(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103705
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】変流器の二次側開放防止装置
(51)【国際特許分類】
G01R 11/00 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
G01R11/00 H
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-142365(P2013-142365)
(22)【出願日】2013年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-14554(P2015-14554A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】定形 貴志
(72)【発明者】
【氏名】寺田 修
(72)【発明者】
【氏名】中村 庫ノ助
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−288775(JP,A)
【文献】
特開昭62−003667(JP,A)
【文献】
特開昭62−273459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 11/00−11/66
G01R 35/04
H01R 43/00−43/28
H01F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線路に各一次側端子がそれぞれ接続される計器用変圧器及び変流器を備え、前記計器用変圧器及び変流器の各二次側端子が二次側端子部に配置された変成器と、
前記変成器に取り付けた際に前記計器用変圧器及び変流器の各二次側端子にそれぞれ接続される電圧入力端子及び電流入力端子を有し、これらの電圧入力端子及び電流入力端子を介して入力された電圧及び電流から前記配電線路の電力量を測定可能であって、前記変成器に対して着脱可能に形成された電力量計と、によって構成され、
前記変成器と前記電力量計とを分離した際に、前記変成器内の短絡片を動作させて前記変流器の二次側端子間を短絡する機能を備えた、変流器の二次側開放防止装置において、
前記電力量計は、前記変成器に取り付けた際に前記二次側端子部の端面S2に接合する端面S1と、前記端面S1から前記短絡片方向に向かって長さLbを有する短絡片駆動部と、前記変流器の二次側端子に向かって長さLcを有する前記電流入力端子と、を備え、
前記変成器は、前記端面S2から挿入された前記短絡片駆動部の挿入長さがLsを超えたときに前記短絡片が前記短絡片駆動部により駆動されて前記変流器の二次側端子間を開放するように形成されると共に、
前記の長さLb,Lc,Lsが、
0<Lb−Ls<Lc (Lb>0,Lc>0)
という関係を満たすことを特徴とする変流器の二次側開放防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線路の電圧及び電流を変成器(VCT)により検出して電力量を測定するシステムにおいて、変成器と電力量計とを分離した際に変成器内の変流器の二次側端子が開放されるのを防止する、変流器の二次側開放防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、配電線路の電力量を電力量計によって測定するシステムの構成図である。
図8において、配電線路(図示せず)には変成器10の一次側端子11,12が接続され、その二次側端子部13に、配線ケーブル20を介して電力量計30の入力端子部31が接続される。作業員Mは、電力量計30の表示部を目視により確認して電力量の検針を行っている。
【0003】
しかし、この使用形態では、検針の便宜上、電力量計30が変成器10から離れた場所に設置されることが多く、配線ケーブル20が長くなりやすい。このため、配線ケーブル20の電圧降下によって電力量計30に入力される電圧、電流に誤差が生じ、結果的に電力量の測定値に誤差が生じるおそれがあった。従って、電力量の測定値に誤差を生じさせないように、変成器10内での電力損失を低減するために変成器10は大型になっていた。
【0004】
一方、変成器10及び電力量計30は、法令等により定められた使用期限が到来する前に交換する必要があり、これらの交換時に変成器10と電力量計30とを分離する作業は、配電線路を活線状態のままで行えることが望ましい。
ここで、
図9は、変成器10を構成するVT(計器用変圧器)14及びCT(変流器)15a,15bの回路図であり、VT14及びCT15a,15bの二次側端子部13に、前記配線ケーブル20を介して電力量計30の入力端子部31が接続されている。
【0005】
周知のように、変成器10が活線状態のままで配線ケーブル20を取り外してCT15a,15bの二次側端子(二次側巻線)を開放すると、二次側端子間に高電圧が発生してアークが生じ、予期せぬ事故を招くおそれがある。
