(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印字ユニット(2)を収容する本体ケース(1)と、本体ケース(1)の下部に配置される固定印字体(3)と、固定印字体(3)に装着される差換印(70)とを備えており、
印字ユニット(2)は、年号数字表示用、月数字表示用、および日数字表示用の印字ベルト(24)を含み、これら印字ベルト(24)に設けられた字母ブロックを変更することで任意の日付を押印できる日付印であり、
固定印字体(3)は本体ケース(1)に着脱されて、本体ケース(1)の下部に装着される組付姿勢と、本体ケース(1)から取外された分離姿勢とに姿勢変更でき、
差換印(70)は氏名印字体(71)と、氏名印字体(71)を支持するホルダー(72)とで構成されており、
ホルダー(72)は、固定印字体(3)に設けた差換窓(29)の周囲壁に着脱可能に装着されて、差換印(70)の全体が固定印字体(3)で支持されており、
固定印字体(3)を組付姿勢にした状態における差換印(70)は、全体が本体ケース(1)の内部に収容されて取外し不能に保持されており、
固定印字体(3)を分離姿勢にして、ホルダー(72)が本体ケース(1)の外面の自由空間に露出する状態で、差換印(70)を固定印字体(3)に対して着脱操作することが可能であり、
ホルダー(72)がベース壁(78)と、ベース壁(78)から下向きに突出される複数個の係合脚(79)とを一体に備えており、
係合脚(79)を差換窓(29)の周囲壁に形成した係合穴(91)に差込み係合して、ホルダー(72)が固定印字体(3)に着脱可能に装着してあること特徴とする差換印を備えている日付印。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る日付印においては、固定印字体を日付変更位置までスライド変位させ、その状態で差換印を押し下げ、さらに装着部の外へ傾斜させながらホルダーを装着部から取り外す必要がある。そのため、差換印を交換するときの一連の手順が複雑で、差換印の差換作業に多くの手間がかかる。
【0008】
差換えられた差換印のゴム印字体の印字面の高さを調整する場合には、差換印を本体部の装着位置から分離して調整ねじを調整する作業と、調整後の差換印を本体部に装着し直す作業と、試行捺印を行って調整結果を確認する作業とを行う必要がある。そのため、一回の高さ調整作業で差換印と固定印字体の印字面の高さを一致できる場合はよいが、殆どの場合には各作業を数回繰り返す必要があり、一連の作業に手間がかかってしまう。また、差換印は、その調整ねじを介して上方移動が規制してあるものの、下方移動は規制されていない。さらに、ホルダーの一部が、常時、外フレームの外面に露出している。そのため、使用途中に、外フレームの外面に露出するホルダーの一部が他物と衝突して、差換印のゴム印字体が動いてしまい印字文字がにじむおそれがある。
【0009】
差換印の着脱や、印字面の高さ調整に手間がかかるのは、差換印の上下寸法に比べて、固定印字体を日付変更位置へ変位させたときの、本体部と固定印字体の間の上下隙間が小さいからである。また、固定印字体と差換印が個別に本体部に装着されていて、差換印の固定印字体に対する印字面の高さ調整を本体部を介して行なっている点、即ち間接的に差換印の印字面の高さ調整を行なうからである。
【0010】
特許文献1に係る日付印においては、ホルダーに対して回転不能に係合されたナットに調整ねじをねじ込んで、ゴム印字体の印面高さを調整している。そのため、連続して捺印を行うような場合に、捺印時の衝撃を受けて調整ねじが僅かずつずれ動くことがあり、その結果、使用途中に差換印の印字文字が僅かににじみ、あるいはかすれるおそれがあった。
【0011】
差換印を備えている日付印は、殆どの場合特許文献1に開示されている構造の日付印、いわばダイヤル露出形の日付印として構成することが多く、差換印をケース内蔵型の日付印に設けた事例は過去にない。これは、印字ユニットの外面が主ケースとカバー筒で覆われていて、印字ベルトの回転軌跡を避けながら主ケースの内部に差換印を収容するのが困難なためである。しかし、ケース内蔵型の日付印において、固定印字体で捺印担当者の氏名などを印字する場合には、人事異動などにより捺印担当者が変わるごとに、固定印字体のゴム印字体を交換する必要があり、そのためのコストが嵩んでしまう。こうした状況から、ケース内蔵型の日付印を多用する職域において、差換印を備えたケース内蔵型の日付印が待望されている。
【0012】
本発明は上記の知見に基づき提案されたものであって、その目的は、差換印の交換をより少ない手間で簡便に行なうことができる、使い勝手に優れた差換印を備えた日付印を提供することにある。
本発明の目的は、差換印の印字面の高さ調整を的確に行なえ、さらに使用途中に差換印の印字文字がにじんだりかすれたりするのを一掃し、常に適正な印字を行える差換印を備えた日付印を提供することにある。
本発明の目的は、人事異動などに伴う捺印担当者の氏名等を簡単に変更でき、氏名変更等に伴うコストを低減できる差換印を備えたケース内蔵型の日付印を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る日付印は、印字ユニット2を収容する本体ケース1と、本体ケース1の下部に配置される固定印字体3と、固定印字体3に装着される差換印70とを備えている。固定印字体3は本体ケース1に着脱されて、本体ケース1の下部に装着される組付姿勢と、本体ケース1から取外された分離姿勢とに姿勢変更できる。差換印70は氏名印字体71と、氏名印字体71を支持するホルダー72とで構成する。ホルダー72は、固定印字体3に設けた差換窓29の周囲壁に着脱可能に装着されて、差換印70の全体を固定印字体3で支持する。固定印字体3を組付姿勢にした状態における差換印70は、全体が本体ケース1の内部に収容されて取外し不能に保持してある。固定印字体3を分離姿勢にして、ホルダー72が本体ケース1の外面の自由空間に露出する状態で、差換印70を固定印字体3に対して着脱操作することを特徴とする。
【0014】
なお、本発明において、固定印字体3が本体ケース1から分離した状態としては二つの態様があり、そのひとつは、
図13あるいは
図20に示すように固定印字体3が本体ケース1から完全に取外された態様である。また、他のひとつは、
図21に示すように、固定印字体3と本体ケース1が連結軸115を介して連結された状態のままで、固定印字体3が本体ケース1から抜外されて、自由に遊動できる態様である。いずれの場合にも、固定印字体3を分離姿勢にしたとき、ホルダー72が本体ケース1の外面の自由空間に露出する点で共通している。
