特許第6103711号(P6103711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103711
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】歪検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/22 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   G01L1/22 M
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-188090(P2013-188090)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-55518(P2015-55518A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平野 伸児
(72)【発明者】
【氏名】角川 修
(72)【発明者】
【氏名】百田 哲隆
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−267803(JP,A)
【文献】 特開2001−331271(JP,A)
【文献】 特開2008−139136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/18, 1/22
G01L 5/16
G06F 3/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力により弾性変形可能な弾性変形部材と、前記弾性変形部材の変形部に貼着された可撓性基板と、前記可撓性基板に配置され、前記弾性変形部材の変形に伴う撓みによって伸縮を生じ、該伸縮による歪で抵抗値が変化する抵抗素子と、前記抵抗素子に接続された配線と、前記抵抗素子の抵抗値を調整するトリミング部と、を備えた歪検出装置であって、
前記配線は前記抵抗素子の前記伸縮の方向の両端にそれぞれ配置された第1導電パターンと第2導電パターンとを有し、
前記抵抗素子は、歪素子材料パターンからなり、前記歪素子材料パターンの一部が除去されてなる前記トリミング部の寸法によって前記抵抗値が調整されるとともに、
前記トリミング部は、前記第1導電パターンから前記第2導電パターンに亘って設けられ
前記歪素子材料パターンは、前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンに重なるように設けられた重畳部を有し、
前記トリミング部は、前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンの少なくとも一部に重なった形状であることを特徴とする歪検出装置。
【請求項2】
前記トリミング部は、前記歪素子材料パターンが略矩形状に除去された形状を有しているとともに、残っている前記歪素子材料パターンの前記伸縮の方向に沿った外縁を平滑にしていることを特徴とする請求項1に記載の歪検出装置。
【請求項3】
前記抵抗素子は、前記伸縮の方向に沿った対向する一対の外縁が、前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとに挟まれた領域の全域に亘って、前記伸縮の方向に平行であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歪検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の歪検出装置を製造する製造方法であって、
前記トリミング部は、レーザを前記伸縮の方向に沿って移動させながら前記歪素子材料パターンに照射させて形成されたものであることを特徴とする歪検出装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の操作に用いられる歪検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の操作に用いられる歪検出装置が知られている。歪検出装置は、例えば可搬型のパーソナルコンピュータ等のポインティング入力装置として用いられている。
【0003】
歪検出装置には、基板の撓みを抵抗変化によって検出する応力センサが用いられている(例えば、特許文献1)。図9は、特許文献1に記載の抵抗素子を示す平面図であり、図9(a)はトリミング穴101を有する抵抗素子105の平面図であり、図9(b)はトリミング用切欠き部107を有する抵抗素子106の平面図である。図10は、特許文献1に記載の応力センサ100の説明図であり、図10(a)は、従来の応力センサ100の一例の底面図であり、図10(b)は、応力センサ100の信号入出力の様子の一例を示す説明図である。
