(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プローブ基板の回路への接続端を有し靭性を示す第1の金属材料で形成された針本体部と、針先を有する針先部であって前記針本体部の前記第1の金属材料よりも高い硬度を示す第2の金属材料で形成され、前記針本体部に連続する針先部とを備え、前記針本体部及び前記針先部には、前記針先から前記接続端に至る同一金属材料から成る電流経路が形成されており、
前記同一金属材料は前記第2の金属材料であり、該第2の金属材料は前記第1の金属材料よりも電気抵抗率(Ωcm)が小さい、通電試験用プローブ。
前記電流経路は前記針先部から前記針本体部を経る電流経路に対するバイパス路として作用し、該バイパス路は、その経路中に、異質金属の接合によって形成される界面を有しない、請求項1に記載の通電試験用プローブ。
前記針本体部が、前記プローブ基板の回路への接続端から離れる方向へ伸長する取付け部分と、該取付け部分の伸長方向とほぼ直角に伸長するアーム部分と、該アーム部の先端から前記取付け部分の伸長方向と同一方向に伸長する台座部分とを備え、前記針先部が前記台座部分の伸長端から突出するカンチレバー型プローブである、請求項1に記載の通電試験用プローブ。
前記針本体部が前記プローブ基板の回路への接続端から離れる方向へ棒状に伸長し、前記針先部が前記針本体部の先端から該針本体部とほぼ同一方向に伸長する垂直型プローブである、請求項1に記載の通電試験用プローブ。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハに作り込まれた多数の半導体集積回路は、各チップに分離されるに先立ち、一般的に、仕様書通りに製造されているか否かの電気的試験を受ける。この電気的試験には、各半導体集積回路である被検査体の電極に接続される複数のプローブが設けられたプローブカードのようなプローブ組立体、すなわち電気的接続装置が用いられる。被検査体はこの電気的接続装置を経てテスタに接続される。
【0003】
この種の電気的接続装置に用いられる従来のプローブの1つとして、板状のプローブ本体部すなわち針本体部と、該針本体部に設けられて被検査体の電極に当接する針先部とを備えるものがある(例えば、特許文献1及び2を参照)。針本体部は、プローブが取り付けられるプローブ基板への接続端を有する取付け部分と、該取付け部分から前記プローブ基板と間隔をおいて該プローブ基板に沿って横方向へ伸びるアーム部分と、該アーム部分の先端から下方へ伸長する台座部分とを備え、該台座部分に前記針先部が設けられている。この種のプローブは、いわゆるカンチレバー型プローブと称されている。
【0004】
特許文献1に記載のプローブでは、前記針本体部は針先部で用いる材料よりも高い靱性を有する導電材料で形成されている。他方、前記針本体部の前記台座部分の先端に設けられる針先部は、硬度において前記針本体部に用いる材料よりも優れた導電性材料で形成している。
【0005】
これにより、プローブの前記針先部の先端(針先)が被検査体の電極に押し付けられたとき、前記アーム部分の弾性によって該アーム部分に適正な撓み変形を生じさせることができる。このアーム部分の撓み変形に伴って前記針先が前記電極上を滑すべると、この針先の滑りによって前記電極上の酸化膜が削られる。これにより、針先が前記電極と確実に電気的に接触する。また、前記針先を含む針先部は、針本体部よりも高い硬度の金属材料で構成されていることから、前記した針先の滑りによる摩耗が抑制される。したがって、前記プローブは、良好な電気的及び機械的な特性を与えられる。
【0006】
ところで、被検査体の電極の狭ピッチ化に伴ってプローブが小型化すると、プローブに流すことができる許容電流量が減少する。プローブに流す電流を許容電流量内に保持することにより、プローブの弾性によって該プローブの針先に適正な針圧を掛けた状態で、プローブと電極との間に適正な電気的接触を実現することができる。しかし、プローブに許容電流を超える過電流が流れると、プローブの温度が上昇し、この温度上昇によってプローブの弾性にへたりが生じ、該プローブが損傷を受けることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、通電による温度上昇を抑制することができ、電気的及び機械的特性に優れた通電試験用プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次のような知見に基づく。本願発明者は、許容電流の増大を図るべく従来の前記プローブにおいて、前記針本体部を構成する第1の金属材料と第2の金属材料とを種々選択し、それらの組み合わせで構成されたプローブについて、それぞれの通電電流値の変化に対する針圧維持率の変化を求める実験によって
