特許第6103844号(P6103844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103844
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】アイドルストップ車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20170316BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B60T7/12 A
   F02D29/02 321A
   B60T7/12 E
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-167958(P2012-167958)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-24499(P2014-24499A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】中野 英茂
(72)【発明者】
【氏名】大芝 拓真
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−247552(JP,A)
【文献】 特開2009−101940(JP,A)
【文献】 特開2006−088733(JP,A)
【文献】 特開2007−216765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12− 8/96
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のアイドリングを停止するアイドルストップ中に、車輪に付帯するブレーキ装置に液圧力を供給する液圧回路上に存在するソレノイドバルブに通電して当該ソレノイドバルブにより液圧回路を遮断し、ブレーキ装置に供給された液圧力を保持することができるものであって、
ある車輪に付帯するブレーキ装置に液圧力を供給する液圧回路上に存在する第一のソレノイドバルブと、他の車輪に付帯するブレーキ装置に液圧力を供給する液圧回路上に存在する第二のソレノイドバルブとを別個独立に操作することが可能であり、
アイドルストップ中に車両が所在する路面の勾配を検出し、その勾配の大きさが閾値を下回るときには、前記第一のソレノイドバルブ及び前記第二のソレノイドバルブのうち一方に対して通電を行い、他方に対しては通電を行わず、
アイドルストップ中に検出した路面の勾配が閾値を下回り、前記第一のソレノイドバルブ及び前記第二のソレノイドバルブのうち一方に対して通電を行い、他方に対して通電を行っていない状態で、車両が移動していることを感知した場合には、以後のアイドルストップ機会において、必ず前記他方のソレノイドバルブに対して通電を行うアイドルストップ車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドルストップ車両を制御する制御装置に関する。特に、アイドルストップ中におけるブレーキアクチュエータの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
信号待ち等、車両の一時停車時に内燃機関のアイドル回転を停止させて燃費の向上を図るアイドリングストップシステムが周知である。アイドリングストップシステムでは、車速が所定以下で、ブレーキペダルが踏み込まれており、冷却水温及びバッテリ電圧が十分高い、といった諸条件が成立したときに、内燃機関を自動的に停止させる。そして、アイドルストップの後、運転者がブレーキペダルから足を離す、またはアクセルペダルを踏み込む等の再始動要求があったときに、スタータモータのピニオンギアをフライホイール(MT車の場合)またはドライブプレート(AT車の場合)外周のリングギアに噛合させ、クランキングを行い機関を再始動する。
【0003】
アイドリングストップシステムを採用した車両には、ヒルホールド(または、ヒルスタートアシストコントロール)と呼称されるブレーキ制御機能が実装されている。これは、坂路上でのアイドルストップ中、運転者の足がブレーキペダルからアクセルペダルへと踏み換えられる際に車両がずり下がることのないよう、予めブレーキ液圧力を供給する液圧回路上に存在するソレノイドバルブに通電して液圧回路を遮断し、ブレーキ装置に供給された液圧力を保持しておくものである(例えば、下記特許文献を参照)。
【0004】