このようなCTの二次側開放を防止するために、従来から様々な技術が提案されている。
【0006】
例えば、
図10は、後述する特許文献1に記載された交流電流入力部用保護装置の主要部を示す断面図であり、
図11は使用状態を示す説明図である。
この保護装置では、CTの二次側端子に予め接続されたソケット55(
図11参照)に、交流電流入力装置としての測定器50を装着することにより、CTの二次側電流を測定器50の入力端子から取り込んで交流電流値や高調波を測定している。
【0007】
図10,
図11において、51は測定器50に固定されたステム、51aはその操作端部である。60はソケット55に固定された保護装置であり、保護装置60の内部にはCTの二次側端子に導通している導体61a,61bが配置されている。また、保護装置60の内部には、両端に接点部63a,63bを有する短絡用導体63がコイルバネ62により支持されている。なお、63cは短絡用導体63の中央部に一体的に固着されたアクチュエータである。
【0008】
測定器50がソケット55に装着されている状態では、
図10(a)に示すように、ステム51の操作端部51aがアクチュエータ63cを介して短絡用導体63をコイルバネ62側に押し付けている。このため、短絡用導体63の接点部63a,63bは導体61a,61bから離れており、導体61a,61b間ひいてはCTの二次側端子間が短絡されることはない。従って、測定器50の入力端子にはソケット55を介してCTの二次側電流が入力され、所定の測定動作が実行される。
【0009】
一方、交換等のために測定器50をソケット55から取り外すと、
図10(b)に示すように、ステム51が保護装置60から離れ、コイルバネ62の復元力によって短絡用導体63が移動するため、接点部63a,63bが導体61a,61bにそれぞれ接続されて導体61a,61b間が短絡される。これによりCTの二次側端子間も短絡されるので、二次側端子間に高電圧やアークが発生するのを防止することができる。
【0010】
また、特許文献2には、他の従来技術として、CTの二次側と測定器との間に一対のダイオードからなる保護装置を接続することが記載されている。
すなわち、
図12において、70は測定対象の配電線路、71はCT、80は保護装置、90は測定器、91は補助CTであり、保護装置80は、CT71の二次側端子間に互いに逆並列接続されたダイオード81,82によって構成されている。
【0011】
この従来技術において、測定器90が接続されている状態では保護装置80のダイオード81,82にはその順方向降下電圧未満の電圧しか印加されないので、ダイオード81,82に電流が流れず、測定器90は通常の測定動作を実行する。
しかし、測定器90を取り外すとCT71の二次側電圧が上昇するためダイオード81,82が導通し、配電線路70の交流電圧の半サイクルごとに、ダイオード81,82に交互に電流が流れる。その結果、CT71の二次側端子間電圧はダイオード81,82の順方向降下電圧に抑えられることになり、CT71の二次側端子間に高電圧が発生するおそれはない。
なお、
図12に示す保護装置80と同一のものは、特許文献1の
図5,
図6にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−288775号公報(段落[0018]〜[0023]、
図4〜
図6等)
【特許文献2】特開平9-168231号公報(段落[0003],[0004]、
図7等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載された従来技術は、測定器50に一体化されたステム51の動きに短絡用導体63を連動させ、CTの二次側を開放または短絡させる機構であり、測定器50側の電流入力端子とソケット55内のCT二次側端子との接続構造については言及されていない。
また、測定器50をソケット55から取り外して測定器50側の電流入力端子とCT二次側端子とが離れた状態では、確実に
図10(b)の状態になっていることが必要であるが、部品の寸法精度の誤差やコイルバネ62の特性の誤差により、測定器50側の電流入力端子とCT二次側端子とが離れた段階でも導体61a,61b間が短絡用導体63によって完全に短絡されず、結果としてCTの二次側端子間に高電圧が発生する場合がある。
【0014】
また、特許文献2に記載された従来技術は構成が簡単である反面、測定器90が取り外された状態でCT71の二次側に大電流が長期間流れると、保護装置80内のダイオード81,82が過熱して寿命が低下し、最悪の場合にはダイオード81,82が焼損するおそれがある。
【0015】
そこで、本発明の解決課題は、電力量計と変成器とを分離した状態でCTの二次側端子間が確実に短絡されるようにして、安全性及び信頼性を高めた変流器の二次側開放防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、配電線路に各一次側端子がそれぞれ接続される計器用変圧器及び変流器を備え、前記計器用変圧器及び変流器の各二次側端子が二次側端子部に配置された変成器と、
