(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る売掛債権評価システムを説明する。本実施形態では、金融機関が売掛債権担保融資を行う際に、その融資先企業が保有する売掛債権の売掛先企業に対する担保評価額を算出する例を示す。しかしながら、本売掛債権評価システムは、企業の事業性評価を行う上で担保評価額を算出することを主たる目的としており、売掛債権担保融資を前提とするものではない。
【0015】
本発明の実施形態に係る売掛債権評価システムが提供する売掛債権評価サービスは、売掛先企業および融資先企業などの企業、および/または融資を行う金融機関によって利用される。企業および/または金融機関は、自身が有する売掛債権情報および入金・手形受取情報などを売掛債権評価システムに登録することによって、適正な売掛債権担保評価額を算出することができる。
【0016】
<システム構成>
図1は、本発明の実施形態に係る売掛債権評価システムの全体構成の例を示している。
【0017】
本実施形態に係る売掛債権評価システムは、売掛債権評価サーバ1、クライアントコンピュータ2、および外部情報提供サーバ3を備えている。売掛債権評価サーバ1、クライアントコンピュータ2、および外部情報提供サーバ3は、ネットワーク4(例えば、インターネット)を介してそれぞれが相互に接続されている。
【0018】
売掛債権評価サーバ1は、本発明の実施形態に係る売掛債権評価サービスを提供する事業者(以下、「サービス事業者」)に設置され、売掛債権評価サービスを提供する主要なコンピューティングデバイスである。売掛債権評価サーバ1は、クライアントコンピュータ2からの要求に応じて、売掛債権担保評価額を算出し、クライアントコンピュータに算出額を送信する。売掛債権評価サーバ1は単一のコンピューティングデバイス、または、複数のコンピューティングデバイスで構成されてもよい。
【0019】
クライアントコンピュータ2は、金融機関および売掛先企業など、本実施形態に係る売掛債権評価サービスを受けるサービス利用者が使用するコンピューティングデバイスである。クライアントコンピュータ2は、本実施形態に係る売掛債権評価システムを利用するための専用プログラムを、売掛債権評価サーバ1からダウンロードする。クライアントコンピュータ2が、そのプログラムを実行することによって表示部に表示された入力インタフェースを介して、金融機関および売掛先企業などが売掛債権評価サービスを利用することができる。クライアントコンピュータ2は、デスクトップ型パーソナルコンピュータおよびノート型パーソナルコンピュータなどの固定式コンピューティングデバイス、ならびにスマートフォンなどの携帯電話、タブレットコンピュータ、および携帯情報端末などの移動式コンピューティングデバイスであってもよい。
【0020】
外部情報提供サーバ3は、銀行などの金融機関などにおいて従来から実装されている勘定係システムを構成するコンピューティングデバイスである。上記勘定係システムは、当該金融機関の口座を介して売掛債権に関する売掛先企業からの入金・手形受取情報を管理している。外部情報提供サーバ3は、その入金・手形受取情報を売掛債権評価サーバ1に提供(送信)する。なお、複数の金融機関のそれぞれが外部情報提供サーバ3を有しており、売掛債権評価サーバ1は、複数の金融機関のそれぞれから入金・手形受取情報が提供される。
【0021】
上述したコンピューティングデバイスは、中央処理装置(CPU)、メモリ、記憶装置などを備えるコンピューティングデバイスであって、メモリまたは記憶装置に格納されたコンピュータプログラムをCPUが処理することによって統括的に制御され、本実施形態に係る処理を実行し、その機能を実現することができる。なお、上述したシステム構成は、例示のためのものであり、本実施形態を実行することができるシステム構成を限定するものではない。
【0022】
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態に係る売掛債権評価システムを構成するコンピューティングデバイスの詳細な例を説明する。
