(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のシールド電極は、基板の表面に形成された拡散層であり、前記第2のシールド電極は、前記基板の上に形成された導体層である、請求項2又は3に記載のフライングキャパシタ式電圧検出回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、フライングキャパシタ式電圧検出回路を集積化(IC化)する場合、IC内部の寄生容量がフライングキャパシタの電気容量に対して無視できない大きさになるため、検出電圧の精度がその寄生容量によって大きく影響されてしまう。
【0008】
図1の回路を例に挙げ、各電池B0〜B4の電圧をVSS基準の電圧に変換する場合に、IC内部の寄生容量の影響について以下に試算する。仮に、式(1)〜(3)に示されるように、
V
N+1−V
N=V
BAT ・・・(1)
CI=CF=C ・・・(2)
CD3+CN3=CD4+CN4=CD+CN ・・・(3)
各電池B0〜B4それぞれの電圧を共にV
BATとし、フライングキャパシタCIと積分キャパシタCFの電気容量を共にCとし、ノードN3における寄生容量(CD3+CN3)とノードN4における寄生容量(CD4+CN4)を共に(CD+CN)とする。
【0009】
図1の構成の場合、寄生容量(CD3+CN3)と寄生容量(CD4+CN4)のいずれか一方は、フライングキャパシタCIの電荷が積分キャパシタCFに移動する際に、スイッチSW14又はSW18によって基準電位VGNDに放電される。そのため、寄生容量(CD3+CN4)と寄生容量(CD4+CN4)のいずれか一方だけが、積分キャパシタCIに影響することになる。
【0010】
N=0〜4とすると、電池B0から電池B4の変換電圧VOUT(N)は、
VOUT(N)=[CI×(V
N+1−V
N)+(CD+CN)×V
N]/CF
・・・(4)
によって表される。変換誤差電圧が最大となる、電池B4の変換電圧VOUT(4)は、
VOUT(4)=[CI×(V
5−V
4)+(CD4+CN4)×V
4]/CF
・・・(5)
によって表される。V
5−V
4=V
BAT,V
4=4×V
BAT,CD4+CN4=CD+CNなので、VOUT(4)は、
VOUT(4)=[CI×V
BAT+(CD+CN)×4×V
BAT]/CF
=V
BAT×CI/CF+4×V
BAT×(CD+CN)/CF
・・・(6)
によって表される。CI/CF=1なので、変換電圧VOUT(4)は、
VOUT(4)=V
BAT+4×V
BAT×(CD+CN)/CF
・・・(7)
によって表される。V
BATとの差分が変換誤差に相当するため、電池B4の変換電圧VOUT(4)の変換誤差は、
VOUT(4)−V
BAT=4×V
BAT×(CD+CN)/CF
・・・(8)
によって表される。式(8)で表される変換誤差を例えば50mV以下にするためには、
4×V
BAT×(CD+CN)/CF≦50×10
−3 ・・・(9)
を満足する必要があるので、例えば、V
BAT=4.2[V],CF=10×10
−12[F]とすると、
(CD+CN)≦29.8×10
−15[F] ・・・(10)
となる。すなわち、寄生容量の値は約30[fF]以下とする必要がある。
【0011】
しかしながら、上層電極と下層電極で構成されるフライングキャパシタCIをIC基板の上に単純に形成した構成の場合、下層電極とIC基板との距離が下層電極と上層電極との電極間距離の20倍とすると、下層電極とIC基板との間の寄生容量は、フライングキャパシタCIの電気容量の約1/20(約0.5pF=500fF)となる。つまり、下層電極とIC基板との間の寄生容量(500fF)は、上記の許容値30fFを大きく超えてしまう。
【0012】
このように、フライングキャパシタ方式では寄生容量の影響が大きいため、フライングキャパシタをICに内蔵することを安易に採用することができない。
【0013】
そこで、本発明は、寄生容量の影響を軽減し、フライングキャパシタをICに内蔵することが可能な、フライングキャパシタ式電圧検出回路等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るフライングキャパシタ式電圧検出回路は、
