特許第6103756号(P6103756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103756
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/32 20060101AFI20170316BHJP
   H01F 27/04 20060101ALI20170316BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   H01F27/32 A
   H01F27/04 Z
   H01F15/02 R
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-6119(P2013-6119)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-138087(P2014-138087A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100129403
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】市川 正人
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−49013(JP,A)
【文献】 実開昭49−149238(JP,U)
【文献】 特開昭60−251610(JP,A)
【文献】 特開昭62−202509(JP,A)
【文献】 実開昭62−76514(JP,U)
【文献】 特開昭61−142715(JP,A)
【文献】 特開昭61−27611(JP,A)
【文献】 特開昭50−45271(JP,A)
【文献】 特開平10−27715(JP,A)
【文献】 実開昭61−51720(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00−19/08、27/02−27/04
H01F 27/28−27/32、30/00−38/12
H01F 38/16、38/42
H01C 1/02−1/036
H01G 2/10
H05K 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル、該コイルを巻回するボビン、該ボビンに一体に形成された端子台、及び、前記コイルの端部に接続されて前記端子台から突出する棒状のピン端子を有する本体部と、
一方向に開口する有底筒状に形成されて前記本体部を収容し、底壁部を貫通して前記ピン端子が挿嵌される挿嵌孔を有するケースと、
該ケース内に充填されて前記コイル、前記ボビン、前記端子台を封止する充填樹脂と、を備えるコイル部品であって、
前記端子台に、前記ケースの底壁部に向けて突出して前記ピン端子の基端部を囲む嵌入凸部が形成され、
前記ケースの底壁部に、前記嵌入凸部を嵌め入れる嵌入孔が前記挿嵌孔から前記ケースの内側に連ねて形成され
前記嵌入孔が、前記端子台に対向する前記底壁部の底面から突出する環状のリブによって構成されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記嵌入凸部の外周面が、該嵌入凸部の突出方向先端側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜し、
前記嵌入孔の内周面が、前記嵌入凸部の外周面に平行するように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記端子台に、前記ケースの底壁部に向けて突出して前記嵌入凸部の外周面に間隔をあけて配される環状凸部が形成され、
前記リブが、該環状凸部の内側に嵌め入れられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記挿嵌孔の一部が、前記ケースの底壁部の外面から突出する突起部に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記ケースに、前記底壁部の外面から突出する複数の脚部が形成され、
該脚部の突出長さが、前記突起部よりも長く、かつ、前記ケース外部に突出する前記ピン端子の長さよりも短く設定されていることを特徴とする請求項4に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コイルをボビンに巻回してコイルの両端をボビンに一体に形成された端子台から突出するピン端子に電気接続して本体部を構成し、さらに、ピン端子の先端部がケース外に突出するように本体部をケース内に収容すると共に、ケース内に充填された充填樹脂により封止した構成のコイル部品がある(例えば特許文献1参照)。
