(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用した一実施形態であるデジタルミキサのハードウェア構成を示すブロック図である。中央処理装置(CPU)101は、このミキサ全体の動作を制御する処理装置である。フラッシュメモリ102は、CPU101が実行する各種のプログラムや各種のデータなどを格納した不揮発性メモリである。ランダムアクセスメモリ(RAM)103は、CPU101が実行するプログラムのロード領域やワーク領域に使用する揮発性メモリである。RAM103には、カレントメモリと呼ばれる記憶領域が設けられており、CPU101は、該カレントメモリに記憶された各種パラメータに基づいて、後述する信号処理部109の動作を制御する。電動フェーダ104は、このミキサの操作パネル上に設けられたレベル設定用の操作子である。PC用I/O(入出力インターフェース)105は、PC(パーソナルコンピュータ)と接続するためのインターフェースである。
【0015】
表示器106は、操作パネル上に設けられた各種の情報を表示するためのディスプレイであり、ユーザによるタッチ操作が検出可能なタッチパネルである。操作子107は、操作パネル上に設けられたユーザが操作するための各種の操作子(電動フェーダ以外のロータリーエンコーダ、スイッチ、ボタン等)である。なお、
図1中で太線で表現したブロックは操作パネルの構成要素である。波形I/O(オーディオ信号入出力インターフェース)108は、外部機器との間で音響信号をやり取りするためのインターフェースである。信号処理部(DSP)109は、CPU101の指示に基づいて各種のマイクロプログラムを実行することにより、波形I/O108経由で入力した音響信号のミキシング処理、効果付与処理、及び音量レベル制御処理などの信号処理を行い、処理後の音響信号を波形I/O108経由で出力する。バス110は、これら各部を接続するバスラインであり、コントロールバス、データバス、およびアドレスバスを総称したものである。なお、本明細書に記載されている「信号」は、特段の説明がない限り(制御信号であると説明されていない限り)、音響信号(オーディオ信号)を表すものである。
【0016】
図2は、本実施形態のデジタルミキサの操作パネルの外観(一部)を示す。操作パネル上には、タッチパネル201(
図1の表示器106)とともに各種の操作子が配置されている。202はホームボタンであり、後述するホーム画面(
図5)をタッチパネルに呼び出すことを指示するボタンである。203はタッチパネルに表示された操作子の中の、カーソルで選択された操作子のパラメータ値を制御するための1つの物理ノブ(ロータリーエンコーダ)であり、ここでは「汎用ノブ」と呼ぶ。204は複数のレイヤボタンである。レイヤボタンi1〜i3は、それぞれ、入力チャンネル(ch)1〜8、入力ch9〜16、および入力ch17〜24の各レイヤのホーム画面を呼び出すためのレイヤボタンである。レイヤボタンo1,o2は、それぞれ、出力ch1〜8および出力ch9〜12の各レイヤのホーム画面を呼び出すためのレイヤボタンである。これら5つのレイヤボタンは、常にユーザが最後に押下した何れか1つのレイヤボタンのみがオン状態になるように制御されている。
【0017】
図3は、本実施形態のミキサにおける信号処理のブロック図である。同図の信号処理は、
図2の波形I/O108およびDSP109により実現される。入力ポート301は、マイクや楽器などの信号供給源から入力したアナログ音響信号をデジタル音響信号に変換して入力する複数の入力ポートを示す。入力ch302は、カレントメモリに設定された各入力ch毎のパラメータに基づいて、各入力ポートからのデジタル音響信号に対するレベル制御や周波数特性の調整処理などの信号処理を行う。ここでは24個の入力chが設けてある。各入力chの出力は、少なくとも12本のバスを含むバス303のそれぞれに出力することができ、各バスへの送出レベルは入力ch毎に任意に設定できる。各バス303は、各入力chから入力した信号をミキシングする。ミキシングされた信号は、そのバスに対応する出力ch304に出力される。バス303と出力ch304とは、1本のバスが1本の出力chに1対1で対応している。各出力chは、カレントメモリに設定されたパラメータの値に基づいて出力側の各種の信号処理を行う。出力ポート305は、出力ch304の各出力chからの音響信号をそれぞれアナログ音響信号に変換して出力する複数の出力ポートを示す。
【0018】
