特許第6103786号(P6103786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6103786印刷材料及び直接印刷された装飾的パネルを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103786
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】印刷材料及び直接印刷された装飾的パネルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20170316BHJP
   B32B 38/14 20060101ALI20170316BHJP
   B44C 3/02 20060101ALI20170316BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B32B27/00 E
   B32B38/14
   B44C3/02 A
   B65D81/38
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-544508(P2015-544508)
(86)(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公表番号】特表2016-505414(P2016-505414A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】EP2013075627
(87)【国際公開番号】WO2014102046
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年6月1日
(31)【優先権主張番号】12199682.1
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13177791.4
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512162258
【氏名又は名称】サーフェス テクノロジーズ ゲーエムベーハー アンド カンパニー,カーゲー
【氏名又は名称原語表記】SURFACE TECHNOLOGIES GMBH & CO.KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】ハニング, ハンス−ユルゲン
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−508683(JP,A)
【文献】 特開2011−230499(JP,A)
【文献】 特開平06−212549(JP,A)
【文献】 特開平07−042096(JP,A)
【文献】 特開2000−170361(JP,A)
【文献】 特表2010−521592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B44C 3/02
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接印刷された装飾的パネルを製造する方法であって、
a)板形状の担体を用意する工程、
b)前記板形状の担体上に樹脂層を適用する工程、
c)前記板形状の担体上に適用された樹脂層に、紙又は不織布層を適用する工程、及び
d)得られたラミネート構造を40℃以上と250℃以下の間の温度でカレンダー加工をする工程
を含み、 前記カレンダー加工の工程後に、前記紙又は不織布層に樹脂組成物が適用され、
該樹脂組成物は、0.1μm以上と120μm以下の間の平均粒径d50を有する固体材料を、0.5重量%以上と85重量%以下の間で含むことを特徴とし、さらに
e)前記樹脂組成物の適用後に、直接印刷の手段によって装飾層が適用される工程を含み、
前記装飾層を適用するために放射線(radiation)硬化性の塗料及び/又はインクが使用される方法。
【請求項2】
前記カレンダー加工工程の後に、前記紙又は不織布層に樹脂組成物が適用され、
該樹脂組成物は、固体材料として、
二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化バリウム、クロム酸バリウム、酸化ジルコニウム(IV)、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化鉄、鉄(III)ヘキサシアノフェレート、酸化クロム、酸化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、酸化コバルト、リン酸コバルト、アルミン酸コバルト、酸化バナジウム、酸化ビスマスバナジウム、酸化スズ、酸化銅、硫酸銅、炭酸銅、アンチモン酸鉛、クロム酸鉛、酸化鉛、炭酸鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルミネートサルフェート、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化ヒ素、硫化水銀、カーボンブラック、グラファイト、セルロース又はそれらの混合物からなる群の少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カレンダー加工工程の後に、前記紙又は不織布層に樹脂組成物が適用され、
該樹脂組成物は、樹脂成分として、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フタル酸ジアリル又はそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記カレンダー加工工程の後に、前記紙又は不織布層に樹脂組成物が適用され、
該樹脂組成物は、
