特許第6103460号(P6103460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6103460-バキューム緊急停止装置 図000002
  • 特許6103460-バキューム緊急停止装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6103460
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】バキューム緊急停止装置
(51)【国際特許分類】
   B65F 3/00 20060101AFI20170316BHJP
   B65F 5/00 20060101ALI20170316BHJP
   F04B 15/02 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B65F3/00 L
   B65F5/00 101
   F04B15/02
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-112175(P2016-112175)
(22)【出願日】2016年6月3日
【審査請求日】2016年6月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170325
【氏名又は名称】鴻池運輸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】須永 翼
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−052060(JP,A)
【文献】 特開平07−291019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00
B65F 5/00
B65F 3/00
B65F 5/00
F04B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バキュームホースの先端部に形成された吸引口に近い手元部位に吸引経路を遮断できる遮蔽バルブと、この遮蔽バルブより吸引口側に大気開放バルブを一体的に設けたことを特徴とするバキューム緊急停止装置。
【請求項2】
前記遮蔽バルブがボールバルブであることを特徴とする請求項1に記載のバキューム緊急停止装置。
【請求項3】
前記バキュームホースは車両に搭載された吸引手段に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のバキューム緊急停止装置。
【請求項4】
前記大気開放バルブは前記遮蔽バルブと一体に設けられ、アタッチメントとして前記吸引経路に取り付け可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のバキューム緊急停止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバキューム緊急停止装置に係り、特にバキューム車両などのようにバキューム装置とバキューム作業点が離れている場合に適用するのに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にゴミ焼却炉などの高熱炉において、使用に伴って炉壁や、炉と排ガス装置の煙道内壁などにはクリンカーが付着している。このクリンカーは燃焼によって生じる灰分、気化物、煤灰などの混合物が炉壁などに付着して層状に固化、成長したものであり、定期的に除去し、撤去する必要がある。通常作業は、除去したクリンカーを野積みにしておき、これを定期的にバキューム車両によって集塵除去する方法がとられる。また、炉の再構築するときの出た煤塵、あるいは高熱炉に使用されるバグフィルターの炉布からの塵埃の除去などでも、同様に吸引して除去する。
【0003】
このような場合に使用されるバキューム車両は、集塵機を搭載し、集塵機にホースを巻き付けておき、集塵に際して集塵機を稼働し、このホースを繰り出して前述のようなクリンカーの山などの場所まで引き回して用いられる。そして、ホース先端の吸引口からクリンカーや塵埃を吸引して除去するものとしている。
【0004】
従来のバキューム車両では、作業者が吸引ホースを作業場所まで引き回して使用していた。作業場所までの距離は様々な場合が多く、例えば100m程度伸ばして使用することも多い。
【0005】