【0015】
ホルダー72はベース壁78と、ベース壁78から下向きに突出される複数個の係合脚79とを一体に備えている。係合脚79を差換窓29の周囲壁に形成した係合穴91に差込み係合して、ホルダー72を固定印字体3に着脱可能に装着する。
【0016】
氏名印字体71とホルダー72とは、ホルダー72を介して氏名印字体71にねじ込んだ締結ねじ89で連結する。氏名印字体71と締結ねじ89との間、またはホルダー72と締結ねじ89との間に、氏名印字体71の印字面の高さを調整する高さ調整構造を設ける。
【0017】
高さ調整構造は、ホルダー72のベース壁78の上面に形成した基準リブ81と、締結ねじ89に外嵌する状態で基準リブ81に支持される調整筒85と、氏名印字体71の印字台73とホルダー72との間に配置される圧縮コイル形のばね86と、調整筒85の筒壁の下端に形成される一群の調整溝87とで構成する。隣接する各調整溝87の上下高さ位置は徐々に異ならせてある。調整筒85を締結ねじ89の周りに回転操作して、基準リブ81で支持される調整溝87を変更することにより、氏名印字体71の印字面の高さを段階的に調整できるようにする。
【0018】
締結ねじ89は、ホルダー72のベース壁78に形成したビス挿通穴80を介して印字台73のねじボス75にねじ込まれる。
図15に示すように、ビス挿通穴80の対向縁に臨んで設けた一対の基準リブ81で、調整筒85に設けた一対の調整溝87を支持する。
【0019】
調整筒85の周面に規制片88を形成し、ベース壁78の上面に、規制片88を受止めて調整筒85の調整限界を規定するストッパー82を突設する。
【0020】
図2に示すように、本体ケース1は、印字ユニット2を収容する主ケース7と、主ケース7の外面を覆うカバー筒8とで構成して、日付印をケース内蔵型の日付印として構成する。固定印字体3は主ケース7に着脱されて、主ケース7の下部に装着される組付姿勢と、主ケース7から取外された分離姿勢とに姿勢変更できる。固定印字体3を組付姿勢にした状態における差換印70は、全体が主ケース7の内部に収容されて取外し不能に保持されている。固定印字体3を分離姿勢にして、ホルダー72が主ケース7の外面の自由空間に露出する状態で、差換印70を固定印字体3に対して着脱操作する。
【0021】
ケース内蔵型の日付印におけるカバー筒8は、主ケース7の外面を覆う閉じ姿勢と、主ケース7の外面を開放する開放姿勢とに姿勢変更可能に主ケース7で支持されている。主ケース7とカバー筒8との間に、カバー筒8が開放姿勢に操作されるのを規制する錠構造を設ける。
図10に示すように錠構造は、カバー筒8の端壁に設けた締結ボス16に固定される錠ユニット32と、錠ユニット32の操作軸33に固定されるロック体34と、主ケース7の内面に設けられる係合体35とを含む。シリンダー錠で構成した錠ユニット32を鍵36で施錠した状態において、ロック体34が係合体35と係合してカバー筒8が開放姿勢に切換え操作されるのを規制する。
【0022】
固定印字体3は、印面ホルダー26と、印面ホルダー26に固定したゴム印字体27とで構成する。印面ホルダー26に設けた取付爪30を主ケース7の取付穴31に下方から差込み係合して、固定印字体3を主ケース7に装着する。
図11および
図12に示すように、カバー筒8を閉じ姿勢にし、錠ユニット32を鍵36で施錠した状態において、取付爪30の周囲をカバー筒8で覆って、取付爪30と取付穴31との係合状態が解除されるのをカバー筒8で阻止する。
【0023】
図18に示すように本体ケース1は、印字ユニット2を収容するフレーム102と、フレーム102の下端に上下スライド可能に装着される印面台103とを備えていて、日付印がダイヤル露出形の日付印として構成してある。固定印字体3は印面台103に着脱されて、印面台103の下面に装着される組付姿勢と、印面台103から取外された分離姿勢とに姿勢変更できる。固定印字体3を組付姿勢にした状態における差換印70は、全体がフレーム102の内部に収容されて取外し不能に保持されている。
図20に示すように、固定印字体3を分離姿勢にして、ホルダー72がフレーム102の外面の自由空間に露出する状態で、差換印70を固定印字体3に対して着脱操作する。
【0024】
図21に示すように本体ケース1は、印字ユニット2を収容するフレーム102と、フレーム102の下端に装着される印面台103とを備えていて、日付印がダイヤル露出形の日付印として構成してある。固定印字体3は印面台103の下面に固定する。フレーム102と印面台103とは両者を貫通する連結軸115を介して連結する。固定印字体3および印面台103はフレーム102で上下スライド可能に、かつ、連結軸115の回りに揺動可能に支持されて、印面台103がフレーム102の下端に装着される組付姿勢と、印面台103がフレーム102から取外された分離姿勢とに姿勢変更できる。印面台103を組付姿勢にした状態における差換印70は、全体がフレーム102の内部に収容されて取外し不能に保持されている。印面台103を分離姿勢にして、ホルダー72がフレーム102の外面の自由空間に露出する状態で、差換印70を固定印字体3に対して着脱操作する。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、固定印字体3を本体ケース1に対して、組付姿勢と分離姿勢とに姿勢変更できるようにした。また、差換印70を固定印字体3の差換窓29の周囲壁に着脱可能に装着して、差換印70の全体を固定印字体3で支持するようにした。そのうえで、固定印字体3を分離姿勢にして、ホルダー72が本体ケース1の外面の自由空間に露出する状態で、差換印70を固定印字体3に対して着脱操作できるようにした。
【0026】
このように、差換印70を差換窓29の周囲壁に装着し、さらに、ホルダー72が自由空間に露出する状態で差換印70を固定印字体3に着脱すると、本体ケース1に邪魔されることもなく、差換印70を固定印字体3に対して容易に着脱できる。従って、差換印を備えている従来の日付印に比べて、差換印70の交換をより少ない手間で簡便に行なうことができる差換印を備えた日付印を提供できる。また、固定印字体3を組付姿勢にした状態では、差換印70の全体が本体ケース1の内部に収容されて取外し不能に保持されるので、使用途中に差換印70が他物と衝突するなどにより、差換印70の印字文字がにじんだりかすれたりするのを一掃して、常に適正な印字を行うことができる。使用状態における日付印の外観の印象をすっきりさせることができる利点もある。
【0027】