フライングキャパシタと、
組電池を構成する単電池によって前記フライングキャパシタが充電される向きを、前記単電池毎に反転させる第1のスイッチ回路と、
前記フライングキャパシタを放電させる第2のスイッチ回路と、
前記フライングキャパシタの両電極間の電位差に応じた信号を出力する出力回路とを備え
、
前記出力回路は、前記フライングキャパシタと同容量の積分キャパシタを備える、フライングキャパシタ式電圧検出回路であって、
前記フライングキャパシタは、前記両電極との間の寄生容量が均一になるように前記両電極の周りに配置されたシールド部
を有し、
前記フライングキャパシタの充電タイミングにおける前記両電極のうちの一方の電極と前記シールド部との電位差と、前記フライングキャパシタの放電タイミングにおける前記両電極のうちのもう一方の電極と前記シールド部との電位差とがいずれも零になるように、前記シールド部の電位を切り替える電位差調整回路
を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、寄生容量の影響を軽減し、フライングキャパシタをICに内蔵することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。
図2は、本発明の一実施形態であるフライングキャパシタ式電圧検出回路100の構成図である。なお、図中のスイッチSW*は、MOSFETなどのトランジスタを表し、点線で示されたキャパシタは、寄生容量を表す。また、▽は、フライングキャパシタ式電圧検出回路100を構成する回路要素が形成される基板のグランドVSSを表す。以下、同様である。
【0018】
フライングキャパシタ式検出回路100は、フライングキャパシタCIと、組電池を構成する単電池B1〜B5の電圧によってフライングキャパシタCIを充電する第1のスイッチ回路SW6〜SW11,SW13,SW17と、フライングキャパシタCIを放電させる第2のスイッチ回路SW14,SW15,SW18,SW19と、フライングキャパシタCIの一対の電極間の電位差に応じた信号を出力する出力回路10とを備える。
【0019】
組電池は、複数の単電池B1〜B5が直列接続された回路である。第1のスイッチ回路は、複数の単電池B1〜B5のうちいずれか一つの単電池の電圧によってフライングキャパシタCIが充電される向きを、単電池毎に反転させる。すなわち、第1のスイッチ回路は、フライングキャパシタCIの両端の極性が交互に反転するように単電池の両極の接続先を単電池毎に切り替える。なお、フライングキャパシタCIは、使用されるアプリケーションによっては、複数の単電池のうち二つ以上の単電池の電圧によって充電されるようにしてもよい。
【0020】
例えば、電池B1の電圧を検出するためには、まず、第1のスイッチ回路が、スイッチSW6,SW7,SW13,SW17をオンすることによって、フライングキャパシタCIを充電し、フライングキャパシタCIの充電後、スイッチSW6,SW7,SW13,SW17をオフする。次に、第2のスイッチ回路が、スイッチSW14,SW19をオンすることによって、フライングキャパシタCIの電荷を放電させて積分キャパシタCFに移動させる。これにより、電池B1の電圧に応じた変換電圧VOUT(1)が、電池B1の検出電圧として、出力回路10のオペアンプA1の出力端子に発生する。第2のスイッチ回路は、フライングキャパシタCIの電荷が放電して積分キャパシタCFに移動した後に、スイッチSW14,SW19をオフする。
【0021】
次に、電池B2の電圧を検出するためには、まず、第1のスイッチ回路が、スイッチSW7,SW8,SW13,SW17をオンすることによって、電池B1の電圧を検出する場合に対して逆向きの充電方向に、フライングキャパシタCIを充電する。フライングキャパシタCIの充電後、第1のスイッチ回路は、スイッチSW7,SW8,SW13,SW17をオフする。次に、第2のスイッチ回路が、スイッチSW18,SW15をオンすることによって、フライングキャパシタCIの電荷を放電させて積分キャパシタCFに移動させる。これにより、電池B2の電圧に応じた変換電圧VOUT(2)が、電池B2の検出電圧として、出力回路10のオペアンプA1の出力端子に発生する。第2のスイッチ回路は、フライングキャパシタCIの電荷が放電して積分キャパシタCFに移動した後に、スイッチSW18,SW15をオフする。
