【文献】
LING WANG,CHEMICAL COMMUNICATIONS,2006年 1月 1日,N26,P2795-2797
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基を含むポリマー骨格に組み込まれたマンガンイオンを含むナノ構造において、前記ジェミナルビスホスホネート基が互いに独立して、
−R3R4C(P=O(OR1)(OR2))2
{式中:
R1およびR2は、負電荷、H、アルキルおよびアリールからなる群から選択され、
R3およびR4の少なくとも1つは前記ポリマー骨格に結合した基であるか、または前記ポリマー骨格の一部を形成する基であるが、但し、R3およびR4の一方だけがこのような結合した基である場合、R3およびR4の他方は、前記ポリマー骨格に結合可能な基もしくはこのような基の残基であるか、またはH、OH、OR5およびR5(式中、R5は低級アルキルである)からなる群から選択される}
として組み込まれていることを特徴とするナノ構造。
請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノ構造において、前記ポリマー骨格が、ジェミナルビスホスホネート基と2つのオルガノオキシシラン基とを含有するモノマー残基を含むことを特徴とするナノ構造。
【発明の概要】
【0017】
本開示の第1の態様は、少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基P=O(OR
1)(OR
2)−を含むもしくはそれで修飾されたポリマー骨格または足場をベースにするナノサイズの構造を含むナノ構造に関し、ジェミナルビスホスホネート基は、本発明に関して、−R
4R
3C(P=O(OR
1)(OR
2))
2−に等しく、式中、R
1およびR
2は、負電荷、H、アルキルおよびアリールから独立して選択される。
【0018】
本開示の第2の態様は、少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基P=O(OR
1)(OR
2)−を含むもしくはそれで修飾されたポリマー骨格または足場をベースにするナノサイズの構造に組み込まれた常磁性マンガンイオンを含むナノ構造に関し、ジェミナルビスホスホネート基は、本発明に関して、前述のように、−R
4R
3C(P=O(OR
1)(OR
2))
2−に等しく、式中、R
1およびR
2は、負電荷、H、アルキルおよびアリールから独立して選択される。
【0019】
「ナノサイズの」という用語は、一般に、100nm未満の任意のものを包含するものと解釈されるが、本発明は、略球状の形状および平均サイズ(流体力学的径)1〜100nm、または、幾つかの実施形態では、2〜50nm、3〜10nmまたは3〜7nmの高分岐または架橋構造の成分に重点を置いている。
【0020】
本開示の第2の態様は、マンガンイオンを含むこのようなナノ構造とマンガンイオンを含まないこのようなナノ構造の両方の製造方法に関する。
【0021】
本開示の第3の態様は、このようなナノ構造、特に常磁性マンガンイオンを含むナノ構造を含む医薬組成物などの組成物、およびまたこのようなナノ構造、特に、常磁性マンガンイオンを含むナノ構造の臨床用の造影剤としての使用、特に、MRI用の造影剤としての使用に関する。
【0022】
本明細書で開示するナノ構造の従来技術と比較した幾つかの利点には、現在市販されている材料より緩和度が一桁高いことと合わせて、腫瘍組織に選択的に集積するのに好適なサイズであり且つ良好な生物学的忍容性(biotolerability)を示すということの組み合わせがある。このため、本発明のナノ構造、特に、常磁性マンガンイオンを含むナノ構造は、MRI用、特に腫瘍画像化用の造影剤として使用するのに好適である。
【0023】
さらに、常磁性成分としてガドリニウムの代わりにマンガンを使用するため、ガドリニウムに関連する毒性の問題が回避される。
【0024】
比較的希少なガドリニウムの代わりに豊富に存在するマンガンを使用することも、材料の製造においてコスト的に有利である。
【0025】
具体的実施形態
1.少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基を含むポリマー骨格に組み込まれたマンガンイオンを含むナノ構造において、ジェミナルビスホスホネート基が互いに独立して
−R
3R
4C(P=O(OR
1)(OR
2))
2
(これは−R
4R
3C(P=O(OR
1)(OR
2))
2に等しい)
{式中、R
1およびR
2は、負電荷、H、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、R
3およびR
4の少なくとも1つはポリマー骨格に結合した基であるが、但し、R
3およびR
4の一方だけがこのような結合した基である場合、R
3およびR
4の他方は、ポリマー骨格に結合可能な基もしくはこのような基の残基であるか、またはH、OH、OR
5およびR
5(式中、R
5は低級アルキルである)からなる群から選択される}
として組み込まれていることを特徴とするナノ構造。
【0026】
2.実施形態1に記載のナノ構造において、マンガンイオンがマンガン(II)イオンであることを特徴とするナノ構造。
【0027】
3.実施形態1または2に記載のナノ構造において、R
1およびR
2が、負電荷、H、アルキルおよびメチルからなる群から独立して選択されることを特徴とするナノ構造。
【0028】
4.実施形態1〜3のいずれか1つに記載のナノ構造において、ポリマー骨格に結合した基、および/またはポリマー骨格に結合可能な基、またはこのような基の残基が:
(CH
2)
nSi(R
x)
3{式中、R
xは、独立して低級アルキル、OH、O
−、またはO−であり、式中、−はポリマー骨格への結合を示し、nは1〜5である}、
(CH
2)
nCOR
y{式中、R
yは、O−、NH
2、NHR
z、NR
z2、またはポリマー骨格への結合であり、R
zは低級アルキルであり、nは1〜5であり、−はポリマー骨格への結合を示す}、および
(CH
2)
nSO
2R
y{式中、R
yは、O−、NH
2、NHR
z、NR
z2、またはポリマー骨格への結合であり、R
zは低級アルキルであり、nは1〜5であり、−はポリマー骨格への結合を示す}、
からなる群から選択されることを特徴とするナノ構造。
【0029】
5.実施形態1〜4のいずれか1つに記載のナノ構造において、ケイ素原子を含むことを特徴とするナノ構造。
【0030】
6.実施形態1〜5のいずれか1つに記載のナノ構造において、R
3および/またはR
4は、−(CH
2)
n−Si(R
x)
3{式中、R
xは独立して低級アルキル、OH、O
−、またはO−であり、−はポリマー骨格への結合を示し、nは1〜5である}からなる群から選択されることを特徴とするナノ構造。
【0031】
7.実施形態1〜6のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が2〜50nmであることを特徴とするナノ構造。
【0032】
8.実施形態1〜7のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が3〜10nmであることを特徴とするナノ構造。
【0033】
9.実施形態1〜8のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が3〜7nmであることを特徴とするナノ構造。
【0034】
10.実施形態1〜7のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が10〜50nmであることを特徴とするナノ構造。
【0035】
11.実施形態1〜7または10のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が10〜20nmであることを特徴とするナノ構造。
【0036】
12.実施形態1〜11のいずれか1つに記載のナノ構造において、ポリマー骨格がジェミナルビスホスホネート基および2つのオルガノオキシシラン基を含有するモノマー残基を含むことを特徴とするナノ構造。
【0037】
13.実施形態1〜11のいずれか1つに記載のナノ構造において、ポリマー骨格がポリエチレンイミンから誘導されることを特徴とするナノ構造。
【0038】
14.実施形態13に記載のナノ構造において、P/Nモル比が0.1〜3であることを特徴とするナノ構造。
【0039】
15.実施形態1〜14のいずれか1つに記載のナノ構造において、P/Mnモル比が7〜20であることを特徴とするナノ構造。
【0040】
16.実施形態5または実施形態5に従属する場合の実施形態6〜12もしくは実施形態14〜15のいずれか1つに記載のナノ構造において、Si/Mnモル比が5〜20であることを特徴とするナノ構造。
【0041】
17.実施形態5または実施形態5に従属する場合の実施形態6〜15のいずれか1つに記載のナノ構造において、Si/Pモル比が0.7〜1.3であることを特徴とするナノ構造。
【0042】
18.実施形態1〜17のいずれか1つに記載のナノ構造において、マンガンイオンがホスホネート基に配位していることを特徴とするナノ構造。
【0043】
19.実施形態1〜18のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造が、外側部分に結合した親水性基をさらに含むことを特徴とするナノ構造。
【0044】
20.実施形態19に記載のナノ構造において、親水性基が−(CH
2CH
2O)
nCH
3部分(式中、n=4〜50である)を含むことを特徴とするナノ構造。
【0045】
21.実施形態1〜20のいずれか1つに記載のナノ構造において、ポリマー骨格が一般構造
{(X
7aO)(X
7bO)PO}
2−(C){(CH
2)
nSi(OX
7c)(OX
7d)(OX
7e)}{(CH
2)
oSi(OX
7c)(OX
7d)(OX
7e)}
{式中、
X
7a、X
7b、X7、X
7eは、H、C
1〜8アルキルおよびベンジルから独立して選択され;
nおよびoは1〜5から独立して選択される}
のモノマー残基を含むことを特徴とするナノ構造。
【0046】
22.実施形態1〜21のいずれか1つに記載のナノ構造を含む組成物。
【0047】
23.実施形態1〜21のいずれか1つに記載のナノ構造を含む医薬組成物。
【0048】
24.実施形態1〜21のいずれか1つに記載のナノ粒子または実施形態22もしくは23に記載の組成物のMRI造影剤としての使用。
【0049】
25.実施形態1〜21のいずれか1つに記載のナノ構造を得る方法において、
ジェミナルビスホスホネートを含むポリマー骨格のナノ構造を得る工程、および
前記ナノ構造をマンガンイオンと接触させる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【0050】
26.実施形態25に記載の方法において、ナノ構造を限外濾過により精製する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【0051】
27.実施形態13、または実施形態13に従属する場合の実施形態14〜21のいずれか1つに記載のナノ構造を得る方法において、ジェミナルビスホスホネートをポリエチレンイミンから誘導されたポリマー骨格にグラフトした後、それにマンガンイオンを担持させることを特徴とする方法。
【0052】
28.実施形態12、または実施形態12に従属する場合の実施形態13〜21のいずれか1つに記載のナノ構造を得る方法において、前記シランが、水と、水と混和性を有する他の1種以上の溶媒との溶媒混合物中で提供されることを特徴とする方法。
【0053】
29.実施形態25〜28のいずれか1項に記載の方法により得ることができる生成物。
【0054】
30.少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基を含むポリマー骨格を含むナノ構造において、ジェミナルビスホスホネート基が互いに独立して
−R
3R
4C(P=O(OR
1)(OR
2))
2
(これは−R
4R
3C(P=O(OR
1)(OR
2))
2に等しい)
{式中、R
1およびR
2は、負電荷、H、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、R
3およびR
4の少なくとも1つはポリマー骨格に結合した基であるが、但し、R
3およびR
4の一方だけがこのような結合した基である場合、R
3およびR
4の他方は、ポリマー骨格に結合可能な基もしくはこのような基の残基であるか、またはH、OH、OR
5およびR
5(式中、R
5は低級アルキルである)からなる群から選択される}
として組み込まれていることを特徴とするナノ構造。
【0055】
31.実施形態30に記載のナノ構造において、R
1およびR
2が、負電荷、H、アルキルおよびメチルからなる群から独立して選択されることを特徴とするナノ構造。
【0056】
32.実施形態30または31に記載のナノ構造において、ポリマー骨格に結合した基、および/またはポリマー骨格に結合可能な基またはこのような基の残基が:
(CH
2)
nSi(R
x)
3{式中、R
xは独立して低級アルキル、OH、O
−、またはO−であり、−はポリマー骨格への結合を示し、nは1〜5である}、
(CH
2)
nCOR
y{式中、R
yはO−、NH
2、NHR
z、NR
z2、またはポリマー骨格への結合であり、R
zは低級アルキルであり、nは1〜5であり、−はポリマー骨格への結合を示す}、および
(CH
2)
nSO
2R
y{式中、R
yは、O−、NH
2、NHR
z、NR
z2、またはポリマー骨格への結合であり、R
zは低級アルキルであり、nは1〜5であり、−はポリマー骨格への結合を示す}
からなる群から選択されることを特徴とするナノ構造。
【0057】
33.実施形態30〜32のいずれか1つに記載のナノ構造において、ケイ素原子を含むことを特徴とするナノ構造。
【0058】
34.実施形態30〜33のいずれか1つに記載のナノ構造において、R
3および/またはR
4が−(CH
2)
n−Si(R
x)
3{式中、R
xは独立して低級アルキル、OH、O
−、またはO−であり、−はポリマー骨格への結合を示し、nは1〜5である}からなる群から選択されることを特徴とするナノ構造。
【0059】
35.実施形態30〜34のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が2〜50nmであることを特徴とするナノ構造。
【0060】
36.実施形態30〜35のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が3〜10nmであることを特徴とするナノ構造。
【0061】
37.実施形態30〜36のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が3〜7nmであることを特徴とするナノ構造。
【0062】
38.実施形態30〜35のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が10〜50nmであることを特徴とするナノ構造。
【0063】
39.実施形態30〜35または38のいずれか1つに記載のナノ構造において、ナノ構造の流体力学的径が10〜20nmであることを特徴とするナノ構造。
【0064】
40.実施形態30〜39のいずれか1つに記載のナノ構造において、ポリマー骨格が、ジェミナルビスホスホネート基と2つのオルガノオキシシラン基とを含有するモノマー残基を含むことを特徴とするナノ構造。
【0065】
41.実施形態30〜40のいずれか1つに記載のナノ構造において、ポリマー骨格がポリエチレンイミンから誘導されることを特徴とするナノ構造。
【0066】
42.実施形態41に記載のナノ構造において、P/Nモル比が0.1〜3であることを特徴とするナノ構造。
【0067】
43.実施形態33または実施形態33に従属する場合の実施形態34〜42のいずれか1つに記載のナノ構造において、Si/Pモル比が0.7〜1.3であることを特徴とするナノ構造。
【0068】
44.実施形態30〜43のいずれか1つに記載のナノ構造において、前記ナノ構造が、外側部分に結合した親水性基をさらに含むことを特徴とするナノ構造。
【0069】
45.実施形態44に記載のナノ構造において、親水性基が−(CH
2CH
2O)
nCH
3部分(式中、n=4〜50である)を含むことを特徴とするナノ構造。
【0070】
46.実施形態30〜45のいずれか1つに記載のナノ構造において、ポリマー骨格が、一般構造
{(X
7aO)(X
7bO)PO}
2−(C){(CH
2)
nSi(OX
7c)(OX
7d)(OX
7e)}{(CH
2)oSi(OX
7c)(OX
7d)(OX
7e)}
{式中、
X
7a、X
7b、X
7c、X
7d、X
7eは、H、C
1〜8アルキルおよびベンジルから独立して選択され;
nおよびoは1〜5から独立して選択される}
のモノマー残基を含むことを特徴とするナノ構造。
【0071】
用語の定義
「ナノ構造」という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に球状の形状の、即ち、フレーク状、棒状、管状、およびリボン状を除く、全径1〜100nmの成分に関した。本明細書で使用する場合、この用語は、無機または金属コアと有機コーティングとを有する「コア−シェル型ナノ粒子」または単に「ナノ粒子」と称されることが多い構造を除外する。
【0072】