図4は、入力ch302のうちの1つのchの信号処理ブロックの概略構成を示すブロック図である。アッテネータ(Att)401は、当該chへ入力する信号に対してその入り口部分でのレベル制御を行う。イコライザ(EQ)402は信号の周波数特性を調整する。ゲート(Gate)403は、信号レベルが下がったときにノイズが残らないように、信号のレベルを絞るノイズゲートである。コンプレッサ(Comp)404は、信号のダイナミックレンジを圧縮する自動ゲイン調整を行う。レベル(Level)405は、信号の各バスへの送出レベルを調整するレベル調整部である。パン(Pan)406は、信号をステレオで出力する場合の左右定位(パン)の制御を行う。これら複数の各信号処理ブロックで行われる信号処理は、それぞれ、カレントメモリの当該chのパラメータに含まれる、当該信号処理ブロックに対応するパラメータセットのパラメータ値により制御される。図示しないが、出力ch304は、例えばイコライザ、コンプレッサ、およびレベル調整部などの信号処理ブロックにより構成されており、同様に、カレントメモリの当該出力chのパラメータにより制御されている。
【0019】
図5は、入力ch1〜8のレイヤのホーム画面の例を示す。この画面は、ユーザが、レイヤボタンi1をオンして入力ch1〜8を選択したときや、入力ch1〜8が選択されている状態でホームボタン202をオンしたときに表示される。他のレイヤのホーム画面も、同様に、レイヤボタンやホームボタンの操作により表示される。
【0020】
500−1〜500−8は、それぞれ、入力ch1〜8の各chのパラメータ設定状況を表示する縦長の表示領域(以下「ch表示領域」と呼ぶ)である。1ch分のch表示領域、例えば500−1において、501−1は当該領域で表示している入力chのch番号と名称の表示である。この表示501−1は、ホーム画面内で必ず画面の下側に固定的に表示される。511−1,512−1,513−1,514−1の4つの領域は、順に、当該chのアッテネータ401、イコライザ402、ゲート403、およびコンプレッサ404の各信号処理ブロックのパラメータセットの一部パラメータを表示する領域(以下、1つの信号処理ブロックのパラメータを表示する領域を「ブロック表示領域」と呼ぶ)である。
【0021】
なお、上記はch1のch表示領域500−1について説明したが、ch2〜8のch表示領域500−2〜500−8も同様である。上記の番号511〜514に、枝番として−2を付けてch2の各ブロック表示領域を表し、以下同様に枝番として−3〜−8を付けて以降のchのブロック表示領域を表すものとする。
【0022】
コンプレッサ404のパラメータを表示する各chのブロック表示領域514−1〜514−8の下側には各chのレベル405およびパン406のパラメータを表示するブロック表示領域が隠れており、表示されているブロック表示領域に対して上方向にスワイプ操作を行うと、ブロック表示領域が上にスクロールしてそれらの隠れているブロック表示領域が表示される。
【0023】
520はカーソルを示す太線の表示である。ユーザは、表示されているホーム画面内の任意のブロック表示領域に1回タッチすることで、そのブロック表示領域にカーソル520をセットすることができる。カーソル520がセットされたブロック表示領域を「選択された」領域あるいは「選択状態にある」領域と呼ぶ。画面上で選択状態にあるブロック表示領域は常に1つのみである。ホーム画面500では、選択状態にあるブロック表示領域のパラメータを汎用ノブ203を用いて制御できるが、これについては後に詳しく説明する。
図5では、ch表示領域500−2すなわち入力ch2のch表示領域中のコンプレッサのパラメータを表示するブロック表示領域514−2が選択状態にある。
【0024】
ユーザが、選択状態にあるブロック表示領域を再度タッチすると、そのブロック表示領域に対応する当該chの当該信号処理ブロックのパラメータセットの設定を行うための詳細画面が表示される。例えば、後述する
図6や
図8は、何れかのchのコンプレッサのパラメータを表示するブロック表示領域514−i(iはch番号)が選択状態にあるとき、再度、その領域514−iをタッチしたときに表示されるコンプレッサの詳細画面の例である。
【0025】
ここで、本発明を特徴づける1つのパラメータである、ワンノブモードについて説明する。本ミキサでは、各chの各信号処理ブロックごとにワンノブモードを設定できる。ワンノブモードを持たない信号処理ブロックがあってもよい。本実施形態では、
図4で説明した各信号処理ブロックのうち、アッテネータ、ゲート、レベル、およびパンはワンノブモードを持たず、イコライザおよびコンプレッサはワンノブモードを持つ。以下、コンプレッサのワンノブモードに注目して説明する。
【0026】
ワンノブモードはオンまたはオフの何れかの状態をとる。オン/オフの切替は、後述する詳細画面中に表示されるワンノブボタン(例えば
図6の602や