【0004】
抵抗素子は、図9に示すように、対となる電極102間に抵抗体103が配置され、抵抗体103が円形又はそれに類似した輪郭形状のトリミング穴101(図9(a))、円弧状又はそれに類似した輪郭形状のトリミング用切欠き部107(図9(b))を有する。応力センサ100は、図10(a)に示すように、4個の抵抗素子105で構成され、操作部(ポスト)108の中央から対称な位置に配置され、図10(b)に示すように接続される。
【0005】
4個の抵抗素子は、抵抗値が低すぎると出力を得るための消費電流が大きくなりすぎ、抵抗値が高すぎると出力のノイズが大きくなりやすいので、適切な抵抗値に設定される。応力が付与されたときの抵抗値変化が大きい材料で、ほぼ同じ抵抗値に揃えられていることが望ましい。このため、4個の抵抗素子は、抵抗値を揃えるためにトリミングされている。
【0006】
図9に示す抵抗素子において、抵抗値調整のためのトリミング穴101又はトリミング用切欠き部107は、通常のトリミング溝の幅に比して明らかに大きな径の円等からなる。このため、通常のトリミング溝周辺に発生していたマイクロクラックの存在による発生するノイズを低減できるとしている。
【0007】
さらに、図9に示す抵抗素子において、トリミング穴101又はトリミング用切欠き部107の存在により、電流密度が高くなる領域は、小さな応力付与によっても大きく抵抗値変化する。このため、この領域をポインティング入力装置の撓み領域(図10(a)に点線で示す操作部108の底面の輪郭近傍)に一致させれば、操作部108の操作により付与された応力によって、抵抗素子105の抵抗値が大きく変化し、S/N比を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−191294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、操作部108と抵抗素子105とを別部材で形成して一体に製造する場合には、製造時の位置合わせずれによって、操作部108の操作により付与された応力に対する出力(感度)がばらついてしまうという問題があった。トリミング穴101又はトリミング用切欠き部107の領域は、電流密度が高くなる特異点であり、他の領域と感度が異なっている。このため、操作部108の撓み位置と抵抗素子105のトリミング穴101の領域の配置との位置ずれを生じると、応力センサ100の感度は低下してしまう。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、特に、感度ばらつきが小さく、高感度の歪検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の歪検出装置は、外力により弾性変形可能な弾性変形部材と、前記弾性変形部材の変形部に貼着された可撓性基板と、前記可撓性基板に配置され、前記弾性変形部材の変形に伴う撓みによって伸縮を生じ、該伸縮による歪で抵抗値が変化する抵抗素子と、前記抵抗素子に接続された配線と、前記抵抗素子の抵抗値を調整するトリミング部と、を備えた歪検出装置であって、前記配線は前記抵抗素子の前記伸縮の方向の両端にそれぞれ配置された第1導電パターンと第2導電パターンとを有し、前記抵抗素子は、歪素子材料パターンからなり、前記歪素子材料パターンの一部が除去されてなる前記トリミング部の寸法によって前記抵抗値が調整されるとともに、前記トリミング部は、前記第1導電パターンから前記第2導電パターンに亘って設けられ、前記歪素子材料パターンは、前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンに重なるように設けられた重畳部を有し、前記トリミング部は、前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンの少なくとも一部に重なった形状であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、トリミング部が第1導電パターンから第2導電パターンに亘って設けられているので、伸縮方向に歪素子材料パターンの特異点をもたない。そのため、弾性変形部材の撓み領域と抵抗素子との位置合わせずれを生じても、感度の低下が少なく、感度が安定する。これにより、感度ばらつきが小さく、高感度にすることができる。また、経年変化によりトリミング部の端部から抵抗素子にクラックが発生することがあるが、クラックは導電パターン上に位置することになるので、抵抗値の変化が生じない。そのため、経年変化による特性の変化を抑制することができる。したがって、感度ばらつきが小さく、高感度の歪検出装置を得ることができる。
【0013】