「ポリマー骨格」という用語は、本明細書で使用する場合、多分岐樹状構造または複数の架橋を有する網目状構造のいずれかを形成する、原子が共有結合した基に関する。ポリマー骨格は、共有結合によるモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/または架橋剤の連結から形成される。典型的なモノマーは、J.R.Fried,“Polymer Science and Technology”Prentice Hall 1995などの高分子化学の教科書に記載されている。モノマーの幾つかの例としては、スチレン、プロピレン、エチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、H
2N−(CH
2)
n−COOH(式中、nは1〜10である)、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、N−ビニルピロリドン、および(CH
3COO)
2Si(CH
3)
2のようなシリコーン前駆体がある。ポリマーの幾つかの例としては、テレフタル酸+1,4ジアミノベンゼン、テレフタル酸+エチレングリコール、およびHCOO−(CH
2)
nCOOH+H
2N−(CH
2)
m−NH
2(式中、nおよびmは独立して1〜10である)のような適合するモノマー対から形成されるポリマーがある。連結した2〜10個のモノマー単位を有するオリゴマーを前駆体として使用することができる。上記モノマーの連結した基と異なるオリゴマーの幾つかの例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、およびデカメチルシクロペンタシロキサンなどの環式または多環式シランがある。典型的な架橋剤は、J.R.Fried,“Polymer Science and Technology”Prentice Hall 1995などの高分子化学の教科書に記載されている。架橋剤の幾つかの例としては、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)、エピクロロヒドリン、ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラエトキシシラン、オリゴシリケート、例えば、メタシリケートなど、またはシルセキオキサン(silsequioxanes)、オルガノシラン、例えば、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、およびプロピルトリエトキシシランなどがある。
【0073】
このポリマー骨格は、ナノ構造の骨格となる。当業者は、重合がランダムに進行するため、材料は類似しているが同一ではない多くの分岐パターン、架橋位置、および分子量の混合物となることを認識している。
【0074】
「ジェミナルビスホスホネート基」という用語は、1個の炭素原子により分離された2つのホスホネート基を指す、即ち、ホスホネート基は同じ炭素に結合している。このようなジェミナルビスホスホネート基を含む化合物は、1,1−ビスホスホネート(または1,1−ジホスホネート)と称されることが多い。ジェミナルビスホスホネート基中のホスホネート基は置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、ホスホネート基はそれぞれ、式−P=O(OR
1)(OR
2){式中、R
1およびR
2は、負電荷、H、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択される}を有する。
【0075】
「ポリマー骨格に結合した基」という用語は、形式的には、共有結合がポリマー骨格の水素原子を置換している化学基を指す。この定義に包含される化学基は、一般に、炭化水素、エーテル、アミドまたはエステルといった短い直鎖状残基である。幾つかの典型例としては、−(CH
2)
n−、−(CH
2)
nCO−、−(CH
2)
nCOO−、−(CH
2)
nCONH−、および−(CH
2)
nSi(O−)
3がある。この文脈では、「短い」という用語は、nが1〜8であることを意味する。
【0076】
「ポリマー骨格の一部を形成する基」という用語は、2つのホスホネート基がポリマー骨格の同じ炭素原子上に位置している状況を指す。
【0077】
「ポリマー骨格に結合可能な基」という用語は、ポリマー骨格に結合したと称される上記基の前駆体を指す。幾つかの例としては、−(CH
2)
nOH、−(CH
2)
nBr、−(CH
2)
nCOCl−、−(CH
2)
nCOCH
3、−(CH
2)
nCOCH
2CH
3、−(CH
2)
nCOO−、−(CH
2)
nCONH
2、および(CH
2)
nSi(OEt)
3がある。
【0078】
「生体不活性」という用語は、本明細書で使用する場合、生体適合性である、即ち、生物に無害であると同時に、in vivoでの分解に対して安定な材料を指す。
【0079】
「DLS」という用語は、本明細書で使用する場合、粒子サイズ測定(particle sizing)法である動的光散乱法の頭字語であり、光子相関分光法または準弾性光散乱法と称することもできる。特記しない限り、テキストおよび特許請求の範囲に記載のように示されたDLSサイズは、150mM NaClに相当するイオン強度を有する中性水溶液中、25℃で測定したサンプルの体積平均ピークの最大の位置を指す。
【0080】
「球状」という用語は、本明細書で使用する場合、副軸が主軸の半分以下である、即ち、構造の中心(重心)を通る最長軸が、同じ点を通る最短軸の長さの2倍以下であるような形状を有するナノ構造を表すことを意味する。
【0081】
「親水性有機残基」という用語は、本明細書で使用する場合、水性溶媒中での溶解性を促進する有機残基を指し、本発明では、それらが生体不活性であることを含意しており、ポリペプチドおよび複合炭水化物はそれから除外される。好適な親水性有機残基の例としては、分子組成(aO+bN)/(cC+dS+eSi+fP)>0.3{式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、イオウ(S)、ケイ素(Si)およびリン(P)のmolパーセンテージである}を有する任意の炭素含有基がある。
【0082】
「活性化シラン」という用語は、本明細書で使用する場合、次のタイプ、R
nSi(X)
4−n(式中、Xはアルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン、ジアルキルアミノ基、窒素含有複素環またはアシルオキシ基である)のシランを指す。
【0083】
「オキシシラン」という用語は、本明細書で使用する場合、ケイ素原子に結合した1個以上の酸素原子を有する任意の有機化合物を指す。その非限定例としては:
がある。
【0084】
「オルガノシラン」という用語は、本明細書で使用する場合、1個以上の炭素ケイ素結合を含有する有機化合物を指す。
【0085】
「オルガノオキシシラン」という用語は、本明細書で使用する場合、1個以上の炭素原子、およびケイ素原子に結合した1個以上の酸素原子を含有する有機化合物を指す。その非限定例としては:
がある。
【0086】
「炭化水素」および「炭化水素鎖」という用語は、本明細書では水素と炭素とからなる有機残基を示すために使用される。炭化水素は、完全に飽和していてもよく、またはそれは1個以上の不飽和を含んでもよい。炭化水素は、1〜50の任意の数の炭素原子を含有してもよい。
【0087】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、炭化水素鎖が完全に飽和している(二重結合または三重結合を含まない)直鎖または分岐鎖の炭化水素基を指す。アルキル基は、本テキストでは、1〜15個の炭素原子を有してもよい。化合物のアルキル基は、「C
1〜15アルキル」または類似の名称と称することができる。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、およびヘキシル等が挙げられるが、決してこれらに限定されるものではない。
【0088】
「低級アルキル」という用語は、本明細書で使用する場合、1〜8個の炭素原子を有するアルキルを指す。
【0089】
「低級アルコール」という用語は、本明細書で使用する場合、1〜8個の炭素原子を有するアルコールを指す。
【0090】
特記しない限り、本明細書で使用する場合は常に、「1から8」または「1〜8」などの数値範囲は、それぞれ所定の範囲の整数を指し;例えば、「1〜8個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、8個以下の炭素原子からなり得ることを意味する。しかし、幾つかの例外もあり、これは当業者には明らかである。特に、本明細書で、ナノ構造中のP/Nモル比またはSi/Pモル比などのモル比、直径またはサイズ、pH、時間、濃度、浸透圧モル濃度または温度について範囲を記載する場合、範囲はこの範囲に入る全ての小数も含む。
【0091】
本明細書で使用する場合、「アルコキシ」という用語は、式−OR{式中、RはC
1〜8アルキル、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、1−メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、アミルオキシ、およびイソアミルオキシ等である}を指す。アルコキシは、任意選択により置換されていてもよい。
【0092】
本明細書で使用する場合、「アリールオキシ」という用語は、RO−(式中、Rはアリールである)を指し、ここで、「アリール」とは、π電子系が完全に非局在化している環状炭素(全て炭素の)環または2個以上の環が縮合したもの(2個の隣接炭素原子を共有する環)を指す。アリール環は4〜20員環であってもよい。アリール基の例としては、ベンゼン、ナフタレンおよびアズレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アリール基は、任意選択により置換されていてもよい、例えば、フェノキシ、ナフタレンオキシ、アズレニルオキシ、アントラセニルオキシ、ナフタレニルチオ、およびフェニルチオ等であってもよい。アリールオキシは、任意選択により置換されていてもよい
【0093】
本明細書で使用する場合、「アシル」という用語は、カルボニル基、即ち、−C(=O)−を指す。
【0094】
本明細書で使用する場合、「アシルオキシ」という用語は、カルボニル基を介して結合した酸素原子、即ち、−C(=O)−O−を指す。
【0095】
本明細書で使用する場合、「複素環」という用語は、炭素原子と、窒素、酸素およびイオウからなる群から選択される1〜5個のヘテロ原子とからなる安定な3〜18員環を指す。複素環は、単環式、二環式、または三環式であってもよい。
【0096】
「強塩基」という用語は、本明細書で使用する場合、本明細書に関して、水酸基より強く、水性環境と適合性のない塩基を指す。
【0097】
「流体力学的径」という用語は、本明細書で使用する場合、粒子と同じ速度で拡散する仮想剛体球の直径を指す。水和と形状が球の特性に含まれる。この用語は、「ストークス径」または「ストークス・アインシュタイン径としても知られる。
【0098】
「複合体(conjugate)」という用語は、本明細書で使用する場合、蛍光マーカー、色素、スピン標識、放射性マーカー、生物学的受容体に対するリガンド、キレート、酵素阻害剤、酵素基質、抗体または抗体関連構造である分子成分を指す。この題目の背景については、例えば、“Bioconjugate Techniques”,Greg T.Hermanson second edition,Elsevier 2008,ISBN 978−0−12−370501−3を参照されたい。
【0099】
「結合手(handle for conjugation)」および「結合点」という用語は、共に、ポリマー網目構造に結合できるまたは組み込むことができる二官能性分子であるが、その反応性基の1つが前述の複合体に連結できる状態にあるものを指す。典型例としては(EtO)
3SiCH
2CH
2CH
2NH
2があるが、これに限定されるものではない。
【0100】
TEOSという頭字語は、テトラエトキシシランを表す。
【0101】
DCMという頭字語は、ジクロロメタンを表す。
【0102】
「ビスビス(bisbis)」という略語は、実施例1bの生成物である、1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンを表す。
【発明を実施するための形態】
【0103】
第1の態様では、本発明は、多数のホスホネート基−P=O(OR
1)(OR
2){式中、R
1およびR
2は、負電荷、H、アルキルまたはアリールから独立して選択される}を含むまたはそれで修飾されたポリマー骨格または足場をベースにするナノサイズの構造(ナノ構造)に組み込まれた常磁性マンガンイオンに関する。R
1またはR
2の少なくとも1つがHである場合、得られるホスホン酸は、pHに応じた程度までイオン化される。
【0104】
前述のように、「ナノ構造」という用語は、全径1〜100nmの構造に関する。
【0105】
本発明の幾つかの実施形態では、R
1およびR
2は、負電荷、Hおよびメチルからなる群から独立して選択される。
【0106】
ビスホスホネート基を分離する炭素原子、即ち、介在炭素原子に、ポリマー骨格への1個以上の結合が存在する。従って、介在炭素原子は、ポリマー骨格の一部であっても、またはそれに結合していてもよい。特に重要なのは、(R
3R
4C(P=O(OR
1)(OR
2))
2{式中、R
1およびR
2は、Hまたはアルキルまたはアリールから独立して選択され、R
3およびR
4の少なくとも1つは、材料のポリマー骨格に結合可能な基である}のタイプの構造である。R
3およびR
4の1つだけがこのような基である場合、残りの基は、H、OH、OR
5(R
5は低級アルキルである)、および低級アルキルからなる群から選択される。
【0107】
本発明の幾つかの実施形態では、R
3および/またはR
4は、−(CH
2)
n−Si(R
x)
3{式中、R
xは独立して低級アルキル、OH、O
−、またはO−であり、−はポリマー骨格への結合を示し、nは1〜5である}からなる群から選択される。
【0108】
本発明の幾つかの実施形態では、R
3は−(CH
2)
nCO−(カルボニル基はポリマー骨格への結合を形成する)であり、R
4はHであり、n=1〜5である。これらの実施形態の幾つかでは、n=1である。
【0109】
本発明の幾つかの実施形態では、R
3およびR
4は独立して−(CH
2)
n−SiO
3(式中、n=1〜5である)であり、シランは、後で詳述するようにSi−O−Si結合の形成によりポリマー骨格の一部となっている。
【0110】
本発明の幾つかの実施形態では、R
3およびR
4は、共に−(CH
2)
n−SiO
3(式中、n=3である)であり、シランは、上記のように前記ポリマー骨格の一部となっている。
【0111】
ホスホン酸エステルまたはホスホン酸の代わりに、ホスホン酸アミド、ホスホン酸塩化物またはホスホン酸フッ化物を本明細書に記載の化合物の成分または出発物質として使用することも考えられる。ホスホネートは、遊離形態で存在しても、またはエステルとしてもしくはアミドとして存在しても、またはその混合物であってもよい。
【0112】
本発明の幾つかの実施形態では、ホスホネートは、遊離ホスホネートと前記ホスホネートのメチルエステルとの混合物である。
【0113】
前記ホスホネート基が連結しているポリマー骨格は、高分子化学のいずれかの書籍(例えば、J.R.Fried,“Polymer Science and Technology”Prentice Hall 1995)に記載されている多数の周知のモノマーから構成することができる。幾つかの非限定例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン(シリコーン)、ポリオルガノシラン、ポリエチレンイミンなどのポリアミン、または炭水化物;とりわけ高分岐または架橋構造のものがある。
【0114】
本開示のナノ構造は、前述のように、略球状の形状および平均サイズ(流体力学的径)1〜100nmの構造であり;幾つかの実施形態では、平均サイズは2〜50nmであってもよく、他の実施形態では、平均サイズは、3〜10nm、または3〜7nm、または10〜50nm、または10〜20nmであってもよい。
【0115】
本発明の幾つかの実施形態では、非限定例として静脈内造影剤としての使用があり、ナノ構造の平均流体力学的径は3〜7nmである。
【0116】
本発明の幾つかの実施形態、例えば、材料をリンパ節の画像化に使用する実施形態では、ナノ構造の平均流体力学的径は10〜50nmまたは10〜20nmである。
【0117】
称される流体力学的径は、ストークス・アインシュタインの式により、拡散係数から算出される同等の剛体球の直径である。拡散係数はまた、動的光散乱(DLS)法により得られる時間依存光散乱データから算出される。比較として、ウシ血清アルブミンは、水溶液中でDLSにより測定すると流体力学的径6.5nmであり、これは結晶構造と非常によく一致している。数平均を使用するか、体積平均を使用するか、または散乱強度平均を使用するかに応じて、値は幾分異なり得る。体積平均は材料の大部分がどのような粒子サイズを有するかを示すため、一般に体積平均が最も有用である。このテキストで称される平均直径は、体積平均を指す。
【0118】
本発明で所望される球状構造を形成するために、分岐または網目状構造を有する構造を使用することが好ましい。網目構造を達成する確立されたの方法1つは、重合プロセスで二官能性モノマーの部分を組み込むことにより架橋を導入する方法である。周知の例としては、ジビニルベンゼンを用いたポリスチレンの架橋がある。
【0119】