また、特許文献1には、上記コイル部品において、ピン端子をケースの底壁部に形成された孔に挿嵌して、ピン端子の先端部をケース外に突出させる事項が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−111048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のコイル部品では、その本体部の形状がボビンやコイル等によって複雑であるため、また、本体部とケース内面との隙間が狭いため、コイル部品の製造に際して溶融した樹脂(溶融樹脂)をケース内に流し込む樹脂注入工程を実施すると、溶融樹脂中に気泡が含まれてしまう。このため、樹脂注入工程後には、コイル部品の周囲を減圧して溶融樹脂中に含まれる気泡(ボイド)を抜く脱泡工程が必要となる。
しかしながら、上記従来のコイル部品の場合には、脱泡工程において溶融樹脂が漏れ出してケース外に突出するピン端子の先端部に付着する虞があり、コイル部品の歩留まりが低下する、という問題がある。
【0005】
そこで、従来のコイル部品を製造する場合には、溶融樹脂の漏れを防ぐために、本体部の一部のみが埋設されるようにケースの底部のみに溶融樹脂を注入する一次樹脂注入工程と、溶融樹脂の粘度が高くなるように溶融樹脂をキュアして溶融樹脂にチクソ性を持たせる一次キュア工程と、本体部全体が埋設されるようにケース内に溶融樹脂を追加注入する二次樹脂注入工程と、を順番に実施した後に脱泡工程を実施している。
しかしながら、このように製造工程数が多いと、コイル部品の製造効率が低く、また、製造コストが高くなってしまう、という問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、歩留まり及び製造効率の向上を図ることができると共に、製造コストも低く抑えることが可能なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明のコイル部品は、コイル、該コイルを巻回するボビン、該ボビンに一体に形成された端子台、及び、前記コイルの端部に接続されて前記端子台から突出する棒状のピン端子を有する本体部と、一方向に開口する有底筒状に形成されて前記本体部を収容し、底壁部を貫通して前記ピン端子が挿嵌される挿嵌孔を有するケースと、該ケース内に充填されて前記コイル、前記ボビン、前記端子台を封止する充填樹脂と、を備え、前記端子台に、前記ケースの底壁部に向けて突出して前記ピン端子の基端部を囲む嵌入凸部が形成され、前記ケースの底壁部に、前記嵌入凸部を嵌め入れる嵌入孔が前記挿嵌孔から前記ケースの内側に連ねて形成され、前記嵌入孔が、前記端子台に対向する前記底壁部の底面から突出する環状のリブによって構成されていることを特徴とする。
【0008】
そして、前記コイル部品では、前記嵌入凸部の外周面が、該嵌入凸部の突出方向先端側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜し、前記嵌入孔の内周面が、前記嵌入凸部の外周面に平行するように傾斜しているとよい。
【0010】
さらに、前記コイル部品では、前記端子台に、前記ケースの底壁部に向けて突出して前記嵌入凸部の外周面に間隔をあけて配される環状凸部が形成され、前記リブが、該環状凸部の内側に嵌め入れられることが好ましい。
【0011】
また、前記コイル部品では、前記挿嵌孔の一部が、前記ケースの底壁部の外面から突出する突起部に形成されているとよい。
【0012】
さらに、前記コイル部品では、前記ケースに、前記底壁部の外面から突出する複数の脚部が形成され、該脚部の突出長さが、前記突起部よりも長く、かつ、前記ケース外部に突出する前記ピン端子の長さよりも短く設定されていると、さらに好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コイル部品の歩留まり及び製造効率の向上を図ることができると共に、コイル部品の製造コストも低く抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係るコイル部品を示す正面断面図である。
図2図1に示すコイル部品の側面断面図である。
図3図1,2に示すコイル部品の要部拡大断面図である。
図4図1,2に示すコイル部品において、本体部をケースに収容する前の状態を示す分解斜視図である。
図5図1,2に示すコイル部品の本体部であり、(a)は側面断面図、(b)は平面図、(c)は要部拡大断面図である。
図6図1,2に示すコイル部品のケースであり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図、(c)は(a)のC−C矢視断面図である。
図7図1〜6に示すコイル部品を基板に実装した状態を示しており、(a)は側面断面図であり、(b)は(a)の要部拡大断面図である。
図8】本発明の第二実施形態に係るコイル部品の要部を示す拡大断面図である。