15重量%以上と95重量%以下の間の樹脂含有率を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カレンダー加工工程の後に、前記紙又は不織布層に樹脂組成物が適用され、
該樹脂組成物は硬化剤を含有し、
該硬化剤は、前記樹脂組成物中に0.05重量以上%と2.0重量%以下の間の濃度で含有される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カレンダー加工工程の後に、前記紙又は不織布層に樹脂組成物が適用され、
前記樹脂組成物が、5g/m2以上と50g/m2以下の間の面密度で適用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)で板形状の担体への樹脂層の適用に先立って、硬化剤が前記板形状の担体に適用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化剤で覆われた前記板形状の担体の表面領域が、好ましくは、35℃以上と90℃以下の間の表面温度に加熱される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程c)で、30g/m2以上と80g/m2以下の間の坪量を有する紙又は不織布が、前記板形状の担体に適用された樹脂層に適用される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
)摩耗保護層を前記装飾層に適用する工
さらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程e)で、前記装飾層が、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット又はレーザ印刷の工程により適用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
表層及び/又は耐摩耗層として少なくとも部分的に放射線(radiation)硬化性の組成物が適用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
板形状の担体、前記板形状の担体に適用された樹脂層、含浸されていない及び印刷されていない紙又は不織布の層、該紙又は前記不織布層に適用された樹脂組成物該樹脂組成物に適用された塗料層、及び少なくとも前記塗料層に適用された表層及び/又は耐摩耗層を含む直接印刷された装飾的パネルであって、
記樹脂組成物は、0.1μm以上と120μm以下の間の平均粒径d50を有する固体材料を0.5重量%以上と85重量%以下の間で含み、
前記樹脂組成物は、樹脂成分として、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フタル酸ジアリル、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、濃度15重量%以上と95重量%以下のの濃度で、及び硬化剤を0.05重量%以上と2.0重量%以下の間の濃度で含み、
前記塗料層が放射線(radiation)硬化性の塗料及び/又はインクを含むことを特徴とする装飾的パネル。
【請求項14】
前記板形状の担体の印刷される側と反対側に裏張り層を含まない、請求項13に記載の装飾的パネル。
【請求項15】
少なくとも前記板形状の担体の縁領域に輪郭を含む、請求項13又は14に記載の装飾的パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾的パネルに直接印刷するための印刷基材を製造する方法に関する。それに加えて、本発明は、本発明による方法に従って製造された印刷基材を含む装飾的パネルに関する。本発明は、特に、裏張り層なしで直接印刷された装飾的パネルを製造する方法及び本発明による方法に従って製造された裏張り層のない装飾的パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の語義において「装飾的パネル」という用語は、担体板上に適用された装飾を含む、壁、天井又は床のパネルを意味する。装飾的パネルは、部屋の内部デザイン及び建物の装飾的な外装材のためのデザインの両方の分野で、例えば展示小間の構築において、種々の方法で使用される。装飾的パネルの最も一般的な使用の1つは、床カバーとしてそれらを使用することである。その際、装飾的パネルは、天然材料を模写することを意図した装飾をしばしば含む。
【0003】
そのような模写される天然材料の例は、楓、樫、カバノキ、桜、トネリコ、クルミ、栗、ウェンジなどの木材種、又はさらに、パンガパンガ、マホガニー、竹及びブビンガなどの外国産の木材である。それに加えて、しばしば石の表面又は陶磁器の表面などの天然材料も模写される。
【0004】
これまで、そのような装飾的パネルは、所望の装飾を予め印刷された装飾的な紙が担体板上に適用されて、次に、その装飾的な紙にいわゆる上張りが貼られたラミネートとして製造されることが多かった。適用された装飾的な紙の収縮効果による装飾的パネルの変形、いわゆるカッピングを避ける目的で、続いて、上記担体板の装飾的な紙と反対側に裏張り紙が適用されて、得られた層化構造が、適当な圧力及び/又は熱で活性化される接着剤を使用してしっかり一緒に結合される。ここで、裏張り層により担体板に作用する力は、カッピングにより引き起こされる引っ張る力を相殺すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この点で、裏張り層の適用には、さらなる加工処理工程が必要であり、したがって、製造コストが増大する。
【0006】