【0023】
売掛債権評価サーバ1は、通信部11、制御部12、主記憶部13、および補助記憶部14を備えており、それらの各要素がシステムバスを介して接続されている。
【0024】
通信部11は、ネットワーク4を介して接続されたクライアントコンピュータ2および外部情報提供サーバ3との間で制御情報およびデータを送受信するネットワークインタフェースである。
【0025】
制御部12は、中央処理装置(CPU)とも称され、上記各構成要素の制御やデータの演算を行う。また、制御部12は、本実施形態に係る各種処理を実行するための、補助記憶部14に格納されている各種プログラムを主記憶部13に読み取って実行する。
【0026】
主記憶部13は、メインメモリとも称され、売掛債権評価サーバ1が受信した入力データ、コンピュータ実行可能な命令および当該命令による演算処理後のデータなどを一時的に記憶する揮発性記憶装置である。
【0027】
補助記憶部14は、ハードディスク(HDD)などに代表される不揮発性記憶装置であり、制御部12に、本実施形態に係る各種処理を実行させるためのプログラム(図示せず)を記憶している。また、売掛債権評価サーバ1は、DBMS(Database Management System)を実装しており、後述するデータテーブルなどを記憶したデータ記憶部14aを有している。
【0028】
クライアントコンピュータ2は、通信部21、制御部22、主記憶部23、補助記憶部24、表示部25を備えており、それらの各要素がシステムバスを介して接続されている。通信部21、制御部22、主記憶部23、および補助記憶部24は、売掛債権評価サーバ1の通信部11、制御部12、主記憶部13、および補助記憶部14と同等の機能を有する。表示部25は、売掛債権担保評価額を算出するために必要な情報を入力し、売掛債権評価サーバ1が算出した売掛債権担保評価額を表示する入力インタフェースを表示する。
【0029】
なお、本発明に係る売掛債権評価システムは、
図1および
図2で説明した構成に限定されず、例えば、売掛債権評価サーバ1のみで実装されてもよい。この場合、売掛債権評価サーバ1は、入力インタフェースを表示する表示部を有し、サービス利用者がその入力インタフェースに情報を入力することによって、売掛債権評価サーバ1が売掛債権担保評価額を算出する。算出した売掛債権担保評価額は、上述した表示部に表示される。また、外部情報提供サーバ3から入金・手形受取情報を提供する構成に代えて、サービス利用者が上述した入力インタフェースから入金・手形受取情報を入力するように構成してもよい。
【0030】
次に、
図3を参照して、売掛債権評価サーバ1のデータ記憶部14aに記憶された売掛先取引条件データテーブル300を説明する。売掛先取引条件データテーブル300は、DBMSで実装されたデータベーステーブルであり、SQL(structured query language)によってレコードの追加、読み込み、および更新などが実行される。
【0031】
売掛先取引条件データテーブル300は、本発明に係る売掛債権評価システムによって売掛債権担保評価額の評価対象となる売掛先企業ごとの売掛債権の取引条件に関するデータレコードを記憶している。各データレコードは、例えば、クライアントコンピュータ2の表示部25に表示された入力インタフェース(図示せず)を介して売掛先取引条件情報を入力することによって登録される。例えば、各売掛先企業が新規に取引を行い、本実施形態に係る売掛債権評価サービスを利用する際に、各売掛先企業またはサービス事業者によって登録されてもよい。
【0032】