図9】本発明の第三実施形態に係るコイル部品の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のコイル部品は、例えばトランスやチョーク等であり、特にコイルを巻回したボビン等からなる本体部がケースに収容され、該ケース内に樹脂が充填されてなるモールドタイプと称されるものであり、以下の説明ではモールドトランスを例に説明する。
【0016】
〔第一実施形態〕
以下、図1〜7を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1〜4に示すように、この実施形態に係るコイル部品1は、本体部10と、本体部10を収容するケース30と、ケース30内に充填される充填樹脂50とを備えている。
本体部10は、図5に示すように、コイル11と、コイル11を巻回するボビン12と、これらに取り付けられる磁心13と、ボビン12に一体に形成された端子台14と、端子台14に取り付けられた棒状のリードピン25と、を備えている。
【0017】
ボビン12は、樹脂等の電気的な絶縁材料を筒状に形成したものであり、その軸線方向の両端に径方向外側に突出する一対のフランジ部16,16を有している。
本実施形態のコイル11は、一対のフランジ部16,16の間においてボビン12に巻回されている。本実施形態のコイル部品1はモールドトランスであるため、コイル11は、一次巻線11A及び二次巻線11Bの二つを備えて構成されている。
【0018】
本実施形態の端子台14は、各フランジ部16の周方向の一部に一体に形成されている。すなわち、ボビン12には、一対の端子台14が一体に形成されている。これら一対の端子台14は、ボビン12の軸線方向に互いに間隔をあけて配列されている。
また、各端子台14には、その表面14c側から裏面14dに貫通する貫通孔17、及び、表面14cから窪む収容溝18が形成されている。収容溝18は、端子台14の表面14cに沿って貫通孔17の開口部分から端子台14の外側に向かって延びている。これら貫通孔17及び収容溝18は、リードピン25を端子台14に取り付けるための構成である。
【0019】
本実施形態のリードピン25は、各端子台14に複数取り付けられている。以下、端子台14に対するピン端子15の取り付け構造について具体的に説明する。
各リードピン25は、図5(c)に示すように、棒状の導電性部材を屈曲加工することによりL字状に形成されている。L字状とされたリードピン25の一方端25Aは、端子台14の表面14c側から貫通孔17に挿入され、端子台14の裏面14dから突出する。貫通孔17の内径寸法は、リードピン25の直径寸法に応じて形成されており、具体的には、リードピン25の直径寸法よりも僅かに小さく形成されている。これにより、リードピン25の一方端25Aは貫通孔17に挿嵌され、貫通孔17の内周面とリードピン25の外周面との摩擦力によって、リードピン25を安定した状態で端子台14に保持することができる。
【0020】
一方、リードピン25の他方端25Bは、リードピン25の一方端25Aを貫通孔17に挿入する際に、端子台14の収容溝18に収容される。そして、端子台14の表面14cに沿って収容溝18の延在方向に直交する収容溝18の幅寸法は、例えばリードピン25の直径寸法と同等あるいは僅かに大きくまたは小さく形成されている(図1参照)。これにより、リードピン25の回転を抑制することができる。
また、収容溝18の幅寸法がリードピン25よりも僅かに小さく形成されていれば、リードピン25の他方端25Bを安定した状態で狭持することができる。さらに、収容溝18に収容されたリードピン25の他方端25Bの先端は、収容溝18からはみ出ており、収容溝18からはみ出たリードピン25の部位にコイル11の端部(引出配線)を絡げて接続することができる。なお、本実施形態では、コイル11のうち一次巻線11Aの引出配線が、一方の端子台14Aに取り付けられたリードピン25に絡げられる。また、二次巻線11Bの引出配線が、他方の端子台14Bに取り付けられたリードピン25に絡げられる。
【0021】
以上のように端子台14に取り付けられるリードピン25の一方端25Aのうち、端子台14の裏面14dから突出する部分は、コイル部品1を外部に接続する部分であり、本実施形態における棒状のピン端子15となっている。
本実施形態では、各ピン端子15が、図5(a),(b)に示すように、各端子台14からボビン12の軸線方向に直交する方向に突出している。また、複数のピン端子15は同一方向に突出している。さらに、各端子台14における複数のピン端子15は、ボビン12の軸線方向及びピン端子15の突出方向に直交する方向に一列に並べられている。
【0022】
そして、本実施形態の端子台14には、図1〜5に示すように、端子台14の裏面14dから突出するピン端子15の基端部を囲む嵌入凸部19が形成されている。この嵌入凸部19は、本体部10を後述するケース30に収容した状態において、ケース30の底壁部31に向けて突出している。なお、図5(b)において、嵌入凸部19の平面視形状は、貫通孔17を中心とした円形状となっているが、これに限ることはなく、例えば多角形状となっていてもよい。