【0022】
フライングキャパシタ式電圧検出回路100は、更に、フライングキャパシタCIの一対の電極(両電極)との間の寄生容量が均一になるようにその両電極の周りに配置されたシールド部NSHを備えるとともに、フライングキャパシタCIの両電
極間の電位差をフライングキャパシタCIの充電タイミングと放電タイミングとで等しくする電位差調整回路を備えている。
図2には、フライングキャパシタCIの一方の電極とシールド部NSHとの間に生ずる寄生容量CN1が示され、フライングキャパシタCIのもう一方の電極とシールド部NSHとの間に生ずる寄生容量CN2が示されている。また、
図2には、電位差調整回路の機能を実現する回路として、スイッチSW22,SW23,SW24を備える短絡回路が示されている。
【0023】
したがって、上記の構成によれば、フライングキャパシタCIの両電極とシールド部NSHとの間の寄生容量が均一で
あれば、精度の良い電圧変換が可能となる。つまり、フライングキャパシタCI周りの寄生容量が電池電圧の検出精度に与える影響を軽減することができる。
【0024】
図3は、フライングキャパシタ式電圧検出回路100における、フライングキャパシタCI及びシールド部NSHの構造の具体例を模式的に示した断面図である。
【0025】
シールド部NSHは、互いに電位を等しくしたシールド電極L3とシールド電極L4とを有している。フライングキャパシタCIの両電極は、シールド電極L3とシールド電極L4との間に配置されている。シールド電極L3は、例えば、IC基板S1の表面に形成された拡散層である。シールド電極L4は、例えば、IC基板S1の上に層状に形成された導体層(典型的には、アルミニウム等のメタル配線層)である。IC基板S1の上に、
図2に示したフライングキャパシタ式電圧検出回路100の各回路要素が形成される。
【0026】
フライングキャパシタCIは、電極L11と電極L22によって構成された第1のキャパシタと、電極L21と電極L12によって構成された第2のキャパシタとによって構成されている。第1のキャパシタと第2のキャパシタは、電気容量が互いに同一になるように構成されている。電極L11と電極L21は、シールド電極L3に対向し、電極L22と電極L12は、シールド電極L4に対向している。電極L11と電極L12は、配線W1によって、同電位になるように接続され、電極L21と電極L22は、配線W2によって、同電位になるように接続されている。また、シールド電極L3とL4も同電位になるように導体によって接続されている。
【0027】
このように接続することによって、
図2に示した寄生容量CN1は、CN11とCN12の和に相当する。CN11は、電極L11とシールド電極L3との間の寄生容量を表し、CN12は、電極L12とシールド電極L4との間の寄生容量を表す。同様に、
図2に示した寄生容量CN2は、CN21とCN22の和に相当する。CN21は、電極L21とシールド電極L3との間の寄生容量を表し、CN22は、電極L22とシールド電極L4との間の寄生容量を表す。
【0028】
そして、シールド部NSHは、フライングキャパシタCIの電極との寄生容量が均一になるようにフライングキャパシタCIの周囲に配置されているので、寄生容量CN11と寄生容量CN21の容量値は互いに等しく、寄生容量CN12と寄生容量CN22の容量値は互いに等しい。
【0029】
したがって、このように構成することによって、寄生容量CN1と寄生容量CN2の容量値を互いに等しくすることができる。つまり、フライングキャパシタCIの両電極とシールド部NSHとの間の寄生容量特性を均一にすることができる。
【0030】