これらの装飾的パネルの所望の適用分野に応じて、それらは、異なった材料で作製することができる。その際、特に、担体の材料は適用分野に応じて選択することができる。したがって、担体は、装飾的パネルが過剰な湿気又は気象条件に曝されないという条件で、例えば、木材を主体とする材料からなってもよい。しかしながら、パネルが、例えば、湿気の多い部屋又は戸外で使用されることが意図されるならば、担体は、例えば、プラスチック材料からなっていてもよい。
【0007】
本発明の語義において、木材を主体とする材料は、固体の木材材料に加えて、交差ラミネート製材(cross-laminated timber)、糊付けラミネート製材(glue-laminated timber)、合板、ベニヤ(合)板、ラミネートされたベニヤ建材(ベニヤ製材)、平行ストランド木材(parallel strand lumber)及び曲げ合板などの材料である。それに加えて、本発明の語義において木材を主体とする材料とは、さらに、プレスボード(pressboards)、押し出しボード(extruded boards)、配向性ストランドボード(OSB)及びラミネートされたストランド木材などの樹脂合板並びに木材繊維絶縁ボード(HFD)、中程度の硬さの及び硬い繊維板(MB、HFH)、特に中程度の密度の繊維板(MDF)及び高密度の繊維板(HDF)などの木材繊維材料である。木材ポリマー材料(木材プラスチック複合体、WPC)、発泡体、剛直な発泡体又はハニカム紙などの軽量の芯材料とそれらに適用された木材層で作製されたサンドイッチボード、例えばセメントを用いて鉱物で硬質化した樹脂合板などの現代の木材を主体とする材料までも、本発明の語義において木材を主体とする材料である。それに加えて、コルクも、本発明の語義における木材を主体とする材料に該当する。
【0008】
対応するパネルを製造するために使用することができるプラスチック材料は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はそれらの混合物若しくは共重合体などの熱可塑性プラスチック材料である。該プラスチック材料として、炭酸カルシウム(チョーク)、酸化アルミニウム、シリカゲル、石英粉末、木材粉末、石膏などの一般的充填剤を含有してもよい。それに加えてプラスチック材料は知られた方法で着色することができる。
【0009】
本発明の語義における用語「直接印刷する」は、パネルの担体に、又は担体に適用された印刷されていない繊維材料層に直接装飾を適用することを意味する。所望の装飾で予め印刷された装飾層が担体に適用される従来の方法と対照的に、直接印刷においては、装飾は、表面コーティング又はパネル製作工程の途中で直接印刷される。ここで、フレキソ印刷、オフセット印刷又はスクリーン印刷などの種々の印刷技法を使用することができる。特にインクジェット法又はレーザ印刷などのディジタル印刷技法を使用することができる。
【0010】
本発明の語義において繊維材料という用語は、植物、動物、鉱物又はさらに合成繊維を主体とする紙及び不織布並びに板紙などの材料を意味する。例は、植物繊維に基づく繊維材料であり、並びにセルロース繊維で作製された紙及び不織布に加えて、麦藁、トウモロコシ藁、竹、葉、藻抽出物、麻、綿又は油ヤシ繊維などのバイオマスで作製されたボードである。動物の繊維材料の例としては、羊毛又は馬の毛などのケラチンを主体とする材料である。鉱物の繊維材料の例としては、鉱物ウール又はガラスウールである。
【0011】
適用された装飾層を保護するために、耐摩耗層(wearing layer)又は表層が装飾層の表面に通常適用される。本発明の語義において耐摩耗層又は表層とは、汚れ、湿気及び擦過などの機械的衝撃により引き起こされる摩耗または損傷から装飾層を特に保護する外側の境界として適用された層である。
【0012】
そのような耐摩耗層又は表層において装飾と合致する表面構造を導入することがしばしば意図される。表面構造が装飾と合致することは、装飾的パネルの表面が、触覚に関してさえ、できるだけ原物に近い天然材料の複製を達成するために、その形状及びパターンに関して、適用された装飾に対応する触覚で感知できる構造を有することを意味する。
【0013】
装飾的パネルの直接印刷中に起こり得る問題は、印刷されるべき装飾的パネルの表面が、対応する装飾が適用され得る最適の印刷基材でないことである。ここで、問題は、印刷基材として装飾的パネルの担体板に適用された紙又は不織布層に対して、塗布した樹脂が浸透すること、固定のために適用された樹脂が紙又は不織布の印刷されることを意図された側まで浸透して、そこで印刷インクの接着問題を生じさせ得ることである。この問題を克服するためには、紙又は不織布に、紙又は不織布を通る樹脂の浸透を防止するバリア層を設けることができる。しかしながら、そのようなバリア層は、印刷工程で使用されたインクが、紙又は不織布中に定着(settle)しないか又は十分定着(settle)せずに表面上にとどまり、それが印刷の品質に悪影響を及ぼすことをしばしば招く。さらに、紙又は不織布が担体板に適用される前に、紙又は不織布の印刷されるべき側にインクを受け入れる層を設けて、それからインクを受け入れる層に印刷することが提供され得る。次に、このように準備された装飾的な紙が担体板上に適用される。しかしながら、後で表層または耐摩耗層を適用する中で、接着問題が生じ得るので、最終の複合体ラミネートには十分な安定性がなくて、例えば、装飾的な紙層におけるラミネートの裂け目が生じる。
【0014】
したがって、先行技術で知られた問題を克服することができる装飾的パネル上に直接印刷するための印刷基材を製造する方法を提供することが本発明の目的である。それに加えて、対応する印刷基材を有する装飾的パネルを提供することも本発明の目的である。特に、裏張り層のない直接印刷された装飾的パネルを製造する方法を提供すること、及び裏張り層がなく、対応する装飾的パネルを提供することが本発明の目的である。
【0015】