ベース壁78と複数個の係合脚79とでホルダー72を構成し、係合脚79と差換窓29の周囲の係合穴91を係合要素とする着脱構造によれば、係合脚79を係合穴91に差込係合するだけで差換印70を固定印字体3に簡単に固定できる。さらに、係合脚79を操作して係合穴91との係合状態を解除するだけで、差換印70を固定印字体3から簡単に取外すことができる。従って、従来の差換印を備えた日付印に比べて、差換印70の固定印字体3に対する着脱操作を、より少ない手間で簡便に、しかも的確に行うことができる。また、差換印70を固定印字体3に装着した状態では、差換印70が遊動する余地がないので、使用途中に差換印70の印字文字がにじんだりかすれたりするのをさらに確実に防止して、常に適正な印字を行える。
【0028】
氏名印字体71と締結ねじ89との間、あるいはホルダー72と締結ねじ89との間に、氏名印字体71の印字面の高さを調整する高さ調整構造を設けると、差換印70の高さ調整に要する手間を著しく省いて、迅速に高さ調整作業を行なうことができる。高さ調整を行なう場合には、差換印70を固定印字体3に装着した状態のままで直接的に行うことができ、しかも、調整後直ちに試行捺印を行って調整結果を確認することができるので、一連の高さ調整作業をより少ない手間で的確に行なうことができるからである。従来のこの種の日付印においては、調整後の差換印を本体部に装着し直したうえで、試行捺印を行う必要があったが、こうした手間は一切不要となる。なお、ホルダー72と締結ねじ89との間に設けた高さ調整構造は
図15に例示しており、氏名印字体71と締結ねじ89との間に設けた高さ調整構造は
図22に例示している。
【0029】
調整筒85を締結ねじ89の周りに回転操作して、基準リブ81で支持される調整溝87を変更する高さ調整構造によれば、氏名印字体71の印字面の高さを段階的に漸増ないし漸減調整できるので、試行捺印の結果に応じた高さ調整を的確に行なうことができる。また、調整後の調整筒85は、ばね86の付勢力を受けて下向きに押付けられ、筒壁の下端に設けた調整溝87が基準リブ81で受止められているので、調整筒85が適正な調整位置からずれ動くのを確実に防止できる。従って、使用途中に調整筒85が外力を受けて回動することはなく、差換印70による印字を常に適正に行うことができる。
【0030】
ビス挿通穴80の対向縁に臨んで一対の基準リブ81を設けると、一対の調整溝87を一対の基準リブ81で支持して、調整筒85をより安定した状態で支持できる。また、一対の調整溝87と基準リブ81とが互いに係合して、調整筒85が適正な調整位置からずれ動くのをさらに確実に防止できる。
【0031】
調整筒85の周面に設けた規制片88を、ベース壁78の上面に設けたストッパー82で受止めるようにすると、調整筒85が調整限界を越えて回動操作されるのを規制できる。従って、調整筒85が適正な調整範囲から大きく逸脱して、不必要に調整操作されるのを防止でき、差換印70の印字面の高さ調整を、適正な調整範囲内で簡便にしかも的確に行なうことができる。
【0032】
ケース内蔵型の日付印においては、主ケース7とカバー筒8とで本体ケース1を構成して、固定印字体3を主ケース7に対して着脱することにより、組付姿勢と分離姿勢とに姿勢変更できるようにした。また、差換印70を固定印字体3の差換窓29の周囲壁に着脱可能に装着して、差換印70の全体を固定印字体3で支持するようにした。そのうえで、固定印字体3を分離姿勢にして、ホルダー72が主ケース7の外面の自由空間に露出する状態で、差換印70を固定印字体3に対して着脱操作できるようにした。
【0033】
このように、差換印70を差換窓29の周囲壁に装着し、さらに、ホルダー72が自由空間に露出する状態で差換印70を固定印字体3に着脱すると、主ケース7に邪魔されることもなく、差換印70を固定印字体3に対して容易に着脱できる。また、差換印70を差換えることで捺印担当者の氏名等を簡単に変更できるので、固定印字体3のゴム印字体27を交換する必要があった従来のケース内蔵型の日付印に比べて、氏名変更等に伴うコストを低減して、ケース内蔵型の日付印の使い勝手を向上できる。
【0034】
シリンダー錠からなる錠ユニット32と、ロック体34と、係合体35などで錠構造を構成し、錠構造を本体ケース1に組込んだケース内蔵型の日付印によれば、錠ユニット32を施錠するだけでカバー筒8を開放不能にして、日付が不正に変更されるのを防止できる。また、印字ベルト24を操作して日付を変更する場合には、錠ユニット32を解錠したのち、カバー筒8を開放姿勢に移動操作して、調整ダイヤル22を調整窓9から露出させるだけでよく、日付の変更や調整を迅速にしかも簡単に行なえる。さらに、シリンダー錠で錠ユニット32を構成することにより、シリンダー錠の分だけ全体重量が大きくなるので、日付印を片手で持ったときの印象を重厚感に富むものとして、従来の日付印に比べて高度のセキュリティ機能を備えている日付印であることを使用者に訴求することができる。
【0035】
印面ホルダー26に設けた取付爪30を主ケース7の取付穴31に下方から差込み係合した状態において、その周囲をカバー筒8で覆うようにすると、取付爪30と取付穴31との係合状態が解除されるのをカバー筒8で阻止できる。従って、固定印字体3が主ケース7から分離されて差換印70が不正に交換されるのを防止できる。また、固定印字体3を主ケース7から取外した状態で、印字ベルト24を出退口12から直接回動操作して日付が不正に変更されるのを防止できる。とくに、錠構造でカバー筒8の開放操作を規制するケース内蔵型の日付印において、固定印字体3が主ケース7から分離されるのを確実に防止して、差換印70の不正交換や日付の不正変更を確実に防止できる。
【0036】
ダイヤル露出形の日付印においては、本体ケース1を構成するフレーム102の下端に印面台103を設け、固定印字体3を印面台103に着脱することにより、組付姿勢と分離姿勢とに姿勢変更できるようにした。また、差換印70を固定印字体3の差換窓29の周囲壁に着脱可能に装着して、差換印70の全体を固定印字体3で支持するようにした。そのうえで、固定印字体3を分離姿勢にして、ホルダー72がフレーム102の外面の自由空間に露出する状態で、差換印70を固定印字体3に対して着脱操作できるようにした。
【0037】
上記のように、差換印70を差換窓29の周囲壁に装着し、さらに、ホルダー72が自由空間に露出する状態で差換印70を固定印字体3に着脱すると、フレーム102に邪魔されることもなく、差換印70を固定印字体3に対して容易に着脱できる。また、固定印字体3を組付姿勢にした状態における差換印70は、全体がフレーム102の内部に収容されるので、従来のこの種の日付印に比べて、使用状態における日付印の外観の印象をすっきりさせることができる。