ヒルホールド制御は、アイドルストップの開始を契機として実施し、アイドルストップの終了まで継続する。この間、ソレノイドバルブに通電し続けており、電力を消費している。その電力は、内燃機関から駆動力の供給を受けて回転するオルタネータによって発電する。つまり、ヒルホールド制御を実施する頻度が高いほど燃料を消費し、実効的な燃費が低下してゆくということになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−001028号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題に初めて着目してなされたものであって、アイドルストップ車両の燃費のさらなる追求を所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、内燃機関のアイドリングを停止するアイドルストップ中に、車輪に付帯するブレーキ装置に液圧力を供給する液圧回路上に存在するソレノイドバルブに通電して当該ソレノイドバルブにより液圧回路を遮断し、ブレーキ装置に供給された液圧力を保持することができるものであって、ある車輪に付帯するブレーキ装置に液圧力を供給する液圧回路上に存在する第一のソレノイドバルブと、他の車輪に付帯するブレーキ装置に液圧力を供給する液圧回路上に存在する第二のソレノイドバルブとを別個独立に操作することが可能であり、アイドルストップ中に車両が所在する路面の勾配を検出し、その勾配の大きさが閾値を下回るときには、前記第一のソレノイドバルブ及び前記第二のソレノイドバルブのうち一方に対して通電を行い、他方に対しては通電を行わず、アイドルストップ中に検出した路面の勾配が閾値を下回り、前記第一のソレノイドバルブ及び前記第二のソレノイドバルブのうち一方に対して通電を行い、他方に対して通電を行っていない状態で、車両が移動していることを感知した場合には、以後のアイドルストップ機会において、必ず前記他方のソレノイドバルブに対して通電を行うアイドルストップ車両の制御装置を構成した。
【0008】
車両が比較的平坦な路面上に所在しているならば、運転者の足がブレーキペダルからアクセルペダルへと踏み換えられる際に車両がずり下がるおそれは小さい。従って、一部のソレノイドバルブに通電(して液圧回路を遮断)しないこととして、電力消費を抑制するようにしたのである。
【0009】
ある車輪に付帯するブレーキ装置に液圧力を供給する液圧回路上に存在する第一のソレノイドバルブと、他の車輪に付帯するブレーキ装置に液圧力を供給する液圧回路上に存在する第二のソレノイドバルブとを別個独立に操作することが可能であり、アイドルストップ中に車両が所在する路面の勾配を検出し、その勾配の大きさが閾値を下回るときには、前記第一のソレノイドバルブ及び前記第二のソレノイドバルブのうち一方に対して通電を行い、他方に対しては通電を行わないものとすれば、車両が比較的平坦な路面上に所在しているときには一方の車輪に付帯するブレーキ装置に供給される液圧力のみを保持し、車両が坂路上に所在しているときには両方の車輪に付帯するブレーキ装置に供給される液圧力を保持するというように、ヒルホールド制御のために用いるブレーキ装置を使い分けることができ、アイドルストップ中の車両の確実な制動と電力消費の削減との両立を図り得る。
【0010】
アイドルストップ中に検出した路面の勾配が閾値を下回り、前記第一のソレノイドバルブ及び前記第二のソレノイドバルブのうち一方に対して通電を行い、他方に対して通電を行っていない状態で、車両が移動していることを感知した場合には、以後のアイドルストップ機会において、必ず前記他方のソレノイドバルブに対して通電を行うものとすれば、一方の系統の液圧回路、ソレノイドバルブまたはブレーキ装置に故障や作動液の漏れ等が発生したとしても、他方のブレーキ装置によりアイドルストップ中の車両を制動できるというフェイルセーフが実現される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アイドルストップ車両の燃費のさらなる向上を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における内燃機関の概略構成を示す図。
図2】同実施形態におけるブレーキアクチュエータを示す図。
図3】同実施形態の制御装置が実施する処理の手順例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1に、車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式ガソリンエンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0015】
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0016】
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0017】