分岐構造は、モノマー中に反応性部位を2つ以上有することにより形成することができる(“The architecture and surface behavior of highly branched molecules”Peleshanko,S.,Tsukruk,V.V.,Prog.Polym.Sci.33,523(2008))。周知の例としては、アジリジンの重合による高分岐ポリエチレンイミンの形成がある。ポリエチレンイミンは、第一級、第二級および第三級アミノ基の混合物を含有し、それは下記の式中に示すようにランダムな分岐構造を有する。その正確な構造は、単に典型的なものとして解釈されるべきであり、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明に極めて重要なビスホスホネートは、第一級および/または第二級アミノ基に結合していてもよい。
【0120】
本発明の幾つかの実施形態では、ポリマー骨格はポリエチレンイミンである。下記に、典型的なポリエチレンイミンの構造断片を示す。破線の結合は、ポリマー網目構造が続いていることを示す。
【0121】
ビスホスホネートをポリアクリレート骨格に組み込む場合、短いリンカーを介してビスホスホネートをアミド窒素に結合させることが考えられる。このような材料の構造断片の典型例としては、下記の構造(式中、R
1およびR
2は本テキスト中に前述した通りであり、nは1〜5であり、破線の結合は断片がポリマーに属することを示す)があるが、これに限定されるものではない。また、ビスホスホネートを炭素骨格に直接結合することも考えられる。
【0122】
ポリスチレンまたはポリビニルピリジンのようなポリ芳香族化合物をベースにする骨格も考えることができる。その場合、ビスホスホネートを芳香族系に結合させる。ポリビニルピロリジノンのようなポリアミドも考えられる。
【0123】
本発明の球状ナノ構造を形成するために適度の架橋が必要である。二官能性、三官能性、または四官能性架橋剤を1〜100%組み込むことが好ましい。典型的な架橋剤としては、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)、エピクロロヒドリン、ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラエトキシシラン、オリゴシリケート、例えば、メタシリケート、またはシルセキオキサン、オルガノシラン、例えば、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、およびプロピルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
当該技術分野で公知のプロセスパラメータを操作することにより、重合度を調節して所望のサイズの生成物を得る。所望のサイズは、流体力学的径として表すことができるだけでなく、重合度(平均モノマー数)としても表すことができる。それは流体力学的径より有用性が低いが、それは構造を概念化する別の方法であり、限定するものとして含まれるのではなく、参照として含まれる。例えば、密度が1g/mlに近いポリマーでは、好ましいサイズは、モノマー25〜3000000個または25〜375000個または80〜3000個または80〜1000個の範囲である。
【0125】
重合前にモノマーを混合することにより、または第2のポリマーを第1のポリマーにグラフトすることにより、任意の化学的に適合性のある組み合わせで前記ポリマー骨格を全て混合することが考えられる。
【0126】
特に有利な骨格の1つは、トリアルコキシオルガノシランR
5−Si(OR
6)
3(式中、R
5はHまたは有機残基であり、R
6は独立して低級アルキルまたはアリールである)の縮合重合により形成される。このような骨格は、極性が高く、従って水との相溶性があるという特性を有し、架橋度は製造中のプロセスパラメータで制御することができる。2個以上のトリアルコキシシリル基が存在するモノマーを使用することが有利である。
【0127】
本発明の幾つかの実施形態では、モノマー中に2個のアルコキシシラン基が存在する。
【0128】
本発明の幾つかの実施形態では、前記アルコキシシランは、1〜10個の炭素原子または3〜9個の炭素原子により分離されている。
【0129】
本発明の幾つかの実施形態では、前記アルコキシシランは、7個の炭素原子により分離されている。
【0130】
本発明の幾つかの実施形態では、前記アルコキシシランは3個または5個の炭素原子により分離されている。
【0131】
本発明の幾つかの実施形態では、2個のホスホネート基はR
5基の一部となっている。
【0132】
本発明の幾つかの実施形態では、前記2個のシランは7個の炭素原子により分離されており、2個のホスホネート基はR
5の一部となっている。
【0133】
本発明の幾つかの実施形態では、前記シランは一般構造:
{(X
7aO)(X
7bO)PO}
2−(C){(CH
2)
nSi(OX
7c)(OX
7d)(OX
7e)}{(CH
2)
oSi(OX
7c)(OX
7d)(OX
7e)}
{式中、
X
7a、X
7b、X
7c、X
7d、X
7eは、H、C
1〜8アルキルおよびベンジルから独立して選択され;
nおよびoは1〜5から独立して選択される}
を有する。
【0134】
幾つかの実施形態では、ジシランなどの第2のシランンを、第1のジシランによって形成されたポリマー骨格にグラフトする
【0135】
重合に対するトリアルコキシシランの反応性は、R
6基の性質(identity)によって変わる。本発明者らは、これが、製造中の分子サイズの制御に重要な要因であることを見出し、メチルおよびエチル、特に後者が本発明の構造を得るのに好適であることを見出したが、他の任意の低級アルキル基、アリール、シリルアミド、アシル、フッ化シリルまたは塩化シリルを使用することも考えられる。
【0136】
本発明の幾つかの実施形態では、R
6はエチル基である。
【0137】
トリアルコキシシランがSi−O−Si結合により連結し得る多くの異なる方法がある。ダイマー構成要素ならびに直鎖状、分岐、および環式が知られている(R.J.Fessenden,J.S.Fessenden,“Trends in Organoケイ素 Biological Research”in Advances in Organometallic Chemistry vol.18 p.275)。また、様々なサイズのケイ素−酸素かご型構造も文献から周知であり(Hanssen,R.J.M.et al.Eur.J.Inorg.Chem 675(2004))、残留アルコキシ基または遊離シラノール基も様々な程度存在し得る。また、本発明にある程度重要な常磁性金属イオンに、Si−O−基が配位することも考えられる。決して限定するものと解釈されるべきではないが、このような構造中に存在し得る幾つかの構成要素を式1に示す。
【0138】
式1:本発明に使用され得る幾つかのSi−O−Si構造の図;Rは任意の有機残基である
【0139】
本発明の中核にあるジェミナルビスホスホネート構造R
3R
4C(P=O(OR
1)(OR
2))
2は、カルシウムのような多価陽イオンに強力に結合することが周知である。本発明の材料の利点は、それらが生理学的濃度でカルシウムおよびマグネシウムよりもマンガンに対する選択性を示す(これはさらに下記の実施例15で説明する)ということである。
【0140】
ホスホネート基は、全部そのエステルの形態で存在しても、全部もしくは部分的にその酸の形態に加水分解された後、周囲媒体のpH値に応じて一部から全部までのある程度イオン化されていても、またはその混合物であってもよい。中性または塩基性pHでマンガンイオンをポリマーに担持させることが最適である。pH12〜6またはpH11〜8、または好ましくは10.5〜9.5が有用である。これは、それが、少なくとも一部または場合によりもしくはさらには全部、金属イオンの結合に重要な役割を果たす加水分解されたホスホネートのアニオンの形態となっていることを示す。ホスホネートエステルまたは酸だけではなくホスホン酸アミドも材料の一部として考えることができる、または出発物質として使用できるものと考えることができる。
【0141】
本発明者らは、ビスホスホネート構造をポリマー骨格、好ましくは親水性ポリマー骨格に組み込み、マンガン(II)に結合させると、緩和度の目覚ましい増加が達成されることを見出した。ビスホスホネートゾレドロン酸モノマーのマンガンキレートの緩和度は2.3/mM Mn/s(実施例17に示す)であり、マンガンとビスホスホネートメチレンジホスホン酸モノマーを合わせたものの緩和度は1/mM Mn/sである。本発明のマンガン担持ポリマー材料の緩和度は24〜48/mM Mn/sの範囲である。
【0142】
特に、ポリエチレンイミンを、実施例9に記載のようにジェミナルビスホスホネートの活性化エステルで誘導体化した後、マンガン(II)イオンを担持させると、緩和度24/mM Mn/sの材料が得られる。これは、前述のゾレドロン酸錯体の緩和度よりかなり高く、従って、ビスホスホネートをポリマー骨格に組み込むことが有利であることが分かる。このような材料中のリンと窒素とのモル比は0.1〜3の範囲とすることができ、それは好ましくは0.2〜0.8である。
【0143】
その緩和度がジェミナルビスホスホネートとポリマーとの組み合わせにより生じることをさらに示すために、対応する「裸」ポリマーの試験も行った。添加剤を含まないポリエチレンイミンのマンガンに対する結合は非常に弱く、ポリマーに結合している僅かなマンガンの緩和度は非常に低い(0.8/mM/s)。また、(EtO)
2P=O−CH
2−CH
2−Si(OEt)
3から生成したポリオルガノシランは、マンガン担持後の緩和度が3.0/mM Mn/sとあまり高くない。全て考え合わせると、このことから、本発明の材料に固有の驚くべきほど高い緩和度は、ポリマーであること、ジェミナルビスホスホネートを有すること、およびマンガンなどの常磁性金属が組み込まれていることといった全ての特徴の組み合わせから生じることが分かる。
【0144】
実施例22には、本発明の範囲外であるポリエチレンイミンのポリマー骨格に結合した1,3−ビスホスホネートの緩和度(18.5/mM/s)の方が、本発明のジェミナルビスホスホネートの緩和度(>=24/mM/s)よりどの程度低いかを記載している。また、それは使用したイオン交換試験での安定性も低い。従って、当然、1,2−ビスホスホネート、およびどの1,n−ビスホスホネート(式中、n>2である)も本発明のジェミナルビスホスホネートより望ましくないと予想される。
【0145】
決して本発明を限定するものではないが、常磁性金属イオンは、おそらく、ホスホネート基にキレートしており、リンとマンガンとの比が10〜15であることが緩和度と安定性との最良の妥協案であるように思われるが7〜20も考えられる。実施例11の表1に、リンとマンガンとの比を変えたときの影響を詳細に記載している。
【0146】
好ましいケイ素とマンガンとの比は5〜20の範囲となり、リンとケイ素との比は約1、例えば、0.7〜1.3とすべきである。
【0147】
任意選択により、親水性生体不活性材料を本発明のナノ構造の外側部分にグラフトしてもよい。前記外側部分とは、誘導体化試薬と化学反応し得るナノ構造の部分である。これは材料の生体適合性に有利な可能性があり、炭水化物または親水性合成ポリマーなどの多くの親水性材料を考えることができる。特に重要なのは、ポリエーテル化合物、とりわけポリエチレングリコール(PEG)誘導体である。限定的ではないが、メトキシ末端PEG誘導体が好ましい(m−PEG)。それらを、任意の化学的に許容される方法で、ポリマー骨格に、例えば、酸素原子、窒素原子または炭素原子に、例えば、残留ホスホン酸基またはシラノール基に、金属キレート化後、あるいは金属非含有ポリマーに直接、グラフトすることができる。直鎖状PEGの好適な鎖長は、−CH
2CH
2O−単位4〜50個である。最も望ましいのは、5〜20個の単位を含み、平均約10個または11個の単位を含む混合物である。ナノ構造に最も好都合にカップリングする試薬はアミノ末端であり、残留ホスホネート基にカップリングすることができる。分岐鎖PEG誘導体、とりわけ、類似の分子量の直鎖状PEG誘導体と比較してコンパクトで、表面の保護に優れている、実施例8のもののような構造も重要である。
【0148】
各ナノ構造成分上の生体不活性ポリマー基の数は、10〜1000、または10〜100、または10〜50の範囲であってもよい。
【0149】
幾つかの実施形態では、本発明のマンガン担持ビスホスホネートポリマーナノ構造は、アミド結合によりホスホネート基の一部にカップリングした、モノマー残基5〜20個の鎖長を有する直鎖状m−PEG基を含む。
【0150】
幾つかの実施形態では、本発明のマンガン担持ビスホスホネートポリマーナノ構造は、アミド結合によりホスホネート基の一部にカップリングした構造X1(実施例8h)の分岐鎖PEG基を含む。
【0151】
バイオマーカーまたはそのレポーター成分などの様々な活性分子成分への本発明のナノ構造の結合手を導入することも考えられる。典型例としては、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、抗体、DNA断片、RNA断片、PNA、断片、蛍光体、キレート、または小分子薬理学的リガンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
本発明の第2の主要な態様は、前記ナノ構造の製造方法である。その最も広い意味で、それはまず、多数のビスホスホネート基を含むナノサイズの球状ポリマー成分を形成した後、第1の工程の生成物をマンガン(II)イオンと接触させる工程を含む。任意選択により、2つの工程は、化学的に異なるが、同じ反応容器内で同時に行ってもよい。本方法の主要な特徴の概要を
図1に示す。本方法の1つ以上の事例では、限外濾過によるサイズ選択または精製工程が組み込まれる。
【0153】
多数のビスホスホネートを含むナノサイズのポリマー小球体は、既存のポリマー小球体(重合工程001により得られる)へのグラフト化(002)によりまたはビスホスホネートを含むモノマー混合物の重合(003)のいずれかにより得られる。どのようなポリマー骨格を所望するかに応じて、多くの異なる重合開始剤が考えられる。スチレンおよびアクリレートのような不飽和モノマーでは、過酸化ベンゾイルまたはアゾビスイソブチロニトリルなどの様々なラジカル開始剤が好ましい。本発明の好ましい実施形態の1つのトリアルコキシシランベースのモノマーでは、自発的な加水分解および縮合を使用して重合を行うこと、または酸もしくは塩基触媒を使用することが可能である。場合により、炭酸水素塩、特に炭酸水素ナトリウム、または、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、もしくはギ酸テトラメチルアンモニウムのようなカルボン酸塩のようなpH安定化塩を反応混合物に添加して、3〜10nmのサイズ範囲の生成物の収量を最適化することが有利であることが判明した。
【0154】
工程003には溶媒が望ましいことが多く、当業者により多くの異なるものが考えられるが、毒性溶媒を回避することが望ましく、従って、水、およびプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、または1,3−プロパンジオールなどの低級アルコールが好ましい。溶媒の混合物を使用することにより、生成物の収量および品質を最適化することが望ましいことが多い。
【0155】
本方法の幾つかの実施形態では、工程003で、低級アルコール中に水を5〜25%含む混合物を使用する。
【0156】
本方法の幾つかの実施形態では、工程003で、エタノール、1−もしくは2−プロパノール、エチレングリコールまたは1,2−もしくは1,3−プロパンジオール中に水を5〜25%含む混合物を使用する。
【0157】
工程003には、40〜130℃または80〜120℃または100〜120℃の温度などの、室温より高い温度を使用することが有利であることが判明した。低級アルコールを使用する場合、所望の反応温度に達するように、耐圧密閉容器を用いて作業することが必要である。
【0158】
工程003の所要時間はポリマー骨格および開始方法に依存し、数秒から数日または数週間の範囲となり得る。本発明の好ましい実施形態の幾つかのトリアルコキシシランでは、工程003に6〜200時間、または6〜48時間、または12〜36時間または約24時間の時間を使用することが有利であることが判明した。
【0159】
本発明の幾つかの実施形態では、工程003の条件は、温度105〜115℃および所要時間20〜30時間である。
【0160】
本発明の幾つかの実施形態では、工程003の条件は、温度105〜115℃および所要時間30〜60時間である。
【0161】
本発明の幾つかの実施形態では、工程003の条件は、まず90〜100℃の温度で40〜50時間、次いで、105〜115℃でさらに20〜30時間である。
【0162】
工程003でのモノマーの濃度は、どのようなポリマー骨格を所望するかに依存し、モル濃度から溶媒非含有状態の範囲となり得る。しかし、本発明の好ましい実施形態の1つのトリアルコキシシランでは、10〜500mMまたは20〜100mM、特に40〜80mMのモノマー濃度にすることが有利であることが判明した。
【0163】
本発明の幾つかの実施形態では、工程003の条件は、まず90〜100℃の温度で20〜50時間、続いて105〜125℃で20〜30時間、およびモノマー濃度40〜60mMである。
【0164】
ビスホスホネート試薬をポリマー骨格にグラフトすることを含む工程002では、条件は幾分異なる。とりわけ、温度および濃度要求は比較的緩い。本発明者らは、水に、任意選択により補助溶媒を、液体の水と相溶する温度、例えば、室温で混和したものにポリエチレンイミンを溶解した溶液から開始して、それを、1〜48時間、例えば、20〜24時間、室温などの温度でN−(ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドなどのカップリング剤の存在下でN−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩などの反応性エステル中間体を形成できる化合物の存在下で、3,3−ビス(ジメトキシホスホリル)プロピオン酸などの前記ポリエチレンイミンと反応することができるビスホスホネートと接触させると、ポリマー骨格にビスホスホネートがグラフトされた材料が生成することを見出した。