売掛先取引条件データテーブル300は、データ項目「企業識別番号」、「企業名」、「業種番号」、「住所」、「口座情報」、「支払方法」、「締め日」、「支払サイト」、「譲渡禁止条項有無」、および「適格判定」を含む。データ項目「業種番号」は、売掛債権評価システムにおいて業種ごとに割り当てられ、対象の売掛先企業が属する業種を示す番号が設定される。データ項目「口座情報」は、対象の売掛先企業が支払いを行うために使用する口座情報が設定される。データ項目「支払方法」は、例えば、「1:手形」または「2:現金」などが設定される。データ項目「締め日」は、対象の売掛先企業の月ごとの取引代金に対する請求の締め日が設定される。データ項目「支払サイト」は、締め日から支払日までの猶予期間である日数が設定される。データ項目「譲渡禁止条項有無」は、対象の売掛債権が譲渡制限されているかを示す値が設定され、例えば、「0:制限なし」または「1:制限あり」が設定される。データ項目「適格判定」は、対象の売掛先企業との取引を行う上で適格であるかを示す値が設定され、例えば、「1:適格」または「2:不適格」が設定される。
【0033】
なお、売掛先取引条件データテーブル300は、必ずしもDBMSのデータベーステーブルで実装される必要はなく、他の方式で実装されてもよい。例えば、売掛先取引条件データテーブル300は、補助記憶部14に記憶されるデータファイルの形式であってもよい。また、掛先取引条件データテーブル300は、予め売掛債権評価サーバ1に記憶されている必要はなく、例えば、後述する売掛債権担保評価額を算出する処理を実行する際に、クライアントコンピュータ2の表示部25に表示された入力インタフェースから入力されてもよい。
【0034】
次に、
図4を参照して、売掛債権評価サーバ1のデータ記憶部14aに記憶された売掛債権データテーブル400を説明する。売掛債権データテーブル400も、DBMSで実装されたデータベーステーブルである。
【0035】
売掛債権データテーブル400は、売掛先企業ごと、かつ月ごとの、売掛債権に関するデータレコードを記憶している。各データレコードは、例えば、各売掛先企業が月次で、クライアントコンピュータ2の表示部25に表示された入力インタフェースを介して売掛債権情報を入力することによって登録されてもよい。
【0036】
売掛債権データテーブル400は、データ項目「企業識別番号」、「業種番号」、「年月」、「売上高」、および「売掛債権残高」を含む。データ項目「売上高」は、対象の売掛先企業の対象の年月の売上額が設定される。データ項目「売掛債権残高」は、対象の売掛先企業の対象年月における売掛債権残高が設定される。
【0037】
データ項目「売掛債権残高」については、例えば、売掛債権評価サーバ1の制御部12が、月次などの所定のタイミングで(バッチ処理)、対象の売掛先企業・年月の売掛債権残高を算出することによって設定されてもよい。
【0038】
なお、売掛債権データテーブル400は、必ずしもDBMSのデータベーステーブルで実装される必要はなく、他の方式で実装されてもよい。例えば、売掛債権データテーブル400は、補助記憶部14に記憶されるデータファイルの形式であってもよい。また、売掛債権データテーブル400は、予め売掛債権評価サーバ1に記憶されている必要はなく、例えば、後述する売掛債権担保評価額を算出する処理を実行する際に、クライアントコンピュータ2の表示部25に表示された入力インタフェースから入力されてもよい。
【0039】
次に、
図5を参照して、売掛債権評価サーバ1のデータ記憶部14aに記憶された入金・手形受取実績データテーブル500を説明する。入金・手形受取実績データテーブル500も、DBMSで実装されたデータベーステーブルである。
【0040】
入金・手形受取実績データテーブル500は、売掛先企業ごと、かつ月ごとの、入金・手形受取実績に関するデータレコードを記憶している。入金・手形受取実績データテーブル500は、データ項目「企業識別番号」、「業種番号」、「年月」、「入金額」、および「手形受取額」を含む。データ項目「入金額」は、対象の売掛先企業が有する全売掛債権残高に対する対象の年月の入金額(支払額)が設定される(支払方法が現金の場合)。データ項目「手形受取額」は、対象の売掛先企業が有する全売掛債権残高に対する対象の年月の手形受取額が設定される(支払方法が手形の場合)。
【0041】