図2に、本実施形態におけるアイドルストップ車両に搭載されるブレーキアクチュエータの液圧回路を示す。ブレーキアクチュエータは、既知の液圧式のブレーキ倍力機構からブレーキ液圧力の供与を受ける。即ち、ブレーキペダルに加わる踏力を、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流(特に、吸気マニホルド34)に生ずる負圧を利用するブレーキブースタ(図示せず)により増幅し、この増幅したブレーキ力をマスタシリンダ(図示せず)を介してブレーキ液圧力に変換して、そのマスタシリンダ圧をブレーキアクチュエータの入力ライン51、52に入力する。
【0018】
入力ライン51、52は、二系統存在する。第一の系統の入力ライン51は、車両の右前輪及び左後輪に付帯するブレーキ装置71、72に接続しており、これらブレーキ装置71、72に液圧力を供給する。第二の系統の入力ライン52は、車両の左前輪及び右後輪に付帯するブレーキ装置73、74に接続しており、これらブレーキ装置73、74に液圧力を供給する。
【0019】
ブレーキ装置71、72、73、74は、例えば、ディスクブレーキにおいて車輪とともに回転するディスクの両面にパッドを押し付けて制動力を発生させるためのブレーキキャリパ71、73であったり、ドラムブレーキにおいて車輪とともに回転するドラムの内面にシューを押し付けて制動力を発生させるためのホイールシリンダ72、74であったりする。本実施形態では、前輪側にブレーキキャリパ71、73を、後輪側にホイールシリンダ72、74を、それぞれ設けている。
【0020】
各系統の入力ライン51、52とブレーキ装置71、72、73、74とを繋ぐ液圧回路上には、マスタシリンダカットソレノイドバルブ61、62を配置している。マスタシリンダカットソレノイドバルブ61、62は、電流信号l、mの通電を受けている間は閉止し、通電を受けていない間は開放する。
【0021】
第一の系統の回路上に存在する第一のマスタシリンダカットソレノイドバルブ61は、閉止することにより、同系統に接続しているブレーキ装置である右前輪ブレーキキャリパ71及び左後輪ホイールシリンダ72に供給された液圧力を維持する役割を担う。第二の系統の回路上に存在する第二のマスタシリンダカットソレノイドバルブ62は、閉止することにより、同系統に接続しているブレーキ装置である左前輪ブレーキキャリパ73及び右後輪ホイールシリンダ74に供給された液圧力を維持する役割を担う。
【0022】
さらに、液圧回路上には、アンチロックブレーキシステムのための保持ソレノイドバルブ63及び減圧ソレノイドバルブ64をも配置してある。保持ソレノイドバルブ63は、電流信号nの通電を受けている間は閉止し、通電を受けていない間は開放する。逆に、減圧ソレノイドバルブ64は、電流信号oの通電を受けている間は開放し、通電を受けていない間は閉止する。
【0023】
これらバルブ63、64の開放/閉止を組み合わせることにより、各ブレーキ装置71、72、73、74に供給される液圧力を調節することが可能である。即ち、通常は保持ソレノイドバルブ63を開放し減圧ソレノイドバルブ64を閉止することで増圧しているが、保持ソレノイドバルブ63を閉止し減圧ソレノイドバルブ64を開放することで減圧を実現できる。リザーバ65は、減圧時にブレーキ装置71、72、73、74から流入するブレーキ液を一時蓄える。電動ポンプ66は、リザーバ65に蓄えられたブレーキ液をマスタシリンダに向けて還流させる。なお、保持ソレノイドバルブ63及び減圧ソレノイドバルブ64の両方を閉止すれば、各ブレーキ装置71、72、73、74に供給された液圧力を保持することもできる。
【0024】
本実施形態の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
【0025】
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号(N信号)b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、ブレーキペダルの踏込量またはマスタシリンダ圧を検出するセンサから出力されるブレーキ踏量信号d、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号e、車両が現在所在している路面の勾配や車両の加速度を検出する加速度センサから出力される勾配信号f、シフトレバーのレンジを知得するためのセンサ(シフトポジションスイッチ)から出力されるシフトレンジ信号g、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号(G信号)h等が入力される。
【0026】