図8の802)をタッチすることで行われる。ワンノブモードがオンのとき(第2モード)、操作対象の信号処理ブロックの複数のパラメータは、1つの共通操作子で連動制御され、各パラメータに対応する個別操作子では制御できない。ワンノブモードがオフのとき(第1モード)、上記複数のパラメータは、それぞれに対応する個別操作子で個別に制御され、共通操作子では制御できない。なお、上記共通操作子や個別操作子は、操作パネル上の物理操作子だけでなく、画面上に表示された操作子の表示イメージをタッチしてスライド等させることで値を設定するものを含むものとする。
【0027】
ホーム画面500内の複数のブロック表示領域の一部には、左上に数字の1を○で囲んだアイコンが表示されている。このアイコンを「ワンノブアイコン」と呼ぶ。ワンノブアイコンは、当該ブロック表示領域に対応する信号処理ブロックのワンノブモードがオン状態にあることを示す。例えば、ワンノブアイコン521は、それが表示されているブロック表示領域514−1の信号処理ブロック、すなわちch1のコンプレッサのワンノブモードがオンされていることを示している。一方、ch2のコンプレッサのブロック表示領域514−2には、ワンノブアイコンが表示されていないので、ch2のコンプレッサのワンノブモードはオフ状態である。元々ワンノブモードを持たないアッテネータやゲートのブロック表示領域511−i,513−iにワンノブアイコンが表示されることはない。
【0028】
図6は、
図5のホーム画面の例えばch2のコンプレッサ(ワンノブモードオフ)のブロック表示領域514−2が選択状態にあるとき、さらに、同領域514−2をユーザがタッチすることにより表示される、ワンノブモードがオフの場合の、コンプレッサの詳細画面600の例である。601は、この詳細画面がコンプレッサのパラメータを設定する詳細画面であることを示す見出し表示である。602は、ワンノブモードのオン/オフを切り替えるためのワンノブボタンである。
図6では、ワンノブボタン602がオフされていることを示す態様(図では網掛け付きで示した)で表示されている。603は当該chのコンプレッサ404に入力する信号の現在のレベルを示すレベルメータ、604は当該コンプレッサにおける信号の現在の圧縮量を示すゲインリダクションメータ、605は当該コンプレッサから出力される信号の現在のレベルを示すレベルメータである。これらメータ表示は、入力する信号に応じて絶えず変化する。
【0029】
611〜616は当該コンプレッサの信号処理動作を規定する複数のパラメータ(パラメータセット)を個別に設定するための個別操作子(個別エレメント)である。611はどのレベルを超えたら圧縮を行うかを示す閾値であるスレッショルドを設定するための操作子、612はその超えた量に応じて圧縮する割合を表すレシオを設定するための操作子、613はスレッショルド値を越えてから、圧縮量がその対応値に立ち上るまでの遅延時間を表すアタックタイムを設定するための操作子、614はスレッショルド値を下回ってから、圧縮量がその対応値に立ち下がるまでの遅延時間を表すリリースタイムを設定するための操作子、615は出力信号のゲイン値であるアウトプットゲインを設定するための操作子、616はスレッショルドにおける圧縮のかかり具合を制御するニー値を設定するための操作子である。
【0030】
上記操作子611〜615はスライダ型操作子であり、画面上の該スライダ型操作子のツマミ部分(例えば操作子611であればツマミ631)を指でタッチしながら該操作子の長手方向にスライドさせることでパラメータ値を変更することができる。また、操作子611〜615のうちの1つをタッチして選択状態とし、物理ノブである汎用ノブ203を操作することにより、該選択状態の個別操作子のパラメータ値を変更することもできる。その場合、汎用ノブ203は、選択状態の個別操作子のパラメータを設定するための操作子として機能している。操作子616はボタン型操作子であり、ユーザが、Soft、Med、またはHardの3つのボタンの何れかをタッチすることで、択一的にニー値を設定することができる。
【0031】
ここで設定されたスレッショルド値は、操作子611のツマミ位置および数値612として表示され、設定されたレシオ値は、操作子612のツマミ位置および数値622として表示され、設定されたアタックタイム値は、操作子613のツマミ位置および数値623として表示され、設定されたリリースタイム値は、操作子614のツマミ位置および数値624として表示され、設定されたアウトプットゲイン値は、操作子615のツマミ位置および数値625として表示される。626は設定されたスレッショルド値とレシオ値とニー値に基づくコンプレッションカーブの表示である。ボタン型操作子616は、3つのボタンのうち現在オンされている1つのボタンの表示を、オフされている他の2つのボタンとは異なる態様でオン表示することで、設定されたニー値を表している。
【0032】
図7は、