上述したように、売掛債権評価サーバ1は、外部情報提供サーバ3から、各金融機関での入金および手形受取実績に関する入金・手形受取情報が提供される(外部情報提供サーバ3から送信された入金・手形受取情報を受信する)。この入金・手形受取情報は、指定された売掛先企業ごとに入金額・手形受取額をまとめて定期的に提供されてもよく、入金がされたタイミングで都度、提供されてもよい。この入金・手形受取情報は、少なくとも、入金・振出者の名称および口座情報を含む。
【0042】
この入金・手形受取情報に基づいて、入金・手形受取実績データテーブル500の各レコードが、以下のようにして登録される。まず、売掛債権評価サーバ1の通信部11が、入金・手形受取情報を受信すると、制御部12が、その入金・手形受取情報に含まれる入金・振出者の名称および/または口座情報に基づいて、売掛先取引条件データテーブル300から対象のレコードを取得して、売掛先企業を特定する。そして、制御部12は、受信した入金・手形受取情報に含まれる入金額・手形受取額を売掛先企業ごとに集計して、入金・手形受取実績データテーブル500にレコードを追加する。
【0043】
なお、入金・手形受取実績データテーブル500は、必ずしもDBMSのデータベーステーブルで実装される必要はなく、他の方式で実装されてもよい。例えば、入金・手形受取実績データテーブル500は、補助記憶部14に記憶されるデータファイルの形式であってもよい。また、入金・手形受取実績データテーブル500は、予め売掛債権評価サーバ1に記憶されている必要はなく、例えば、後述する売掛債権担保評価額を算出する処理を実行する際に、クライアントコンピュータ2の表示部25に表示された入力インタフェースから入力されてもよい。この場合、データ項目「入金額」および「手形受取額」に設定される額についても、処理を実行する際に集計される(対象の売掛先企業・年月ごとに)。
【0044】
次に、売掛債権評価サーバ1のデータ記憶部14aに記憶された業種・企業別回転日数データテーブル600を説明する。業種・企業別回転日数データテーブル600も、DBMSで実装されたデータベーステーブルである。
【0045】
業種・企業別回転日数データテーブル600は、業種ごとおよび/または企業ごとの、売掛債権回転日数に関するデータレコードを記憶している。売掛債権回転日数とは、売上が発生してから売掛債権を回収するまでに要する日数を意味する。
【0046】
業種・企業別回転日数データテーブル600は、データ項目「企業識別番号」、「業種番号」、「年月」、および「売掛債権回転日数」を含む。
図6に示す1〜4番目のデータレコードが、企業ごと、かつ月ごとの、売掛債権回転日数を示すデータレコードであり、5〜8番目のデータレコードが、業種ごと、かつ月ごとの、同業種の全企業の平均売掛債権回転日数を示すデータレコードである。
【0047】
業種・企業別回転日数データテーブル600の各データレコードは、例えば、売掛債権評価サーバ1の制御部12が、月次などの所定のタイミングで(バッチ処理)、売掛債権データテーブル400からデータレコードを取得し、そのデータレコードに設定された値に基づいて登録されてもよい。具体的には、例えば、売掛先企業ごとのデータレコードについては、企業ごとに売掛債権データテーブル400から対象の年月(処理日付(システム日付)を基準)データレコードを取得し、そのデータコードに含まれるデータ項目「売掛債権残高」および「売上高」に設定された売掛債権残高および売上高に基づいて、式(1)に従って売掛債権回転日数を算出する。
売掛債権回転日数=売掛債権残高/売上高×30.5 式(1)
業種ごとのデータレコードについては、式(2)によって算出した全企業の売掛債権回転日数を、業種ごとに合計し、その平均を算出することによって、平均売掛債権回転日数を算出する。
【0048】