図1に示すような特性グラフを得た。横軸はプローブに流す電流値(mA)である。縦軸は、そのときのプローブの弾性のへたりを表す針圧維持率(%)であり、該針圧維持率は所定の針圧に対する得られた針圧の割合を示す。
【0010】
ここで、針圧維持率(%)の求め方を説明する。針圧測定の対象となるカンチレバータイプのプローブが評価用回路基板に取り付けられた状態で金プレートをプローブの針先に接触させる。この接触後、さらに前記金プレートが、前記プローブの針先に押し付けられるように、該針先に向けて100μmの距離を移動される。この100μmのOD(オーバドライブ)状態で、前記回路基板から前記プローブを経て前記金プレートに流れる電流値をパラメータとして、そのときの針圧が測定される。電流値が0mAのときの針圧を100%とし、その90%の針圧を維持できる電流値が許容電流値と称される。
【0011】
前記したOD状態で、例えば、電流を通じていない0mAでの針圧が30.0mNの場合、この針圧値を100%とし、600mAの電流を流したときの針圧が27.5mNの場合は、針圧維持率が91%(27.5mN/30.0mN×100%)となり、同様に850mAの電流を流したときの針圧が24.0mNの場合は針圧維持率が同様にして80%となる。
【0012】
図1のグラフに示す特性線Aは、前記針本体部を構成する第1の金属材料及び針先部を構成する第2の金属材料を同一のNiB(ニッケルボロン)で形成したプローブの特性を示す。特性線Bは、針本体部(第1の金属材料)をNiBで形成し、針先部(第2の金属材料)を80%Pd-20%Ni合金で形成したプローブの特性を示す。また、特性線Cは、針本体部(第1の金属材料)をNiBで形成し、針先部(第2の金属材料)をRh(ロジウム)で形成したプローブの特性を示す。
【0013】
図1のグラフによれば、前記したように、90%の針圧維持率を維持できる通電量を許容電流値とすると、特性線Aによれば、923mAの許容電流値が得られた。他方、特性線Bによれば、ほぼ800mAの許容電流値が得られ、特性線Cによれば、687mAの許容電流値が得られた。これらの結果、及び従来の前記プローブの針先部及び針本体部を覆うように全体的にメッキを施したプローブの許容電流値の測定結果等を総合的に考察した結果、前記針本体部を構成する第1の金属材料と、針先部を構成する第2の金属材料との異質金属材料による界面での電気抵抗が、プローブの弾性にへたりをもたらす発熱の主たる原因であるとの知見を得た。
【0014】
この知見に基づき、本発明に係る通電試験用プローブは、プローブ基板の回路への接続端を有し靭性を示す第1の金属材料で形成された針本体部と、針先を有する針先部であって前記針本体部の前記第1の金属材料よりも高い硬度を示す第2の金属材料で形成され、前記針本体部に連続する針先部とを備え、前記針本体部及び前記針先部に、前記針先から前記接続端に至る同一金属材料から成る電流経路を形成したことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る前記通電試験用プローブは、靭性を示す第1の金属材料で形成された針本体部の適正な弾性によって針先部に適正な針圧を保持することができる。また、前記針先から前記接続端に至る同一金属材料から成る電流経路は前記針本体部及び前記針先部との界面を有する通電路に対するバイパス路として機能し、該バイパス路は、その経路中に異種金属の接合によって形成される界面を有しないことから、前記プローブの電気抵抗を低減する。その結果、前記プローブは、その機械的特性を損なうことなく、許容電流量の増大を含む電気的特性の改善が図られる。