そして、図3に示すように、本実施形態の嵌入凸部19の外周面19aは、嵌入凸部19の突出方向に平行している。すなわち、本実施形態の嵌入凸部19は柱状に形成されている。
【0023】
ケース30は、図1〜4及び図6に示すように、例えば電気的な絶縁性を有する樹脂からなり、上方(一方向)に開口する有底筒状に形成されている。本実施形態では、立方体を基調とする箱型に形成され、その面の一つが開口している。前述した本体部10は、このケース30の開口から内部に挿入される(例えば図4参照)。
ケース30の底壁部31には、その厚さ方向に貫通してピン端子15を挿嵌する挿嵌孔32が形成されている。この挿嵌孔32は、ピン端子15の数と配置に対応するように複数形成されている。挿嵌孔32の内径寸法は、ピン端子15の直径寸法に応じて形成されており、具体的には、ピン端子15の直径寸法よりも僅かに小さく形成されている。これにより、ピン端子15が挿嵌孔32に挿嵌された状態では、挿嵌孔32の内周面とピン端子15の外周面とが密着する。
【0024】
また、本実施形態では、ケース30内側に位置する挿嵌孔32の開口部分にはテーパ―32aが形成されている。このテーパ―32aは、挿嵌孔32の軸方向に沿ってケース30の外側から内側に向かうにしたがって挿嵌孔32の径寸法が大きくなるように傾斜している。これにより、ピン端子15をケース30内側から挿嵌孔32に挿嵌する際には、テーパ―32aによってピン端子15の先端を挿嵌孔32に導入しやすくなる。
【0025】
さらに、本実施形態では、挿嵌孔32の一部が、ケース30の底壁部31の外面31dから突出する突起部33に形成されている。すなわち、本実施形態では、挿嵌孔32の軸方向長さが、底壁部31の厚さ寸法に突起部33の突出長さを足し合わせた長さとなっている。ただし、挿嵌孔32の軸方向長さは、ケース30内側から挿嵌孔32に挿嵌されたピン端子15がケース30外部に突出するように、端子台14から突出するピン端子15の長さよりも短く設定されている。
【0026】
さらに、ケース30の底壁部31には、ケース30に収容された本体部10の嵌入凸部19を嵌め入れる嵌入孔34が、挿嵌孔32からケース30の内側に連ねて形成されている。なお、図6(a)において、嵌入孔34の平面視形状は挿嵌孔32を中心とした円形状となっているが、少なくとも嵌入凸部19の平面視形状に対応していればよく、例えば多角形状となっていてもよい。
【0027】
そして、図3に示すように、本実施形態の嵌入孔34の内周面は、その軸方向に平行するように形成され、前述した嵌入凸部19の外周面19aに平行している。さらに、本実施形態では、平面視した嵌入孔34の大きさが、平面視した嵌入凸部19の大きさと同等あるいは僅かに小さく設定されている。また、本実施形態では、嵌入孔34の軸方向長さが嵌入凸部19の突出長さと等しくなっている。
さらに、本実施形態の嵌入孔34は、端子台14に対向する底壁部31の底面31cから突出する環状のリブ35によって構成されている。なお、リブ35の突出長さは、前述した嵌入孔34の軸方向長さと同等である。
【0028】
以上のように挿嵌孔32及び嵌入孔34が構成されていることで、図1〜3に示すように、ピン端子15を挿嵌孔32に挿嵌し、さらに、嵌入凸部19を嵌入孔34に嵌め入れた状態では、ピン端子15がケース30の外面31dから突出すると共に、嵌入凸部19の外周面19aが嵌入孔34の内周面に押し付けられて密着する。また、嵌入凸部19の突出方向の先端面が底壁部31の底面31cに当接する。さらに、端子台14の裏面14dがリブ35の突出方向の先端面(ケース30の内側に位置する嵌入孔34の開口の周縁領域)に当接する。
【0029】
また、図1,6に示すように、本実施形態のケース30内部には、本体部10の位置決めのための段差が台座36として設けられており、ケース30に収容された本体部10の磁心13の端部が、この台座36上に配置される。なお、磁心13を台座36上に配した状態では、前述した本体部10の嵌入凸部19がケース30の底壁部31に当接するように、本体部10のボビン12が底壁部31上に配される。
また、本実施形態のケース30には螺子孔37が形成されている。この螺子孔37は、コイル部品1を基板5(図7参照)に実装する際に、螺子を螺着させることでコイル部品1を基板5に対して強固に固定する役割を果たす。
【0030】
さらに、図4,6に示すように、本実施形態のケース30には、その底壁部31の外面31dから突出する複数の脚部38が形成されている。複数の脚部38は、平面視矩形とされた底壁部31の外面31dの四隅、及び、互いに平行する二対の対辺のうち一対の対辺の中間部分に形成されている。また、対辺の中間部分に形成された脚部38の先端面には、前述した螺子孔37が開口している。