【0038】
フレーム102の下端に印面台103を装着し、その下面に固定印字体3を固定する形態のダイヤル露出形の日付印においては、固定印字体3および印面台103をフレーム102に対して組付姿勢と分離姿勢とに姿勢変更できるようにした。また、差換印70を固定印字体3の差換窓29の周囲壁に着脱可能に装着して、差換印70の全体を固定印字体3で支持するようにした。そのうえで、固定印字体3および印面台103を分離姿勢にして、ホルダー72がフレーム102の外面の自由空間に露出する状態で、差換印70を固定印字体3に対して着脱操作できるようにした。
【0039】
上記のように、差換印70を差換窓29の周囲壁に装着し、さらに、ホルダー72が自由空間に露出する状態で差換印70を固定印字体3に着脱すると、フレーム102に邪魔されることもなく、差換印70を固定印字体3に対して容易に着脱できる。また、印面台103を分離姿勢にした状態においても、印面台103はフレーム102に対して連結軸115で連結されたままであるので、印面台103をフレーム102に組付ける際に組付姿勢や向きを間違えるおそれがなく、印面台103をフレーム102に適正に組むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(実施例1)
図1ないし
図17は本発明に係る差換印を備えた日付印の実施例を示す。
図2および
図3において日付印は、本体ケース1と、本体ケース1の内部に収容される印字ユニット2と、本体ケース1の下端面に配置される固定印字体3と、固定印字体3の印字面を覆う印面キャップ4などでケース内蔵型の日付印として構成してある。
図11に示すように印面キャップ4は、内底にインク含浸マット5が収容してあるキャップ本体4aと、インク含浸マット5用のインク補充口6を覆うキャップ蓋4bとで構成する。
【0042】
本体ケース1は、印字ユニット2を収容する主ケース7と、主ケース7の外面を覆うカバー筒8とで構成する。主ケース7は有底筒状のプラスチック成形品からなり、その筒壁の上下中途部に、印字ユニット2の調整ダイヤル22を露出させるための一対の調整窓9が開口され、両調整窓9の間の筒壁外面に、カバー筒8を開閉案内する平坦なガイド部10と断面T字状のガイドリブ11が一体に形成してある(
図6参照)。主ケース7の底壁には、印字ベルト24を固定印字体3に向かって出入れするための出退口12が開口され、さらに、出退口12の後側に差換印70用の出入口13が開口してある。
【0043】
図5に示すようにカバー筒8は、下向きに開口する有底筒状のプラスチック成形品からなり、その筒壁の左右に先のガイドリブ11で案内されるスライド溝14が筒下端から上向きに形成され、スライド溝14の下端両側にロック爪15が形成してある。カバー筒8の上端壁には締結ボス16が膨出形成されており、この締結ボス16に上キャップ17が着脱可能に装着してある。
【0044】
カバー筒8を主ケース7に外嵌して、そのスライド溝14をガイドリブ11でスライド案内することにより、カバー筒8は、主ケース7の外面を覆う閉じ姿勢と、主ケース7の調整窓9の外面を開放する開放姿勢とに姿勢変更できる。カバー筒8が閉じ姿勢になっている状態を
図2、
図3に示し、カバー筒8が開放姿勢になっている状態を
図4に示している。カバー筒8を開放姿勢にした状態においては、印字ユニット2の調整ダイヤル22を調整窓9から露出させることができ、この状態で印字ベルト24を回転操作することにより印字ユニット2の日付を変更できる。
【0045】
図2において印字ユニット2は、門形のフレーム20と、その対向壁で支持したダイヤル軸21と、ダイヤル軸21で支持した6個の調整ダイヤル22と、フレーム20の下端に装着されるブリッジ23と、調整ダイヤル22およびブリッジ23に巻き掛けられる5個の無端状の印字ベルト24などで構成する。印字ベルト24には、それぞれ2桁の年号数字と、月数字と、日数字を印字する字母ブロックが一定間隔おきに設けてあり、月数字を印字する印字ベルト24のみが1個の印字ベルトで構成してある。
【0046】
印字ユニット2は、主ケース7に収容されて、下方の印字位置と上方の日付変更位置との間を上下動でき、主ケース7とフレーム20との間に配置した圧縮コイル形のばね25で日付変更位置へ向かって押し上げ付勢してある。日付変更位置においては、印字ユニット2の全体がばね25で押し上げられて、調整ダイヤル22が調整窓9に臨んでいる。印字ユニット2が日付変更位置に変位した状態においては、後述する規制脚65が調整窓9の上開口縁で受止められて、印字ユニット2が日付変更位置を越えて主ケース7から抜け出るのを規制している(
図9参照)。
【0047】
固定印字体3は、印面ホルダー26と、印面ホルダー26に接着固定したゴム印字体27とで構成してあり、
図2に示すように、その前後中央に印字ベルト24の字母ブロックを出し入れするための日付窓28が開口してある。また、日付窓28の後側に隣接して、差換印70を着脱するための差換窓29が開口してある。印面ホルダー26の周縁の左右には、上向きに突出する取付爪30が一体に設けてあり、この取付爪30を主ケース7の取付穴31に下方から差込み係合することにより、固定印字体3を主ケース7と一体化することができる(
図11参照)。この状態でカバー筒8を主ケース7に組付けることにより、取付爪30の外面がカバー筒8で覆われるが、その意味は後述する。ゴム印字体27の印面のうち、日付窓28より前側の領域には、領収、受付、出納などの文字を印字する印字面が形成してある。また、日付窓28より後側の領域には、会社名や部署名などの文字を印字する印字面が形成され、さらに、差換窓29に装着した差換印70で捺印者名や社員番号などを印字できる。
【0048】
カバー筒8が不正に開放操作されて日付が意図的に変更されるのを防止するために、カバー筒8と主ケース7との間に錠構造を設けて、印字ユニット2の日付が無断で変更されるのを防止している。また、カバー筒8とフレーム20との間に高さ調整構造を設けて、印字ユニット2の印面高さを調整できるようにしている。
【0049】
図10において錠構造は、締結ボス16の端壁に固定される錠ユニット32と、錠ユニット32の操作軸33に固定されるロック体34と、主ケース7の内面に設けられる係合溝(係合体)35とで構成する。符号36は、錠ユニット32を施錠ないし解錠操作する鍵である。錠ユニット32は、ディスクタンブラー型、ピンタンブラー型、マグネットタンブラー型などの市販のシリンダー錠からなり、錠ケース37の内部に外筒、内筒、およびタンブラーなどを組込んで構成してある。