図6の詳細画面で幾つかのパラメータ値を変更した後の状態を示す。スレッショルド、レシオ、およびアウトプットゲインのそれぞれのスライダ型操作子611,612,615が操作され、それらの操作子のツマミ位置および数値621,622,625,626の表示が変更されている。
図6、
図7に関して説明した、以上のようなパラメータ値の変更が第1編集過程に相当し、その際、CPU101は第1編集手段として動作する。
【0033】
図8は、
図5のホーム画面の例えばch1のコンプレッサ(ワンノブモードオン)のブロック表示領域514−1が選択状態にあるとき、同領域514−1をタッチすることにより表示される、ワンノブモードがオンの場合の、コンプレッサの詳細画面800の例である。
図8中の800番台の番号が指し示す各部分と
図6中の600番台の番号が指し示す各部分とは、下2桁が同じ番号の部分同士で対応している。見出し801、メータ803〜805、およびコンプレッションカーブ826は、
図6の対応する部分と同様の表示である。ワンノブボタン802は、
図6のボタン602に対応する表示であるが、オンされていることを示す態様(ここでは網掛け無しで示した)で表示されている。
【0034】
841はワンノブモードがオンのときのみに表示されるスライダ型のワン操作子(ワンエレメント)であり、842はそのツマミ部分である。このワン操作子841で設定される1つの値を「ワンパラメータ」と呼ぶ。ワンパラメータは0から100の範囲の整数値をとり、その値が大きいほど信号処理ブロックの信号処理の音響効果が大きくなる。ツマミ部分842をタッチしながら該操作子の長手方向に沿って左右にスライドさせることで、ワンパラメータの値を変更できる。ワンノブモードがオンの信号処理ブロックでは、物理ノブである汎用ノブ203は、ワン操作子841と同様の、ワンパラメータを設定する専用の操作子として機能する。すなわち、
図8の詳細画面800が表示されている場合は、画面上に操作可能な操作子がワン操作子841以外無いため、ワン操作子841が常に選択状態にあり、汎用ノブ203を操作することでワンパラメータの値が変更される。このとき、設定されたワンパラメータの値は、ツマミ842の位置と数値843に反映される。
【0035】
本実施形態のミキサのコンプレッサでは、ワンノブモードがオンの場合、ワン操作子841乃至汎用ノブ203で、スレッショルド、レシオ、およびアウトプットゲインの3つのパラメータを連動制御できる。具体的には、ワンパラメータの値に基づいて上記3つのパラメータ値の組み合わせが1組決まるような変化カーブのデータを用意しておき、設定されたワンパラメータの値で該変化カーブを参照することにより対応する上記3パラメータ値を決定している。
図6では、ワンパラメータ値が「97」(841,843)に設定され、該ワンパラメータ値に応じて、スレッショルド値「−52」(811,821)、レシオ値「6.0:1」(812,822)、およびアウトプットゲイン値「+12.2」(815,825)が設定されている。ここでは、一部(3つ)のパラメータの変化カーブを用いているため、全パラメータの変化カーブを採用する場合に比べ、データ量や処理にかかるCPU負荷を削減できる。
【0036】
スライダ型操作子811〜815は、
図6のスライダ型操作子611〜615に対応するが、ツマミの表示は無く、ユーザがこれら操作子を用いて個別にパラメータ設定を行うことはできない。また、ボタン型操作子816は、
図6のボタン型操作子616に対応するが、ボタンの上半分に影を付けて(
図8では網掛けで表現した)表示され、ユーザが操作することはできない。ワンノブモードがオンのときは、当該信号処理ブロックにおけるパラメータ設定は共通操作子(ワンエレメント)であるワン操作子841を通じてのみ行うことができ、個別操作子(個別エレメント)による個々のパラメータ設定はできない。なお、ワンノブモードがオンのとき、必ずしも当該処理ブロックの全てのパラメータを連動制御する必要はない。全パラメータのうち所定の複数のパラメータだけを連動制御し、他のパラメータは固定値のままとしてもよい。本実施形態のミキサのコンプレッサでは、スレッショルド、レシオ、およびアウトプットゲインの3パラメータを共通操作子によって連動制御し、その他のパラメータは固定値としている。なお、本発明では、ワンノブモードオンのとき、ユーザが、共通操作子の操作だけで信号処理ブロックの全パラメータ値を制御できるようにするため、連動制御されない固定値のパラメータについてもマスクするようになっている。
【0037】
なお、各操作子811〜815は操作できないが、ツマミ位置に相当する位置に境界線を表示し、その境界線の位置により各パラメータ値を示すようにしている。