【0165】
サイズ選択工程(004)は、望ましくないほど大きいまたは小さい成分を除去するために、ナノ構造前駆体(X)の溶液で行われる。反応混合物からの出発物質および溶媒残留物もこの段階で除去される。限界濾過は好ましい精製方法であり、とりわけ、通常標識されている形態で使用する場合、層流濾過またはダイアフィルトレーションが好ましい精製方法である。溶液を、幾分大きい孔を有するフィルタを通過させること、工程004aにより、望ましくないほど大きいナノ構造および/または凝集体を除去することが好ましい。このようなフィルタの好ましい公称カットオフ値は、300kDa、または100kDa、または50kDaである。工程004bでは、比較的小さい孔径を有するフィルタで所望の材料を回収する。工程004bに好ましい孔径の公称カットオフ値は、50kDa、30kDa、または10kDaである。
【0166】
出発物質の粒径分布が狭い場合、サイズ選択工程(004)を必要としないことがある。
【0167】
本発明の幾つかの実施形態では、工程段階002または003から得られた溶液を、まず100kDaフィルタを通過させた(工程004a)後、30kDaフィルタで回収する(工程004b)。
【0168】
本発明の幾つかの実施形態では、工程段階002または003から得られた溶液を、まず300kDaフィルタを通過させた(工程004a)後、100kDaフィルタで回収する(工程004b)。
【0169】
本発明の幾つかの実施形態では、工程段階002または003から得られた溶液を、まず50kDaフィルタを通過させた(工程004a)後、30kDaフィルタで回収する(工程004b)。
【0170】
本発明の幾つかの実施形態では、工程段階002または003から得られた溶液を、まず100kDaフィルタを通過させた(工程004a)後、10kDaフィルタで回収する(工程004b)。工程004bの後、材料を水で数回洗浄し、工程001、002または003からのモノマーまたは溶媒残留物をさらに除去することが有利である。
【0171】
遠心フィルタまたは透析などの他の限界濾過法を使用することもできるが、それらは拡張性が低い。
【0172】
所望のサイズ範囲の粒子は、サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル濾過とも称される)により選択されてもよい。
【0173】
前記ポリマーにマンガン(II)を担持させる工程005は、前記ポリマーの溶液をマンガン(II)イオンに曝すことを含む。前記イオンを固体の形態でまたは溶液として反応混合物に添加することができる。フッ化物、塩化物、臭化物、酢酸塩、硝酸塩、または硫酸塩のような可溶性のマンガン(II)塩が好ましい。MnOのような、比較的溶解性の低いマンガン源の使用も考えられる。有用なマンガンイオン濃度は、ポリマー濃度に応じて、0.1mM〜5M、例えば、0.1〜600mMまたは0.1〜10mMである。前述のように、リンとマンガンとの比は重要である。マンガンイオンをポリマーに中性または塩基性pHで担持させることが最適である。pH12〜6またはpH11〜8または好ましくは10.5〜9.5が有用である。マンガンの添加は、pHが所望の値に安定した後に行わなければならない。本発明者らは、10分〜24時間、例えば、半時間〜2時間の時間で十分であることを見出した。ナノ構造にマンガンを担持させた後、pHを中性(8〜6または7.7〜7)に調節する。担持させる温度は、問題の溶媒または溶媒混合物の凝固点から沸点までの間であってもよく、室温から60度までの間が好ましい。
【0174】
任意選択の工程006では、所望のサイズ範囲の粒子を望ましくないほど大きいまたは小さい種から分離する。マンガンを添加してもナノ構造のサイズは僅かしか変化しないため、これは必要ではないことが多い。工程006は、幾つかの部分工程006a、006bなどを有してもよく、または順不同の部分工程の場合、006xを有してもよい。
【0175】
限界濾過は、サイズ選択工程006xの好ましい方法であり、とりわけ、通常標識されている形態で使用する場合、層流濾過またはダイアフィルトレーションが好ましい方法である。溶液を、幾分大きい孔を有するフィルタを通過させること、工程006aにより、望ましくないほど大きいナノ構造および/または凝集体を除去することが好ましい。このようなフィルタの好ましい公称カットオフ値は、300kDa、または100kDa、または50kDaである。工程006bでは、比較的小さい孔径を有するフィルタで所望の材料を回収する。工程006bに好ましい孔径の公称カットオフ値は、50kDa、30kDa、または10kDaである。
【0176】
本発明の幾つかの実施形態では、工程段階005から得られた溶液を、まず100kDaフィルタを通過させた(工程006a)後、30kDaフィルタで回収する(工程006b)。
【0177】
本発明の幾つかの実施形態では、工程段階005から得られた溶液を、まず300kDaフィルタを通過させた(工程006a)後、100kDaフィルタで回収する(工程006b)。
【0178】
本発明の幾つかの実施形態では、工程段階005から得られた溶液を、まず50kDaフィルタを通過させた(工程006a)後、30kDaフィルタで回収する(工程006b)。
【0179】
工程006bの後、材料を水で数回洗浄して、工程005からの残留金属イオン、モノマーまたは溶媒残留物をさらに除去することが有利である。
【0180】
工程006xに遠心フィルタまたは透析などの他の限界濾過法を使用することもできる。
【0181】
所望のサイズ範囲の粒子は、工程006xでサイズ排除クロマトグラフィー(ゲル濾過とも称される)により選択されてもよい。
【0182】
任意選択により、前記マンガンリッチのホスホネートポリマー生成物を工程007で精製してもよい。工程007は、幾つかの部分工程007a、007bなどを有してもよく、または順不同の部分工程の場合、007xを有してもよい。
【0183】
精製工程007xの好ましい方法の1つは、スルホン化ポリスチレンなどの陽イオン交換体を少量用いて処理し、過剰のマンガンまたは結合の弱いマンガンを除去する方法である。市販のイオン交換樹脂の容量は1〜2mmol/g樹脂であることが多く、典型的には、マンガン1モルを含有する工程b)からの粗製物は、ナトリウム型またはカリウム型のイオン交換樹脂1〜100gで処理されるであろう。
【0184】
本発明の幾つかの実施形態では、工程007xは、30kDaフィルタで材料を回収する、さらに別のダイアフィルトレーションを含む。
【0185】
本発明の幾つかの実施形態では、工程段階007xは、工程006からの生成物をナトリウム型のポリスチレンスルホン酸タイプのイオン交換樹脂で処理することを含む。
【0186】
極微量の内毒素(死細菌の残渣)などの親油性不純物を除去するための、その後の精製工程007xを追加してもよい。
【0187】
本方法の幾つかの実施形態では、工程006の生成物を活性炭で処理する。
【0188】
本方法の幾つかの実施形態では、工程006の生成物を、ポリエチレンフィルタ、またはポリプロピレンフィルタ、またはPVDFフィルタを通過させる。
【0189】
本方法の幾つかの実施形態では、工程006の生成物を固定化ポリミキシンBで処理する。
【0190】
任意選択により、
図1に示すように、生体不活性表面改質剤をナノ構造の達成可能な部分にグラフトする工程009を挿入してもよい。
【0191】
任意選択により、
図1に示すように、本方法の多くの箇所で架橋剤を組み込むことにより架橋(工程010)を実施してもよい。工程001で架橋剤を混入することによる架橋は、標準的な方法である。工程002で生成する材料が既に架橋されているように、モノマーは、本発明の好ましい実施形態の1つのトリアルコキシシランのように本質的に架橋され易いものであってもよい。
【0192】
本発明の第3の主要な態様では、材料を、診断法用の、特に核磁気共鳴画像法(MRI)用の造影剤として使用する。本発明の材料は、低毒性で緩和度が高いという特性を有し、そのため、生体、特に人体のMRI検査の造影剤として有用である。
【0193】
緩和度が高く、流体力学的径が3nmより大きいまたは4nmより大きいまたは5nmより大きい本発明の実施形態に好適なサイズであるという特性を併せ持つため、本発明のナノ構造を含む組成物はMRIによる腫瘍、特に固形腫瘍の画像化に好適である。前記本発明の組成物を一般的な解剖学的画像化、例えば、血管造影法用の造影剤として使用することも考えられ;特に心臓の微細な冠動脈の血管造影法、または頚動脈もしくは腎動脈もしくは大動脈の血管造影法が、本発明の高い緩和度とコントラストにより可能になる。頭部、内臓または四肢の構造の画像化も重要である。内臓のうち、肝臓、膵臓および腸は特に重要である。結腸の画像化は、静脈内投与または浣腸剤としての投与のいずれかにより達成することができる。胃、肝臓および上部消化管の画像化では、造影剤を経口投与することが考えられる。
【0194】
本発明の材料は低毒性で緩和度が高いため、それらは細胞標識剤として有用である。患者の体内の診断または治療に使用される幹細胞またはマクロファージのような細胞に本発明のナノ構造をex vivoで担持させた後、前記患者に投与し、体内でのそれらの分布をMRIで可視化することができる。
【0195】
本発明の幾つかの実施形態では、ナノ構造の溶液は組織に皮内注射または皮下注射されることが多いがこれらに限定されるものではなく、この後、それを使用してMRIで患者のリンパ構造を可視化する。特に重要なのは、転移性腫瘍の好発部位であるリンパ節の画像化である。この目的に特に有用なのは、サイズ約10nm、例えば、7〜50nmまたは7〜25nmまたは7〜15nmのナノ構造である。
【0196】
本発明の幾つかの実施形態では、8〜15nmの範囲の平均流体力学的径を有する本発明のナノ構造の製剤を患者に皮内投与し、MRI法で前記患者のリンパ節を可視化する。
【0197】
本発明のナノ構造は緩和度が高く、低毒性であるという特性を有するため、本材料を細胞標識に使用することが考えられる。その場合、例えば、幹細胞またはマクロファージなどの細胞にナノ構造を哺乳動物の体外で、例えば、人体外で担持させた後、前記哺乳動物に投与し、MRI走査により画像を生成する。その場合、細胞が生体内を輸送される時、細胞を追跡することが可能である。
【0198】
本発明のナノ粒子をin vivoで使用するには、それらを当業者に周知の最良の実施技法に従って薬理学的に許容される方法で製剤化する必要がある。好ましい投与方法は、非経口投与であり、特に静脈内経路が有利であるが、特定の状況下では動脈内経路が有利な場合もある。非経口投与は、液体製剤を必要とすることが多い。水は本発明のナノ構造を溶液にするのに好ましい溶媒であるが、溶液の安定性を改善するために1種以上の補助溶媒または添加剤を0.1〜10%添加してもよい。許容される補助溶媒としては、エタノールまたはグリセロールのようなアルコール、エチレングリコールもしくはポリビニルアルコールのような生体適合性ポリマー、ジメチルスルホキシド、またはN−メチルピロリジノンがある。マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコースまたは他の糖類または糖アルコールのような浸透圧調節剤を1種以上添加することも有利な可能性がある。製剤が体液と等浸透圧であることが望ましい。好ましくは、静脈内用の溶液の浸透圧モル濃度は、270〜2000mOsm、または280〜1000mOsm、または280〜500mOsm、または特に280〜300mOsmである。前記添加剤の多くは凍結保護物質の機能も果たし、凍結乾燥後の再構成の効率を向上させることができる。電解質を添加して、注入溶液の生理学的作用を低下させることも有利な場合がある。好ましい電解質は、無毒のナトリウム塩、カルシウム塩またはおよび/またはマグネシウム塩の組み合わせであろう。注射用溶液のpHを調節することが好ましく、注射に好適な任意の緩衝液が考えられるが、トリスHClが好ましい。金属イオン捕捉剤も添加剤として考えられる。幾つかの典型例としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)およびDOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸)またはホジピル(fodipir)がある。貯蔵瓶に添加される固相イオン捕捉樹脂の使用も考えられる。
【0199】
ナノ構造の濃度は多くの異なる方法で記載することができるが、2つの最も適切なものは、g/l溶液として記載される質量濃度およびmmol/l溶液の単位で記載されるマンガン濃度である。造影剤として投与するのに好適な製剤中のマンガンの濃度範囲は、1〜500mM、または10〜300mM、または10〜200mM、または50〜200mM、または100〜200mMの範囲である。質量濃度として記載し、リンとマンガンとの比が約6であると仮定すると、造影剤製剤に好適な質量濃度は、0.5〜300g/l、または5〜200g/l、または5〜250g/l、または5〜100g/l、または100〜250g/lの範囲である。質量濃度は、mMマンガンの単位で記載される濃度と略一致するが、対応関係はポリマー骨格、架橋度および生体不活性被覆層の有無に応じて変わることになる。
【0200】
本発明の一実施形態は、マンガン濃度100〜300mM、およびリンとマンガンとの比7〜20の静脈内投与用の薬学的に許容される製剤である。
【0201】
本発明の幾つかの実施形態は、マンガン濃度10〜300mMおよびリンとマンガンとの比7〜20の静脈内投与用の薬学的に許容される製剤に関する。
【0202】
本発明の代替の実施形態は、少なくとも5つのジェミナルビスホスホネート基を含むポリマー骨格を含むナノ構造であって、ジェミナルビスホスホネート基が互いに独立して
−R
3R
4C(P=O(OR
1)(OR
2))
2
(これは−R
4R
3C(P=O(OR
1)(OR
2))
2と同一である)
{式中、R
1およびR
2は、負電荷、H、アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され、R
3およびR
4の少なくとも1つはポリマー骨格に結合した基であるが、但し、R
3およびR
4の一方だけがこのような結合した基である場合、R
3およびR
4の他方はポリマー骨格に結合可能な基もしくはこのような基の残基であるか、またはH、OH、OR
5およびR
5(式中、R
5は低級アルキルである)からなる群から選択される}
として組み込まれているナノ構造、即ち、マンガンイオンを含有しないこと以外、前述の通りであるナノ構造である。このようなナノ構造は、前述の実施形態によるナノ構造の製造の中間体として有用である。このような構造は、マンガン以外の陽イオンにも結合することができ、その容量が有用となり得る。
【0203】
下記の実施例で、添付の図面を参照する:
【実施例】
【0205】
実施例1:1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンの合成の合成
1a:1,1−ジアリル−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン
メカニカルスターラーを備えた2L反応器を130℃、減圧下で乾燥した後、正の窒素圧力下で冷却した。不活性ガス下で管移送により反応器に無水THF(1l)(Aldrich無水、99.9%、BHT250ppm含有)を仕込んだ。テトラメチルメチレンジ(ホスホネート)(97.4g、420mmol)および臭化アリル(183ml、255g、2.11mol)を添加した(発熱せず、酸性気体検出せず)。ジャケット温度を0℃に設定し、内部温度6℃で、カリウムt−ブトキシド(合計140.3g、1.25mol)を(6回に分割して)添加した。各添加後、温度は約12℃に上昇し、次に添加する前に6℃に戻した(即ち、低下させた)。臭化アリル(9.4ml、0.11mol)およびt−ブトキシド(7.3g、65mmol)の最後の添加を行い、モノアリル化生成物の最後の数パーセントを変換した(発熱は検出せず)。ジャケット内の温度を15℃に約2時間設定した後、濃厚な白色反応混合物をジャケット温度0℃で終夜撹拌した。反応を飽和NH
4Cl(水溶液)50mlで反応停止した(温度は2〜5℃に上昇)後、トルエン(1l)を添加し、1lを留去してTHFおよび過剰の臭化アリルを除去した。ジャケット温度70〜100度で2時間にわたり63〜73℃を回収した。残留物にシリカゲル(100g)および活性炭(15g)を添加した。反応混合物を数分間撹拌し、液体をフリット・フィルタ・スティック(frit−filter stick)でサイフォン式に取り出した(または通常のWhatmanガラス繊維フィルタで濾過した)。残渣ケーキをトルエン(3×100ml)で洗浄した。合わせた濾液をWhatmanガラス繊維フィルタで濾過して、最後の極微量の活性炭(緑味を帯びた色で示される)を除去し、ロータリーエバポレータ(浴温40℃)で濃縮し、標題化合物を淡黄色液体として得た。清浄にした反応器に粗生成物を再導入し、トルエン(50ml)とヘプタン(380ml)との混合物に溶解した。種結晶を加えることにより内部温度12〜9℃で結晶化を誘導することができる。ジャケット温度を−25℃に2時間にわたり低下させ、その温度でさらに2時間保ち、結晶化を完了した。母液をフリット・フィルタ・スティックで除去し、結晶スラリーを、予備冷却したヘプタン(40ml)で2回洗浄した。結晶をEtOAcに溶解し、底部弁を通して溶液を流出させた。溶媒を減圧留去し、生成物を室温より僅かに高いmpを有する固体として70.0g、224mmol、53%得た。
【0206】
1H−NMR(CDCl
3);6.35(m,2H),5.20(m,4H),3.68(d,12H),3.00(abx,4H).