【0016】
前記同一金属材料は前記第1又は第2の金属材料のいずれかを用いることができる。
【0017】
前記同一金属材料は前記第1及び第2の金属材料のうちの前記第2の金属材料とすることができる。前記第2の金属材料に、前記第1の金属材料よりも電気抵抗率(Ωcm)が小さい金属材料を用いることができる。この場合、第1の金属材料よりも高硬度の前記第2の金属材料で前記第1の金属材料からなる前記針本体部を覆うことにより、前記本体部分を覆う前記第2の金属材料の部分を前記本体部分の保護層として機能させることができる。
【0018】
前記第1の金属材料として、ニッケル又はニッケル合金を用い、前記第2の金属材料としてロジウムを用いることができる。
【0019】
前記同一金属材料は、プローブの電気抵抗の低減の観点からは、前記第1又は第2の金属材料よりも電気抵抗率(Ωcm)の小さな金属材料を用いることが望ましい。
【0020】
前記プローブは、前記針本体部が前記回路基板への接続端から離れる方向へ伸長する取付け部分と、該取付け部分の伸長方向とほぼ直角に伸長するアーム部分と、該アーム部の先端から前記取付け部分の伸長方向と同一方向に伸長する台座部分とを備え、前記針先部が前記台座部分の伸長端から突出するカンチレバー型プローブとすることができる。
【0021】
前記プローブは、前記針本体部が前記回路基板への接続端から離れる方向へ棒状に伸長し、前記針先部が棒状の前記針本体部の先端から該針本体部とほぼ同一方向に伸長する垂直型プローブとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、前記したように、機械的特性を損なうことなく、許容電流量の増大を含む電気的特性の改善を図ることができるので、狭ピッチ対応においても過電流の熱による弾性のへたりや針先の溶融を生じることなく、耐久性に優れたプローブを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る試験装置10は、
図2に示されているように、例えば半導体ウエハ12に形成された多数の平板状の集積回路の電気的試験に用いられる。半導体ウエハ12に形成されたこれら多数の集積回路は、すべての集積回路が同時に一括的に、あるいは複数回に分けて電気的試験を受ける。被検査体である半導体ウエハ12の上面には、各集積回路のための多数の電極12aが設けられている。
【0025】
試験装置10は、被検査体12の電極12aを上方へ向けて被検査体12を取り外し可能に保持するチャックトップ14と、該チャックトップ上の被検査体12に設けられた各集積回路のための電極12aを試験用電気回路(図示せず)に電気的に接続する電気的接続装置16とを含む。
【0026】
電気的接続装置16は、プリント配線基板18と、該プリント配線基板にセラミックス基板20を介して積層されたプローブ基板22とを備える。プローブ基板22の一方の面には、本発明に係る多数のプローブ24が整列して取り付けられている。セラミックス基板20およびプローブ基板22は、該プローブ基板に取り付けられたプローブ24が下方に向くように、セラミックスのような誘電体材料からなる従来よく知られた取付けリング組立体26を介して、プリント配線基板18の下面に積層するように、該プリント配線基板に組み付けられている。
【0027】
プリント配線基板18の上面には、金属材料からなり、プリント配線基板18の前記上面の部分的な露出を許す補強部材28が配置されている。プローブ基板22、セラミックス基板20、プリント配線基板18、補強部材28および取付リング組立体26は、図示しないがボルトのような従来におけると同様な結合部材により、一体的に組み付けられている。
【0028】
プローブ基板22には、図示しないが従来よく知られた導電路が形成されており、プローブ24はそれぞれに対応した前記各導電路に固定的に接続されるように、プローブ基板22に取り付けられている。プローブ24に対応したプローブ基板22の前記各導電路は、従来よく知られているように、セラミックス基板20およびプリント配線基板18をそれぞれ貫通して形成された各導電路(いずれも図示せず)を経て、プリント配線基板18の上面の補強部材28から露出する領域に配列されたソケット(図示せず)に電気的に接続されており、該ソケットを経て、図示しない試験用電気回路に接続されている。