これらの目的は、請求項1に記載の方法及び請求項14に記載の装飾的パネルより達成される。本発明の実施形態は、従属の請求項及びさらに明細書において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明により、
a)板形状の担体を用意する工程、
b)前記板形状の担体上に樹脂層を適用する工程、
c)印刷されていない紙又は不織布層を前記板形状の担体上に適用する工程、及び
d)40℃以上と250℃以下の間の温度で上記のラミネート構造をカレンダー加工する工程を含み、装飾的パネルに直接印刷するための印刷基材を製造する方法であって、
該カレンダー加工の工程の後に、0.5重量%以上と85重量%以下の間、好ましくは1,0重量%以上と80重量%以下の間で、0.1μm以上と120μm以下の間、好ましくは1μm以上と100μm以下の間の平均粒径d50を有する固形物を含む樹脂組成物を適用することを特徴とする方法が提案される。
【発明の効果】
【0017】
驚くべきことに、印刷されていない紙又は不織布層をカレンダー加工した後の、対応する固体材料含有率 (solid material content)を有する印刷基材を用いることが、その後の直接印刷の工程に非常に適した表面を提供し、さらに、前記表面は、続いて適用される表層又は耐摩耗層に対して非常に優れた接着性も有し、そのため、本発明に係る方法を使用して製造されたラミネートは高い安定性を有する、ということが見出された。ここで、樹脂組成物の特定された固体材料含有率は、液体樹脂組成物に関連する。本発明では、カレンダー加工工程後に適用された樹脂組成物が、板形状の担体又はそれに適用された樹脂層まで少なくとも部分的にしみ通る程度に、適用された紙又は不織布層中にしみ通るようにしてもよい。さらに、驚くべきことに、そのような製造方法により、装飾的パネルのカッピングを回避するための裏張り層の適用を不要にすることができることが見出された。このことは、対応する加工処理工程の必要性を排除すると同時に、対応する材料の節約を達成することができるので、大きい経済的利益をもたらす。
【0018】
この点で、本発明により提供される印刷基材は、フレキソ印刷、オフセット印刷又はスクリーン印刷並びにインクジェット工程又はレーザ印刷などのディジタル印刷技法に適する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の方法の1つの実施形態によれば、樹脂組成物は、板形状の担体への紙層又は不織布層のカレンダー加工後に適用され、固体材料として、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化バリウム、クロム酸バリウム、酸化ジルコニウム(IV)、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、鉄(III)ヘキサシアノフェレート、酸化クロム、酸化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、二酸化コバルト、リン酸コバルト、アルミン酸コバルト、酸化バナジウム、ビスマス酸化バナジウム、酸化スズ、酸化銅、硫酸銅、炭酸銅、アンチモン酸鉛、クロム酸鉛、酸化鉛、炭酸鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルミネートサルフェート、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化ヒ素、硫化水銀、カーボンブラック、グラファイト、セルロース繊維又はそれらの混合物からなる群の少なくとも1種の化合物を含む。そのような固体材料、特に着色された固体材料を使用することにより、その装飾の印刷を役立つ性質を有する着色を提供することができる。例えば、暗色の木材種を表すべき装飾的なデザインにおいては、褐色又は褐色を基調とする色調の印刷基材が用いられるべきであり、一方、明色の木材種又は明るく着色した石を表すべき装飾的なデザインにおいては、黄色又は白色を基調とする色調の印刷基材が用いられるべきである。板形状の担体に適用された樹脂組成物におけるセルロース繊維の使用は、特に、樹脂組成物が適用される担体板表面上のいかなる不規則性も、後で印刷されるべき表面に対する影響を有しないという有益な効果を有し、印刷像の有意の改善をもたらす。そのような不規則性(凹凸)は、例えば、担体板の摩擦から生ずる摩擦溝又はコンベアベルトなどの輸送手段により惹起される圧痕であり得る。セルロース繊維が使用される場合、それらは好ましくは、10μm以上と100μm以下の間の範囲内、特に25μm以上と90μm以下の間の範囲内の繊維の径サイズ(grain size)を有する。樹脂組成物に含まれる固体材料中のセルロース繊維の比率は、例えば、0重量%以上と100重量%以下の間、好ましくは40重量%以上と100重量%以下の間、特に60重量%以上と100重量%以下の間の範囲内であってもよい。ここで、セルロース繊維を使用する場合における樹脂組成物中の固体材料の好ましい比率は、重量%の範囲の下限で、好ましくは0.5重量%と3.5重量%の間、特に1.0重量%と2.5重量%の間であるが、他の固体材料の適当な例としてリストに挙げた樹脂組成物中の固体材料の好ましい比率は、好ましくは、5重量%以上と85重量%以下の間、好ましくは10重量%以上と80重量%以下の間、より好ましくは35重量%以上と75重量%以下の間である。これは、リストに挙げた他の固体材料の比重と比較して、固体材料として添加することができるセルロース繊維の低い比重に特に基づく。
【0020】