また、フライングキャパシタCIの両電極とシールド部NSHとの間の寄生容量特性を更に均一にするためには、フライングキャパシタCIの電極が形成されている層と同じ層にシールド電極を設けることが好適である。同じ層に設けることにより、シールド層も形成しやすい。例えば、
図3に示されるように、シールド電極L3,L4と電位を等しくした導体層(典型的には、アルミニウム等のメタル配線層)L5〜L8を、シールド電極として、設けるとよい。シールド電極L5,L7は、電極L11,L21と同じ層で形成され、シールド電極L6,L8は、電極L22,L21と同じ層で形成される。
【0031】
なお、
図3には、フライングキャパシタCIを容量値が互いに等しい2つのキャパシタに分割した場合を示しているが、フライングキャパシタCIを3つ以上に分割してもよい(すなわち、フライングキャパシタCIを3つ以上のキャパシタで構成してもよい)。
【0032】
次に、フライングキャパシタCIの両電
極間の電位差をフライングキャパシタCIの充電タイミングと放電タイミングとで等しくするための具体例について説明する。
【0033】
上述したように、
図2に示される第2のスイッチ回路SW14,SW15,SW18,SW19は、フライングキャパシタCIを放電させる回路である。第2のスイッチ回路は、フライングキャパシタCIの両電極のいずれかを基準電位VGNDに選択的に短絡可能な一対のスイッチSW14,SW18を備える第1の短絡回路を有している。VGNDは、例えば、
図3に示した基板S1に形成された仮想グランドである。
【0034】
また、上述したように、
図2のフライングキャパシタ式電圧検出回路100は、フライングキャパシタCIの両電
極間の電位差をフライングキャパシタCIの充電タイミングと放電タイミングとで等しくする電位差調整回路を備えている。この電位差調整回路は、シールド部NSHを、組電池の中で電圧検出対象となっている単電池の負極側とVGNDとのいずれかに選択的に短絡可能なスイッチSW22,SW23,SW24を備える第2の短絡回路を有している。
【0035】
フライングキャパシタCIの充電タイミング(電池電圧の取得タイミング)で、第2の短絡回路は、スイッチSW23(又は、スイッチSW22)をオンすることによって、シールド部NSHを電圧検出対象電池の負極側に接続する。この充電タイミングでは、上述の通りスイッチSW13,SW17もオンするので、寄生容量CN1の両端電圧は取得電池電圧(すなわち、電圧検出対象電池の電圧)になり、寄生容量CN2の両端電圧は零になる(又は、寄生容量CN2の両端電圧は取得電池電圧になり、寄生容量CN1の両端電圧は零になる)。
【0036】
次いで、スイッチSW23(又は、スイッチSW22)がオフした後、フライングキャパシタCIの放電タイミング(フライングキャパシタCIの電荷を積分キャパシタCFに移動するタイミング)で、第2の短絡回路は、スイッチSW24をオンすることによって、シールド部NSHをVGNDに接続する。この放電タイミングでは、上述の通りスイッチSW14,SW19(又は、スイッチSW18,SW15)もオンするので、寄生容量CN1の両端電圧は零になり、寄生容量CN2の両端電圧は取得電池電圧になる(又は、寄生容量CN2の両端電圧は零になり、寄生容量CN1の両端電圧は取得電池電圧になる)。
【0037】
つまり、フライングキャパシタCIの両電
極間の電位差が、フライングキャパシタCIの充電タイミングと放電タイミングとで等しくなるように動作している。
【0038】
ところで、
図2に示されるように、寄生容量CN1,CN2とは別に、寄生容量CD1,CD2が生ずることがある。寄生容量CD1,CD2は、フライングキャパシタCIに接続されるスイッチSW(典型的には、MOSFET等のトランジスタ)の拡散容量である。寄生容量CD1は、スイッチSW13,SW14,SW15のフライングキャパシタCI側の拡散部分の総容量であり、寄生容量CD2は、スイッチSW17,SW18,SW19のフライングキャパシタCI側の拡散部分の総容量である。
【0039】