ところが、作業者が引き回すホースの先端側で何らかの異常が発生した場合、緊急的に集塵機を止める作業が必要になってくる。この場合、集塵機のある車両側に戻って吸引操作盤の停止ボタンを押すか、別の作業員を集塵機の傍に置いておき、その別の作業者によって吸引停止ボタンを押して吸引を停止しなければならない。これに対処する方法として、先行文献1には、吸引口にアタッチメントを取付け、アタッチメント側面に開口(開閉弁)と蓋部を明け、この蓋部の開け閉めによって内部の吸引作用を開口側(開閉弁)に向けるようにして、本来の吸引口からの吸引作用を軽減させるようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−287193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先行文献1に記載のアタッチメントでは、吸引口の開口面積と開閉弁の開口面積によって分圧された吸引負圧が作用するので、吸引口に作用する吸引負圧を停止することはできない。単に軽減するだけである。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に着目し、吸引ホースの先端吸引口から作業者の手足や衣服等は吸引されるような緊急事態が発生した場合、バキューム本体側に行かずとも、作業者単独で吸引口からの吸引作用を停止させることができ、かつ内部の作用している負圧の作用もなくすることができるバキューム緊急停止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るバキューム緊急停止装置は、バキュームホースの先端部に形成された吸引口に近い手元部位に吸引経路を遮断できる遮蔽バルブと、この遮蔽バルブより吸引口側に大気開放バルブを一体的に設けたことを特徴とするものである。
【0010】
この場合、前記遮蔽バルブがボールバルブであるように構成すればよく、また、前記バキュームホースは車両に搭載された吸引手段に接続した構成としてもよい。さらに、前記大気開放バルブは遮蔽バルブと一体に設けられ、アタッチメントとして吸引経路に取り付け可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成したバキューム緊急停止装置によれば、緊急時に近くにある遮蔽バルブを閉めることにより、吸引手段と吸引口の経路が遮断する。そして、まだ吸引口側は真空状態になっているので、今度は大気開放バルブの操作を行い、バルブを開いて吸引口側のホースを大気開放する。これにより吸引口側に起こっている不測の状態を回避することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例に係るバキューム緊急停止装置を組み込んだホースを用いたバキューム作業状態の説明図である。
図2】本実施例に係るバキューム緊急停止装置を構成する遮蔽バルブと大気開放バルブのアッタッチメントの正面図である。
図3】遮蔽バルブの構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は実際の作業状態を示すもので、バキューム車両10に搭載してバキューム機器12からバキュームホース14を繰り出している。この車両10から実際の作業場所であるクリンカー山16まで100m以上ある場合、バキュームホース14は、同様に100m以上繰り出される。このような時に、バキュームホース14の先端が誤って、着ている作業服などを吸引した場合、吸引力が強く作業者18を傷つけてしまうため、緊急に吸引を停止する必要がある。従来はこのような緊急時には車両に戻って吸引停止を行っていたが、この実施形態では、バキュームホース14の先端部から5〜10mの範囲内に、バキューム緊急停止装置である中継バルブ20を取付けている。
【0014】
このバキューム緊急停止装置である中継バルブ20は、図1に示すように、実際の作業箇所であるホース吸引口22から5〜10mの範囲内に図2に示すようなアタッチメントとして構成されている。
【0015】
すなわち、バキュームホース14の先端部に形成されたホース吸引口22に近い部位(例えば、先端から5〜10m)に吸引経路を遮断できる遮蔽バルブ26と、この遮蔽バルブ26より吸引口側に大気開放バルブ28を設けた構成からなる。
【0016】
まず、遮蔽バルブ26は吸引経路を遮断できるようにされ、これはボールバルブからなる。遮蔽バルブ26は、図3に示されるように、バキューム機器12側とホース吸引口22に至る貫通路30が開口されたボデー32と、この貫通路30の開閉するボール弁34、及び弁座を構成するシート36から構成されている。ボデー32を90度回転することにより、ボデー32に設けた連通路38が貫通路30と断続され、通路閉止・通路開放作用をなす。その操作をするのがボール弁34から立設貫通されボデー32の外部で伸びたステム40と、ステム先端に取り付けられた操作ハンドル42である。したがって、操作ハンドル42の操作によって、貫通路30が開閉し、バキューム機器12とホース吸引口22が連通し、あるいは遮断される。
【0017】