【0207】
生成物を短行程薄膜蒸留装置で蒸留することも可能であった。
【0208】
1b:1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン
温度制御ジャケット、内部温度計およびメカニカルスターラーを備えた2l反応器に、トルエン(330ml、Aldrich無水、sure sealキャップ付)、テトラメチル−1,1−ビスアリル−メチレンビス(ホスホネート)(70g、224mmol)およびトリエトキシシラン(123ml、655mmol)を仕込んだ。トルエンおよびシランの損失を回避するため、減圧サイクルが短くなるように注意して減圧−窒素サイクルを3回行うことにより反応混合物を脱酸素化した。酸素の除去は重要である。ジャケット温度を30℃に設定した。Karstedt触媒(4.5ml、2%トルエン溶液、0.053mmol)をシリンジで0.5mlずつ30分間隔で(合計4.5時間)加えた。触媒の添加を完了した後、温度制御ジャケットを30℃に設定し、混合物を終夜撹拌した。翌朝、ジャケット温度を40度に設定し、蒸留ヘッドを付け加え、トルエンおよび過剰のシランを62〜13mbarの圧力で留去した。所要時間2時間。エタノール(800ml)および活性炭(15g)を添加し、スラリーを10分間撹拌し、底部弁を通して混合物を取り出し、Whatmanガラス繊維フィルタで濾過した。一定の重量になるまで溶媒をロータリーエバポレータで減圧留去し(浴温45℃)、生成物を淡褐色油状物として138g(215mmol、96%)得た。
【0209】
1H−NMR(CDCl
3);3.95(q,12H),3.77(d,12H),2.37(m,4H),2.12(m,4H),1.32(t,18H),0.88(t,4H).
【0210】
生成物を170℃および0.3mbarの短行程薄膜蒸留装置で蒸留することも可能であった。
【0211】
実施例2:1,1−ビス(2−トリメトキシシリルエチル)−−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンの合成
2a:1,1−ビス(2−t−ブトキシエチル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン
氷冷した1,1−ビス(ジメチル)ホスホナト)メタン(50g、215mmol)の無水THF溶液(500ml)に窒素下で、水素化ナトリウム(18.9g、60%鉱油分散物、474mmol)を3回に分けて30分にわたり添加する。混合物を3時間撹拌した後、1−ブロモ−2−t−ブトキシエタン(90.5g、500mmol)を5mlずつ添加する。3時間後、氷浴を取り除き、室温で終夜撹拌し続ける。反応混合物を氷浴で再度冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを添加することにより反応停止する。揮発性物質を減圧留去し、有機物をジクロロメタン(300ml)に溶解する。シリカ(100g)を混入撹拌し、スラリーを濾過し、濾過ケーキを3×200mlジクロロメタンで洗浄する。溶媒の除去後、生成物を得る。
【0212】
2b:1,1−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン
トリフルオロ酢酸(TFA、50ml)およびジクロロメタン(DCM、50ml)を、1,1−ビス(2−t−ブトキシエチル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(実施例2a)2gに添加する。混合物を室温で1時間撹拌し、揮発性物質を減圧留去して、生成物を得る。
【0213】
2c:1,1−ビス(2−メシルオキシエチル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)−メタンの合成
実施例2bの生成物(1,1−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン)(10mmol)を、氷冷したジクロロメタン(10ml)に溶解する。ピリジン(40mmol、3.24ml)およびメタンスルホニルクロライド(3.44g、30mmol)を添加し、後者は内部温度<5℃に保ちながら添加する。3時間後、エーテル(30ml)および水(7ml)を添加する。相分離後、有機層を2M HCl、5%炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥した後、揮発性物質を蒸発させて生成物を得る。
【0214】
2d:1,1−ジビニル−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン
氷冷した1,1−ビス(2−メシルオキシエチル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(50g、104mmol)の無水THF(500ml)溶液に窒素下でジエチルイソプロピルハイルアミン(300mmol)を添加する。30分後、氷浴を取り除き、室温で終夜撹拌し続ける。揮発性物質を減圧留去し、有機物をエーテル(300ml)で溶解する。シリカ(100g)および活性炭(15)を混入撹拌し、スラリーを濾過し、濾過ケーキを3×200mlエーテルで洗浄する。溶媒の除去後、生成物を得る。
【0215】
2e:1,1−ビス(2−トリメトキシシリルエチル)−−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)−メタン
1,1−ジビニル−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(実施例2d)(2.0mmol)の無水トルエン(20ml)溶液に、Karstedt触媒のトルエン溶液(2%Pt)80μlおよびトリエトキシシラン(6.0mmol、4.1ml)を添加する。溶液を室温2日間放置する。揮発性物質を減圧留去し、トルエン添加−減圧サイクルをさらに2回行うことにより残留シランを除去する。残留物をトルエンに溶解し、少量の活性炭で処理し、5μmPTFEフィルタを通過させ、ジクロロメタン+0〜10%メタノールを溶離液として用いたシリカカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物を得る。
【0216】
実施例3:1,1−ビス(トリメトキシシリルメチル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンの合成
氷冷した1,1−ビス(ジメチル)ホスホナト)メタン(50g、215mmol)の無水THF(500ml)溶液に窒素下で水素化ナトリウム(18.9g、60%鉱油分散物、474mmol)を3回に分けて30分にわたり添加する。混合物を3時間撹拌した後、内部温度を5℃未満に維持しながら、クロロメチルトリエトキシシラン(500mmol)を複数回に分けて添加する。3時間後に氷浴を取り除き、室温で終夜撹拌し続ける。反応混合物を氷浴で再度冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを添加することにより反応停止させる。揮発性物質を減圧留去し、有機物をジクロロメタン(300ml)に溶解する。シリカ(100g)を混入撹拌し、スラリーを濾過し、濾過ケーキを3×200mlジクロロメタンで洗浄する。溶媒の除去後、生成物を得る。
【0217】
実施例4:1,1−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジエチルホスホナト)メタンの合成
4a:1,1−ジアリル−1,1−ビス(ジエチルホスホナト)メタン
氷冷した1,1−ビス(ジエチル)ホスホナト)メタン(4.97ml、20mmol)の無水THF(50ml)溶液に窒素下で臭化アリル(8.7ml、100mmol)を添加した。2時間にわたりカリウムtert−ブトキシド(6.8g、60mmol)を添加した。溶液を室温で終夜撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを添加することにより反応停止させた。揮発性物質を減圧留去し、有機物をジクロロメタンで溶解した。ジクロロメタン+メタノール(0〜10%勾配)でのシリカフラッシュクロマトグラフィーにより実質的に純粋な生成物(NMR)を得た。
【0218】
4b:1,1−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジエチルホスホナト)メタン
1,1−ジアリル−1,1−ビス(ジエチルホスホナト)メタン(実施例2a)(4.4g、14.2mmol)の無水トルエン(25ml)溶液に、Karstedt触媒のトルエン溶液(2%Pt)212μlおよびトリエトキシシラン(42.7mmol、7.8ml)を添加した。溶液を室温で終夜放置した。揮発性物質を減圧留去し、トルエン添加−減圧サイクルをさらに2回行うことにより残留シランを除去した。残留物をトルエンに溶解し、少量の活性炭で処理し、5μmPTFEフィルタを通過させ、ジクロロメタン+0〜10%メタノールを溶離液として用いたシリカカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。収量:NMR純度90%の材料6.9g。
【0219】
実施例5:1,1−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジイソプロピルホスホナト)メタンの合成
5a:1,1−ジアリル−1,1−ビス(ジイソプロピルホスホナト)メタン
氷冷した1,1−ビス(ジイソプロピル)ホスホナト)メタン(6.44ml、20mmol)の無水THF(50ml)溶液に窒素下で臭化アリル(8.7ml、100mmol)を添加した。2時間にわたり、カリウムtert−ブトキシド(6.8g、60mmol)を添加した。溶液を室温で終夜撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを添加することにより反応停止させた。揮発性物質を減圧留去し、有機物をジクロロメタンで溶解した。ジクロロメタン+メタノール(0〜10%勾配)でのシリカフラッシュクロマトグラフィーにより、実質的に純粋な生成物(NMR)6.5gを得た。
【0220】
5b:1,1−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジイソプロピルホスホナト)−メタン
1,1−ジアリル−1,1−ビス(ジイソプロピルホスホナト)メタン(実施例2a)(0.736g、2.0mmol)の無水トルエン(20ml)溶液に、Karstedt触媒のトルエン溶液(2%Pt)80μlおよびトリエトキシシラン(6.0mmol、4.1ml)を添加した。溶液を室温で終夜放置した。揮発性物質を減圧留去し、トルエン添加−減圧サイクルをさらに2回行うことにより残留シランを除去した。残留物をトルエンに溶解し、少量の活性炭で処理し、5μmPTFEフィルタを通過させ、ジクロロメタン+0〜10%メタノールを溶離液として用いたシリカカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。収量:NMR純度90%の材料1.0g。
【0221】
実施例6:1,1−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジ(3−メトキシフェニルイル)ホスホナト)メタンの合成
6a:1,1−ビス(ジ(3−メトキシフェニルイル)ホスホナト)メタン
氷冷したビス(ジクロロホスホナト)メタンの無水ジクロロメタン(50ml)溶液に、3−メトキシフェノール(1.76ml、16mmol)を添加した。トリエチルアミン(4.91ml、32mmol)の溶液を1時間にわたり添加した。次いで、反応混合物を室温で4時間撹拌した後すぐ、それを氷水(150ml)上に注いだ。ジクロロメタンを添加し、相分離させた(緩徐!)。水相をもう一度ジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。蒸発後、粗生成物をシリカフラッシュクロマトグラフィー(カラム高さ10cm、直径3cm)で精製した。生成物を淡褐色油状物として得、NMR分光法により高純度であることが分かった。収量0.93g。
【0222】
6b:1,1−ジアリル−1,1−ビス(ジ(3−メトキシフェニルイル)ホスホナト)メタン
水素化ナトリウム(0.683g、60%鉱油分散物、17.1mmol)を無水THF(150ml)に懸濁し、−30℃に冷却した。温度を−30℃に維持しながら、1,1−ビス(ジ(3−メトキシフェニルイル)ホスホナト)メタン(実施例4a、2.92g、4.87mmol)の無水THF溶液を30分にわたり添加した。臭化アリル(48.8mmol、4.21ml)を添加し、反応混合物を−15℃で1時間保持した後、40℃に5日間加熱した。内容物を飽和塩化アンモニウム水溶液75mlに添加した。揮発性物質を減圧蒸発させ、固体をジクロロメタンでトリチュレートし、有機物を抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させた後、ヘプタン:酢酸エチル 6:4を溶離液として用いたシリカフラッシュクロマトグラフィーにより粗生成物を精製した。収量1.28g。
【0223】
6c:1,1−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジ(3−メトキシフェニルイル)−ホスホナト)メタン。
1,1−ジアリル−1,1−ビス(ジ(3−メトキシフェニルイル)ホスホナト)メタン(実施例4b)(0.794g、1.16mmol)の無水トルエン(20ml)溶液に、Karstedt触媒のトルエン溶液(2%Pt)50μlおよびトリエトキシシラン(1.16mmol、0.459ml)を添加した。溶液を室温で4日間放置し、毎日、さらにトリエトキシシラン0.7gおよび触媒25μlを添加した。揮発性物質を減圧留去し、トルエン添加−減圧サイクルをさらに2回行うことにより残留シランを除去した。残留物をトルエンに溶解し、少量の活性炭で処理し、5μmPTFEフィルタを通過させ、酢酸エチル:トルエン 1:1を溶離液として用いたシリカカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。収量150mg。
【0224】
実施例7:1,1−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジ−シクロプロピルメチル)ホスホナト)メタンの合成
7a:1,1−ビス(ジ−シクロプロピルメチル)ホスホナト)メタン
氷冷したビス(ジクロロホスホナト)メタン(1.00g)の無水ジクロロメタン(50ml)溶液にシクロプロピルメタノール(1.15g、16mmol)を添加した。トリエチルアミン(4.91ml、32mmol)の溶液を1時間にわたり添加した。次いで、反応混合物を室温で4時間撹拌した後すぐ、それを氷水(150ml)上に注いだ。ジクロロメタンを添加し、相分離させた(緩徐!)。水相をもう一度ジクロロメタンで抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。蒸発後、粗生成物をシリカフラッシュクロマトグラフィー(カラム高さ10cm、直径3cm)で精製した。生成物を無色油状物として得、NMR分光法により高純度であることが分かった。収量1.04g、66%。
【0225】
7b:1,1−ジアリル−1,1−ビス(ジ(シクロプロピルメチル)ホスホナト)メタン
氷冷した1,1−ビス(ジ−シクロプロピルメチル)ホスホナト)メタン(実施例5a)(0.794g、1.16mmol)の無水THF(20ml)溶液に窒素下で、臭化アリル(0.864ml、10mmol)を添加した。2時間にわたり、カリウムtert−ブトキシド(0.66g)を添加した。溶液を室温で4時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液3mlを添加することにより反応停止させた。揮発性物質を減圧留去し、有機物をジクロロメタンで溶解した。ヘプタン:酢酸エチル 3:7でのシリカフラッシュクロマトグラフィーにより純粋な生成物0.4を得た。64%。
【0226】
7c:1,1−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジ−シクロプロピルメチル)−ホスホナト)メタン
1,1−ジアリル−1,1−ビス(ジ(シクロプロピルメチル)ホスホナト)メタン(実施例5b)(0.373g、0.76mmol)の無水トルエン(20ml)溶液に、Karstedt触媒のトルエン溶液(2%Pt)30μlおよびトリエトキシシラン(1.59mmol、0.299ml)を添加した。溶液を室温で4日間放置し、毎日、さらにシラン0.15mlおよび触媒15μlを添加した。揮発性物質を減圧留去し、トルエン添加−減圧サイクルをさらに2回行うことにより残留シランを除去した。残留物をトルエンに溶解し、少量の活性炭で処理し、5PTFEフィルタを通過させ、ジクロロメタン+5%メタノールを溶離液として用いたシリカカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。収量376mg。
【0227】
実施例8:N−(2−アミノエチル)−16,16−ジ−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−2,5,8,11,14,18−ヘキサオキサイコサン−20−酸アミドに結合したナノ構造Y1の合成
実施例8a:3−(3−ブロモ−2,2−ビス(ブロモメチル)プロポキシ)プロパ−1−エン
水素化ナトリウム(1.67g、42mmol)を、無水脱気DMF(40ml)中の3−ブロモ−2,2−ビス(ブロモメチル)プロパノール(9.75g、30mmol)および臭化アリル(12.9ml、150mmol)に窒素下、0℃で慎重に添加した。次いで、温度を室温(22℃)に上昇させ、反応混合物をさらに3時間撹拌した。次いで、反応混合物を飽和NH
4Cl水溶液(50ml)に慎重に添加した。次いで、H
2O相をジエチルエーテル(2×50ml)で抽出し、合わせた有機相をH
2O(5×50ml)、次いで飽和食塩水(50ml)で洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥した後、濾過した。揮発性物質を減圧留去して、淡黄色油状物(9.7g)を得た。シリカカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:EtOAc 9:1)により生成物を透明油状物として6.6g(62%)得た。
1H−NMR(CDCl
3);5.93(m,1H),5.28(m,2H),4.05(d,2H),3.58(s,6H),3.52(s,2H).