なお、業種・企業別回転日数データテーブル600は、必ずしもDBMSのデータベーステーブルで実装される必要はなく、他の方式で実装されてもよい。例えば、業種・企業別回転日数データテーブル600は、補助記憶部14に記憶されるデータファイルの形式であってもよい。また、業種・企業別回転日数データテーブル600は、予め売掛債権評価サーバ1に記憶されている必要はなく、例えば、後述する売掛債権担保評価額を算出する処理を実行する際に、クライアントコンピュータ2の表示部25に表示された入力インタフェースから入力されてもよい。この場合、データ項目「売掛債権回転日数」に設定される売掛債権回転日数についても、処理を実行する際に算出される(対象の売掛先企業ごと、または業種ごとに)。
【0049】
次に、
図7のフローチャートを参照して、本実施形態に係る売掛債権評価システムが実行する売掛債権担保評価額を算出する処理を説明する。
図7に示す処理では、例えば、金融機関が、
図3に示す企業名「企業A」の売掛債権担保評価額を、システム日付の年月から直近N月分を基準に算出する例を説明し、クライアントコンピュータ2の表示部25に表示された入力インタフェースを介して「企業A」(以下、「対象売掛先企業」)の企業識別番号が入力されるものとする。
【0050】
本実施形態では、対象売掛先企業が属する業種ごとの平均(例えば、基準売掛債権回転日数など)に基づいて、対象売掛先企業の売掛債権担保評価額を算出しているが、そのような形式に限定されない。例えば、M数(Mは任意の整数)の売掛先企業を評価対象とし、そのM数の売掛先企業の平均に基づいて、売掛債権担保評価額を算出してもよい。
【0051】
上記入力インタフェースを介して対象売掛先企業の企業識別番号(以下、「対象売掛先企業識別番号」)が入力されると、クライアントコンピュータ2から売掛債権評価サーバ1に対象売掛先企業識別番号が送信され、売掛債権評価サーバ1の通信部11が受信する。
図7のフローチャートは、この状態で開始される。
【0052】
<対象売掛債権の適正判定>
売掛債権評価サーバ1の制御部12は、受信した対象売掛先企業識別番号に基づいて、売掛先取引条件データテーブル300から、対象の売掛先企業のデータレコードを取得する(ステップS701)。そして、取得したデータレコードに含まれるデータ項目「適格判定」に「1:適格」が設定され、かつ「譲渡禁止条項有無」に「0:制限なし」が設定されている売掛債権が担保評価額を算出する対象となる。一方で、データ項目「適格判定」に「2:不適格」が設定されており、または「譲渡禁止条項有無」に「1:制限あり」が設定されている場合は、この時点で処理を終了する。
【0053】
上述したように、データ項目「譲渡禁止条項有無」に「1:制限あり」が設定されている売掛債権については、担保として利用することができないので、売掛債権担保評価額を算出する必要がないと判断し、本実施形態では評価対象外となる。また、データ項目「適格判定」に「2:不適格」が設定されている売掛債権については、対象の売掛先企業との取引を行う上で不適格と判断されているので、やはり、本実施形態では評価対象外となる。
【0054】
<基準売掛債権回転日数の算出>
次に、制御部12は、ステップS701で取得したデータレコードに含まれるデータ項目「業種番号」に設定された業種番号に基づいて、売掛先取引条件データテーブル300から、対象の業種の全てのデータレコードを取得する(ステップS702)。
【0055】
次に、制御部12は、ステップS703で取得した全てのデータレコードに含まれるデータ項目「締め日」に設定された締め日の平均を算出することによって、平均締め日を算出する(ステップS703)。
【0056】
次に、制御部12は、ステップS701で取得したデータレコードに含まれる業種番号およびシステム日付に基づいて、業種・企業別回転日数データテーブル600から対象の業種の直近N月分の全てのデータレコードを取得する(ステップS704)。
【0057】
次に、制御部12は、ステップS703で算出した平均締め日に基づいて、表1に示す基準売掛債権回転日数補正日テーブルから、基準売掛債権回転日数補正日を取得する(ステップS705)。基準売掛債権回転日数補正日テーブルは、ステップS703で算出した平均締め日と、その締め日に対応する基準売掛債権回転日数補正日との対応関係を示しており、例えば、売掛債権評価サーバ1の補助記憶部14に記憶され、本ステップ実行時に参照される。