前記変成器に取り付けた際に前記計器用変圧器及び変流器の各二次側端子にそれぞれ接続される電圧入力端子及び電流入力端子を有し、これらの電圧入力端子及び電流入力端子を介して入力された電圧及び電流から前記配電線路の電力量を測定可能であって、前記変成器に対して着脱可能に形成された電力量計と、によって構成され、
前記変成器と前記電力量計とを分離した際に、前記変成器内の短絡片を動作させて前記変流器の二次側端子間を短絡する機能を備えた、変流器の二次側開放防止装置において、
前記電力量計は、前記変成器に取り付けた際に前記二次側端子部の端面S
2に接合する端面S
1と、前記端面S
1から前記短絡片方向に向かって長さL
bを有する短絡片駆動部と、前記変流器の二次側端子に向かって長さL
cを有する前記電流入力端子と、を備え、
前記変成器は、前記端面S
2から挿入された前記短絡片駆動部の挿入長さがL
sを超えたときに前記短絡片が前記短絡片駆動部により駆動されて前記変流器の二次側端子間を開放するように形成されると共に、
前記の長さL
b,L
c,L
sが、
0<Lb−Ls<Lc (Lb>0,Lc>0)という関係を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電力量計や変成器を交換するために両者を分離した際にCTの二次側端子間を確実に短絡させ、高電圧やアークが発生するのを防止して安全性及び信頼性を高めることができる。また、配線ケーブルの長さによる電力量の測定誤差要因がないため、変成器を従来よりも小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の使用状態を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態の基本的な構成を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態の基本的な構成を示す概念図である。
【
図5】本発明の実施形態における各部の寸法関係の説明図である。
【
図6】本発明の実施形態における各部の寸法関係の説明図である。
【
図7】本発明の実施形態における各部の寸法関係の説明図である。
【
図8】配電線路の電力量を測定するシステムの構成図である。
【
図9】
図8における変成器の主要部の回路図である。
【
図10】特許文献1に記載された従来技術の主要部の断面図である。
【
図12】特許文献2に記載された従来技術を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、
図1は本発明の実施形態の使用状態を示す説明図である。
図1において、10AはVT及びCTからなる変成器、11,12は図示されていない配電線路に接続される一次側端子である。また、16は変成器10Aの二次側端子部であり、VT及びCTの二次側端子が内蔵されている。
【0020】
100は、変成器10Aの二次側端子部16に対して矢印方向に着脱可能な電力量計であり、VT及びCTの各二次側端子にそれぞれ接続される電圧入力端子及び電流入力端子を備えている。
電力量計100は、変成器10Aの二次側端子部16から入力された電圧及び電流に基づいて電力量を演算し、この電力量を記憶、表示、または外部に無線・有線通信にて伝送する機能を備えているが、便宜上、これらの機能を実現するための具体的構成は説明を省略する。
【0021】
次に、
図2〜
図4は、この実施形態の基本的な構成を示す説明図である。
図2において、電力量計100は、変成器10AのVT及びCTの二次側端子16aに接続される入力端子(電圧入力端子及び電流入力端子)101と、後述する二次側開放・短絡部40内の駆動部41及び短絡片17を駆動するための短絡片駆動部102と、を備えている。なお、103,104は、電力量計100を二次側端子部16に固定するためのボルト等からなる固定部である。
【0022】
変成器10A側の二次側端子16aは、例えば
図9における二次側端子部13のようにVT14及びCT15a,15bによる合計7つの端子からなり、このうちCTの二次側端子は4つのみである。ここで、
図2に示されている7つの二次側端子16aのうち、何れか4つの端子(例えば右側の4つの端子)がCTの二次側端子であれば良く、これらの二次側端子に対応する位置にある電力量計100側の4つの入力端子101が電流入力端子であれば良い。
【0023】
変成器10Aの内部には、二次側開放・短絡部40が配置されている。この二次側開放・短絡部40は、
図10に示した構造とほぼ同様に、短絡片駆動部102により駆動される駆動部41と、この駆動部41に一体的に固定されて接点18a,18b間を開放または短絡する短絡片17と、駆動部41及び短絡片17を常時、短絡片駆動部102方向に付勢するコイルバネ42と、を備えている。
【0024】
なお、
図3は、
図2に示した機能を例えばマイクロスイッチによって実現する場合を想定した概念図である。