【0228】
実施例8b:16−(アリルオキシメチル)−16−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−2,5,8,11,14,18,21,24,27,30−デカオキサヘントリアコンタン
無水脱気DMF(3.5ml、4ÅMSで24時間乾燥)に溶解したテトラエチレングリコールモノメチルエーテル(1.91ml、9mmol)を、無水脱気DMF(15ml、4ÅMSで24時間乾燥)中の水素化ナトリウム(365mg、9mmol)に窒素下0℃でシリンジを使用して慎重に添加した。次いで、温度を室温に上昇させ、反応混合物をさらに30分間撹拌した。次いで、3−(3−ブロモ−2,2−ビス(ブロモメチル)プロポキシ)プロパ−1−エン(730mg、2.0mmol)を添加し、温度を100℃に上昇させた。14時間後、反応が完了し(HPLC−ELSD−C18、25分でH
2O/ACNを95:5〜5:95に変化させた、R
t生成物=19.5分)、温度を室温に低下させ、反応混合物をH
2O(150ml)に慎重に添加し、H
2O相をジエチルエーテル(2×50ml)で洗浄した。次いで、塩化ナトリウムを飽和するまでH
2O相に添加した。H
2O相をEtOAc(4×50ml)で抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水(2×30ml)で洗浄した。硫酸ナトリウムおよびチャーコールを有機相に添加した。透明な有機相を濾過し、揮発性物質を減圧留去した(8mmHg、40℃、次いで、0.1mmHg(オイルポンプ)および40℃、残留DMFを留去)。カラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH 9:1)により生成物1.05g(70%)を得た。
1H−NMR(CDCl
3);5.90(m,1H),5.20(m,2H),3.94(dt,2H),3.70−3.55(m,48H),3.45(s,6H),3.43(s,2H),3.40(s,9H).
【0229】
実施例8c:16,16−ジ−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−2,5,8,11,14−ペンタオキサヘプタデカン−17−オール(4)
DMSO(3ml)中のカリウムtert−ブトキシド(74mg、0.66mmol)を2(500mg、0.66mmol)に添加した。反応混合物を100℃で15分間振盪した。HPLC分析(HPLC−ELSD−C18、25分でH
2O/ACNを95:5〜5:95させた)から、生成物に完全に変換されたことが分かった。飽和食塩水(20ml)を室温で添加し、水相を酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水(3×20ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過し、揮発性物質を減圧留去して、16−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−16−((プロパ−1−エニルオキシ)メチル)−2,5,8,11,14,18,21,24,27,30−デカオキサヘントリアコンタンを透明油状物として得た。次いで、アセトン(4ml)に溶解した油状物にHCl(0.1M)を添加し、混合物を55℃で30分間振盪した。次いで、揮発性物質を減圧留去して、4を透明油状物として420mg(89%)得た。
1H−NMR(CDCl
3);3.66−3.52(m,48H),3.47(s,6H),3.37(s,9H).
【0230】
実施例8d:16,16−ジ−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−2,5,8,11,14,18−ヘキサオキサイコサン−20−酸tert−ブチル(5)
カリウムtert−ブトキシド(32mg、0.28mmol)を、無水THF(3ml)中の4(100mg、0.14mmol)およびtert−ブチル−2−ブロモアセテート(105mg、0.54mmol)に添加した。反応混合物を30分間振盪した。ジエチルエーテル(10mlおよび飽和食塩水(5ml)を添加し、水相を酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。合わせた有機相を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。揮発性物質を減圧留去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール 9:1)で精製して、5を60mg(52%)得た。
1H−NMR(CDCl
3);3.91(s,2H),3.66−3.52(m,48H),3.51(s,2H),3.45(s,6H),3.37(s,9H),1.46(s,9H).
【0231】
実施例8e:16,16−ジ−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−2,5,8,11,14,18−ヘキサオキサイコサン−20−酸(6)
トリフルオロ酢酸(TFA、0.5ml)およびジクロロメタン(0.5ml)を、5、20mgに添加した。混合物を室温で1時間振盪した後、揮発性物質を減圧留去して、6を黄色油状物として18mg得た。
【0232】
実施例8f:N−(2−t−ブトキシカルボニルアミドエチル)−16,16−ジ−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−2,5,8,11,14,18−ヘキサオキサイコサン−20−酸アミド
2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(95mg、0.25mmol)を、DMF(1ml、4ÅMSで乾燥し脱気)中の16,16−ジ−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−2,5,8,11,14,18−ヘキサオキサイコサン−20−酸(実施例8e)(153mg、0.2mmol)、N−BOC−エチレンジアミン(40mg、0.25mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(87μl、0.5mmol)に室温で窒素下にて添加した。反応混合物を20時間振盪した。ジエチルエーテルを反応混合物に添加し、混合物をH
2Oで3回抽出した。合わせた水相をNaCl(s)で飽和させた後、EtOAcで4回抽出した。合わせた有機相をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、溶媒を減圧留去して、生成物を淡黄色油状物として190mg(定量(quant))得た。HPLC分析(HPLC−ELSD−C18、20分でTFAの0.1%H
2O溶液/ACNを90:10〜5:95に変化させた)は、14.5分に単一ピークを示した。
【0233】
実施例8g:N−(2−アミノエチル)−16,16−ジ−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−2,5,8,11,14,18−ヘキサオキサイコサン−20−酸アミド
TFA(2ml)を、ジクロロメタン(2ml)中のN−(2−t−ブトキシカルボニルアミドエチル)−16,16−ジ−2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデシル−2,5,8,11,14,18−ヘキサオキサイコサン−20−酸アミド(実施例8f、160mg、0.18mmol)に添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。揮発性化合物を減圧留去し、残留物を無水トルエン(Al
2O
3)と共に2回共蒸発させた後、オイルポンプを使用して乾燥した。これにより、生成物130mgを得た。HPLC分析(HPLC−ELSD−C18、20分でTFAの0.1%H
2O溶液/MeCNを90:10〜5:95に変化させた)は10.7分に単一ピークを示した。MS(ESP+)[M]:807.5.
【0234】
実施例8h:結合
ナノ構造X1(実施例10c、100mg、0.4mmol P eq)を音波処理によりH
2O(2ml)に溶解した。6Mおよび1M NaOH(水溶液)を使用してpHを1.9から10.4に調節した。次いで、H
2O(2ml)に溶解した塩化マンガン(12.5mg、0.065mmol)を添加した。混合物を30℃で30分間振盪した。0.1HCl(水溶液)を使用してpHを8.5から7.1に調節し、実施例8gからの材料(37mg、0.04mmol)およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩(9mg、0.04mmol)をH
2O(2ml)に添加溶解した。次いで、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(24mg、0.12mmol)を添加した。反応混合物を室温で21時間振盪した後、濾過した(5umチューブフィルタ)。濾液を遠心濾過し(10kカットオフ、3000G 30分間)、H
2Oを使用して濃縮物(4ml)を15mlに希釈した。この手順を4回繰り返した。0.1M NaOH(水溶液)を使用して濃縮物(4ml)のpHを4.7から7.1に調節した。濾液を遠心濾過し(10kカットオフ、3000G 15分間)、H
2Oを使用して濃縮物(0.5ml)を4mlに希釈した。この手順を4回繰り返した。最終濃縮物を濾過し(シリンジフィルタ0.2um)、H
2Oを使用して2mlに希釈した。体積粒径分布=4〜5nm。GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=10.3分
【0235】
実施例9:ポリエチレンイミン−ビスホスホネートナノ構造Zの合成
実施例9a:3,3−ビス(ジメトキシホスホリル)プロピオン酸t−ブチルエステル
氷冷したビス(ジメトキシホスホリル)メタン(4.64g、20mmol)およびブロモ酢酸tert−ブチル(7.35ml、50mmol)の無水THF(40ml)溶液に窒素下でカリウムtert−ブトキシド(5.8g、43mmol)を添加した。反応混合物を室温で終夜撹拌した後、飽和塩化アンモニウム溶液4mlで反応停止した。揮発性物質を減圧下でおよびトルエン添加と蒸発とからなるサイクルを2回行うことにより留去した。ジクロロメタン:メタノール、95:5でのフラッシュクロマトグラフィーにより生成物を油状物として得た。収量4.0g。
【0236】
実施例9b:3,3−ビス(ジメトキシホスホリル)プロピオン酸
3,3−ビス(ジメトキシホスホリル)プロピオン酸t−ブチルエステル(2.5g)のジクロロメタン(10ml)溶液にトリフルオロ酢酸を添加した。室温で撹拌した後、揮発性物質を減圧蒸発させた。トルエンを5ml添加し、減圧蒸発させるサイクルを3回行い、生成物2.2gを得た。
【0237】
実施例9c:ポリエチレンイミン−ビスホスホネートナノ構造Zの合成
平均分子量25kDaの分岐鎖ポリエチレンイミン(100mg、2.5mmol第一級アミノ基)、3,3−ビス(ジメトキシホスホリル)プロピオン酸(1.1g、3.87mmol)およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩(100mg、0.46mmol)をH
2O(10ml)に音波処理(10分)により溶解した。1M NaOHを使用してpHを1.8から6.5に調節した後すぐ、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.0g、5.2mmol)を添加した。反応混合物を室温で23時間振盪した後、濾過した(5μmシリンジフィルタ)。濾液を遠心濾過し(10kカットオフ、3000G 30分間)、H
2Oを使用して保持液(2ml)を10mlに希釈した。この手順を4回繰り返した。H
2Oを使用して最終保持液(2ml)を6mlに希釈した。DLSによる体積平均粒径分布:4〜5nm。GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=9.1分。
【0238】
実施例10:ナノ構造Xを得るための1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンの重合
1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(xg、ymmol、下記表1参照)を圧力容器内で80%1−プロパノール水溶液200mlに溶解した。反応混合物を95℃で48時間、次いで110℃で24時間撹拌した。透明溶液を室温に冷却した後、それをMilliQ H
2O(800ml)で希釈し、次いで、300k公称分子量カットオフ(NMWC)孔径カラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−300−C−3MA)を使用してダイアフィルトレーション濾過した。次いで、回収した透過液(約980ml)を100k NMWC孔径ダイアフィルタカラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−100−C−3MA)で回収し、ナノ構造溶液を濃縮した。あるいは、Pall Life Sciences製フィルタ、具体的にはCentramate T−Series cassettes OS0100T02(100k NMWC孔径カセット)も使用した。MilliQ水の添加と回収した保持液の濾過を繰り返し行った。回収した保持液(X1)の最終体積は約50mlであった。
【0239】
さらに、100kダイアフィルタカラムを通過する透過液を回収した後、30k NMWC孔径フィルタカートリッジ(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−30−C−3MA)を使用して濾過した。MilliQ水の添加(×2)と回収した保持液の濾過を繰り返し行った。回収した保持液(X2)の最終体積は約50mlであった。
【0240】
実施例10a:100mM1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンの重合
X1a.量:x=12.8g、y=20mmol。ダイアフィルトレーション後の回収率=26%(Pの回収率に基づく);最終pH約2;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=9.2分;組成(ICP、モル比):P/Si=0.9。
【0241】
X2a量:x=12.8g、y=20mmol。ダイアフィルトレーション後の回収率=17%(Pの回収率に基づく);最終pH約2;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=10.3分;組成(ICP、モル比):P/Si=0.9。
【0242】
実施例10b:80mM1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンの重合
X1b.量:x=10.4g、y=16mmol。ダイアフィルトレーション後の回収率=31%(Pの回収率に基づく;最終pH約2;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=9.2分;組成(ICP、モル比):P/Si=1.1。
【0243】
X2b.量:x=10.4g、y=16mmol。ダイアフィルトレーション後の回収率=19%(Pの回収率に基づく);最終pH約2;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=10.4分;組成(ICP、モル比):P/Si=1.1。
【0244】
実施例10c:50mM1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンの重合
X1c.量:x=6.4g、y=10mmol。ダイアフィルトレーション後の回収率=21%(Pの回収率に基づく);最終pH約2;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=9.7分;組成(ICP、モル比):P/Si=0.9。
【0245】
X2c.量:x=6.4g、y=10mmol。ダイアフィルトレーション後の回収率=25%(Pの回収率に基づく);最終pH約2;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=10.5分;組成(ICP、モル比):P/Si=0.9;
【0246】
実施例10d:様々な溶媒中でのナノ構造Xを得るための1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンの重合
1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(3.2g、5mmol)を80%エチレングリコール水溶液(100ml)に溶解した。反応混合物を116℃で21時間撹拌した。重合は、80%1,2−プロパンジオール水溶液中で、111℃で24時間、次いで114℃で4時間撹拌する、または80%ジエチレングリコール水溶液中で、108℃で20時間、次いで114℃で2時間撹拌する、または80%トリエチレングリコール水溶液中で、115℃で22時間撹拌する、または80%ジ(エチレングリコール)メチルエーテル水溶液中で、106℃で18時間、次いで111℃で18時間撹拌する、または80%ジエチレングリコールモノエチルエーテル水溶液中で、107℃で35時間撹拌する、または80%グリセロール水溶液中で、114℃で19時間撹拌すること以外、上記のように行うこともできる。
【0247】
実施例10e:1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンのPt捕捉