複数の脚部38の突出長さは、互いに等しく設定されている。また、複数の脚部38の突出長さは、前述した突起部33の長さよりも長く、かつ、ケース30外部に突出するピン端子15の長さよりも短く設定されている。
【0031】
そして、充填樹脂50は、上記構成のケース30内に充填されており、ケース30内に配された本体部10(コイル11、ボビン12、磁心13及び端子台14)を封止している。
【0032】
次に、上記構成のコイル部品1を製造する方法について説明する。
コイル部品1を製造する際には、はじめに、本体部10をケース30内に収容する(収容工程)。この工程では、本体部10は端子台14から突出するピン端子15がケース30の底面31cに対向するようにケース30内に収容され、各ピン端子15が各挿嵌孔32に挿嵌される。これにより、ピン端子15の先端がケース30の外面31dから突出する。また、この際には、各嵌入凸部19がケース30の各嵌入孔34に嵌め入れられて、嵌入凸部19の突出方向の先端面が底壁部31の底面31cに当接する。さらに、端子台14の裏面14dが各リブ35の突出方向の先端面に当接する(特に図3参照)。
【0033】
この状態においては、各ピン端子15が各挿嵌孔32に挿嵌されることで、各ピン端子15の外周面と挿嵌孔32の内周面とが密着する。また、各嵌入凸部19の外周面19aが各嵌入孔34の内周面に押し付けられて密着する。さらに、本実施形態では、各嵌入凸部19の先端面と底壁部31の底面31cとが密着し、端子台14の裏面14dと各リブ35の突出方向の先端面とが密着する。このため、ケース30の内部空間から挿嵌孔32を通じてケース30外部に至る経路方向に関して、本体部10とケース30とが密着する長さ(ラップ代の長さ)が、嵌入凸部19及び嵌入孔34の分だけ延長される。
【0034】
収容工程後には、溶融した樹脂(溶融樹脂)をケース30に流し込む(樹脂注入工程)。なお、溶融樹脂は、製造後のコイル部品1において充填樹脂50(図1,2参照)となるものである。この樹脂注入工程においては、ケース30内に配された本体部10を溶融樹脂内に埋設する。
その後、周囲を減圧して溶融樹脂中に含まれる気泡(ボイド)を抜く脱泡工程を実施する。最後に、溶融樹脂を硬化させて充填樹脂50とするキュア工程を実施することで、コイル部品1の製造が完了する。なお、脱泡工程後の状態において、例えば溶融樹脂の液面が許容範囲を超えて低下した場合には、溶融樹脂をケース30に流し込む樹脂注入工程を再度実施した後に、上記キュア工程を実施してもよい。
【0035】
以上のように製造されるコイル部品1を、例えば図7に示すように、基板5に実装する場合には、ケース30の底壁部31が基板5の実装面5cに対向するようにケース30を実装面5cに載置し、また、各ピン端子15を基板5に挿通させた上で、各ピン端子15をはんだ7により基板5に接合すればよい。
具体的には、基板5の裏面5dに突出するピン端子15の先端部と基板5の裏面5dとをはんだ7により接合する。さらに、本実施形態のコイル部品1では、ケース30の脚部38の先端が実装面5cに当接するため、実装面5cと突起部33との間には隙間が生じる。この隙間部分にはピン端子15の基端部が露出するため、ピン端子15の基端部と基板5の実装面5cとをはんだ7で接合することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のコイル部品1によれば、本体部10に嵌入凸部19が形成されると共に、ケース30に嵌入孔34が形成されることで、ケース30の内部空間から挿嵌孔32を通じてケース30外部に至る経路方向に関して、本体部10とケース30とが密着する長さ(ラップ代の長さ)を、嵌入凸部19及び嵌入孔34の分だけ延長することができる。
特に、本実施形態のコイル部品1では、挿嵌孔32の軸方向長さが突起部33により延長されているため、挿嵌孔32の内周面に対するピン端子15の密着面積を増やすことができる。したがって、ラップ代をさらに延長できる。
【0037】
このため、コイル部品1の製造に際して、溶融樹脂をケース30内に流し込む樹脂注入工程を実施した後に、溶融樹脂をキュアせずに脱泡工程を実施しても、溶融樹脂が挿嵌孔32から外部に漏れることを抑制し、ケース30の外部に突出するピン端子15に樹脂が付着することを抑制できる。すなわち、コイル部品1の歩留まり向上を図ることができる。
【0038】
また、樹脂注入工程において本体部10を溶融樹脂内に埋設できるため、従来のコイル部品1を製造する工程のうち「一次樹脂注入工程」及び「一次キュア工程」が不要となり、コイル部品1の製造工程数を減らすことができる。すなわち、コイル部品1の製造効率向上を図ることができる。