【0050】
錠ケース37は、締結ボス16の中央に設けた錠受座38で受止められるフランジ37aと、錠受座38に形成した取付穴39に差込み係合される軸部40とを一体に備えている。軸部40は対向周面が平坦に形成された太鼓形断面に形成してあり、その円弧周面に雄ねじ41が形成してある。そのため、
図1および
図3に示すように、平坦に形成された軸部周面においては、軸部40と調整リング54との間に小さな隙間が形成される。内筒の上端には鍵穴42が開口してあり、内筒の下側には太鼓形断面の操作軸33が一体に形成され、その周面に雄ねじ43が形成してある。錠ケース37の軸部40を錠受座38の取付穴39に上方から差込み係合し、その周面の雄ねじ41に大径の第1ナット44をねじ込むことにより、錠ユニット32が錠受座38に固定される。この状態の鍵穴42は、錠ケース37の上端面に露出している。
【0051】
図5に示すようにロック体34は、円板状に形成される本体部48と、本体部48の周囲の対向2個所に張出し形成される係合爪49とを一体に備えた金属製の部品からなり、本体部48の板面の2個所に部分円弧状の逃げ溝50が形成してある。また、本体部48の中央には、操作軸33に外嵌する連結穴51が太鼓形に形成してある。連結穴51を座金とともに操作軸33に外嵌したのち、小径の第2ナット45を雄ねじ43にねじ込むことにより、ロック体34が操作軸33に固定される。従って、鍵36を鍵穴42に差込んで内筒を回転操作するとき、ロック体34は操作軸33に同行して回転する。
【0052】
係合溝35は主ケース7の上筒壁の内面の対向2個所に凹み形成してあり、錠ユニット32を鍵36で施錠した状態では、
図6に示すように、ロック体34の係合爪49が係合溝35と係合して、カバー筒8が閉じ姿勢から開放姿勢に移動操作されるのを阻止する。また、錠ユニット32を鍵36で解錠した状態では、
図7に示すように、ロック体34の係合爪49が係合溝35から分離するので、カバー筒8は主ケース7に対して上方移動可能な状態となる。この状態でカバー筒8を開放操作することにより、印字ユニット2がばね25で日付変更位置へ押上げ操作されて、印字ベルト24の下部が日付窓28および出退口12から上方へ抜出るので、印字ベルト24を回転操作することができる。なお、上記の閉じ位置(開放規制位置)におけるカバー筒8の下端は、主ケース7の下部に設けたフランジ壁で受止められている。
【0053】
高さ調整構造は、調整リング(調整体)54と、調整リング54の調整動作を印字ユニット2のフレーム20に伝える中継枠55とで構成する。調整リング54はロック体34より上方に配置されており、中継枠55はロック体34と印字ユニット2のフレーム20との間に配置してある。
図5において調整リング54は、円形リング状のプラスチック成形品からなり、その周面の全体に滑止めリブ56の一群が形成してある。調整リング54の内面上部には、第1ナット44を受入れる凹部57が形成され、さらに、凹部57より下側のリング内面に雌ねじ58が形成してある。調整リング54を回転操作するために、締結ボス16の周壁の左右に一対の操作窓59が開口してある。操作窓59から露出する滑止めリブ56を指先で摘んで調整リング54を回転操作することにより、印字ユニット2の高さ調整を容易に行なうことができる。
【0054】
調整リング54は、雌ねじ58を錠ケース37の雄ねじ41にねじ込むことにより、錠ケース37の軸部40で上下に調整移動可能に支持してある(
図8参照)。このように、錠ケース37の軸部40に設けた雄ねじ41を利用して、調整リング54を軸部40で上下に調整移動可能に支持すると、調整リング54のねじ込み相手を別途設ける必要がないので、高さ調整構造が複雑化するのを防止できる。また、軸部40に形成される雄ねじ41は細目ねじで形成してあるので、調整リング54を回転操作して印字ユニット2を移動させるときの、1回転あたりの上下調整量を小さくできる。さらに、金属加工されて精密に形成された雄ねじ41に調整リング54をねじ込むので、軸部40にねじ込んだ調整リング54が上下にがたつくのを防止でき、全体として、印字ユニット2の印面高さの調整を精密に行なうことができる。加えて、錠ユニット32と調整リング54を同心状に配置するので、これら両者32・54が占めるスペースの無駄を省いた状態で、カバー筒8の内面上部に錠構造と高さ調整構造とを集約配置することができる。
【0055】
図5において中継枠55は、四角形状に形成される中央の接合座61と、接合座61の前後に張り出される三日月状の受動座62と、受動座62の上面に突設される前後一対の受動片63とを一体に備えたプラスチック成形品からなる。接合座61の下面の四隅には、印字ユニット2のフレーム20の上壁20aに係合する接合脚64が下向きに突設してある。また、前側の受動座62の前部下面と、後側の受動座62の後部下面には、それぞれ規制脚65が下向きに突設してある。受動片63は断面半円状に形成してある。
【0056】
中継枠55は、その接合脚64が上壁20aの下面側に係合されて、接合座61が印字ユニット2のフレーム20の上壁20aに予め連結固定してある。また、錠ユニット32、ロック体34、および調整リング54はカバー筒8に予め組付けられており、カバー筒8を主ケース7に組む前に錠ユニット32を鍵36で解錠しておく。中継枠55が組付けられた印字ユニット2をばね25とともに主ケース7の内部に組付けたのち、カバー筒8を主ケース7に組付けて、受動片63が逃げ溝50に係合する状態で、中継枠55の規制脚65を調整窓9に係合させる。この組付け状態においては、受動片63が逃げ溝50を介して本体部48の上方へ突出して、調整リング54の下面に接当する(
図8参照)。ロック体34は、中継枠55に対して逃げ溝50の範囲内で相対回転でき、従って、ロック体34が鍵36で回転操作されるとき、回転変位しない受動片63と、回転する本体部48とが動作干渉するのを回避できる。
【0057】
上記のように、カバー筒8の内面の上部に錠構造と高さ調整構造とを集約配置すると、締結ボス16の上面に錠ユニット32の上端面および鍵穴42が露出する。また、締結ボス16の周面2個所において、調整リング54の滑止めリブ56と操作窓59が露出して、日付印の外観の印象が損なわれてしまう。こうした、外観上の不具合を解消し、さらに鍵穴42に異物が入込むのを防ぐために上キャップ17を設け、同キャップ17を締結ボス16に着脱自在に装着している。上キャップ17の装着状態を維持するために、締結ボス16の周壁の下部と、上キャップ17の内面の下部とに、互いに係合するリブが設けてある。