Resintechにより提供されるSIR−200(100g、キレート化樹脂、チオール、H型)を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(500ml)と共に2回振盪した後、MilliQ水と共に2回振盪した。水を濾別し、無水トルエン(100ml)をSIR−200に添加した。揮発性物質を減圧留去し、トルエン添加−減圧サイクルをさらに2回行うことにより残留水を留去した。1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(30g、白金含有量:39ppm)を容器内で無水トルエン(300ml)に溶解した。SIR−200(10g、上記のように処理)を添加した後、終夜振盪した。SIR−200を濾別し、揮発性物質を減圧留去して、白金含有量0.38ppmの材料を得た。
【0248】
実施例11.ナノ構Yを得るための、ナノ構造Xのマンガン担持およびタンジェンシャルフロー濾過による精製
6Mおよび1M NaOH(水溶液)を使用して、ナノ構造Xの溶液のpH(実施例13)をpH2からpH10.4に調節し、2時間放置した。次いで、塩化マンガン(II)四水和物(xxmg、yymmol)を添加し、溶解した。混合物を30℃で1時間振盪した。反応後の混合物のpHは約pH7.6であり、1M HCl(水溶液)を使用してpH7.4にさらに調節した。反応した混合物をMilliQ H
2Oで50mlに希釈した後、10k NMWC孔径カラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−10−C−3MA)を使用してダイアフィルトレーションを行い、遊離Mnイオンを除去した。あるいは、Pall Life Sciences製のフィルタ、具体的にはCentramate T−Series cassettes OS010T02(10k NMWC孔径カセット)も使用する。保持液を回収し、希釈&ダイアフィルトレーション手順を3回繰り返し行った。
【0249】
Y1a.使用したナノ構造X:実施例X1a、15ml、3.2mmol P。使用したMnCl
2 4H
2O:xx=106.7mg、yy=0,54mmol。最終pH7.4;体積粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=5.6nm;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=9.5分;組成(ICP、モル比):P/Mn=5.7、P/Si=0.9、Si/Mn=6.2;pH5.5でのイオン交換安定性=45%およびpH7でのイオン交換安定性=62%。
【0250】
Y1b.使用したナノ構造X:実施例X1a、15ml、3.2mmol P。使用したMnCl
2・4H
2O:xx=107mg、yy=0.54mmol。最終pH7.4;体積粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=6.5nm;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=10.1分&ショルダー9分、組成(ICP、モル比):P/Mn=5.4、P/Si=0.9、Si/Mn=6;pH5.5でのイオン交換安定性=47%およびpH7でのイオン交換安定性=66%。
【0251】
Y2a.使用したナノ構造X:実施例X2a、15ml、2mmol P。使用したMnCl
2 4H
2O:xx=71mg、yy=0.36mmol。最終pH7.4;体積粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=4.1nm;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=10.5分;組成(ICP、モル比):P/Mn=6.6、P/Si=0.9、Si/Mn=7.3;pH5.5でのイオン交換安定性=43%およびpH7でのイオン交換安定性=60%;81.33MHz、25℃でのr
1=41mM
−1 Mn s
−1。
【0252】
Y2b.使用したナノ構造X:実施例X2a、15ml、2mmol P。使用したMnCl
2:xx=71mg、yy=0,36mmol。最終pH7.4;体積粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=5.6nm;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=10.1分;組成(ICP、モル比):P/Mn=5.6、P/Si=0.9、Si/Mn=6.2;pH5.5でのイオン交換安定性=44%およびpH7でのイオン交換安定性=63%。
【0253】
実施例11a:ナノ構造Xを得るための1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタンの重合
11a’:
1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(0.64g、1mmol)を80%エチレングリコール水溶液(12ml)に溶解した。28mg(0.42mmol)または140mg(2.1mmol)の範囲のギ酸ナトリウムおよび塩化マンガン(II)四水和物(33mg、0.17mmol)を80%エチレングリコール水溶液(4ml)にそれぞれ溶解した後、反応混合物に添加し、それを114℃で22時間撹拌した。
【0254】
11a”:
1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(0.64g、1mmol)を80%エチレングリコール水溶液(12ml)に溶解した。ギ酸カリウム(52mg、0.62mmol)および塩化マンガン(II)四水和物(33mg、0.17mmol)を80%エチレングリコール水溶液(4ml)にそれぞれ溶解した後、反応混合物に添加し、それを116℃で21時間撹拌した。
【0255】
11a’’’:
1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(0.64g、1mmol)を80%エチレングリコール水溶液(16ml)に溶解した。その後、ギ酸テトラメチルアンモニウム(30重量%水溶液、0.245ml、0.62mmol)および80%エチレングリコール水溶液(4ml)に溶解した塩化マンガン(II)四水和物(33mg、0.17mmol)を反応混合物に添加し、それを116℃で21時間撹拌した。
【0256】
実施例11b.ナノ構造Zを得るための、ナノ構造Xのマンガン担持、シランの添加による「硬化」、およびダイアフィルトレーションによる精製
ナノ構造X(実施例10f)の溶液2mlに、リンとマンガンとのモル比12を満たす脱気塩化マンガン(II)四水和物(80%エチレングリコール水溶液に溶解;100mM)xmlを添加した。80%エチレングリコール水溶液に溶解した脱気ギ酸ナトリウム(100mM)ymlを、ギ酸ナトリウムとマンガンとのモル比5または3を満たすMn担持ナノ構造溶液に添加する。最終pHを確認し、必要に応じてNaOH(水溶液)またはHCl(水溶液)を添加することにより約pH5または3に調節する。混合物を100℃で12時間または18時間振盪した。エタノールに溶解したオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)(120mM)zmlの添加を混合物に添加して、100℃で18時間または24時間さらに撹拌した。(最初の加熱工程後にTEOSを後添加する代わりに、ギ酸Naを含有するMn担持ナノ構造溶液に直接TEOS溶液を組み込み、100℃で12時間または18時間振盪する。)
【0257】
加熱および振盪後、NaOH(水溶液)を添加することによりpHをpH7.0±0.5に調節した後、4ml 100kDa遠心式フィルタ(Millipore製のCentriprep(登録商標))を使用して限界濾過(UF)を行った。溶液をまずMilli−Qで約4mlに希釈し、10〜15分間遠心分離した(3000×g)。濾液を回収し、4ml 10kDa遠心式フィルタ(Millipore製のCentriprep(登録商標))に移し、Milli−Q水で4mlに希釈し、十分に混合し、遠心濾過し(3000×g、10分)、その後、保持液約500μlを回収した。希釈およびダイアフィルトレーション手順を3回繰り返した。回収した最終保持液500μlをMilliQ水で1mlに希釈した。その後、Mn濃度測定、緩和時間測定法により評価される錯滴定安定性試験(実施例14b)、GPC分析および組成(ICP測定)分析を行った。
【0258】
Z1a.ビスビスに対して3%のTEOS]使用したナノ構造X:2ml、0.2mmol P;x=167μL;ギ酸Na−Mn比:5;y=835μL;z=25μL 加熱前の最終pH:pH5;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=12.6分;組成(ICP、モル比):P/Mn=11.61、P/Si=1.01、Si/Mn=10.51;pH7での錯滴定安定性=24%
【0259】
Z1b.ビスビスに対して5%のTEOS]使用したナノ構造X:2ml、0.2mmol P;x=167μL;ギ酸Na−Mn比:5;y=835μL;z=41.7μL 加熱前の最終pH:pH5;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=12.6分;組成(ICP、モル比):P/Mn=12.05、P/Si=1.02、Si/Mn=11.77;pH7での錯滴定安定性23%
【0260】
Z1c.ビスビスに対して3%のTEOS。使用したナノ構造X:2ml、0.2mmol P;x=167μL;ギ酸Na−Mn比:5;y=835μL;z=25μL 加熱前の最終pH:pH3.5;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=12.6分;組成(ICP、モル比):P/Mn=13.03、P/Si=0.93、Si/Mn=13.96;pH7での錯滴定安定性=27%
【0261】
Z1d.ビスビスに対して5%のTEOS。使用したナノ構造X:PL04064、2ml、0.2mmol P;x=167μL;ギ酸Na−Mn比:5;y=835μL;z=41.7μL 加熱前の最終pH:pH3.5;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=12.6分;組成(ICP、モル比):P/Mn=13.31、P/Si=0.92、Si/Mn=14.53;pH7での錯滴定安定性=26%
【0262】
実施例12.凍結乾燥し、製剤化したMn担持ナノ構造
1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピル)−1,1−ビス(ジメチルホスホナト)メタン(6.4g、0,01mmol)を圧力容器内で80%1−プロパノール水溶液200mlに溶解した。反応混合物を95℃で48時間、次いで、110℃で24時間撹拌した。温度を室温に低下させ、無色透明の溶液を回収した。回収した溶液をMilliQ H
2O(800ml)で希釈した後、300k NMWC 孔径カラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−300−C−3MA)を使用して濾過した。次いで、回収した透過液(約980ml)を100k NMWC孔径ダイアフィルタカラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−100−C−3MA)を使用して濾過し、ポリマー溶液を濃縮した。MilliQ水の添加と回収した保持液の濾過を繰り返し行った。回収した保持液の最終体積は約50mlであった。組成(ICP、モル比):P/Si=0.84。
【0263】
さらに、100kダイアフィルタカラムを通過する透過液を回収した後、30k NMWC孔径ダイアフィルタカラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−30−C−3MA)を使用して濾過した。MilliQ水の添加(2×)と回収した保持液の濾過を繰り返し行った。回収した保持液の最終体積は約50mlであった。組成(ICP、モル比):P/Si=0.88。
【0264】
6Mおよび1M NaOH(水溶液)を使用して、100kダイアフィルトレーションを通過するナノ構造(25ml、2.1mmol)のpHをpH2.2からpH10.5に調節し、2時間放置した。次いで、塩化マンガン(II)四水和物(45.4mg、0.23mmol)を添加した。混合物を30℃で16時間振盪した。反応後の混合物のpHは9.3であり、その後、1M HCl(水溶液)を使用してpH7.4に調節した。混合物をMilliQ H
2Oで50mlに希釈した後、10k NMWC孔径カラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−10−C−3MA)を使用してダイアフィルトレーションを行った。保持液を回収し、希釈およびダイアフィルトレーション手順を3回繰り返した。回収した最終溶液の体積は10mlであった。
【0265】
回収した溶液8.1mlに、マンニトール(0.36g、2.0mmol)を添加し、250mMの濃度に到達させた。その後、16時間凍結乾燥し、飛散性の白色粉末0.5gを回収した。凍結乾燥材料の20mg/ml水溶液を調製し、分析した。体積加重した粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=4.8m nm;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分)R
t=10.3分;組成(ICP、モル比):P/Mn=9.8、P/Si=0.9、Si/Mn=10.7;pH5.5でのイオン交換安定性=72%およびpH7でのイオン交換安定性=89%;60MHz、37℃でのr
1=39mM
−1 Mn s
−1。
【0266】
実施例13.イオン交換樹脂を使用したYのナノ構造の更なる精製
過剰のまたは結合の弱いMnイオンをさらに除去するために、サンプルY1を陽イオン交換体(スルホン化ポリスチレン)で処理した:Mn担持ナノ構造(約10mM Mn)約10mlをDowex 50WX4(Na型、水で予洗)1gと混合し、0.1M NaOHでpHを7.0に調節した。混合物を16時間穏やかに回転させた後、3000rpmで遠心分離した。
【0267】
実施例14.マンガン含有ナノ構造の安定性測定(「イオン交換安定性」とも称される)
まず、ナノ構造溶液の濃度マンガンを測定した後、水で希釈して、マンガン濃度1.5mMおよび最終体積2.2mlに希釈した。希釈サンプル溶液2×1.000mlに、Dowex 50WX4(Na型、水で予洗)2×100mgを添加した。2つの溶液のpHをそれぞれ0.1M NaOHまたは0.1M HClで7.0および5.5に調節した(通常、数マイクロリットルしか要しない)。バイアルをゆっくり回転させることにより、混合物を16時間十分に混合した。IEX粒子を沈殿させ、採取した上清を100μlずつ分析した([Mn]
IEX)。サンプル中の初期マンガン濃度を測定するために、上記の残りの溶液を使用して[Mn]
startを測定した。安定性は:[Mn]
IEX/[Mn]
start*100(%)として算出した。
【0268】
実施例14b.緩和時間測定法により評価されるマンガン含有ナノ構造の錯滴定安定性試験
1mM Mnの濃度を有するナノ構造溶液の縦緩和度(r
1(ns))を測定する。1mM Mnを含有する別のナノ構造溶液を調製し、等モル量のEDTAを添加する。この溶液のpHを、必要に応じてpH7±0.5に調節しなければならない。EDTAを添加したこのナノ構造溶液の縦緩和度(r
1(ns+EDTA))を測定する。基準物質として、AAS用マンガン標準物質(Fluka77036)を使用する1mM溶液を調製し、等モル量のEDTAを添加し、pHをpH7±0.5に調節する。縦緩和度を測定すると(r
1(Mn+EDTA))、その結果、1.6mM
−1s
−1の値が得られる。等量のEDTAを添加した後の、ナノ構造から放出された%Mnを算出するために:
注記:緩和(T
1、単位:秒)は、37℃でMinispec mq60 NMR分析装置(60MHz)を使用して測定し、緩和度r
1は:
(式中、T
1H2O=0.32s;c
1=1mM)
を使用して算出する。
【0269】
実施例15.カルシウムおよびマンガンとの金属交換反応。
血液の無機成分を略模倣するがカルシウムを含まない緩衝液を、NaCl(7.14g)、NaHCO
3(1.4g)、KHCO
3(0.43g)、NaH
2PO
4(0.165g)、Mg(OAc)
2(0.17g)から混合し、体積1.00lに希釈した。以下、「血液緩衝液」と称する。2つのナノ構造サンプル、A、(Y1、300kDaフィルタと100kDaフィルタで分離)およびB(Y2、100kDaフィルタと30kDaフィルタで分離)を試験した。試験管は、次に従って調製した:
サンプル1:水900μl サンプルA100μl
サンプル2:水900μl サンプルB100μl
サンプル3:血液緩衝液900μl サンプルA100μl
サンプル4:血液緩衝液900μl サンプルB100μl
サンプル5:血液緩衝液+1.3mM CaCl
2900μl サンプルA100μl
サンプル6:血液緩衝液+1.3mM CaCl
2900μl サンプルB100μl
【0270】
Aと混合したサンプルは全Mn濃度1.3mM、Bと混合したサンプルは全Mn濃度1.5mMと分析された。溶液を室温で1時間インキュベートした後、10kDaカットオフ遠心フィルタを通過させた。濾液のマンガンを分析した。結果を表2に示す。
【0271】
実施例16.Mn担持ジメチル−2−(トリエトキシシリル)エチルホスホネートポリマー。
ジメチル−2−(トリエトキシシリル)エチルホスホネート(DTEP、0.9g、3.0mmol)を圧力容器内で80%1−プロパノール水溶液30mlに溶解した。反応混合物を95℃で48時間、次いで、120℃で24時間撹拌した。温度を室温に低下させ、無色透明の溶液を回収した。回収した溶液をMilliQ H
2O(470ml)で希釈した後、100k NMWC孔径カラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−100−C−3MA)を使用して濾過した。次いで、30k NMWC孔径ダイアフィルタカラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−30−C−3MA)を使用して、回収した透過液(480ml)を濾過し、ポリマー溶液を濃縮した。MilliQ水の添加と回収した保持液の濾過を繰り返し行った。回収した保持液の最終体積は約7.5mlであった。組成(ICP、モル比):P/Si=0.5。