【0059】
基準売掛債権回転日数補正日テーブルから、例えば、ステップS703で算出した平均締め日が19.5であった場合、小数を丸める(四捨五入または繰り上げ)ことによって算出された20日に対応する基準売掛債権回転日数補正日は10日が取得される。この基準売掛債権回転日数補正日は、例えば、実際の締め日と帳簿上の締め日との間での誤差があることから、後述する基準売掛債権回転日数を算出する際に、平均売掛債権回転日数に加算されるものである。表1に示すように、帳簿上の締め日が多い、10日から実際の締め日が離れるにつれ、基準売掛債権回転日数補正日が加算されることになる。
【0060】
次に、制御部12は、ステップS704で取得した全てのデータレコードに含まれるデータ項目「売掛債権回転日数」に設定された売掛債権回転日数に基づいて、業種ごとのN月分の平均売掛債権回転日数を算出する。そして、算出した平均売掛債権回転日数およびステップS705で取得した基準売掛債権回転日数補正日に基づいて、式(2)に従って基準売掛債権回転日数を算出する(ステップS706)。
基準売掛債権回転日数=平均売掛債権回転日数+基準売掛債権回転日数補正日
式(2)
【0061】
なお、上述したように、M数の売掛先企業の売掛債権担保評価額を評価対象とする場合、ステップS701では、売掛先取引条件データテーブル300から、M数の売掛先企業に対応する全てのデータレコードが取得されて、対象売掛債権の適正判定がされる。また、ステップS702およびステップS703では、売掛先取引条件データテーブル300のM数の売掛先企業に対応する全てのデータレコードのデータ項目「締め日」に設定された締め日に基づいて、平均締め日が算出される。また、ステップS704では、業種・企業別回転日数データテーブル600から、M数の売掛先企業に対応する全てのデータレコードが取得される。さらに、ステップS706では、M数の売掛先企業に対応する全てのデータレコードのデータ項目「売掛債権回転日数」に設定された売掛債権回転日数に基づいて、平均売掛債権回転日数が算出される(最終的に算出される基準売掛債権回転日数は、M数の売掛先企業の平均となる)。
【0062】
<実績売掛回転日数の算出>
次に、制御部12は、対象売掛先企業識別番号およびシステム日付に基づいて、売掛債権データテーブル400から、対象の売掛先企業の、システム日付を基準に1月前からN月分の全てのデータレコードを取得する(ステップS707)。
【0063】
次に、制御部12は、対象売掛先企業識別番号およびシステム日付に基づいて、入金・手形受取実績データテーブル500から、対象の売掛先企業の直近N月分の全てのデータレコードを取得する(ステップS708)。
【0064】
上述したように、ステップS707およびステップS708において、売掛債権データテーブル400および入金・手形受取実績データテーブル500をそれぞれ取得しているが、その取得する対象の年月が1月分ずれている(例えば、売掛債権データテーブル400から2016年6月〜9月分のデータレコードを取得する場合、入金・手形受取実績データテーブル500からは、2016年7月〜10月分のデータレコードを取得する)。これは、売掛債権残高に対応する支払いは、実際には1月遅れて行われるからである(つまり、入金・手形受取実績データテーブル500のデータ項目「入金額」/「手形受取額」に設定された入金額/手形受取額は、その入金・手形受取がされた年月の1月前の売掛債権データテーブル400のデータ項目「売掛債権残高」に設定された売掛債権残高に対応する)。
【0065】
次に、制御部12は、ステップS707で取得した対象売掛先企業のN月分のデータレコードに含まれるデータ項目「売掛債権残高」に設定された売掛債権残高に基づいて、平均売掛債権残高を算出する。また、ステップS708で取得した対象売掛先企業の直近N月分のデータレコードに含まれるデータ項目「入金額」に設定された入金額に基づいて平均入金額を算出し、「手形受取額」に設定された手形受取額に基づいて平均手形受取額を算出する。そして、平均売掛債権残高、平均入金額、および平均手形受取額に基づいて、式(3)に従って対象売掛先企業の実績売掛回転日数を算出する(ステップS709)。