特に、本発明によれば、カレンダー加工工程後に樹脂組成物を適用してもよい。該樹脂組成物は、プルシアンブルー、ブリリアントイエロー、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、酸化クロムグリーン、コバルトブルー、コバルトセレスタイト(coelin)ブルー、コバルトバイオレット、イルガジンレッド、酸化鉄ブラック、マンガンバイオレット、フタロシアニンブルー、シェンナ、チタニウムホワイト、ウルトラマリンブルー、ウルトラマリンレッド、アンバー(琥珀色)、カオリン、ケイ酸ジルコニウム顔料、モノアゾイエロー及びモノアゾオレンジ、チオインジゴ、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ピラゾロン顔料、N−アセトアニリド顔料(N-acetoacetanilide pigments)、アゾ金属錯塩顔料、ジアリール黄色顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロ−ピロール顔料(DPP)、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、イソインドリノン顔料、銅フタロシアニン顔料、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の有機又は無機顔料を含む。
【0021】
本発明の方法のさらなる実施形態によれば、カレンダー加工工程後に、樹脂成分として、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フタル酸ジアリル又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む樹脂組成物を適用してもよい。驚くべきことに、対応する樹脂成分を樹脂組成物中の固体材料含有率と組み合わせて使用すると、最終工程で適用される表層及び/又は耐摩耗層に関して、大きく改善された接着性が可能になり、ラミネートの改善された安定性をもたらす印刷基材を提供できることが見出された。ここで、樹脂組成物は、例えば、15重量%以上と95重量%以下の間、好ましくは20重量%以上と90重量%以下の間、より好ましくは25重量%以上と65重量%以下の間の樹脂含有率を有していてもよい。
【0022】
さらに、本発明の方法の1つの実施形態において、カレンダー加工工程後に、例えば、0.05重量%以上と3.0重量%以下の間、好ましくは0.15重量%以上と2.0重量%以下の間、より好ましくは0.5重量%以上と2.0重量%以下の間の濃度で含まれ得る硬化剤を含む樹脂組成物を適用してもよい。樹脂組成物中に硬化剤を提供することにより、板形状の担体上に適用された紙に応じた樹脂組成物の結合又は硬化挙動を最適化することが可能になる。
【0023】
本発明の方法の1つの実施形態によれば、硬化剤は、例えば、有機塩の溶液であってもよい。好ましくは、前記硬化剤は、好ましくはpH0.5以上及びpH7未満の間、より好ましくはpH0.5超及びpH6以下の間の酸性のpH値を有する。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態において、いわゆる潜在性硬化剤が硬化剤として使用される。潜在性硬化剤は、それらを樹脂に添加した後、一方では室温における十分な処理時間、他方では最短の硬化時間がその後の処理温度で達成されることで特徴づけられる。潜在性硬化剤の効果は、それらは、通常の温度では効果が無くて、昇温時にのみ又は硬化工程を促進する化学反応に基づいてのみ、酸を放出するという事実に基づく。潜在性硬化剤の例として、亜硫酸のアルキル又はアルカノールアミン塩、アミドスルホン酸、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、p−トルエンスルホン酸、モルホリン、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、エタノールアミン塩酸塩、ジメチルエタノールアンモニウム亜硫酸塩、ジエタノールアンモニウムスルファミン酸塩又はマレイン酸が挙げられる。
【0025】
特に、該硬化剤は、水性、好ましくは非イオン性溶液であってよい。適当な硬化剤の例はMH−180B(Melatec AG、スイス)である。
【0026】
カレンダー加工工程後、樹脂組成物は、例えば、5g/m2以上と50g/m2以下の間、好ましくは10g/m2以上と40g/m2以下の間の面密度で適用することができる。さらなる実施形態において、樹脂組成物は、少なくとも2段階の適用工程で適用することもできる。
【0027】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、特に、カレンダー加工工程後に標準の粘度カップ(standard flow cup)からの7秒以上と60秒以下の間の流動時間に対応する粘度を有する樹脂組成物を適用してもよい。粘度は、DIN 53211により流出ノズル幅が4mmの流動カップを使用して決定される。
【0028】
カレンダー加工工程に続いて樹脂組成物が適用された後、好ましくは、後で印刷されるべき表面が少なくとも部分的に乾燥される乾燥工程が実施される。この目的で、樹脂組成物が適用された表面において、75℃以上と125℃以下の間、好ましくは80℃以上と110℃以下の間、特に90℃以上と100℃以下の間の表面温度を発生させてもよい。対応する表面温度を発生させるために、例えば、IRエミッター、NIRエミッター、ジェット乾燥機又は同様なデバイスを使用することができる。ここで、前記表面温度は、好ましくは、1秒以上と600秒以下の間、好ましくは5秒以上と400秒以下の間、より好ましくは10秒以上と300秒以下の間の昇温時間に合わせて設定される。
【0029】
カレンダー加工工程後に上記の成分に加えて適用される樹脂組成物は、粘度を調節するための流動調節剤、水、流動改善剤、防腐剤、界面活性剤、発泡防止剤などのさらなる成分又は添加剤を含むことができる。
【0030】