【0272】
6Mおよび1M NaOH(水溶液)を使用して、DTEPポリマー溶液(0.4mmol P)7.5mlのpHをpH2.6からpH10.4に調節し、2時間放置した。その後、塩化マンガン(II)四水和物(5.9mg、0.3mmol)を添加した。混合物を30℃で1時間振盪した。反応後の混合物のpHは約pH9.4であり、その後、1M HCl(水溶液)を使用してpH7.4に調節した。反応した混合物を、MilliQ H
2Oで50mlに希釈した後、10k NMWC孔径カラム(GE Heathcare’s Midgee ultrafiltration cartridge Model:UFP−10−C−3MA)を使用してダイアフィルトレーションを行い、遊離Mnイオンを除去した。保持液を回収し、希釈およびダイアフィルトレーション手順を3回繰り返した。体積加重粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=5.6nm;GPC分析(Superose 12 10/300 GL、100mM NH
4CO
3、pH=7.4、流量1ml/分);組成(ICP、モル比):P/Mn=2.7、P/Si=0.5、Si/Mn=5.7;pH5.5でのイオン交換安定性=21%およびpH7でのイオン交換安定性=24%;81.3MHz、25℃でのr
1=3mM
−1 Mn s
−1
【0273】
実施例17.Mn担持ゾレドロン酸。
ゾレドロン酸(27mg、0.01mmol)をMilliQ H
2O10mlに溶解した。100mM塩化マンガン(II)四水和物の水溶液を調製した。Mn溶液10μlをゾレドロン酸溶液408μlおよびMilliQ H
2O582μlと混合した。6M NaOH(水溶液)を使用してpHを7.4に調節した。組成(ICP、モル比):P/Mn=5.26。81.3MHz、25℃でのr
1=2.3mM
−1 Mn s
−1
【0274】
実施例18.Mn担持メチレンジホスホン酸。
メチレンジホスホン酸(9.2mg、0.05mmol)をMilliQ H
2O5mlに溶解した。28mM塩化マンガン(II)四水和物の水溶液を調製した。Mn溶液35μlをメチレンジホスホン酸溶液286μlおよびMilliQ H
2O679μlと混合した。6M NaOH(水溶液)を使用してpHを7.1に調節した。組成(ICP、モル比):P/Mn=4.6。81.3MHz、25℃でのr
1=1mM
−1 Mn s
−1。
【0275】
実施例19.ナノ構造X中に担持された他の金属イオン。
6Mおよび1M NaOH(水溶液)を使用して、ナノ構造X2aのpHを2から10.4に調節し、2時間放置した。次いで、塩化Fe(II)水和物、塩化Fe(III)水和物、塩化Er(III)水和物、または塩化Dy(III)水和物などの金属塩(xxmg、yymmol、下記表3参照)を添加した。混合物を30℃で1時間振盪した。反応後の混合物のpHはサンプルにより4.7〜7.2と様々であり、その後、1M HCl(水溶液)を使用してpH7.4に調節した。混合物を遠心濾過し(10k MWCO、15分間3000×g)、MilliQ H
2Oを使用して濃縮物(0.5ml)を4mlに希釈した。この手順を4回繰り返した。MilliQ H
2Oを使用して最終濃縮物を4mlに希釈した。
【0276】
a:前駆体X2a、4ml、0,11mmol P。使用したFeCl
2・4H
2O:xx=7.2mg、yy=0.04mmol。最終pH7.4;体積粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=8.7nm;組成(ICP、モル比):P/Fe=4.2、P/Si=0.9、Si/Fe=4.5;81.33MHz、25℃でのr
1=3.1mM
−1 Fe s
−1。
【0277】
b:前駆体X2a、4ml、0,11 mmol P。使用したFeCl
3・6H
2O:xx=9mg、yy=0.03mmol。最終pH7.4;体積加重粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=8.7nm;組成(ICP、モル比):P/Fe=6.5、P/Si=0.9、Si/Fe=7.2;81.33MHz、25℃でのr
1=8.5mM
−1 Fe s
−1。
【0278】
c:前駆体X2a、4ml、0,11 mmol P。使用したErCl
3・6H
2O:xx=12.7mg、yy=0.03mmol。最終pH7.4;体積加重粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=50nm;組成(ICP、モル比):P/Er=5.3、P/Si=0.9、Si/Er=5.7;81.33MHz、25℃でのr
1=0.4mM
−1 Er s
−1。
【0279】
d:前駆体X2a、4ml、0,11mmol P。使用したDyCl
3・6H
2O:xx=13.6mg、yy=0.04mmol。最終pH7.4;体積加重粒径(150mM NaCl中でのDLS)最大=10.1nm;組成(ICP、モル比):P/Dy=4.4、P/Si=0.9、Si/Dy=4.7;81.33MHz、25℃でのr
1=0.6mM
−1 Dy s
−1。
【0280】
実施例20.Mn担持材料の緩和度
幾つかのMn担持材料の緩和度を表3に示す。
【0281】
実施例21:In vivo画像化
MR画像品質およびコントラストを、増殖速度が非常に速いEL−4マウスリンパ腫を有するマウスでin vivoにて検査した。マウスリンパ腫細胞株EL−4は、C57BL/6マウスで誘導したリンパ腫から樹立した。リンパ芽球細胞は、懸濁液中でin vitroにて、およびC57BL/6マウス中の同種異系移植片として容易に増殖する。
【0282】
EL−4細胞(ECACC 85023105)を使用して、C57BL/6マウス中で同種異系移植腫瘍を発生させた。細胞懸濁液を皮下注射し、数日間にわたり腫瘍を発生させた。注射の6日後〜10日後の間、腫瘍を画像化に使用した。
【0283】
MRプロトコルを最適化して、2匹の動物で試験を行った。EL−4腫瘍を有する動物7匹でMR画像を取得した;4匹のマウスには3mM/175μlのY2を投与し、3匹のマウスには17mM/175μlのMagnevistを投与し、両方とも6秒間注射した。
【0284】
T1加重GE画像を取得した。マウスを磁石から取り除き、造影剤を含有するカテーテルを接続した。このとき、重要な点は、カテーテルによる動物への拡散を回避するため、造影剤を迅速に注射することであった。造影前(pre contrast)T1加重画像を取得し、その直後に、動的フラッシュ画像を連続的に取得しながら造影剤を注射した(注射前(pre injection)2枚、注射後(post injection)14枚、1画像当たり8秒)。
【0285】
A、B、Eと標識した実験(下記参照)では、Y2またはMagnevistのいずれかを注射した後、50×50mmの視野で10スライスを取得した。8スライス、視野50×50mm、マトリックスサイズ256×256、および1データセット当たりの全走査時間10分強で画像を取得した。造影後(Post contrast)画像は15分毎に取得した。造影剤注射後に取得した全データセットから、10スライスのうち1スライスを増強の代表に選択した、
図2を参照されたい。
【0286】
実施例22:マンガン担持1,3−ビスホスホネートを有するポリエチレンイミンベースのナノ構造の合成
22a:プロピレン−1,3−ジホスホン酸
トリメチルシリルブロマイド(16.84ml、25.3mmol)およびテトラエチルプロピレン−1,3−ジホスホネート(10.08g、31.6mmol)を氷冷したジクロロメタン5mlに溶解した。10分後、冷却浴を取り除き、混合物を室温で16時間撹拌した。揮発性物質をロータリーエバポレータで留去した。撹拌し、氷冷しながら残留物に水50mlを添加した。20分後、ロータリーエバポレータで水を留去し、残留水分をまずトルエン添加−蒸発のサイクルを2回行った後、終夜オイルポンプで減圧することにより除去した。
1H−NMRから、エチル基が消失し、メチレン基は依然として存在することが分かった。
【0287】
22b:テトラメチルプロピレン−1,3−ジホスホネート
プロピレン−1,3−ジホスホン酸(600mg)をオルトギ酸トリメチル(20ml)に懸濁し、6時間還流した後すぐ液体10mlを留去し、残部を終夜放置した。揮発性物質を減圧留去し、生成物を油状物として得た。
【0288】
22c:1−t−ブトキシカルボニルメチル,−O,O,O,O−テトラメチルプロピレン−1,3−ジホスホネート
テトラメチルプロピレン−1,3−ジホスホネート(206mg、0.79mmol)を無水THF(5ml)に窒素雰囲気下で溶解し、溶液をドライアイス−アセトン浴中で冷却した。t−BuLi(2.17Mヘプタン溶液、1.66mmol)をシリンジで注入し、10分後、ブロモ酢酸t−ブチル(0.23ml、1.66mmol)を添加した。30分後、温度を−15℃に30分間上昇させた。飽和塩化アンモニウム水溶液に添加することにより、反応混合物を反応停止した。エーテル(2×25ml)で抽出し、MgSO
4で乾燥し、蒸発させることにより油状残留物を得た。ジクロロメタン+3%メタノールを用いたシリカフラッシュクロマトグラフィーにより所望の生成物134mgを得た。
【0289】
22d:1−カルボキシメチル,−O,O,O,O−テトラメチルプロピレン−1,3−ジホスホネート
1−t−ブトキシカルボニルメチル,−O,O,O,O−テトラメチルプロピレン−1,3−ジホスホネート(150mg)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.5ml)を添加した。反応混合物を終夜放置し、揮発性物質を除去した。トルエン添加−蒸発のサイクルを3回行うことにより残留トリフルオロ酢酸を留去した。収量132mg。
【0290】
22e:1−カルボキシメチル,−O,O,O,O−テトラメチルプロピレン−1,3−ジホスホネートのポリエチレンイミンへの結合およびマンガンの担持
1−カルボキシメチル,−O,O,O,O−テトラメチルプロピレン−1,3−ジホスホネート(100mg)、ポリエチレンイミン(15mg、平均分子量30000)、およびスルホN−ヒドロキシスクシンイミドを水(5ml)に添加し、10分間音波処理した。0.1M NaOHを添加することにより、pHを6.6に調節した。EDCを添加し、溶液を振盪機に19時間入れた。小分子材料を20kDaカットオフ遠心フィルタで除去した。残留物を同じフィルタ上で4回洗浄した。150mM NaClに溶解したとき、ナノ構造は直径7.5nmと測定された。上記溶液1mlにMnCl
2.4H
2Oを21mg添加した。NaOH水溶液を添加することにより、pHを7.3に調節した。10kDa公称カットオフ遠心フィルタ上でサンプルを水で3回洗浄した。サンプルのMnを分析すると、2.4mMであることが判明した。緩和度は、60MHzで18.5/mM/sであることが判明した。実施例14に従って測定した安定性は:0.2%であった。
【0291】
実施例23.ナノ構造の電気伝導度滴定
電気伝導度滴定を使用して、ナノ構造に吸着され得るCa
2+およびMg
2+の量を測定することができる。CaCl
2とMgCl
2の混合物を含有する溶液を一定量ずつ添加していき、添加後、ナノ構造の水溶液の電気伝導度を監視する。Ca
2+とMg
2+が粒子に吸着する限り、溶液の電気伝導度(mS/cm)はある一定の割合(滴定曲線の傾き)で増加することになる。ナノ構造がCa
2+およびMg
2+で飽和すると、電気伝導度は別の割合で増加することになる。終点(ナノ構造がCaとMgで飽和する箇所)の可視化がより明確になるように、Ca/Mg溶液を同じ増分で水に添加することにより得られる電気伝導度から、ナノ構造の存在下での電気伝導度を引いた。
【0292】
実施例10cからの材料のサンプル([Mn=0;[P]=138mM)200μlを水2300μlと混合した。6.55mM MgCl
2および9.67mM CaCl
2を含有する水溶液を50μlずつ添加していき、添加後に電気伝導度を測定した。(この比[Ca]/[Mg]は血液中に見られるものとほぼ同じである。
図3aの「サンプル(Samp.)」を参照されたい。電気伝導度の出発値(Mg/Ca溶液を添加していない)を「サンプル」から引き、
図3aの「補正サンプル(Korr Samp.)」を得た。また、Mg/Ca溶液を同量ずつ水に添加していき、添加後に電気伝導度を測定して、
図3aの「ブランク(Blank)」を得た。最後に、「補正サンプル」からの電気伝導度を「Blank」から引き、
図3aの「差(ブランク−補正サンプル)(Diff(Blank−Korr Samp))」を得た。
【0293】
図3bでは「差(ブランク−補正サンプル)」曲線を拡大し、曲線の異なる部分に2本の直線を適合させた。この2本の線は滴定液474μlのところで交差し、これから[P]/[Mg]=8.89、[P]/[Ca]=6.02および[P]/[Me]
tot=3.59が得られる。
【0294】
上記と同じナノ構造のバッチを10kDフィルタでさらに濃縮した(体積を約5分の1に低減した)。
滴定を行い、溶液40μlを水2460と混合したものを用いて上記と同様の補正を行った。終点は422μlと求められた。以前の滴定と同じ吸着比[P]/[Me]であると仮定すると、これから[P]=422/474×138×0.200/0.040=613mMが得られる。
図3cを参照されたい。
【0295】
滴定の主な目的は、ナノ構造を90%飽和するために添加すべきCa/Mg溶液の量を推定することであった。
【0296】
従って、400mM MgCl
2および600mM CaCl
2溶液506μlをサンプル溶液([P]=138mM)14.5mlに添加した。
【0297】
次いで、この溶液を上記のように10kDフィルタでさらに濃縮し、ほぼ同量が滴定されたが、今回は、その部位の大部分が金属で占有されているはずである。結果を
図3dに示す。
【0298】
実施例24.製剤:CaイオンおよびMgイオンでの飽和と、その後のマンニトール添加(バッチSI055C−PE120208)
実施例10cからの材料の溶液のサンプル([Mn]=38mM、[P]=508mMおよびOs約200mOs/kg;バッチPE120130)2.5mlをまず生理学的pH7.4に調節した。CaおよびMgで飽和(90%)させた後、次の工程を行った。実施例23(「ナノ構造の電気伝導度滴定」)に記載の方法に従って、溶液100μlをCaおよびMg溶液([Ca]/[Mg]=1.48)を用いて電気伝導度滴定を行い、終点は、[Ca]/[Mn]=1.59または[Mg]/[Mn]=1.08のときであると求められた。
【0299】
とりわけ滴定の終了時のpHが5.5であったため、Mn
2+の一部がCa
2+およびMg
2+で置換されている可能性があるという懸念が幾らかあった。従って、滴定後の溶液を10kDフィルタで濾過し、濾液中のMnの量を測定するとサンプル中に全Mnの約15%が含有されていた。ナノ構造からのMnの損失は、少なくとも部分的に、滴定の終了時のpHが低いことにより説明することができる。
【0300】
対応するCaおよびMg担持粒子を調製するために、マンニトール溶液(Os=280mOs/kg)500μlをまず濃縮されたCa/Mg溶液([Ca]=600mM、[Mg]=400mM)21.5μlと混合した。次いで、この溶液をバッチPE120130、580μlと混合し、1M NaOH約8μlでpHを6.01から7.40に調節し、浸透圧モル濃度を測定すると270mOs/kgであった。
【0301】
実施例25.免疫原性の試験
方法
ウサギに、Mn10mg/mlに相当するナノ構造濃度で実施例24のナノ構造(マグネシウムおよびカルシウムと共に製剤化)2×0.5mlを5回注射した。後肢のそれぞれに1つ、注射を皮下投与した。ナノ構造は、次のようにしてアジュバントと混合した:
1)1:1 v/vで、一次免疫用には完全フロイントアジュバント(Sigma−Aldrich)(合計1ml注射)と混合し、追加免疫注射用には不完全フロイントアジュバントと混合した
2)1:1(v/v)で、一次免疫用と追加免疫注射用の両方とも40mg/ml水酸化アルミニウム(Pierce)(合計1ml注射)と混合した
【0302】
注射および血清採取のプロトコル:
・0日目:免疫前血清の採取(20ml)
・0日目:一次免疫
・14日目:1回目の追加免疫
・28日目:2回目の追加免疫
・49日目:3回目の追加免疫
・70日目:4回目の追加免疫
・84日目:免疫血清の採取(60ml)
【0303】
分析:
1.プロテインGクロマトグラフィー(GE Healthcare)により免疫前血清および免疫血清から免疫グロブリン画分を精製した。
2.樹脂のアルデヒド基とIgG分子上に存在する第一級アミン基との間の還元的アミド化により、IgG画分2mgを2mlアガロースカラム(Pierce)に結合させた。IgGが結合したカラムを洗浄し、0.9%NaClで平衡化させた。
3.1.35mMマンガンに相当する実施例24のナノ構造の溶液100μl(Si約21μgおよびMn7μgを含有)を各カラムに通液した。
4.素通り液:カラムを0.9%NaCl、4×1ml、次いで2×2mlの画分(画分1〜6)で洗浄した。
5.溶出液:結合したSI055を1M NaCl 4×1ml(画分7〜10)で溶出した。
6.素通り画分および溶出液画分のMnおよびSi含有量をICP−AESで分析した。
【0304】
結果
免疫前カラムと免疫カラムの両方で、素通り液中にSI055が実質的に全部検出された。カラム間で、溶出液中に検出されたナノ構造の量の差異はなかった。
【0305】
免疫プロトコル中、ウサギに刺激または他の問題の徴候は認められなかった。
【0306】
免疫前カラムおよび免疫カラムからの素通り液および溶出液中のナノ構造の回収率を表4に示す。
【0307】
免疫前カラムおよび免疫カラムからの画分1〜10中のSI055の回収をそれぞれ
図4aおよび
図4bに示す。
【0308】
結論
この実施例から、非常にロバストな免疫プロトコルにもかかわらず、ウサギでナノ構造に対する免疫反応が生じないことが分かった。この結果は、ナノ構造が生体不活性であることを実証している。