実績売掛回転日数=売掛債権残高/((平均入金額+平均手形受取額)/30.5)
式(3)
【0066】
<基礎評価額の算出>
次に、制御部12は、ステップS706で算出した基準売掛債権回転日数、およびステップS709で算出した実績売掛債権回転日数に基づいて、式(4)に従って超過倍率を算出する(ステップS710)。
超過倍率=実績売掛債権回転日数/基準売掛債権回転日数 式(4)
【0067】
次に、制御部12は、ステップS710で算出した超過倍率から、所定の基準値を超える超過倍率異常値があるか否かを判定する(ステップS711)。この所定の基準値は、予め設定された値であり、例えば、売掛債権評価サーバ1の補助記憶部14に記憶され、本ステップ実行時に参照される。
【0068】
ステップS711の判定で、超過倍率異常値があると判定した場合(ステップS712でYes)、ステップS719に遷移し、制御部12は、売掛先取引条件データテーブル300から、企業識別番号が対象売掛先企業識別番号と一致するデータレコードについて、データ項目「適格判定」を「2:不適格」に更新する(ステップS719)。この場合、その対象の売掛債権は、評価金額をゼロとみなし、この時点で処理を終了する。
【0069】
ステップS712の判定で、超過倍率異常値がないと判定した場合(ステップS712でNo)、ステップS713に遷移し、制御部12は、ステップS709で算出した平均売掛債権残高、およびステップS710で算出した超過倍率に基づいて、式(5)に従って基礎評価金額を算出する(ステップS713)。
基礎評価金額=平均売掛債権残高/超過倍率 式(5)
【0070】
<売掛債権担保評価額の算出>
次に、制御部12は、ステップS708で取得した対象売掛先企業の直近N月分のデータレコードから判定された入金回数(同一の年月に何回入金がされたか)に基づいて、式(6)に従って、N月分の平均入金実績発生率を算出する。また、同様に、直近N月分のデータレコードから判定された手形受取回数(同一の年月に何回手形を受け取ったか)に基づいて、対象売掛先企業のN月分の平均手形受取実績発生率を算出する。(ステップS714)。
平均入金実績発生率=N/入金回数
平均手形受取実績発生率=N/入金回数 式(6)
【0071】
次に、制御部12は、ステップS708で取得した対象売掛先企業の直近N月分のデータレコードのデータ項目「入金額」に設定された入金額に基づいて、対象売掛先企業のN月分の入金実績変動率を算出する。また、同様に、直近N月分のデータレコードのデータ項目「手形受取額」に設定された手形受取額に基づいて、対象売掛先企業のN月分の平均手形受取実績変動率を算出する(ステップS715)。この入金実績変動率(および、平均手形受取実績変動率)は、例えば、N月分の入金額(および、手形受取額)の標準偏差を算出することによって算出されてもよい。
【0072】
次に、制御部12は、ステップ714で算出した平均入金実績発生率および平均手形受取実績発生率、ならびに/またはステップS715で算出した平均入金実績変動率および平均手形受取実績変動率に基づいて、対象売掛先企業の評価係数を算出する(ステップS716)。
【0073】
ステップS716で算出した評価係数とは、いわゆる「掛目」であり、例えば、ステップ714で算出した平均入金実績発生率および/または平均手形受取実績発生率が低いほど、支払の信頼性が低いと判断され、評価係数が低く設定される。また、ステップ714で算出した平均入金実績変動率および/または平均手形受取実績変動率が高いほど、支払の安定性が低いと判断され、評価係数が低く設定される。これらの平均入金実績発生率、平均手形受取実績発生率、平均入金実績変動率、および平均手形受取実績変動率と、評価係数との関係について、過去の同業種の平均などに基づいて予め算出された値が売掛債権評価サーバ1の補助記憶部14に記憶され、本ステップ実行時に参照される。