【0029】
したがって、電気的接続装置16の各プローブ24が、被検査体である半導体ウエハ12の対応する電極12aに当接するように、電気的接続装置16と真空チャック14とを相近づけるように移動させることにより、電極12aを前記試験用回路に接続することができる。前記試験用回路からは、電気的接続装置16を経て各集積回路に対応する電極12aを経て電気信号(電圧、電流)が供給され、またその応答信号が対応する電極12aを経て被検査体12から前記試験用回路に供給される。これにより、被検査体12の通電試験を行うことができる。
【0030】
各プローブ24を拡大して示す
図3を参照するに、各プローブ24は、例えばニッケルボロンのようなニッケル合金である第1の金属材料からなる平板状の針本体部24aと、例えばロジウムのような硬質の第2の金属材料からなる針先部24bとを備える。これら両部24a、24bは、共に比較的良好な導電性を示す。前記ニッケル合金からなる針本体部24aは、針先部24bを構成するロジウムよりも靭性に富み、他方、このロジウムは針本体部24aを構成する前記金属材料よりも硬度が高い。
【0031】
針本体部24aは、前記した金属材料の他、例えばニッケルタングステン合金、ニッケルコバルト合金のようなニッケル合金、ニッケル、燐青銅、パラジウムコバルト合金のような靭性に優れた高靱性の金属材料で形成することができる。また、針先部24bの基層は、ロジウム以外の高硬質金属材料で適宜形成することができる。
【0032】
針本体部24aは、
図3に示す例では、プローブ基板22の対応する前記導電路への接続端となる平坦な上端30aを有し、該上端からこれとほぼ直角に下方へ、すなわちプローブ基板22から離れる方向へ伸長する取付け部分30と、該取付け部分の下端部の一側からプローブ基板22と平行に横方向へ伸長するアーム部分32と、該アーム部分の伸長端から下方に伸長する台座部分34とを備える。また、図示の例では、アーム部分32には、該アーム部分の弾性変形を促進するためのスロット32aが形成されている。
【0033】
台座部分34には、その下端面34a(
図4参照)から一部を突出させて針先部24bが埋設されている。針先部24bは、
図4に示す例では、台座部分34の下端面34aに一致する下面を有する中間部36aと、該中間部の両端から相離れる方向へ伸長する直線状の一対の端部36b、36cとを有するクランク状の縦断面形状を有する。
【0034】
針先部24bは、その一方の端部36bを台座部分34の下端面34aから突出させ、他方の端部36cを台座部分34の一方の側面に沿って該台座部内に伸長するように、台座部分34内に埋設されている。したがって、針先部24b及びこれに結合された針本体部24aは、針先部24bの針先から針本体部24aの上端30aに至る電路を形成する。
【0035】
台座部分34と、該台座部分内に埋設された針先部24bとの界面には、他方の端部36cの端面を除き、針本体部24aを構成する前記した第1の金属材料からなる金属層38aが介在する。金属層38aは、台座部分34の下端面34aから突出する端部36bの先端すなわち針先に達する。
【0036】
前記第1の金属材料で構成された金属層38aは、針先部24bの針先から該針先部24bの端部36bに沿って、前記第1の金属材料で構成された針本体部24aの台座部分34内に延在する。したがって、金属層38a及び針本体部24aは、針先部24b及びこれに結合された針本体部24aで形成される前記電路に対し、同一金属材料で構成された電流バイパス路を形成する。
【0037】
したがって、同一金属材料の金属層38a及び針本体部24aで構成された前記バイパス路は、針先部24bの針先から針本体部24aのプローブ基板22への接続端となる上端30aに至る経路中に異質金属材料の接合による界面を有しない。その結果、針先部24bの針先から針本体部24aの上端30aに至る電気抵抗は、大きく低減する。
【0038】
図5は、本発明の他の具体例を示す
図4と同様な図面である。