これらの拡散部分の容量のうち、積分キャパシタCFへの電荷移動時にスイッチSW14又はSW18によってVGNDに接続される拡散部分の容量は、検出電圧の誤差にほとんど影響しない。しかしながら、積分キャパシタCFへの電荷移動時にスイッチSW15又はSW19によって積分キャパシタCFに接続される拡散部分の容量は、検出電圧の誤差に影響してしまう。なお、寄生容量CD1,CD2の電荷量は、取得電池電圧に依存する。
【0040】
そこで、スイッチの拡散部分の容量が検出電圧の誤差に与える影響を抑えるため、フライングキャパシタ式電圧検出回路100は、積分キャパシタCFと電気容量が等しい付加キャパシタCGと、付加キャパシタCGへの充電を可能にするスイッチSW26,SW27,SW28を備える第3のスイッチ回路と、付加キャパシタCGの電圧をオペアンプA1の非反転入力端子に印加することを可能にするスイッチSW30,SW31を備える電圧印加回路とを備えている。
【0041】
スイッチSW26,27,28は、フライングキャパシタCIの一方の電極側のノードN1に接続される3つのスイッチSW13,SW14,SW15ともう一方の電極側のノードN2に接続される3つのスイッチSW17,SW18,SW19と同じ構造とする。これにより、寄生容量CD1(又は、CD2)と同じ容量値の寄生容量CDXが形成される。そして、寄生容量CD1(又は、CD2)に蓄えられる電荷に等しい電荷が寄生容量CDXに蓄えられるように、フライングキャパシタCIの充電タイミングと同じタイミングで、寄生容量CDXを充電する。さらに、積分キャパシタCFに放電される電荷に等しい電荷が付加キャパシタCGに放電されるように、フライングキャパシタCIの放電タイミングと同じタイミングで、寄生容量CDXを放電する。
【0042】
スイッチSW30,SW31を備える電圧印加回路は、フライングキャパシタCIの放電タイミングでは、スイッチSW31をオン状態にすることによって、オペアンプA1の非反転入力端子のノードVPをVGNDに短絡する。これにより、オペアンプA1の反転入力端子のノードVNの電位変動を抑えることができる。
【0043】
次いで、電圧印加回路は、フライングキャパシタCIを放電した後のタイミングで、スイッチSW31をオフしスイッチSW30をオンすることによって、上述のように付加キャパシタCGの電圧をノードVPに印加する。
【0044】
このように動作させることによって、寄生容量CD1,CD2によって、オペアンプA1の出力端子に発生する変換電圧VOUTの精度が低下することを抑えることができる。
【0045】
図4は、フライングキャパシタ式電圧変換回路100に含まれる各スイッチSWの駆動信号についてのタイミングチャートである。
図4に示される駆動信号の記号(H01等)は、
図2中のスイッチSW*の横に記載した記号に対応している。また、
図4の波形において、ハイレベルのとき、スイッチSWはオンし、ローレベルのとき、スイッチSWはオフする。
【0046】
はじめに、
図4のタイミングチャートの最初の測定周期に行われる電池B1の電圧検出について
図2を参照しながら説明する。
【0047】
フライングキャパシタCIの充電タイミングT01で出力される駆動信号H01(又は、充電タイミングT01直前のタイミングで出力される駆動信号)によって、積分キャパシタCFの両端がスイッチSW20でショートされることによって積分キャパシタCFを初期化するとともに、付加キャパシタCGの両端がスイッチSW29でショートされることによって付加キャパシタCGを初期化する。
【0048】
第1のスイッチ回路は、充電タイミングT01で、スイッチSW6,SW7,SW13,SW17をオンすることによって、端子V1とV0間の電圧(すなわち、電池B
1の電圧(V1−V0))によってフライングキャパシタCIを充電する。一方、電位差調整回路は、充電タイミングT01で、スイッチSW23をオンすることによって、シールド部NSHを、ノードN2と同じ電位(すなわち、端子V0の電位)に等しくする。したがって、寄生容量CN1の両端の電位差は、フライングキャパシタCIの両端の電位差と同じ(V1−V0)となる一方で、寄生容量CN2の両端の電位差はゼロとなる。フライングキャパシタCIの充電後、スイッチSW6,SW7,SW13,SW17,SW23はオフされる。
【0049】