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、第一のマスタシリンダカットソレノイドバルブ61に対して閉弁制御信号l、第二のマスタシリンダカットソレノイドバルブ62に対して閉弁制御信号m、保持ソレノイドバルブ63に対して閉弁制御信号n、減圧ソレノイドバルブ64に対して開弁制御信号o等を出力する。
【0027】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に充填される吸気量を推算する。そして、それらエンジン回転数及び吸気量等に基づき、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、ブレーキ力といった各種運転パラメータを決定する。これら運転パラメータの決定手法自体は、既知のものを採用することが可能である。しかして、ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、l、m、n、oを出力インタフェースを介して印加する。
【0028】
また、ECU0は、内燃機関の始動(冷間始動であることもあれば、アイドリングストップからの復帰であることもある)時において、スタータモータ(セルモータ、図示せず)に制御信号pを入力し、スタータモータのピニオンギアをドライブプレート外周のリングギアに噛合させて機関を回転させるクランキングを行う。クランキングは、初爆から連爆へと至り、エンジン回転数が冷却水温等に応じて定まる判定値を超えたときに(完爆したものと見なして)終了する。
【0029】
図3に、本実施形態のECU0がアイドルストップに際して実行する処理の手順を示す。ECU0は、アイドルストップ要求が発生したときに(ストップS1)、内燃機関におけるインジェクタ11からの燃料噴射(及び、点火)を停止する(ステップS2)。ステップS1では、車速が所定値(例えば、7km/h)以下であり、シフトポジションが走行レンジであり(AT車の場合)、ブレーキペダルが踏み込まれておりマスタシリンダ圧が所定値(例えば、0.7MPa)以上である(加えて、車載バッテリの電圧が所定以上であり、内燃機関の冷却水温が所定以上高い)等の諸条件がおしなべて成立したことを以て、アイドルストップ要求があったものと判定する。
【0030】
その上で、ブレーキアクチュエータのヒルホールド制御を実施する。アイドルストップ中は内燃機関が停止し、ブレーキブースタによるブレーキ踏力の増幅作用が営まれず、また内燃機関からトルクコンバータを介して車輪に伝わるクリープ力(AT車の場合)も失われる。アイドルストップ中に車両が坂路上に所在していたとすると、運転者の足がブレーキペダルからアクセルペダルへと踏み換えられる際に、車両がずり下がる懸念がある。ヒルホールド制御は、このような車両のずり下がりを予防するものである。
【0031】
ECU0は、加速度センサを介して検出される路面の勾配の大きさを、所定の閾値と比較する(ステップS3)。アイドルストップ中に車両が所在する路面の勾配の大きさが閾値以上であるならば、第一のマスタシリンダカットソレノイドバルブ61及び第二のマスタシリンダカットソレノイドバルブ62の双方に通電してこれらを閉止し(ステップS4)、全ての車輪に付帯するブレーキ装置71、72、73、74に供給されている液圧力を保持する。
【0032】
翻って、路面の勾配の大きさが閾値を下回るならば、第一のマスタシリンダカットソレノイドバルブ61及び第二のマスタシリンダカットソレノイドバルブ62のうち一方61(または、62)のみに通電してこれを閉止し(ステップS5)、一方の系統の車輪に付帯するブレーキ装置71、72(または、73、74)に供給されている液圧力のみを保持する。他方のマスタシリンダカットソレノイドバルブ62(または、61)には通電せず、他方の系統の車輪に付帯するブレーキ装置73、74(または、71、72)に供給されている液圧力は保持されない。
【0033】
さらに、一方のマスタシリンダカットソレノイドバルブ61(または、62)のみに通電している状態で、車速センサを介して車両が移動していることを感知した場合には(ステップS6)、その旨の情報をECU0のメモリに記憶保持する(ステップS7)とともに、以後のアイドルストップ中のステップS5において、必ず他方のソレノイドバルブ62(または、61)に対して通電を行うようにする。その際、一方のマスタシリンダカットソレノイドバルブ61(または、62)には通電を行わないこととしてもよいし、当該マスタシリンダカットソレノイドバルブ61(または、62)にも通電を行うようにしてもよい。
【0034】