本発明による方法において、板形状の担体上への樹脂組成物の適用、並びに板形状の担体上に適用された紙又は不織布上への樹脂組成物の適用は、共に、カレンダー加工工程後に、塗布ローラー、噴霧デバイス、ナイフコーティング、ブレードコーティング、エアブラッシ、線引きデバイス、細溝ダイス(slot dies)、カーテンコーティング又は他の適当なデバイスにより実施することができる。
【0031】
本発明の方法のさらなる好ましい実施形態では、硬化剤は、工程b)における樹脂層の適用に先立って板形状の担体上に適用される。この場合には、より好ましくは、例えば、pH0.5以上、pH7未満の間、好ましくは、pH0.5超、pH6以下の間のpH値を有する酸性硬化剤が板形状の担体上に適用される。硬化剤は、樹脂組成物の硬化反応に対して反応性であり、又は硬化反応に影響を与え、その樹脂組成物は、紙又は不織布層が板形状の担体に取り付けられることにより適用される
【0032】
さらに、板形状の担体への硬化剤の適用後に熱処理が実施され、板形状の担体の表面温度を好ましくは35℃以上と90℃以下の間の温度に上昇させることにより前記熱処理が行われてもよい。そのような熱処理は、例えば、IRエミッター又はNIRエミッター(近赤外)により実施することができる。
【0033】
工程b)において樹脂層を適用するために、好ましくは、樹脂成分として、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フタル酸ジアリル又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む樹脂組成物を適用してもよい。樹脂組成物は、例えば、5g/m2以上と50g/m2以下、好ましくは以上10g/m2と40g/m2以下の間の面密度で適用することができる。特に好ましくは、樹脂組成物の面密度は、その後の工程c)で適用された紙又は不織布が、樹脂組成物で完全に含浸されることがないように選択される。この目的を達成するために、例えば、樹脂組成物を、工程b)において、粘度カップ(standard flow cup)からの10秒以上と40秒以下の間の流動時間(DIN 53211に従って測定される)に対応する動的粘度で適用してもよい。
【0034】
本発明の方法のさらなる実施形態により、工程c)において、30g/m2以上と80g/m2以下の間、好ましくは40g/m2以上と70g/m2以下の間の坪量を有する紙又は不織布が板形状の担体上に適用される。
【0035】
本発明の方法の1つの実施形態によれば、裏張り層が、装飾的な側の反対側に適用される。その際、裏張り層は、装飾的な側への紙又は不織布と共通のカレンダー加工工程で適用されることが特に好ましい。
【0036】
本発明のさらなる実施形態において、裏張り層は、装飾的な像の適用後にのみ板形状の担体の装飾層の反対側に適用されることが提供され得る。ここで、特に、裏張り層が、表層及び/又は耐摩耗層として、上張りと共通の工程で一緒に適用されるようにしてもよい。
【0037】
しかしながら、本発明の関係において、裏張り層の適用が不要になれば、それが特に好ましい。驚くべきことに、上記の製造方法により、装飾的な板のカッピングを回避しながら、裏張り層の適用を不要にすることができることが示された。これは、対応する加工処理工程を排除すると同時に、対応する材料を節約できるので、大きい経済的利益をもたらす。
【0038】
印刷基材を装飾的な側に適用した後、装飾を適当な印刷技法により適用することができて、その場合に、フレキソ印刷、オフセット印刷又はスクリーン印刷工程及び特にディジタル印刷技法、例えば、インクジェット工程又はレーザ印刷が適している。
【0039】
好ましくは、放射線(radiation)硬化性の塗料及び/又はインクが、直接印刷により装飾層を適用するために使用される。本発明の語義において、放射線硬化性とは、塗料及び/又はインクがUV照射又は電子ビーム照射などの電磁波照射により硬化されることを意味する。ここで、特に、塗料及び/又はインクが、放射線又は光に誘発されて重合する対応成分を含んでいてもよい。適当な成分の例は、アクリレート、エポキシド又はエチレンイミンなどの環状アミンである。
【0040】
適用された装飾層を保護する目的で、特に、後続の加工処理工程で装飾層の表面に耐摩耗層又は表層を適用して、汚染、湿気又は擦過などの機械的衝撃により引き起こされる摩耗又は損傷から装飾層を保護するようにしてもよい。ここで、耐摩耗層が、層の摩耗耐性を増強するために、窒化チタン、チタン炭化物、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化タンタル、アルミナ(コランダム)、ジルコニア又はそれらの混合物などの硬質材料を含んでいてもよい。ここで、該硬質材料は、耐摩耗層の組成物に、5重量%と40重量%の間、好ましくは15重量%と25重量%の間の量で含んでいてもよい。硬質材料は、好ましくは、平均粒径が10μmと250μmの間、より好ましくは10μmと100μmの間である。このようにして好ましい方法で、耐摩耗層の組成物が安定な分散体を形成して、耐摩耗層の組成物内における硬質材料の分解又は沈殿を回避することができることが達成される。対応する耐摩耗層を形成するために、本発明の1つの実施形態において、硬質材料を含む放射線硬化性組成物が、10g/m2と300g/m2の間、好ましくは50g/m2と250g/m2の間の濃度で適用される。この場合には、適用は、例えば、ローラーなどのローラーにより、又は流し込みデバイスにより実施することができる。本発明のさらなる実施形態において、硬質材料が、耐摩耗層の組成物の適用時には耐摩耗層の組成物中に含まれないが、適用された耐摩耗層の組成物に粒子の形態で分散させて、それに続いて耐摩耗層に放射線を照射して硬化してもよい。
【0041】