次いで、第2のスイッチ回路は、フライングキャパシタCIの放電タイミングT02で、スイッチSW14,SW19をオンすることによって、高電位の電極側のノードN1はVGNDに接続され、低電位の電極側のノードN2はオペアンプA1の反転入力端子に接続される。この瞬間、ノードN2の電位は、一時的にVGND以下になるが、積分キャパシタCFに電荷が移動するにつれてVGNDに収束する。一方、電位差調整回路は、放電タイミングT02で、SW24をオンすることによって、シールド部NSHと基板S1の基準グランドVSSとの間の寄生容量CSDの電荷をVGNDに放電し、寄生容量CN1,CN2によるフライングキャパシタCIへの影響を抑えることができる。
【0050】
また、フライングキャパシタCIに充電されていたCI×(V1−V0)の電荷は、CI=CFなので、オペアンプA1の出力端子から(V1−V0)の変換電圧VOUTが出力される。ただし、寄生容量CD2の両端の電位差は充電タイミングT01で零であったが、寄生容量CD2は放電タイミングT02でVGND電位に充電されるため、変換電圧VOUTをその充電分だけ押し上げることになる。
【0051】
そこで、寄生容量CD2による積分キャパシタCFへの電荷注入を補正するために、充電タイミングT01で、スイッチSW27がオンすることによって、ノードNXを、ノードN2及びシールド部NSHと同じV0の電位に等しくする。したがって、寄生容量CDXの両端の電位差は、ゼロとなる。スイッチSW27がオフした後、放電タイミングT02で、スイッチSW28がオンすることによって、一方の電極がVGNDに常時接続された付加キャパシタCGの両端の電位差は、(V0−VGND)になる。スイッチSW28がオフした後、タイミングT0CORで、スイッチSW30がオンし且つスイッチSW31がオフする。これにより、付加キャパシタCGの両端の電圧(V0−VGND)がオペアンプA1の非反転入力端子のノードVPに印加される。これにより、フライングキャパシタCIに充電された電荷だけによる電圧分が積分コンデンサCFの両端に出現することになる。ここで、スイッチSW30が常時オンし且つスイッチSW31が常時オフでもよいし、又は、スイッチSW30,SW31自体が無く且つ付加キャパシタCGの一端がオペアンプA1の非反転入力端子のノードVPに直接接続されていてもよい。これにより、付加キャパシタCGの両端の電圧(V0−VGND)がオペアンプA1の非反転入力端子のノードVPに印加される。
【0052】
そして、オペアンプA1の次段の計装アンプA5は、VOUTとVPの電位差に応じて、VSS基準の出力電圧VOを、電池B1の検出電圧として、出力する。計装アンプA5は、VSS基準で動作する、ゲインが1のアンプである。
【0053】
そして、スイッチSW21が、サンプリングタイミングT0SMPで出力されるサンプリング信号SMPLに従ってオンすることによって、出力電圧VOはサンプリングキャパシタCSにサンプリングされる。オペアンプA2の出力電圧VSMPLは、次回のサンプリングタイミングT1SMPまで保持される。
【0054】
次に、
図4のサンプリングチャートに基づいて、VSSから離れている電池B4の電圧検出について
図2を参照しながら説明する。電池B4の電圧を検出するときのフライングキャパシタCIの充電方向は、電池B1の電圧を検出するときに対して逆転している。
【0055】
フライングキャパシタCIの充電タイミングT31で出力される駆動信号H01(又は、充電タイミングT31直前のタイミングで出力される駆動信号)によって、積分キャパシタCFの両端がスイッチSW20でショートされることによって積分キャパシタCFを初期化するとともに、付加キャパシタCGの両端がスイッチSW29でショートされることによって付加キャパシタCGを初期化する。
【0056】