【0058】
図13ないし
図16に差換印70の詳細を示す。差換印70は、捺印者の氏名や社員番号などを印字する氏名印字体71と、氏名印字体71を差換窓29に装着するためのホルダー72と、氏名印字体71とホルダー72との間に設けられる高さ調整機構などで構成する。
図13において氏名印字体71は、プラスチック製の印字台73と、印字台73の下面に接着固定されるゴム印字体74とからなる。印字台73の上面にはねじボス75が形成してあり、左右側面には回止めを兼ねる位置決めリブ76が形成してある。
【0059】
ホルダー72は横長四角形状のベース壁78と、ベース壁78の左右両側の前後に下向きに設けた4個の係合脚79とを一体に備えた門形のプラスチック成形品からなり、ベース壁78の中央にビス挿通穴80が上下貫通状に形成してある。ビス挿通穴80の左右両側には、高さ調整機構を構成する断面が三角形状の基準リブ81が設けてあり、ベース壁78の後縁の左右にはストッパー82が突設してある。
【0060】
高さ調整機構は、先の基準リブ81と、基準リブ81で支持される調整筒85と、ホルダー72と印字台73との間に配置される圧縮コイル形のばね86と、調整筒85の筒壁の下端に形成される一群の調整溝87とで構成する。調整筒85の周面には、先のストッパー82で受止められる規制片88が張出し形成してある。各調整溝87は、
図16の展開図に示すように、調整筒85の筒壁の下端を逆V字状に切欠いて、各溝87が周方向へ連続して溝列を構成するように形成してある。調整溝87は、調整筒85の筒壁の対向位置に6対ずつ12個が形成してあり、隣接する各調整溝87の上下高さ位置が0.2mmずつ異なっている。
【0061】
調整筒85に挿通した状態の締結ビス(締結ねじ)89をベース壁78のビス挿通穴80に挿通し、さらに、そのねじ軸を印字台73のねじボス75にねじ込むことにより、氏名印字体71とホルダー72とが一体化される。この組付け状態においては、
図15に示すように締結ビス89の操作頭部の下面が調整筒85の上端壁で支持され、対を為す調整溝87が一対の基準リブ81で安定した状態で受止められている。また、氏名印字体71はばね86で下向きに移動付勢されて、調整筒85と締結ビス89を介してホルダー72で吊下げ支持された状態になっている。
【0062】
差換窓29の左右には、位置決めリブ76を受入れる位置決め溝90が形成してあり、さらに、係合脚79を係合するための4個の係合穴91が差換窓29に隣接して形成してある。係合脚79と係合穴91が、差換印70を固定印字体3に装着するための連結構造を構成している。
【0063】
差換印70は、固定印字体3を主ケース7から取外した状態で、固定印字体3の上面側から差換窓29に着脱して交換する。詳しくは、固定印字体3を主ケース7から取外したのち、差換窓29に装着してある差換印70の係合脚79を、左右中央へ接近する向きに弾性変形させて係合穴91との係合状態を解除し、差換印70を差換窓29から取り外す。次に新規な差換印70の氏名印字体71を、位置決めリブ76と位置決め溝90が係合する状態で差換窓29に嵌込み、さらに、係合脚79を係合穴91に差込んで、その係合爪を係合穴91の下面側の段部に係合させる。
【0064】
交換された新規な差換印70の高さ調整を行なう場合は、まず、固定印字体3およびゴム印字体74の印字面にインクを付着させた状態で紙面に捺印して、氏名印字体71の捺印状態を確認する。殆どの場合、固定印字体3のゴム印字体27と氏名印字体71のゴム印字体74とは、両者の生産時期が異なっているので、氏名印字体71の捺印状態は、印字された文字がかすれるか、にじんでいることが多い。いずれにせよ、捺印を試行することで氏名印字体71を固定印字体3の印字面に対して、かすれを修正する向きに調整するか、にじみを修正する向きに調整するかを決定することができる。
【0065】
次に、調整筒85を左右いずれかへ回転して、基準リブ81で支持される調整溝87を変更することにより、氏名印字体71の印字面の高さを調整する。例えば、かすれを修正する場合には、
図14において調整筒85を時計回転方向へ回転操作して、溝深さが大きな調整溝87を基準リブ81で支持することにより、氏名印字体71の印字面を下げる。つまり、固定印字体3の印字面を基準とする場合に、氏名印字体71の印字面を固定印字体3の印字面から突出する側へ移動させる。また、にじみを修正する場合には、調整筒85を反時計回転方向へ回転操作して、溝深さが小さな調整溝87を基準リブ81で支持することにより、氏名印字体71の印字面を上げる。つまり、固定印字体3の印字面を基準とする場合に、氏名印字体71の印字面を固定印字体3の印字面から退入する側へ移動させる。
【0066】
この実施例では、調整溝87が6対ずつ12個設けてあるので調整量の合計は1.2mmとなり、その範囲内で氏名印字体71の高さを調整できる。再度、捺印を試行して調整結果を確認し、氏名印字体71で印字された文字等の状態が好みの状態になるまで調整を行なう。高さ調整を行なうとき、溝列の始終端に位置する調整溝87が基準リブ81で支持された状態、つまり調整筒85が調整限界位置にあるとき、調整限界を越えて調整筒85が回転操作されるのを防ぐために、規制片88をストッパー82で受止めている。このように、調整筒85が調整限界を越えて回動操作されるのをストッパー82で規制すると、調整筒85が適正な調整範囲から大きく逸脱する状態で不必要に調整操作されるのを防止できる。従って、差換印70の印字面の高さ調整を、適正な調整範囲内で簡便にしかも的確に行なえる。
【0067】
なお、調整溝87の溝深さが大きくなると、調整筒85がばね86の付勢力に対向して基準リブ81を乗越えるときの上方移動量が増加し、その分だけ操作抵抗が増えて回転操作しにくくなる。こうした場合には、差換印70の締結ビス89を緩めてばね86の付勢力を低下させた状態で調整筒85を回転操作すると、容易に調整筒85を回転操作できる。調整筒85を回転操作したのちには、再び締結ビス89をねじ込んで、氏名印字体71を締結ビス89に固定する。
【0068】
上記のように差換印70を固定印字体3の上面に直接装着する日付印によれば、固定印字体3を主ケース7から取外すことにより、ホルダー72が主ケース7の外面の自由空間に露出する状態で、差換印70の固定印字体3に対する着脱を行えるので、差換印70の交換をより少ない手間で簡便に行なうことができる。また、調整筒85を回転操作するだけで、差換印70の固定印字体3に対する印字面の高さ調整を直接的に行えるので、差換印70の印字面の高さ調整をより少ない手間で的確に行なうことができる。さらに、固定印字体3を主ケース7に再装着する必要もなく試行捺印を行って捺印状態を確認できるので、全体として、差換印70の印字面の高さ調整に要する一連の手間を軽減して、高さ調整作業を簡便に行うことができる。