図5に示す例では、針本体部24aと針先部24bとの界面に介在する金属層38bは、針先部24bを形成する前記第2の金属材料で形成されている。この第2の金属材料で形成された金属層38bは、針本体部24aと針先部24bとの界面に沿って伸び、さらに
針本体部24aの上端30aに達するように、
針本体部24aの一側面の全域を覆って形成されている。したがって、金属層38bは、針先部24bと共に、針先部24b及びこれに結合された針本体部24aで形成される前記電路に対し、同一金属材料で構成された電流バイパス路を形成する。
【0039】
金属層38b及び
針先部24bで構成される前記バイパス路は、同一金属材料で構成されることから、金属層38bにおけると同様に、針先部24bの針先から針本体部24aのプローブ基板22への接続端となる上端30aに至る経路中に異質金属材料の接合による界面を有しない。その結果、針先部24bの針先から針本体部24aの上端30aに至る電気抵抗は、
図4に示した例におけると同様に、大きく低減する。
【0040】
図6は、
図4及び
図5に示す本発明に係るプローブ24、24と、従来のプローブとの特性の比較を示す
図1と同様なグラフである。針圧維持率は、前記したと同様な方法で測定された。特性線A及びCは、
図1に示す特性線A及びCであり、特性線Aは針本体部を構成する第1の金属材料及び針先部を構成する第2の金属材料を同一のニッケルボロンで形成したプローブの特性を示す。また特性線Cは、針本体部をニッケルボロンで形成し、針先部をロジウムで形成したプローブの特性を示す。他方、特性線Dは、
図4に示したプローブ24すなわち金属層38aを設けたプローブ24の特性を示し、特性線Eは、
図5に示したプローブ24すなわち金属層38bを設けたプローブ24の特性を示す。
【0041】
特性線A及びCによれば、前記したとおり、923mA及び687mAの許容電流値がそれぞれ得られた。他方、
図4に示したプローブ24の特性線Dによれば、818mAの許容電流値が得られ、
図4に示したプローブ24の特性線Eによれば、770mAの許容電流値が得られた。
【0042】
これらの許容電流値の比較から明らかなように、本発明に係るプローブ24の許容電流値は、針本体部及び針先部が同一金属材料からなるプローブ(特性線A)のそれには劣るが、針本体部と針先部とが異質金属の接合による界面を有しバイパス路を有しない従来のプローブ(特性線C)に比較して許容電流値を少なくとも約80mA以上増大させることができた。
【0043】
次にプローブ24の製造方法を
図7ないし
図9に沿って説明する。まず、
図5に示したプローブ24の製造方法を
図7に沿って説明する。
【0044】
図7(a)に示すように、ステンレス製の平坦な表面を有する基台50上に、後に除去される犠牲層52のためのフォトリソマスク54が、従来よく知られたフォトレジスト層への選択露光および現像処理により形成される。フォトリソマスク54の凹所54aから露出する基台50の表面部分に例えば銅のような犠牲層材料が電気メッキ法により所定の厚さに堆積され、これにより犠牲層52が形成される。
【0045】
フォトリソマスク54を除去した後、
図7(b)に示すように、新たな第2のフォトリソマスク56が基台50の表面部分および犠牲層52を覆って形成される。第2のフォトリソマスク56は、従来と同様、新たなフォトレジスト層への選択露光および現像処理により形成され、フォトリソマスク56には、針先部24bの平面形状を有する凹所56aが形成される。この凹所56aからは基台50の表面及び犠牲層52の一部が露出する。
【0046】
第2のフォトリソマスク56の凹所56aから露出する基台50の表面部分及び犠牲層52上には、
図7(c)に示すように、第2の金属材料が、電気メッキ法により、ほぼ犠牲層52の厚さに等しい厚さで堆積される。この第2の金属材料の堆積により針先部24bが形成される。
【0047】
針先部24bの形成後、
図7(d)に示すように、凹所56a内の針先部24b上に、さらに第1の金属材料が堆積され、この第1の金属材料の堆積によって金属層38aが形成される。
【0048】
