構造の形で)備えられてよく、これはデザイン要素として使用可能である。例えば青いレーザー光源を使用する場合、このようにして目を危険にさらさない青い光を発生させることができる。
【0017】
本発明の一変形例では、少なくとも1つのシールド要素が車両ヘッドライトから出たレーザー光線を遮蔽するために備えられている。このようなシールド要素は、例えば吸収性のある又は光を通さない表面、又はレーザー光線の漏出を防止する表面を備えて仕上げられていてよい。例えばこのシールド要素は、それがなければレーザー光線の反射によって車両ヘッドライトから放出され得る範囲に配置されるか、又はシールド要素がレーザービーム(又は上述の導光要素)を取り囲む装置として仕上げられていてよい。
【0018】
以下では本発明を、限定するものではない図示した実施例を使用して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による車両ヘッドライトの模式的横断面図である。
図2】本発明の一変形例による、レーザー光源と光要素の考えられる相対的配置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図中、同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付している。以下では、一部で使用する名称である前、後ろ等は、常に車両ヘッドライトの取付け位置又は車両ヘッドライトが取り付けられた状態に基づいている。
【0021】
図1は、車両ヘッドライト1の模式的横断面図である。この図は本発明を理解するために重要な特徴だけを示している。なぜなら当業者には車両ヘッドライトのその他の要素は既知であるからである。
【0022】
車両ヘッドライト1はレーザー光源2を含み、これは例えば波長域が200nm〜450nmの間にある。つまり部分的に不可視の紫外線域で放射される。レーザー光源2の出力は現在0.5〜2Wであるが、これより高くてもよい。レーザー光源2は例えばレーザーダイオード又はVCSEL(面発光レーザー、Vertical Cavity Surface Emitting Laser)の形の半導体レーザーである。例えばレーザーダイオードアレイの形で複数のレーザー光源2を備えていてもよい。
【0023】
レーザー光源2は作動中に生じる熱を排出するために、図示された実施例では放熱器15及び換気装置16を備え、この換気装置16はここでは放熱器15に冷たい空気を給送するため又は温かい空気を排出するために用いられる。換気装置16は、例えばベンチレーション装置を含んでいてよい。放熱器15は適切な材料から製造され及び追加的に例えばクーリングフィン又は類似のものを備えていてよい。
【0024】
レーザー光源2(図1では放熱器15及びファン16と共に示されている)の隣には光要素3が備えられている。これは本実施例では球形に形成されている。球形の形状に仕上げることは複数の可能な形状のうちの1つに過ぎず、この光要素3は他の形状に仕上げられてもよい。この光要素3は好ましくは燐コンバータであり、これはレーザー光源2の光によって公知の方法で可視光線の放射のために励起され得る。燐コンバータとしては基本的に、単色性のレーザー光線を他の波長の光(好ましくは重畳によって生じる白色光)に転換するすべての材料が使用可能である。
【0025】
原則として、燐コンバータは光コンバータである。変換材料の電子をレーザー光線によってより高いエネルギーレベルに励起し、降下時にレベルの相違に相当する波長の光を放出する。
【0026】
光要素3はリフレクター4内に配置されており、このリフレクターは光要素3から放射された光を車両ヘッドライト1の主要放射方向100に方向転換する。主要放射方向100は、図1の実施例では左から右に伸びている。リフレクター4は旋回可能及び/又は調整可能に配置されていてよく、このことは各図中では明瞭さを確保するために図示していない。基本的にリフレクター4は任意の形態が可能であり、フリーフォーム形状でも、放物線、双曲線、楕円又はそれらの組合せでも、リフレクター面として装備されてよい。リフレクター4は図1では横断面として認識でき、及びハーフシェル(上部又は下部の半分のみ存在する)として又はフルリフレクターとして仕上げられてよいが、当業者にとってはリフレクター4の多数のバリエーションは既知である。
【0027】