それに加えて、耐摩耗層又は表層において、上記装飾と一致する表面構造を導入することとしてもよい。ここで、上記担体板がある構造を有し、担体板に対して装飾を適用するための印刷ツールの配置を、光学的方法により検出される担体板の構造に応じて行ってもよい。ここで、印刷用の布と担体板とを配置するために、配置に必要な印刷用の布と担体板の間の相対的移動を担体板又は印刷用の布をずらすことにより実施してもよい。本発明のさらなる実施形態では、表層及び/又は耐摩耗層の適用に続いて装飾的パネルの構築を行ってもよい。この目的のために、表層及び/又は耐摩耗層としての硬化性の組成物を適用して、表層及び/又は耐摩耗層が部分的にのみ硬化する程度に硬化工程を行ってもよい。このように部分的に硬化した層において、硬質金属加工ローラー又はダイなどの適当な手段により、所望の表面構造が浮き彫りにされる。ここで、浮き彫りにする工程は、適用された装飾に対応して行われる。前記構造が装飾と十分に一致して形成されるようにするために、担体板と浮き彫り手段とを、対応する相対的移動により互いに配置してもよい。部分的に硬化された表層及び/又は耐摩耗層内に所望の構造を導入した後に、さらなる硬化工程が、既に構造化された表層及び/又は耐摩耗層について実施される。
【0042】
さらに、耐摩耗層及び/又は表層は、例えば、アクリル系ワニス、エポキシワニス又はウレタンアクリレートを主成分とする、放射線硬化性の組成物又は少なくとも部分的に放射線硬化性の組成物で形成されていてもよい。ここで、装飾層に上記適用をした後の上記組成物を、放射線照射による誘発で部分的にのみ硬化させて、装飾と一致する表面構造を、上記の様式で部分的に硬化された層に導入することが特に好ましい。
【0043】
本発明のさらなる実施形態により、表層及び/又は耐摩耗層は、完成したラミネートの静電的電荷を減少させる手段を含むことができる。例えば、表層及び/又は耐摩耗層、上記目的で塩化コリンなどの化合物を含んでもよい。ここで、帯電防止剤は、例えば、表層及び/又は耐摩耗層を形成するための組成物中に0.1重量%以上と40.0重量%以下の間、好ましくは1.0重量%以上と30.0重量%以下の間の濃度で含まれ得る。
【0044】
本発明による方法のさらなる実施形態において、印刷工程の途中で上記構造を製造してもよい。この目的のために、例えば、印刷基材上に盛り上がった領域を形成し、所望の3次元構造が生ずるように複数の塗料の適用を行ってもよい。このように製造された構造に、耐摩耗層又は表層を適用することができる。
【0045】
さらに、本発明によれば、板形状の担体、板形状の担体上に適用された樹脂層、含浸されておらず印刷されていない紙又は不織布の層、紙又は不織布層に適用された印刷基材、印刷基材に適用された塗料層及び表層及び/又は少なくとも塗料層上に適用された耐摩耗層を含む直接印刷された装飾的パネルが提案され、印刷基材が0.5重量%以上と85重量%以下の間、好ましくは1.0重量%以上と80重量%以下の間の0.1μm以上と120μm以下の間の平均粒径d50を有する固体材料を含む樹脂組成物から形成されることを特徴とする。上記樹脂組成物は、樹脂成分としてメラミン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フタル酸ジアリル又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、15重量%以上と95重量%以下の間、好ましくは20重量%以上と90重量%以下の間の濃度で、及び硬化剤を0.05重量%以上と2.0重量%以下の間、好ましくは0.15重量%以上と1.0重量%以下の間の濃度で含む。
【0046】
本発明による装飾的パネルの好ましい実施形態において、パネルは、板形状の担体の印刷される側と反対側に裏張り層を含まない。裏張り層の無いそのようなパネルは、材料及び加工処理工程を節約することにより、特によりコスト効率的に製造することができて、それにより資源保存という環境の利益に加えて経済的利益を提供する。
【0047】
本発明のさらに別の実施形態によれば、板形状の担体は、少なくとも縁領域に輪郭(profile)を含むことができる。この場合、特に、板形状の担体に装飾層を適用する前に、輪郭(profile)を形成する工程を行うといった具合に、輪郭の領域に装飾を適用してもよく、及び/又は、装飾層を適用した後に輪郭を形成する工程を行ってもよい。本発明の語義において、輪郭を描くとは、適当な機械加工手段により装飾的パネルの少なくとも縁の一部分に、装飾的な及び/又は機能的な輪郭を導入することを意味する。ここで、機能的な輪郭とは、例えば、導入された輪郭の側面により装飾的パネルを互いに接続する目的で、例えば、凹型の輪郭及び/又は凸型の輪郭を縁に導入することを意味する。本発明の語義において、装飾的な輪郭とは、装飾的パネルの縁領域に形成された面取り(chamfer)を意味し、例えば、いわゆる広幅厚板におけるように、2枚の相互に接続されたパネル間の継ぎ目を模倣するためのものである。
【0048】
装飾的パネルに部分的に輪郭を描くことにより、完成したパネルに提供されるべき輪郭の全てではないが一部の輪郭だけが製造され、他の輪郭が後の工程で製造されることとなる。したがって、例えば、パネルに提供されるべき面取りなどの装飾的な輪郭は、1工程で製造してもよいが、機能的な輪郭、例えば凹型の輪郭/凸型の輪郭は後続の工程で形成してもよい。
【0049】
担体の輪郭を少なくとも部分的に描いた後に、例えば、直接印刷などの前述した方法により装飾を適用することにより、輪郭を描く工程の途中における装飾の擦過又は損傷を、有利な方法で避けることができる。したがって、輪郭の領域における装飾も、例えば天然材料の所望の模倣に詳細に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、本発明による装飾的パネルの実施形態の模式的構造を示す。
図2図2は、本発明により製造された裏張り層のない装飾的パネルの実施形態の模式的構造を示す。