また、本発明の歪検出装置において、前記トリミング部は、前記歪素子材料パターンが略矩形状に除去された形状を有しているとともに、残っている前記歪素子材料パターンの前記伸縮の方向に沿った外縁を平滑にしていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、抵抗素子の歪素子材料パターンの外縁が平滑化されているので、感度ばらつきを抑制することができるとともに、クラックの発生を抑えることができる。
【0015】
また、本発明の歪検出装置において、前記抵抗素子は、前記伸縮の方向に沿った対向する一対の外縁が、前記第1導電パターンと前記第2導電パターンとに挟まれた領域の全域に亘って、前記伸縮の方向に平行であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、抵抗素子の幅が均一であるため、感度ばらつきを抑制することができる。
【0017】
また、本発明の歪検出装置において、前記トリミング部は、レーザを前記伸縮の方向に沿って移動させながら前記歪素子材料パターンに照射させて形成されたものであることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、レーザを抵抗素子の伸縮方向と垂直な方向に沿って移動させながらレーザトリミングを行った場合に比べて、歪素子材料パターンの外縁を滑らかに形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トリミング部が第1導電パターンから第2導電パターンに亘って設けられているので、伸縮方向に歪素子材料パターンの特異点をもたない。そのため、傾動操作される弾性変形部材の撓み領域と抵抗素子との位置合わせずれを生じても、感度の低下が少なく、感度が安定する。これにより、感度ばらつきが小さく、高感度にすることができる。したがって、感度ばらつきが小さく、高感度の歪検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態の歪検出装置を示す斜視図である。
図2】ポインティング入力装置として使用される歪検出装置を示す分解斜視図である。
図3】可撓性基板を示す底面図であり、(a)は抵抗素子と配線との配置を示す底面図であり、(b)は(a)のB部拡大図である。
図4】弾性変形部材の変形に伴う抵抗素子の伸縮状態を説明する模式図であり、(a)は初期状態、(b)は水平方向の変形に伴う抵抗素子の伸縮状態を説明する模式図であり、(c)は垂直方向の変形に伴う抵抗素子の伸縮状態を説明する模式図である。
図5】歪検出装置の検出原理を示す基本回路図である。
図6】歪検出装置の製造工程における歪素子材料パターン形成工程を示す模式図である。
図7】歪検出装置の製造工程におけるトリミング工程を示す模式図であり、(a)は導電パターン間をレーザ照射しているタイミングでトリミングを終了させたときの模式図であり、(b)は導電パターン上をレーザ照射しているタイミングでトリミングを終了させたときの模式図である。
図8】弾性変形部材の撓み領域と抵抗素子との位置合わせずれを生じたときの説明図である。
図9】従来の抵抗素子を示す平面図であり、(a)はトリミング穴を有する抵抗素子の平面図であり、(b)はトリミング用切欠き部を有する抵抗素子の平面図である。
図10】従来の応力センサの説明図であり、(a)は応力センサの一例の底面図であり、(b)は応力センサの信号入出力の様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、分かりやすいように、図面は寸法を適宜変更している。
【0024】
図1は、本発明の実施形態の歪検出装置1を示す斜視図である。図2は、ポインティング入力装置10として使用される歪検出装置1を示す分解斜視図である。図3は、可撓性基板2を示す底面図であり、図3(a)は抵抗素子20と配線30との配置を示す底面図であり、図3(b)は図3(a)のB部拡大図である。図4は、弾性変形部材5の変形に伴う抵抗素子20の伸縮状態を説明する模式図であり、図4(a)は初期状態、図4(b)は水平方向の変形に伴う抵抗素子20の伸縮状態を説明する模式図であり、図4(c)は垂直方向の変形に伴う抵抗素子20の伸縮状態を説明する模式図である。図5は、歪検出装置1の検出原理を示す基本回路図である。図6は、歪検出装置1の製造工程における歪素子材料パターン形成工程を示す模式図である。図7は、歪検出装置1の製造工程におけるトリミング工程を示す模式図であり、図7(a)は導電パターン間をレーザ照射しているタイミングでトリミングを終了させたときの模式図であり、図7(b)は導電パターン上をレーザ照射しているタイミングでトリミングを終了させたときの模式図である。図8は、弾性変形部材5の撓み領域52aと抵抗素子20との位置合わせずれを生じたときの説明図である。