【0069】
固定印字体3に装着した差換印70は、4個の係合脚79を介して固定印字体3に固定され、さらに、ホルダー72の左右が位置決め溝90で支持されている。また、調整筒85はばね86の付勢力を受けて、その調整溝87が基準リブ81に押付けられている。そのため、氏名印字体71に捺印反力が作用するような場合であっても、調整溝87と基準リブ81との係合状態が解除されることはなく、従って、使用途中に差換印70の印字文字がにじんだりかすれたりするのを一掃して、常に適正に印字を行うことができる。
【0070】
日付印は、管理責任者が鍵36を所定の場所に保管して、日付印の使用状況を管理する。始業時には、上キャップ17を取り外したのち、鍵36を鍵穴42に差込んで錠ユニット32を解錠し、カバー筒8を開放姿勢にして調整ダイヤル22を調整窓9に臨ませる。この状態で日数字を印字する印字ベルト24に対応する調整ダイヤル22を送り操作して、使用する日付に適合した字母ブロックを選定する。日付の調整が終了したら、カバー筒8を閉じ姿勢にした状態で錠ユニット32を施錠して、カバー筒8の開放移動を阻止し、上キャップ17を締結ボス16に装着した状態で捺印担当者に日付印を渡す。一連の日付変更作業は管理責任者が行なってもよく、管理責任者が立会う状況下で捺印担当者が行なってもよい。
【0071】
以上のように構成したケース内蔵型の日付印によれば、錠ユニット32を正規の鍵36で解錠しない限り、カバー筒8を開放操作できないので、印字ベルト式の日付印であるにもかかわらず、管理責任者ではない使用者が日付を変更するのを確実に防止できる。また、印字ベルト24を送り操作するだけで日付の変更を行なえるので、従来の差換印に比べて、日付の変更をより少ない手間で簡便に行なえる。さらに、管理責任者は鍵36のみを管理すればよいので、差換えコマを管理する必要があった差換印に比べて、管理の手間を大幅に省くことができる。印字要素を紛失したり、破損するおそれもない。
【0072】
カバー筒8が閉じ姿勢になっている状態では、印面ホルダー26の取付爪30の外面がカバー筒8で覆われている(
図12参照)。そのため、取付爪30を係合解除操作して固定印字体3を主ケース7から取外すことはできない。従って、固定印字体3を主ケース7から取外した状態で、印字ベルト24を出退口12の側から直接回動操作して、日付が不正に変更されるのを防止できる。因みに、取付爪30を係合解除操作して固定印字体3を主ケース7から取外すことが可能であると、日付窓28より開口面積の大きな出退口12が露出するため、印字ベルト24を直接回動操作して日付を変えることが可能となる。
【0073】
上記の日付印によれば、錠ユニット32がシリンダー錠で構成してあるので、シリンダー錠の分だけ日付印の全体の重量が大きくなる。従って、日付印を片手で持ったときの印象を重厚感に富むものとして、従来の日付印に比べて高度のセキュリティ機能を備えている日付印であることを使用者に訴求することができる。
【0074】
上記構成の日付印の捺印頻度が高い場合には、日付印を
図17に示すスタンドに収容して使用することができる。スタンドは、日付印を出入れするための収容筒94を備えている上側のスタンド本体95と、スタンド本体95を支持する下側のスタンド台96と、収容筒94の真下に位置する状態でスタンド台96に設けられるマットホルダー97などで構成する。マットホルダー97は皿状に形成してあって、その内部にインク吸蔵マット98が収容される。不使用状態の日付印は、収容筒94の内部に収容されて全体が起立姿勢に保持されており、さらに、固定印字体3および差換印70の印字面がインク吸蔵マット98の上面に接触している。従って、日付印を収容筒94から取出すだけで連続して捺印でき、こうした使用形態では印面キャップ4を省略することができる。
【0075】
なお、氏名印字体71は、捺印者の氏名や社員番号などを印字する以外に、競技会やイベントなどの開催回数を印字してもよい。また、食品を販売した時間が午前か午後か、あるいは食品の賞味期限など、印字ベルト24で印字される基準日付に関連した第2日付を印字してもよい。
【0076】
(実施例2)
図18ないし
図20は、本発明をダイヤル露出型の日付印に適用した実施例を示す。日付印は、本体ケース1と、本体ケース1に収容される印字ユニット2と、本体ケース1の上部に装着されるグリップ101と、固定印字体3、および差換印70などで構成する。本体ケース1は、印字ユニット2を収容するフレーム102と、フレーム102の下端に上下スライド可能に装着される印面台103と、フレーム102の上端に外嵌装着される固定枠104などで構成する。フレーム102は、二分割されたプレス成形品を前後に接合して構成してあり、前後の対向壁のそれぞれに調整ダイヤル22の周縁を露出させるためのスリット105が形成してある。
【0077】
固定印字体3は、実施例1と同様に、印面ホルダー26と、印面ホルダー26に接着固定したゴム印字体27とで構成してあり、その前後中央に日付窓28を開口し、日付窓28の後側に差換窓29が開口してある。印面ホルダー26の周縁の左右には、上向きに突出する取付爪30が一体に設けてあり、この取付爪30を印面台103に設けた取付穴31に下方から差込み係合することにより、固定印字体3を印面台103の下面に装着して組付姿勢にすることができる(
図18、
図19参照)。また、各取付爪30を弾性変形させながら、取付爪30と取付穴31との係合状態を解除すると、
図20に示すように、固定印字体3を印面台103から取外して分離姿勢にすることができる。
【0078】
印字ユニット2のフレーム20と固定枠104との間には高さ調整機構が設けてある。高さ調整機構は、フレーム20の上端壁に固定されるねじ軸108と、固定枠104の上面においてねじ軸108にねじ込まれるナット109と、ナット109を回転操作する調整リング110とで構成する。ねじ軸108の上端にはグリップ101がねじ込まれて、その下端面で調整リング110を回転不能に押圧している。グリップ101を緩み側へ回転操作して調整リング110から分離した後、調整リング110を介してナット109を回転操作することにより、印字ユニット2の全体を上下に調整移動できる。
【0079】