【実施例】
【0051】
図1は、本発明による装飾的パネル100の実施形態の模式的構造を示す。板形状の担体110の上には、最初に硬化剤(示していない)が適用されており、樹脂層120が設けられており、それにより紙又は不織布層130が板形状の担体110に固定されうる。紙又は不織布層130の上に、印刷基材140が適用される。印刷基材140は、0.5重量%以上と85重量%以下の間、好ましくは1.5重量%以上と80重量%以下の間の0.1μm以上と120μm以下の間の平均粒径d50を有する固体材料を含む樹脂組成物から形成される。ここで、固体材料として、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化バリウム、クロム酸バリウム、酸化ジルコニウム(IV)、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化鉄、鉄(III)ヘキサシアノフェレート、酸化クロム、酸化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、酸化コバルト、リン酸コバルト、アルミン酸コバルト、酸化バナジウム、酸化ビスマスバナジウム、酸化スズ、酸化銅、硫酸銅、炭酸銅、アンチモン酸鉛、クロム酸鉛、酸化鉛、炭酸鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルミネートサルフェート、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化ヒ素、硫化水銀、カーボンブラック、グラファイト、セルロース繊維又はそれらの混合物からなる群の少なくとも1種の化合物が、樹脂組成物中に含まれ得る。特に好ましくは、樹脂組成物は、少なくとも二酸化チタン又はセルロース繊維を固体材料として含む。印刷基材140は、カレンダー加工の工程の後にはじめて、本発明に係る装飾的パネル100上に用いられる。カレンダー加工では、紙又は不織布層130が、板形状の担体110上に適用された樹脂層120に対して圧力及び/又は熱の作用下で押し付けられる。樹脂層120の樹脂組成物は、好ましくは、紙又は不織布層130中に部分的に浸透するだけで、完全に浸透することはない。このようにして製造された印刷基材に、装飾を形成する塗料層150が適用される。塗料層150上に表層及び/又は耐摩耗層160が適用される。ここで、表層及び/又は耐摩耗層は、触覚で感知できる構造170を含むことができ、それは好ましくは、天然様材料の印象が得られるように塗料層150により形成される装飾と合致する。反対側に裏張り層180は、実施形態で示すように適用される。
【0052】
図2は、本発明による裏張り層のない装飾的パネル100の実施形態の模式的構造を示す。最初に硬化剤(示していない)が適用された板形状の担体110上に、樹脂層120が設けられ、それにより紙又は不織布層130を板形状の担体110に固定することができる。紙又は不織布層130上に、印刷基材140が適用される。ここで、印刷基材140は、1重量%以上と85重量%以下の間、好ましくは2.5重量%以上と80重量%以下の間の0.1μm以上と120μm以下の間の平均粒径d50を有する固体材料を含む樹脂組成物から形成される。ここで、固体材料として、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化バリウム、クロム酸バリウム、酸化ジルコニウム(IV)、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化鉄、鉄(III)ヘキサシアノフェレート、酸化クロム、酸化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、酸化コバルト、リン酸コバルト、アルミン酸コバルト、酸化バナジウム、酸化ビスマスバナジウム、酸化スズ、酸化銅、硫酸銅、炭酸銅、アンチモン酸鉛、クロム酸鉛、酸化鉛、炭酸鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムアルミネートサルフェート、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化ヒ素、硫化水銀、カーボンブラック、グラファイト、セルロース繊維又はそれらの混合物からなる群の少なくとも1種の化合物が、樹脂組成物中に含まれ得る。特に好ましくは、上記樹脂組成物は、少なくともセルロース繊維を固体材料として含む。
印刷基材140は、カレンダー加工の工程の後ではじめて、本発明に係る装飾的パネル100上に用いられる。カレンダー加工の工程では、紙又は不織布層130が、板形状の担体110上に適用された樹脂層120に圧力及び/又は熱の作用下で押し付けられる。樹脂層120の樹脂組成物は、好ましくは、紙又は不織布層130中に部分的に浸透するだけで完全に浸透することはない。このようにして製造された印刷基材に、装飾を形成する塗料層150が適用される。塗料層150上に、表層及び/又は耐摩耗層160が適用される。ここで、表層及び/又は耐摩耗層は、触覚で感知できる構造170を含むことができ、それは、好ましくは、天然様材料の印象が得られるように塗料層150により形成された装飾と合致する。そのような構造を有する装飾的パネルにおいて、裏張り層の適用は明らかに不要であり、その理由は、本発明による印刷基材140は、装飾的パネルの構造により、裏張り層を備えなくてもカッピング、即ち、凹型の表面変形の傾向を有しないことが可能になることが見出されたからである。
【符号の説明】
【0053】
100 装飾的パネル
110 板形状の担体
120 樹脂層
130 紙/不織布層
140 印刷基材
150 塗料層
160 表面層/耐摩耗層
170 構造
180 裏張り層
図1
図2