【0025】
本実施形態の歪検出装置1は、図1に示すように、弾性変形部材5と、可撓性基板2と、が一体に貼り付けられて構成されている。なお、説明を分かりやすくするため、ここでは、図1に示すZ1側を上方側、Z2側を下方側とする。
【0026】
歪検出装置1は、図2に示すように、操作部材6が弾性変形部材5に嵌着され、弾性変形部材5の支持部53が固定板7に把持され、ポインティング入力装置10を構成する。ポインティング入力装置10は、操作部材6が操作者によって入力操作され、表示画面における座標入力等に使用される。
【0027】
ポインティング入力装置10に用いられている操作部材6はゴム系の成形材、固定板7は金属板である。また、図2に示していないが、ポインティング入力装置10は入力回路を備え、歪検出装置1からの電気信号を入力操作信号に変換している。
【0028】
歪検出装置1は、以下に説明する部材で構成されている。
【0029】
弾性変形部材5は、樹脂を成形したものであり、図1図2に示すように、上方側(Z1側)に突出する操作部51と、操作部51を取り囲むように延設された変形部52と、変形部52から延出した支持部53と、を有する。支持部53は、固定板7に支持されるとともに、カシメによって固定される形状になっている。支持部53が固定された弾性変形部材5は、操作部51が外力により押圧されたときに変形部52が弾性変形可能である。
【0030】
可撓性基板2は、ポリイミド樹脂からなり、厚さは約0.1mmである。また、可撓性基板2の下方側(Z2側)の片面には、図2及び図3(a)に示すように、4個の抵抗素子20と、それぞれに接続された配線30と、が配置されている。
【0031】
配線30は、導電性ペーストを印刷して形成したものである。より具体的には、溶融状態のバインダー樹脂に粉状の銀フィラーが含まれた銀の導電性ペーストを用い、スクリーン印刷法でパターンを印刷し、乾燥硬化させまたは加熱硬化させたものである。配線30は、第1導電パターン31と、第2導電パターン32と、測定用電極33と、それらを接続する配線部34と、を有する。なお、配線30は、これに限らず、例えば銅箔を所望のパターンを残すようにエッチング加工したものであってもよい。
【0032】
抵抗素子20は、配線30の第1導電パターン31と第2導電パターン32とに接続されるように歪素子材料を印刷して、抵抗値を所望の範囲内になるように調整されたものである。
【0033】
可撓性基板2は、弾性変形部材5の変形部52の底面側(Z2側)に貼着され、4個の抵抗素子20は、それぞれ、図3(a)に示すように、平面視で操作部51を中心としたX1側、X2側、Y1側、Y2側に配置されている。4個の抵抗素子20は、配線30で接続されている。弾性変形部材5に貼着された可撓性基板2は、操作部51を中心とした変形部52の撓み領域52aの変形に対応して撓み変形することとなる。このため、可撓性基板2に配置された4個の抵抗素子20には、操作部51の中心を原点方向とした伸び縮みを伴う歪を生じる。この伸び縮みの方向を、以下の説明において、伸縮方向と表現する。
【0034】
より具体的に、4個の抵抗素子20のうち1個について説明する。
【0035】
図3(b)に示すように、抵抗素子20の両端には、配線30からなる第1導電パターン31と第2導電パターン32とが重畳して配置されている。抵抗素子20は、歪素子材料パターン21からなり、歪素子材料パターン21の一部が除去されてなるトリミング部25の幅方向の寸法によって抵抗値が調整されるとともに、トリミング部25は、長さ方向が第1導電パターン31から第2導電パターン32に亘って設けられている。
【0036】
第1導電パターン31は可撓性基板2の撓み変形の伸縮方向の一方側(図3(b)ではX1側)に設けられ、第2導電パターン32は他方側(図3(b)ではX2側)に設けられている。弾性変形部材5に貼り付けられた状態から見ると、第1導電パターン31は操作部51の中心寄りに位置し、第2導電パターン32は径方向の外周寄りに位置している。図4(b)に示すように、弾性変形部材5の撓み領域52aの変形に対応して、可撓性基板2が撓み変形して、第1導電パターン31と第2導電パターン32との間隔が伸び縮みする。抵抗素子20は、この伸縮方向に沿って歪素子材料パターン21が図3(b)に示すように配置されている。
【0037】
歪素子材料パターン21は、図3(b)に示すように第1導電パターン31に重なる重畳部21eと、第2導電パターン32に重なる重畳部21fと、第1導電パターン31と第2導電パターン32とに挟まれた領域に設けられた抵抗部21gと、を有している。抵抗部21gは、伸縮の方向に沿った歪素子材料パターン21の対向する一対の外縁21a、21bが、第1導電パターン31と第2導電パターン32とに挟まれた領域の全域に亘って、伸縮の方向に平行である。伸縮の方向に垂直な幅方向には、重畳部21e及び重畳部21fの幅に比べて、抵抗部21gの幅がトリミング部25の幅だけ細くなっている。トリミング部25の端部25a、25bは、重畳部21e、21fの外縁の一部である。