図3において、19は短絡片駆動部102に連動するアクチュエータであり、このアクチュエータ19の動作によって短絡片17が駆動され、接点18a,18b間を開放または短絡するように構成されている。
また、
図4は、
図2及び
図3における変成器10A内のCTに関連する部分の回路図であり、
図9と同様に15a,15bはCT、17a,17bは
図2及び
図3の短絡片17に相当する短絡片である。
【0025】
ここで、本実施形態の基本的動作を、
図2を参照しつつ説明する。
電力量計100が変成器10Aに取り付けられている状態では、
図2(a)に示すごとく、変成器10A側の二次側端子16aと電力量計100の入力端子101とが接続されており、変成器10Aの二次側から出力される電圧及び電流が電力量計100に入力されている。このとき、短絡片駆動部102はコイルバネ42の復元力に抗して駆動部41及び短絡片17をコイルバネ42方向に押し付けており、これによって接点18a,18b間は開放されている。従って、変成器10AのCT(
図4における15a,15b)の二次側は開放されている。
【0026】
電力量計100を変成器10Aから取り外した状態では、
図2(b)に示すごとく、電力量計100の短絡片駆動部102が、二次側端子部16から離れる。このため、駆動部41及び短絡片17がコイルバネ42の復元力によって復帰し、短絡片17が接点18a,18b間を短絡する。すなわち、
図4におけるCT15a,15bの二次側巻線が短絡片17a,17bによってそれぞれ短絡されることになり、配電線路が活線状態であってもCT15a,15bの二次側端子間に高電圧やアークが発生することはない。
【0027】
本実施形態の基本的動作は上記の通りであるが、本実施形態では、電力量計100と変成器10Aとを分離した時点でCTの二次側端子が確実に短絡されるように、各部の寸法を以下のように設定している。
図5において、S
1は電力量計100の入力端子101及び短絡片駆動部102が植設されている端面、S
2は変成器10Aの二次側端子部16の電力量計100側の端面であり、電力量計100を二次側端子部16に装着して入力端子101が二次側端子16aに接続された状態で、両端面S
1,S
2が接合されるものとする。
【0028】
また、L
bは端面S
1から短絡片17方向に向かう短絡片駆動部102の長さ、L
cは端面S
1から二次側端子16aに向かう入力端子101の長さ、L
sは短絡片17が接点18a,18b間を短絡しているときの、駆動部41先端部の端面S
2からの長さ(すなわち、端面S
2から挿入された短絡片駆動部102の挿入長さがL
sを超えたときに短絡片17が短絡片駆動部102により駆動されてCTの二次側端子間を開放するような長さ)である。これらの長さL
b,L
c,L
sは、
図5における矢印方向を正の値とする。
なお、入力端子101の長さL
cは、電力量計100を二次側端子部16に装着した際に入力端子101が二次側端子16aに確実に接続されるような長さであることは言うまでもない。
【0029】
本実施形態では、L
b,L
c,L
sの寸法関係を以下の数式1〜3のように設定している。
[数式1]
L
b>0
[数式2]
Lc>0
[数式3]
0<Lb−Ls<Lc
【0030】
L
b,L
c,L
sの寸法関係を上記のように設定することにより、電力量計100の入力端子101が変成器10A側の二次側端子16aから離れる以前に短絡片駆動部102の先端部が駆動部41の先端部から離れ、短絡片17が接点18a,18b間を短絡する。言い換えれば、常に、短絡片17が接点18a,18b間を短絡した後で入力端子101が二次側端子16aから離れるようになり、電力量計100と変成器10Aとを分離した際にCTの二次側端子間が開放されることはない。
【0031】
なお、
図6,
図7は、長さL
b,L
sを
図5とは異ならせた場合を示しており、これらの場合についても前述した数式1〜数式3の関係を保つことにより、常に、短絡片17が接点18a,18b間を短絡した後で入力端子101が二次側端子16aから離れるため、電力量計100と変成器10Aとを分離した際にCTの二次側端子間が開放されることはない。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、特許文献1等に記載された従来技術に比べて、電力量計100と変成器10Aとを分離した状態でCTの二次側端子間を確実に短絡することができ、CTの二次側端子間に高電圧やアークが発生するのを防止して安全性及び信頼性を高めることができる。また、特許文献2のように、保護回路を構成するダイオードが過熱するおそれもないものである。
【符号の説明】
【0033】
10A:変成器(VCT)
11,12:一次側端子
15a,15b:CT
16:二次側端子部
16a:二次側端子
17,17a,17b:短絡片
18a,18b:接点
19:アクチュエータ
40:二次側開放・短絡部
41:駆動部
42:コイルバネ
100:電力量計
101:入力端子
102:短絡片駆動部
103,104:固定部
S
1,S
2:端面