さらに、上述した樹脂漏れを抑えるための嵌入凸部19及び嵌入孔34は、本体部10及びケース30にそれぞれ形成されているため、コイル部品1の構成部品点数が増加せず、また、これに伴うコイル部品1の製造工程数も増えない。以上のことから、コイル部品1の製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態のコイル部品1によれば、ケース30の嵌入孔34が底壁部31から突出するリブ35によって構成されているため、嵌入孔34を有するケース30を容易に製造することができる。すなわち、リブ35が形成されていない従来形状のケース30を成形するための金型に対し、リブ35成形用の溝を追加工するだけで、容易に嵌入孔34をケース30に形成することができる。
【0040】
また、本実施形態のコイル部品1によれば、ケース30の底壁部31の外面31dに、突起部33よりも長く、かつ、ケース30外部に突出するピン端子15の長さよりも短い脚部38が形成されていることで、基板5の実装面5c及び裏面5dの両方において各ピン端子15をはんだ7で接合できるため、各ピン端子15を基板5に対して強固に接合することが可能となる。したがって、コイル部品1と基板5との電気接続の信頼性向上を図ることができる。
【0041】
〔第二実施形態〕
次に、図8を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態のコイル部品1と比較して、嵌入凸部及び嵌入孔の形状のみが異なっており、その他の構成については、第一実施形態と同様である。本実施形態では、第一実施形態と同様の構成については同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0042】
図8に示すように、本実施形態のコイル部品を構成する端子台14には、第一実施形態と同様に、ケース30の底壁部31に向けて突出してピン端子15の基端部を囲む嵌入凸部21が形成されている。
そして、本実施形態の嵌入凸部21の外周面21aは、嵌入凸部21の突出方向先端側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜している。すなわち、本実施形態の嵌入凸部21は錐台状(円錐台状や角錐台状)に形成されている。
【0043】
一方、本実施形態のケース30の底壁部31には、第一実施形態と同様に、上記嵌入凸部21を嵌め入れる嵌入孔39が挿嵌孔32からケース30の内側に連ねて形成されている。
そして、本実施形態の嵌入孔39の内周面は、その軸方向に対して傾斜するように形成され、嵌入凸部21の外周面21aに平行するように傾斜している。すなわち、本実施形態の嵌入孔39の径寸法はケース30の内側から挿嵌孔32に向かうにしたがって小さくなっている。なお、嵌入孔39の軸方向長さは嵌入凸部21の突出長さと同等であることが好ましいが、例えば嵌入凸部21の突出長さよりも短く設定されてもよい。
【0044】
さらに、本実施形態の嵌入孔39は、第一実施形態と同様に、底壁部31の底面31cから突出する環状のリブ41によって構成されており、リブ41の突出長さは、例えば嵌入孔39の軸方向長さと同等である。
なお、本実施形態では、第一実施形態における挿嵌孔32のテーパ―32a(図3参照)が、上述した嵌入孔39に一体に形成されている。
【0045】
以上のように構成される本実施形態のコイル部品によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
特に、本実施形態のコイル部品では、嵌入凸部21の外周面21a及び嵌入孔39の内周面が互いに平行するように傾斜しているため、嵌入凸部21を嵌入孔39に押し込むことで、嵌入凸部21の外周面21aが嵌入孔39の内周面に押し付けられて密着できる。すなわち、嵌入凸部21や嵌入孔39の寸法精度(例えば嵌入凸部21や嵌入孔39の径寸法の精度)が低くても、嵌入凸部21の外周面21aを容易かつ確実に嵌入孔39の内周面に密着させることができる。したがって、第一実施形態の場合と比較して、コイル部品の歩留まり向上を容易に図ることが可能となる。
【0046】
〔第三実施形態〕
次に、図9を参照して本発明の第三実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態のコイル部品1と比較して、嵌入凸部や嵌入孔の周辺構造のみが異なっており、その他の構成については、第一実施形態と同様である。本実施形態では、第一実施形態と同様の構成については同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0047】
図9に示すように、本実施形態のコイル部品1を構成する端子台14には、第一実施形態と同様の嵌入凸部19が形成されている。さらに、本実施形態の端子台14には、ケース30の底壁部31に向けて突出して嵌入凸部19の外周面19aに間隔をあけて配される環状凸部23が形成されている。また、本実施形態では、嵌入凸部19の外周面19aに対向する環状凸部23の内周面23bが、環状凸部23の突出方向に平行している。そして、これら嵌入凸部19及び環状凸部23の突出長さは、僅かに異なっていてもよいが、同等であると好ましい。