【0038】
トリミング部25は、第1導電パターン31と第2導電パターン32とに挟まれた領域のうち、歪素子材料パターン21の外縁21aと端部25a、25bとで囲まれた矩形領域である。トリミング部25は、第1導電パターン31及び第2導電パターン32の一部に重なった形状である。後述するように、いったん形成された歪素子材料パターン21の一部領域が抵抗素子20(抵抗部21g)を構成し、抵抗値の調整後に抵抗素子20(抵抗部21g)として残されなかった領域がトリミング部25である。トリミング部25は、歪素子材料パターン21が略矩形状に除去された形状を有しているとともに、残っている歪素子材料パターン21の伸縮の方向に沿った外縁21aを平滑にしている。
【0039】
図4(a)に示すように、外力が付与されていない初期状態においては、抵抗素子20が配置されている可撓性基板2は撓み変形していない。図4(b)に示すように、操作部51に水平方向の外力が付与されると、弾性変形部材5の変形部52の撓み領域52の変形に対応して、この方向に第1導電パターン31と第2導電パターン32との間隔を有する抵抗素子20は、第1導電パターン31と第2導電パターン32との間隔が伸び縮みする。また、図4(c)に示すように、垂直方向の外力が付与されると、弾性変形部材5の変形部52の撓み領域52の変形に対応して、抵抗素子20は、第1導電パターン31と第2導電パターン32との間隔が伸び縮みする。
【0040】
本実施形態の歪検出装置1は、図5に示す基本回路で、抵抗素子20の抵抗値に対応した出力Xout、Yout、Zoutが測定可能である。X方向の歪は出力Xoutの変化として測定される。Y方向の歪は出力Youtの変化として測定される。Z方向の歪は、固定抵抗Zoを介したときの出力Zoutの変化として測定される。ポインティング入力装置10では、図示しない入力回路によって、出力Xout、Yout、Zoutを測定するとともに、出力Xout、Yout、Zoutを入力操作信号に変換している。
【0041】
抵抗素子20は歪素子材料パターン21からなるので、伸び縮みを伴う歪によって、抵抗値が変化する。長さL、且つ、抵抗値Rの歪素子材料パターンの歪による伸縮変化(ΔL/L)に対する抵抗値変化(ΔR/R)をゲージ率Kとすると、Kが大きな歪素子材料ほど、高感度化に適している。また、破壊しない材料強度を保ちながら、可撓性基板2と弾性変形部材5の変形部52とが変形しやすく、より大きな伸縮変化が得られることが好ましい。本実施形態の歪検出装置1は、このような材料で構成されている。
【0042】
図4に示すように、抵抗素子20が伸び縮みする歪を受けると、それに対応した出力Xout、Yout、Zoutが変化する。抵抗素子20の抵抗値ばらつき及び位置ずれは、感度ばらつきの原因となる。本実施形態の歪検出装置1は、感度ばらつきを抑制する構成とすることによって、高感度化を実現するものである。
【0043】
本実施形態の歪検出装置1は、以下に説明する工程を含む製造工程によって製造することができる。
【0044】
図6に示すように、歪素子材料パターン形成工程において、あらかじめ配線30からなる第1導電パターン31と第2導電パターン32とが形成された可撓性基板2に、歪素子材料パターン21を形成する。このときの歪素子材料パターン21は、外縁21b、21c、21d、及び21hを有する矩形パターンである。第1導電パターン31及び第2導電パターン32は、可撓性基板2が弾性変形部材5に貼着されたときに、弾性変形部材5の変形部52の変形に対応して第1導電パターン31と第2導電パターン32との間隔が伸び縮みする方向になるように配置されている。
【0045】
歪素子材料パターン形成工程の後、図7に示すように、トリミング工程において、配線間の抵抗値が測定され、4個の抵抗素子20の各抵抗値が所定の範囲内の値になるように、歪素子材料パターン21をトリミングする。レーザ照射のスポット径はトリミング部25の大きさに比べて小さく、トリミング部25は、レーザを伸縮の方向に沿って移動させながら、歪素子材料パターン21に照射させて、第1導電パターン31及び第2導電パターン32の一部に重なるように折り返して形成される。可撓性基板2は、ポリイミド樹脂からなり、レーザ照射に対する耐性を備えている。第1導電パターン31及び第2導電パターン32がレーザトリミングされにくい材料であれば、第1導電パターン31及び第2導電パターン32を残して重なっている歪素子材料パターン21をトリミング除去することが可能である。レーザは、第1導電パターン31と第2導電パターン32とに挟まれた領域に照射され、トリミング部25が外縁21aから内側に、図7(a)に示すように形成される。トリミング部25の端部25a、25bは、重畳部21e、21fの外縁に位置する。レーザ照射によるトリミングは、抵抗素子20の抵抗値が所望の範囲内の値で終了するように制御される。