アイドルストップ中、再始動要求が発生したときには(ステップS8、S9)、スタータモータのピニオンギアをフライホイール(MT車の場合)またはドライブプレート(AT車の場合)外周のリングギアに噛合させて内燃機関のクランキングを行い、かつインジェクタ11からの燃料噴射(及び、点火)を再開して内燃機関を再始動する(ステップS10、S11)。ステップS8、S9では、シフトポジションが非走行レンジに変更された(AT車の場合)、ブレーキペダルの踏み込みが緩められてマスタシリンダ圧が所定値(例えば、0.1MPa)以下に低下した、アクセルペダルが踏まれた、または内燃機関の停止から所定時間(例えば、3分)が経過した、等の何れかの成立を以て、再始動要求があったものと判定する。
【0035】
並びに、アイドルストップ中に閉止していた第一のマスタシリンダカットソレノイドバルブ61及び/または第二のマスタシリンダカットソレノイドバルブ62への通電を遮断してこれを開放する(ステップS12、S13)。
【0036】
本実施形態では、内燃機関のアイドリングを停止するアイドルストップ中に、車輪に付帯するブレーキ装置71、72、73、74に液圧力を供給する液圧回路上に存在するソレノイドバルブ61、62に通電して当該ソレノイドバルブ61、62により液圧回路を遮断し、ブレーキ装置71、72、73、74に供給された液圧力を保持することができるものであって、アイドルストップ中に車両が所在する路面の勾配を検出し、その勾配の大きさが閾値を下回るときには、前記ソレノイドバルブ61、62の一部に対して通電を行わないことを特徴とするアイドルストップ車両の制御装置0を構成した。
【0037】
車両が比較的平坦な路面上に所在しているならば、運転者の足がブレーキペダルからアクセルペダルへと踏み換えられる際に車両がずり下がるおそれは小さく、強力なヒルホールド制御は不要である。従って、一方のソレノイドバルブ61(または、62)に通電せず、一方の系統の液圧回路を遮断しない、即ち当該系統のブレーキ装置71、72(または、73、74)に供給するべき液圧力を維持しないこととして、電力消費を抑制し、以て実効燃費のより一層の向上を実現することができる。
【0038】
加えて、ある車輪に付帯するブレーキ装置71、72に液圧力を供給する液圧回路上に存在する第一のソレノイドバルブ61と、他の車輪に付帯するブレーキ装置73、74に液圧力を供給する液圧回路上に存在する第二のソレノイドバルブ62とを別個独立に操作することが可能であり、アイドルストップ中に車両が所在する路面の勾配を検出し、その勾配の大きさが閾値を下回るときには、前記第一のソレノイドバルブ61及び前記第二のソレノイドバルブ62のうち一方61(または、62)に対して通電を行い、他方62(または、61)に対しては通電を行わないものとしたため、車両が比較的平坦な路面上に所在しているときには一方の車輪に付帯するブレーキ装置71、72(または、73、74)に供給される液圧力のみを保持し、車両が坂路上に所在しているときに限り両方の車輪に付帯するブレーキ装置71、72、73、74に供給される液圧力を保持するというように、ヒルホールド制御のために用いるブレーキ装置71、72、73、74を使い分けることができ、アイドルストップ中の車両の確実な制動と電力消費の削減との両立を図り得る。
【0039】
しかも、アイドルストップ中に検出した路面の勾配が閾値を下回り、前記第一のソレノイドバルブ61及び前記第二のソレノイドバルブ62のうち一方61(または、62)に対して通電を行い、他方62(または、61)に対して通電を行っていない状態で、車両が移動していることを感知した場合には、以後のアイドルストップ機会において、必ず前記他方のソレノイドバルブ62(または、61)に対して通電を行うものとしたため、一方の系統の液圧回路、ソレノイドバルブ61(または、62)やブレーキ装置71、72(または、73、74)に故障や作動液の漏れ等が発生したとしても、他方のブレーキ装置73、74(または、71、72)によりアイドルストップ中の車両を制動できるというフェイルセーフが実現される。
【0040】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、アイドルストップ中に車両が所在する路面の勾配の大きさが閾値を下回るときに、第一のソレノイドバルブ61及び第二のソレノイドバルブ62のうち一方61(または、62)に通電してこれを閉止する(ステップS5)こととしていたが、このとき、両ソレノイドバルブ61、62ともに通電せず、全ブレーキ装置71、72、73、74について液圧力を保持しない態様をとることも考えられる。
【0041】
その他、各部の具体的構成や具体的な処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、アイドルストップ車両の制御に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
0…制御装置(ECU)
61…第一のソレノイドバルブ
62…第二のソレノイドバルブ
71、72…ある車輪に付帯するブレーキ装置
73、74…他の車輪に付帯するブレーキ装置
図1
図2
図3