本発明の図示された実施例では、光要素3は車両ヘッドライト1の光学軸400の上のリフレクター4の焦点に配置されている。このことは、リフレクター4が複数の、異なった焦点を備えたフリーフォームリフレクターとして仕上げられてよいことを示しており、その場合示された実施例に従い、光要素3はやはりこの焦点の1つに配置されている。もちろん光要素3が焦点内に配置されることは不可避的に必要なわけではない。しかし所望の配光パターンを得るためには、固定されてリフレクター内にとどまる必要があり、振動する場合にもそれは確保されなければならない。車両ヘッドライト1はカバーディスク8によって閉鎖される。カバーディスク8は任意に仕上げられてよいが、好ましくは大部分が透明である。
【0028】
光要素3及びリフレクター4により、車両ヘッドライト1の所望の光像が生成される。光要素3をリフレクター4内に固定するため、キャリア要素5が備えられている。このキャリア要素5にはここではクーリングフィン6が取り付けられており、これは光発生時に光要素内に生じた熱を排出するよう機能する。クーリングフィン6はここで使用可能な熱排出要素の一例としてのみ示されており、当業者にはこれに関して多数の可能性が既知であるため、ここではそれについて詳しく触れない。
【0029】
本発明に従い、レーザー光源2及び光要素3は、レーザー光源2の光が車両ヘッドライト1の主要放射方向100と反対に放射されるように配置されている。したがってレーザー光源2の放射方向200は、車両ヘッドライト1の主要放射方向100とは反対に向けられている。これによって、車両ヘッドライト1が損傷した又は機能不良となった場合にレーザー光源2の光が漏出して他の道路使用者に危険を及ぼし得ることが防止される。
【0030】
レーザー光源2の放射方向200は、好ましくは車両ヘッドライト1の主要放射方向100又はその光学軸400に対して鋭角300に伸びる。すなわち角度300は0°〜90°の間にある。角度0°とはすなわち、主要放射方向100に見て光要素3の後ろに配置されている、レーザー光源2が車両ヘッドライト1の光学軸400上であることを意味する。これに対応して、90°の角度300は、レーザー光源2の放射方向200が車両ヘッドライト1の光学軸400に対して直角に伸びていることを意味する。車両ヘッドライト1の光学軸400及び主要放射方向100は、互いに実質的に平行に伸びる。車両ヘッドライト1に使用可能な取付けスペースに合わせて、又は所望の使用範囲に合わせて、光源2及び光要素3が互いに配置されてよい。
【0031】
実質的にレーザー光源2の光要素3に対する配置は円錐を用いて抽象化される。図2で分かるように、レーザー光源2は光要素3に対して、実質的に直円錐11の円錐側面上に配置されており、その際円錐の頂点は光要素3内にあり、円錐軸500は車両ヘッドライト1の光学軸400に対して平行に伸び、及びレーザー光源2が配置されている円錐側面の母線12はレーザー光源2の放射方向200に平行に伸びている。原則として、レーザー光源2は、それが割り当てられている母線12の任意の点に配置されてよく、すなわち母線が円錐11の底部面又は底面と交わるところ、又はその交点と光要素3との間のどこかにあってよい。レーザー光源2の放射方向200と車両ヘッドライトの光学軸400がなす、又は母線12と円錐軸500がなす角度300は、円錐11の開口角の半分を示す。角度300のために選択された値に従って円錐の形状が変化する。
【0032】
レーザー光源2と光要素3との間には多数の要素が配置されていてよい。例えば図1に示された実施例では、レーザー光源2の直近に光学要素が集光レンズ要素7の形で配置されている。この集光レンズはレーザー光源2の光を光要素3の方向に集める。当然例えばレンズ及び/又はプリズムのようなさまざまな種類の任意の他の光学要素が使用されてよい。
【0033】
光要素3の直前に、又は光要素3を固定して、導光要素9が備えられており、これは図示された実施例では実質的に漏斗状の又は放物線状の円錐形に仕上げられており、及びレーザー光源2から来た光を光要素3へ案内する。導光要素9は、「複合放物集光器(Compound Parabolic Concentrator)」に類似して仕上げられ、すなわちそのカバーの内側で反射するよう仕上げられ、その結果漏斗形状と組み合わせて、入ってきた光が導光要素9の出口方向に集められてまとめられる。その際特に全反射が導光要素9の境界面で有効に利用される。このような導光要素9により、例えば光源2が修理のために交換された場合又はレーザー光源2が作動中の振動によって最適な位置ではなくなってしまった場合に、光源2と光要素3との間の相対位置に関してより大きな許容誤差が可能になる。