【0046】
なお、図7(b)に示すように、第1導電パターン31又は第2導電パターン32上をレーザ照射しているタイミングで終了させることが、より好ましい。こうすれば、図7(b)に示すように、抵抗素子20は、歪素子材料パターン21の対向する一対の外縁21a、21bが、第1導電パターン31と第2導電パターン32とに挟まれた領域の全域に亘って伸縮の方向に沿って平行である。言い換えれば、抵抗素子20は、第1導電パターン31と第2導電パターン32とに挟まれた領域の全域に亘って同一の幅を有している。また、図7(a)に示すように、第1導電パターン31と第2導電パターン32とに挟まれた領域でレーザ照射を終了したときにおいても、レーザ照射のスポット径が小さいので、外縁21aは伸縮の方向に沿ってほぼ平行であり、実質的に抵抗素子20は同一の幅を有していると見なせる。
【0047】
4個の抵抗素子20は、弾性変形部材5の変形部52の変形に対応して第1導電パターン31と第2導電パターン32との間隔が伸び縮みする方向になるように配置されている。レーザトリミングにおけるレーザ照射の移動方向は、この伸縮の方向に沿った方向に合わせて、4個の抵抗素子20のそれぞれに、設定されている。具体的には、平面視で操作部51を中心としたX1側、X2側に配置される抵抗素子20は、X1−X2方向に沿ってレーザ照射され、平面視で操作部51を中心としたY1側、Y2側に配置される抵抗素子20は、Y1−Y2方向に沿ってレーザ照射される。
【0048】
可撓性基板2は、弾性変形部材5に貼着され、歪検出装置1が完成する。このとき、可撓性基板2の外形に対する抵抗素子20の印刷位置ずれ、弾性変形部材5への貼着位置ずれ等によって、図8に示す事例のように、弾性変形部材5の撓み領域52aと抵抗素子20との位置合わせずれを生じることが多い。なお、図8では、撓み領域52aの位置を仮想の円周ラインで示している。トリミング部25が第1導電パターン31から第2導電パターン32に亘って均一な形状に設けられているので、抵抗素子20はその伸縮方向に歪素子材料パターン21の特異点をもたない。そのため、撓み領域52aと抵抗素子20との位置合わせずれを生じても、従来の特異点を有する抵抗素子に比べて感度の低下が少なく、高感度の歪検出装置1が得られる。また、複数の歪検出装置1を製作したときにも、それぞれが高感度で個体差が少なく、感度が安定する。
【0049】
なお、レーザトリミングは、レーザ照射に伴う熱膨張・収縮のため、トリミングされた境界のパターン外縁にクラックを発生させてしまうことが知られている。レーザを抵抗素子の伸縮方向と垂直な方向に沿って移動させながらレーザトリミングを行った場合には外縁を滑らかにすることが困難であり、クラックの起点となることがあった。本実施形態では、抵抗素子20の歪素子材料パターン21の外縁21aが平滑化されているので、クラックの発生を抑えることができる。また、経年変化によりトリミング部25の端部25aから抵抗素子20にクラックが発生することがあるが、重畳部21e、21fにクラックが発生しても、そのクラックは導電パターン上に位置することになる。そのため、クラックによって抵抗素子20の抵抗値が変化してしまう虞がない。
【0050】
本実施形態では、抵抗素子20の抵抗値が3500Ω程度に設定されている。抵抗素子20の抵抗値は2000Ω以上であれば、消費電流が大きくなりすぎることはない。また、ノイズの影響を抑えるため、抵抗素子20の抵抗値は4000Ω以下であることが好ましい。この範囲の抵抗値に基準抵抗値を設定するとともに、4個の抵抗素子20が基準抵抗値に可能な限り揃っていることが好ましい。
【0051】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0052】
本実施形態の歪検出装置1は、弾性変形部材5の変形に伴う可撓性基板2の撓みによって伸縮を生じ、抵抗値が変化する抵抗素子20と、抵抗素子20の伸縮の方向の両端にそれぞれ配置された第1導電パターン31と第2導電パターン32とを有している。抵抗素子20は、歪素子材料パターン21からなり、歪素子材料パターン21の一部が除去されてなるトリミング部25の寸法によって抵抗値が調整されるとともに、トリミング部25は、第1導電パターン31から第2導電パターン32に亘って設けられている。
【0053】