基台50上からフォトリソマスク56が除去されると、基台50上には、さらに新たな第3のフォトリソマスク58が形成される。このフォトリソマスク58は、前記したと同様な新たなフォトレジスト層への選択露光及び現像処理により形成される。これにより、フォトリソマスク58には、針本体部24aの平面形状を有する凹所58aが形成される。凹所58aから露出する金属層38a及び基台50上には、金属層38aと同一の金属材料が堆積され、これにより針本体部24aが形成される。
【0049】
針本体部24aの形成後、第3のフォトリソマスク58が除去され、また犠牲層52が除去された後、プローブ24が基台50上から剥離される。これにより、異種金属の組合せで構成された従来のプローブ(特性線C)に比較して許容電流値が増大した
図4に示したプローブ24を得ることができる。
【0050】
次に、
図5に示したプローブ24の製造方法を
図8及び9に沿って説明する。
図8(a)に示すように、基台50上には、
図7(a)に示したと同様な第1のフォトリソマスク54を用いてその凹所54aに犠牲層52が形成される。
【0051】
犠牲層52の形成後、
図8(b)に示すように、フォトリソマスク54が除去され、その後、
図8(c)に示すように、フォトレジスト層56が基台50及び犠牲層52を覆って形成される。
【0052】
フォトレジスト層56は、前記したと同様な選択露光及び現像処理を受け、これにより、
図8(d)に示すように、凹所56aを有する第2のフォトリソマスク56が形成される。フォトリソマスク56の凹所56aは、針本体部24aの平面形状を有し、凹所56aは犠牲層52及び基台50の表面の一部を露出させる。この凹所56aから露出する犠牲層52及び基台50の表面には、前記第1の金属材料が堆積される。この第1の金属材料の堆積によって針本体部24aの平面形状を有する金属層38bが形成される。
【0053】
金属層38bの形成後、第2のフォトリソマスク56が除去される。フォトリソマスク56の除去後、基台50の表面上には、
図9(e)に示すように、金属層38aの一部を露出させる凹所58aを有する第3のフォトリソマスク58が形成される。フォトリソマスク58は、前記したと同様なフォトレジスト層の選択露光及び現像処理により、形成される。フォトリソマスク58の凹所58aは、針先部24bの平面形状を有する。したがって、この金属層38aの凹所58aから露出する部分に前記第2の金属材料を堆積することによって、針先部24bが形成される。
【0054】
針先部24bの形成後、フォトリソマスク58が除去され、
図9(f)に示すように、基台50上は、さらに新たなフォトレジスト層60で覆われる。フォトレジスト層60は、前記したと同様な選択露光及び現像処理を受ける。これにより、
図9(g)に示すように、基台50上には、針先部24b及び金属層38bの一部を露出させる凹所60aを有する第4のフォトリソマスク60が形成される。凹所60aは、
図8(d)に示した凹所56aと同様、針本体部24aの平面形状を有する。したがって、針先部24bの凹所60aに露出する部分及び金属層38b上に前記第1の金属材料を堆積することにより、
図9(h)に示すように、針本体部24aが形成される。
【0055】
針本体部24aの形成後、第4のフォトリソマスク60が除去され、また犠牲層52が除去された後、プローブ24が基台50上から剥離される。これにより、異種金属の組合せで構成された従来のプローブ(特性線C)に比較して許容電流値が増大した
図5に示したプローブ24を得ることができる。
【0056】
図4に関連して、金属層38aが針先部24bの一方の側面の全面を覆うように形成され、また
図5に関連して、金属層38bが針本体部24aの一方の側面の全面を覆うように形成されたそれぞれの例について説明した。これらに代えて、金属層38aは、針先部24bの前記側面の全面を覆うことなく該面を帯状に伸びて針先に達するように形成することができる。また、金属層38aは、針本体部24aの前記側面の全面を覆うことなく該面を帯状に伸びて上端30aに達するように形成することができる。
【0057】
さらに、前記金属層38a、38bは、針先部24b、針本体部24aの前記側面ではなく、針先部24b、針本体部24aの内部に形成することができる。しかしながら、製造を容易にする上で、図示のとおり、前記金属層38a、38bを針先部24b、針本体部24aの前記側面に形成することが望ましい。