【0034】
しかしこの導光要素9は、例えば管状、円錐状、円筒状又は他の形状でレーザー光源2と光要素3との間の連続した光導波路として仕上げられてもよい。図示していない一変形例では、集光レンズ要素7と導光要素9は例えば管状又は中実に仕上げられた中間部によって接続され、その際集光レンズ要素7、導光要素9及び中間部は一体型に仕上げられてもよい。その際封入物又は微細構造のような不規則性が備えられていてよく、これらはレーザー光線の方向を変えるか又は制御し、外から見えるようにしてデザイン要素として機能する。
【0035】
このような光学要素又は導光要素9の周りには吸収性のある要素が配置されると好都合であり、入ってきたレーザー光線が場合によって車両ヘッドライト1の主要放射方向100に反射して他の道路使用者に危険が及ばないよう防止する。図1のシールド要素13は、このような要素の一実施形態を示している。これはこのような反射が車両ヘッドライト1から放射されることを防止する。一変形例では、又は追加的に、上述の光学要素、導光要素9及びシールド要素13のような吸収性要素が反射しない表面を備えているか、レーザー光線の波長域の光のみ反射又は吸収するが可視光線は通し、それによってヘッドライトコンポーネントを見ることができるように仕上げられていてよい。例として図1のシールド要素13は、車両ヘッドライト1の光学軸400を通って伸びる水平面の上側の、導光要素9とカバーディスク8の間に配置されている。しかしもちろん他の、当業者に既知の解決法も可能である。このような装置の唯一の前提条件は、車両ヘッドライト1の照明機能に不利に影響しないことである。
【0036】
このシールド要素13は、例えば半円形状の横断面(「ハーフパイプ」)を備えた管型で、レーザー光線の自由放射領域全体を覆うように仕上げられてもよい。別の一変形例では、半反射するように仕上げられてよく、及び/又はデザイン的な理由により(例えば青色LEDの)固有の光源によって照明されてよい。
【0037】
本発明に従い上述の実施形態は、例えばECE、SAE、CCC、等の法的規定を満たすことのできる車両ヘッドライトの実現を可能にする。
【0038】
本発明の別の利点は、レーザー光源2の作動時に生じる廃熱を利用できることにある。図1の実施例では、レーザー光源2は取り付けられた状態の車両ヘッドライト1において、車両ヘッドライト1の光学軸400を通って伸びる水平面の下側で、カバーディスク8の近傍に配置されている。この水平面は、図1では図の面に対して垂直に、車両ヘッドライトの光学軸400を通って伸びている。
【0039】
レーザー光源2は、レーザー光源2の廃熱によって加熱可能であるほどに、カバーディスク8の近傍に配置されている。この廃熱は、カバーディスク8の除霜及び除氷のために使用され得る。使用されるレーザー光源2に応じて、又はカバーディスク8等の材料に応じて、レーザー光源2がカバーディスク8に対してどれほど近くに位置決めされるべきかを決め得る。レーザー光源2の換気装置16は、廃熱流の方向を変えることによって補助的に使用され得る。
【0040】
別の有利な一変形例は図1に示されており、例えばプラスチック製の、レーザー光源2を目隠しとして取り囲むデザインパネル要素10を備えている。デザインパネル要素10の目的は第一にレーザー光源2を覆うことであり、その結果このレーザー光源は車両ヘッドライト1の外側から見ることができない。レーザー光源2は、これに対応して、デザインパネル要素10の中又は下側に位置決めされている。デザインパネル要素10は、示された実施形態に従い、廃熱を排出するためのデザインパネル開口部17を備えている。このデザインパネル開口部17は、有利には、車両ヘッドライト1のカバーディスク8の方向を向いており、及び一変形例に従ってノズル状に形成され、その結果レーザー光源2の廃熱によって生じた気流18を目的に合わせて方向転換することができる。ノズル状の形成とは、ここでは上述の課題を満たすためにデザインパネル開口部17を通って気流が流れ出ることを可能にする形であると理解される。こうして除霜及び除氷、又はまったく一般的にレーザー光源2の廃熱の利用が、さらに効率的に行われ得る。
図1
図2