この構成によれば、トリミング部25が第1導電パターン31から第2導電パターン32に亘って設けられているので、抵抗素子20はその伸縮方向に歪素子材料パターン21の特異点をもたない。そのため、弾性変形部材5の撓み領域と抵抗素子20との位置合わせずれを生じても、感度の低下が少なく、感度が安定する。これにより、感度ばらつきが小さく、高感度にすることができる。したがって、感度ばらつきが小さく、高感度の歪検出装置1を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態の歪検出装置1において、トリミング部25は、歪素子材料パターン21が略矩形状に除去された形状を有しているとともに、残っている歪素子材料パターン21の伸縮の方向に沿った外縁21aを平滑にしている。この構成によれば、抵抗素子20の歪素子材料パターン21の外縁21aが平滑化されているので、感度ばらつきを抑制することができるとともに、クラックの発生を抑えることができる。
【0055】
また、歪素子材料パターン21は、第1導電パターン31及び第2導電パターン32の少なくとも一方の少なくとも一部に重なるように設けられた重畳部21e、21fを有している。トリミング部25は、第1導電パターン31及び第2導電パターン32の少なくとも一方の少なくとも一部に重なった形状である。第1導電パターン31及び第2導電パターン32がレーザトリミングされにくい材料であれば、第1導電パターン31及び第2導電パターン32を残して重なっている歪素子材料パターン21をトリミング除去することが可能である。この構成によれば、経年変化によりトリミング部25の端部25aから抵抗素子20にクラックが発生することがあるが、クラックが発生しても、そのクラックは導電パターン上に位置することになるので、抵抗値の変化が生じることはない。そのため、経年変化による特性の変化を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態の歪検出装置1において、トリミング部25は、レーザを伸縮の方向に沿って移動させながら歪素子材料パターン21に照射させて形成されたものである。この構成によれば、レーザを抵抗素子20の伸縮方向と垂直な方向に沿って移動させながらレーザトリミングを行った場合に比べて、歪素子材料パターン21の外縁を滑らかに形成することができる。
【0057】
本実施形態の歪検出装置1において、抵抗素子20は、伸縮の方向に沿った対向する一対の外縁21a、21bが、第1導電パターン31と第2導電パターン32とに挟まれた領域の全域に亘って、伸縮の方向に平行である。この構成によれば、抵抗素子20の幅が均一であるため、感度ばらつきを抑制することができる。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態に係る歪検出装置1を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらも本発明の技術的範囲に属する。
【0059】
(1)本実施形態において、4個の抵抗素子20は平面視でX1側、X2側、Y1側、Y2側に配置されているが、X軸及びY軸に45度ずらした配置としてもよい。この場合、4個の抵抗素子20の抵抗値変化から、X方向の歪及びY方向の歪が演算されて出力される。こうすれば、回転方向の位置合わせずれに対しても、精度をより高めることができる。なお、トリミング工程におけるレーザは、これに合わせた方向に移動させながら照射される。
【0060】
(2)本実施形態において、Z方向の歪を測定して出力Zoutが得られるように構成されているが、X方向及びY方向の歪検出装置としてもよい。この場合、ポインティング入力装置の入力回路には、固定抵抗Zo及び切り替えスイッチが無くてもよい。
【0061】
(3)本実施形態において、測定用電極33が配線30の途中に配置されているが、配線30の端部に配置してもよい。例えば、入力回路の電気接続用の電極を兼用してもよい。
【0062】
(4)本実施形態において、トリミング部25の端部25a、25bが重畳部21e、21fの外縁の一部として形成されているが、この部分の導電パターンがトリミングされていてもよい。第1導電パターン31及び第2導電パターン32が電気的に低抵抗な状態で配線部34に繋がっていれば、一部がトリミングされていても、歪検出装置の感度は影響されない。
【符号の説明】
【0063】
1 歪検出装置
2 可撓性基板
5 弾性変形部材
6 操作部材
7 固定板
10 ポインティング入力装置
20 抵抗素子
21 歪素子材料パターン
21a、21b 外縁
21e、21f 重畳部
21g 抵抗部
25 トリミング部
25a、25b 端部
30 配線
31 第1導電パターン
32 第2導電パターン
33 測定用電極
34 配線部
51 操作部
52 変形部
52a 撓み領域
53 支持部
図1
図2
図3
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図10