なお、環状凸部23の軸方向から見た環状凸部23の内周面23bの平面視形状は、嵌入凸部19の外周面19aの平面視形状に相似していてもよいが、例えば異なっていてもよい。また、環状凸部23の内周面23bの平面視形状は、円形状あるいは多角形状など任意の形状であってよい。
【0048】
また、本実施形態のケース30の底壁部31には、第一実施形態と同様の嵌入孔34が挿嵌孔32からケース30の内側に連ねて形成されている。この嵌入孔34は、第一実施形態同様のリブ35によって構成されている。
そして、本実施形態では、リブ35の外周面がリブ35の突出方向に平行するように形成され、環状凸部23の内周面23bに平行している。なお、嵌入孔34の軸方向から見たリブ35の外周面の平面視形状は、少なくとも前述した環状凸部23の内周面23bの平面視形状に対応していればよく、任意の形状となっていてよい。
【0049】
さらに、本実施形態では、前述した環状凸部23の内径寸法がリブ35の外径寸法と同等あるいは僅かに小さく設定されている。したがって、ピン端子15を挿嵌孔32に挿嵌し、さらに、嵌入凸部19を嵌入孔34に嵌め入れた状態では、リブ35が環状凸部23の内側に嵌め入れられる。これにより、環状凸部23の内周面23bとリブ35の外周面とが密着する。
また、図示例のように、嵌入凸部19、環状凸部23及びリブ35の突出長さが同等であれば、嵌入凸部19を嵌入孔34に嵌め入れた状態において、嵌入凸部19の突出方向の先端面が底壁部31の底面31cに当接し、端子台14の裏面14dがリブ35の突出方向の先端面に当接する。さらに、環状凸部23の先端面が底壁部31の底面31cに当接する。
【0050】
以上のように構成される本実施形態のコイル部品1によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のコイル部品1によれば、環状凸部23の内周面23bとリブ35の外周面とが密着するため、第一実施形態と比較して、ラップ代をさらに延長することができる。したがって、ケース30内に流し込まれた溶融樹脂をキュアせずに脱泡工程を実施しても、溶融樹脂が挿嵌孔32から外部に漏れることをより確実に防いで、コイル部品1の歩留まり向上をさらに図ることができる。
【0051】
なお、上述した第三実施形態の構成には、前述した第二実施形態の構成が適用されてもよい。例えば、図8に示す第二実施形態の場合と同様に、図9に示す嵌入凸部19の外周面19aや嵌入孔34の内周面を傾斜させてもよい。
【0052】
また、上記第三実施形態においては、例えば、環状凸部23の内周面23bが、環状凸部23の突出方向先端側に向かうにしたがって径方向外側に傾斜し、さらに、リブ35の外周面が、環状凸部23の内周面23bに平行するように傾斜していてもよい。この場合には、環状凸部23やリブ35の寸法精度(例えば環状凸部23の内周面23bやリブ35の外周面の径寸法の精度)が低くても、環状凸部23の内周面23bを確実にリブ35の外周面に密着させることができる。
【0053】
さらに、上記第三実施形態では、複数の嵌入凸部19を個別に囲む複数の環状凸部23が、互いに離れて配されているが、例えば一体に形成されてもよい。言い換えれば、端子台14の裏面側14dに、複数のリブ35を個別に嵌め入れる複数の環状凹部が形成されてもよい。
【0054】
以上、実施形態により本発明の詳細を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した三つの実施形態では、嵌入孔34,39全体がリブ35,41によって構成されているが、嵌入孔34,39の一部あるいは全体がケース30の底壁部31に形成されてもよい。なお、嵌入孔34,39全体がケース30の底壁部31に形成される場合には、嵌入凸部19を嵌入孔34に嵌め入れた状態において、端子台14の裏面14dが底壁部31の底面31c(ケース30内側に位置する嵌入孔34,39の開口の周縁)に当接する。
また、ピン端子15は、L字状に形成されたリードピン25によって構成されることに限らず、少なくともコイル11の端部に接続されて端子台14から突出していればよい。
【符号の説明】
【0055】
1 コイル部品
10 本体部
11 コイル
12 ボビン
14,14A,14B 端子台
15 ピン端子
19,21 嵌入凸部
19a,21a 外周面
23 環状凸部
30 ケース
31 底壁部
31c 底面
31d 外面
32 挿嵌孔
33 突起部
34,39 嵌入孔
35,41 リブ
38 脚部
50 充填樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9