図8の詳細画面には、当該信号処理ブロックの全パラメータの値、すなわち、ユーザが設定したワンパラメータの値に応じて設定された3パラメータの値、及び、その他の固定値のパラメータの値は、操作子811〜815の境界線の位置、数値821〜825、ボタン型操作子816のオン表示、および、コンプレッションカーブとして、表示される。
【0038】
図9は、
図8の詳細画面でワンパラメータの値を変更した後の状態を示す。ワン操作子841または汎用ノブ203の操作によりワンパラメータの値が変更され、ツマミ842の位置と表示843が変更されている。そして、ワンパラメータの値の変更に応じて、スレッショルド、レシオ、およびアウトプットゲインの3パラメータが変更され、その変更後のパラメータ値に応じて、操作子811,812,815の境界線の位置および数値821,822,825,826の表示が変更されている。他のパラメータは
図8から変更されていない。
図8、
図9に関連して説明した、以上のようなパラメータ値の変更が第2編集過程に相当し、その際、CPU101は第2編集手段として動作する。
【0039】
次に、ワンノブモードの切替について説明する。
図6,7のようなワンノブモードがオフの詳細画面においてワンノブボタン602をタッチすること(第1モードから第2モードへの切替指示)で、ワンノブモードをオフ(第1モード)からオン(第2モード)に切り替えることができる。この場合、ワンノブモードがオフのときは、各パラメータは個別操作子で個別に制御可能であるから、コンプレッサのパラメータ値の組み合わせは、ワンパラメータ値で制御できるパラメータ値の組み合わせから外れている可能性が高い。そこで、本実施形態のミキサでは、ワンノブモードがオフからオンに切替るときには、当該信号処理ブロックの全パラメータ(パラメータセット)を、所定値のワンパラメータに対応する初期値に初期化することとした。
【0040】
図10は、
図6,7のワンノブモードオフの場合の詳細画面でワンノブボタン602をタッチしたときに、その詳細画面の手前に表示される再確認ダイアログの例を示す。ダイアログ1000は、本当にワンノブモードオンにするかを再確認するメッセージと、キャンセルボタンおよびOKボタンを含む。メッセージには、OKすると全パラメータが初期化されるとの注意書きを含めてもよい。ユーザがキャンセルボタンをタッチ(中止を選択)すると、ワンノブモードがオフのまま当ダイアログは消去され、元の詳細画面に戻る。ユーザがOKボタンをタッチ(実行を選択)すると、ワンノブモードがオンに変更されるとともに、処理対象の信号処理ブロックの全パラメータが初期化され、ワンノブモードオンの場合の詳細画面が表示される。このような再確認ダイアログ1000を表示することにより、ワンノブモードをオフからオンに切り替える際にパラメータが初期化されることを、ユーザに注意喚起できる。
【0041】
以上に説明したワンノブモードのオフからオンへの切り替えが第2モード切替過程に相当し、その際、CPU101は第2モード切替手段として動作する。また、その途中における、再確認ダイアログを用いたユーザへの再確認の処理が再確認過程に相当する。
【0042】
図11は、
図6,7の詳細画面でワンノブボタン602をタッチして表示された
図10のダイアログ1000でOKボタンをタッチし、ワンノブモードがオンに変更されたときに表示される、コンプレッサの詳細画面1100の例を示す。
図11中の1100番台の番号が指し示す各部分と
図8中の800番台の番号が指し示す各部分とは、下2桁が同じ番号の部分同士で対応している。ここでは、コンプレッサの全パラメータが、値が0のワンパラメータに対応する値に初期化されている。ワンパラメータの値が0のとき、コンプレッサによる圧縮効果は最小とされ、入力する信号がそのまま出力される。ワンパラメータ値の0は、ワン操作子1131のツマミ位置および数値1132として表示され、初期化されたパラメータ値に基づいて、各操作子1111〜1115、数値1121〜1125、ボタン1116、および、コンプレッションカーブの表示が制御される。なお、ボタン1116のニー(Knee)値の初期値は「Med」とされ、該ボタン1116は操作できないようにされている。ワンノブモードをオンした後、ユーザは、
図11の状態を起点として、ワン操作子1131または汎用ノブ203を操作して、
図8,9のようにパラメータ設定を行うことができる。
【0043】
図8,9,11のようなワンノブモードがオンの詳細画面においてワンノブボタン802,1102をタッチすること(第2モードから第1モードへの切替指示)で、ワンノブモードをオン(第2モード)からオフ(第1モード)に切り替えることができる。この場合、初期化されることなく、切替時点のコンプレッサの全パラメータ値(パラメータセット)をそのまま引き継いで
図6,7のようなワンノブモードオフ詳細画面に移行する。ここでは、パラメータ値がそのまま引き継がれるので、再確認ダイアログは表示されない。