このボデー32の一方にはバキューム機器12とのホース接続をなす第1接続口44が設けられ、これにはカムロック機構46が設けられて、バキューム機器12側のホース14の緊結を図るようにしている。カムロック機構46はホース14が嵌合する第1筒部48と、その一端部に形成された第1フランジ50からなり、ボデー32とフランジ結合して取り付けられ、第1筒部48に設けたカムロック機構46によって、バキューム機器12側のホース14との緊結が行われている。
【0018】
一方、ボデー32の他方側にはホース吸引口22との接続をなす第2接続口52が設けられ、これには前述した大気開放バルブ28が設けられている。すなわち、第2接続口52は、ホース吸引口22に通じるホース14と接続される第2筒部54、および第2筒部54の一端部に設けられ、ボデー32とフランジ結合される第2フランジ56とからなる。そして、前述した大気開放バルブ28が前記第2筒部54に形成された分岐管58に設けられている。分岐管58は、遮蔽バルブ26を閉じた場合、未だ真空状態にある先端のホース吸引口22側の吸引通路を開放するためのものである。通常は分岐管58に設けた大気開放バルブ28を閉じ、緊急時に遮蔽バルブ26を閉じた際に大気開放するようになっている。この大気開放バルブ28もボールバルブにより構成され、基本構成は図3に示すとおりである。
【0019】
このように構成されたバキューム緊急停止装置は次のように作用する。すなわち、図1に示した作業形態で、作業者18あるいは吸引作業に支障ある場合、緊急に真空状態を止める必要がある。このような際は、直ぐ傍に位置する緊急停止装置を作動すればよく、これは中継バルブ20の内、遮蔽バルブ26の閉鎖動作を行う。これにより、バキューム機器12側が作動しようとしても遮蔽バルブ26で閉じられているため、ホース吸引口22には真空が作用しない。しかし、遮蔽バルブ26を作動させても、遮蔽バルブ26より先の吸引口22側には空気の逃げる場所がないため、未だ真空作用が働いている。このことは吸引口22に吸い込まれた吸引物の塊や作業服などは吸引口22が吸着したままであることになる。そこで、今度は大気開放バルブ28を操作し、これを解放することにより、遮蔽バルブ26からホース吸引口22に至る管路は真空状態が解除されて、大気圧となるのである。
【0020】
このため、緊急事態の発生した場合であっても、本実施形態によれば、作業しているすぐ傍で緊急事態に備えた行動をとることができ、これを遠くにいる作業者まで行かなくても実施できることとなる。
【0021】
このような作業は例えば、ホース吸引口22に大きな塊が詰まった状態になった場合にも吸引停止と大気開放を続けて行うことができ、作業の円滑な実行に役に立つものである。
【0022】
なお、遮蔽バルブ26と大気開放バルブ28の開閉動作が連動するように形成してもよい。また、特に遮蔽バルブ26をボール弁タイプにしたのは吸引物による弁体の摩耗の影響を受けないためである。例えば、バタフライ弁タイプであると弁体の摩耗により閉止機能が損なわれるからである。遮蔽バルブ26と大気 開放バルブ28を一体構造としてアタッチメント構造にすることで一体物としてホース14への着脱が容易になる。
【0023】
このように本発明では、手元でバキューム機能の緊急停止と残った真空状態の解除作業を同時に行うことができるので、安全性の高いバキューム作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0024】
10……バキューム車両、12……バキューム機器、14……バキュームホース、16……クリンカー山、18……作業者、20……中継バルブ、22……ホース吸引口、26……遮蔽バルブ、28……大気開放バルブ、30……貫通路、32……ボデー、34……ボール弁、36……弁座シート、38……連通路、40……ステム、42……操作ハンドル、44……第1接続口、46……カムロック機構、48……第1筒部、50……第1フランジ、52……第2接続口、54……第2筒部、56……第2フランジ、58……分岐管。
【要約】
【課題】吸引ホースの先端吸引口から作業者の手足や衣服等は吸引されるような緊急事態が発生した場合、バキューム本体側に行かずとも、作業者単独で吸引口からの吸引作用を停止させることができ、かつ内部の作用している負圧の作用もなくすることができるバキューム緊急停止装置を提供する。
【解決手段】バキュームホースの先端部に形成された吸引口に近い部位に吸引経路を遮断できる遮蔽バルブと、この遮蔽バルブより吸引口側に大気開放バルブを設けた。前記遮蔽バルブがボールバルブとすればよい。前記バキュームホースは車両に搭載された吸引手段に接続されていることで車両搭載型のバキューム緊急停止装置とすることができる。前記大気開放バルブは遮蔽バルブと一体に設けられ、アタッチメントとして吸引経路に取り付け可能とすることで任意の箇所にもうけることができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3