【0074】
次に、制御部12は、ステップS713で算出した基礎評価金額、およびステップS716で算出した評価係数に基づいて、式(7)に従って売掛債権担保評価額を算出する(ステップS717)。
売掛債権担保評価額=基礎評価金額×評価係数 式(7)
【0075】
最後に、売掛債権評価サーバ1の通信部11が、ステップS717で算出した売掛債権担保評価額をクライアントコンピュータ2に送信する(ステップS718)。送信された売掛債権担保評価額は、クライアントコンピュータ2の表示部25に表示される。
【0076】
図7では、対象売掛先企業に対して売掛債権担保評価額を算出したが、M数の売掛先企業または特定の業種に属する売掛先企業のそれぞれに対して算出した売掛債権担保評価額を合計した額は、M数の売掛先企業の取引の際の事業性評価に活用することができる。また、
図7のステップS713で算出した基礎評価額も、事業性評価に活用することができる(基礎評価額は、評価係数、つまり掛目が乗算されないので、売掛債権を担保としない場合に、事業性評価を行う際に十分なパラメータとなる)。
【0077】
図7で説明した処理は、クライアントコンピュータ2からの要求に応じて、対象売掛債権担保評価額を算出しているが、そのような構成に限定されない。例えば、売掛債権評価サーバ1の制御部12が、月次などの所定のタイミングで(バッチ処理)、売掛先取引条件データテーブル300に記憶された全ての企業に対し、対象年月分の売掛債権担保評価額を算出してもよい。そして、算出した売掛債権担保評価額は、売掛債権評価サーバ1のデータ記憶部のデータベーステーブルまたはデータファイル(図示せず)に記憶されてもよい。
【0078】
上述した構成によって、全ての企業、かつ全ての年月に対して売掛債権担保評価額を自動で算出し、算出した売掛債権担保評価額を売掛債権評価サーバ1で管理することになるので、業種ごとの売掛債権担保評価額を算出することもできるようになる。ひいては、企業の事業性評価の信頼性をさらに高めることができる。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る売掛債権評価システムを説明してきた。本発明に係る売掛債権評価システムによれば、評価対象となる売掛先企業の売掛債権残高、および入金・手形受取実績などに基づいて売掛債権担保評価額を算出しているので、信頼性に劣る外部信用情報を使用することなく、適正に売掛債権担保評価額を算出することができる。また、売上、およびその売上に対する入金・手形受取が発生する都度、それらの情報が蓄積されるので、さらに売掛債権担保評価額を算出する信頼性が高まる。
【0080】
なお、売掛先取引条件データテーブル300などのデータベーステーブルが有する項目は例示的なものにすぎず、他のデータ項目が含まれてもよい。また、
図7で説明した処理の順序も例示的なものにすぎず、本発明の概念から逸脱することなく、その順序が変更されてもよく、一部の処理が追加または省略されてもよい。さらに、
図7の説明における各値の算出において、必ずしも説明した式に従って値を算出される必要はなく、特許請求の範囲から逸脱しない範囲で変更されてもよい。
【解決手段】制御部と、制御部に結合された記憶部とを備えたコンピュータシステムであって、記憶部は、複数の企業の各々に対する企業情報を記憶し、制御部は、記憶された企業情報に含まれる締め日に基づいて、複数の企業の平均締め日を算出し、記憶された企業情報に含まれる売掛債権回転日数に基づいて、複数の企業の平均売掛債権回転日数を算出し、算出した平均締め日、および算出した平均売掛債権回転日数に基づいて、基準売掛債権回転日数を算出し、記憶された企業情報に含まれる売掛債権残高、および記憶された企業情報に含まれる入金額に基づいて、複数の企業のうちの1つの企業の実績売掛債権回転日数を算出し、算出した基準売掛債権回転日数、および算出した実績売掛債権回転日数に基づいて、1つの企業の売掛債権担保評価額を算出する。