【0044】
以上に説明したワンノブモードのオンからオフへの切り替えが第1モード切替過程に相当し、その際、CPU101は第1モード切替手段として動作する。
【0045】
図6〜9,11に示されるようなあるchのある信号処理ブロックの詳細画面からホームボタン202をオンすることで、
図5に示されるようなそのchを含むレイヤのホーム画面に戻ることができる。ホーム画面に戻ったとき、カーソルは、その信号処理ブロックに対応するブロック表示領域にセットされる。詳細画面は、もともとホーム画面中のある信号処理ブロックの表示領域をタッチすることで表示されるが、ホーム画面に戻ったときは、同じ信号処理ブロックの表示領域にカーソルが表示される。ただし、詳細画面においては、処理対象を別のchの同じ信号処理ブロックに変更できるので、カーソルが配置されるのは同じchの表示領域とは限らず、別のchの同じ信号処理ブロックの表示領域となる可能性がある。ある信号処理ブロックの詳細画面でワンノブモードのオン/オフが切り替えられていたときは、ホーム画面に戻ったとき、当該信号処理ブロックのブロック表示領域には、ワンノブモードのオン/オフに応じてワンノブアイコンが表示/非表示される。
【0046】
図5のホーム画面におけるパラメータの設定について説明する。ホーム画面500内の任意の信号処理ブロックの表示領域にカーソルをセットして選択状態とし、汎用ノブ203を操作することで、その表示領域が選択状態である信号処理ブロックのパラメータを制御できる。この場合、選択状態のブロック表示領域がワンノブモードを持たない信号処理ブロックに対応するものであったときは、その信号処理ブロックの予め決められた1つのパラメータの値を汎用ノブ203の操作で変更できる。例えば、ch1のアッテネータのブロック表示領域511−1にカーソルがセットされているときは、汎用ノブ203の操作で当該アッテネータの減衰量を制御できる。アッテネータはワンノブモードを持たず、ホーム画面での操作対象は、その減衰量に予め決められている。
【0047】
ワンノブモードを持つ信号処理ブロックの表示領域が選択状態にあり、かつ、そのワンノブモードがオフのときは、その信号処理ブロックの予め決められた1つのパラメータの値を汎用ノブ203の操作で変更できる。このパラメータを「代表パラメータ」と呼ぶ。代表パラメータは、信号処理ブロックの種別ごとに予め決められている。例えば、コンプレッサではスレッショルドが代表パラメータである。従って、ワンノブモードがオフであるch2のコンプレッサのブロック表示領域514−2にカーソルがセットされているときは、汎用ノブ203の操作で、当該コンプレッサのスレッショルド値を制御できる。
【0048】
ワンノブモードを持つ信号処理ブロックの表示領域が選択状態にあり、かつ、ワンノブモードがオンのときは、その信号処理ブロックのワンパラメータの値を汎用ノブ203の操作で変更して、その処理ブロックの全パラメータ値を決定できる。例えば、ch1のコンプレッサのブロック表示領域514−1にカーソルがセットされているときは、汎用ノブ203の操作で当該コンプレッサのワンパラメータ値を変更し、それに応じて3パラメータ値を連動制御することで、固定のパラメータ値を含む、当該コンプレッサの全パラメータ値を決定できる。
【0049】
なお、ホーム画面では、各chの各ブロック表示領域を広くとれないので、各信号処理ブロックのメータやパラメータを全てブロック表示領域に表示することができない。そこで、信号処理ブロックの種別ごとに、予め決められた一部のメータやパラメータの値だけを、対応するブロック表示領域に表示することとしている。例えば、アッテネータのブロック表示領域511−iでは、減衰量などの所定のパラメータのみ表示する。特に、ワンノブモードを持つ信号処理ブロックの場合は、対応するブロック表示領域に、ワンノブモードがオンのときはワンパラメータの値が表示され、ワンノブモードがオフのときは上記代表パラメータの値が表示される。例えば、コンプレッサのブロック表示領域514には、基本的な表示要素としてゲインリダクションメータと出力信号のレベルメータとが表示されるが、さらに、ワンノブモードがオンの表示領域514−1では、右上にワンパラメータの現在値「97」が表示され、また、ワンノブモードがオフの表示領域514−2では、右上に代表パラメータであるスレッショルド値「−32」が表示される。
【0050】
次に、
図12〜14を参照して、上述の動作を実現するための制御CPU101の処理手順を説明する。なお、カレントメモリには各chの各信号処理ブロックの全パラメータ値(パラメータセット)が保持されており、上述のホーム画面や詳細画面におけるパラメータ値の表示には、常に、該カレントメモリに保持されているパラメータ値が反映される。また、下記の処理手順における各種パラメータ値の変更は、カレントメモリ上の対応するパラメータデータを変更することである。カレントメモリ上のパラメータデータは、常時、CPU101のバックグラウンド処理(図示せず)で、DSP109における信号処理に反映されている。また、各chのワンノブモードのオン/オフの設定値もカレントメモリ上に記憶されている。