【0058】
また針先部24bは、前記したクランク状に代えて、直線状の針先部を採用することができる。
【0059】
図10は、本発明を例えば実開平07−29838号公報に開示された垂直動作式の電気的接続装置(プローブカード)の垂直型プローブに適用した例を示す。垂直型プローブ62は、
図10に示す例では、互い同軸線上に一致して配置されかつ相互に離間して配置される一対の直線部分64a及び64bと、該両直線部分間にあって該直線部分の互いに向き合う一端を連結する曲線変形部分64cとを有する針本体部62aを備える。一方の直線部分64aの他端はプローブ基板の回路への接続端となる垂直型プローブ62の上端30aとなる。他方の直線部分64bの他端には、前記したと同様な針先部62bが形成されている。
【0060】
垂直型プローブ62では、従来よく知られているように、針先が被検査体12の電極12aに押圧されると、曲線変形部分64cが一対の直線部分64a、64b間で弾性変形することにより、所定の針圧が得られる。
【0061】
針本体部62aは、前記したニッケルボロンのような第1の金属材料から成る。針先部62bは、前記したロジウムのような第2の金属材料から成る。
【0062】
針先部62bは、
図10に円で囲って拡大して示すように、針先部24bにおける同様なクランク状を呈し、中間部66aを経て相互に連続する両端部66b、66cの一方の端部66bが前記他方の直線部分64aの前記他端から突出するように、他方の端部66cが前記他方の直線部分64b内に埋設されている。
【0063】
針本体部62aと針先部62bとの界面、すなわち前記他方の直線部分64bと針先部62bとの界面には、
図4に示した例におけると同様、前記第1の金属材料であるニッケルボロンから成る金属層68が形成されている。金属層68は、針本体部62aの直線部分64bと、針先部62bの前記他方の端部66cとの界面を超えて、該端部66cの先端すなわち針先に達する。
【0064】
したがって、垂直型プローブ62では、
図4に示した例におけると同様に、金属層68は、針本体部62aと共に、針先部62b及びこれに結合された針本体部62aで形成された異質金属材料の接合による境界を有する電路に対し、同一金属材料で構成された電流バイパス路を形成する。
【0065】
図11は、本発明に係る垂直型プローブ62と金属層68を有しない従来の垂直型プローブとの比較を示す
図1と同様なグラフである。特性線Fは、従来の垂直型プローブの特性を示す。特性線G〜Iは金属層68の厚さを変えたときの垂直型プローブ62の特性をそれぞれ示す。特性線Gは、金属層68の厚さが1μmであり、この厚さ方向に沿ったロジウムから成る針先部62bの厚さは11.5μmである垂直型プローブ62の特性を示す。特性線H及びIは、それぞれ金属層68の厚さが2μm及び3μmであり、針先部62bの厚さは10.5μm及び9.5μmの垂直型プローブ62の特性を示す。
【0066】
図11のグラフによれば、従来の垂直型プローブの特性線Fでは1045mAの許容電流値が得られた。これに対し本発明に係る垂直型プローブ62の特性線G、H及びIによれば、1074mA、1094mA及び1078mAの許容電流値がそれぞれ得られた。
【0067】
これらの許容電流値の比較から明らかなように、金属層68の厚さ変化に拘わらず、本発明に係るプローブ62によれば、従来の垂直型プローブに比較して許容電流値を少なくとも約30mA以上増大させることができた。
【0068】
前記したところでは、金属層38(38a、38b)及び68を前記第1又は2の金属材料で構成した例について説明した。これらに代えて、前記金属層を前記第1及び第2の金属材料と異なる金属材料で構成することができる。この場合、前記金属層は、針本体部24a、62aの上端30aから針先部24b、針先部62bの針先に達するように少なくとも帯状に形成される。また、前記金属層を前記第1及び第2の金属材料と異なる金属材料で構成する場合、前記金属層第1及び第2の金属材料よりも抵抗率(体積抵抗率:Ωcm)が小さな金属材料を採用することがプローブの低抵抗化を図り、許容電流値を増大する上で、有利である。