印面台103は、円形に形成される下側の受座113と、受座113の上面に設けられる四角枠状の保持枠114を一体に備えたプラスチック成形品からなる。受座113には、出退口12および出入口13と、係合穴91が形成してある。印面台103はフレーム102に連結軸(ボルト)115を介して連結されて、印字ユニット2のフレーム20、および本体ケース1のフレーム102に設けたスライド溝116に沿って上下スライドして、上方の印字位置(
図18の状態)と下方の日付変更位置(
図20の状態)との間を上下動できる。連結軸115は、連結軸115にねじ込まれるナットと歯付座金とで保持枠114と一体化してある。固定印字体3は、印面台103の下面に装着される組付姿勢と、印面台103から取外された分離姿勢とに姿勢変更でき、分離姿勢にした状態において差換印70が差換窓29に着脱される。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
【0080】
印字ベルト24を回転操作して印字内容を変更する場合には、
図20に示すように印面台103を退避位置までスライド操作して、その受座113を印字ベルト24の回転軌跡の外に位置させる。この状態で各調整ダイヤル22を回転することにより、印字すべき数字が形成してある印面部をブリッジ23の下面に位置させることができる。
【0081】
差換印70の交換を行なう場合には、印面台103を退避位置までスライド操作して取付爪30をフレーム102の下端より下方に位置させ、ホルダー72がフレーム102の外面の自由空間に露出する状態で、取付爪30を弾性変形させながら取付穴31から取外して、固定印字体3を印面台103から分離する。以後は実施例1で説明したように、差換印70を差換窓29から取り外して、新規な差換印70を差換窓29に装着する。さらに、固定印字体3およびゴム印字体74の印字面にインクを付着させた状態で紙面に捺印して、氏名印字体71の捺印状態を確認したのち、ゴム印字体74の印字面の高さ調整を行なう。
図18に示すように、使用状態における差換印70は本体ケース1のフレーム102の内部に収容されている。
【0082】
(実施例3)
図21は、本発明を別のダイヤル露出型の日付印に適用した実施例を示す。この実施例における日付印は、実施例2の日付印と同様に、本体ケース1と、本体ケース1に収容される印字ユニット2と、図示していないグリップと、固定印字体3、および差換印70などで構成する。本体ケース1は、印字ユニット2を収容するフレーム102と、フレーム102の下端に上下スライド可能に装着される印面台103とを備えており、印面台103が固定印字体3の印面ホルダー26を兼ねる点が、実施例2の日付印と異なる。詳しくは、受座113が印面ホルダー26を兼ねており、その下面側にゴム印字体27が固定してある。フレーム102と印面台103とは両者を貫通する連結軸115を介して連結されて、印字ユニット2のフレーム20、および本体ケース1のフレーム102に設けたスライド溝116に沿って上下スライドできる。さらに、印面台103をスライド溝116の下端までスライドした状態では、固定印字体3および印面台103を連結軸115の回りに揺動させて、フレーム102から分離した姿勢に操作できる。
【0083】
上記のように、実施例3の日付印においては、印面台103がフレーム102の下端に装着される組付姿勢と、印面台103がフレーム102から取外された分離姿勢とに姿勢変更できるので、印面台103を分離姿勢にした状態で差換印70の交換を行う。印面台103をスライド溝116に沿って下降移動させて分離姿勢にした状態では、印面台103とフレーム102との間に大きな隙間が形成され、ホルダー72がフレーム102の外面の自由空間に露出するので、その状態のままで差換印70の交換を行うことができる。また、印面台103をスライド溝116に沿って下降移動させ、さらに印面台103を連結軸115の回りに揺動させて、フレーム102の前面側に位置させた状態で差換印70の交換を行ってもよい。使用状態における差換印70は本体ケース1のフレーム102の内部に収容されている。
【0084】
実施例1では、ホルダー72と締結ビス89との間に差換印70用の高さ調整機構を設けたが、その必要はなく、高さ調整機構は氏名印字体71と締結ビス89との間に設けることができる。例えば、
図22に示すように、氏名印字体71の印字台73の上面にねじボス120を設け、その内面に雌ねじ121を形成する。ねじボス120はホルダー72のベース壁78の中央に設けたガイド穴122で支持してあり、これにより氏名印字体71の全体がホルダー72で上下スライドのみ自在に案内される。締結ビス89は高さ調整具を兼ねており、先の雌ねじ121にねじ込まれるねじ軸123と、ベース壁78の上面で受止められる筒部124と、筒部124の上側に設けられる調整つまみ125を一体に備えている。ベース壁78と印字台73との間には、ねじ軸123が緩むのを防ぐ摩擦付与ばね(ばね)126を配置する。
【0085】
図22の高さ調整機構においては、締結ビス89の調整つまみ125をねじ込み操作すると、氏名印字体71の全体がベース壁78の側に引寄せられ、逆に調整つまみ125を緩めると氏名印字体71の全体がベース壁78から遠ざかる向きに移動する。従って、調整つまみ125を回転操作するだけで、氏名印字体71の印字面の高さを自由に調整することができる。なお、実施例1の高さ調整機構が、印字面の高さを段階的に調整できるものであったのに対し、
図22の高さ調整機構は、印字面の高さを無段階に調整することができる点で異なっている。この実施例から理解できるように、差換印70の高さ調整機構は雌雄のねじを調整要素にして構成でき、
図22で説明した構成以外の構造を採用することができる。
【0086】
上記の実施例以外に、調整溝87の形成個数は、日付印や差換印70のサイズの違いに応じて必要な個数に設定することができる。基準リブ81および調整溝87の形状は、三角形状や逆V字状である必要はなく、互いに係合できる形状であれば波形や鋸刃形などの他の形状に形成することができる。基準リブ81は少なくとも1個設けてあれば足りる。ばね86は板ばねやキックばね、あるいはゴムブロックなどで構成することができる。差換印70は複数個の印字体で構成することができ、必要があれば、印字ベルト24を間に挟む固定印字体3の前後2個所に差換印70を配置できる。固定印字体3は、円形以外に楕円形や四角形などに形成することができる。日付印は錠構造を備えていることが好ましいが、錠構造を備えていない日付印であってもよい。上キャップ17は、締結ボス16に着脱する必要はなく、係合構造を設けたカバー筒8に対して着脱することができる。