【0051】
図12(a)は、ホーム画面において、あるchのコンプレッサの詳細画面を開く処理のフローである。この処理は、ホーム画面内の何れかのchのコンプレッサのブロック表示領域が選択されている状態で、ユーザによりその領域がタッチされたときに実行される。ステップ1201で当該コンプレッサのワンノブモードのオン/オフを判別する。ワンノブモードがオフ状態なら、ステップ1202で当該chのコンプレッサの、ワンノブモードオフの場合の詳細画面(
図6,7)を表示し、オン状態なら、ステップ1203で当該chのコンプレッサの、ワンノブモードオンの場合の詳細画面(
図8,9)を表示する。
【0052】
図12(b)は、ホーム画面において、あるchのコンプレッサに対する汎用ノブ203の操作が為されたときの処理フローである。この処理は、ホーム画面内の何れかのchのコンプレッサのブロック表示領域が選択されている状態で汎用ノブ203が操作されたときに実行される。
【0053】
ステップ1211で当該chのコンプレッサのワンノブモードのオン/オフを判別する。ワンノブモードがオフなら、ステップ1212で、汎用ノブ203の操作量に応じて、カレントメモリ上の当該chのコンプレッサのスレッショルド値を増減する。次にステップ1213で、ホーム画面の当該chのスレッショルド値の表示を更新する。ステップ1211でワンノブモードがオンならば、ステップ1214で、汎用ノブ203の操作量に応じて、カレントメモリ上の当該chのコンプレッサのワンパラメータの値を増減する。次にステップ1215で、ワンパラメータの値に応じて上述の3パラメータの値を決定し、カレントメモリ上のそれら3パラメータの値を設定する。ステップ1216で、ホーム画面の当該chのコンプレッサのワンパラメータ値の表示を更新する。
【0054】
図13(a)は、ワンノブモードオフのコンプレッサの詳細画面における個別操作子の操作時の処理のフローである。この処理は、例えば、
図6,7の詳細画面内の個別操作子611〜615が操作されたときに実行される。なお、個別操作子611〜615のうちの1つをタッチして選択状態とし汎用ノブ203を操作した場合も、本処理が実行される。ステップ1301で、個別操作子の操作量に応じて、カレントメモリ中の対応するパラメータの値を増減する。ステップ1302で、変更されたパラメータ値に基づいて、当該個別操作子のツマミ位置、数値の表示を更新するとともに、必要に応じて、コンプレッションカーブも表示更新する。
【0055】
図13(b)は、ワンノブモードオフのコンプレッサの詳細画面におけるワンノブボタンの操作時の処理のフローである。この処理は、例えば、
図6,7の詳細画面内のワンノブボタン602が操作されたときに実行される。ステップ1311で、詳細画面の手前に
図10の再確認ダイアログ1000を表示してユーザの入力を受け付ける。OKが選択されたときは、ステップ1312から1313に進み、カレントメモリ上の当該chのコンプレッサのワンノブモードをオフからオンに切り替える。次にステップ1314で、カレントメモリ上の当該chのコンプレッサの全パラメータおよびワンパラメータを初期化する。次にステップ1315で、
図11のような当該chのコンプレッサの、ワンノブモードオンの場合の詳細画面(初期状態)を表示する。ステップS1311でキャンセルが選択されたときは、ステップ1312からそのまま(再確認ダイアログは消去して)処理を終了する。
【0056】
図14(a)は、ワンノブモードオンのコンプレッサの詳細画面におけるワン操作子の操作時の処理のフローである。この処理は、例えば、
図8,9の詳細画面においてワン操作子841または汎用ノブ203が操作されたときに実行される。ステップ1401で、ワン操作子または汎用ノブの操作量に応じて、カレントメモリ中の対応するワンパラメータの値を増減する。ステップ1402で、ワンパラメータの値で変化カーブを参照することにより上述の3パラメータの値を決定し、カレントメモリ上のそれら3パラメータの値を設定する。ステップ1403で、詳細画面のワン操作子のツマミ位置および数値の表示、3パラメータの操作子のそれぞれの境界線の位置および数値の表示、並びにコンプレッションカーブの表示を更新する。
【0057】
図14(b)は、ワンノブモードオンのコンプレッサの詳細画面におけるワンノブボタンの操作時の処理のフローである。この処理は、例えば、