第1のスイッチ回路は、充電タイミングT31で、スイッチSW9,SW10,SW13,SW17をオンすることによって、端子V4とV3間の電圧(すなわち、電池B4の電圧(V4−V3))によってフライングキャパシタCIを充電する。一方、電位差調整回路は、充電タイミングT31で、スイッチSW22をオンすることによって、シールド部NSHを、ノードN1と同じ電位(すなわち、端子V3の電位)に等しくする。したがって、寄生容量CN2の両端の電位差は、フライングキャパシタCIの両端の電位差と同じ(V4−V3)となる一方で、寄生容量CN1の両端の電位差はゼロとなる。フライングキャパシタCIの充電後、スイッチSW9,SW10,SW13,SW17,SW23はオフされる。
【0057】
次いで、第2のスイッチ回路は、フライングキャパシタCIの放電タイミングT32で、スイッチSW18,SW15をオンすることによって、高電位の電極側のノードN2はVGNDに接続され、低電位の電極側のノードN1はオペアンプA1の反転入力端子に接続される。この瞬間、ノードN1の電位は、一時的にVGND以下になるが、積分キャパシタCFに電荷が移動するにつれてVGNDに収束する。一方、電位差調整回路は、放電タイミングT32で、SW24をオンすることによって、シールド部NSHと基板S1の基準グランドVSSとの間の寄生容量CSDの電荷をVGNDに放電し、寄生容量CN1,CN2によるフライングキャパシタCIへの影響を抑えることができる。
【0058】
また、フライングキャパシタCIに充電されていたCI×(V4−V3)の電荷は、CI=CFなので、オペアンプA1の出力端子から(V4−V3)の変換電圧VOUTが出力される。ただし、寄生容量CD1の両端の電位差は充電タイミングT31でV3であったが、寄生容量CD1は放電タイミングT32でVGND電位に放電されるため、変換電圧VOUTをその放電分だけ押し下げることになる。
【0059】
そこで、寄生容量CD1による積分キャパシタCFへの電荷注入を補正するために、充電タイミングT31で、スイッチSW26がオンすることによって、ノードNXを、ノードN1及びシールド部NSHと同じV3の電位に等しくする。したがって、寄生容量CDXの両端の電位差は、V3となる。スイッチSW26がオフした後、放電タイミングT32で、スイッチSW28がオンすることによって、一方の電極がVGNDに常時接続された付加キャパシタCGの両端の電位差は、(V3−VGND)になる。スイッチSW28がオフした後、タイミングT3CORで、スイッチSW30がオンし且つスイッチSW31がオフする。これにより、付加キャパシタCGの両端の電圧(V3−VGND)がオペアンプA1の非反転入力端子のノードVPに印加される。これにより、フライングキャパシタCIに充電された電荷だけによる電圧分が積分コンデンサCFの両端に出現することになる。ここで、スイッチSW30が常時オンし且つスイッチSW31が常時オフでもよいし、又は、スイッチSW30,SW31自体が無く且つ付加キャパシタCGの一端がオペアンプA1の非反転入力端子のノードVPに直接接続されていてもよい。これにより、付加キャパシタCGの両端の電圧(V3−VGND)がオペアンプA1の非反転入力端子のノードVPに印加される。
【0060】
そして、オペアンプA1の次段の計装アンプA5は、VOUTとVPの電位差に応じて、VSS基準の出力電圧VOを、電池B4の検出電圧として、出力する。計装アンプA5は、VSS基準で動作する、ゲインが1のアンプである。
【0061】
そして、スイッチSW21が、サンプリングタイミングT3SMPで出力されるサンプリング信号SMPLに従ってオンすることによって、出力電圧VOはサンプリングキャパシタCSにサンプリングされる。オペアンプA2の出力電圧VSMPLは、次回のサンプリングタイミングT4SMPまで保持される。
【0062】
このように、順次、電池間電圧に比例する電圧が、オペアンプ1と計装アンプA5を介して出力される。出力電圧VSMPLは、所定の回路F1に供給される。回路F1として、例えば、A/D変換回路、デジタル回路、アナログ回路が挙げられる。
【0063】
図5は、回路F1の第1の具体例を示した図である。