図8,9の詳細画面内のワンノブボタン802が操作されたときに実行される。ステップ1411で、カレントメモリ上の当該chのコンプレッサのワンノブモードをオンからオフに切り替える。次にステップ1412で、当該chのコンプレッサの、ワンノブモードオフの場合の詳細画面を表示する。
【0058】
上記実施形態によれば、ある信号処理ブロックに関して、ホーム画面と詳細画面の何れの場合も、そのワンノブモードをオンにしたときには、ワン操作子841または汎用ノブ203によるワンパラメータ経由の制御だけが有効で、他の操作子よる制御は無効になり、かつ、そのワンパラメータの値を画面上で確認できるようにしているので、ユーザはワンパラメータの設定状況のみにフォーカスしてその信号処理ブロックの設定を行うことができる。従って、初心者でも容易に設定ができる。また、ワンノブモードオンで大まかな設定を行った後、ワンノブモードオフとしてさらに詳細に設定を行うこともできる。
【0059】
ホーム画面では、ユーザは、任意の信号処理ブロックの表示領域を選択して汎用ノブ203でパラメータ設定できるので、操作対象の信号処理ブロックを簡単に切り替えながらパラメータ設定が行える。この場合、ワンノブモードオンの信号処理ブロックでは、ワンパラメータの値で全パラメータ値が特定される確定的な制御ができ、ワンノブモードオフの信号処理ブロックでは、代表パラメータ値とそれ以外の個別に調整されたパラメータ値とによる柔軟な制御ができるので、ホーム画面において使い勝手のよいパラメータ設定を行える。
【0060】
なお、上記実施形態では主としてコンプレッサを例として説明したが、本発明はその他の信号処理ブロックのパラメータ設定に適用することもできる。また、上記実施形態ではミキサの入力chの信号処理ブロックのパラメータ設定を例として説明したが、本発明はミキサの出力chやその他、レコーダー、アンプ、スピーカー等、任意の音響機器の任意のchの各種信号処理ブロックのパラメータ設定にも適用可能である。
【0061】
上記実施形態では、汎用ノブ203は1つのみ備える例で説明したが、例えば
図5のホーム画面500が表示される表示器201の各ch表示領域500−1〜500−8の下側に、汎用ノブ203の代わりになる8つの物理ノブを設けてもよい。この場合、カーソル520は行単位に8ch分のブロック表示領域を選択するようにし(例えばコンプレッサであれば、1つのレイヤ分のブロック表示領域514−1〜514−8の全てが選択されるようにする)、上記8つの物理ノブで、選択された8ch分のそれぞれのブロック表示領域でのパラメータ設定をパラに行うようにしてもよい。また、詳細画面における操作は全てタッチパネルだけでも行えるので、物理ノブを1つも備えない構成としてもよい。
【0062】
上記実施形態では、ワンノブモードオンのコンプレッサにおいてワンパラメータに基づいて3パラメータを連動制御する例を説明したが、連動制御するパラメータの数は3に限らず、各信号処理ブロックごとに任意の数のパラメータは適宜決めておけばよい。
【0063】
上記実施形態では、ワンパラメータから3パラメータを決定する変化カーブを1つだけ用意したが、用意された複数の変化カーブから1つを選んで使用するようにしてもよい。また、変化カーブが決定するのは3パラメータ値に限らない。変化カーブでどのパラメータ値を決定するかは、変化カーブ毎に異なっていてもよい。その場合、変化カーブで決定されないパラメータ値は、上記実施形態と同様に、固定値とすればよい。さらに、処理する音響信号の種類に応じて異なる変化カーブ(すなわち異なる制御ルール)を選択的に適用してもよい。具体的には、各chに対し、処理する音響信号のタイプ(打楽器系の音なのかボーカル系の音なのかなど)を設定し、そのタイプに応じて変化カーブを自動選択して適用するようにしてもよい。例えば、打楽器系のタイプが割り当てられたchのコンプレッサではワンノブモードオンのとき打楽器に適した第1の変化カーブを適用し、ボーカル系のタイプが割り当てられたchのコンプレッサではワンノブモードオンのときボーカルに適した第2の変化カーブを適用する、等である。
【0064】
上記実施形態では、
図8,9に示したように、ワンノブモードオンのときには個別操作子のツマミ部分を非表示としてそれらが操作不可であることを表現したが、ツマミの非表示の代わりに、操作子の色や明るさや形状を変えて操作不可であることを示してもよい。
【0065】
上記実施形態の表示手段はタッチセンサを備えたタッチパネルであったが、タッチセンサを備えないディスプレイと、マウス、タッチパッド等のポインティングデバイスとに置き換えてもよい。
【0066】
上記実施形態では、選択状態にあるブロック表示領域をタッチすることで、対応する信号処理ブロックの詳細画面を表示するようになっていたが、各信号処理ブロックの詳細画面を開く専用のボタンを設け、選択状態にあるか否かに関わらず、それを操作すれば表示するようにしてもよい。