図5に示される回路は、出力電圧VSMPLの値に応じて、各単電池の状態を判定する判定回路である。コンパレータ21は、例えば、出力電圧VSMPLを抵抗分圧して得られた検出電圧を基準電圧D2と比較することにより、電池の充電停止を判定するための充電停止判定電圧を検出する。その検出信号は、遅延回路22で遅延されて、充電停止判定機能を備えた判定回路F2に供給される。また、コンパレータ25は、例えば、出力電圧VSMPLを抵抗分圧して得られた検出電圧を基準電圧D2と比較することにより、電池の過放電を判定するための過放電判定電圧を検出する。その検出信号は、遅延回路26で遅延されて、過放電判定機能を備えた判定回路F2に供給される。
【0064】
また、各電池の充電停止判定電圧及び過放電判定電圧の検出と並行して、コンパレータ23は、例えば、出力電圧VSMPLを抵抗分圧して得られた検出電圧を基準電圧D2と比較することにより、電池とIC間の断線を検出する。電池とICとの間の断線を検出するため、
図4に示されるように、信号H01のハイレベルのタイミング(充電タイミング)に先行して、スイッチSW0〜SW5が信号DS0〜DS5に従って順次オンすることによって、電池端子間に抵抗RS(
図2参照)を接続する。
【0065】
電池とIC間に断線が発生した場合、その端子の寄生容量等によって、不確かな電位となるため、所定の電池端子間電圧の検出ができないことが予想される。このような場合に備えて、電池端子間電圧の検出タイミングに抵抗RSを接続することによって、断線発生時に断線発生端子の寄生容量を放電すればよい。端子寄生容量を100pF、抵抗RSを1MΩとすれば、時定数は100μsとなるため、サンプリング周期を1msとすれば、次のサンプルタイミングまでに充分に放電可能である。断線が実際に発生していれば、端子間電圧は1V以下に低下する。
【0066】
また、電池電圧の低下を検出する場合、その検出タイミングに端子間電圧が現れるので、電池電圧低下の検出レベルと上述の断線検出レベルを例えば1Vに設定すれば、コンパレータ23は、電池電圧の低下の検出と断線検出の両方を同時に実行できる。
【0067】
図6は、回路F1の第2の具体例を示した図である。
図5の場合、複数の判定機能を実現するために3つのコンパレータ21,23,25を使用しているが、
図6に示されるように、抵抗分圧回路の後段に配置された3個のスイッチSC1〜3での切り替えによって、複数の判定機能を1つのコンパレータ27のみで実現できる。
【0068】
また、
図7は、各スイッチSWの構成の具体例を示した図である。スイッチSWは、一つのトランジスタで実現してもよいが、
図7に示されるように、複数のトランジスタを組み合わせて実現してもよい。MPは、Pチャネル型トランジスタを表し、MNは、Nチャネル型トランジスタを表す。MP2のゲートとIN端子の容量及びMP3とIN端子の容量は、MP1のゲートとIN端子の容量に等しくなるような配線及び構造で構成されている。同様に、MN2のゲートとIN端子の容量及びMN3とIN端子の容量は、MN1のゲートとIN端子の容量に等しくなるような配線及び構造で構成されている。MP1のIN端子側に、MP1の半分のゲートサイズのMP2が接続され、MP2のOUT端子側に、MP1の半分のゲートサイズのMP3が接続されている。MN1,MN2,MN3間の関係についても同様である。
【0069】
この構成によれば、各スイッチのゲートのオン/オフのスイッチングによるゲートとドレイン、ゲートとソース間の電荷の押し込み/引き込みをキャンセルすることができ、ゲートスイッチングの検出電圧への影響を最小限にすることができる。
【0070】
図8は、本発明に係るフライングキャパシタ式電圧検出回路の一実施形態を内蔵する保護IC250の構成図である。保護IC250は、
図2で示したフライングキャパシタ式電圧検出回路100が内蔵されている。保護IC250は、フライングキャパシタ式電圧検出回路100の電圧検出結果に基づいて、組電池B0〜B4に流れる電流の導通/遮断を切り替えるトランジスタMDOUTとトランジスタMCOUTの切り替え動作を制御する。保護IC250は、例えば、電源端子P+及びP−に接続される不図示の携帯電話等の電子機器に内蔵又は外付けされる電池パックに、組電池B0〜B4と共に内蔵されるものである。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。